レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2012年8月アーカイブ

yumeuru-s500.jpgyumeuru-pos.jpg★『夢売るふたり』舞台挨拶レポート
(2012年8月20日(月)大阪ステーションシティシネマにて)
登壇者:松たか子、阿部サダヲ、田中麗奈、西川美和監督

(2012年 日本 2時間17分)
原案・脚本・監督:西川美和
出演:松たか子/阿部サダヲ/田中麗奈/鈴木砂羽/安藤玉恵/江原由夏/木村多江/伊勢谷友介/香川照之/笑福亭鶴瓶
2012年9月8日(土)~全国ロードショー
西川美和監督合同インタビューはコチラ
公式サイト⇒http://yumeuru.asmik-ace.co.jp/
(C)2012「夢売るふたり」製作委員会

~冷や汗 阿部サダヲ!妻と愛人に挟まれて~

 試写会で登壇したゲストの、なんと豪華なことか! 夫・貫也の愛人役の田中麗奈さんも参加しての舞台挨拶は初めてのことで、そのせいか、やや緊張気味の阿部サダヲさん。妻・里子役の松たか子さんは、阿部サダヲさんに「普通より下!?」と言わしめた“登壇時つまづき事件”(6/28)に続いて、今回もつまづいていた。


yumeuru-s2.jpg――― 最初のご挨拶
松:お暑い中お越し下さいまして、誠にありがとうございます。真夏に見るのにふさわしいかどうか分かりませんが、ゆっくりとご堪能ください。
阿部:この映画を見て、涼しくなる人が多いのではないでしょうか。
田中:私はこの作品を見て、ちょっと震える位ゾッとしました。夏にピッタリなんじゃないかと思います。
西川監督:映画はお客様に見て頂いて初めて完成します。今日は公開劇場でお客様のお顔が見られて、とても嬉しいです。

――― 里子役について?
松:里子を演じるにあたって、自分に何があって無いのかが分からなくて、とても難しい役でした。でも、そういうことを仕事にしているんだと思ったら、開き直ってやれました。それに、とても興味があった西川監督でしたし、初めてご一緒する阿部サダヲさんや他の皆さんも素敵な方ばかりでしたので、その中に居られるだけでもラッキーだと思って飛び込ませて頂きました。

yumeuru-s3.jpg――― 夫婦役について?
阿部:毎日がお祭りですよ、“山崎パンまつり”みたいな1?(笑)

――― 今日はまた妻と愛人に挟まれて、ゾッとするような顔合わせですね?
阿部:初めてですよね、こんなこと。悪いことしてないのに汗かいてますよ(笑)。

――― 女性にモテる気分は?
阿部:気分は悪くないですよ。でも、モテる男の役といっても、背が高くてカッコいい訳ではないし、カッコつける訳でもない。僕が想像していた結婚詐欺師とは違っていて、そこが面白かったですね。

――― 田中さんは、中々ここに立ちにくい役柄でしたが?
田中:現場でもお二人が並んでおられると本当の夫婦に見えちゃって、近付きにくいような雰囲気でした。

yumeuru-s4.jpg――― 監督からの指示は?
田中:妹にバカにされるシーンがあるのですが、「さつきの心の中にはモヤモヤとしたものがあるんですよ」と言われ、そうしたものを出していかなければと思って演じました。
松:多すぎず、少なすぎず、いつも的確でした。
西川監督:もう「用意スタート!」で出来ちゃうんですもの!皆さん、しっかりと脚本を読み込んで、心情の根っこの部分を掴んで来られていたので、必要以上のことを言う必要ありませんでした。現場はごうごうと火が燃えたり、一晩限りの深夜の駅で撮影したり、ワンテイクしかできないときも、長台詞や目線の方向など、全くNGを出しませんでした。これは、俳優陣の技術と情熱のたまものですよ。

yumeuru-s1.jpg――― 現場での阿部さんはどんな感じ?
松:よくわからない人でした(笑)。とてもシャイで、とこまで受け入れられているのか、流されているのか、よく分かりませんでした。でも、嫌な感じにはならず心地いい俳優さんでした。無理せずに居られたので、楽しかったですよ、私は……。
阿部:僕も同じように感じてました。どこまでくっ付いていいのか、あんまりいくと拒絶されるだろうし……(笑)。

yumeuru-s5.jpg――― それでは、最後にご挨拶を。
松:街の片隅に生きる登場人物に、自分を重ねたり、あるいは知っている人を重ねたりして、寛大な気持ちになってこの映画をお楽しみ下さい。
阿部:見終えて、誰かと話したくなるような面白い映画だと思います。特に男性の方の感想を聞きたいです。
田中:夫婦って、男と女って、どこまで信じていいのか、何が善か悪なのか、いろんな意味で面白い映画だと思います。私も皆さんの感想を知りたいです。
西川監督:糸井重里さんが「見れば見るほど、ややこしい映画」と言って下さいました。その通りでして、人生や、人と関係性を結ぶことや、生きていくことってややこしいんですよね。自分で言うのも何ですが、この映画はややこしいけど見ていて飽きない。自信を持って言えることは、出てくる人物がとても活き活きしています。涼しくもあり、エネルギーに満ちた映画なので熱くもなれる映画です。どうぞ最後までお楽しみ下さい。

(河田 真喜子)

 

yumeuru-di-3.jpg★『夢売るふたり』西川美和監督合同インタビュー
(2012年8月20日(月)読売テレビにて)
(2012年 日本 2時間17分)
原案・脚本・監督:西川美和
出演:松たか子/阿部サダヲ/田中麗奈/鈴木砂羽/安藤玉恵/江原由夏/木村多江/伊勢谷友介/香川照之/笑福亭鶴瓶
2012年9月8日(土)~全国ロードショー

舞台挨拶レポートはコチラ
公式サイト⇒http://yumeuru.asmik-ace.co.jp/
(C)2012「夢売るふたり」製作委員会

 外見からは分からない人間の奥深くにある心情を、巧みな演出で描出させてみせる西川美和監督の最新作は、夫婦で結婚詐欺を働く『夢売るふたり』。演劇界のミューズ的存在の松たか子と、これまた演劇界のみならずTVや映画でも独特の存在感を示す阿部サダヲが夫婦を演じるという豪華な顔合わせ。いやが上にも期待は膨らむ。 

yumeuru-1.jpg【STORY】里子と貫也の夫婦は料理屋を営んでいたが失火で店を失う。貫也に新しい店を持たせようと里子は懸命に働くが、貫也は勤めても長続きせず、資金は中々貯まらない。そんな矢先、貫也が馴染みの客と浮気してまとまったお金を持ち帰ったことから里子が思いついたことは、結婚詐欺。里子がダマす女たちを物色し、弱点を探り、貫也を仕向ける。見事な連携の夫婦共謀の結婚詐欺は、次々と成功していくが……。

 


――― 女性が主人公となるのは初めてだが?
最初から女性を念頭にこの物語を書きました。男と女では「恋愛」よりもっと落ち着いた関係の「夫婦」がいいなと。これまでもたくさん女性を描いた映画はありましたが、30数年自分が女として生きてきて、実感したことや、沢山の人達との付き合で得たナマの声や何を考えて生きてきたかを、そろそろ出す時期かなと思ったんです。現代の女性たちが抱く欠落感というものを、何か新しい仕掛けにのせて表現したいと思いついたのが「結婚詐欺」でした。

yumeuru-di-1.jpg――― 恋愛映画はあまり描きたくない?
恋愛映画は、韓流とかでも巧い人は沢山いるし、私がやらなくても誰かがやるだろうって思っています。恋愛の先にある感情的にも落ち着いた男女の関係性の変化に興味があったから、「夫婦」という形にしたのです。

――― 最初からあの夫婦を軸に据えようと思っていた?
そうです。里子も妻という立場で含めて、女たちの映画になればいいかなと。夫婦が何たるかは私自身未婚なのでよく分かりませんが、妻という立場の女性が、何かを抱え、その中でうごめいているものを描きたかったのです。

――― 里子のキャラについて?いい意味での開き直りを感じたが。
人間って分からないもの。そこが魅力でもある。里子も、分からないからこそ怖くて、面白いというのを描くのが今回の映画の目的でした。人間の行動の理由はひとつではないので、感情面でも複合的な人間像を描いていきたいと思ったんです。

――― 特に、里子の夫を見る目が鋭くて怖かったが――?
奥さんて、旦那さんのことをよく見ていると思うから、いろんなことを見逃さないんですよね。

yumeuru-2.jpg――― キャラクターや状況を映像で表現するのが巧みですが、その発想は?
いとも簡単に見逃されがちなシーンでも、とても長い時間考え抜いて撮影しています。得も言われぬ世界を創り出すのが映画だと思っているので、それを「説明台詞」を使わずにどうしたら分かってもらえるかと、ワンカットのアイデアを捻り出すのに大変な時間を費やしています。逆に、これ程時間をかければ誰でもアイデアが浮かぶと思うんですが, そういうものの積み重ねです。

――― 洞察力が鋭いのでは?
人並みだと思います。会社の給湯室などで人の悪口を言っているOLさんたちの方がよっぽど洞察力は鋭いですよ(笑)。人の話を聞いてると「よく見てるな~」と感心することが多いです。誰にでもそうした力は備わっていると思うけれど、私の場合、それを流さずに気に留めておこうと意識はしています。

yumeuru-di-2.jpg――― 劇中のセリフについて?
いろんな所で見聞きしてきたことを散りばめています。いろんな生き方をしてきた女性たちの声をあますことなく放出しました。感謝すべきは、私のまわりの人々です(笑)。

――― いろんな職業の女性たちが登場しますが、職業のリサーチは?
OLやシングルマザーは生活圏内ですが、職種によっては女性の就労に驚かされることがあります。なぜその職に就いたのか、その理由や思いを想像してみたらとても興味がわいてきました。そこで、日本映画史上初めての女性にチャレンジしようと、ウェイトリフティング選手の女性を登場させました。また、どんな時代にも存在する性を売る職業の人は、一般に生活する人からすれば遠い存在で共通項があるかどうかも分からなかったので、この機会に会って話を聞いてみたかったのです。 

yumeuru-3.jpg――― 監督の演出に「はい」とだけ答えて演技をしていたという松たか子と阿部サダヲについて? 
役者として確固たるものがあるのか、無理をする様子がまったくありませんでした。他の現場でも同じようにされていて、その積み重ねなんでしょうね。阿部さんは、連日火で焼かれたり熱湯で煮られたりと肉体的にもかなりキツかったと思うんですが、それでも大変さを出さずに、掴みどころや弱みというものが分からない人でした。とにかく、この二人は四の五の言わずにやる人達なんだと思いました。その態度に清々しさを感じ、こちらも胸を借りて進ませて頂きました。

――― 脇役の俳優について?
よく舞台を観に行っては、舞台で見せているいいものを映画の方にも持って来られないかなと思っているんです。ずっと以前から村岡希美さんや猫背椿さんと一緒に仕事をしたくて、それが叶えられてとても嬉しかったです。

――― 笑福亭鶴瓶の起用は?
後半を締める役なのでインパクトのある人をと思っていたら、前作の『ディア・ドクター』で、いろんな闇を抱えながらも根っこのところではいい人という役を好演して下さったので、またお願いしました。

yumeuru-di-4.jpg――― 松たか子の起用理由は?
他の女優さんもそうですが、綺麗、可愛い、美しいだけが女性の価値ではなく、ダーティな部分も魅力のひとつ。ちゃんと現実を生きている人を演じてほしかったので、生々しさだけではなく、際の部分で救ってくれるような、松さんの根っこにある品格が重要だったんです。

――― 阿部サダヲの結婚詐欺師について?
とびきり二枚目でなくても、一芸に秀でていたり、何かひとつでも魅力を持っている人に女性は惹かれるものだと思います。だまされる様を見せることによって、女性たちの欠落した部分が見えてきたらいいなと。特に女性の場合、ひとりの人間として他者に認めてもらいたいとか、生きていていいんだと、自信を持たせてくれるものを常に求めています。それはお金や地位や名誉では贖えないもの。登場する女性たちに共感して、ガス抜きしてほしいですね。


 夫・貫也がどんなに変化しようが、ずっと夫だけを見守り続けた妻・里子。本作は、決して結婚詐欺がテーマの映画ではない。「女の人は複雑で、厄介で、優しい生き物だ」という監督の談話通り、様々な生き方をしている現代女性の心情を照射することによって、他者への理解と寛容を促しているように感じた。(河田 真喜子)

kagimeso-s500.jpg『鍵泥棒のメソッド』合同記者会見レポート(2012年7月24日(火)大阪市内)
ゲスト:堺雅人、広末涼子、内田けんじ監督

~堺雅人危うし!! 吊し上げ会見の行方は?~

kagimeso-1.jpg(2012年 日本 2時間08分)
監督・脚本:内田けんじ
出演:堺雅人、広末涼子、香川照之、荒川良々、森口瑤子
2012年9月15日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://kagidoro.com/
© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会
★第15回上海国際映画祭にて最優秀脚本賞を受賞!

 3年かけて脚本を練りこんだ内田けんじ監督と、主役の堺雅人と広末涼子の3人がキャンペーンのため来阪。合同記者会見では終始和やかな雰囲気で、広末涼子の素直な言動に堺雅人がツッコミを入れ、監督がそれをフォローするような形で笑いを誘っていた。

 『運命じゃない人』(2005年)や『アフタースクール』(2008年)では、ごく普通の男があり得ないシチュエーションに巻き込まれ、それを複数人物の視点から、もしくは時間軸をズラしながら事件の核心に迫るという大変ユニークな手法でサスペンス・コメディに仕上げ、観る者を楽しませてくれた内田けんじ監督。ところが、最新作では今までの手法とは異なり、展開の鍵として登場人物のキャラクターを明確に性格付けて、引き寄せられるように絡み合う人間模様が豊かな情感を醸し出している。これまで以上に、軽妙なストーリーテリングの面白さと深みのある人間ドラマで魅了する。

kagimeso-2.jpg【STORY】 ルーズな生活の果てに自殺未遂の35歳の売れない役者・桜井武史(堺雅人)が、銭湯で転んで記憶を失った羽振りの良さそうな男・コンドウ(香川照之)のロッカーの鍵を盗んだことから、危険な歯車に巻き込まれていく。そこに、ある理由から突然結婚宣言をした雑誌編集長の水嶋香苗(広末涼子)が絡む。香苗はバイト募集条件も結婚相手の条件も同じ、「健康で努力を惜しまない人」。そんな香苗が、記憶を失ったコンドウと出会い、シンパシーを感じる。コンドウと入れ替わった桜井の命運は ?コンドウの記憶は? 香苗の婚活の行方は?


【最初のご挨拶】

kagimeso-s2.jpg監督:今日は大好きな役者さんと大阪に来られて嬉しいです。
堺:とても素敵なラブストーリーができたと思っています。よろしくお願いいたします。
広末:本当に楽しくて実力のある役者さんと、それに、しっかりとしたイメージのできている監督とお仕事ができてとてもいい経験になりました。沢山の方に見て頂きたいです。

━━━内田監督の作品は脚本の面白さがクローズアップされる事が多いが、現場での監督の様子や演出は?
堺:現場での監督の様子が語られないのは、あまりにもスムーズ過ぎて我々の記憶に残らないからではないかと。監督はイメージに沿って的確な指示を出されるので、それに従っていけば順当に進んでいく。特にこれというトラブルもなく、とてもスムーズな印象で、いつも楽しそうにされていました。
広末:監督には迷いがない。理性的で、形容詞など使わず具体的な比喩を用いて演出されることが多く、それが面白くて、さすが本を書かれる人だなあと思いました。初日に香川さんと焼き鳥を食べに行った時とても嬉しそうにしておられ、その理由は「お二人が喋ってくれてますねぇ。3年かけて練りに練った脚本を役者さんが喋ってくれると、こんなにも嬉しいものなんだ」と。監督するだけでなく脚本も手掛けると、作品に対する愛情も違ってくるようです。
堺:僕には何の比喩もなかったよ!
監督:若干ひいきしてました(笑)。

━━━3人の出演配分やキャラクターの吸引力については、最初から計算していた?
 監督:私自身がわくわくするかどうかが問題。キャラクターのデフォルメ感はかなり意識しました。具体的には、香川さんがお風呂場で転ぶシーンの、香川さんのお尻の位置の高さに全てのキャラクターのデフォルメを込めました(笑)。『少林サッカー』ほど高く上がってませんが、現実ではあり得ないほど高い位置にしました。

kagimeso-s3.jpg━━━前作に続いての出演だが?
堺: 『アフタースクール』の時は脚本を読んでも訳が分らなかったのですが、今回は1回読んだだけで意味が分かったという安心感がありました。3年かけた脚本は、技巧を凝らしながらもミステリーの部分を残し、ラブストーリーという筋が1本通っています。それは監督ご自身の変化だと思うし、前2作を見ておられる方もその変化を楽しんで頂ければいいなと思います。今回は何分にも香川照之さんとの共演ですから、演技合戦になるのも不利だと思い、肩の力を抜いて「あなたと張り合う気はありませんよ~」とアピールして現場に入りました(笑)。

kagimeso-s4.jpg━━━内田けんじ作品について?
広末:私も一気に読みました。楽しくてわくわくしながら現場に入りました。初めて堺さんと香川さんの3人で撮影があった日の会見で、「大人のシュールな笑いあり、監督の沢山の肉付けの末に最後はドンデン返しがある作品ですが、ピュアなラブストーリーですよね」と言ったら、お二人が「えっ!ラブストーリー?」と驚かれたのです。お二人は自分たちの性格が入れ替わる部分に大きなイメージを抱いていたようですが、監督に確認したら「これはラブストーリーですよ!」と仰って下さいました。読み方や視点によって大きく変わっていくようで、きっとご覧になる方も、内田監督らしいなとか、キャラクターの誰かと共感するとか、感情移入の仕方によって全然違って見えてくるのではないかと思います。
 堺:広末さんは最初から「素敵なラブストーリーができました!」と言ってました(笑)。
 監督:合同会見だとバレてくるね(笑)。 

━━━後半、堺雅人さんの絶妙な演技力が問われるシーンがあったが? 
 堺:あれは本気でやって、結果、下手になってしまった!
 広末:香川さんも驚いてましたよ。どうしたらあんな演技が出てくるんだと。
 監督:下手というか、浅はかなんだよね(笑)。自分に酔っている感じがあったね。
 堺:でも、あれは監督の口真似ですよ。
 監督:違う、違う!僕、あんな浅はかな演技しない!(笑)
 広末:見ていて恥ずかしくなるような演技をするシーンがあって、あの演技プランはどうなってるんだろうと?
 堺:え~っ!? これって、ある意味吊るし上げだよ!?(笑) 確かに刑事ドラマに憧れてたので、あれはちょっと考えたよ。そうした浅はかな役を本気でやらせるんだから……それにしても、見ていて恥ずかしくなるような演技とはね~(笑)

kagimeso-s5.jpg━━━香川さんの面白さは?
 広末:ワンテイクは少なくて、何回も撮り直すのを楽しんでおられました。「もう1回できるんだ~!」と。みんなで構築する芝居を楽しんでおられたようです。
 堺:「役者が現場でできることはそんなに無いんだよね~生き様が出て来るんだよね」と、常に全力投球されていました。記憶を失った部分で香川さんが着る服をわざと似合わないような服ばかり選んだのに、どんどん着こなしていって、ガッカリしました(笑)。何でも似合うんです!
 広末:Tシャツのロゴが面白かったですね。
 監督:そう!「WANDER NIGHT」(ワンダー ナイト)、それがタイトル候補にもなったよ。

━━━広末さんは今回笑わない役でしたが……?
広末:とにかく笑わないように、感情を出さないように、常にテンションを低くしていたので、怒っているように見えないかと、その辺のさじ加減が難しかったです。でも監督に「大丈夫!」と言われ、不思議と違和感なく、新しい経験をさせて頂きました。
 監督:撮影合間に見せる表情豊かな笑顔が素晴らしく、これを封印するんだと思うと申し訳なくて……こぼれおちる情感がそこにあったからこそ、美しく見えたと思います。
広末:周りの人にも今までの役の中でも一番好きだと言って頂けて、とても愛すべきキャラクターだと思いました。


kagimeso-s6.jpg 無計画でルーズな男を絶妙な力の抜き加減で特有の存在感を示した堺雅人、記憶を失い貧しくうだつの上がらない男と狡猾でシャープな男を繊細に演じ分けた香川照之、何事も計画的で几帳面な女性を可愛い笑顔を封印して好演した広末涼子。この3人のパワーバランスが、かつてないほどのスリルに満ちたコミカルで温もりのある“ラブストーリー”を奏でる。そして、前向きに努力する姿勢こそ幸せへの“鍵”であることを実感し、勇気付けられるに違いない。またしても“内田マジック”にはまってしまった! (河田 真喜子)

 

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『最強のふたり』ティーチイン レポート
ゲスト:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ、共同監督

saikyouno-1.jpg(原題:Intouchables)
(2011年 フランス 1時間53分)
共同監督・脚本:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、オドレイ・フロール、アンヌ・ル・ニ
配給:ギャガ 共同提供:WOWOW
2012年9月1日~TOHOシネマズ (シャンテ、梅田、なんば、二条、西宮OS)、OSシネマズミント神戸 他全国順次公開
・作品紹介⇒こちら
・公式サイト⇒ http://saikyo-2.gaga.ne.jp/
©2011 SPLENDIDO / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / TEN FILMS / CHAOCORP

★第24回東京国際映画際・グランプリ(東京サクラグランプリ)
            ・主演男優賞W受賞(フランソワ・クリュゼ、オマール・シー)
★セザール賞 全9部門ノミネート・主演男優賞受賞(オマール・シー)
★リュミエール賞 主演男優賞受賞(オマール・シー)

 こんなに笑って感動して泣ける映画に出会えるなんて!人生はまだまだ楽しみに満ちている、と生きる活力が湧いてくるようだ。9月1日から公開される『最強のふたり』は、実話をベースにしたユーモアあふれる感動作。事故で全身麻痺となった富豪フィリップとスラム出身で前科のある黒人青年ドリスは、何もかもが対称的で出会うはずのないふたりだったが、不協和音を立てながらも、いつしか本音の部分で強い絆で結ばれる。
 何がこの二人を繋ぎ合せたのだろうか……その謎は、二人の行動や言葉のひとつひとつに注目してみると、毒もあるが愛もあることに気付く。いつも本音で屈託なく入り込んでくるドリスを黒人俳優のオマール・シーが躍動的に演じる一方、体の不自由なジレンマを抱えながらも優しい笑みで理性的に応えるフィリップを、『唇を閉ざせ』や『PARIS(パリ)』のフランソワ・クリュゼが品よく演じて、まさに見事なコンビネーションを示している。
*猛暑続きの日本でも多くの方に見て頂いて、心満たされる感動で夏バテを払拭してほしいものです。

saikyouno-2.jpg【STORY】大統領官邸近くのサントレノ地区にある屋敷で多くの介護人に支えられて生きるフィリップは、ジェット機を所有しクラシック音楽や絵画や詩を愛するセレブ。だが、事故で全身麻痺となり、最愛の妻も亡くす。不採用通知3つで出る生活保護手当を目的で新しいヘルパーの面接にやってきたドリスは、スラムの集合住宅に住み前科もある黒人青年。体の不自由なフィリップに対して同情も遠慮もしなければ容赦もない。まわりの心配をよそにそんなドリスを採用し、ちくはぐなコンビ生活が始まる。それは、静かで調和に満ちた生活から一変し、躍動感あふれる活気ある生活となっていった。


6/21(木)より開催された『20thアニバーサリー フランス映画祭』でオープニングを飾った『最強のふたり』。本作の監督と脚本を務めたエリック・トレダノ監督とオリヴィエ・ナカシュ監督が来日し、上映後に観客とのティーチインを行った。

日時:6/21(木)20:00
場所:有楽町朝日ホール
登壇者:エリック・トレダノ監督、オリヴィエ・ナカシュ監督

saikyouno-di-3.jpgMC:満席の会場のお客様に一言お願いします。
エリック監督:皆様にこうして映画を見ていただくことができて大変感動しております。会場の隅で、皆さんの反応を見ておりましたが、すごく楽しんで見て頂いたので胸が熱くなりました。
オリヴィエ監督:何度観ても感動する映画ですね~(笑)。フランスから遠く東京に来て、皆さんに泣いて笑ってもらえて、とても名誉に感じております。

━━━この映画は実話を基に作られたそうですが、経緯を教えて下さい。
オリヴィエ監督:2003年に、(映画のモデルになった2人の)テレビドキュメンタリーを夜、2人でホテルで見ていたんです。私たちは、実際に、普通は出会わないような2人が出会う、そのドキュメンタリーにとても感動したんです。これまでに3本エリックと一緒に撮った長編があったんですが、この話を僕らの4作目にしようと決めました。本当に可能性がある映画だと思ったんです。

━━━モデルとなったお2人は、この映画を観ましたか?
エリック監督:もちろん。完成し、一般の人に試写をする前に、真っ先に見てもらいました。全身麻痺のフィリップのモデルの方は「両手で拍手をしたいです!?」とジョークを言い、ドリスのモデルになったアルジェリア人の方は「僕って本当は黒人だったんだ~!?」と言っていました(笑)。二人とも、この映画をとても気に入ってくれて、我々にとっても、彼らにとってもとても感動的な時間でしたね。

saikyouno-di-2.jpg━━━アルジェリア人を黒人俳優にした理由は?
オリヴィエ監督:黒人俳優のオマール・シーとは大分前から一緒に仕事をしております。モデルとなったアルジェリア人もオマールも移民の第二世代ですので、違和感はありませんでした。そもそも、オマールのために書いた脚本なのです。

━━━フランソワ・クリュゼの起用は?
オリヴィエ監督:オマール・シーはTVでは人気者ですが、映画界ではあまり有名ではありません。一方、フランソワ・クリュゼの方は、舞台や映画や作家活動など大変に有名な俳優ですので、そのギャップがこの役にピッタリだと思ったのです。彼に演じてもらって本当に良かったです。

saikyouno-3.jpg━━━主演2人の掛け合いはとても面白く感動しました。実際のモデルに忠実な部分、脚色した部分を教えて下さい。
エリック監督:二人が出会う面接のシーンで、生活保護申請の書類にサインをもらいに来たとか、二人とも女性好きというエピソードは実話です。絵画のくだりや、オペラを観に行って「木が歌ってる!」というシーンはコミカルに見せるための創作です。二人の間のユーモアや辛口なやりとりは実際のものに少しだけシナリオを加えてより感動的にしました。オマール・シーの方が実物よりダンスがうまいですよ(笑)

saikyouno-di-1.jpg━━━日本のフランス映画のイメージはアラン・ドロンの映画のようなイメージですが、この映画は人種問題などフランスの実状がリアルに描かれてますね?
オリヴィエ監督:今、ヨーロッパは経済危機など、さまざまな問題を抱えています。かつてのヒーロー像は美男だとか超人的で人間離れしたものが多かったが、今の人々に受けるヒーロー像は、リアルで普通の人間なんです。本作の主人公2人は、障害や移民の問題で社会から排除された人間です。誰もそういう境遇になりたくないと思っているが、その「怖い」とか「不安」という気持ちの上に「笑い」を入れることで、彼らがリアルなヒーローに見えてくるんです。それがフランスだけでなく世界でヒットしている理由ではないかと思います。

━━━とても面白くて大笑いしましたが、撮影中もそうでしたか?
エリック監督:撮影中はとても寒かったので、あまり笑う気にはなれませんでした(笑)

━━━ハートウォーミングな作品の割にシンプルな音楽だったが・・・?
オリヴィエ監督:喜劇と悲劇の間にあるような物語なので、ベースにあるのは、身体障碍者と社会から外れた役なので、あまり大げさな曲ではなく、削ぎ落としたようなシンプルな曲にしてもらいました。

saikyouno-di-4.jpg━━━2人で監督するのはどういう感じでしょうか?葛藤とかありましたか?
エリック監督:そうなんです。ほとんど僕一人で作りました(笑)
オリヴィエ監督:いえ、作ったのは僕です。彼はコーヒーを入れただけでした(笑)
 エリック監督:意見は常に食い違い、撮影中は死闘を繰り広げ、ボクシングでなぐり合い、負けた方は目の周りが黒くなり、腕も動かない状態でした(笑)
それは冗談ですが、思春期のころから二人とも映画が大好きで、情熱を分かち合ってきました。4本も一緒に映画を撮っていますので、これからも一緒に映画を作っていきたいと思っております。もう次の計画もありますよ!


お二人とも観客の質問に、茶目っ気たっぷりのユーモアを交えながら答えては、映画同様、最強のコンビネーションで観客を楽しませ会場を沸かせていた。フランス映画祭で観客賞を受賞している。
                                                             (河田 真喜子)

[『最強のふたり』はフランスで2011年興収No1、フランス映画史上歴代2位となったメガヒット作。ドイツ、オーストリア、韓国などでも大ヒットを記録し、各国でフランス映画歴代No.1の興収を樹立し、9月1日の日本公開にも期待が高まっている。]

 

B&W1-s500.jpgB&W1-1.jpg「ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black&White Episode1」ジャパンプレミア
(BLACK & WHITE EPISODE1:THE DAWN OF ASSAULT)

(2012年 台湾 2時間8分)
監督:ツァイ・ユエシュン
出演:マーク・チャオ、ファン・ボー、アンジェラ・ベイビー、DEAN FUJIOKA
2012年9月8日(土)~新宿バルト9、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸 他全国ロードショー
提供:アミューズソフト 配給:東映
公式サイト⇒ http://www.bw-movie.jp/
(c) 2012 Hero Pictures Corporation Limited. ALL RIGHTS RESERVED.

ドラマ「ブラック&ホワイト」(09年)の監督を務めた台湾ドラマ界のヒットメーカ、ツァイ・ユエシュン監督が、同作で主演を果たしたマーク・チャオを再起用し、「ドラマの3年前」という設定で映画化した「ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black&White Episode1」。公開前に先立って行われたジャパンプレミアに、マーク・チャオとツァイ監督、台湾で活動中の日本人俳優DEAN FUJIOKAが登場し、スペシャルゲストとして日本語吹き替えを担当した寺脇康文も登壇。男だらけの熱い舞台挨拶の模様をお届けします。


B&W1-s2.jpg(最初のご挨拶)

マーク・チャオ:皆さんコンニチハ、マーク・チャオです。 ヨロシクお願いいたします(日本語)。このような形で日本に帰ってこられて嬉しいです。ドラマをご覧になった方も、(今回の映画で)新たな回答を得られると思いますのでお楽しみ下さい。

DEAN FUJIOKA:リー捜査官を演じたディーン藤岡です。 はじめまして、…ですかね? 「ハーバークライシス〜」で戻ってこられて嬉しいです。映画を是非楽しんで下さい。

ツァイ・ユエシュン監督:皆さんコンニチハ(日本語)。 ここで皆さんにお会いできて幸せです。 映画を気に入っていただけると嬉しいです。

B&W1-4.jpg―――ドラマの映画化を知った時の気持ちはいかがでしたか?
マーク・チャオ:実は監督とは仲が良いのに「映画に出ますか?」と一度も話がなく成り行きで出演することになったんです(笑)。アクションシーンも「スタントマン入りますか?」とも言われず成り行きで全て自分でアクションシーンを行いました。毎日ケガしてどのシーンも大変でしたね。

――― 特に大変だったシーンは?
マーク・チャオ:(ビルの)3階建て位の橋から橋の下を通るトラックに飛び降りるシーンでは、19テイクも撮りました。なかなか監督からOKがでなく我慢できなくなって「まだやるんですか?」と聞いたら監督から「これぐらいで疲れたんですか?」と言われました(笑)

B&W1-s4.jpg――― 色んな国の俳優が出演したグローバルな映画の現場の雰囲気はいかがでしたか?
DEAN FUJIOKA:それぞれの国の違いを乗り越えてコミュニケーションを取って、色々な意見が飛び交って楽しかったです。日本語吹き替え版では自分の役を自分の演技を見ながら吹き替えたのが面白い経験でした。人名とか地名とか、中国語の発音を日本語にする時、発音がおかしくなってしまい吹き替えの監督に何度も直されました。声優の仕事は初めてでしたが、まさか自分を吹き替えることになるとは思いませんでしたね(笑)。

――― 映画にしようと思ったのはいつごろだったんでしょうか?
ツァイ・ユエシュン監督:最初から、ドラマを2シリーズ撮って、映画を撮って完成、という企画が有りました。ところが、ドラマの一作目にお金がかかり過ぎてしまい、ドラマの続編を作るのが厳しくなってしまったんです(笑)。幸い評判は良かったので、予定を前倒して映画を撮ることになりました。

B&W1-2.jpg――― 現場でのマークさんとFUJIOKAさんの様子はいかがでしたか?
ツァイ・ユエシュン監督:マークはインタビューでは愚痴ばっか言ってるけど、現場では、何かを頼むと、最初「えっ…」と言いつつも5秒後には文句を言わずにやってくれましたね。先程高い橋から飛び降りた話が出ましたが、あれはまだ高くない方なんです。7階建て位の高さからも、スタント無しで落ちてくれています。マークのおかげでリアルな映像を撮ることができました。 彼は、現場では「大人しい俳優でしたね」笑。DEAN FUJIOKAは、非常にプロフェッショナルです。どんなに難しい台詞も完璧にやろうとする姿勢が素晴らしい。インターナショナルの作品には共通の言語が必要ですが、彼は素晴らしかったです。

B&W1-s3.jpg――― (日本語吹き替え版を担当した)寺脇康文が登場してご挨拶
寺脇康文:ニホンの皆さんコンニチハ。 寺脇康文です。もう日本語ワカリマセーン。(外国人風な口調で)吹き替えのお話をいただき、てっきりマークさんの役かと思ったら違いました。年齢的に駄目だったようです(笑)。でも私が担当したファン・ボーさんは素晴らしい俳優です。役者からみると悔しいくらいです。「ハーバークライシス〜」は面白くてジェットコースターのような、全編クライマックスという感じの作品です。またアクションだけじゃなく人間味もあるのもいいんですよね。

マーク・チャオ:日本ドラマの『相棒』は、台湾でも放送されていて、誰もが知っています。そんな重鎮に、今回吹き替えを担当していただき、嬉しく思っています。 

B&W1-3.jpg――― 寺脇さんは吹き替えをやって、何か思い出はありましたか? 
寺脇康文:マークさんの役は落ち着いていて、うろたえる事なんて無いんですが、僕がやったダーフーは悲鳴が多いんです。「ウワァー! 」とか、車で飛んでいくところでも、「ウワァァーーーッ!」って悲鳴ばかりで大変でしたね。吹き替え版と比べて観ても面白いと思いますね。

――― 印象的なシーンは?
寺脇康文:個人的にはダーフーが登場するエレベーターのシーンに注目してほしいですね。映画の色、ダーフーというキャラクターの全てがわかると思います。一瞬のシーンなので、見逃さないで下さい。

B&W1-s1.jpg(最後の挨拶)
マーク・チャオ:今晩はこのような形で、皆さんと過ごせて嬉しいです。この映画をどうぞ好きになってください。これからも努力を続け、いつか日本のクルーと仕事ができれば長く日本に滞在できると思うので願っています。
ツァイ・ユエシュン監督:まずは、このような機会を作って下さったアミューズと東映に感謝いたします。そして、ここにいらして下さった皆さんもに感謝いたします。どうぞ良い晩をお過ごし下さい。


B&W1-pos.jpg次回作のため、口ひげを携えて登場したマーク・チャオ。ドラマ「ブラック&ホワイト」で俳優デビューを果たしたのち、ニウ・チェンサー監督やチェン・カイコー監督など、そうそうたる名監督に愛され、12年だけでも4本の映画に出演し着実に俳優の地位を確立している彼の輝かしいキャリアの裏には、妥協を許さない演技に対する姿勢があってこそだと、舞台挨拶での監督の言葉、劇中のあらゆるシーンで理解することができるだろう。「こんなこと本当にスタントなしでやっちゃうの!?」というくらいの迫力満点、かつ危険度満載のシーンは息つく暇もないくらい観客を魅了することに成功している。
マークを発掘した生みの親でもあるツァイ・ユエシュン監督と再タッグを組んで臨んだ今作は、劇中同様「男の友情」「信頼」から誕生した、今までにない新しい台湾映画の風を吹き込んでくれた一作、と言っても決して大げさではないだろう。 (木村 友美)

yuujirou-s2.jpg~「大震災」からの復興へ、日本に勇気を~

東日本大震災からの復興を願って、昭和の大スター、石原裕次郎さんがもう一人の大スター、三船敏郎さんと手を組んで作り上げた大作「黒部の太陽」(68年=熊井啓監督)の全国縦断上映チャリティ上映会を関西9ヵ所で開くことになり23日、石原プロ代表で裕次郎夫人の石原まき子さんらが来阪会見し、趣旨や上映日程などを説明した。裕次郎さん没後25周年の特別企画で「44年前にこんな凄い映画があったということを知ってほしい」とまき子さん。
 今年3月、東京を皮切りにこれまで47ヵ所で4万人近い観客を動員、最終的には全国140ヶ所、12~13万人を動員する見込み。関西では8月26日の奈良・大淀町、大淀文化会館から9月23日兵庫県明石市の明石市民会館大ホールまで9か所の予定。

yuujirou-s3.jpg映画の冒頭、「敗戦の焼け跡から文明を築いて行こうとする日本人の勇気の記録である」と字幕で説明されるが、まき子さんは「敗戦を大震災に変えたら今も通用します。ぜひ若い人たちにも見て頂きたい」と今回の上映会の意義を話した。
 「黒部の太陽」は、石原プロモーションを立ち上げた石原裕次郎さんと、三船プロダクションの三船敏郎さんが「既成の映画会社では出来ない映画を」と手を組んで、かつてない製作費を投じて作った記念碑と言うべき壮大なスケール、3時間15分の大作。様々な難条件を克服して出来上がった映画は空前の人気を呼び730万人を動員する大ヒットになった。

 yuujirou-s1.jpg製作当時、日本映画界には悪名高い「五社協定」があり、撮影開始までは難航を極めた。予定していた製作資金が突然出資取りやめになったり、映画俳優は会社から出演を止められ、会社からは「出来あがっても公開する映画館はないぞ」と脅かされもした。いつもは強気で知られる裕次郎さんもこの時ばかりは絶望的になり、兄・慎太郎に「どうにもならない」と涙ながらに訴えたという。
だが、映画界のしきたりを初めて聞いた兄が知人に要請したのをはじめ、裕次郎さん人脈で宇野重吉、滝沢修、辰巳柳太郎ら演劇界からの支援を取り付け、映画館も出資した関西電力、熊谷組などが「ホールなら全国で300くらいはある」と力強い励ましもあり、何よりも裕次郎&三船の黄金コンビの固い決意が最後には五社協定を突き崩した。

まき子さんは「私もあの時は男がいったん約束したことをやらないのか、と言いましたが、あの人にもこんな弱いところがあったのか、という思いだった。裕次郎も女房に言われて腹がたったんだと思います」とマル秘エピソードを明かした。
映画は世界第4位のダムを山の中に作る映画で、そのためのトンネルを掘るというだけの行って見れば地味な話だが「水力発電は日本に必要だという強い気持ちが裕次郎を支えていました」と44年前を懐かしげに思い出していた。(安永 五郎)


◆『黒部の太陽』関西上映日程

 8月26日午後1時、3時半  奈良県大淀町「大淀文化会館あらかしホール」
    29日午後1時、6時   滋賀県東近江市「八日市文化芸術会館」
 9月1日午後0時半、5時半  滋賀県大津市「大津市民会館大ホール」
   4日午前10時      ワーナー・マイカル・シネマズ高の原
   5日午前10時      〃
   9日午後0時半、5時半  大阪府枚方市「枚方市民会館大ホール」
   16日午後0時半、5時半 兵庫県神戸市「神戸新聞松方ホール」
   22日午後0時      兵庫県尼崎市「尼崎市文化センターあましん
                       アルカイックホール・オクト」
   23日午後0時半、5時半 奈良県奈良市「奈良県文化会館国際ホール」
   23日午後0時半     兵庫県明石市「明石市民会館(アワーズホール)大ホール」
※チャリティ上映会は「黒部の太陽」と同じく石原プロの「栄光への5000キロ」の2本上映だが、関西は「黒部の太陽」だけの上映。

 

maial-s1.jpg【STORY】 ひろこさんは認知症。娘のカメラを通した日々の暮らしは、愛しくてチャーミング。でも・・・ちょっと「お~っと!」な親子関係が紡がれていきます。関口祐加監督が自らカメラを回し、2年半にわたって記録してきたアルツハイマーの母との暮らしの動画です。せきぐち家の『毎アル』な日々をお楽しみ下さい。
7月14日(土)~ ポレポレ東中野/銀座シネパトス/横浜ニューテアトル夏休みモーニング・ロードショー!

公式サイトはコチラ

『毎日がアルツハイマー』作品レビューはコチラ

長編動画『毎日がアルツハイマー』の初日舞台挨拶が、7月14日(土)銀座シネパトスにて行われ、関口祐加監督に登壇頂き、本作の成り立ちやアルツハイマー病についてのご自身の考えなどを伺いました。

また、舞台挨拶では、本作にも出演している関口監督の息子・先人くん、姪っ子・樹子ちゃんも登壇し、監督に花束を贈呈し、本作の劇場公開を祝福した。
(写真左より、樹子ちゃん、関口祐加監督、先人君)


関口  『毎日がアルツハイマー』は、母がアルツハイマーになったからカメラを向けたのではなくて、アルツハイマーになった母が、すごく良いなと思ったからなんです。良妻賢母で硬い考えを持っていた母が、アルツハイマーの力を借りることによってすごく軽くなって、自分に正直に喜怒哀楽を出すようになった。アルツハイマーになった母が、人間としてすごく良いなと思って、それで母にカメラを向けたいと思いました。ドキュメンタリーの監督は、常に魅力的な被写体を探しています。本当に身近なところに、こんなに素敵な被写体がいたんた!という気持ちが強くて母にカメラを向けました。

関口 私は介護の専門家ではないので、最初に母がアルツハイマー病だと言われたときは、認知症の「に」の字も分からなかった。そうだろうなと思っていても、実際医者に言われると、焦りましたしパニックにもなりました。しかし、そんな私に何が助けになったかというと、自分が知らないことをオープンにして地域包括センターなどに助けてもらったこと。実は映画にしているくらいですから私は母のことをちっとも恥ずかしいとは思っていないんです。一番辛いのは母だと思っているので、母の気持ちをなんとか楽にできるように、色々な方に助けていただく。オープンにすることで、たくさんの人が助けてくれる。一人で抱え込まないことはとても大切だなと思っています。

関口 私自身が役得だったと思うのですが、お医者様にお会いしたりして、世の中には割りと知られていないようなアルツハイマーのあり方、アルツハイマーの病気についてしっかりと知ることが出来ました。そういう意味では、本作を通して一石を投じる、革命を起こすことが出来ればな、という気持ちがあるので、いろいろな方に見ていただきたいと思います。


『毎日がアルツハイマー』関口祐加監督インタビュー

maial-1.jpg関西での公開に先がけ、関口祐加監督がキャンペーンで来阪。これから誰でもなる可能性があるアルツハイマーに対して正しい知識で、介護される側の視点であることを心がけて楽しんでほしいというメッセージや、母娘、家族の絆について語っていただいた。

━━━お母様がアルツハイマーを患われたことを知り、どう感じましたか?
2009年の9月からずっと母を撮っていますが、自分が不安に思っていることを絶対に出さない人だったので、私にとってはそういう信号を送ってくれるのは、決して悪いことではない。危険信号が分かれば、一緒にいてあげようとか対応策が出てきます。そういう意味では、映画監督の人生はバンと決断することが多いので、ここは帰ろうと決意しました。その気持ちになれたのも、29年間好きなことをしてきたからだと思います。もし、自分が好きなことを出来ていなければ、よく介護で見られるように、「自分が犠牲になっている」という気持ちがすごく強くなりますが、私は全くないです。母がアルツハイマーになったことで、自分を日本に向かわせた。いろんなことが変わりました。

maiaru1.JPG━━━介護をしていて、しんどいと感じることはありますか?
あまりそういう風に考えないです。先生もおっしゃるように、母の残っている能力、そこが魅力的なのでさばけていく母が面白いと思って撮っていました。しんどいと思う裏には、自分たちの思うように動いてほしいと介護する側が思っているんですよね。介護の問題で、介護される側は全く問題がないと思うんです。どんどん機能が衰えてくるわけだから、それを理解できない介護する側に問題があるんです。母はアルツハイマーの患者であり、被写体なので、その母が何を感じているか、何を思っているかを常に感じていたかったんです。一番苦しいのは誰なんだと。果たして介護をしている我々なのかと。大変だと皆言うんだけど、大変にしているのは私たちと感じます。

━━━キャメラを廻し始めた当初から映画化を念頭に置いていたのですか?
最初から映画にするつもりでした。ホームビデオの先には家族ぐらいしかいないです。映画にしようとすると、キャメラの先の母は被写体であり、その先にはお客さんがいるんです。最初からお客さんに見せる。母は絶対映画になると思っていたので、DAY1から映画にするぞという気持ちで撮りましたね。
日本みたいに手弁当でオーストラリアは誰も作ってくれないんですよ。プロの世界なので、撮るとなると映画にするという覚悟が要ります。撮りたいものをどいういう風に撮るか、なぜ撮るのかをいつも自分に問いかけるわけです。それは全く撮れているものが違います。

━━━撮影しながらの介護で、キャメラを通して客観的になる部分もありましたか?
カメラの力は大きかったと思いますね。なぜ『毎日がアルツハイマー』かというと、母だけでなく家族も『毎日がアルツハイマー』で、家族のあり方も撮りたいと思うようになってきたからなんです。

もう一つはオープンにすることですよね。いまだに共同生活している感じなんです。母が残っている能力で洗い物だったらお任せするとか、掃除当番と書いておくと一生懸命やってくれたりとか、残っている能力で素敵なところをフルに活用する。そういうところが一緒に暮らしていて楽しいですし。介護される側を追いつめない。

デヴィッド・リンチの言葉なんですけど「(年をとると)教養や人生の体験で良くなっていると思われがちだけど、老化とはイマジネーションが狭まれることだ」と。我々介護する側も中年になって、想像力がなくなってきている。カメラで客体視できますが、それができなくなっている。だからぶつかるんですね。

maiaru2.JPG━━━お母様との暮らしで心がけていることは?
出来なくなっても親なので、人間の自尊心を尊重してあげることですね。30年間私はオーストラリアでマイノリティーで生きてきて、日本人ではなく、アジア人であるとしか見られなかったんです。それは私を奮闘させ、よりよい面白い映画を作ることで勝負できたのですが、そのレッテルは剥がれないし、レッテルを貼られる人間の気持ちがよく分かります。「アルツハイマーだからできなくなっていく人間」とレッテルを貼るのが許せないし、やってはいけない。

━━━映画を通じて描きたかったことは?
私の考え方、やり方で(介護は)180度変わるので、それができるかどうか。作品中で先生も仰っていますが「60点でいいんです。無理しちゃいけない。認知症は95%はまともなんです」というメッセージをこの映画を通じて送りたいです。いかに「認知症になったら大変だ」という間違ったメッセ―ジをマスコミが日々我々に送っているかですよね。新井先生(順天堂大学教授)の言葉の力は「ああそうだ」とすごく腑に落ちたし、取材されてもすごくマイナスのイメージを持たれがっかりしていたので、この映画に出会って私たちお互いにガチッときたんですよね。

人生のたそがれの時を、アルツハイマーの力を借りて母がやっと楽しくなれた。それまでの母は逆に嘘だったと思うんです。ごっそり仮面をかぶって、ずっと主席の優等生だったけど、「あんなのなんの意味もなかった」と今はじめて言うんです。「あんなのは本当に辛いだけだった」と。それを抱えて「人生変だったな」と思って終わるよりは、やっぱり言えるという、やっとそこにきたかという部分を受け入れてあげたいです。

━━━今お母様はどんな状態ですか?
今母が一番怖がっているのは、母から見て愛してくれている家族の顔が分からなくなることなんですね。「どなたさん?」って聞かれるけれど、私はそれでいいんです。「隣のおばさんです~」とか、姪っ子は「レディー・ガガです~」とかいろんな人になるんです。私たちのことを忘れてもいいんだよというメッセージを母に送るんです。 

━━━これから関西で映画をご覧になるみなさんにメッセージをお願いします。 
関東ではアルツハイマーで笑うのは不謹慎だと言われるんですけど、笑いの発祥の地大阪でどの辺で笑ってくれるのか、すごく知りたいです。だから大阪で上映していただけるのはすごくうれしいです。 介護は辛くなくならない方法があります。それは、正しい認知症やアルツハイマーの知識と、みんながオープンにすること。助けてほしいとカミングアウトすることです。もう一つは、“一日一笑”笑う力ですね。関西の人が持っている笑う力が人生においても介護でも一番大事なことです。だから、それを是非生かしていただければと思います。


第七藝術劇場での公開初日(9/8土11:00回、15:20回 上映後)は関口監督のトークショーおよびサイン会が開催される。「関西のお客様がどこで笑ってくれるのか、楽しみにしている」と関西公開を楽しみにしている関口監督の『毎日がアルツハイマー』。“笑い”が介護もアルツハイマーも人生も楽しくできる力があることを実感するだろう。
(江口 由美)

    

torasan-s500.jpgtorasan-1.jpg『山田洋次の軌跡』山田洋次トークショー

ゲスト:山田洋次監督、浜村淳
2012年8月18日(土)、京都・南座にて

名匠・山田洋次監督(80)のすべてが見られる「山田洋次の軌跡」が8月18日、京都・南座で始まった。山田監督の監督生活50周年企画で監督作品全80本をすべてフィルムで上映する貴重なレトロスペクティブ。開幕初日には浪速の名司会者・浜村淳さんとトークショーを行い、48本続いた寅さんシリーズの裏話などを山田監督が披露、詰め掛けた満員の観客は大喜びだった。


浜村:伝統ある南座での全作上映は意義深いですね。
山田洋次監督: (南座は)海外で言えばオペラ座やスカラ座に匹敵するようなところ。こんな場所で僕の映画をやることがうれしい。観客として来たことはあるし、秋には新派の舞台で『麦秋』を上演するので最近はよく来ている。京都は映画、とりわけ時代劇発祥の地。伝統は絶やしたくない。
 
浜村:南座の舞台上に懐かしい寅さんの「くるまや」のセットが作られてますね。
山田洋次監督:寅さんシリーズは28年間、48本やったが、第1作で“くるまや”のセットを作って、バラして次に使う、毎年大事に使っているうちに愛着がわきましたね。みんなそんな思いでやってきた。衣裳も同じ。セットも年季が入っている。自然とそうなっちゃったのがこのシリーズです。

torasan-s1.jpg浜村:今回は全作フィルム上映だが、これが最後になるかもしれない。
山田洋次監督:映画はサイレントからトーキーになり、カラーになり、今はCG全盛時代。デジタル化は表現の幅を広げたというよりも主に経済的な理由が大きい。110年間、続いてきたフィルムが消えるのは大事件で、大変な変化の時期を迎えている。これから何が起こるか…。デジタルは50年間、ちゃんと保存出来るかどうか。フィルムなら大丈夫なんですがね。デジタルで撮っても保存はフィルムということになるでしょう。今のシネコンはデジタル上映で、映写機は要らなくなっている。フィルムの陰影を映すのが映画。劣化はするが、デジタルと違ってフィルムを通した映像は微妙な味わいが違う。音もスクリーンを通して出す。今回はそのために専門の業者に頼んで音響も満足出来るものになっています。何よりも大きな空間、高い天井、巨大スクリーンで見るのが本来の映画。この上映が最後のチャンスになるかも知れない。

浜村:映画館で見ることが大事ですね。
山田洋次監督:今はハリウッド大作がいっぱいあるが、お客さんは客席でシーンとして見ている。僕はお客さんがざわざわして、くすくす笑ってくれるのが理想的。お客さんが「オレもああいうところがあるかな」と親近感を感じてもらえたら、と思う。

浜村:山田監督作品もそうですが、かつては1 ~ 2分見たら監督が分かる、そんな監督さんがいました。
山田洋次監督:そうですね。黒澤(明)、小津、溝口(健二)監督たちは夜中のテレビで見ても、1 ~ 2分で誰の映画か、分かります。僕もそうなりたい、と思ってますが。

浜村:監督になって50年、最初から監督志望だったのか?
山田洋次監督:松竹に入ったころ、映画は最高の娯楽だった。ほかに遊び道具もなかった。映画館に行くだけでウキウキした。映画界に入るのは手続きが大変だし、コネもなかった。あちこち受けたがたまたま通ったのが松竹だった。最初は野村(芳太郎監督)さんの助監督をやったが、自分では監督は無理だろうから脚本家になりたかった。

torasan-s2.jpg浜村:野村芳太郎監督はあまり教えない人だそうだが、監督から学んだことは?
山田洋次監督:人間を客観的に見る、ということでしょうか。それは小津(安二郎監督)さんはじめ、松竹の伝統かも知れませんね。客観的に見たら人間はこっけいで面白いもんです。ただ、(野村さんは)作る作品ごとストライドを変える人なので“教えない”という評判になったんでしょう。

浜村:撮影現場では声を荒らげることもあった?
山田洋次監督:長い間やってるうちには大声を上げることもあったが、僕の理想は、静かだけど和やかな撮影現場。和気あいあいで楽しい雰囲気が大事ですね。渥美(清)さんの演技でみんな笑い転げてなかなか本番にいけないことがたびたびあって“いいかげんにしてくれよ”ということも何度かありましたけどねえ。『おとうと』では(笑福亭)鶴瓶さんが点滴に酒まぜるシーンがあって、僕が吹き出すこともあった。監督が吹き出すのは大事なこと。

浜村: 『男はつらいよ』はよく48本も続いた。それも失敗作などは1本もない。どうしてあんなに続けられたのか?
山田洋次監督:ある程度続き始めると、普段の生活、映画や小説などみるものすべてが(寅さんに)結びついていく。2 ~ 3本、もう出来ない、大変なことになった、と思ったこともあるが、どちらかと言えば楽しんで作ったという気持ちが強い。ラクに作れる方が楽しいものができますね。

浜村:寅さんではいしだあゆみマドンナの「 ~ あじさいの恋」が忘れられません。いしださんの演技も最高だった。いしださんに「頑張りましたね」と聞いたら、「私は監督のおっしゃる通りにやっただけです」と言ってましたが。
山田洋次監督:女優さんは皆さん、それなりの人生を歩んで来ていてその魅力が第一です。“そのままでいい”というのが第一歩。小津さんの映画でも、あれほど存在感があった笠(智衆)さんが「私は小津さんの映画では演技をした記憶がない。ただ人形のようにいわれる通り演技した」と言っておられました。

浜村:監督は「愛とは」「家族とは」、そして「幸せとは」というテーマをずっと貫いてきた。そこに落語的なテイストを感じさせた。
山田洋次監督:そうですね。噺家の立ち位置で話しかける、私の映画はそうありたいと思います。ユーモアは作って出来るものじゃない。武田鉄矢に渥美さんが「青年」と呼ぶだけでお客さんはドッと笑う。『男はつらいよ』で森川信さんが「バカだねえ」というとドッと笑いが来る。森川さんに「磨き抜かれた芸ですね」と言ったら「天賦の才ですよ」と言って笑ってましたが。


torasan-pos.jpg★『山田洋次の軌跡』全作上映は前半が9月23日まで。後半は10月6日から同24日まで3か月のロングランイベント(月曜休館、月曜祝日の時は翌火曜休館)。
日替わり上映は1作品500円。午前11時から「男はつらいよ」シリーズ、午後4時からは他作品上映。特別編2作品上映もある。
ほかに南座内ミニシアターで特別編集映像「京都から見た日本映画の歴史」と「男はつらいよ南座特別編集版」も上映される(300円)。「くるまや」セット体験コーナー(500円)など。(安永 五郎)

『監督生活50周年 The Work of Yoji Yamada 山田洋次の軌跡 ~フィルムよ、さらば~』公演情報はコチラ

rurou-s500.jpg『るろうに剣心』舞台挨拶(12.8.14 大阪御堂会館) 登壇者:大友啓史監督、佐藤健、武井咲、青木崇高

rurou-1.jpg(2012年 日本 2時間14分)
監督:大友啓史
出演:佐藤健、武井咲、江口洋介、蒼井優、青木崇高、吉川晃司、香川照之
2012年8月25日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、梅田ブルク7、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、T・ジョイ京都他全国公開 ※8月22日(水)~24日(金)舞台挨拶付特別先行上映決定   公式サイトはコチラ
(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

rurou-2.jpg和月伸宏の大人気コミック『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』を、『ハゲタカ』の大友啓史監督が実写化。主人公剣心役には『仮面ライダー電王』でデビュー以来人気、実力共に若手筆頭株の佐藤健を迎え、幕末から明治維新に渡る激動の時代、一時は暗殺人として生きた男が人斬りを封印し、愛する人を守る真の闘いに挑む姿を描くアクション巨編だ。
本作の公開に先駆け、名古屋、大阪、東京、福岡の4大都市でキャンペーンが展開され、2日目となった大阪では、大友啓史監督、佐藤健をはじめ、神谷薫役の武井咲、相楽左之助役の青木崇高が登壇し、満席の観客の大声援に笑顔で応えた。大阪ならではの観客からの掛け声が飛び交い、熱気に溢れた舞台挨拶の模様をご紹介したい。


rurou-s2.jpg(最初のご挨拶)
佐藤:みなさんこんばんは。本当にこんなにたくさんの方に集まっていただいて、とてもうれしいです。今日は楽しんでいってください!
武井:こんばんは。大阪なのか、派手ですね(笑)今日は短い時間ですが、よろしくお願いします。
青木:どうもこんばんは。たくさんお客様が来てくださって本当にうれしいです。自分の名前が佐藤健じゃなくてよかったなと思いました(笑)
監督:お越しいただいてありがとうございます。ご期待に沿うような映画ができたと思いますので、今日はお楽しみください。

━━━多くのファンを持つ作品の映画化で、マンガから実写にするには大変なことがいろいろあったと思いますが。
監督:まず剣心は”神速”ですからね。やっぱり乗り越えなければいけないのは、その辺をどうやって作っていくか、勝算がないといけないですよね。キャラクターもエッジが効いているし、そういう意味ではまず剣心は彼以外できないという健くんが決まり(会場大拍手)、ヒロインとして武井さんが決まり、青木さんとか凄い俳優が集まってきたので、俳優がこれぐらい集まれば勝負できるなといった感じでした。

rurou-s5.jpg━━━結構自由に動いてみたいな部分もあったそうですが、そうすることで得られるものはありましたか。
監督:俳優たちが自分でやらなければいけないと自覚してきますから。特に健くんは小さい時から剣心の大ファンだから、最初想定しているレベルが高いんです。普通、ここまで引き上げるのが演出家の仕事なのですが、最初からモチベーションが高いので、逆に自由に泳がしておいた方がいいんですよ。泳げる環境やセット、メイク、コスチュームをちゃんと作りこめば、このチームはやってくれました。

━━━アクションが大変だったそうですが、やりがいや大変な部分はどんな点でしたか。
佐藤: 『るろうに剣心』の実写化を自分でやるようになった時点で、今までと同じではいけない。とにかくハードルが高かったです。剣心をやるんだったら原作ファンの人や自分が納得できるものでないと意味がないと思ったので、特別な作品になるだろうなという思いはありました。実際、大友監督と現場で作っていって、これは間違いなく代表作になるだろうな、今までの作品と全然違う特別な作品なんだという実感が沸いてきて、今日みなさんにそれを観ていただけるのがすごくうれしいです。

rurou-s4.jpg━━━青木さんも、アクションが大変だったそうですね。
青木:闘う相手が元格闘家なので、相当気合いも入りましたし、やっている中でアドレナリンが出るんですよね。
佐藤:昨年の夏の京都では多分異常なぐらい、現場自体がアドレナリンみたいな。
青木:あー出てる出てる!みたいな。ちょうどガムシロップみたいに、ネチョネチョみたいな(笑)。
佐藤:ドロッとした感じで、全員そうだったですね(笑)。
司会:ということは、武井咲ちゃんも、もちろんドロッとしたものが・・・?(会場大爆笑)

rurou-s3.jpg━━━出来上がった作品を観て、いかがでしたか。
武井:カッコよかったですね。実際現場のモニターで見たときも、本当に同じ人間なのかなというぐらいすごいアクションをされていて、私が見ていないアクションシーンもたくさんあったので、映画を見たときは「こりゃ、大変だっただろうに」と。
佐藤:女性でも楽しめましたか?男はとにかくああいうのが大好きだから、女性でも楽しめるのかなと思って。
武井:大丈夫ですよね!

━━━武井さんも、役に入り込む瞬間などはありましたか。
武井:息を止める芝居があったのですが、蒼井さんにも「あのシーンどうするの?」って言われて、「いや、わかんないんですよね」と話をしてたんです。いくら台本を読んでも分からないけれど、監督からも「あのシーン、がんばってね」と言われ、これは試されてるなと思って。実際に息を止めてみたのですが、そのとき涙が出て、その後鼻水が出て、よだれが出て・・・。

rurou-s1.jpg(最後のご挨拶)
青木:この映画は本当に突き抜けてます。これからご覧になる前のみなさんの顔を僕はじっくり見ておきます。観終わった後の顔をみたいのですが、ちょっと無理そうなので、みなさんそれぞれのガムシロップを出していただければと思います。今日はありがとうございました。
武井:とにかくカッコいい作品になっております。こんなにいい雰囲気の中、がんばって撮影しました。皆さんに観てもらえるのを待っていたので、是非とも楽しんでみてもらって、それをいろんな人に伝えて、何十回でも何百回でも観てください。お願いします。
佐藤:みなさん、今日は本当に来ていただいてうれしいです。ありがとうございます。言葉は要らないと思っていて、観ていただけたら分かると思うので映画については言うことはないのですが、公開日までに先に見ていただけるということで、もしよろしければ皆さんの力をお貸しいただければと思います。
 rurou-3.jpg監督:多分ここにいる武井さん、青木くんにとってもある種の代表作というか、ターニングポイントになっていく作品だと思います。本当にスタッフが今の時代に必要だと思える、愛される新しいヒーローと思って、昨年の夏京都の地獄のような暑さの中4ヶ月かけて作りました。そういう意味では、僕はスタッフも代表して来ているので、スタッフの熱意も含めて今日はみなさんに受け取ってもらいたいと思います。本日は本当にありがとうございました。楽しんでください。


rurou-s6.jpg剣心の役柄同様、精悍な顔つきで本作への想いを語る佐藤健。「言葉は要らない、観ていただければ分かる。」と自他ともに認める代表作となることを確信している姿はとても頼もしかった。紅一点となった武井咲にも会場から大きな歓声が飛び、思わぬ撮影秘話で爆笑を誘うシーンもあった。ムードメーカーの青木崇高がトークやフォトセッションを盛り上げ、大友監督流「泳がせて」撮るスタイルを経験した者ならではのチームワークの良さが感じられた舞台挨拶だった。
人間ドラマにアクションにと見どころ十分の『るろうに剣心』で、コミック原作ならではの豪華キャストによるキャラクター競演、そして、実写版剣心に心躍らせてほしい。(江口 由美)

sensei-s2.jpg (2011年 日本 1時間2分)
監督:内藤瑛亮  
出演:宮田亜紀、小林香織、大沼百合子、高良弥夢他
2012年8月25日(土)~第七藝術劇場、9月8日(土)~京都みなみ会館、9月22日(土)~神戸アートビレッジセンター他全国順次公開
公式サイトはコチラ
(C)2011 内藤組

センセーショナルなタイトルを聞いただけで胸がざわめく衝撃作『先生を流産させる会』がいよいよ関西で公開される。脚本も手掛けた内藤瑛亮監督が、実在の衝撃的な事件をモチーフに、性に嫌悪感を抱く思春期女子や、毅然とした態度で生徒と闘う先生の姿をエッジを効かせた構成で鮮やかに描いている。キャンペーンで来阪した内藤瑛亮監督に、映画化のきっかけや作品を通じて描きたかったこと、撮影秘話についてお話を伺った。


━━━本作の元となる事件を知った経緯をお聞かせください。
2009年3月ぐらいに報道されたのですが、最初はネットで見て、この言葉にギョッとしたんです。ネットの反響も実名を挙げろとか、死刑にすればいいという過激な処罰を求めていました。最近はインターネットやツイッターで意見を言えるようになり、それはいいのですが、意見の出され方が善意や常識、正義を後ろ盾にして間違った者をボコボコに叩きまくる傾向にあって、バッシング祭りをむしろ楽しんでいる。それは社会として不健康だと思いながら、まだ映画としては考えていませんでした。 

sensei-1.jpg━━━実際に映画化しようと思ったきっかけは何ですか。 
自主映画の短編『牛乳王子』(2008)を撮りました。自主映画は映画祭やコンペに応募して通ればようやく人に見てもらえる訳ですが、『牛乳王子』はあまり評判が良くなかったんです。そこでほめられている映画というのは夢を追いかける若者の青春映画や恋愛映画で、自分の作品は未熟なところがたくさんあるけれど、こんな映画に負けるつもりはないと思う反面、そういう作品が評価されて、観る人がたくさんいるという現実は受け止め、そういう人たちにも届く映画を作らなければいけない。俺はホラー映画が好きだという趣味の部分で作っても、観てもらえなければ意味ないなと思っていたんです。社会的事件を題材にすれば、そういう人たちにも観てもらえるし、自分も興味が持て、実際にホラー映画は実在の事件を取り上げることを伝統的にやってきているので、図書館に行って新聞記事を調べはじめました。そのとき流産をさせる会事件に再会したんです。ぱっと冒頭の田園のシーンで女の子が歩いているのが思い浮かんで、「俺が求めているのはこれだ!」って思いました。そこから映画にしていった形ですね。

━━━この事件を脚本に仕上げていく際に変更した点や膨らませた点はどんな部分でしょうか。
一番衝撃を受けたのは「先生を流産させる会」という名称でした。劇中でも描いていますが、胎児は人ではないから流産させる行為は殺人罪にはなりません。でも、「先生を殺す会」より「先生を流産させる会」の方がはるかにまがまがしい。映画美学校の先生である井土紀州さんが、「物語は常に逆説的であるべきだ。」と語られていて、これだけこの言葉に拒絶感を感じる、この拒絶感って何なんだろうと考えていけば、逆に我々が大切にしたいものが見えてくる気がしました。

そのときに、男子生徒を主役にしてしまうと、この言葉の怖さに近づけないと思ったんです。妊娠していることにもっと嫌悪感を感じるキャラクターでないと、この言葉に対する違和感に近づけない。女の子は妊娠できる体に徐々に変化していて、否応なしに受け入れなければならない。当然イヤな人もいるはずだ。そうしたら、この言葉のおぞましさに近づいていけるなと思いました。

━━━主人公を男子生徒から女子生徒に変えたのは、一番大きなポイントですね。
男性の監督がこういうことを描くことに「えっ」と思われることが多いですが、女性だから女性のことを描けるとか、男性だから男性を描けるということは決してなくて、むしろ異性だから距離感を保てている部分もあるんです。男性として、あれは何だろうと10代の頃から抱えていた疑問というのをこうやって描けた感じです。

事実を変える部分に関しても問題はないと思っています。描きたいテーマに対して、最も伝わりやすい方法を選ぶべきで、事実を事実のまま描いたら真実に近づけるかといえばそうではないのです。真実を描くためには、もっと自分なりに工夫しなければいけない。犯罪実話ものを見ても、事実はこうだろうけど、結局何が言いたいのかよく分からないと感じることがあります。事実と違ってもテーマが描けていれば、そちらのほうが正しいと思います。

sensei-2.jpg━━━モンスターペアレンツやそれに対応する先生、悪いことと知りながら群れて突き進む生徒たちと、学校現場の生々しい様子が描かれていましが、リサーチをされたのでしょうか。
学校で働いている先生に取材したり、教育関係の文献も色々読みました。女の先生の描写に関していえば、最初から怒っているような先生なのですが、担任が発表されて先生に会う第一印象で子どもたちは先生をなめてもいいかどうかを決めてしまうそうです。最初厳しくいくことが大切で、この女の先生はある程度学校で経験してきているから、ああいう厳しい表情になってしまう。だから完璧な先生としては描いていなくて、ちょっといきすぎたところはあるけれど、そういう形でしか向き合うことができない現状だと描きたかったです。

保護者の描写に関しては、一時期モンスターペアレンツが流行っていて、テレビでもある種面白おかしく報道されていましたが、モンスターという名前で片付けてしまうと、その親に向き合おうとしなくて済むところがあって、それでは良くないんじゃないかという思いがありました。謝らない親が存在しているこの世界で、どうやって向き合っていくのか。親としてもその立場で自分の正義をもって、自分の正しさを求めて行動していると思うんです。それは先生の立場もそうだし、生徒の立場もそうで、流産させようとしているその子どもたちも自分たちの正義にそって闘っているし、先生も自分の先生という仕事にプライドをもって闘っている。それぞれの正義がぶつかり合う場所を物語という世界である程度整理して、お客さんに考えてもらうことが必要かなと思いました。

━━━生徒たちのざわっとした会話の中で、「キモイよね」という言葉だけが効果的に浮かび上がっていましたね。
90年代からナチュラルな芝居がすごく流行って、しゃべり言葉のように物語に奉仕しない会話があって、映画もどんどん長くなっていくし、セリフも多い。僕はそれがすごく嫌で、まわり道しないで話の中心に行くつもりで、どんどん削っていきましたし、できるだけセリフは書かないで必要なものだけにしました。62分という長さも、もう少し長くするつもりでしたが、どんどん削ったほうがやりたいテーマがとがった形で見えるなと思いました。

━━━逆に、数少ないサワコ先生とみづきとの会話に純粋さからくる憎悪の感情が見えました。
サワコ先生とみづきが向き合ったシーンで先生が「なんで流産させたいの。」「気持ち悪いから。」「気持ち悪いの。」「知らん。」というセリフは、エスキロールという精神医学者が、義理の母をすごく憎んでいて殺したいという殺人衝動にとりつかれ七歳半の女の子を診察したときの会話を元にしています。本人も分かっていないけど感覚的に嫌だというのが10代にある、その会話のそっけない感じは参考にしました。

sensei-s1.jpg━━━みずきに対して最後まで先生としての立場を全うする描き方をしたのはなぜですか。
この物語をどう着地させるのか、すごく悩みました。サワコ先生がみずきを殴り殺すという展開も一度書きましたが、結局そういう子どもをこの社会が拒絶する話になってしまうんですよね。暗い衝動を抱える子どももこの世の中にはいるし、生きていかなきゃいけないのに、拒絶する話でいいのか、絶対殺してはいけないということで共同脚本の2人(松久育紀、渡辺あい)と再考し、流産は描くとして、その上で大人がどう対応していくのか見せることにしました。

学校の先生に取材で、生徒にいくら厳しいことを言っても伝わらないとき、どう考えて対応しているかお聞きしたとき、「確かにいくら努力しても伝わらないときもあるし、変わらないときもある。でも我々は教師なのだから、最後まで態度を貫くことが大事なんだ。教育はすぐ伝わることもあるし、何年かしてようやく伝わることもあって、そういう種を蒔き続けなければいけないし、拒否したり、逃げ腰になってはいけない。逃げたことを子どもは学んでしまう。」とおっしゃったんです。サワコ先生の行動も、物語としては先生として貫いた姿を見せることに意義があると思っています。

あと、自主映画を撮っていたので、どうしても10代や20代のモラトリアムの姿勢で描かれることが多くて、それに対する苛立ちもありました。自分ももうすぐ20代が終わることもありますが、大人として向き合わなきゃいけない物語を描かなければと思った部分はありますね。

━━━サワコ先生を演じた宮田さんに、演技やキャラクターについてどんな指示をされましたか。
キャラクターについて話し込むというより、リハーサルをしてシーンごとに「こういう強さのトーンでいってほしい。」とか、この子達に対してこう闘うとか、ここでは負けてしまうとか、子どもとどういう姿勢で向き合うかということを説明していきました。最後にみずきを守るシーンで、一度脚本に書いたものの削除したことがあり、その脚本を宮田さんに渡すと、「何であそこを削除しちゃったの。あそこを演じたいんだけど、ここは大切だと思う。」といわれて復活させたんです。そこがある種“越える”部分でしたね。

━━━初演技となる子どもたちに、事件を起こした生徒役の演技をどうやって指導したのですか。
演技力というよりは生々しさが必要なので、事務所の子ではない人が必要でしたが、こういう題材だし、なかなか演じてくれる人が見つからなかったです。ワークショップ式のゲームに参加してもらいながら進めていったので、本人たちは、役とか役柄とかは全然考えてないし、こちらもそんなに深く説明しなくて、感覚的なことを伝えました。現場では「あの人むかつくからずっと睨んでて。」とか「じっと見てて。」といったぐらいの演出で、あまり縛らないようにしようと思いました。本人たちも全然緊張してなくて、本当に遊びまわっている感じで、その素の部分も残しておこうと思いました。カットをかけた後の顔だとか、撮影とは関係ないところの顔を撮ったり、集中力が続かず飽ききった集中力ゼロの顔も面白くて、空洞っぽい怖さがあるなと思いました。

━━━最後に監督からのメッセージをお願いします。
映画作りに関して、今はできるだけ最大公約数を狙うようなところがあると思います。でも「僕がこう考えている」と鋭く出したほうが伝わると思うし、怒る人がいることは悪いことではなくて、それだけその人の主張がピシッと出ている訳で、作品として僕はこの問題をこう捉えた、あなたはどう思いますかと問いかける。作品を通じてコミュニケーションを取ることはむしろ健全だと思います。どういう風に感じるのか、自分は10代のときにどうたったのかを考えてもらえれば、作り手として目指しているところだし、うれしいなと思います。


教育現場と生徒、親との力関係をさらけ出しながら、生徒である少女のギョッとするような残虐さを62分という短い時間でストレートに描写した潔さや、映画的表現力のセンスの良さに驚かされた本作。タイトルを見てざわめいた感覚を突き詰めると、命とは、教育とはといった永遠の命題にたどりつく。そして、そこには、自主映画の世界から一歩踏み出して、作品を通じて社会と健全なコミュニケーションをとりたいという内藤監督の映画作りに対する姿勢が映し出されているのだ。将来頼もしい若き才能が放つとんでもない青春映画に、ホラー的要素を絡めながら真摯に問題に向き合う、未だかつてないエンターテイメントの姿を見た。(江口由美)

dontsop-s1.jpg(2011年 日本 1時間49分)
監督:小橋賢児
出演:高橋歩、CAP
2012年9月8日(土)~新宿武蔵野館、立川シネマシティ、9月15日(土)~テアトル梅田 にて公開
公式サイトはコチラ
© 2011「DON’T STOP!」製作委員会

【写真説明】監督デビュー作「DON’T STOP」への思いを熱く語る小橋賢児監督

~“不良オヤジ”と走ったルート66~

俳優出身ながらドキュメンタリー映画「DON’T STOP」(9月15日公開)を撮って監督デビューした小橋賢児監督(33)が8日来阪、自作にかけた熱い思いを語った。映画は“車椅子の不良おやじ”CAP(キャプテン)の夢だったアメリカ横断旅行に同行し、そのまま映画にするという大胆な試み。テキサス・エルパソからアリゾナ・サンタモニカまで10日間で全4200キロ「ルート66」を走る夢を実現した小橋監督は「自分の心もドント・ストップです」と熱かった。


dontsop-1.jpg━━━これが初映画だが、これまで経験は? なぜ監督をやることに?
映画作りの経験はまったくない。8歳から芸能界入って10代は多忙だった。20代半ばになってホントにやりたいことは何か? と考えた。このまま物理的な幸せでいいのか、と思って27歳の時に俳優業を休業してアメリカへ行き、自分のリアルを見つめた。作家で旅人でもある高橋歩さんのトークライブで「車椅子の元不良オヤジがアメリカに行く。ルート66を行く」という話を聞いて、すっごいワクワクした。映画に残したい、と思い立ち「撮らせてください」ととっさに手を挙げた。もし僕が料理人だったら料理している。映画作りなどしたことはなかったが、どんな名監督も最初は初めてなんだ、と自分に言い聞かせた。

dontsop-2.jpg━━━撮影はいつ? カメラは?
一昨年9月、正味10日間だった。その前に1カ月間、CAPの実家(北海道・名寄市)で一緒に暮らした。撮影はハイビジョンの一眼レフで1クルー4人。照明とかは入れたくなかった。1日900キロ走った日もあったが、映画にも入れたが、予定通りいったことは1日もなかった。脚本は一切なし。いろんな想定はしたが、旅に出るときはすべてを捨てた。動物的に、直感的に作った。本当に全然予定通りにはいかなかったが、それが結果的には良かった。

dontsop-3.jpg━━━ドキュメンタリーの勉強は? 
いろんな本を読んだ。一番、ぴったりきたのは想田和弘監督の本だった。本屋でたまたま手に取って、想田監督の“観察映画”が一番ぴったり合った。いろんな本を読んで参考に、というより参考にしてたらそれにしばられる。ナレーションも最初は入れてみたが、答えを押しつけることになってしまうので、見た人がそれぞれ人生の中で答えを出して感じてもらいたいと思って、こういう形にした。何百時間も撮って、編集では大変な苦労をした。行き詰まったこともあった。

dontsop-s2.jpg━━━キャンピングカーで、20代から70代まで総勢11人で行く旅は物理的にも大変。ルート66を走って、モニュメントバレーやグランドキャニオンに回り道もしたが――?
大型キャンピングカーに寝泊まりして、僕は監督なのでいつでもカメラを回せるように床に寝袋敷いて寝る生活だった。旅のルートは決めてなかった。旅をしていると、いろんなものが自然に引き寄せられてくる。それが自然とドラマになった。CAPには人を呼ぶ力があると思った。彼は障害を言い訳にして自分の可能性にフタをしていた。「ハーレーでルート66を走りたい」という彼の素敵な夢を、こうして実現出来て、僕らにも大きな可能性を開いてくれたように思う。自分が本当にやりたいと思ってハードルを上げれば出来るんだなって…。(安永 五郎)

 

 

hazimarinokioku-s2.jpg『はじまりの記憶 杉本博司』杉本博司×中村佑子監督トークイベント(2012.8.5シアターセブン)
(2011年 日本 1時間21分)
監督:中村佑子
出演:杉本博司、野村萬斎、李禹煥、野村萬斎他 
ナレーション:寺島しのぶ
2012年8月4日(土)~第七藝術劇場、京都シネマ他全国順次公開
公式サイトはコチラ

世界で活躍する現代美術家杉本博司に初めて迫ったドキュメンタリー『はじまりの記憶 杉本博司』。写真家としてキャリアをスタートさせてから、アートを「人間に残された最後のインスタレーション」と表現し、時には世界創造神話にまで想いを馳せ、時にはどこにも存在しない世界や、見えなかったものを可視化する唯一無比の表現を続けている杉本や彼の作品の魅力に迫った上質な作品だ。本作の公開に合わせて、大阪十三シアターセブンにて杉本博司×中村佑子監督トークイベントが開催され、満席の観客の前で時には笑いも巻き起こる濃厚トークが繰り広げられた。その模様をご紹介したい。


杉本:はじめまして、杉本博司です。今日は1時間ぐらい前に着いたので、この辺りを見学したのですが、非常に濃いところですね。活気があって、僕が子供の頃の東京はこういう感じだったんです。懐かしい感じで、僕はキレイになってしまった東京よりも、こういう所の方が性に合うなと、非常に懐かしい思いをしました。今日はありがとうございます。

監督:本日は暑い中、日曜の昼間に集まっていただき、ありがとうございます。
写真家として活動されて、ファインダーを覗くということをやってらっしゃった方なので、こういう形で切り取られて、いかがでしたか。

杉本:なんとなく居心地が悪いというか、本当にそうなのかなと。映画をご覧になって、杉本像がねつ造された訳です。一回「自分で編集させてもらえないか。」と聞いたことがありますよね。絶対イヤだと言われましたから、僕は作品になるための材料として扱われている訳です。長編ドキュメンタリーはアメリカとイギリスで一本ずつ作っているのですが、お国柄やディレクターで全然違います。向こうのドキュメンタリーは本人の発言だけで編集するのが基本です。これは情緒的な日本文化で、寺島さんがいい声で包み込むように語りかけると、なんとなく「この人はこういう人なのかな」と思わせる力はありますよね。

hazimarinokioku-1.jpg 監督:そこに関しては、すごく言いたいことがありまして。テレビ番組が元になっているので、劇場化が決まったときに、ノーナレーションで映像に物を言わせたものを作ろうと思ったときも実はあったんです。私はテレビドキュメンタリーを普段作っている者なので、テレビで培った映像と音楽とナレーションとを緻密に編み上げて言いたいことをいうテレビ的方法論を突き詰めた方がいいのではと。杉本さんのようなコンセプショナルアートの方で、あまりそれまで説明してこず、ポンと投げて感じろと言ってこられた方に対して、ナレーションを書くことは逆にものすごく勇気がいるんですよ。自分としての挑戦をすべきだろうと思って、あえてナレーションをつけ、編み上げました。

杉本博司ファンはある程度好きな訳だから、日本人でこれだけ活躍している杉本さんのことを知らない人にとって、どれだけ深くまで切り込めるかという点です。(テレビは)震災後色々言われて差別される向きがあって、私自身もそういう時もたくさんありますけれど、実は日本的な構成の妙、本当に緻密に編み上げる力、全く知らない人に伝える力はものすごく持っていると改めて思いましたね。

杉本:でも伝える方向や意味付けはかなり自由裁量でね。例えば太平洋戦争で日本が全員で突き進んで行くときに、逆にメディアの方が先に突っ走って、行政機関がそれを追認せざるをえなくなった。大規模な国民的付和雷同みたいなものを形作るメディアの力はものすごく大きいし、怖いと思う。特に戦争に至る経緯は、アメリカに居ながらアメリカ人にどう説明しようかと。非常に良くないですね。

hazimarinokioku-2.jpg監督:今杉本さんは、太平洋戦争にまつわるものすごいコレクションを持たれていますが、今集められていることをどういう形で発表していくのでしょうか。

杉本:物証として色々あります。開戦の12月8日の各新聞トップの見出しとか、終戦の新聞など。その間毎日と朝日が販売部数競争をしているんです。過激な現場報告をすればするほど売れるという状態で、戦争のおかげで発行部数が倍々ゲームになったんですよ。何が目的なのか、事実の報道が目的か、他社との競争かということになり、結局大衆の扇動要素になったのです。世論がどうやって作られるかは日本的な独特の形があるんですよ。

監督:杉本さんが(集められたものを)パッと手にとって、そこからどういうビジョンを描いているのか知りたかったということもありました。

杉本:こういうことが起こったときにどういう風に動くかと、震災のときもそうですが、日本人独特の精神性というかメンタリティー、共同で動く心の原理は、日本人以外の人たちと非常に違うのではないかと外国に住んでいると特に思います。仏教を6世紀半ばに受け入れたときどう思ったかとか、日本人が古来の神々にどう折り合いをつけたのかとか、縄文時代から絶対変わらない心の持ち方があるんです。

hazimarinokioku-s1.jpg監督:皆さん感じていらっしゃると思いますが、杉本さんはしゃべり始めると本当に大学教授のように止まらないのです。映画の中の姿そのものですが、どれだけ私がかなり分かりやすく編集したか分かっていただけるかと思います(笑)。

杉本:一般化していて、濃いところの問題発言はかなりカットされていますから。

監督:杉本さんの問題発言は、本当にすごいレベルなので、それはまたいずれパート2で。

杉本:裏バージョンを作ってもらいたい(笑)。

監督:アメリカで活動され、そして日本にエネルギーを逆に返してくださる杉本さんは日本の希望の星で、ここで一旦杉本さんの終わりなき活動を止めて見せたということで、この先ずっと私を裏切り続けていただきたいです。

杉本:写真はもうだいぶ終わりに近づいてきています。フィルムもなくなるし、紙もなくなるし。今はパフォーマーの方に入ろうとしています。自分でやらないとつまらないというか、脚本を書くのもそうですが、来年はニューヨークのローリー・アンダーソンとの共演で『滝の白糸』という無声映画の弁士をやります。彼女が「私も弁士をやる」と、溝口健二の映画をローリー・アンダーソン流にブチブチに切ってランダムに見せながら、彼女が英語で僕が日本語で弁士をするのです。

あと杉本文楽が橋本政権下で問題になっていますが(会場爆笑)、パリに招かれて10月に行きます。多分その凱旋公演として大阪公演はやろうと思っています(会場拍手)。どこでやるかはまだ決まっていませんが、来年中にはやることになると思います。ご期待ください。

(最後の一言)
監督:今日はお越しいただいてありがとうございました。気に入っていただけたらうれしいです。
杉本:これは杉本のほんの一面だけだと思ってください。『月見座頭』という狂言が私は好きなのですが、人間はいい時も悪い時もあるという狂言なんです。この映画はいい人の面しかなくて、悪い面もいっぱいあるのですが、そこは次の機会に。


異国にいるからこそ感じる日本人の精神性について、史実の出来事や芸術を例に挙げながら解説する杉本氏と、とにかくスケールの大きい類まれな芸術家の魅力を分かりやすく届ける挑戦に挑んだ中村佑子監督とのトークに、満員の観客からも大きな拍手が起こった。本作で杉本博司とその作品の崇高さに触れる至福の時間を、ぜひ体験してほしい。(江口 由美)

tonaruhito-s1.jpg(2011年 日本 1時間29分)
監督:刀川和也  撮影:刀川和也、大澤一生、小野さやか
2012年8月18日(土)~第七藝術劇場、ポレポレ東中野※アンコール上映、9月15日(土)~神戸アートビレッジセンター他全国順次公開
公式サイトはコチラ

  “子どものための子どもの施設”を掲げた児童養護施設「光の子どもの家」を8年間記録し続けたドキュメンタリー『隣る人』がいよいよ関西で公開される。大家族のような賑やかさと暖かさがあるその場所で、理由があって親と暮せない様々な年代の子どもたちが職員たちを母親のように慕いながら生活している姿を丁寧に描写。静かな感動を呼ぶ作品だ。キャンペーンで来阪した刀川和也監督に、作品を通じて描きたかったことや、撮影秘話について話を伺った。


━━━アジアプレスで海外取材活動をされていた刀川監督が、光の子どもの家に巡り合った経緯は?
  2001年6月ごろフィリピンで児童労働の取材後マニラ空港のテレビで、付属池田小学校の無差別殺人事件の映像が流れたんです。フィリピンは環境としては過酷ですが、色々な人間がくしゃくしゃになりながら生きている姿を取材してきた後で、あの豊かなはずの日本での事件に衝撃を受けました。巷やニュースでも「虐待」という言葉がよく聞かれるようになった頃で、家族問題の評論をされている芹沢俊介さんの『「新しい家族」のつくり方』という本の後書きに光の子どもの家のことが書かれていて知りました。

tonaruhito-1.jpg━━━光の子どもの家のどういった点に惹かれたのですか。
  「子どもがまっすぐ育つには伴走するように居続けるしかない。」ということが「隣る人」という言葉とともに書かれていました。「家族を内側としたら、内側と外側の狭間に、家族のことを考える場所があるかもしれない。」と、一般的な児童養護施設は家族の外側だけど、光の子どもの家は家庭的であることを実践しようとしている訳です。子どものための子どもの施設を作る、そのために子どもと暮らすという理念で、子どもと一緒に寝たりご飯を食べたり、食器ひとつにしても皆が自分の陶器を使ったり、細部まで意識化していく。僕の中では、児童養護施設という場で家庭的であることを実践している様を見つめることによって、家族や家庭、親子の中身が逆に見えてくるのではないかということを途中から意識していました。

━━━光の子どもの家に初めて行った時の感想は?
  僕もびっくりしたのですが、匂いがあったんです。友達の家に行ったときに入ってくるその家の匂いがあって、学校や施設とは違う”家”だと、一番最初に感じました。

━━━撮影の許可を得るのは大変だった?
  2003年末一度話に言った後、ちょうど光の子どもの家で職員の誕生会をしていたので理事長の菅原さんに「行く?」と誘われました。撮ってもいいよと言われて撮り始めてからは、ある意味自由でしたね。撮影に行く前にテレビ局が入っていたこともプラスに働いたのでしょう。暮らしを撮りたかったので、とりあえずキャメラを回して、でもビデオを撮りに来た人ということは認識してほしかったんですよ。最初の1年半ぐらいは一人で週に一度日帰りや一泊二日で、敷地内の5軒をぐるぐる回って全ての職員さんや子どもたちと仲良くなることはできました。でもそれだけでは撮れるものは限られていて、こんなのを撮っていてどうなるのかと思いましたし、映画にするためには踏み込まなければいけない。プライバシーのことも気になりましたが、モザイクをつけるのなら公開しないと決めていたので、このまま撮っても公開できるのかと悩みました。

tonaruhito-s2.jpg━━━手さぐり状態の撮影に活路が見えたのはいつ頃ですか。
  いろんな出会いに助けられました。大澤一生さんや『アヒルの子』公開前の小野さやかさんに偶然出会って、彼女も同じようなテーマを撮っていたので、是非来たいと2005年頃から一年ほど二人が代わりに撮影に行っていました。映画でも一部使っています。

  再び一人で撮り始めた時に、企画の稲塚由美子さんに出会いました。映画にするのなら本気でやるか、やめるしかないと決断を迫られていたときで、撮ってきた素材を稲塚さんに見せたんです。すると「普遍的なことが日常の中にいっぱいあるから、絶対やった方がいい。」と言ってくださり、そこからは稲塚さんと一緒に議論しながら作り上げていきました。

━━━作品中でも「撮らないで」と子どもたちが嫌がるシーンもありましたが、どうやって彼女たちとコミュニケーションを取っていったのですか。
  子どもは意外と撮らせてくれるのですが、恥ずかしいと思ったことや、親のことには結構小さな子でも反応します。そのときに居合わせても撮影できる自分でなければいけない。それぐらい撮影を日常化することで撮るほうも撮られる方もストレスが減るんです。撮ることは集中力はいるので、力が抜けているときもあるのですが、それでも突然ぐっとくることがあります。むっちゃんとマリナが「ママなんていないじゃないの!」と泣くところも、最初は二人で相撲をしていただけなのに、マリコさんが洗い物をしていたらぐっとくる展開があるんです。むっちゃんも「ずっとカメラで撮ってるじゃん。」と言うということは、ずっと撮られてることを知っているし、許しているわけです。

  さらに、公開できるかという部分で、話をしてもまだわからない小さい子どもたちばかりなので、自分と子どもたちの信頼関係になるんですよ。そのためにも居て、映画を撮っているだけじゃないぐらい関わっていく。半分職員のようになってましたね。どうなるか分からないけれど、いつかは公開できる、子どもたちは「うん」と言ってくれると信じて撮っていました。

tonaruhito-2.jpg━━━子どもたちが職員を「ママ」と呼んでいたのが印象的でしたが、自然にそう呼んでいるのでしょうか。
  子どもたちは呼びたいように呼んでいますよ。「マリコさん」と言ったり、「ママ」と言ったり。逆にマリコさんも初めて担当した留学費まで出してあげた子であっても「ママ」と呼ばれて、即座に「違う」と拒否したことがあったそうです。職員たちも若い頃は「私はお母さんじゃない」と思うようです。でも「ママ」と呼びたい子どもの気持ちは、親密でありたいという表現で否定しないほうがいいのではないかと菅原さんと話をし、呼びたいように呼ぶようになっています。子ども自身も複雑な想いで葛藤しているんですよ。テロップは入れていませんが、子どもたちが「ママ」と呼んだときに、観ている人にこれってママなの?ママのように見えるけど職員だし、ではママの中身って何だろうと考えてもらえればと思っています。

━━━むっちゃんがお母さんやおばあちゃんとの関係で揺れ動く様子は、双方の辛さが伝わりました。
  親御さんというのは映画の中にちゃんといてほしかったんです。家族の絆といっても、実は血縁が人を縛っていたりもしますし、本当は児童養護施設で暮らしていることや、実の親御さんに育ててもらっていないことをマイナスに感じる必要はないのです。一緒に暮らしていないから、ぶつかりたくてもぶつかれなくて親も子どももお互いに幻想を抱く。マリコさんが言う「憎たらしいことがいっぱいあっても、一個いいことがあると帳消しになる。」のが”暮らし”なのですが、一回しかなければ一回が全てです。暮らしている強さなんです。とはいえ、生んだ人間だから唯一無二で、子どもの人生のためにどうするかを中心に据えれば、お母さんとしての役割は永遠にあります。時には成長した子どもに罵倒されたするかもしれませんし、暮らすだけが役割ではないですね。

tonaruhito-pos.jpg━━━大家族のような光の子どもの家で、子どもたちと職員たちが生活する様々な日常を映し出していますが、撮影ではどんなことを心がけたのでしょうか。
  単純に好きなので、抱きしめているシーンは一番撮っています。長くいると、あと数時間いなければ見逃してしまうという局面が分かるようになります。週に一度ぐらいでは分からないし、月に一度では何も変わってないように見えますが、ずっといると毎日のように大事件があって、そこに時間が許す限りできるだけ居合わせて、ぎりぎりまで頑張ってみる。本当に「ダメ」と言われたら、その瞬間にバチッとくるので、その時は止めます。ぎりぎりのところに居合わせ、撮影もしましたが、逆にそこまでいなければ映画の公開もできなかった。そこまでいた責任も同時にあって、居合わせるなら逃げないということです。

━━━家庭とは、家族とはを考えさせられる普遍的な内容でしたが、一番伝えたかったことを教えてください。
  この映画で説明やテロップも入れなかったのは、児童養護施設という特殊な場所の話にしたくなかったからです。僕と地つづきだし、あそこにいる人たちは私たちの問題でもあると思うようになりました。すでに東京で上映してきましたが、感想としてむっちゃんを見ながら自分の子ども時代を見たり、マリコさんを見ながら自分のお母さんを振り返ってみたり、あの映画を観ながら自分を見ていると言ってもらえたのがうれしいです。誰も一人で生きられません。児童養護施設で撮りましたが、人と人との関係やその有り様や大事なことを撮ったつもりなので、そのことがきちんと伝わればいいなと思います。


  本作に登場したむっちゃんことムツミちゃんとマリナちゃんを昨年の山形ドキュメンタリー映画祭に招待し、質疑応答の席から二人への感謝の言葉と劇場公開するつもりでやっていることを伝えたという刀川監督。8年間の撮影で培った人間関係が、デリケートな部分に踏み込みながらも、家族の本質を考える機会を与えてくれるドキュメンタリーを完成に導いたといっても過言ではない。血のつながりだけが全てではない子育てと幸せの姿は、誰もが子どもたちの、しいては大人の“隣る人”になれる可能性を示してくれた。自分の原体験に引き寄せて、改めて家族とは、親子とはを思い巡らせてほしい。(江口由美)

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8月7日(火)はバナナで“元気100倍!”
なにわっ子もアンパンマンとバナナに大興奮!

24作目にしてシリーズ屈指の大ヒットを記録している映画『それいけ!アンパンマン よみがえれ バナナ島』を上映するテアトル梅田にて、アンパンマンとばいきんまんが、なにわっ子たちに本物のバナナをプレゼントする特別イベントを実施いたしました!
これは今回の映画の舞台となる“バナナ島”にちなんで、8/7(火)の「バナナの日」に生産果実・野菜の生産、販売会社 株式会社ドールとのタイアップによって実現したもので、異例の快進撃を続ける今作の大ヒット御礼を兼ねたものです。
当日は本編上映後のテアトル梅田スクリーン1に、アンパンマンとばいきんまんがサプライズで登場!たった今スクリーンでその活躍を見終わったばかりの子供達は、突如あらわれたアンパンマン達に大興奮!


anpanman-1.jpg「みなさんこんにちは!元気100倍ぼくアンパンマン!」の掛け声に子供達も大きな声で「こんにちは!」と大喜び!続くばいきんまんの「ハヒフヘホ!」の挨拶には大爆笑!
さらに子供達におなじみの曲「ドレミファアンパンマン」に合わせて、会場の子供達とアンパンマン・ばいきんまんが一緒にダンス。初めて本物を目の前にして、真剣な顔つきで間違えないように踊ろうとする子、とにかく楽しそうに体を動かす子などなど、それぞれにアンパンマン達と出会えた喜びを体で表しながら、楽しいダンスで会場が一体となりました。
バナナをもらって“元気100倍!”になった子供たちはお父さん、お母さん達の手を引っ張って、いつまでもアンパンマン達から離れません。元気いっぱいのなにわっ子たちに、アンパンマンたちも少したじたじ? そこから始まった記念撮影会はお父さんお母さんたちも参加して、子供たちの笑顔がいっぱい溢れる、和やかな楽しい雰囲気に包まれました。

■子供たちの声
・はにかみながら嬉しそうに 「アンパンマンに会えて嬉しかった!」 (3才女の子)
・「ダンスも楽しかった。アンパンマンと握手できて嬉しい。」(4才女の子)
・「ばいきんまんが好き!かっこいい。」(3才男の子)
・「はじめてアンパンマンに会って、ちょっと恥ずかしかった」(3才女の子)
・「映画も楽しかった。アンパンマンに会えて嬉しい」(3才女の子)

anpanman-logo.jpgみんな笑顔で記念撮影したり、アンパンマンと握手したり、本当に嬉しそうでした。
「バイバイ」と手を振っても、なかなかアンパンマンたちから離れられずに、名残惜しそうにしながら、お母さんに手を引かれていました。たまたま居合わせたおばあちゃんたちにもアンパンマンとばいきんまんは人気で「まあかわいらしいねぇ」との声にアンパンマンはすこし照れたようすでした。

日本中を元気にしている映画『それいけ!アンパンマン よみがえれバナナ島』はテアトル梅田ほかにて大ヒット公開中です。彼らの冒険はまだまだ続きます!
 

(C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV (C)やなせたかし/アンパンマン製作委員会2012
 


 

nipponnouso-s2.jpg (2012年 日本 1時間54分)
監督:長谷川三郎 撮影:山崎裕
出演:福島菊次郎 朗読:大杉蓮
2012年8月4日(土)~銀座シネパトス、新宿K’s cinema、8月18日(土)~テアトル梅田、8月25日(土)~シネリーブル神戸他順次公開
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(C)2012「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」製作委員会

  10年間広島の被爆者を撮り続けた「ピカドン ある原爆被災者の記録」で日本写真批評家賞特別賞を受賞し、三里塚や公害問題、天皇の戦争責任などを写真を通じて問うてきた反骨の報道写真家、福島菊次郎。現在90歳となる福島氏に、2009年から2年に渡って密着、年金を拒否し、慎ましくもユーモアに溢れる日常生活を映し出しながら、ニッポンの嘘を暴くために命懸けの仕事をしてきた福島氏の写真と語りで戦後のニッポンを顧みるドキュメンタリー『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』が公開される。キャンペーンで来阪した長谷川監督に、福島氏や彼が撮り続けてきた写真の魅力についてお話を伺った。


nipponnouso-1.jpg━━━どのようにして福島さんと出会ったのが、きっかけを教えてください。
   一番最初に福島さんにお会いしたのは今から3年前の2009年夏でした。伝説の報道写真家福島菊次郎さんが瀬戸内海の町に暮らしていらっしゃると聞いたのですが、当時は米寿で、胃ガンをわずらっていたため、本当にちゃんと話を伺えるのは今が最後のチャンスかもしれないと言われ、お会いしてみようと思いました。福島さんが撮った写真を見たときに、僕らが知らなかったニッポンがここにあるんだと思い知らされたんです。本当に被爆者の人の声が聞こえたり、学生運動や三里塚で闘っている人たちの怒りの声が聞こえてくるようでした。福島さんの言うところの”ニッポンの嘘”が覆い隠されたその後に生まれてきた世代なので、自分の足元にこんな歴史が埋まっていて、なおかつ、声を上げてきた日本人がいたということに大きな衝撃を受けました。しかも、その写真は真正面から日本の人たちと向き合って撮ってきた。苦しみとか怒りをストレートに受け止めている、どんな写真家なんだろうと思ったのが最初のきっかけです。

  先輩からは、カメラを武器にして、敵をだましてでも潜入して撮ると。家を焼かれたり、暴漢に襲われても屈しないで、撮影し続けたというエピソードを聞いたので、どれだけ怖い人なんだろうと緊張して行ったのですが、お会いしてみると本当にチャーミングなお人柄で、その人柄に一発で魅了されてしまったのが正直なところですね。この人を撮りたいな。福島菊次郎という人間を知りたいなというのが一番大きなきっかけです。

━━━今まで撮る側であった福島さんに取材を申し入れたとき、どんな反応をされたのでしょうか。
   「僕みたいな独居老人を撮って、絵になるのかい。」と最初に言われましたね。でも、とてつもなく魅力的だったんです。年金を拒否されて、でも三食はちゃんと自分で作って、ユーモアを交えながら日々の暮らしを過ごしていらっしゃる。その一方で90歳になっても全く引退せずに、今の日本に自分が何をメッセージとして残せるのかを真剣に考えて、日々原稿を書かれたりされている。その生き方を見たときに、どうやって人は最後まで生きるのか、自分の仕事をなしていくのかということを、教えられたような気がして、その日常も見つめたくなりました。

  「福島さんを撮らせてください。」と言ったときに、「合い鍵を渡すから、何でも撮っていいよ。」といきなり渡してくれました。でもそれは、挑戦だと思います。おまえたち何を撮るんだという、人を撮ってきた福島さんだからこそでしょう。毎日アパートの鍵を開けて、「おはようございます。」と言うところから始まって(笑)。その中で、病気も患っていらっしゃったので自分の老いとか、「ちょっと気分が悪くて、もどしちゃったんだよね。」とフラフラの青い顔で朝起きられたりしていて、そういう自分の老いていく様も隠さずにさらけ出してくれました。でもその中で写真家として自分に何ができるのか、写真家として最後にどのような人生を貫けるのかを、あきらめないで日々を過ごされていた様子を見て、福島さんのすごさを改めて感じましたね。

nipponnouso-2.jpg━━━最初、福島さんを撮りたいと思ってお会いになった時から、映画を作ることを念頭に置いていたのですか。
   福島さんのやってきた仕事とその証言を残したいという勝手な使命感にとらわれて「撮ろう」ということで進めていき、出先は決めていなかったです。福島さんの見つめてきたニッポンは今のメディアではあまり扱えないタブーも含まれているので、それをストレートに伝えたい。自分自身が伝えるのに責任を持って出したいと思ったときに、映画という形がいいのではないかという気になりました。さらに撮っていく中で、福島さんが撮影してきた戦後のニッポンというものに劇場の暗闇、大スクリーンで向き合ってもらって、そのことを見てくださった観客の方に持ち帰ってもらいたいと思ったんですね。あまり過剰な説明はしたくないと考えたときに、観客との共同作業で作品が完成する映画という場で、福島菊次郎に出会ってほしいと願うようになり、途中の段階で映画にしようと決めました。 

━━━監督が福島さんを背負っている光景から作品がはじまりますが、どのような意図があったのでしょうか。 
   結果的にですが、僕らの態度表明になっていますね。もう90歳になって、もちろんカメラを持てば野生動物のように現場を駆け回る菊次郎さんですが、階段を上るのがちょっと苦手でいらっしゃるようで、その福島菊次郎を今の世の中に届けるという、心中と言ったら大げさですがそういう気持ちで福島さんを背負わせていただきましたし、映画の最初のシーンに使わせていただきました。福島菊次郎が見た戦後って正直言うと賛否両論があると思うんですよ。でも、その目線に寄り添ってそこから見えてくるものがあるんじゃないかと撮っていくうちに思うようになって、距離感ゼロという距離感でいこうと決めました。 

━━━福島さんからドキュメンタリーを教わったと監督は語っておられますが、具体的にはどのような点でしょうか。 
   「国が法を犯したときは、カメラマンは法を犯してでも撮影しなければならない。法に従っているからいいドキュメンタリーが撮れないんだよ。」という言葉は、頭では分かっていたつもりでも、それを実践して生きている人が本当にいるんだと実感しました。福島さんは思想やイデオロギーで反体制の写真家になったのではなくて、色んな人と出会う中で、福島菊次郎が出来上がっていったんです。その一番のきっかけが(被爆者の)中村さんで、中村さんのことを50年経っても「彼の敵討ちをできただろうか」と想い続けられるのは、ドキュメンタリーを撮っている人間としてすごいなと、これが一番です。月並みに「そのパワーの源は何ですか。」と聞こうとすると、怒られるんですよ。「僕は普通のことをやっているだけだよ。あなたたちがやってないだけだよ。」と。それだけ真摯に現場で心を動かしながら撮ってきた人なんだなとそのシンプルさにやられましたね。

nipponnouso-s1.jpg━━━撮影したものをどうしようかと考えていたところに、震災が起こったそうですが、本作にどんな影響を与えたのでしょうか。  

  福島さんと現地に入ったのは、震災から半年して少しずつ日常を取り戻し始めた頃で、震災直後はがれきになっていたような海沿いの街がボウボウの草が生えていて、メディアもいなくなって、市内に行くとすごく高濃度なのにマスクもしないで日常の生活を送っていたんです。あれだけのことが起こっているのに、日常を取り戻そうとしてあまり都市部の人は放射能のことはしゃべりたくないし、日本が変わるのかなと思ったら、また同じように元に戻ることの怖さを実感しました。

  その一方で、「今のフクシマはヒロシマと重なる。」とおっしゃったことを受けて、足跡をずっと撮ってきた福島さんの写真を見た時に広島が放射能の爪痕をどうやって隠していって、今僕らが修学旅行で訪れるような平和都市広島にしていったのか。これからフクシマでも起きるかもしれないことが、これまで撮ってきた福島さんの写真にはある。『ニッポンの嘘』は、過去のものとしてタイトルにしたのですが、決して過去のことではなくて、これからの日本で始まるかもしれない嘘がそこに映っていたんだなと、そういう意味合いを持ってしまったことに無念さを感じましたね。

━━━本作の撮影は、是枝監督作品の常連でもあるベテランの山崎裕さんですね。
   彼がいなかったら、撮れなかったですよ。撮影の初日に、福島さんはどういう風に撮るのか見るんですよね。出会いがしらに自分の写真のことを話し始めて、3時間ぐらいお話されたのですが、山崎は手持ちカメラを一度も下さずにずっと受け止めていましたから。日常の撮影も、どのポジションからどれだけの距離で、どこでシャッターを押すのか、福島さんはカメラマンだから見ているんです。それで一日終わった後に、「あんたら違うね。」と認めてくれました。山崎裕の距離感とか、人を見つめる視線だったと思います。六畳間の中で日常が展開するのですが、戦後の中で生きてきて最後にどうしようかという福島さんの焦燥とか、孤独とか、その中でメラメラ燃えている炎だったり、そういうものを山崎は見事にカメラで撮りきったと思います。山崎もそういう戦後を生きてきたカメラマンだったので、スイングしたのでしょう。

━━━最後にメッセージをお願いいたします。
   『ニッポンの嘘』というタイトルは、今皆が心のどこかで思っている言葉ですが、それに対してどう声を上げていいか分からない人たちがたくさんいると思うんです。でもこの国には一人で闘ってきた写真家がいる。その男の闘いを見ることできっとエネルギーをもらえると思うので、これからの日本と向き合うヒントが世代を問わずこの映画にはあるんじゃなかと思います。福島菊次郎に会いに来てほしいです。きっと何かもらえると思います。


余計な音楽を流さず、大スクリーンでじっと映し出される福島の写真の被写体の目には、どれにも訴えるような力がこもっていた。福島菊次郎が50年にも渡って撮ってきた戦後ニッポンの真実と、90歳になってもまだ闘い続ける姿を是非スクリーンで目撃してほしい。(江口由美)

橋口監督-1.jpg~『二十四の瞳』の2012年版予告篇づくりをとおして~


大阪シネ・ヌーヴォにて開催中の「生誕百年 木下惠介全作品上映」。7月28日、橋口亮輔監督(『ハッシュ!』、『ぐるりのこと。』)が来館され、トークショーが行われました。橋口監督は、今回、松竹の初ブルーレイ化したDVDの発売に当たり、『二十四の瞳』の2012年版予告篇を監督されました。トークショーに先立ち行われた共同インタビューの内容をご紹介します。


―――今回の『二十四の瞳』の予告篇づくりで感じたことは?
学生時代、木下惠介監督の作品は叙情的でセンチメンタルな作品が多く、今村昌平監督や大島渚監督について語る方がかっこいいというイメージがありました。しかし、今回、『二十四の瞳』(1954年)を観て、なんて美しいのだろうと思いました。人生の理不尽により子どもたちの運命が変わっていく様子が描かれ、個人の人生がゆがめられたり、踏みつけにされてはならない、という木下監督の憤りが映画の底辺にあって、監督は、その怒りや悲しみを直接的に描くのでなく、映画の話法でもって美しさに浄化させました。表向きは涙ものにみえても、現実への激しい憤り、こうあってはならないという怒りに気付きました。

―――予告篇は短いですが、どんなふうにまとめたのですか?
反戦や女性の生き方といろいろな切り口がありますが、今の日本において、何を伝えるのが、一番いいのかを考えました。大石先生(高峰秀子)は、分校に赴任後、わりとすぐにけがをしてしまい、本校に移ることになります。子どもたちとのふれあいはわずか1、2か月ですが、その絆は一生続くことになります。このかけがえのなさを伝えたいと思いました。とりわけ、大石先生が、教室で子どもたちと初めて出会い、一人ひとりの名前を呼んでいく場面での子どもたちの表情がすばらしいです。大石先生だけでなく観客もまた、この子達の瞳が汚れないでほしいと感じるでしょう。社会環境が変わっても、そのときそのときに生きる人々へのメッセージがあり、時代を超えた名画だとあらためて気付かされました。

橋口監督-2.jpg―――木下監督の作品で、初めて映画館で観たのはどれですか?
長崎で高校生時代に観た『衝動殺人 息子よ』(1979年)です。ひとり息子を通り魔に殺された父親(若山富三郎)が、「犯罪被害者補償制度」という法津をつくろうと奔走し、最後は過労で死んでしまいます。そこまで息子を思う親の姿をみて、ちょうど両親が離婚した後だったこともあり、映画館で、未だかつてあれほど泣いたことはないほどに泣きました。木下監督は両親に愛されて育った人で、「そこまでやるのが(親の)愛情だ」とインタビューでも答えており、監督が自分の信じるままに本気でつくった作品は、何もわからない高校生にもちゃんと伝わるのだと実感しました。つくり手の人柄は作品にも出ますし、家族のためにやり遂げる話で、公開当時よりも今の方が、広く人々の心に通じるのではないでしょうか。

―――木下監督の作品の中でお薦めの作品を3本ほど挙げるなら?
『二十四の瞳』、『カルメン故郷に帰る』(1951年)、『楢山節考』(1958年)です。ほかにも、『お嬢さん乾杯』(1949年)や『破れ太鼓』(1949年)は、洒落ていて好きですし、人間としての強さを描いた『笛吹川』(1960年)もよいです。

―――木下監督の作品に出てくる役者さんで好きな方は?
女優なら高峰秀子、男優では佐田啓二です。観客が自分の気持ちを投げかけられるという安心感があります。高峰秀子はどんな役をやっても汚れず、すっとまっすぐな感じを失いません。

―――『ぐるりのこと』から4年経ちますが、次の作品の構想は?
 プライベートな話になりますが、『ぐるりのこと』の公開後、印税などをずっと盗まれていたことがわかり、弁護士に相談しても、裁判は多額な費用がかかるし、やめるよう言われ、泣き寝入りの状態が続き、疲れ果てた時に、この仕事の依頼がきました。何の落ち度もなく、平凡に日常を生きてきた人たちが、ある日いきなり、不幸に巻き込まれる。一方的に被害にあい、原状回復さえままならない。一度失ってしまった人生を取り戻すことの大変さを、身をもって感じました。木下監督は強い意思を持って映画をつくってきた人で、本物の映画人の仕事に触れて、僕も元気になりました。

次回作についてですが、今の日本には、振込詐欺でなけなしの年金を盗まれたお年寄りや、僕以上に理不尽な目にあって、どうしようもできない人がたくさんいます。だまされて家も人生も奪われ、絶望しかない中で、もう一度人生を始めることが、どれだけ大変なことか。どうやって希望を見出して、生きていったらいいのか。今の日本は、悪いことをした者勝ちのような社会で、悪を訴えたりすることもままなりません。これでも法治国家なのか、この国はどうなっているのかと、負の感情で生きていけない気持ちになります。こういった弱者の怒りを描きたいと思います。

日本では、戦争による大空襲や原爆で何十万人もの命が奪われました。それでも、戦後は、やっと自由になり、次は自分たちのための時代がくる、豊かな未来がくると信じて、皆頑張ってきて、今よりも元気だったのではないでしょうか。現在の日本は、バブルも体験して、お金の先には何もないこともわかっています。次の作品では、戦時中から2000年頃までを描き、震災、原発事故と幾つも重なった“今”という時代を、どうしたら生きていけるのかを描きたいと思っています。


橋口監督が『二十四の瞳』を観ることで、いろいろなことを感じ、考え、次回作への足がかりをつかまれたというのがとても印象的でした。いつもみごたえのある作品をつくりあげる橋口監督。新作を楽しみに待ちたいと思います。
さて、シネ・ヌーヴォでの木下惠介監督特集上映は9月7日まで続きます。橋口監督がつくられた予告篇も8月末には発表され、同館でも上映される予定です。ぜひこの機会に、日本人の強さ、弱さ、美しさ、喜びや悲しみの物語を通して、人間の真摯な姿を描き続けた木下監督の作品にスクリーンで浸ってほしいと思います。(伊藤 久美子)


生誕百年木下惠介監督全作品上映@シネ・ヌーヴォ【7/21~】はコチラ 

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ushijima-3.jpg『闇金ウシジマくん』記者会見 

ゲスト:山田孝之(左)と林遣都 場所:大阪・ホテル阪急インターナショナルにて


(2012年 日本 2時間10分)
監督:山口雅俊
出演:山田孝之、大島優子、林遣都、新井浩文ほか
2012年8月25日(土)~新宿バルト9、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、他全国ロードショー
公式サイトはコチラ
(C)2012真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん」製作委員会


累計600万部突破の大人気コミック「闇金ウシジマくん」が映画化され、主演の伝説の闇金・ウシジマ役の山田孝之(28)と、イベントサークル代表でウシジマから金を借りる男・林遣都(21)が、大阪市内でPR会見した。


ushijima-s5.jpg――ドラマから映画にステップアップしましたが―?
山田:ドラマの時から映画の話があって、山口監督とは「映画出来たらいいなあ」と話していた。テレビの30分だと制限が多いけど映画ならできることがあるんじゃないかと。監督が1枚の絵を持ってきたのがすごく「引き」の絵で、これはスクリーンじゃないと出来ないな、と思った。映画でないとやれないものが出来たと思う。未來(ミコ=大島優子)が暮らす団地に回収に行く場面などを見ると「ああ、映画になったんだな」と満足感があった。
林: (山田は)ウシジマとは離れたキャラで雰囲気が違った。だから、どう近づこうか、と思ったけど、僕の役がハードだったのでウシジマに頼らせてもらった。

――映画化に当たって、監督からは?
山田:ドラマで経験しているので、映画では特別演出はされていない。ウシジマは完成されている。顔の角度とか目線などはドラマで積み重ねていたので、そこに戻るような感覚だった。
林:コミック読んで、ルックスとか変えていこうと、監督と話して純というキャラの人間像を発見しながら作っていった。スケジュールも純役もハードだったけど、純のように必死なところに自分を追いやった。監督は僕にはスパルタで、ラストのシーンでは一晩中泣き叫んで、終わったら達成感があった。気持ちいい演出だった。

ushijima-s8.jpg――ウシジマという役については?
山田:機械っぽい人間、物体から音が出ている、異質な人間像をイメージして演じた。感情を表に出しているところでも、自分一人の内側のことでドライな感じがある。普通「なぜこうなったか」を考え感情をのせて演じるが、ウシジマの場合は掘り下げると人間ぽくなってしまうので、そこは一切考えず、理屈をそこに求めなかった。

――イベントサークル主催の小川純という“チャラ男”の役は?
林:楽しかった。都会にどんどん埋もれていってお金に困り、将来に悩んでいろんなことに頑張っている、フツーの若者でしょうね。最初は見たこともない世界観で気持ちが分からないところもあったけど、人目を気にしていろんなものから逃げている若者より、頑張っていてカッコイイと思った。

ushijima-s3.jpg――今までスポーツ専門のヒーロー像を演じてきたが、今回は逆の立場ですが?
林:気持ちは今までと変わらない。いろんな人達に触れ合えていい経験ができた。

――ウシジマは普通の人には悪人だが、原作やテレビがこんなに人気を集めるのはなぜ?
山田:いい悪いは決められない。善悪は関係なくて、見た人にはダークヒーローになる。闇金融は犯罪者、暴力も振う。だけど、未來(大島優子)には「親子だから金を払え」とか「家に帰れ」とまともな事を言ったりする。大事な当たり前のことを言うところが気持ちいい。こういう人物がウケるのは、世の中、欲求不満な人が多いからじゃないですか?

ushijima-2.jpg――自分を変えたいと思うことはある?
山田:人にどう思われてもいいと思っている。あまり嫌われると芝居を見てもらえなくなるから困るけど。イメージと違えば違うほど面白い。それだけお客さんをだませているということだから。今は恵まれたことに、いろんな仕事に使ってもらえている。人からどういうものが求められているのかを今は大事に考えているので、「自分がやりたい」というものはない。
林:面倒くさがりなところを変えたい。これまで忙しくしていて、この間休みもらった時に「何かしなきゃ」と思いながら、何も出来なかった。
山田:いいんだよ、動かなくて。そんな時は。

――山田さんは海外で評価されたりするが、モチベーションになる?
山田:映画作って見た人の話聞いて、その一連の動きがストレスになるけど、またストレス解消にもなる。でないと、こんな仕事してられない。期待されるのは嬉しいけど自分は変わりようがない。今の自分以上のものは出せない。

――自分で監督してみたい?
山田:今はそんな気はないが、どうしても撮りたいものが見つかればやるし、やりたいものがあったら動くと思う。


 ushijima-1.jpg 真鍋昌平原作のコミックの映画化。丑嶋馨(山田孝之)は「10日で5割」という法外な金利を取る闇金業者。泣きながら懇願する債務者に「借金まみれのヤツに明日が来るかどうかなんて分からない。今日返せ」と非情に取り立てる。
 そんな中、若さが売り物の鈴木未來(大島優子)は、高校卒業後も定職に就かず、目的もなく遊び暮らしている。母親はパチンコ狂いで、時に男も引っ張り込む。母の貸し金の取り立てにきたウシジマに「親子だから払え」と返済を迫られる。「楽に稼げる」“出会いカフェ”に入り浸るようになる。
 もうひとりの小川純(林遣都)は急速に拡大したイベントサークルの代表。携帯電話3台にアドレス3000件の“人脈”を誇り、若きセレブを夢見て2000人の大イベントを仕掛けるが、資金不足に悩まされ、ウシジマ相手にあまりに危険なゲームを仕掛ける。
 金と欲望を巡る究極に危険なエンタテイメントが、幕を開ける――。(安永 五郎)

Madagascar3-b500-1.jpg豪華、声優陣勢ぞろい!爆笑、初日舞台挨拶。アレックス演じる玉木宏、赤ちゃんライオンにメロメロ、場内がレインボーアフロ、一色に!

【8月1日(水)初日舞台挨拶レポート】

 パラマウント ピクチャーズ配給、世界46カ国でNo.1大ヒットを記録し、日本の夏休みファミリー映画大本命の3Dアニメーション大作『マダガスカル3』が、8月1日(映画の日)より、全国302館/540スクリーンにて公開しました!初日舞台挨拶には、日本語吹替声優の玉木宏さん(ライオン:アレックス役)、柳沢慎吾さん(シマウマ:マーティ役)、岡田義徳さん(キリン:メルマン役)、高島礼子さん(カバ:グロリア役)、おぎやはぎ・小木博明さん(キツネザル:キング・ジュリアン役)、おぎやはぎ・矢作兼さん(アイアイ:モーリス役)が登場。客席を埋め尽くした約600人の観客が劇中で登場する“動物による「アフロ・サーカス」”にちなんだ“レインボーアフロ”をかぶってゲストを迎えると、アフロが溢れかえった壮観な光景を見たゲスト陣からは感嘆の声が漏れました。また、“スペシャルゲスト”として、『マダガスカル3』の公開にちなみ、命名された赤ちゃんライオンの“アレックス”が登場、ゲスト陣は顔をほころばし目を輝かせ、映画さながらににぎやかで楽しい初日舞台挨拶となりました。


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【舞台挨拶概要】
日時:8月1日(水) 13:30~14:00 ※本編上映終了後
場所:新宿ピカデリー スクリーン1(新宿区新宿3-15-15)
ゲスト:玉木宏(32)、柳沢慎吾(50)、岡田義徳(35)、高島礼子(48)、
小木博明(おぎやはぎ・40)、矢作兼(おぎやはぎ・40)
赤ちゃんライオン“アレックス”/アレックス、ペンギンズ

Madagascar3-5.jpgまず、登壇した玉木さんは「シリーズ最高傑作です!3Dで観る価値があります!」と挨拶。
柳沢さんは「3Dの飛び出し方が半端ないから子どもたちはキャーキャー言うと思う」と3D技術の高さに感心し、おぎやはぎの矢作さんも「今日は、3Dで観てびっくりしたことを伝えに来ました!」と感銘した。また、アフレコのエピソードとして、岡田さんが「声を変えてメルマンを演じたので、気づかれないのが嬉しい」ことや
高島さんからは「(英語で歌うシーンが)テンポが早くて大変でした」とコメントすると、劇中に英語で歌うシーンについて、小木さんも「(歌うシーンがたくさんあって)先生が細かくて大変でした」や柳沢さんからも「本当に大変だった」とアフレコの苦労をのぞかせた。
“スペシャルゲスト”には『マダガスカル3』の公開にちなんで命名された、今年5月2日生まれたばかりの生後3ヶ月のオス、赤ちゃんライオンの“アレックス”が登場、玉木さんからは「僕(アレックス)が会いに来てくれました!」と驚きながらも喜びその愛らしさにゲスト陣からは「かわいい」と感激の声があがった。

最後は、オリンピック会期中ということもあり、玉木さんから「ロンドンオリンピックも盛り上がっていますが、マダガスカル3も同じロンドンを舞台に頑張っているので劇場に観にきてください」と“最高傑作”の太鼓判を押して舞台挨拶を締めくくるなど、映画さながらに、息のぴったり合ったチームワークを感じさせる、終始笑いが絶えない楽しくにぎやかな初日舞台挨拶となった。

◆映画『マダガスカル3』  ◆大ヒット上映中! 
◆© 2011 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

【スタッフ】監督:エリック・ダーネル/トム・マクグラス/コンラッド・ヴァーノン
【吹替版声優】アレックス:玉木宏、マーティ:柳沢慎吾、メルマン:岡田義徳、グロリア:高島礼子キング・ジュリアン:小木博明、モーリス:矢作兼
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン