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インタビューの最近の記事

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アニメならではの表現で魅了する新時代の“ジョゼ虎”に込めた希望とは?
『ジョゼと虎と魚たち』タムラコータロー監督インタビュー
 
 お聖はんの愛称で親しまれた田辺聖子が大阪を舞台に描いた青春恋愛小説の「ジョゼと虎と魚たち」。2003年に妻夫木聡、池脇千鶴で実写映画化もされた『ジョゼと虎と魚たち』が、初のアニメーション映画として、12月25日(金)より全国ロードショーされる。
 

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 監督は『おおかみこどもの雨と雪』助監督や『ノラガミ』シリーズの監督を務めたタムラコータロー。脚本は桑村さや香(『ストロボ・エッジ』)が手がけた。新進気鋭のスタッフが集結し、“新たなジョゼ”を構築。原作とも実写版とも違う現代版の主人公恒夫は、留学してメキシコの幻の魚を一目見るために、アルバイトを掛け持ちしながら海洋生物学を学ぶ努力家の大学生。ジョゼの声を演じる清原果耶と恒夫を演じる中川大志が、不器用ながらも距離を縮めていく二人を表情豊かに体現している。梅田界隈やあべのハルカス、須磨海浜公園と関西人におなじみのスポットがモデルになって続々登場するのにも注目してほしい。
 本作のタムラコータロー監督にお話を伺った。
 
 

 

■田辺聖子さんの原作から感じた「不安を乗り越えた後の希望」 

―――元々小説をアニメ化したいと考えがあったそうですね。

 

タムラ: KADOKAWAの方から、たくさん映像作品を作っているにも関わらず、文学作品をアニメ化したものは数えるほどしかないので、社内の作品からアニメ化しようという動きが元々ありました。僕もテレビシリーズがちょうど終わり、映画をやってみたいと思っていたところだったので、KADOKAWAのプロデューサーとお会いして、まずは原作を探すところから始めました。たくさん小説を渡された中の一つがこの「ジョゼと虎と魚たち」で、そこで初めてこの作品に出会ったのです。
 
―――実写版ではなく、原作本が初めてのジョゼとの出会いであったということは、純粋に田辺聖子さんが書かれた「ジョゼと虎と魚たち」に強く惹かれたということですね。
タムラ:すごく惹かれるものがありました。短編ですし、ある意味中途半端な感じで終わってしまうのですが、逆にそこが良かった。この後に何か待ち受けているのではないかと思わせる終わり方です。ジョゼはどこかでこんな関係はいつまでも続くはずがない、今が良ければそれでいいと思っているのですが、内心は不安だと思うのです。その要素だけを取り出すと、ネガディブな辛い話に陥りがちですが、大きな物語を考えると、その不安を乗り越えると本当の幸せが待っていたりする。作り手だからかもしれませんが、そこに希望を感じたのです。この作品は前向きな形で終われるのではないかと思った。だから脚本の桑村さや香さんにも、前向きな形で終わりたいとお願いしましたね。
 
―――なるほど、そこは実写版との大きな違いですね。桑村さんと新しい『ジョゼと虎と魚たち』を作るにあたり、現代を反映させたキャラクター造詣や、原作のその後までを描いていくストーリー展開などをどのように作り上げていったのですか?
タムラ:桑原さんとは、恒夫はジョゼほどパンチの強いキャラクターではなく、すぐ身近にいるようなリアルな男の子を象徴しているねと。今の大学生の話を聞くと、割と夢が可視化されていて、結構勉強して真面目。その印象からすれば、今の恒夫はこんな感じではないかというところからスタートしました。特殊な性格をした女の子と身近にいそうな男の子が出会うのがこの話の良さですから。その際に、共通して好きなものがあればお互いに歩み寄りやすいということで、海が好きだという共通事項を作り、それならば恒夫をダイバーにしてみようという感じで話が見えてきました。
 
 
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■追加取材を敢行、都市も下町も身近にある今の大阪の魅力を映し出す。

―――恒夫がイマドキなのに対し、ジョゼが祖母と住んでいた家は、昭和な雰囲気が漂っていましたね。
タムラ:時代に取り残された雰囲気を出したかったので、あえてスマホなどを持たせないようにしています。ジョゼに社会性が身についていく話にしたかったので、祖母と二人だけで暮らしている感じを出そうとして、あのちょっと不思議な家が出来上がりました。大阪の都心部は開発が進んでいる一方、数駅離れると身近なところに下町があったりするんですよね。都会に近いのにこんな下町があるというのが大阪の魅力のひとつで、ジョゼの家は大阪ではあってもおかしくないようなリアルな感覚ですよね。 
 
―――大阪が舞台ということで、梅田やあべのハルカス、海遊館に須磨海岸など関西の人には馴染みのある場所がモデルとして登場していますが、かなりロケハンをされたのですか?

 

タムラ:事前にかなり下調べした上で1泊2日の弾丸ロケハンを何度か行いました。とにかく写真を撮って、あとから使えるところを探していくことの繰り返しでした。大阪にいるスタッフの知り合いに写真を撮ってきてもらったり、カメラマンだけ行ってもらったり、何度も写真を撮ってもらっては吟味を重ねました。大阪は道頓堀を背景に使われることが多いのですが、それでは今の大阪は伝わらない。新しいところも古い町並みも両方描くように心がけました。「梅田イス」なんかは映画を作っている時に出来上がったので、これは使えるかもと追加撮影してもらい、あとから書き足しました。他にも大阪はすごい勢いで変わっていく場所もあるので、どこまで最新のものを反映させればいいのか悩みましたね。須磨海岸も追加取材をすると街灯が設置されていて、あわてて後から足しました(笑)
 
 
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■好きになる過程を追体験できる作品に。

―――ジョゼと、彼女の日常生活の相手をするアルバイトの恒夫が、最初はジョゼの反発を食らいながらも、だんだんとジョゼの内面がわかり、お互いに信頼し合うようになる過程が細やかに描かれています。
タムラ:この作品で大切にしたのは、お互いが好きになる過程をちゃんと丁寧に書いてみることでした。恋愛映画は好きになってからを書くことが多いのですが、どうやって好きになるのかを追体験できる作品になるといいなと思っていました。誰がどの時点で本気で好きになったのか、それを考えるのも物語の醍醐味になっていればうれしいですね。
 
―――初めて海に行くエピソードでは駅で切符を買えずにジョゼが帰ろうとし、家にずっと閉じ込められていたジョゼと社会との壁が浮き彫りになりますが、車椅子ユーザーの方にも事前に取材されたそうですね。
タムラ:生活の仕方に関しては調べてもわからないことが多く、実際ご自宅までお伺いし見たものを取り入れさせていただきました。ジョゼの部屋に素敵なベンチを置き、そこに捕まってベッドに登るといった芝居なんかは取材のおかげですね。ただ実際に車椅子で暮らしている方々というのは当然ながら全員同じ生活スタイルではないわけです。一人一人障碍の度合いも異なりますし、性格や好みによってもちがう。そこで車椅子ユーザーのためのファッションアドバイスをされている方にもヒアリングさせていただきました。幅広い車椅子ユーザーの生活スタイルを教えていただいたことで、ジョゼならばこんな生活を送っているのではないかというのがようやく見えてきた感じです。
 
 
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■大人っぽすぎる清原果耶に課した、ジョゼの精神的な幼さを表現する声の演技。

―――ジョゼの声を演じる清原果耶さんに、「もっと幼く、小学生のように」と演出をされたそうですが。
タムラ:清原さんはまだ10代にも関わらず30代の役まで演じたことがあるんですよね。それくらいとても落ち着いていて大人っぽい。オーディションでの清原さんの演技がすごく良くて、特に後半のジョゼにぴたっと当てはまる感じでした。逆に恒夫と出会う瞬間はもっと精神的に幼い感じを出し、前半と後半のギャップを表現したかったのです。対人関係を学んでいなかったジョゼは子どもっぽい接し方しかできなかったので、そのジョゼの喋り方を大人っぽい清原さんに理解してもらうために敢えて「小学生ぐらい」と伝え、精神的に幼い感じを出してもらいました。それぐらい元気を絞り出してもらった方が前半のジョゼにはまるのではないかと。どれぐらいギャップを出すかを試行錯誤するために、後半を録り終えてから、前半をもう一度録り直したりもしました。そうすることでジョゼの成長が可視化でき、前半と後半の差がジョゼ、しいては清原さんの演技の魅力になったと思います。
 
―――ジョゼ役の難しさがよくわかります。大阪出身の清原さんですが、ジョゼが喋る関西弁は、日常の関西弁より少し癖が強かったですね。
タムラ:ジョゼはおばあちゃん子なので、少し古い関西弁を喋る設定ではあるんですね。「アタイ」なんて一人称、最近の20代はほとんど使わないでしょうから。とはいえ少し癖のある関西弁は田辺聖子さんの魅力の一つなので、そこを削がないように注意を払っています。あと大阪といっても地域によって訛りが大きく異なるんですよ。清原さん自身が大阪出身だということもあり、ジョゼに魂を吹き込むためにも清原さんが納得しやすい関西弁で喋ってもらった方がいいと思い、最終的にはその方向で調整しました。
 
 
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■恒夫のバランスの最後のピースは、中川大志の紳士的な声。

―――一方、中川大志さんが声を演じた恒夫は、優しさが感じられてジョゼといいコンビネーションでした。
タムラ:すごくはまったと思います。先ほどの改札のシーンで少しジョゼの背中を押さなくてはいけない時に、恒夫にはある程度リーダーシップを取りつつ、上から目線にならないというバランスを求めていて、そのバランスの最後のピースが中川君の声の演技でした。彼が本来持っている紳士的な感じが非常にしっくりきましたね。
 
―――二人のターニングポイントになる須磨海岸のシーンについてお聞かせください。
タムラ:まずは大阪の人が海を見に行く時、どこに行くのかで迷いました。知り合いにヒアリングすると須磨のあたりと言われ、大阪の人が海を見に神戸まで行くことが意外に感じたのですが、大阪の話に留まるのではなく、大阪に住んでいる人の話にするとしっくりくる。そう思って須磨海浜公園を選びました。ここは公園に入ってから浜辺が広く、海辺までは距離がある。車椅子では砂に車輪を取られて簡単には近づけませんから、それが脚本のシチュエーションに自然にはまったというのもあります。また、アニメでは海が狭く見えてしまうことがあるため防波堤を省略することが多いのですが、今作ではリアルな話になると思ってあえて描いてもらっています。駅から商店街を通るのも地図上では少し回り道なのですが、道程の景色にアクセントがある方がジョゼが目移りして楽しんでいる様子を伝えられるのではないかと。変なクジラのオブジェに気を取られるジョゼも面白いですしね。
 
―――二人がそれぞれの壁を越えようとする非常に重要なシーンでは劇中画も登場します。淡い、絵本のようなタッチで感動を誘いました。
タムラ:本物の絵本作家の方にお願いしたかったんです。ジョゼの絵を担当してくださった松田奈那子さんはほどよく抽象的な絵を描かれる方で、色彩にとても魅力があり、これならジョゼの描いた絵にしっくりくると思いました。絵本のシーンに関しては発注時は脚本だけしか用意せず、まずは松田さんに構図を作ってもらうところからスタートしました。「松田さんの思うジョゼならどんな絵を描きますか?」と問いかけながら作っていった感じですね。
 
―――今回の『ジョゼと虎と魚たち』は原作や実写版よりも、ジョゼと恒夫の二人が単なる恋愛関係というより、お互いに夢に向かい、そして自立しようとしている。すごく成熟しているなと感じずにはいられませんでした。
タムラ:原作が20代前半の絶妙な時期を描いているので、そこは変えずに今の20代ならどんな恋愛をするのかからスタートしました。アニメだと恋愛物はティーンになりがちなのですが、そうするとどうしても親が出てくる。今作では20歳を超えた恋愛物語なので親は出さずにあくまで当事者が解決する問題として恋愛を描いてみました。そこが大人っぽく見えたのかもしれません。
 
 
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■ジョゼが社会性を身につけるために重要だった友人、花菜の設定

―――ジョゼが自立を目指す姿はこの作品の見せどころですね。
タムラ:ジョゼには社会性を身につけてほしかったんです。恒夫はジョゼにとってはアルバイト上の付き合いだし、異性なので微妙な距離感がある。ともすれば依存にもつながるかもしれませんし、恒夫と一緒に外に出ただけでは自立したとは言えないと思うんです。恒夫以外で友人関係ができると彼女自身の自立につながるはずで、ジョゼに友達を作ることは脚本の桑原さんにもお願いしていました。だからジョゼの自立の象徴として大事にしたのが図書館司書の花菜だったのです。
 
―――ありがとうございました。最後にアニメーションだからこそ表現できたこと、取り組めたことを教えてください。
タムラ:ジョゼの空想シーンで、人魚になって泳いでいるところはアニメらしい表現ではありますね。ただそれはどちらかと言えばわかりやすい表面的なアニメらしさです。むしろジョゼみたいに強烈な人が本当にいるかもと思えるバランスを探るのは、アニメの方が得意なのではないかと思っていました。周りをしっかり書けばジョゼをリアルに感じられますし、車椅子の女性であってもそこに目がいきすぎないバランスになるのではないか。アニメならではの時間を圧縮した表現や、一つ一つの表現のメリハリを使うことでジョゼをすごく魅力的に描けるという期待感を抱いて取り組んでいました。
 
―――アニメならではのユーモアで重くなりがちな題材を魅力的に表現していましたね。
タムラ:車椅子ユーザーの方にインタビューした時、同じ境遇の人が出る映画をご覧になるかとお聞きすると「見ないです」と即答されたんです。逆にディズニーやジブリのような作品はたくさん見るとおっしゃっていたのが印象的でした。それを聞いた時にジョゼは車椅子ユーザーの方にも見てもらいたいという希望が僕の中に生まれたんです。登場人物にご自身を重ねた時に希望を持てる。そのためには軽やかに描くことが重要でした。
(江口由美)
 

<作品情報>
『ジョゼと虎と魚たち』(2020年 日本 98分)
監督:タムラコータロー  脚本:桑村さや香
原作:田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』(角川文庫刊)
声の出演:中川大志、清原果耶、宮本侑芽、興津和幸、Lynn、松寺千恵美、盛山晋太郎(見取り図)、リリー(見取り図)
12月25日(金)より全国ロードショー
公式サイト → https://joseetora.jp/
(C) 2020 Seiko Tanabe / KADOKAWA / Josee Project
 

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「トゥームレイダー」「エクスペンダブルズ2」

サイモン・ウェスト監督最新作

そこは、世界で最も熱く最も危険なテーマパーク。

 
「トゥームレイダー」「エクスペンダブルズ2」の監督が放つ、灼熱のパニック・アクション超大作『ボルケーノ・パーク』が11月20日(金)より全国ロードショー致します。
 
世界初の火山テーマパーク「天火島リゾート」。そこでは、活火山を間近で感じ未体験のスリルが楽しめる。しかし、賑わう人々の真下では、マグマが目覚めようとしていた。そして今、史上最大の大噴火の時が近づく―。迫り来る火砕流!!降り注ぐ火山弾!!孤島のテーマパークが、紅蓮の地獄と化す―。
 

ハリウッド随一のアクション映画の名匠とアジアを代表する豪華キャストが集結!!


volcano-pos.jpgメガホンをとるのは、監督デビュー作の『コン・エアー』でいきなり世界的大ヒットを記録し、その後も『トゥームレイダー』『エクスペンダブルズ2』等で成功を収めたアクション映画の名匠サイモン・ウェスト。主演は、数々の受賞歴がある中国の演技派俳優ワン・シュエチー。そして、『スカイスクレイパー』での女暗殺者役でドウェイン・ジョンソンと対決したハンナ・クィンリヴァンがヒロインを演じる。
 
アクション映画の名匠サイモン・ウェストの初めての災害映画であり、初となる中国で手掛けた本作。中国での撮影を経た感想などを語るインタビューが到着した。


 

 

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Q:『ボルケーノ・パーク』は、あなたにとって最初の災害映画ですね。通常、あなたが作るアクション映画とどう違いますか? 
 
災害映画の場合、災害を背景として良い人間関係を描き出さないといけないんだ。観客は、危険な状況に置かれている人々に対して関心があってこそ、そこで展開するアクションを見たいと思うものだ。だから、本作の中心にあるのは父親と娘の関係で、とても強い絆があって感情に訴えるんだ。炎が燃えさかるし、火山も爆発するし、車が溶岩に追いかけられたりするんだけど、中心にあるのは、人の心を揺さぶる家族の物語なんだ。だから、災害映画というと、炎が炸裂するスリル満点なものを創造するけど、その中に素晴らしい人間模様があってこそ楽しめるんだよ。
 
 
Q:外国語の映画を監督してみて、いかがでしたか?
 
外国語で仕事をするのはかなり苦労するだろうと思っていた。でも思ったほど大変ではなかった。なぜなら、感情というのは言語を超えるし、アクションも同様だから。ワクワクするような内容ならば、言語にかかわらずワクワクするし、感情に訴えかける内容ならば、言語に関係なく、感動する。中国語の映画の監督は、思ったより簡単だったよ。とても経験のある有能な俳優たちで、感情がうまく表現されていることがよくわかる。セリフも、僕には英訳文があったから、どんなセリフかわかる。でも細かい部分に関しては、すばらしいアシスタントたちや通訳の人たちの助けを借りて、感情や態度の微妙な違いを演出した。でも英語を話せる俳優たちとは、直接、話しができたから助かった。大体は、シーンに関して最初に僕が英語で説明して、それから彼らのそのシーンに対する理解と、どんな演技をするかを僕に英語で話して、その後で、彼らが中国語で演技した。中国語しか話さない俳優の場合は、通訳を通して同じ会話をした。時間はかかるけど、実際にはそんなに大変じゃないんだよ。
 
 

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Q:中国語の映画作品に関わるようになったきっかけは?
 
とてもエキサイティングなきっかけだった。中国の映画産業は今、急速に発展していて、それ自体がとてもエキサイティングなんだ。こういう急成長を遂げている産業に関わるのはいつの時にも楽しい。欧米の業界はマンネリ化していて、少し低迷しているところがあるから、あまり期待されていないんだ。でも、ここ中国の映画産業に関しては期待が大いに高まっている。だからその産業や、偉大な映画を作ることに対してみんなが情熱を傾けている環境で仕事ができるのは、最高の気分なんだよ。
 
 
Q:中国の映画業界に関心を抱いている外国の映画製作者たちにアドバイスはありますか?
 
ハリウッドでの仕事と、とても似ているよ。でも違いは、さっきも言ったように、関わる人々から感じられる熱意とエネルギーだ。だから、欧米の映画監督には、ぜひここにきて仕事をするように勧めたい。自分の仕事ができることをとても喜んでいる人たちと一緒に仕事ができるわけだからね。彼らは、映画製作に携われることを恵まれていると考えているんだ。映画産業で働けることは特権で、中国の制作スタッフや俳優たちは、それを実感している。自分の仕事に対して感謝の気持ちがあるんだよ。そういう人たちの近くにいられることは素晴らしいことなんだ。欧米の監督にとって、そういうポジティブな環境で働くのはとても健全なことだと思う。
 
 
Q:中国で独自の原作コンテンツ(IP)を開発することは、アメリカより簡単ですか?
 
ああ、世界中にあらゆる原作コンテンツが存在していて、アメリカの原作コンテンツの多くはもうよく知られている。だから、ここに来て、新しい原作コンテンツに触れられてとても新鮮だ。中国の観客は、本やグラフィック・ノベル、あるいは前の映画作品とかで知っているかもしれないが、僕にとっては新しい。だから、全く新しい素材の宝庫なんだよ。
 

成長目まぐるしい中国映画産業と、ハリウッドが誇るアクション映画の名匠サイモン・ウェストがタッグを組み放つ、灼熱のパニック・アクション超大作『ボルケーノ・パーク』は11月20日(金)より公開。
 

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【STORY】
火山学者のタオは、「天火島」と呼ばれる火山島を訪れ調査にあたっていた。しかし、その最中に突如火山が噴火し、妻が犠牲になってしまう。それから20年後―。実業家のハリスによって「天火島」に一大リゾートが建設される。その触れ込みは、「活火山の上に建つ世界初の火山テーマパーク」だった。タオはその危険性に警鐘を鳴らすが、その一方でタオの娘シャオモンは、父に抗いハリスの元で火山学者として働いていた。待望のオープンを控え出資者たちがパークを訪れる中、観測チームがマグマの不穏な動きを発見する。シャオモンはパークの閉鎖を訴えるが、ハリスは全く取り合わない。時を同じくして、噴火の前兆を察知したタオも「天火島」へと向かっていた―。
 
出演:ワン・シュエチー『孫文の義士団』、ハンナ・クィンリヴァン『スカイスクレイパー』、ショーン・ドウ『最後のランナー』、ジェイソン・アイザックス『ハリーポッター』シリーズ
監督:サイモン・ウェスト『トゥームレイダー』『エクスペンダブルズ2』 
撮影:アラン・カウディージョ『ガン シャイ』
音楽:パイナー・トプラク『キャプテン・マーベル』、
編集:ポール・マーティン・スミス『STAR WARS エピソードI/ファントム・メナス 3D』、
主題歌:「我是如此相信」ジェイ・チョウ
2019年/中国映画/中国語・英語/94分/シネスコ/5.1ch/字幕:江﨑仁美
原題:天火/英題:Skyfire/提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム 映倫G
© 2020 Meridian Entertainment (Foshan) Co. Ltd. All Rights Reserved  
公式HP:volcanopark.jp
 

2020年11月20日(金)~シネ・リーブル梅田、イオンシネマ京都桂川、イオンシネマ加古川 他全国ロードショー


(オフィシャル・レポートより)
 
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人材育成と実験の新レーベルで「メジャー映画では許されないことをどこまで追求できるか」
『ビューティフルドリーマー』本広克行監督インタビュー
 
 日本映画界の鬼才監督による野心的な企画と若い才能がタッグを組み、低予算で制約のない自由な映画づくりを目指す現代版ATGとも言える新レーベル<<シネマラボ>>の第一弾作品『ビューティフルドリーマー』が11月6日(金)よりシネ・リーブル梅田他にて絶賛公開中だ。
監督は『踊る大捜査線』シリーズから『サマータイムマシン・ブルース』『幕が上がる』まで、ヒットメーカーでありながら多彩な作品に取り組んでいる本広克行。押井守の脚本「夢見る人」を大学の映画研究会(映研)を舞台にした物語として映画化。いわくつきの台本の映画化に挑む映研メンバーの奮闘ぶりから、モノづくりの楽しさが伝わってくる青春映画だ。リーダー的存在で監督としてメンバーを引っ張るサラ役には自身も大学時代から映画サークルで映画を撮り、多彩な活動を行なっている小川紗良。他にも今注目の俳優から劇中劇に登場するベテラン俳優が本人役で出演。そして映画研究会の先輩役サイトウタクミで斎藤工も参加している。
 本作の本広克行監督にお話を伺った。
 
 

■「次は自分の番」自身のキャリア形成から感じた映画界の人材育成と、まず取り組んださぬき映画祭。

―――コロナ禍で映画監督自身が様々な活動や今までの枠に捉われない映画製作活動を立ち上げつつある中、それ以前にメジャー映画とインディペンデント映画の間に位置するような新しい監督絶対主義のレーベルを立ち上げ、作品を公開するのは非常に注目すべき動きだと思います。<シネマラボ>を立ち上げるにあたり、どのような問題意識をお持ちだったのですか?
本広:『踊る大捜査線』シリーズのようなビッグバジェットで、プロデューサーが10人もいて、芸能界のありとあらゆる人がキャスティングされるような映画を我ながらよくできたなと思うし、もう終わってもいいと思うぐらい達成感がありました。ただ自分が映画を撮ったりドラマを演出できたのは、引っ張り上げてくれる先輩たちがいたからであり、今度は自分がその立場になる番です。『海猿』の羽住英一郎をはじめ、後輩たちが皆ヒットメーカーになってきましたが、自分が所属していた会社(ROBOT)の直系の後輩ではなく、日本映画界全体を見渡して、素晴らしい才能を持ちながらも彷徨っている人たちがたくさんいるはずだと思ったのです。
 
―――監督という仕事はある意味孤独な職業ですから、かつての撮影所システムとは違い、先輩に教えてもらうということがしにくい環境になっていますね。
本広:映画界での人材育成について思いを巡らせていた頃、偶然山田洋次監督にお会いし、昔は小津監督や黒澤監督が映画サロンを作り、そこから新人を抜擢したり、映画の文化度を上げていったというお話を聞いたのです。そこで自分に何ができるかと考えたところ、思い浮かんだのが映画祭でした。当時現役の映画監督で映画祭を立ち上げたのは僕が最初だったと思います。さぬき映画祭では高松に色々な映画人を呼び、若い俳優たちと合わせ、そこに来れば仕事が見つかるような場所になっていきました。ちょっと落ち着いて周りを見渡すと、行定さんをはじめ、プロデューサーの方や俳優の方なども地方で次々と映画祭を立ち上げる動きが起こってきて、これなら大丈夫だなと思ったのです。
 
 

■大林監督に言われていた言葉、「君たちの世代でもう一度ATGのような映画を作れ」

―――確かに映画祭は映画人同士の交流から新しいプロジェクトや仕事が生まれる面も大きいですね。
本広:映画祭には7年間携わり、その後に構想しはじめたのが<シネマラボ>です。今、自主映画の制作費は200~300万円が相場で、一方東宝や東映、松竹などからオファーをいただくビッグバジェットの映画は2~3億円ぐらいです。やはり今まで低予算でしか映画を作ってこなかった人がいきなりビッグバジェットの映画を作るのはしんどいので、中バジェットのものを<シネマラボ>という新レーベルを掲げて作っていってはどうかと。また僕が大きな影響を受けている大林監督によく言われていたのが「君たちの世代でもう一度ATGのような映画を作れ」。
 
―――大林監督からそんな声かけをされていたんですね。
本広:僕にとっては神様みたいな人ですから、大林さんに褒められようと思って(笑)「お前、よく頑張っているな」とか、「お前の映画、面白かったぞ」といつも僕の頭を子どもみたいに撫でてくださるんですよ。山田監督の映画サロンにも参加しているのですが、山田監督は最近の若者はなかなか動かないとボヤかれる一方、僕のことを可愛がってださり、ベルリン国際映画祭への参加を断っても、さぬき映画祭には来てくれる(笑)やはり尊敬している先輩たちから言われたことを実行していきたいし、若者たちを引き上げる場を作ろうと今回は押井守さんに原案を書いていただきました。そこからは結構時間がかかりましたね。
 
 
 
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■小川沙良との出会いで「監督役がここにいる」と確信。

―――押井さんに依頼されたのはいつ頃だったのですか?
本広:みんなで一緒に湯河原の温泉に行って企画会議をした時、僕は文化祭の前日を何度も何度も体験する話にしたいと伝えると、押井さんが書いて下さったのは軽音楽部の部員が何度も文化祭の前日に戻る話だった。僕の構想と似てはいるのですが、映画研究部なら僕の経験も活かせるし、その頃に小川沙良さんと出会い「監督役がここにいる」と思った。そうやってタイミングが合うまで2年ぐらいかかりましたね。
 
―――さぬき映画祭で小川さんは監督作を持参したのですか?
本広:早稲田大学の映研に監督をしている小川沙良さんがいるというのは当時業界内でも有名だったんです。しかも小川さんは是枝ゼミで、是枝さんからも話を聞いていたので、僕からオファーしたところ快諾していただきました。監督役のエチュードができる人はなかなかいないでから、小川さんがいなければ映画づくりは難航していたと思います。
 
 

■ずっと“ビューティフルドリーマー”の人たちの物語。続編を作り、続けていきたい。

―――サラ役の小川さんは、聡明かつ決断力のある見事な監督ぶりでした。昔の映研は70年代の香りを引きずっているような異質な雰囲気がありましたが、本作の映研はとても明るい雰囲気ですね。
本広:早稲田大学の映研をはじめ、今は女子部員がクラブを引っ張っているんですよ。僕らの時代はモスグリーンの汚いジャンパーを羽織った男子部員がぞろぞろいたのですが、今の男子部員はもっぱらアッシー的存在ですよ。それもおもしろいなと思って、本作では描ききれなかった部分は「続編を作らせてください」と会社にお願いしているところです。ずっと続けていきたいし、この作品はずっとビューティフルドリーマーの人たちのお話でもあります。僕らも一つの映画が公開されても、また次の映画を作ってとずっと続いていくわけですから不思議な社会人だし、ビューティフルドリーマーってこういうことなのかなと。続編を作る時、小川さんが多忙を極めて出演するのが難しくなったら、次の世代の映研を育てればいい。小川さんには本作の斎藤工さんのような先輩部員として1日だけ撮影に参加してもらい、続けていくこともできるなと思っているんです。
 
―――セリフを書かず、エチュードの手法を取り入れての撮影だったそうですが、従来のビッグバジェット作品とは違う作り方を試みての感想は?
本広:演劇の演出をやっていることもあり、そんなに違和感はなかったですね。脚本どおりだとつまらないとか、セリフが停滞してしまうとき、どうやっておもしろくさせようかと考えてエチュードを取り入れることもあります。『UDON』(06)では実際にうどん屋で働いている人に、普段しゃべっていることを言ってもらい、お芝居をしていないドキュメンタリー的な作り方になったのですが、そういう演出のテクニックを今回は全て使えたのではないでしょうか。書かれたセリフを的確に言うのもおもしろいけれど、「こんな脚本なのに、こんなに面白くできるの?」というところを目指したいし、それを目指していつもやっていますね。
 
―――確かに、セリフのやりとりに躍動感がありました。
本広:若者の言葉は体の動かし方によって出てくる言葉も違ってくるので、それをなるべく生の状態で収録しています。今までの映画はガンマイクで上から音を拾っていましたが、最近は演者全員にワイヤレスマイクを付け、録音部がミキシングをするやり方が主流です。今回は録音部に若手を投入し、やる気を出しているので、次はビッグバジェットの映画に登用し、技術部門の新人育成も行えました。もちろん映画はヒットしてほしいですが、<シネマラボ>ですから俳優や映画に関わる各部門の人材育成の場でもありたい。自分が思っている以上に映画界はそう急には変われない。でも「実験ですから」と言うと色々な機材を貸していただき、様々なサポートをしていただけたのはうれしかったですね。
 
―――小川さんをはじめ、キャスティングは本広監督が直接オファーをするという形が多かったそうですね。
本広:全員思い通りのキャスティングできると、大ヒット作にはならなくても『サマータイムマシン・ブルース』(05)のようにずっと愛される気がします。『幕が上がる』(15)のメンバーとは今でもお付き合いがありますし、みんなで考えながら作った作品はお仕事という感じではなく、すごく愛情深いものになっていますね。
 
 
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■メジャー映画では許されない、ATG作品のようなメタ構造をどこまで追求できるか。

―――一見青春映画ですが、メタ構造にメタ構造が重なって、もう一度観たくなるような映画ファンを唸らせる奥深さがあります。ここまでメタにメタを重ねたのはなぜですか?
本広:メタ構造ものが好きなんです。演劇でいきなりひっくり返ったり、急に何かが起こったと思ったらそれもお芝居だったりするようなどんでん返しも大好きなのですが、映画ではなかなか急に空気は変わるようなものができない。どうすれば映画で物語を逸脱することができるのかをずっと考えていました。メタ構造は調べれば調べるほど深いところに入っていくんですよ。
 
例えば押井さんはアニメで初めてメタ構造を実践した人で、僕はそれを学生時代に見て大きな衝撃を受け「押井信者」になったのですが、その押井さんは演劇から影響を受けたそうです。それで寺山修司さんの映像や本に触れていくうちに、作品のことを考えることはおもしろいなと思えてきました。起承転結のある映画はずっとやってきたし、ちゃんと作れるのだけれど、そうではないものを作りたい。今村昌平さんの学校に行っていたのですが、今村さんも『人間蒸発』(67)でそういう作品を作っていて、今村さん自身が映画に登場し「このお話は全部嘘である」と言い放つと、セットがバラバラと崩れていくんです。本当に衝撃的でしたが、当時のATG作品は構造をぶっ壊すというコンセプトなので、普通のメジャー映画では絶対許してもらえないことができた。今のメジャー映画ではメタ構造といってもどうしても緩くなってしまうので、そこをどこまで追求できるか。今回はその面でも実験的な試みをしています。
 
 

■映画人の交流の場が大事。もっと混じり合い、新しい才能を発掘したい。

―――俳優の名前と役名も同じですし、色々な垣根が曖昧なのも魅力的ですね。
本広:大林監督の影響でもあります。遺作の『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(20)はご自身も出演されているし、物語でありながらも僕らに「戦争を起こすな」という遺言を伝えているようにも見える。本当にすごいです。他の大ベテランの皆さんも本当に元気で僕の作品を「普通だな、もう見飽きたよ」とバッサリ。あまりにも尖ったものは作りにくいけれど、例えばこの作品を見て疑問を感じた人がググり、また違う感想と出会って、感想が育っていくという点でもこの作品の実験的側面を感じます。今、是枝さんが映画人の交流の場を作ってくださっていますが、これは本当に大事なんです。どうすれば皆がもっと混じり合うのか。小学生ぐらいでもすごい才能がいますし、そういう才能を発掘したいし、もっと外向きの考え方でありたい。今はそういう思いですね。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ビューティフルドリーマー』
(2020年 日本 75分)
監督:本広克行
原案:押井守『夢みる人』  
出演:小川紗良、藤谷理子、神尾楓珠、内田倭史、ヒロシエリ、森田甘路、伊織もえ、かざり、斎藤工、秋元才加、池田純矢、飯島寛騎、福田愛依、本保佳音、瀧川英次、齋藤潤、田部文珠香、升毅
11月6日(金)よりシネ・リーブル梅田他全国順次公開
配給:エイベックス・ピクチャーズ
公式サイト → https://beautifuldreamer-movie.jp/
©2020 映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会 
 
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あなたの常識と私の常識は違う。コミュニケーションの壁に向き合うため自身にキャメラを向けて。
『友達やめた。』今村彩子監督インタビュー
 
  コロナ禍でリアルに友達と会う機会も減り、改めて本当に会いたい友達って誰だろうと思い浮かべたり、どこか人恋しくなっている人も多いのではないだろうか。11月13日(金)から京都シネマ、11月14日(土)から第七藝術劇場、今冬元町映画館他全国順次公開される『友達やめた。』は、友達とのコミュニケーションの壁に全力で向き合う姿を映し出すドキュメンタリー映画だ。
 
 監督は、自ら自転車で日本一周に挑む様子とその葛藤を描いたドキュメンタリー『Start Line』(16)の今村彩子。生まれつき耳のきこえない今村監督が、自作の上映会で知り合い友達になったアスペルガー症候群のまあちゃんとの関係性を自身のキャメラで映し出す本作では、二人の日常や旅行での出来事を通じて、お互いに対する気持ちの変化や、距離感に対する本音が次第に溢れ出す。友達、家族、夫婦とどんな関係でも一番のベースになるコミュニケーションについて考えるきっかけが詰まった一本。障害を作っている原因や、それを超えるきっかけについても考えたくなる作品だ。
本作の今村彩子監督に、お話を伺った。
 

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■映画づくりの原点は自身の葛藤。

――――本作を撮ろうと思ったきっかけは?
今村:まあちゃんとはお互いに本好きで、家も近いし、年齢も近い。さらに二人とも独身という共通点があり、最初に親しくなった時は話も合うし、すごくいい友達ができたと思ってうれしかった。だけど、一緒に過ごしている時間が長くなってくると、えっと思うことや自分にとって嫌なことをされることが増え、その度に「彼女はアスペだから仕方がない」と気にしないようにしていました。それが我慢できなくなって喧嘩になることもあり、そんな葛藤を一人で抱えているのが嫌になりました。だからみんなを巻き込んで、この映画を作りました。どうしたらまあちゃんと仲良くなれるかを考えたかったのです。
 
――――前作の『Start Line』に続いてのセルフドキュメンタリーで、再び自身にカメラを向けていますが、ドキュメンタリーの被写体として自分にカメラを向けるのは勇気がいる作業では?
今村:『Start Line』の時は初めてのセルフドキュメンタリーだったので、すごく勇気が要りました。でも、今回は私よりもまあちゃんの方が大変だったと思います。まあちゃんが最初「いいよ」と言ってくれた時は私が途中で映画制作をやめるだろうと思っていたそうで、まさか本当に映画になるなんてと今は驚いているみたいです。
 
――――今村監督の周りには今までアスペルガー症候群をはじめとする発達障害を持つ友人はいなかったのですか?
今村:自分がそうだと打ち明けてくれたのは、まあちゃんが初めてです。その時はびっくりするというより、逆にまあちゃんと仲良くなれると思ったし、マイノリティ同士ということで、すごく親しみを感じました。
 
――――シリアスになりがちな題材ですが、飄々とした音楽がとても効果的でした。
今村:『Start Line』を一緒に作った山田進一さんは、とても気が合い、いいアドバイスをもらえて信頼できる人なので、今回も山田さんから音楽や整音担当の方に私のイメージを伝えてもらいました。やはり音楽で感情を煽るドキュメンタリーにはしたくないので、最低限必要なところに入れるようにしました。
 
――――感覚が敏感なまあちゃんにカメラを向けることは、彼女にとってプレッシャーになっていたのでは?
今村:まあちゃんが学校の給食室で働いているシーンがありますが、撮影するときは「撮られるのはいいんだけど、許可をもらうために校長先生とやりとりするのが疲れる」と言われましたね。交渉するのが苦手なまあちゃんに、校長先生にアポイント取りや日程調整をしてもらい、だいぶん負担をかけていたと思います。まあちゃんは本音を言ってくれるので拒否されない限り、手間をかけて申し訳ないと思いつつ「よろしくね」とお願いしていました。
 
――――撮影を通じて、そこまで言い合える仲になったということですね。
今村:実は最初にまあちゃんと仲良くなった時からおもしろいな、撮ってみたいなと思い、映画化を考える前にもキャメラを回したことがあったんです。ただ、まあちゃんが私のことを信頼してくれているからとはいえ、ひたすら自分のことばかりを打ち明けられるとやはりしんどい。気持ちをぶつけられる友達は私しかいないのかなと思うと、それも重荷でした。今、まあちゃんにとってTwitterが本音を吐き出す場所で、吐き出したらスッキリすると言っているので、全て私が抱えなくてもいいんだなと安心しました。
 
――――思いを吐き出すといえば、長野旅行で二人が本音で語りあい、喧嘩ごしになっていくシーンがありますが、あれも自然とそうなったのですか?
今村:なんの断りもなく私の茶菓子をまあちゃんが食べてしまったことから始まったんです。 それが初めてのことなら怒りませんが、度々起こっていて、私も我慢し続けてきた。その積み重ねの結果、あの時に感情が爆発してしまった。周りから見たらお菓子でと思うでしょうが、本当に真面目に喧嘩しましたね。
 
 
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■まあちゃんと接することで、今まで知らなかった自分が出てきた。

――――友達といっても、あそこまで言い合えるのはベースに信頼関係があることの証でもありますね。
今村:私もまあちゃん以外の人とあそこまでの喧嘩をしたことはありません。喧嘩になる原因がないし、あったとしても喧嘩になる前に自分の気持ちを整理して、冷静に自分の気持ちを伝えています。だから今回は、自分でもびっくりしたんです。私はこんなに怒る人ではないと思っていたのに、彼女と接することで今まで知らなかった自分が出てきてしまった。そんな自分を見たくないけれど、どうしたらいい関係を築けるかを考えるためには自分を見つめ直さなくてはいけない。それがすごい葛藤だったし、この映画のエネルギーになりました。
 
――――映画で出てくる二人の日記の文章から、二人の本音が浮かび上がっていましたね。
今村:お互いにずっと日記を書いているんです。私は小学生の時からずっと書いていて、今92冊目ですし、まあちゃんは34歳でうつ病と診断された時、医者からマインドフルネスプログラムの一環として日記を書き始めたそうです。まあちゃんの日記を映画に使わせてと伝えたら、すんなりOKしてくれたのには驚きました。普通は嫌がるところですが、そのあたりの感覚は彼女独自のものだと思います。まあちゃんのOKは裏表がない本気のOKなので、そういうところは好きだし、楽なんですよね。だから旅行もこちらから誘うことができた。疲れたら素直にそう言うだろうし、気を遣わず、旅行を楽しめると思ったんです。
 

■喧嘩した時のまあちゃんの姿に、コミュニケーションを絶ったかつての自分が重なって。

――――まあちゃんとの喧嘩の中で、今村監督が「自分から弱者の立場に立ってるよ」とおっしゃったのがすごく印象的でしたが。
今村:『Start Line』で日本縦断の自転車旅をしていた5年前の自分の姿が、「わかりあうなんてきれいごと、排除でいい」と言い放ったまあちゃんと重なりました。当時の私は自転車旅の初心者で疲れもあって、やるべきことができなかったりして、伴走者にたくさん叱られました。それがだんだん嫌になってきて、伴走者を無視することが増え、コミュニケーションを絶っていたこともあったんです。その時伴走者に「コミュニケーションの映画を撮ると言っているのに、あなた自身がコミュニケーションを切っている」と言われました。その時の私がまあちゃんと重なったんです。ただ今回の私は向き合うことから逃げたくなかった。だから「弱者の立場に立ってるよ」とまあちゃんに投げかけたのです。
 
――――お二人の会話の中には優生思想への考え方や思いがあることに気づかされます。
今村:まあちゃんは元々読書好きで優生思想についても詳しいですし、やまゆり園事件のことも本を読んでいて私以上に詳しい。だからまあちゃんに優生思想について聞いてみたのです。彼女は自分でも優生思想を持っているし、本を読むことでその気持ちをコントロールしていると話していたのが印象に残っています。おそらくまあちゃんは本に救いを求めているのだと思います。自分を救ってくれる言葉を探すために、たくさんの本と出会うのですが、読んでも読んでもその言葉がない。だからすごく切ないし、それだけまあちゃん自身が生きづらさを感じているのだと思います。
 
 
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■自分がマジョリティになったと感じた時に生まれた戸惑いも、映画の中に。

――――生きづらさについても二人の見解は違いますね。
今村:私は障害も自分だけの問題ではなく、人と人の間にあるという考え方なんです。まあちゃんは映画の中でアスペルガー症候群という障害は自分の問題であると言うように、自分の中にも原因があると考えています。発達障害はどこまでが性格で、どこまでが障害なのかが自分でもわからない。そのあたりが同じマイノリティでもすごく違うなと感じます。また、まあちゃんと一緒にいると、私がマジョリティになっていると感じることがあり、それに気づいた時はすごく戸惑いました。マジョリティである自分が我慢すればいいんだ、我慢した方が波風が立たないので楽だとそちらへ流れてしまった。映画を撮りながら本当に色々なことを考えました。
 
――――どのあたりで映画の着地点が見えてきたのですか?
今村:お菓子のことで大喧嘩をした後、二人の常識を考える会を開いたのですが、そこでまあちゃんの行動に関して初めて知ることがたくさんあった。これは一区切りになるなと思いました。
 
――――「二人の常識を考える会」は名案でしたね。人それぞれの常識は違いますから。
今村:私が発案し、自分でもいいなと思って映画を作ったのですが、その後パンフレットに寄せられたまあちゃんの文章を読んで、もしかしたら私の自己満足だったかもしれないと思いました。映画の中で描かれている喧嘩は、私の中では感情が積み重なった結果の行動なのですが、まあちゃんは私がいきなり怒りはじめたように感じる。まあちゃんにとって私はいつ爆発するかわからない“時限爆弾”なので、喧嘩のショックもそれだけ大きかったのです。それでも依然としてまあちゃんは普通にLINEもくれるし、映画制作も応援してくれているので、逆に私の方がまあちゃんの言葉に囚われすぎないようにしようと。目に見える言葉はやはり強いけれど、それよりもまあちゃんの今の行動や表情を信じようと思いました。
 

■「友達やめた」は友達を続けるために必要な言葉だった。

――――タイトルの『友達やめた。』という言葉はとてもインパクトがあるだけでなく、本当に色々なことを考えさせられますね。
今村:この言葉は私が一番悩んでいた時に生まれた言葉です。映画としてはそこが山場になりますが、とにかくまあちゃんに会いたくないし、離れたいし、なんなら映画を撮るのもやめたい。それぐらい本当に葛藤していた時、日記に書いたのが「友達やめた。」という言葉でした。するとすごく気持ちが軽くなったんです。今までの自分は、まあちゃんにとっていい友達でいたいとか、自分がこんな嫌な人間だと認めたくないという気持ちがあったのですが、そんながんじがらめな状況から、一度抜け出すことができたんです。すると心に余裕が生まれて、自然に「まあちゃんと仲良くやっていくにはどうすればいいか」と考えられるようになった。そうやって自分を赦せると楽になりましたね。だからこの言葉は友達を続けるために必要な言葉だったのです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『友達やめた。』
(2020年 日本 84分)
監督:今村彩子 
出演:今村彩子、まあちゃん他 
11月13日(金)〜京都シネマ、11月14日(土)~第七藝術劇場、今冬元町映画館他全国順次公開。期間限定でネット配信も実施中
※京都シネマ、11/14(土)今村彩子監督による舞台挨拶あり
 第七藝術劇場、11/15(日)石橋尋志さん(「さかいハッタツ友の会」主宰)、今村彩子監督によるトークショーあり
公式サイト → http://studioaya-movie.com/tomoyame/
(C) 2020 Studio AYA
 

 

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(2020年10月28日(水)大阪にて)

 

現代のフリーターが、ある日突然平安絵巻『源氏物語』の世界へタイムスリップ!?
平安時代を生きる女たちに学ぶ若きダメンズの成長物語。

 

就職試験59連敗中!? 彼女にはフラれ、出来のいい弟に引け目を感じて家にも居づらい、そんな現代の若者が、突然『源氏物語』の世界へタイムスリップしちゃう!? 光源氏や桐壷帝が登場し、その女御たちが大勢いるあの紫式部が描いた王朝文化の世界へ。しかも、現代人の若者が、嫉妬や陰謀の元凶として悪名高い桐壷帝の第一妃・弘徽殿女御(こきでんのにょうご)の信頼を得て仕えるという、かつてないシチュエーションのSF時代劇。そんなファンタジックな映画『十二単衣を着た悪魔』が11月6日(金)から全国公開される。


本作が長編第二作目となる黒木瞳監督は、宝塚歌劇娘役トップから退団後、多くの映画やテレビドラマで活躍し、さらに演劇やミュージカルと舞台でも座長公演を務めるなど、途切れることなくキャリアを積み重ねてきた大女優である。そんな彼女が満を持して映画監督に挑戦したのが、2016年の『嫌な女』。木村佳乃と吉田羊という演技派女優による意地とプライドを賭けた女の闘いは、女優目線の容赦ない演出が効いた痛快作となった。本作でも、黒木監督らしくキャラクターの特徴を捉えた表情が活かされ、嫉妬や陰謀渦巻く後宮で生き抜く女御たちの悲哀や自信喪失の若者の成長をエモーショナルに活写している。


12hitoe-main.jpg主演の伊藤健太郎にとっては、戦国時代の凛々しい若君ぶりでブレイクしたTVドラマ「アシガール」の逆バージョンとなっているが、本作でも現代のダメンズ・雷から、目元さやけき陰陽師・雷鳴へと、平安貴公子スタイルで魅了する。妻となる倫子(りんし・伊藤沙莉)を迎えた辺りからの感情表現は秀逸で、最後の最後まで心を鷲づかみにされる。弘徽殿女御(三吉彩花)に対しても、若くして帝の心を失い、我が子を帝にするために生きる必死さが嫉妬や陰謀となって、他の女御たちに悪魔のように恐れられた人物として映るようになる。


「可愛い女はバカでもなれる。しかし、怖い女になるには能力がいる!」とまあ、豪快に言い放つ弘徽殿女御のアッパレぶりにもしびれる!
 



黒木瞳監督-①.JPGのサムネイル画像黒木瞳監督のインタビューは以下の通りです。


Q:『源氏物語』の中でも弘徽殿女御を取り上げた理由は?

A:内館牧子先生の小説『十二単衣を着た悪魔』の初版本を読んでとても面白かったので、自分でも弘徽殿女御を演じてみたいなんて思っていました。内館先生は高校生の時に『源氏物語』を読んで、弘徽殿女御が桐壷帝の第一妃でありながら直接的な感情の描写もなく、伝聞としてしか描かれていない事にとても興味を持たれたらしいのです。本当は単なる悪女ではなく違うタイプの女性だったのでは?他の女御たちも本当はかなりしたたかだったのは?と思われて、『源氏物語』の異聞として、現代の若者・雷の成長と弘徽殿女御のイメージとは違う捉え方をした小説をお書きになったそうです。弘徽殿女御には女性の品性があり、とても共感する部分も多く、そのセリフの面白さを活かして映画にしたら、きっと元気の出る映画になるのではと思ったのです。


Q:キャスティングについては?

A:雷のイメージでは伊藤健太郎君だったのですが、TV「アシガール」の逆バージョンなのでちょっと安易すぎるかなと思っていたら、出演が叶って嬉しかったです。弘徽殿女御については、平安時代の女性は意外と背が高かったらしく、他の女御たちを威圧する程背が高く、富士額が美しい若い三吉彩花さんが理想的でした。一番悩んだのは倫子役で、TVドラマで伊藤沙莉さんを見かけて「この娘だ!」とすぐにオファーしました。若い俳優さんたちはオーディションです。光源氏役は満場一致で沖門和玖君に決まりました。最初から出演が決まっていたのは笹野高史さん!(笑)(さすが、名バイプレイヤーですね!)


12hitoe-sub5.jpgQ:伊藤沙莉史上最高に可愛いショットや、目を丸くして驚嘆したり、目を潤ませて切々と訴えたりと目で語れる伊藤健太郎に、不敵な笑みを浮かべながらも毅然とした三吉彩花など、黒木監督らしい演出が随所に見られましたが、撮影方法については?

A:同じ役者として、役者に失敗させたくないという思いが一番強くありました。一人ひとりが輝いて、時には切なく、時には輝いている顔を撮りたいと思っていたのです。月永雄太カメラマンはショートムービーでも撮影を担当して頂いていたので、何となく私の性格を理解した上で、私が何を求めているのか、コミュニケーションをとりながらの撮影はとてもやりやすかったです。勿論お互いプロとして尊重し合いながら、カメラマンにお任せすることもありました。


Q:本作で一番苦労した点は?

A:脚本の段階で何度も何度も推敲を重ね、26年という月日を2時間枠に収めようと皆と協議しました。さらに、『源氏物語』の中の人物の所作や衣装についても、時代考証の専門家に教えて頂いたり、博物館へ行って絵巻物を見学したりとかなり研究しました。そして、後宮内のシーンを絵巻物と同じように屋根のないセットを使って俯瞰で撮る方法を思いついたのです。


12hitoe-sub4.jpgQ:一番こだわった点は?

A:雷がはっきりと「タイムトリップした!」と分かるように、その場面のVFX映像にはこだわりました。それから、美術もそうですが、弘徽殿女御の衣装などの色にもこだわりました。博物館で再現展示物を見て驚いたのですが、御簾で仕切られた後宮の部屋には緑色の敷物が敷いてあったのです。それを基に、弘徽殿女御が年代ごとに着る衣装の色柄や、十二単衣の重ね着の色を決めていきました。煌びやかな王朝絵巻物ですから、衣装だけでなく、季節による色彩などにもこだわりました。是非、スクリーンでお確かめ頂きたいと思います。


Q:女優に甘んじることなく、作品の全責任を負う監督にチャレンジすることについては?

A:女優も大変なんですけどね。劇中で弘徽殿女御が、「身の丈に合って傷付かぬ生き方など小者のすること。人は必ず老い、時代は動く。いつまでも同じ人間が同じ場所に立ってはいられない。必ず若い者の世が来る。その時は潔く退く。それが品位というものです。」と雷鳴に語るシーンがあります。私も「身の丈以上のことを自分の中で求めている」ということでしょうか、僭越ながら(笑)
 


【STORY】

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求職活動も上手くいかず、彼女にもフラれ、出来のいい弟に引け目を感じては家にも居場所がない雷(伊藤健太郎)は、ある日、バイト先の医薬品会社主催『源氏物語』関連のイベント会場で、不思議な緑の光を目にする。『源氏物語』のパンフレットと医療品のサンプルの入ったお土産とバイト料をもらって帰る途中、家の近くで再び緑の光が現れ、雷鳴と共に気を失ってしまう。目が覚めると、そこはなんとあの『源氏物語』の世界!? タイムスリップしてしまったのだ!


すぐに捕らえられるも、高熱で苦しむ女御の病気をサンプルでもらった消炎鎮痛剤で治してしまい、さらに『源氏物語』のパンフレットを見ながらの予見が当たり、陰陽師・雷鳴として桐壷帝の第一妃の弘徽殿女御(三吉彩花)に仕えることになる。現代では居場所のなかった雷も、ここでは皆の信頼も厚く尊重される身分となる。その内、妻・倫子(伊藤沙莉)を迎え、初めて人を慈しむ心に芽生え、この世界で幸せに暮らせると思っていたのだが……。


出演:伊藤健太郎 三吉彩花 伊藤沙莉 田中偉登 沖門和玖 MIO YAE 手塚真生 / 細田佳央太 LiLiCo 村井良大 兼近大樹(EXIT) 戸田菜穂 ラサール石井 伊勢谷友介 / 山村紅葉 笹野高史
監督:黒木瞳
原作:内館牧子「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」(幻冬舎文庫)
脚本:多和田久美
音楽:山下康介     雅楽監修:東儀秀樹
制作・配給:キノフィルムズ 制作:木下グループ
Ⓒ2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー
公式サイト:https://www.juni-hitoe.jp/

2020年11月6日(金)~新宿ピカデリーほか全国ロードショー


(河田 真喜子)

 
 
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坂本龍一や松任谷由実らが愛した世界的な名スタジオを通して、もの作りの醍醐味を映し出す。『音響ハウス Melody-Go-Round』相原裕美監督インタビュー
 
坂本龍一、松任谷由実、矢野顕子、佐野元春、葉加瀬太郎からヴァン・ヘイレンのボーカル、David Lee Rothまで、国内外問わずアーティストたちが信頼を置き、最高の音楽を追求し続けている銀座のレコーディングスタジオ「音響ハウス」。昨年、創立45周年を迎え、さらに新しい音楽を生み出し続ける音響ハウスにスポットを当てた音楽ドキュメンタリー『音響ハウス Melody-Go-Round』が、11 月 14 日(土)より渋谷ユーロスペース、11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、12月18日(金)より京都シネマ、今冬元町映画館他全国順次公開される。
 
 監督は『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』の相原裕美。音響スタジオのもの作りを支え続けている各種エンジニアの仕事に密着する他、子連れでレコーディングに臨んだ時のエピソードを語る矢野顕子や、1年間スタジオをおさえ、スタジオに住んでいたと当時の様子を振り返る坂本龍一をはじめ、音響スタジオで自身のキャリアを確立させる名盤を生み出したアーティストたちが続々登場。サディスティック・ミカ・バンドの「WA-KAH! CHICO」や大瀧詠一の多重コーラスが秀逸な「朝日麦酒三ツ矢サイダー`77”」、伝説の忌野清志郎+坂本龍一「い・け・な・いルージュマジック」など音響ハウスで生まれた名曲秘話も続々披露される。
 
 
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 さらに、長年の名コンビである佐橋佳幸、飯尾芳史が本作の主題歌「Melody-Go-Round」をプロデュース。大貫妙子が作詞を担当、ドラムの高橋幸宏やバイオリンの葉加瀬太郎をはじめ、音響ハウスを愛するミュージシャンたちが集まり、レコーディングする風景も挿入され、もの作りの現場を垣間見ることができるのも本作の醍醐味だ。ベテランミュージシャンに混じり、ボーカルとして奮闘する13歳の新鋭シンガー、HANAの存在感がひときわ光る。
本作の相原裕美監督に、お話を伺った。
 
 
 
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――――テーマ曲「Melody-Go-Round」のレコーディング時に、作曲、編曲、そしてプレーヤーでもある佐橋さんが「みんなで顔を見合わせて(レコーディング)するのが80年代っぽくていいよね」と語っておられましたが、逆に今のレコーディングの主流は?
相原:今はほとんどコンピューターでサウンドを打ち込み、しかもそれを一人でこなしているケースも多いので、みんなでスタジオに集まり、一緒に音を出して作るというのはなかなかないでしょうね。実際に音響ハウスのような大きなスタジオはどんどん潰れてしまい、サンプリングの音を使って誰でも簡単にレコーディングできるようになっています。ただし、生音ではないということですね。
 
――――松任谷正隆さんも、家でレコーディングができるけれど自分の枠を飛び出したいならスタジオに行けとおっしゃっていましたね。
相原:音響ハウスに限らずですが、他のミュージシャンと一緒にレコーディングをすることで新しいアイデアをもらうこともあるし、自分の考えていたものとは違うけれどもっと面白いものができる。それがものづくりの醍醐味でもあります。
 
――――音響ハウスを支える人、音響ハウスで音楽をつくってきたミュージシャンや彼らと共にその楽曲を世に送り出してきたプロデューサーなど、多くの人たちのインタビューが満載ですが、どうやって人選をされたのですか?
相原:プロデューサーでもある音響ハウス社長の高根護康さんが音響ハウスの技師や、音響ハウスでレコーディングしていたミュージシャンの皆さんをリストアップしてくれました。主題歌「Melody-Go-Round」は、この映画を作るにあたって佐橋さんとミーティングをしているうちに曲を作った方がいいのではという話が浮上し実現したもので、レコーディングに参加したミュージシャンたちは、佐橋さんが人選してくださいました。
 
 
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――――「Melody-Go-Round」のボーカルに13歳のHANAさんを抜擢しています。ボーカル選びは一番の肝だったと思いますが、HANAさんを選んだ理由は?
相原:この映画は決して懐古主義の作品ではありません。スタジオの歴史を振り返って賞賛するだけではつまらないし、音響ハウスはまだこれからも続いていくわけですから。今も続いているものを入れるということで主題歌を作ることにし、そのミュージシャンとしてドラムの高橋幸宏さんをはじめ音響ハウスをよく利用し、音響ハウスをすごく好きな方々に集まってもらいました。ただそこにベテランのボーカルを入れてしまうと一気に古い感じになってしまうので、そこに新しい血を入れて未来に繋げる形にしたいという狙いで若いボーカルを探し始めたんです。HANAさんは「Melody-Go-Round」を佐橋さんと共同編曲した飯尾芳史さんの事務所に所属しているシンガーで、一度歌ってもらったのを聞いてオファーしました。
 
――――多くの方のインタビューを通して、相原監督ご自身が音響ハウスに対して見出したことは?
相原:劇中でも終盤のコメントに出てきますが、音も含めてすごく真面目なスタジオなんですよね。音楽業界は派手な印象がありますが、冒頭登場する音響ハウスのベテランメンテナンスエンジニアの遠藤誠さんのような職人のみなさんがしっかり業界の土台を支えているのです。
 
――――音響ハウスでレコーディングすると「エンジニアの作業が狂わない」というコメントもありました。
相原:音響ハウスに限らず、最終的に音楽は録音後ミックスという作業が入ります。歌やギター、ドラムなどチャンネルがバラバラなものを、最終的にステレオにしてバランスを取る作業なのですが、よくあるのがラジオで聞くと歌が小さいとか、全体的なレベルが小さいという現象です。そういう部分が「狂わない」ということで、スタジオで聞いたものと、一般的に聞くものとの差があまりないという意味でしょうね。
 
――――音響ハウスが海外の有名ミュージシャンにも愛されていることがよくわかるエピソードとして、ヴァン・ヘイレンのボーカル、David Lee Rothさんも登場しています。
相原:映画のために収録したのではないのですが、David Lee Rothさんが音響ハウスでレコーディングをしていた時のことを自身のYoutubeチャンネルにアップしていたんです。音響ハウスから映画に入れることを許可していただいて、実現したシーンですね。
 
 
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――――最後に「いい音とは?」という質問を投げかけた時、みなさんそれぞれの個性が滲む言葉が紡がれ、非常に興味深かったです。特に佐野元春さんが「売れる音」と即答したのにはプロだなと目を見開かされました。
相原:強力だし、すごくいい言葉で、ある意味本当に素直ですよね。映画の構成として、いい音を聴かせることを後半にまとめています。曲を作る過程をみせる。今までの音響ハウスのエピソードを語ってもらうということに加えて、ミュージシャンのいい音を聴かせる。ただ実際に「いい音」と言われても漠然としていますよね。だからこそ、その人の本質が出やすいのではないかと思い、そのような質問を投げました。坂本龍一さんは本気で悩んでいましたし、本当に多様な「音」への思いが出てきたと思います。
 
――――登場したミュージシャンのみなさんは音響ハウスのレコーディングを振り返る時非常にうれしそうに語っておられましたが、特に壁のシミになるぐらいずっと住んでいたという坂本さんは、本当に嬉々としておられましたね。
相原:坂本さんは今ニューヨーク在住ですが、来日した時にお時間をいただき、インタビューをするなら音響ハウスのスタジオが絶対にいいと思い、当時使っていたスタジオで撮影させていただきました。松任谷正隆さん、由実さんも第一スタジオに入ると当時のことが思い出されるようでしたね。
 
 
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――――最後に、これからご覧になるみなさんにメッセージをお願いいたします。
相原:もの作りは音楽業界に限らず、映画や絵画のようなアート系から町工場で作るような産業系まで様々ありますが、共通しているのはものを作るクリエイティブな気持ちだと思います。若い人にも観ていただき、クリエイティブなところに飛び込んでほしい。一人でもの作りをするのもいいけれど、大勢と何かを作る場所に飛び込んでほしい。そういうことの大事さが伝わればうれしいです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『音響ハウス Melody-Go-Round』
(2019年 日本 99分)
監督:相原裕美
主題歌 Melody-Go-Round / HANA with 銀音堂
作詞:大貫妙子 作曲:佐橋佳幸 編曲:佐橋佳幸、飯尾芳史 ブラス編曲:村田陽一 
出演:佐橋佳幸、飯尾芳史、高橋幸宏、井上鑑、滝瀬茂、坂本龍一、関口直人、矢野顕子、吉江一男、渡辺秀文、沖祐市、川上つよし、佐野元春、David Lee Roth、綾戸智恵、下河辺晴三、松任谷正隆、松任谷由実、山崎聖次、葉加瀬太郎、村田陽一、本田雅人、西村浩二、山本拓夫、牧村憲一、田中信一、オノセイゲン、鈴木慶一、大貫妙子、HANA、笹路正徳、山室久男、山根恒二、中里正男、遠藤誠、河野恵実、須田淳也、尾崎紀身、石井亘 <登場順> 
11 月 14 日(土)より渋谷ユーロスペース、11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、12月18日(金)より京都シネマ、今冬元町映画館他全国順次公開!
公式サイト →:onkiohaus-movie.jp
©2019 株式会社 音響ハウス
 
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稲垣吾郎と二階堂ふみが魅せる、美しくエロティックな「大人の純愛映画」
『ばるぼら』手塚眞監督インタビュー
 
 手塚治虫の作品の中でも禁断の愛とミステリー、芸術とエロス、スキャンダル、オカルティズムなど様々なタブーに挑戦し評価が高い一方、映像化は難しいと言われてきた「ばるぼら」を、長男の手塚眞監督が映画化。昨年の東京国際映画祭コンペティション部門で世界初上映後、世界の映画祭で話題を呼んだ映画『ばるぼら』が11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、なんばパークスシネマ、京都シネマ、MOVIXあまがさき他全国ロードショーされる。
 
 成功を手に入れたものの、それを失い、堕ちていく作家の美倉洋介を稲垣吾郎が美しく熱演。美倉の運命を狂わせる謎のフーテン女、ばるぼらを演じる二階堂ふみの表情豊かな演技にも魅せられる。撮影にはその映像美で見るものを魅了するクリストファー・ドイルを招聘し、舞台となる新宿の喧騒を印象的に捉えている。美しくエロティックな大人の幻想物語は、リモート生活に慣れつつある今、強烈な余韻を残すことだろう。
 
 本作の手塚眞監督にお話を伺った。
 

 

■クリストファー・ドイルにキャスティング前からオファー、企画実現へ強い後押しをしてくれた。

―――手塚監督の代表作『白痴』(公開20周年記念デジタルリマスター版を10月31日よりシネ・ヌーヴォで公開)は巨大なオープンセットで自由にビジュアルを構築していましたが、『ばるぼら』はセットの部分が少ない一方、現代の新宿がまさにセットになっていました。名キャメラマン、クリストファー・ドイルさんが街を切り取ることで、作品に新しい魅力が生まれています。
手塚:この作品は非常にエロティックな映画です。通常日本でエロティックな映画といえば汗臭いとか、泥臭いものになりがちですが、僕は昔のヨーロッパ映画のような品のあるニュアンスを持つ、綺麗なものにしたいと思っていました。それには人間だけでなく街、しかも新宿の隈雑な雰囲気がする場所を綺麗に撮れる人が必要でした。そこで真っ先に思い浮かんだのがドイルさんで、出演者が決まる前にキャメラマンを彼にと決めていました。
 
―――キャスティング前の段階で、まずはドイルさんにオファーされていたんですね。
手塚:当時、映画会社や色々なプロデューサーに企画をプレゼンテーションしても、『ばるぼら』の実写映画化に対して、みなさん及び腰になっていたんです。「原作は面白いけれど、映画にするのはちょっと難しい」と方々から断られてしまった。さすがに僕もこれは映画化するのは無理かもしれないと気落ちしてきた時に、ドイルさんだけは「絶対俺が撮るから、絶対やろう!」と言ってくれたんです。彼一人が味方についてくれているだけで、僕もこの企画をなんとしてでも実現させようと思えました。
 
―――ドイルさんの参加が決まったことで、映画会社の風向きも変わったのでは?
手塚:ドイルさんご自身もそのことが分かっていて、一緒にやろうと言ってくれたのだと思います。釜山国際映画祭の映画マーケットに足を運んで、セールスエージェントを見つけは話を聞いていただいていたんです。すると通りがかりのアジアの女性監督が企画書を見て「『ばるぼら』だ!」と。なぜ知っているのかとお聞きするとドイルさんから聞いたというのです。ドイルさんは自分の仲間やアジアの映画人たちに、日本で『ばるぼら』を撮ると宣伝してくれていたようで、それぐらいドイルさんもやりたいと思ってくださっていた。周りからはこだわりが強いという部分で他のキャメラマンを推す声も少なくなかったのですが、僕はドイルさんしか思いつかなかったので、それらの声を振り切りました。
 
 
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■子どもの頃から好きだった父親の大人向け漫画。現実と非現実を行き来する感覚が面白かった。

―――ちなみに手塚監督が原作漫画の「ばるぼら」を初めて読んだのはいつ頃でしたか?
手塚:父親が連載中に読んでいたので、12歳ぐらいだったと思います。父親が描いた漫画本は家の中に普通に置いてあったので、どれを手にとって読もうが自由だったんです。だから父親が描いていた大人向けの漫画は全部読んでいたし、むしろそちらの方に僕の興味が向いていました。明らかに子どもを意識した漫画は当時あまり興味がなかったのです。
 
―――芸術とはという問いかけや、根源に深い問題を内在する作品ですが、当時の感想は?
手塚:第一印象は「不思議な話だな」。悩む小説家の描写も出てきますが、幻覚の中に入ったり、どこまでが夢でどこまでが現実かわからないという感覚が面白いと思ったんです。僕はもともと現実と非現実の境界が曖昧であったり、もしくはそこを行き来する物語が好きで、その中で人間が振り回されながらも成長していく姿に興味がありましたから、「ばるぼら」は特に印象に残っていたんですね。
 
 

■これまでの自分の作品ともつながる「ばるぼら」、コンパクトな作品にできると思った。

―――映画化を構想したのはいつ頃ですか?
手塚:一般的に手塚治虫の作品を映画化するなら「ブラック・ジャック」や「リボンの騎士」といった有名な作品から始まるのでしょうが、5年前に純粋に次に自分がどんな作品を作りたいかと考えたとき、ふと「ばるぼら」のことを思い出しました。それまで自分が作ってきた映画たちともすんなりと繋がっていく感じがしましたし、内容的にも自分の好きな世界だと思いました。もう一つ思ったのは、『白痴』と比べて非常にコンパクトな作品にできるということ。ストーリー的にもそうだし、登場人物も小説家の美倉と少女ばるぼらに絞り込める。場所も新宿に絞り込めるので作りやすくなります。いつも僕の作品はあれもこれも盛り込み、2時間を超えるのが普通だったので、もっと短くてシンプルな映画を作るのにちょうどいい題材でもあったのです。
 
―――原作の魔女や黒魔術という要素を、本作ではあまり強調していませんね。
手塚:オカルティックな要素は今まで散々やりましたし、自然に出てしまうでしょうから、むしろそれを抑えめにして、インテリジェンスな表現を心がけました。オカルティックなシーンには日本で一番魔術に詳しい方に監修者として参加していただき、儀式や道具立を検証していただきました。原作では「エコエコアザラク」という正統的な魔術の呪文を使っていますが、別の作家による同名の漫画があるので、映画では実際に儀式で使われている別の呪文を用意していただきましたし、原作にあっても正確ではない要素を外すこともありました。
 
 
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■稲垣さん、二階堂さんは非常に聡明、何の躊躇もなく演じてくれた。

―――やはり稲垣吾郎さん演じる美倉と二階堂ふみさん演じるばるぼらが素晴らしく、この二人に魅せられました。こだわりのキャスティングだと感じましたが。
手塚:キャスティングは一番大変で、このお二人に決まるまで時間がかかりました。最初から稲垣さん、二階堂さんは候補に上がっていたのですが、企画したのは5年近く前の話ですからそれぞれに事情があり、プレゼンテーションするのが難しかったのです。それから時間が経ち、やはりこの二人しかいないとオファーをしたところ、お二人とも一も二もなく「やります」とおっしゃってくださり、うれしかったですね。稲垣さん、二階堂さんは、脚本を読んで内容を理解したら、あとは演じるだけというスタンスで、非常に難しいシーンやデリケートなシーンも何の躊躇もなく、疑問も抱かず演じてくださいました。素晴らしかったです。
 
―――インテリでモテ男の美倉はまさに稲垣さんのはまり役ですね。
手塚:芸術家きどりの作家で、インテリでモテる男である美倉と、稲垣さんのパブリックイメージとは重なる部分がありますね。実際にかなりインテリな方なので、美倉役は似合うのではないかと思ったし、そんな美倉がだんだん内面をさらけ出し、ある意味堕ちていく姿を、稲垣さんなら美しく演じることができると思いました。
 
―――売れっ子作家と呼ばれることへの違和感や真の芸術家を追求するあたりは、稲垣さん自身が歩んできた道にも重なる気がしました。
手塚:稲垣さんの歩まれてきた芸能人性から、そのリアルさが出たのではないでしょうか。稲垣さん、二階堂さん共に非常に聡明で、正しい方向にきちんと演じ、時には僕が思った以上に演じてくださった。クライマックスの場面も二人に任せ、「あそこまでやってくれるんだ」と僕が感心するぐらいの素晴らしい演技をしてくださったので、嬉しかったですね。
 

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■原作からピュアな要素を抜き出し、「純愛を見せつけたかった」

―――稲垣さんが演じた美倉は、原作よりも欲深さをそぎ落とし、ピュアな人物造詣になっていますね。
手塚:原作にもピュアな要素はありますが、今回はあえてそこを抜き出しました。今の時代だからこそ、肉体の触れ合いも含めて、とてもピュアなラブストーリーを作って見せたいと思いましたし、この原作がちょうどそこに当てはまりましたね。今はどうしても相手の裏を詮索したり、どちらかが騙したりという話が多いですが、むしろ純愛を見せつけたいという思いがありました。これは二重の驚きになると感じています。まずは僕が「ばるぼら」を選んだこと、そしてオカルティックな要素があるにも関わらず純愛の映画になっていること。僕の映画をご存知の方にはいい意味で驚きになるのではないでしょうか。
 
―――二階堂さんが演じたばるぼらも非常に魅力的ですが、どのようにキャラクターを作り上げていったのですか?
手塚:最初は原作とは全然違う現代の格好や、ゴシック要素が強いのでいわゆるゴスロリファッションもいいのではないかと考えていたのですが、衣装の柘植伊佐夫さんと二階堂さんから原作のままでいいのではと逆におっしゃっていただきました。二階堂さんは柘植さんの衣装で『翔んで埼玉』を撮っていた頃だったので、漫画をそのままにするとコスプレっぽくなってしまうのではと危惧したのですが、最初の衣装合わせで二階堂さんが原作の格好にオレンジのかつらを被って、部屋の隅に座っているのを見た時、これでいいと実感しました。撮影では、二階堂さんがご自分の私物衣装を「これもばるぼらっぽいのでは」と持参してくださったんです。映画の中でばるぼらが着用している服の半分は二階堂さんの私服です。有名ブランドの服だけど、フーテンのばるぼらの世界観に溶け込んでいる。二階堂さんの着こなしもあるでしょうし、そのチョイスもばるぼららしさが出ていたんでしょうね。
 
 
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■クリストファー・ドイルが手持ちカメラで撮った「ばるぼらの表も裏も見せている」シーン。

―――生々しい現実の中を生きる美倉に対し、ばるぼらはテーマ曲にのって新宿の街を彷徨い歩くシーンが登場し、幻想的な美しさがありました。
手塚:今回の撮影はタイトなスケジュールだったのですが、あのシーンは事前にドイルさんに、「ばるぼらを1日あなたに貸すので、好きなように撮ってください。二階堂さんを自由に演出してください」とお伝えして撮っていただいたものです。実際に新宿は撮影できる場所とできない場所があり、結局限られたものしか撮れず、撮影を終了したのですが、解散した時にドイルさんが「ちょっと待って」と言い出したのです。二階堂さんに戻ってきてもらい、「この道を歩いて」と急に道を歩かせ始め、ドイルさんが手持ちカメラでそれを撮り始めた。10分間ぐらい自由に撮ったのですが、その映像が本当に素晴らしかったのです。予定にない映像でしたが、そこから随分使いました。橋本一子さんの音楽にもぴったり合いましたし、そこに稲垣さんが読むヴェルレーヌの詩を重ねると本当に好きな場面になりました。思ってもいなかった場面ですが、一番自分が撮りたかったのはこれなんだという感じです。演出していないのだけど、ばるぼらの表も裏も見せている。映画は時々このような奇跡が起きる。作っていて一番喜びを覚える瞬間ですね。
 
 

■肌と肌が触れ合うエクスタシーを純愛に取り込む感覚を忘れてほしくない。

―――『星くず兄弟の新たな伝説』の取材で「百年後観てもいい映画を作りたい」とおっしゃっていましたが、『ばるぼら』もそういうお気持ちで作られたのでしょうか?
手塚:今は男性が草食的だと言われ、肉欲的なものから離れていこうとしています。いい面もあるのですが、やはり肌の触れ合いは純愛の中でも大事な要素です。今の若者たちの純愛は手も握らないとか、精神的なニュアンスだけかもしれないけれど、もっと大人の、肌と肌が触れ合うエクスタシーを純愛に取り込むことをこの映画で感じてほしい。それを意識して作りましたし、そういう感覚を忘れてほしくない。スマホが流行った瞬間から、スマホでしかコミュニケーションを取らない風潮もありますが、僕はそれが自然ではない感じがするし、そんなコミュニケーションはセクシーでもエロティックでもない。エロティックは普段悪い意味で使われがちですが、僕はもっとポジティブに考えていくべきだと思っていますし、こういう時代に一番エロティックな『ばるぼら』を作れて良かったです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ばるぼら』(2019年 日本・ドイツ・イギリス 100分 R15+)
監督・編集:手塚眞 原作:手塚治虫 撮影監督:クリストファー・ドイル/ 蔡高比
出演:稲垣吾郎 二階堂ふみ 渋川清彦 石橋静河 美波 大谷亮介 片山萌美  ISSAY  / 渡辺えり 
11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、なんばパークスシネマ、京都シネマ、MOVIXあまがさき他全国ロードショー
(C)2019『ばるぼら』製作委員会 
※11月3日(火・祝)第21回宝塚映画祭(シネ・ピピア)にてプレミア上映
※10月31日(土)よりシネ・ヌーヴォにて『白痴』ロードショー、【手塚眞実験映画集】【短編集】をはじめ、過去作品を一挙上映する「手塚眞監督特集」も同時開催。
 
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「自分の作家性から思い切って離れ、一気に描ききれたのは原作があることの強さ」
『本気のしるし《劇場版》』深田晃司監督インタビュー
 
 仕事はできるが流されるままに社内で二股をかける会社員辻と、彼の前に突然現れた謎の女、浮世。星里もちるの人気漫画を映像化、共感度ゼロの登場人物たちが織りなす予測不可な破滅型ラブストーリー『本気のしるし』が10月16日(金)から出町座、10月17日(土)から第七藝術劇場、シネ・ヌーヴォ、元町映画館、10月23日(金)から豊岡劇場 にて公開される。
 
 深田晃司監督初の連続ドラマで2019年10月からメ〜テレでオンエアされたと同時に話題になった「本気のしるし」を劇場用にディレクターカット版として再編集。コロナ禍で発表された今年のカンヌ国際映画祭では、深夜ドラマ発としては異例のオフィシャルセレクション2020に選出の快挙を成し遂げた。4時間弱という長さを全然感じさせない目まぐるしい展開と徐々に変化していく主人公二人の関係性の描写は、深田監督が常々取り組んでいる「鑑賞者の想像力との駆け引き」の真骨頂のようにも映る。
 
 本作の深田晃司監督に、コロナ禍で発表した新作『ヤルタ会談オンライン』『move / 2020』(いずれも東京国際映画祭2020 Japan now 気鋭の表現者 深田晃司 短編プログラムで上映予定)も含め、お話を伺った。
 
 
 
――――テレビ版をモバイルで一気見したので、劇場版となり大スクリーンで観ることができるのはとてもうれしいです。特に踏切音や日常生活の中で聞こえてくる虫の声など音の印象が非常に残りました。
深田: テレビ版を作る際は時間も限られていたので、6週間で全話分一気に撮影し、その後編集して各話ごとにリリースしていく形でした。生活の環境音がある中でテレビを観ることを前提にしているのでとにかくセリフを立たせ、効果音は抑えめに。劇場版はスクリーンで観てもらうことを前提にするので、まずは環境音を足し、逆にセリフは立たせすぎないように環境音となじませていきます。あとは、5.1チャンネルにして空間を作るという作業を行いました。テレビと映画では音の出し方が違うので、結局は一から作り直しという形で大変でしたね。ドラマ版でもみなさんがイメージするような作法、例えば寄りの絵が多いとか、ナレーションでわかりやすくとか、音楽で情緒を伝えやすくする等のことは何もやっていない。僕としてはいつも通りやっただけなのですが、放映がはじまり最初は珍しいという声が多かったものの、それはネガティブな反応ではなかった。だからテレビドラマにおける作法は意外と作る側の思い込みなのかもしれないという気がしました。
 

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■ハタチの頃から好きだった「本気のしるし」。ドラマ化は持ち込み企画だった。

――――深田監督が初めて漫画の原作を映像化したということで、満を持してという気もしますが、「本気のしるし」をドラマ化した経緯を教えてください。
深田: これまでも平田オリザさんの演劇を基にした『さようなら』やバルザックの短編小説が原作の『ざくろ屋敷』など自分がやりたい原作を映画化でき、また作る際に変なバイアスがかかることなく自分なりに解釈したことを出すことができている。僕は非常に恵まれていると思います。「本気のしるし」はハタチの頃好きで読んでいた漫画で、会う人会う人に「映像化したらおもしろい」と言い続けていたら、『さようなら』のプロデューサーだった戸山剛さんが興味を示してくれてメ〜テレさんに企画を持ち込むことになりました。連続ドラマは未経験でしたが、他の人が監督するならぐらいなら僕がやりたいとメ~テレに持ち込んだ企画でした。
 
――――原作を少し拝見しただけでも、今まで深田監督が映画で試みてきたようなことがまさに含まれているなと驚きました。
深田: ハタチの頃に読んでいたので、無意識のうちに原作の影響を受けていると思います。自分の映画の中で我ながらよく出てくるなと思う符号がビンタのシーンなのですが、原作でもビンタが象徴的に出てくるのでそこに影響を感じますね。また想像力を少しずつ裏切ることで物語を引っ張るというのも、原作と重なります。
 
――――土村芳さん演じる浮世と北村有起哉さん演じる脇田と、先が読めない人が二人もいることで、面白さが倍増していますね。
深田: 北村さん演じる脇田はちょっと引いた目線で辻と浮世の恋愛を楽しんでいる人で、ある意味観客の立場に近いですね。辻が二股をかけている会社の先輩役の石橋けいさんは山内ケンジさんの舞台で、マイペースに独特の調子でしゃべり続けるのを見て、すごく好きだったんです。また山内ケンジさんが静岡で撮った「コンコルド」というシュールなCM
シリーズに常連で出演されている時のメガネ姿が細川先輩のイメージに近かったこともあり、オファーさせていただきました。
 
 
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■新しい表情を見せた辻役の森崎ウィン。

――――辻役の森崎ウィンさん、浮世役の土村芳さんはオーディションだそうですが、決め手は何だったのですか?
深田: 森崎さんは総合的にイメージに近く、比較的早い段階で決まりました。まずは女性何人かと同時に付き合う男性という設定に説得力を持たせられる甘いマスク。演技面では浮世と出会うコンビニシーン、酔っ払った浮世と話すファミレスシーン、波止場で喧嘩するシーンと3シーンを演じてもらったら、非常に自然に演じてくれたんです。森崎さんは役を演じるというより、きちんと自分の言葉でしゃべっていることを実感できた。それが決め手になりましたね。
 
――――あんな表情の森崎さんは見たことがなかったです。
深田: 最後のほうでいろいろなものを失ってしまい、すごく厭世的になっている森崎さんの演技が本当に素晴らしく、撮影現場で彼にオファーして良かったと心底思いました。あそこまで気取りがなくせるんだなと。
 

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■男女の“駆け引き”ではなく“対等ではない関係”を表現できた浮世役、土村芳。

――――辻は浮世に出会ったことでどんどん堕ちていきますが、愛を知った浮世はまた違う感情の流れをみせます。その対比もすごく興味深かったですが、この浮世役はキャスティングも演出も難しかったのではないですか?
深田: 企画が決まった段階でプロデューサーとも浮世役がうまくいかなければこの企画は失敗すると危惧していたのですが、実際オーディションも非常に難航しました。漫画の浮世はデフォルメされ見た目もとてもチャーミングなのですが、では実写化するときにスーパーモデルのような記号的に誰もが美しいと思える人を配置し、周りの人たちが惚れていくという感じにしてしまうとニュアンスが違う。そこで辻役のオーディション同様に、ファミレスで浮世が酔っ払って「私、辻さんに油断しているのかな」と男をドキリとさせるセリフを言ってもらったんです。大体の人が男女の恋愛の駆け引きのように演じてしまうのですが、そもそも駆け引きというのはある程度対等な力関係の間で展開するもので、今回は対等ではない感じにしたかった。土村さんは本音で自然に言っているように演じてくれたのが決め手になりました。
 
――――確かに自分が面倒を見なければという辻の使命感がいつの間にか愛に変わるという、男性の優位性があらわになっている関係ですね。
深田: 浮世と辻の恋愛関係は非対称性が強く、対等に男女が向き合う形ではなかった。もともと主体性がなく周りに流されて生きていた二人で、浮世はもっとヒリヒリしたものがあり、自分の身を守るため擬態のように男性にウソをついて生きている。辻は周りに好かれるがままに生きている。そんな二人が恋愛関係となるわけですが主体性がないとはいえ、辻は男性社会の中でそれなりに社会的な地位も得ている。一方浮世は大変なことになっていくので、辻は引っ張り上げなければと思うわけで、男性が優位な恋愛という歪みが生じているのです。だから浮世が何度も口にする「すいません」が真実味を帯びる必要があるし、その姿に辻はなんとか関わってあげなければと思う。でも他の人が現れたら浮世との関係は簡単に逆転してしまうんです。
 
 

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■物語で性差別の問題を描くことはとても重要。

――――最初は浮世に全く共感できないのですが、だんだん彼女のように隙があるとひどい目に遭う世の中の方がおかしいことに気付かされます。女性は常に男性に付け込まれないようにガードを固めなければいけないのかと。
深田: 原作から絶対にカットせず残したのが、浮世の昔の女友達が辻の男性的な考え方にはっきりとNOを突きつけるシーンです。現代社会でも女性が性被害に遭った時、そんな服装をしているから悪いと非難したり、同性からも同様の声が上がることは結構多い。そんな風潮の中、物語で性差別の問題を描くことはとても重要です。「本気のしるし」が青年誌で連載されていたことも意味があると思っています。女性といえば男性の恋愛対象として描かれる青年誌で女性の痛みを生々しく描いている。今、社内恋愛が発覚したら女性が異動させられる会社があるか分かりませんが、本質的な部分は全然変わっていないと思います。
 
――――浮世がそうせざるを得なくなったのは誰のせいなのかが分かると、生き延びるために必死な女性と見え方が変わってきます。
深田: 女性の描き方もいろいろで、象徴的なのはマーベルのように男勝りで強いヒロインです。ジェンダーバランスが50:50にはほど遠い中、そういう「強い」ヒロインを描くことには一定の意義がありますが、そればかりだと現実にある性差別を覆い隠す危険性があります。そういう中で浮世のようなアプローチで女性を描くことは重要だと思いながら取り組んでいましたね。
 
――――浮世や辻を演じるにあたり、お二人にどんな演出をしたのですか?
深田: 撮影に入る前に自分の演技に関する考え方を座学的にお話させてもらい、目の前の共演者ときちんとコミュニケーションを取ってほしいと確認した感じですね。まずは二人から出てくるものを見たいと思っていたので、こちらからそんなに注文はつけていないです。森崎さんはもともとダンスグループの活動をしていて、時々ちょっとした仕草がカッコよくなりすぎたり、セリフが甘く聞こえてしまうことがあるので、「そこ甘すぎるので抑えて」とお願いすることもありました。走るシーンが多いのですが、土村さんは新体操をしていて運動神経が良いせいか走りがあまりにも完璧すぎて、「もう少し崩した感じにして」とお願いすることもありました。
 
 
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■原作の世界観を借りて、ストレートに感情を表現するセリフが書けた。

――――深田作品のエンディングはいつも驚かされますが、今回は原作通りですか?
深田: ラスト30分は原作とだいぶん違っています。大概自分の映画はいつも直したいところだらけですが、今回のラストは何度見ても「いい映画だな」と満足しています。原作があることの強さで自分の作家性に捉われ過ぎず、あそこまで一気に描ききれました。セリフもオリジナルならここまで踏み込んだセリフを書かないというぐらい、原作の世界観を借りてストレートに感情を表現するセリフになっています。
 
――――前日、豊岡での先行上映では濱口竜介監督とトークもされたそうですが、どんな感想を話されていたのですか?
深田: 土村さんを絶賛して下さいましたね。面白かったのは自分が土村さんを選んだ理由から、濱口さんが『寝ても覚めても』で唐田さんを選んだ理由と近いという話になったことですね。僕はロバート・アルトマン監督の『ロング・グッドバイ』がすごく好きで、物語は探偵物のハードボイルドなのですが、撮り方が奇妙でズームをとにかく多用しているんです。今回は普段やっていないことを試すつもりで、カメラマンにも『ロング・グッドバイ』を見てもらい、ズームワークを多用したエピソードも話しましたね。
 

■コロナ禍で誕生したZoom演劇による最新作『ヤルタ会談オンライン』

――――ここでコロナ禍で深田監督がされた様々な取り組みについても伺います。日本時間で5月30日深夜から10日間Youtubeチャンネルで開催された「We Are One: A Global Film Festival」では『ヤルタ会談オンライン』のワールドプレミアが話題になりました。ミニシアターエイド基金の運営が忙しい最中に、よくぞと。お見事です。
深田: 計21の国際映画祭が参加するデジタル映画祭で、東京国際映画祭(TIFF)も参加するということで声をかけてもらいました。Youtubeで流すのは権利関係が大変なので結構ハードルが高かったのですが、どうせやるなら新作をと思ったんです。あれほどZoomでやるのに適した演劇はないし、多分オンラインでリモート撮影する様式は来年には古臭くなっているだろうから、このタイミングで発表するのが一番だとTIFFの矢田部さんに相談し、役者の皆さんもずっと演じていてセリフが入っているので2週間で作りました。
 
――――世界同時配信されましたが、どんな反応が寄せられたのですか?
深田: 最初は映画を観ながらチャットをするなんて映画人としてそれでいいのかという気持ちがあったのですが、リアルタイムで世界中から様々な言語で書き込みが寄せられるのを見ているのは楽しかったですね。どこまでこちらの意図が伝わったか分かりませんが、ヤルタ会談は結局アジア人差別で、戦勝国のアメリカ、イギリス、ロシアで戦後処理を決めてしまう。映画祭という文化自体もヨーロッパが発祥の文化という面もありますが、価値観がヨーロッパ中心で今でもアジアの映画祭がヨーロッパのプログラマーや監督を審査員に呼ぶことが通例になっている。ヨーロッパの3大映画祭(カンヌ、ヴェネチア、ベルリン)が映画祭的な映画の価値観を決め、アジアの映画祭がそれを後追いしている感じが拭えない。それに対するアンチテーゼとしてぶつけるのにちょうどいい作品だという狙いもあったんです。
 

■今まで目を背けていたことに目を向けざるを得なくなった人はたくさんいるはず。

――――【SHINPA 在宅映画制作】企画では3分の短編『move / 2020』を発表しています。ステイホーム中のみなさんを楽しませようというエンタメ系作品が多い中で、こんな静かな作品があってもいいのではないかとコメントされていますね。
深田: 元気が出るリモート作品が次々と現れる中、そういう傾向の作品だけになることに違和感を覚えていたのですが、残念なことに自殺者も増えています。コロナ禍で生活様式が変わり、できていたことができなくなり、仕事もなくなり価値観が揺さぶられています。正直に言えば自分はヒトが生きなくてはいけない意味はないと思っています。でも普通は意味もないのに生きるのは辛すぎるからそこには蓋をして忘れるようにして、生きる時間を騙し騙し進めてきたのです。その蓋は仕事かもしれないし、恋愛や家族を持つことかもしれない。でもコロナによってその蓋を開けられてしまった。これまで大切だと思ってきたものも不要不急と言われてしまう。生きることの根源的な意味に目を向けざるを得なくなった人はたくさんいるはずです。『move / 2020』を作ったのは、世の中の変化についていけない人が一定数以上いて、負けるなと励ますのではなく、ただそういう感情を写しとりたいという気持ちがありました。
 

■「ハラスメントはダメ」ときちんと口にすることは大事。

――――最後にアップリングのパワハラ訴訟問題後、深田監督は早々にご自身の考えを書面で公表されました。まさに映画界全体の問題ともいえるこの件についてのお考えを改めて伺えますか?
深田: 21歳の時に撮った自主映画『椅子』を初めて上映していただいて以来ほぼ全ての作品をアップリンクで上映しているので、無関係ではないです。僕自身は浅井さんと直接やり取りすることはなく、浅井さんと言葉を交わしても嫌な思いをすることはなかった。でも自分の作品を上映してくれているスタッフがハラスメントに遭っていたことは事実です。自分の映画を上映するときはそれに関わるスタッフの安全が担保されていることは最低限の信頼関係のはずなのにそれが崩れてしまった。だから上映予定だった『本気のしるし《劇場版》』は一旦引き下げることに決め、解決するかどうかを見守ることにしました。アップリンクとの関わり方は人によって濃淡がありますから各人の考えでいいと思いますが、一方で各人それぞれに態度表明が求められるような流れも高まっている。結局パワハラはそれが起きると当事者だけではなく多くの人が傷つくことになります。また昨年末、自分が深く関わっていたスタッフによる俳優へのセクハラが複数報告され、本人は無自覚ながらも行為自体は認めたので、一切仕事上の関係を絶たせてもらいました。今、文化の場での安全性が問われていると思います。これからこの業界に入りたいと思っている人たちにここは安全であると信用してもらうためにも、何事もなかったかのように進んでしまうのは危ういので、誰もが知っていることでも「ハラスメントはダメ」ときちんと口にすることは大事だと思います。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『本気のしるし《劇場版》』“THE REAL THING”(2020年 日本 3時間52分) 
監督・脚本:深田晃司
原作:星里もちる「本気のしるし」小学館ビッグコミックスペリオール
出演:森崎ウィン、土村芳、宇野祥平、石橋けい、福永朱梨、忍成修吾、北村有起哉他
10月16日(金)から出町座、10月17日(土)から第七藝術劇場、シネ・ヌーヴォ、元町映画館、10月23日(金)から豊岡劇場 にて公開。
 
<深田晃司監督舞台挨拶情報>
●10/17(土)京都 出町座 10時00分の回上映後
●10/17(土)大阪 第七藝術劇 15時05分の回上映後
●10/17(土)大阪 シネ・ヌーヴォ 18時40分の回上映後
●10/18(日)神戸元町映画館 12時10分の回上映後
 
公式サイト⇒https://www.nagoyatv.com/honki/ 
(C) 星里もちる・小学館/メ~テレ
 
 
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初の芸人マネージャー監督誕生!りんごと笑いの魅力が詰まった父子物語『実りゆく』八木順一朗監督、主演・竹内一希さんインタビュー
 
 長野県のりんご農家を舞台に20代の青年が芸人の夢を実らせようと奮闘する姿を父との絆を交えて描く『実りゆく』が、10月9日(金)よりTOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS他全国ロードショーされる。
 
 監督は芸能事務所タイタンのマネージャー、八木順一朗。自身が担当する長野在住芸人の松尾アトム前派出所をモデルに、第三回MI-CAN 未完成映画予告編大賞を受賞した「実りゆく長野」(”堤幸彦賞””MI-CAN男優賞”受賞作品)を完全映画化した。若手人気漫才コンビ、まんじゅう大帝国の竹内一希が主演の実(みのる)を演じる他、相方の田中永真が上京し芸人を目指す日々を送る幼馴染のエーマを熱演。実(みのる)の父親役には長野県出身の田中要次が扮し、実に味わい深い演技をみせる。本人役で爆笑問題や島田秀平が出演しているのも話題だ。そして、何よりももう一つの主演といえるりんごたちが実る様子や、りんごを丹念に育てるりんご農家の日常にも注目してほしい。
 本作の八木順一朗監督、主演・竹内一希さんにお話を伺った。
 

――――八木監督は芸能プロダクション、タイタンでマネージャーをされていますが、日本大学芸術学部監督コースご出身なので元々監督志望なのでは?
八木:小学生の頃から映画監督になりたいと思っていたので、タイタンに入社してからも夢を諦めきれず、予告編大賞に挑戦し、なんとか映画を撮りたいと思っていました。
 
 
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■長野県で一面のりんごの木にりんごの実がなっている風景を見たのが衝撃的。一瞬で物語になると閃いた。(八木監督)

――――予告編大賞エントリーの前に取材で長野を訪れたことが、本作を構想するきっかけになったそうですね。
八木:4年ぐらい前ですが地方ロケで、僕が担当のお笑い芸人、松尾アトム前派出所の長野の実家を訪ねたんです。スーパーで売られている状態のりんごしか見たことがなかったので、一面のりんごの木にりんごの実がなっている風景を見たのが衝撃的で、こんなに美しいものかと思いました。その場で木から取って食べさせてもらったりんごの味も格別でしたし、彼の人生やりんご農家を題材にした映画を作りたいという気持ちが芽生えました。芸人を目指す一方、実家の農家を継いでほしいというプレッシャーの間で葛藤する青年を描けば、りんごを実らせることと人生を実らせることを表現でき、物語になると一瞬で閃いたんです。それがはじまりしたね。
 
――――主人公の実(みのる)は幼い頃から吃音に悩み、漫才をするときだけはスラスラしゃべれるという設定ですね。
八木:人は自分が持っているハンディキャップのようなものを乗り越えてでも、何かを成し遂げようとするときは、よほど強い思いがあるはずです。実(みのる)も漫才師になりたいという気持ちの強さを示すために、このようなキャラクター造詣になりました。
 
 
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■実(みのる)を演じることで、今芸人の仕事をできていることがどれだけ恵まれているかが身に沁みた。(竹内)

――――竹内さんご自身は東京出身ですが、長野出身で家業を継ぐかどうかの葛藤を抱えながら東京で漫才師を目指す実を演じるにあたり、どのような準備をしたのですか?また実役を演じて感じたことは?
竹内:監督と吃音の方にお会いして、実際に困ったことや日常生活のことを伺い、台本を見ながらその時の実(みのる)の気持ちはどうかと一つ一つ考えながら、丁寧に取り組んでいきました。僕は東京育ちで実家暮らしですし、親は僕が出演する番組は全て録画して親戚中にお知らせするぐらい応援してくれる。だから今芸人の仕事をできていることがどれだけありがたく恵まれているかが、実(みのる)を演じることで本当に身に沁みました。これだけ困難があっても東京で漫才師を目指そうとするのは、本当にすごいやつだと思いましたね。
 
――――ちなみに竹内さんは大学卒業後は芸人になると決めていたのですか?
竹内:お笑いが好きで、大学の落語研究会で活動をしているうちに、他大学の落語研究会に所属している相方(田中永真)に出会いました。相方からコンビを組まないかと誘ってもらい、活動をしているうちに色々な人と出会う中で「お笑い芸人になれそうだ」という雰囲気が出てきたんです。そのまま大学4年の冬でまだ進路が決まっていなかったのに業を煮やした母が「もう芸人になりなさい。田中さんにお願いしてきなさい」と僕の背中を押してくれて今がある感じです。実の境遇と真逆の人生ですね。しかも映画の主演までやらせていただき本当に恵まれています。
 
――――担当芸人が数多い八木監督が竹内さんを実役に選んだ理由は?
八木:竹内君は東京生まれ東京育ちでありながら田舎の空気を携えている。かつ主役として光る芝居のうまさや表情の作り方もあると思ったので、もう竹内君しかいなかったですね。
 
――――竹内さんがコンビを組んでいる田中英真さんも自然とキャスティングされる流れだったのですか?
八木:実(みのる)の相方が良きライバルであり、親友であるという物語の骨格はできていました。過去にお笑い芸人でない人が芸人役をやる映画が多かったのですが、僕はマネージャーとして映画を撮る上で、お笑いのシーンは本物で撮りたかったので、そうなると選択肢は相方の英真君しかない。そして、本物のお笑いをフィルムに収めようと思ったんです。
 
 
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■映画のモデル、松尾アトム前派出所さんのサポート。

――――ネタも物語が進むにつれて少しずつ出来上がっていき、クライマックスではそれが大きなものに結実していきますが、ネタはどうやって考えたのですか?
八木:松尾アトム前派出所さんのネタなんです。松尾さんが普段一人で“田舎あるある”をフリップで出し、実際にやっているネタを漫才にしたんです。
 
竹内:芸人のシーンはここが下手だと僕らが出演する意味がない。ただでさえネタのシーンは緊張感があるのに、先輩のネタですべることはできないですから二重のプレッシャーでした。元々面白いネタなので、そこは大丈夫だと信じていましたけれど。
 
八木:この映画が全国公開されることで、松尾さんが逆に映画のネタをパクったと思われるのではないかと心配し「もう俺はあのネタできないよ」と言われ、申し訳ないことをしたなと思いましたね。
 
竹内:担当芸人のネタを奪うなんて、そんなマネージャーいないよ(笑)
 
――――長野ロケでは地元のエキストラの方を前にネタを披露されたわけで、逆に日頃生のお笑いライブを見る機会がないみなさんにとっても、新鮮だったのでは?
竹内:色々なカットを撮ったり、テイクを繰り返したりするので、現地エキストラのみなさんも疲れて笑いが減ってしまうこともあったのですが、セッティング中のわずか数分の間に松尾さんがきてくれ、自分のネタをやってワッと湧かせてくれたところで「じゃあ、いきます!」と僕たちのシーンを撮ることができた。本当の芸人のすごさを見せてくださいましたね。
 
 
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■もう一つの主役、りんご。「片時もタイミングを逃さないよう撮影も試行錯誤」(八木監督)、「葉摘作業の地道さ、大変さを学んだ」(竹内)

――――松尾さんは本当にこの映画の縁の下の力持ち的存在ですね。もう一つの主役はりんごですが、その撮影について教えてください。
八木:昨年5月ぐらいには映画を撮ると決まったので、松尾さんと松尾さんのご両親が、撮影する10月にきれいなりんごを揃えるため全精力を注いでくれました。日頃の松尾農園とは違う方法も試してくれ、ちゃんと赤くて美しいりんごを用意するために本当に尽力してくださったんです。僕とカメラマンで、そのりんごをどうすればキレイに撮れるか試行錯誤し、片時もタイミングを逃さないように日が昇る前からカメラを回したり、雨が降っていても回したりと色々なりんごを撮影し、少しずつ映画に入れていきましたね。
 
――――父親ともりんご農園の作業に従事するシーンも多いですが、実際にそれらの作業をした感想は?
竹内:松尾農園で撮影前に3~4泊して研修をさせてもらいました。梨の時期だったので、あらゆる種類の梨を収獲し、黄色い箱に入れて持っていくと、松尾さんのお父さんがその箱から形を見て梨を仕分けていくんです。りんご農園では映画でも登場する高所作業機に乗って、りんごの実にかかっている葉を摘む作業(葉摘)をします。りんごは陽に当たらないと赤くならないので、葉っぱがかかると、そこだけ白くなってしまう。真っ赤なりんごを作るためには葉摘をこまめにしなければいけないんだと思うと、本当に途方もない作業だなと痛感しました。作業の地道さ、大変さをすごく学びましたし、そこから仕入れの場所に持って行ったり、全て見せていただいたので、その体験が映画で出ればと思っています。 
 
――――実(みのる)の父親役の田中要次さんは長野県ご出身ですね。亡くなった実(みのる)の母は「自分の好きなことで(花を)咲かせなさい」と言いますが、父はどうしてもりんご農家を継いでほしいという気持ちが強く出てしまいます。
八木:元々竹内さんの父親役は雰囲気的に田中要次さんがいいなと思っていたら、長野県出身と伺い、それなら要次さんしかいないと確信しました。不器用さに人間味を感じるキャラクターです。
 
竹内:田中さんは音楽が好きな方なので、控え室では好きなミュージシャンの話をしたり、一緒に映画の主題歌を歌っているGLIM SPANKYの曲を聞いていました。ご飯にもつれていってくださり、距離を縮めて本当に演じやすいようにしていただきましたね。
 
 
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■「もし助監督になっていたら…」エーマ、ヒデ、朱美は、実(みのる)の分身であり、自分の分身でもある。(八木監督)

――――同郷の若者像として、実(みのる)、漫才師の夢を実現させるために東京で暮らすエーマ、地元で家庭を持ちりんご農家を継ぐヒデ(三浦貴大)とそれぞれの生き方や葛藤がうまく描かれていますね。
八木:僕の中では、日本エレキテル連合の橋本小雪さんが演じた朱美も実(みのる)の分身のような存在です。東京に行くと決めて出て行っていればエーマのようになっているし、残っていたらヒデのように、そして東京での夢が破れたら朱美のようになるのではないか。皆、一人の人間の一面のように思えるのです。僕は今マネージャーとして働いていますが、もし助監督になっていたらあいつのようになっているかなとか、実家に帰ったらあいつのようになっていたなとよく考えるのですが、それをそのまま映画に反映させた感じです。
 
――――爆笑問題さんのラジオ番組に実(みのる)が出演するシーンで事務所の大先輩との共演を果たしました。
竹内:ちゃんと台本はありましたが、爆笑問題のお二人が台本を一切読まないというスタイルでございまして…。いざ撮影となった時に、二人とも全然台本を読んでいないことが発覚して、そこで監督も「じゃあ、アドリブでお願いします!」と匙を投げられたものだから、こちらが大変でした。いつも通りしゃべっている爆笑問題さんと二人がいうことにアワアワしている青年というあのシーンは3人とも素の状態でしたね。
 
――――大ベテランに褒められると若手はうれしいし、エーマのように自分の方が上だと思っている人にはメラメラと心の炎が燃えるものなんですね。
八木:僕自身が監督になりたかったので、同い年の同級生が監督デビューするとSNSでアップしているのを見るとキーッという感情になる。それが反映されていますね。
 
 

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――――相方の田中さんと一緒に芝居をして、新たな面を発見できましたか?
竹内:本当に不思議な体験でしたね。最初は恥ずかしかったですが、撮影の雰囲気を作っていただいているので、僕らはそこに飛び込んで一生懸命やるだけでした。撮影中の宿も同じ部屋だったので、「明日のシーン、胸ぐら掴むんだよな〜」「怒鳴ったことなんてないよ、俺」なんて言いながら、弱音を吐き合いながらやっていきました。お互いに初めて見るような顔を見ることもでき、面白かったですね。
 
――――最後に、八木監督からメッセージをお願いいたします。
八木:スタッフの皆さん、主演の竹内さん、田中さんをはじめとするキャストの皆さん、僕が大好きな人たちと共に一つのものを作ることができたので、現時点で宝物のような作品になったと思います。本当にたくさんの人に見ていただければうれしいです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『実りゆく』
(2020年 日本 87分)
監督:八木順一朗 
出演:竹内一希、田中要次、田中永真、橋本小雪、三浦貴大、鉢嶺杏奈、小野真弓、島田秀平、爆笑問題、山本學 
10月9日(金)よりTOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、TOHO
シネマズ西宮OS他全国ロードショー
公式サイト → https://minoriyuku-movie.jp/
©「実りゆく」製作委員会
 

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松雪泰子 主演作! 黒木華、清水尋也 共演!

― 40 代独身 OL 川嶋佳子のちょっぴり後ろ向きだけどポジティブな 517 日の物語 ―

監督:大九明子(『勝手にふるえてろ』) × 原作・脚本:シソンヌじろう

 
映画『⽢いお酒でうがい』が、9 ⽉ 25 ⽇(⾦)から、ヒューマントラストシネマ渋⾕、テアトル新宿ほかにて全国公開されます。数々の映画やドラマなどに出演し、昨秋も「ミス・ジコチョー〜天才・天ノ教授の調査ファイル〜」の主演を務めるなど活躍のをますます広げる 松雪泰⼦ や、「凪のお暇」ほかで⼥性にも絶⼤な⼈気を誇る ⿊⽊華 、『ホットギミック ガールミーツボーイ』ほかで唯⼀無⼆の存在感を放つ若⼿個性派俳優の 清⽔尋也 、そして、原作綿⽮りさと再びタッグを組む最新作『私をくいとめて』が 2020 年冬公開予定で、『勝⼿にふるえてろ』や『美⼈が婚活してみたら』などで⼈⽣を上⼿く渡り歩き切れていない⼥性を撮らせたら右に出る者がいない ⼤九明⼦監督 が結集した本作。
この度、いよいよ劇場公開を迎えるにあたり、本作で松雪泰⼦演じる佳⼦の⽣活に⼤きな影響をもたらす岡本くんを演じる清⽔尋
也の魅⼒を惜しみなくお伝えします。
 

amaiosakede-500-4.JPG出演映画が続々と公開︕︕

唯⼀無⼆の存在感を放つ、21 歳の個性派俳優

清⽔尋也の魅⼒に迫る︕︕

 
清⽔尋也(しみずひろや)1999 年 6 ⽉ 9 ⽇⽣まれの 21 歳。186 cm。
出演作の映画『渇き。』で、壮絶なイジメに遭うボク役を好演し注⽬を集める。
主な映画出演作に、『ソロモンの偽証 前編・事件/後編・裁判』、『ちはやふる 上の句・下の句/結び』、『3D 彼⼥ リアルガール』等。2019 年、映画『貞⼦』『パラレルワールド・ラブストーリー』『ホットギミック ガールミーツボーイ』に出演し、第 11 回 TAMA 映画賞 最優秀新進男優賞を受賞。2020 年 6 ⽉にはファースト写真集『FLOATING』も発売。
また、本作『⽢いお酒でうがい』に加え、『⻘くて痛くて脆い』(8 ⽉ 28 ⽇より公開中)、『妖怪⼈間ベラ』(9 ⽉ 11 ⽇より公開中)と、直近だけで 3 作品の公開映画があり、さらに⼈気漫画を実写映画化した『東京リベンジャーズ』(近⽇公開)への出演も発表されるなど、今、⼤注⽬を集める若⼿俳優である。
 

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Q. 本作のように、実際に、⼆回り近く年が離れている⼥性を恋⼈の候補として考えられますか︖
A. 好きになったら何歳でも気にしない、候補として考えられますかということですが、年齢は条件として考えていなくて、好きになってから年齢を聞いて、それが⼆回り上だったとしても「そうなんですね」くらいの感じです。
 
Q. 年上の⼥性の魅⼒、憧れる部分はありますか︖
A. 落ち着きや⾃分の知らない知識を聞けること。撮影現場でも録⾳、照明、カメラマン、製作、演出など様々な部署の⼀⼈⼀⼈が別の⾓度から現場を⾒ているから、景⾊が違い、考え⽅も違う。俳優部の⾃分が⾒えていないものや⾃分の知らない知識を持っている⼈の話を聞くことが好きです。恋愛に限らず、友⼈でも⾃分より⻑く⽣きている⼈の⽅が、多くの物事を⾃分の⽬で⾒ているので、⾃分の持っていない知識を持った年上の⼈には魅⼒を感じます。
 
Q. ⼈⽣の中で⼼奪われることはありますか︖
A. ⼈⽣で⼀度、中学⽣の時にすれ違った⼈に⼀⽬惚れしたことがあります。洋服が好きで、ビビッと来たものは何が何でもその⽇のうちに買います。⾳楽が好きで、瞬発的に好きになる曲と、曲を何回も聴いて、構造や歌詞などの奥深い部分を理解し好きになることがあります。
 
Q. 実際の⾃分と、演じた岡本くんは似ていますか︖
A. 岡本くんと⾃分を全体的に評価すると似ていません。ただ、恋愛、家族、友⼈の中で⼈として好きだなと感情を抱くのは、何かをひたむきに楽しんでいる、その⼈が好きなものと触れ合っている瞬間を⾒た時で、劇中の岡本くんも佳⼦さんがワインを飲んでいる姿が好きなので、その感覚は理解し共感できます。
 
Q. 役者を⽬指したきっかけは︖
A. 4 つ上の兄が役者で、兄が主演の映画の初号試写を⺟と観に⾏った時、当時のマネージャーに「弟君もやらないか」と⾔われたことです。はじめは興味がなくて何度か断ったのですが、レッスンに⾏く機会があり、それが思いのほか楽しかったのでやることにしました。
 
Q. 今後の俳優像、⽬指しているものは︖
A. 俳優にこだわっているわけではなく、直⾯している作品をいかにいいものにするかに全⼒を注ぎたいです。それを積み重ねていけば、どういう結果でも後悔はしないと思います。ゴールを決めるとプロセスも決まってしまうし、レールに敷かれるのが嫌いだから、⾃分の道は⾃分で選びたいです。
 
取材全体を通して、21 歳とは思えない余裕のある対応や回答から落ち着いた印象を感じ、俳優だけでなく⾃分のできることには挑戦していきたいという野⼼も⾒せており、今後の活躍がより⼀層期待できます。

 

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【清⽔尋也から到着したメッセージ】
 
無事、皆様にお届け出来る事が決まり、楽しみな気持ちとホッとした気持ちで胸が⼀杯です。劇場での鑑賞には、まだ不安な気持ちが残る⽅もいらっしゃるかと思いますが、充分な予防対策の上、出来るだけ多くの⽅に⾜を運んで頂ければ嬉しいなと思っています。
撮影からは約 1 年半が経過し、スタッフ,キャストの皆さんと共に奮闘した⽇々が懐かしいです。それぞれが持てる⼒を最⼤限発揮し、良い作品を作りたいという想いの元に完成した映画「⽢いお酒でうがい」です。どこか常に緊張しているような、ふと気疲れしそうになってしまう毎⽇ではありますが、この映画を通して少しでも安らぎをお届け出来れば嬉しいです。是⾮、劇場でご覧下さい。
 

『⽢いお酒でうがい』
 
松雪泰⼦、主演作︕ ⿊⽊華、清⽔尋也 共演︕
『勝⼿にふるえてろ』『美⼈が婚活してみたら』の⼤九明⼦監督 最新作︕
40 代独⾝ OL・川嶋佳⼦のちょっぴり後ろ向きだけどポジティブな 517 ⽇の物語
 
シソンヌじろうがネタで演じていた“⼥性キャラ”がスクリーンに︕

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原作は、2014 年に第 7 回キングオブコントで王者に輝いたお笑い芸⼈ シソンヌじろう が、ネタの中で⻑年演じてきた代表的キャラクターである“川嶋佳⼦(かわしまよしこ)”がもし⽇記を書いたら・・・と執筆された同名⼩説「⽢いお酒でうがい」。2015 年の年末に出版されると、佳⼦が⽇記に綴る詩的な⾔葉の感性や、⽇記が持つ世界観、佳⼦と同僚の若林ちゃんの世代を超えた仲睦まじい関係に共感する感想で、ネット上をざわつかせた。じろう本⼈も「⾃分の中の⼥性が勝⼿に書いている」と公⾔するほど、⽇記の中のエピソードは⼥性が共感するものばかり。佳⼦はじろうであり、じろうは佳⼦である。⼀⼼同体となって書き綴られた数々の⽇記という形式のエピソードの中から、⼤九監督とじろうが選りすぐったものを、じろう⾃⾝が脚本を⼿掛け、⼤九監督が映像化した。
 
松雪泰⼦、⿊⽊華、清⽔尋也ら実⼒派キャストが集結︕
ちょっぴり後ろ向きだけれどポジティブに⽣きる、主⼈公の 40 代独⾝ OL・川嶋佳⼦を演じるのは 松雪泰⼦ 。強烈なキャラクターから⼦供を持つ⺟まで幅広い役柄を演じてきたベテラン⼥優・松雪泰⼦が、平凡だけれど、切ないことも、そして嬉しいことも起きる⽇常の中に散りばめられている喜びに、そっと寄り添って⽣きる⼥性像を丁寧に演じている。

佳⼦にとって何気ない変わらない⽇常の中で、⼀番幸せな時間を⼀緒に過ごせる後輩の同僚・若林ちゃんを ⿊⽊華 。本作を観た⼥性は「若林ちゃんのような後輩、同僚が欲しい︕」と切望するのは必⾄︕
佳⼦の⽣活に⼤きな変化をもたらす、ふた回り年下の岡本くんを 清⽔尋也 が、フレッシュに、そして愛らしく演じている。最初オファーが来た時には、松雪の恋⼈役を演じることを知り恐縮したという清⽔だったが、「恋する気持ちに年齢は関係ない」と奮起したという。

『勝⼿にふるえてろ』で“釣りおじさん”として⼤きなインパクトを与えた 古舘寛治 や、 前野朋哉 、 渡辺⼤知 らが、本作でも、それぞれのシーンで松雪とインパクトに満ちた共演を果たしている。さらに、 レイザーラモン RG や、空気階段の 鈴⽊もぐら も、本作では芸⼈としてではなく、役者として⾒事にその存在感を放つ。「お⺟さんでも、奥さんでもない、⼤⼈の⼥性を主⼈公にした映画を撮りたいと思っていた」という⼤九監督の穏やかな優しい映像美と演出。そして、“川嶋佳⼦+若林ちゃん+岡本くん”の 3 ⼈の⾏く末が気になる展開と結末は、観る⼈多くの⼼に、温かな幸せの時間をもたらすだろう。
 

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【STORY】 
これは私の⽇記。誰が読むわけでも、⾃分で読み返すわけでもない、ただの⽇記・・・
出版社で、ベテラン派遣社員として働く 40 代独⾝ OL の川嶋佳⼦(松雪泰⼦)は、毎⽇⽇記をつけていた。⾃由気ままなお⼀⼈様な毎⽇は、撤去された⾃転⾞との再会を喜んだり、変化を追い求めて逆⽅向の電⾞に乗ったり、⾒知らぬ⼈と川辺で歌ったり、踏切の向こう側に思いを馳せたり、亡き⺟の⾯影を追い求めたり・・・。平凡そうでいて、ちょっとした感動や、何か発⾒がある⽇々。ちょっぴり後ろ向きだけれど、しっかりポジティブに⽣きている。

そんな佳⼦の⼀番の幸せは、佳⼦を慕ってくれる年下の同僚の若林ちゃん(⿊⽊華)と過ごす時間。ランチはもちろん、お酒を飲んだり、カラオケに⾏ったり。⾃分の誕⽣⽇が「昨⽇だった」と⾔った時には、⼀緒に祝えなかったことを本気で怒られたが、年の差を超えた友情に⼼が熱くなり、絆の深まりを感じていた。佳⼦にとって若林ちゃんは、天使の⽣まれ変わりだと思えるほどの存在となっていた。

ある⽇、佳⼦の平穏な⽇々に⼤きな変化が訪れる。それは、若林ちゃんの後輩男⼦で、⾃分よりふた回り年下の岡本くん(清⽔尋也)との出会い。天使の存在の若林ちゃんは、恋のキューピッドとして、佳⼦と岡本くんとの恋の始まりを演出する。「⽩⿊がちだった⽇常にちょっと⾊がついてきた気がする」と思い始める⼀⽅で、「なんとなくだけど答えは出ている気がする」と佳⼦は⾃問⾃答。鏡の前で何度も「素直に受け⼊れなさい」と⾃分に⾔い聞かせる佳⼦だが・・・
 


出演︓松雪泰⼦ ⿊⽊華 清⽔尋也 古舘寛治 前野朋哉 渡辺⼤知 RG(レイザーラモン) 佐藤貢三 中原和宏 ⼩磯勝弥 坂本慶介 鈴⽊もぐら(空気階段)
監督︓⼤九明⼦
脚本︓じろう(シソンヌ)
原作︓川嶋佳⼦(シソンヌじろう)『⽢いお酒でうがい』(KADOKAWA 刊)
※脚本と原作で、じろう(シソンヌ)の表記が異なりますが、左記でお願いいたします。
⾳楽︓髙野正樹
製作︓藤原寛 エグゼクティブプロデューサー︓坂本直彦 スーパーバイザー︓⿊井和男、古賀俊輔 企画︓佐々⽊基
プロデューサー︓⾼島⾥奈、⼤森⽒勝、⼋尾⾹澄 共同プロデューサー︓⽥中美幸 ライン・プロデューサー︓本島章雄
撮影︓中村夏葉 照明︓渡辺⼤介 美術︓秋元博 録⾳︓⼩宮元 編集︓⽶⽥博之 装飾︓東克典、奈良崎雅則
⾐裳︓宮本茉莉 ヘアメイク︓外丸愛 ⾳響効果︓渋⾕圭介 助監督︓成瀬朋⼀ 制作担当︓今井尚道
制作プロダクション︓C&I エンタテインメント 制作︓吉本興業、テレビ朝⽇
製作・配給︓吉本興業
映倫区分︓G
コピーライト︓©2019 吉本興業
2019/カラー/⽇本/107 分/アメリカンビスタ/5.1ch
<公式ウェブサイト> https://amasake-ugai.official-movie.com 
<公式 Twitter>https://twitter.com/AmaiOsakeDeUgai
 

9 ⽉ 25 ⽇(⾦) ヒューマントラストシネマ渋⾕、テアトル新宿ほか全国ロードショー


(オフィシャル・レポートより)
 

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