レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2019年11月アーカイブ

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『男はつらいよ お帰り 寅さん』豊中市先行上映会
(2019.11.29 豊中市立文化芸術センター)
登壇者:山田洋次監督、浜村淳 
 
  『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』(97)から22年、第1作公開から50年の今年、『男はつらいよ』シリーズの記念すべき第50作『男はつらいよ お帰り 寅さん』が12月27日(金)より全国ロードショーされる。
 それに先駆け、山田洋次監督の生誕の地であり、名誉市民に選ばれた豊中市で11月29日(金)豊中市立文化芸術センターにて先行上映会が開催された。長内繁樹豊中市長(写真左)の挨拶の後に登壇した山田洋次監督(写真中央)は、「建築が好きな父は、新婚の家をどうしても新築したくて、自分で設計し、当時としてはとてもモダンな赤い屋根の家を建てました。その後住んでいただいた方が丁寧に使ってくださったおかげで、今でもそのまま残っています。『男はつらいよ お帰り 寅さん』は50年かけて作った映画、こんなにたくさんの人に観てもらえるのをとても嬉しく思います」と満席の観客を前に挨拶した。
 
 
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 引き続き、大阪の名パーソナリティーで映画評論家の浜村淳(写真右)が登壇。そそっかしい寅さんは、寅さんを演じた渥美清さんに重なるのかと聞くと、山田監督は「渥美さんの中に寅さんがいました。あんなに頭のいい人には会ったことがないというぐらいクールな人で、渥美さんと話していると彼の中に寅さんがいるとわかる」と渥美さんの人柄を振り返った。さらに寅さんが語る名言に話が及ぶと「渥美さんの顔を見ていると、いろんな言葉が浮かんでくる」と渥美さん自身が創作の源であったことを明かした。
 
 
 寅さんといえば、本人は真面目なつもりの物言いが思わず笑いを誘うシーンが度々登場するが、押し付けがましい演出は嫌いなのかという浜村の問いに「面白いセリフを面白い言い方でいうと、面白くなくなる。寅さんが『青年!』とか『労働者諸君!』と言うと可笑しくなるという期待と、お前はそれほどの人間だったのかという色々なことを含めて可笑しくなったりもするんです」と可笑しさの演出について、持論を語った。
 
 
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 寅さんの映画で欠かすことのできないマドンナについて話が及ぶと、過去4回と最多出演の浅丘ルリ子が演じるリリーについて「リリーは、寅さんとの関係が一番ユニークな女性。それまでは良家のお嬢さんにボーッとしていた寅さんだが、リリーは彼と同じような境遇で、仕事も似ている。寅さんも仲間意識があったはず。だから、二人が同棲しても、いやらしさがなかったんです」
 
 
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 寅さん映画の真骨頂は笑わせながらも、ほろりと泣かせるところだが、山田監督は「まじめな人でも、角度を変えると滑稽に見えるもの。そうすればどんな人間も面白く見えるし、それは人間を暖かく見ているということなんです」と人物描写の妙を語った。浜村は自身が泣けたという榊原るみが10代でマドンナを演じた第7作『男はつらいよ 奮闘篇』のシーンを実況中継。知的障害のある太田花子(榊原るみ)が青森に帰る時、寅さんがみかんの袋を持たせると、誤って袋を落としてしまい、みかんが階段から転がり落ちるというくだりについて熱く語ると、山田監督も興奮気味にマイクを握り、「あのシーンは大変だったんですよ。みかんが思ったような場所に落ちてくれなくて、何度も撮り直しをしたら、榊原るみさんはまだ若かったので、なぜ何度もやり直すのかわからなかったみたいで・・・」と撮影秘話を披露。浜村のネタバレも含めた熱血寅さんトークに、山田監督も「よく覚えてますね」と感嘆しきりだった。

(文:江口由美、写真:河田真喜子
 

<作品情報>

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『男はつらいよ お帰り 寅さん』
(2019年 日本 115分)
監督:山田洋次 
出演:渥美清、倍賞千恵子、吉岡秀隆、後藤久美子、前田吟、池脇千鶴、夏木マリ、浅丘ルリ子、美保純、佐藤蛾次郎、桜田ひより、北山雅康、カンニング竹山、濱田マリ、出川哲朗、松野太紀、林家たま平、立川志らく、小林稔侍、笹野高史、橋爪功他
 
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「組織の論理と個の論理のせめぎ合いが、メディアにとって大切」
東京新聞望月衣塑子記者に密着した『i 新聞記者ドキュメント』森達也監督インタビュー
 
 6月に劇場公開された映画『新聞記者』(藤井道人監督)の原作者であり、官邸記者会見では菅官房長官へ鋭い質問を投げ続けている東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんに、森達也監督(『A』『A2完全版』『FAKE』)が密着。安倍政権下の不祥事や未解決問題をエネルギッシュに取材する望月さんの姿や、官邸記者会見での生々しいやり取りを通して、政権やメディアの今、さらにはその情報を受け取り、消費する我々に訴えかけるドキュメンタリー『i 新聞記者ドキュメント』が、第七藝術劇場、シアターセブン、京都シネマで絶賛公開中だ。(11月29日より神戸国際松竹、イオンシネマ加古川、MOVIX八尾、イオンシネマ四條畷、イオンシネマ高の原、イオンシネマ西大和、イオンシネマ和歌山 にて公開)
 
 ワールド・プレミア上映された第32回東京国際映画祭では、日本映画スプラッシュ部門作品賞を受賞。現在の日本社会を鋭く切り取った本作は、11月15日の全国公開後、ぴあ映画初日満足度ランキング第1位に輝いた。望月さんと菅官房長官との攻防だけでなく、官邸記者会見の撮影許可を巡る森監督の闘いも描かれ、あちらこちらでバトルの火花が散る。かと思えば、望月さんの意外な一面や、取材に応じた籠池夫妻とのやり取りでは思わず笑いがこみ上げる。「僕の映画は、どんどん笑ってほしい」という森達也監督に、望月さんの取材活動に密着することで見えてきたこと、官邸とメディア、さらには我々につながる問題点について、お話を伺った。
 

 
―――6月に公開された劇映画『新聞記者』に引き続き、ドキュメンタリーを発表するというダブルリリースでしたが、元々森監督は、劇映画の監督を依頼されていたそうですね。
森:僕は学生時代から自主映画を撮っており、劇映画出身です。たまたま就職した会社がドキュメンタリーを制作していたので、ドキュメンタリーを撮り始めましたが、劇映画も撮りたいと思っていました。実際に前作『FAKE』(16)の後、テレビドラマを1本監督しています。最初、河村プロデューサーから『新聞記者』の企画を見せていただき、監督を打診されたのでお受けしたのですが、脚本を詰めている時に「劇映画とドキュメンタリーの両方は無理かな」と言われたのです。さすがに両方は無理なので断って、最終的に劇映画の方は藤井道人監督にやっていただき、僕はドキュメンタリーに専念することにしました。テレビ時代も含め、僕は今まで一度も女性を撮ったことがなく、今回が初めて。同じことを続けていても面白くないので、手法も含め、いつもとは違うことをやるつもりでした。
 
 
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■当たり前のことをしている望月さんが、なぜこんなに注目されてしまうのか。

―――女性を撮るのは初めてとのことですが、東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんは、本当にエネルギッシュですね。実際に密着しての感想は?
森:撮りはじめて、男女差は関係ないなと思いました。他の人の3倍ぐらいの速さの時間軸で動いているみたいな感じですよね。撮っている間に彼女のモチベーションの高さや、アクティビティの強さ。同時に方向音痴で、ちょっと抜けているところも見えてきた。望月さんには過剰すぎる部分もありますし、パーフェクトな人ではないけれど、彼女がやろうとしていることは、記者として当たり前のことだと思う。でも当たり前のことをしている望月さんが、なぜこんなに注目されてしまうのか。それは密着して実感したことですね。
 
 

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■「なぜこんなに大きな事件や不祥事がグレーのままで終わってしまっているのか」という思いは望月さんと同じ。

―――望月さんは辺野古基地移設問題、伊藤詩織さん準強姦事件、森友問題、加計問題と、安倍政権下で起きた様々な問題、事件に密着し続けています。新元号の祝祭感で、政権が国民から忘れさせようとメディアを使って印象操作をしているように思える問題を、オウム真理教事件をずっと追い続けている森監督は、どんな思いで撮影していたのですか?
森:望月さんと同じ思いはありました。彼女に同行して籠池夫妻や前川喜平さんに会いながら、なぜこんなに大きな事件や不祥事がグレーのままで終わってしまっているのだろうかと改めて思いました。過去形ではなく現在進行形です。例えば今も、沢尻エリカ(11月17日MDMA所持の疑いで逮捕)でテレビが一色になりかけています。このままでは、桜を見る会が政治献金規制法に違反しているという疑惑もまた、グレーのままに終わってしまう可能性がある。ならばこれは政権側の工作であり、メディアの権力への忖度なのか。……そう主張する人は少なくないけれど、僕はその見方については違和感があります。それは考えすぎだと思う。ならばなぜテレビは一色になるのか。視聴率が上がるからです。つまり多くの国民が、政権の重大な疑惑よりも沢尻エリカの事件に反応するからこそ、テレビは今の状況になっている。例えば今、デモが内戦下状態にある香港で芸能人の不倫報道を流しても、誰も関心を示さないでしょう。でも日本では沢尻エリカ報道一色になってしまうのは、メディアもどうしようもないけれど、国民もどうしようもない。そういうことは感じてほしいと思います。
 
 
―――森監督が常々おっしゃっておられる「メディアは市場原理によって社会の合わせ鏡になる」ということですね。
森:権力は暴走するし腐敗する。それは世の常です。だからこそメディアがしっかりと監視しなくてはいけない。今のこの国のメディアがその機能を果たしていない理由のひとつは、市場である日本社会が関心を示さないからです。この映画はメディアと政治に対する批判性はもちろんありますし、ご覧になるほとんどの方はそれを感じると思いますが、それを自分自身にフィードバックしてほしい。
 
 
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■オウム真理教事件以降高まってきたセキュリティ意識が、どんどん強まっている。

―――タイトルの「i」には団体ではなく、個人で考える存在であれという気持ちが込められているように思いますが、3年前の『FAKE』の頃と比べて社会の動きをどう捉えていますか?
森:特に最近、映画や展示会、トレンドアートの表現の自由に対する色々なバイアスがものすごく大きくなってきています。一部の人は権力の検閲であると訴えていますが、これについても僕は違和感がある。基本的には自主規制です。ならばなぜこれほどに自主規制が露骨になったのか。オウム真理教事件以降に発動したセキュリティ意識がどんどん強まっているからです。
 
 
―――セキュリティ意識が強くなった結果、表現関係の自主規制が起こっているということですね。
森:言論や表現には絶対にリスクや加害性がある。ところが、「万が一のことが起きたらどうするんだ」という声に異議を唱えることができなくなっている。不安や恐怖が増幅している。リスクを軽減することは間違っていない。ただ、リスクをゼロにすることは不可能です。でも一つだけ方法がある。展示や上映や発言をやめればいい。その連鎖が続いています。でも、それはまさに、万が一交通事故に遭うかもしれないから家から出ない、との発想と同じです。そんな人生が豊かになるはずがない。
 

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■記者クラブというシステム、最近はマイナスばかりが突出してきた。

―――本作では記者の望月さんが、官邸記者会見で菅官房長官と火花を散らす闘いだけでなく、森監督自身も会見を撮影したいと再三申し出、手続きを行いながらも杓子定規的対応で結局許可が下りないフリーランスジャーナリストの闘いが描かれます。外国人ジャーナリストの意見でも、日本の官邸記者会見や記者クラブが非常に閉鎖的であることを問題視していましたね。
森:記者クラブは明治に始まったシステムで、多くの人が問題視していることは事実ですが、功罪両方があると思います。映画でも登場したギルド的な視点で捉えると、強大な権力と対峙するためにメディアが連帯する記者クラブは、意義があると思います。ただ功罪の罪の部分では、排他性や、一つにまとまるので権力に利用されやすい、などがある。プラスマイナスの両方あるシステムですが、最近はマイナスばかりが突出してきています。それならばシステムを修正するべき。ところが変わらない理由は、政治権力側も今の状態は都合がいいし、メディア側もすぐに情報が共有でき、ある意味で安心できるからだと思います。政治とメディアが相互依存するシステムになってしまった以上、僕は変えるべきだと思っています。会見場の席はあれほどに空いているのだから、もっと広く開放すべきです。
 
 
―――官邸記者会見では望月さんが再三、菅さんに切り込んでいましたが、他社の記者で同じように切り込む人はいないのでしょうか。
森:政治部は政治家と良好な関係を作り、社会部が切り込む。これが日本の組織ジャーナリズムのひとつのスタイルでした。このハーモニーがうまく機能していた時期も確かにあった。でも、今は社会部が弱くなった。ならば権力監視が機能しない。僕も望月さん以外の記者がどうしているのか、聞きたいです。
 

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■鈍感さとセキュリティ感度の低さで「怯えすぎない」

―――望月さんと菅さんの攻防では、食い下がる望月さんを、菅さんが一言でバッサリと切り捨てる姿が幾度も登場し、望月さんは仕事とはいえ、本当にメンタルの強い方だなと思わずにはいられませんでした。
森:確かにメンタルは強い。でもそれよりもむしろ、場を見ない力のほうが強いかもしれない。カメラの前でも、本当に無頓着というか無防備すぎる瞬間が何度もありました。僕もかつてオウム真理教のドキュメンタリー映画『A』を撮った時、周りから「どうやって撮ったのか」「なぜおまえだけが施設に入れたのか」などとよく質問されました。答えは単純です。撮っていいかと聞いたらOKしてもらえたから撮っただけ。むしろ、なぜ他の人は撮らなかったのかと言いたいぐらいです。推測だけど、多くの人はオウムの危険性やオウム側と見なされるリスクなどセキュリティのアンテナが働き、あの時期にオウムの施設に入らなかったけれど、僕はアンテナがないので施設に入って撮ることができた。そう思っています。セキュリティの感度は場や空気から感染します。空気を読めないという意味では、僕と彼女は共通点がある。ただし彼女は僕よりも圧倒的にメンタルが強い。それは確かです。
 
 
―――7月の参議院選まで盛り込まれていたので、公開直前まで編集他の作業が続いたと思いますが、そんな中、『i 新聞記者ドキュメント』は10月開催の東京国際映画祭(TIFF)日本映画スプラッシュ部門でワールド・プレミア上映されました。
森:当初は6月に撮影終了、8月に編集終了して、9−10月は宣伝期間に当てるつもりでしたが、結局10月まで撮影していたので、TIFFのプログラミングディレクター、矢田部吉彦さんには編集途中のものを見てもらい、「ぜひ、やりたい」と言ってくださった。僕自身、今までTIFFには全く縁がなかったし、国際的にTIFFは商業主義が色濃い映画祭と見られているので、僕の映画なんか上映するはずがないと思っていた。しかも原一男監督の『れいわ一揆』と併せて特別上映と提案されたのに、本作の河村プロデューサーは「コンペティションにエントリーする」と言いだした。何を考えているんだ裏目に出るだけじゃないか、と思いました(笑)。でも最終的には日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞できた。河村プロデューサーの直感と、いい意味での鈍感力、上映を決断してくれたTIFFの矢田部さんの力が大きいですね。
 
 
―――TIFF全体としては、商業主義と言われがちですが、矢田部さんがプログラミング担当のコンペティション部門ではそれぞれの国のタブーを新しい手法で描く意欲作が揃っていました。一般的な評価を鵜呑みにせず、自分で観たい作品を探せば、映画祭のまた違う面を発見できるはずですね。
森:メディアも営利企業ですから、市場原理が基底に働くことは当たり前です。だからこそ組織に帰属する記者やディレクターの抗いや闘いが重要です。僕はそのダイナミズムや、組織の論理と個の論理のせめぎ合いがメディアにとって大切だと思います。そのせめぎ合いが消えてしまったら、組織の論理で埋め尽くされてしまいますから。映画撮影時に、官邸記者会見で望月さんが質問をしようとするたびに、最前列で菅さんと目配せをしていた記者がいました。いわゆる番記者ですね。でも最近異動があったらしく、今の記者は、望月さんが驚くほど鋭い質問を菅さんに浴びせているそうです。やはり、会社じゃなくて、個人なんですよ。
 
 
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■これほどに固有性を隠す日本のメディアは普通ではないことに気づくべき。

―――政治、メディア、日本社会とそれぞれが悪しき方向に向かっていく中で、今一度、問題意識を持ってもらうために、どうすればいいと考えておられますか?
森:『i 新聞記者ドキュメント』を1000万人が見てくれれば、少しこの国が変わるのではないかと思います。……まあそれは分不相応な夢としても、こうした映画やテレビ、記事などが、もう少し増えてもいいのでは、とは思います。アメリカなどでは、この数年だけでも、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』や『バイス』、『記者たち 衝撃と畏怖の真実』など、政治やジャーナリズムを題材にした作品が、すべて会社や個人の実名を使いながら、数多く公開されている。ところが日本の場合、政治やジャーナリズムをテーマにした数少ない映画やテレビドラマでも、ほぼすべて朝毎新聞とか帝都テレビとか、仮名が当たり前。テレビ報道やドキュメンタリーはモザイクだらけ。僕たちはそれが当たり前だと思っているけれど、これほどに固有性を隠す日本のメディアは普通ではない、ということに気づくべきです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『i 新聞記者ドキュメント』(2019 日本 120分)
監督:森達也
出演:望月衣塑子他
11月16日から第七藝術劇場、シアターセブン、京都シネマ、11月29日から神戸国際松竹、イオンシネマ加古川、MOVIX八尾、イオンシネマ四條畷、イオンシネマ高の原、イオンシネマ西大和、イオンシネマ和歌山 にて公開。
公式サイト → http://i-shimbunkisha.jp/
 
※シアターセブンで12月7日(土)〜12月20(金)まで「森達也監督 特集上映」開催
上映作品:『A』(98)、『A2 完全版』(15)、『311』(11)、『FAKE』(16)
 
(C) 2019『i-新聞記者ドキュメント-』
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堤真一&岡村隆史W主演!

「殿、利息でござる!」「忍びの国」中村義洋監督最新作

堤真一・岡村隆史が撮影の地・京都に凱旋!

人力車で練り歩き街中が騒然!

11/19(火)京都凱旋お練り・舞台挨拶  


日時◆2019年11月19日(火) 
場所◆<お練り>新京極商店街   <舞台挨拶>MOVIX 京都 
登壇者◆堤真一、岡村隆史、中村義洋監督 


kessanchu-logo.jpg東大教授・山本博文による『「忠臣蔵」の決算書』(新潮新書刊)を映画化した「決算!忠臣蔵」が 11 月 22 日公開。 大石内蔵助が実際に残した決算書を基に、討ち入り計画の実像をお金の面から描いた本作。大石内蔵助(おおいし・くらのすけ)に堤真一、内蔵助を支える貧乏なそろばん侍・矢頭長助(やとう・ちょうすけ)に、時代劇初挑戦の 岡村隆史がW主演。
 
話題沸騰の本作ですが、公開を3日前に控えた11月19 日(火)、京都の新京極商店街にて凱旋イベントを実施しました。 忠臣蔵で京都といえば、大石内蔵助ゆかりの地でも有名です。討ち入り前の 1 年間、大石は京都の山科に住居を構えていました。また、大石が討ち入りを決断した円山(まるやま)会議の舞台となったのも京都です。さらに、今年の1月・2月、京都にて、本作の撮影が行われました。この日は新京極商店街全面協力のもと、堤真一・岡村隆史・中村 義洋監督・池田史嗣プロデューサーが京都を人力車で練り歩きました! 当日は忠臣蔵の討ち入り装束を模した特注の法被に身を包み、およそ 250m ほどの雑貨店や飲食店が立ち並ぶ商店街の中を、観衆の声援に応えながら人力車で巡りました。
 

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お練りのゴール地点、MOVIX 京都での舞台挨拶にも登場し、京都撮影所での思い出や、公開を目前に控えた心境を語りました!初めて人力車に乗った堤は「すごく恥ずかしかっ たけど乗り心地はとてもよかった」と照れながら述べつつ、「 今年の一月と二月の寒い京都で撮影をしました。 忠臣蔵は京都でも縁のあるお話ですので、皆さんぜひ、劇場に足をお運びください。」と力を込め、 岡村は「改めまして、ムービースター岡村隆史です。映画では今までとは違う岡村隆史が見られます!『役者やって んだな』と思っていただければと思います」とコメントし、会場を沸かせました。 

 


 

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《以下は、その詳細レポートです。》
イベント開始間際になると一気に人が集まりだし、今か今かと待ちわびた観客が詰めかけ、アーケード街は一時騒然とした雰囲気に!大勢の観客が見守る中、人力車の前列に堤・岡村が、後列に中村義洋監督・池田史嗣プロデューサ ーが乗り込み、新京極商店街の交差点をスタートした。 堤・岡村を一目でも見ようと、声を掛けるファンや、学校帰りの学生たち、観光客が商店街に押し寄せた。 およそ 250mほどの雑貨店や飲食店が立ち並ぶ商店街の中、観客や商店街店主からの声援に見送られながらゆっくりと練り歩いた。 当日は忠臣蔵の討ち入り装束を模した特注の法被に身を包んだ一行は、トラメガを片手に堤「皆様ありがとうございます。『決算!忠臣蔵』は 11 月 22 日より全国公開です」 岡村「劇場でカッコいい姿を見てください」と、映画のPRを繰り返した。

kessanchu-ivent-550.jpg堤・岡村に握手を求めるファンに応えながら、アーケード街を進み、中間地点の誓願寺に到着。 誓願寺前で新京極商店街理事長の岡本喜雅氏より、堤と岡村から商売繁盛祈願の小判を贈呈した。 堤は「こんばんは。皆様寒い中どうもありがとうございます。今年の一月と二月の寒い京都で撮影をしました。 忠臣蔵は京都でも縁のあるお話ですので、皆さんぜひ、劇場に足をお運びください。」と力を込め、 岡村も「本当に寒い中、沢山の方にお越しいただきありがとうございます。改めましてムービースター岡村隆史です。 映画では今までとは違う岡村隆史が見られます!『役者やってんだな』と思っていただければと思います」 とコメントし、会場を沸かせた。

kessanchu-bu-500-2.jpgその後の舞台挨拶で、初めて人力車に乗ったという堤は「みんなに晒されてるようで恥ずかしかったけど、乗り心 地はすごいよかった」と感想を述べ、続いて岡村が「堤さんが『なんでこんなに男同士密着して…別に隣に座ってるのが竹内結子さんでも石原さとみさんでもええのにな…』とブツブツ言ってました」と暴露して笑いを誘った。 更に中村監督が「商店街のみなさんは暖かい恰好をされてますが、僕らは京都駅からタクシーで着いてすぐ、薄着の 上に法被を着せられて外に放り出されて…寒かったです」と皮肉のコメントをするも、岡村が「ホッカイロは沢山 もらいましたよ」とフォローを入れた。堤が「商店街のみなさんに手をふっていただいて、とても暖かかったです」 と続けた。
 
 
 

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京都での思い出を尋ねられると、堤「京都では何度も撮影をしていますが、おばんざいが美味しいですよね。大体どこのお店も美味しいし、お店の人もええ人やし」と述べた。 岡村は、「大学が京都でしたので、1 年だけ通ってました。ほとんど吉本の養成所とコンビニバイトの往復で、1 回生 の時は38 単位くらいとれたんですけど、2 回生のときは 4 単位しかとれなかったです。在籍は 8 年ほどさせていた だいて…親父からは『金をドブに捨ててるようなもんや』と言われたんですけども…そんな京都に久しぶりにきて、撮影のときに美味しい所もたくさん連れて行っていただいて、堤さんともお食事も一緒にさせていただいて、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。」と京都の思い出に浸った。 
 
 
 

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監督は「今まで地方でキャンペーンもしてきて、試写会の舞台挨拶もしたのですが、今日は有料上映だそうですね。 金曜日から全国公開にはなりますが、京都で撮影もしてきた想いもありますので、僕は今日が初日だと思ってます。」 と続けた。 本作は大石内蔵助が書き残した預置候金銀請払帳を元にしているが、監督が「今でも明細破棄しちゃう人とか、捨てちゃう人とかいるのに、江戸時代から現代までこんなに残ってるんだと、昔の人はすごいんだなと心打たれました」 としみじみ語った。 
 
最後に映画について、
堤は「僕はコメディとは言いたくない。確かに笑える場面もありますが、人間関係や、一人ひとりを細かくしっかり描いていて、共感できる誰かが必ずいると思います。脚本も読んだ時点で絶対に面白くなると 思っていましたが、色んな役者さんと演じて、撮影でどんどん立体的になってくるような、初めての感覚がありました。撮影中に絶対間違いないと自信を持てた作品です。」
岡村は「皆さんが知ってる忠臣蔵とは全然違う角度からの忠臣蔵になってます。自分がここは見せ場かなと思っているシーンがありまして、『太陽にほえろ!』を参考にしました。この後見てもらったら『あいつ、あれ、そうか!』と 思っていただける所がありますので(笑)、今日は最後まで楽しんで帰ってください。」
監督「お二人をはじめ、次から次に素晴らしいお芝居がどんどん続いていきます。たぶん 1 回だけでは見きれないと思いますので、2回、3回と観ていただきたいと思います!」と続けた。 
 
冬が近づき冷え込む京都で、商店街の人々の温かさに包まれたイベントになりました。 
 

【映画概要】
■原作:山本博文『「忠臣蔵」の決算書』 (新潮新書刊)             
■主演:堤真一、岡村隆史 、濱田岳、横山裕、妻夫木聡、石原さとみ、荒川良々、竹内結子、阿部サダヲ ほか
■脚本・監督:中村義洋   
■製作:「決算!忠臣蔵」製作委員会   
■配給:松竹株式会社
■©表記(C)2019「決算!忠臣蔵」製作委員会 
公式サイト:https://chushingura-movie.jp/

■作品紹介:こちら

11月22日(金)いざ、討ち入り? 


(オフィシャル・レポートより)
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原住民、アミ族の祖母への思いを映画に込めて。
台湾アニメーション『幸福路のチー』ソン・シンイン監督インタビュー
 
 東京アニメアワードフェスティバルでグランプリを受賞、他にも世界の映画祭で受賞を果たし、台湾アニメーション映画初の快挙を続ける台北郊外の幸福路(こうふくろ)を舞台にした『幸福路のチー』が、11月29日(金)より京都シネマ、今冬よりテアトル梅田、出町座、シネ・リーブル神戸他全国順次公開される。
 
 監督は、京都で映画理論を、アメリカで映画制作を学び、アニメーション制作の実績が乏しい台湾で新たにアニメーションスタジオを設立して本作を作り上げたソン・シンイン。ジャーナリスト時代に培った観察力を生かし、台湾の昔の風情や、その裏にある政治背景を織り交ぜながら、70年代生まれの台湾女性が抱える葛藤や、人生の転機、家族との関係を時代ごとに細やかに描写。合間に挿入されるファンタジックなシーンは、想像力溢れる主人公チーの内面を鮮やかに映し出す。チーの成長やその中で浮かび上がる様々な問題に自分の体験を重ねる人も多いのではないだろうか。
 
11月に自著「いつもひとりだった、京都での日々」(早川書房刊)が日本で発刊されたのに合わせて来日したソン・シンイン監督に、お話を伺った。
 

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■移民社会ではないのに、一つの家族の中で親世代は北京語、子ども世代は母語と二つの言語が混じっている。

――――本作を見ると、今まで日本で紹介されてきた台湾映画で知ることができた断片的な台湾の歴史が、私の中で一本の線につながりました。まず、小学校時代に学校で母語を禁止され、北京語でしゃべり、学ぶことを強制されるシーンがありましたが、実際にシンイン監督はどのように感じていたのですか?
シンイン監督:私が小学生の頃は、きれいな北京語を喋れば、いい人間、つまり能力のある人間になれると思っていたので、そのことに何の疑問も抱いていませんでした。私の両親は北京語が喋れないのに、私には北京語を喋れと言うので、おかしいとは思っていたんです。でも、今の若い台湾人は、とても上手に母語で喋っていて、かえって私たち世代の方が母語を喋れないという皮肉な現象が起きています。例えば私の友達の子どもは、学校で母語教育が必須ですが、親世代は母語教育を受けていない。移民社会ではないのに、一つの家族の中に、違う言語が入っているのかと、すごく複雑な気持ちになります。今まで信じたものが覆されてしまい、何を信じていいのか。私が13歳の時、蒋経国総統が死去し、高校入学(90年)の時、ようやく小中学校における郷土教育が開始されましたから、母語が話せないというのは台湾人の中でも、私たち世代特有の体験ですね。
 
 
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■フェミニズムに触れ、祖母の行動やルーツを否定していたのは間違った教育だったと気付く。

――――ヤン・ヤーチェ監督の『GF*BF』では、戒厳令解除や、その後の学生運動の高まりも描かれていました。その時代の思い出を教えてください。
シンイン監督:87年に戒厳令が解除された時は、少しずつ国が変わっていく様子を肌で感じました。例えば、20歳の時にフェミニズムの本を読み、とても影響を受けたのです。その時初めて、アミ族の祖母がビンロウを噛んだり、タバコを吸うことはダメだと思い込んでいたり、自分のルーツを否定していたことを振り返り、間違った教育をされていたことに気づいたのです。でも既に祖母は亡くなっていて、その気持ちを伝えることはできませんでした。
 
――――台湾原住民の一つ、アミ族の祖母の死が、アメリカで暮らしていたチーが台湾に戻るきっかけになっています。さらにチーが困った時は、ふっと現れる守護神のような役割も果たしていますね。
シンイン監督:私自身は、祖母と仲良くありませんでした。実際、私の世代はみな親が仕事で忙しかったので、おばあちゃんっ子の友達が多かった。だから、友達の様子を観察しながら、「あんなおばあちゃんがいいな」とずっと羨ましく思っていたのです。映画で登場するのは、そんな孫と密接な関係にあった祖母像を描いています。私の祖母はとても気が強くて、芯も強い。あまり教育を受けたことはないけれど、シンプルな言葉がすっと出てくる。例えば、「そんなに勉強が嫌いなら、勉強しなければいい」と。母にすれば女の子はいい教育をしないとダメという気持ちがあり、医者や弁護士のような立派な職業に就いてほしいと思っていたので、祖母の言葉にすごく怒っていました(笑)今は、祖母に対してお詫びをしたいと思っています。
 
 
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■原住民運動が盛んになった90年代前半、アミ族の血が流れていることを誇りに思うようになった。

――――否定していたアミ族の血が流れていることを、今は肯定的に捉えているということですか?
シンイン監督:はい、今は誇りに思っています。90年代前半は、台湾で原住民運動が盛んだった時期です。当時、原住民は山胞(野蛮という意味)という差別用語で呼ばれていたので、正しい呼び方をすることを訴えました。大学の同級生でアミ族の男子がいたのですが、彼は自分の中国語名を捨てて、アミ族名に変えたのです。その時、彼のことをカッコいいと思いました。私も祖母のアミ族の血が流れていることを知った台湾大学の友達には、「羨ましい!」と言われたこともあったんです。
 
 

■先行して本を執筆し、投資者を募って、アニメーションスタジオを自ら立ち上げる。

――――台湾のアニメーション界はまだ成熟していない中、本作を制作するのは大きな冒険だったのではないですか?
シンイン監督:まだ台湾で制作されたオリジナルアニメーションで成功したものはありませんでしたから、ハードルが高かったのは事実です。知り合いの有名監督がアニメーションに挑戦していますが、1億台湾ドルかけて、まだ何もできていません。そんな状態ですから、制作中私も「作品は完成しないだろう」とよく言われていました。だから完成した時は本当に周りに驚かれたのです。中国の検閲を心配する投資家もいましたが、エンジェルファンドを使ったり、先に本を執筆して、投資してくれそうな人に送り、私のアイデアや夢に投資してくれる人を募りました。集まったお金で自分のアニメーションスタジオを立ち上げ、最終的に、宣伝も含めて5000万台湾ドル(1.8億円)で本作を作ったのです。
 
 
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■審査員だったグイ・ルンメイが元になった短編を高評価。チーのキャラクターデザインは、ルンメイをイメージして。

――――グイ・ルンメイがチーの声を演じていますが、その経緯は?
シンイン監督:本作の元になった短編アニメーション『幸福路上』が台北電影獎でグランプリを受賞した時、グイ・ルンメイさんも審査員の一人でした。審査委員長だったピーター・チャン監督から「『幸福路上』を一番気に入っていたのは、グイ・ルンメイだ」と聞いていたので、長編化を考えた時、まずルンメイさんが頭に浮かびました。ダメ元で、マネージャーに脚本を送り、主人公の声優になってほしいと伝えたところ、ルンメイさんはすぐに脚本を読んで、「短編より何倍も感動しました」とすぐに快諾してくれたのです。おかげで、投資家のプレゼン時にルンメイさんのキャスティングを伝えることができ、非常に助かりました。キャラクターデザインも、ルンメイさんをイメージしています。今、ユニクロの台湾イメージキャラクターなので、そのカタログを見ながら、アニメーターたちと議論してデザインしました(笑)他のキャラクターは、全て特にモデルはいないんです。一般的な台湾人という視点でデザインしていきました。
 
――――今や台湾を代表する映画監督の一人、ウェイ・ダーションさんも、チーの叔父、ウェン役で声優を務めています。雰囲気が似ているので、ダーションさんをモデルにキャラクターデザインしたのかと思いました。
シンイン監督:キャラクターデザインは全てできていたのですが、ウェン役だけどうしても声優が決まらなかったんです。そこでプロデューサーの一人が、「あなたの友達、ウェイ・ダーションがいいんじゃない?」と勧めてくれました。ダーションさんは『海角七号 君想う、国境の南』で大ブレイクするずっと前、私がジャーナリスト時代に彼を取材したことがあったのです。本当にまだ誰も取材しない時代だったので、当時新聞社の上司になぜ取材したのかと驚かれました(笑)そういう縁があったので、依頼すると脚本を読む前から即快諾してくれましたが、内心は本当に完成するのかという懸念もあったようですね。
 
――――脚本を書くのは大変でしたか?
シンイン監督:マルジャン・サトラピ監督の『ペルセポリス』のように、ある女性の半生、つまり自分の中から湧き上がるものを書いているので、楽しかったです。中には自分の政治的主張を作品に込める人もいますが、私はそれをしたくなかったのです。
 
 

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■チーの生涯の友人、チャン・ベティは、同姓同名の友人をエピソードもそのまま描く。

――――登場人物の中で、チーの小学校時代からの友達で金髪に青い目の混血児、チャン・ベティは、大人になってからもチーを勇気付ける存在ですね。
シンイン監督:チャン・ベティは実在の人物です。私のクラスメイトで、映画同様に出会ったその日におもらしをしてしまったり、泣き虫な女の子でしたが、私が小学4年生の時、突然学校に来なくなり、私の生活からいなくなってしまったのです。映画では、ベティは大人になってたくましいシングルマザーになっています。というのも、彼女のような女性をとてもすごいと思うからで、この映画を見て、連絡をくれたらという思いも込めて描きました。
 

――――シンイン監督もアメリカで暮らしている時期がありましたが、チーのように離れてみて故郷、台湾への望郷の念が湧いてきたのでしょうか?

シンイン監督:もちろん、そうです。だから、台湾に戻って、この作品を作りました。これからも台湾をベースに映画を撮っていきたいです。アメリカ時代はシカゴに住んでいたのですが、クラスメイトは優しかったけれど、貧しい白人はアジア人のことが嫌いなので、一度バーで「中国に帰れ、ビッチ!」と見知らぬ白人男性からビール瓶を投げつけられたこともありました。アメリカン・ドリームは幻想でしたね。

 
――――この作品はすでに世界中で上映されていますが、観客からの声で心に残ったものはありますか?
シンイン監督:あるフランス人の若い女性はすごく泣いていて、自分の祖母もトルコ出身なので、台湾のことは知らないけれどチーの気持ちが分かると言ってくれました。みなさん、自分の人生を重ねて見てくださるみたいです。男性の方も、「チーは自分を見ているようだ」と言ってくださいます。皆の心の中に、家族への憎しみもあれば、愛もあるのではないでしょうか。
(江口由美)
 

<作品情報>
『幸福路のチー』(2017年 台湾 111分) 
監督:ソン・シンイン 
声の出演:グイ・ルンメイ、チェン・ボージョン、リャオ・ホェイジェン、ウェイ・ダーション、ウー・イーハン他
2019年11月29日(金)より京都シネマ、2020年1月24日(金)よりテアトル梅田、シネ・リーブル神戸他全国順次公開
公式サイト→http://onhappinessroad.net/
 

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2019年11月9日(土)

【@TOHOシネマズ日本橋】登壇者:EXILE AKIRAさん、佐野玲於さん、佐藤大樹さん、行定勲監督、洞内広樹監督、井上博貴監督。

【@大阪会場(TOHOシネマズなんば)】登壇者:小林直己さん、今市隆二さん。

東京と大阪のスクリーンに、それぞれのゲストが映し出されて、2元中継がスタート!


11月8日(金)より全国公開となった、CINEMA FIGHTERS projectの第三弾『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』の公開記念舞台挨拶がTOHOシネマズ日本橋にて行われ、EXILE AKIRAさん、佐野玲於さん、佐藤大樹さん、行定勲監督、洞内広樹監督、井上博貴監督が登壇しました。この日の舞台挨拶は大阪会場となるTOHOシネマズなんばと2元中継され、小林直己さん、今市隆二さんがスクリーンに映し出されると黄色い歓声が湧き起こり、会場は一層大きな拍手に包まれました。


sonoshunkan-bu-T-500-1.jpgまずは一言挨拶から。

「Beautiful」主演のAKIRAさんは「(2元中継)はなかなか距離感が難しいですが、楽しいイベントとなるよう、温めていけたらなと思います。今回はCINEMA FIGHTERS projectの第三弾ということで、素晴らしい監督とともに作った最高の作品が集まっています」と笑顔で会場を見渡します。


次に大阪会場から「海風」に主演した小林さんが「短い時間ですが、ぜひ楽しんで行ってください。よろしくお願いいたします」と挨拶。続いて、「海風」の行定監督が「このプロジェクトは、本当に色々なものに挑戦させていただけます。20分強の短編ですが、普段自分がやっている長編で扱っているものとは”まったく違うもの”に小林くんと挑みました」とコメント。


sonoshunkan-bu-O-500-1.jpg今度は「On The Way」主演の今市さんが「大阪のみなさん、東京のみなさん、そして全国のみなさん、こんにちは! 今日は舞台挨拶と映画を観ていただけるということで、短い時間ですが、まずはこの時間を楽しんでいただければと思います。よろしくお願いいたします」と挨拶。


続いて「GHOSTING」に主演した佐野さんは「朝早くからありがとうございます。そして大阪のみなさんもありがとうございまーーす!」と元気よくコメントし、両会場は大きな拍手に包まれます。そして「『CINEMA FIGHTERS project』は、可能性が無限にある。そんな素敵なプロジェクトに参加できて、みなさん作品をお届けできることがとてもうれしいです。楽しんでいってください」とニッコリ。「GHOSTING」の洞内監督は、「子供の頃から映画監督になりたくて、TOHOシネマズ海老名でもアルバイトをしていました。ここに立たせていただいていることが、夢みたいです。作品、そして出演してくれた玲於くんに連れてきてもらったと思っています。ありがとうございます」と感謝の言葉を述べていました。


「魔女に焦がれて」に主演した佐藤さんは、「大阪のみなさん、東京のみなさん、本日はありがとうございます。『CINEMA FIGHTERS project』は、個人的にずっと出たかったプロジェクトだったので、作品に参加し、ここに登壇することができてとてもうれしいです」と満面の笑みを浮かべて挨拶。そして、「GHOSTING」の井上監督は「朝早くから、ありがとうございます。五作五様の素敵な映画が楽しめるプロジェクトです。よろしくお願いします」とコメントしていました。


sonoshunkan-bu-T-240-3.jpg一言挨拶が終わったところで、AKIRAさんがスクリーンを見つめ「直己は、もっとでかくなっちゃいましたね」と大阪会場の小林さんに話しかけます。すると、小林さんも「成長しちゃいました(笑)」と照れ臭そうにしながらも、「スクリーンで見ると、AKIRAさんの股下の長さがものすごいです!」と切り返し、指摘されたAKIRAさんが、自身の股下を見つめる仕草を見せ、会場の笑いを誘っていました。


公開記念舞台挨拶に登壇した感想についてAKIRAさんは、「とてもありがたいです。東京、大阪だけでなく、(ライブビューイングで)全国各地の会場にこの熱気をお届けできるのは、とてもうれしいです」と満足の表情を浮かべていました。MCによる「みなさん、盛り上がっていますか?」という問いかけに、会場から再び大きな拍手が沸き起こると、小林さんがマイクを会場に向け、拍手の音を拾う仕草を見せていました。


ここで、俳優陣に「クランクイン前に監督とどんな話をしたのか」という質問が飛びます。AKIRAさんは「三池監督は、ご存知のようにとてもインパクトのある方ですし、どのようなアプローチで来るのか、とても緊張感がありました。いざ、撮影に入ると俳優に寄り添ってくれる監督だと感じました。作品に入るときには、監督の世界観に染まらせてもらうというのが僕のモットーなので、ディスカッションを求められれば、ディスカッションするというように、監督のリクエスト通りにさせていただきました。三池監督は最初から最後まで寄り添ってくれる監督で、そんな三池監督と愛をテーマにした作品を、心地よくあたたかい現場で撮影させていただいたことに感謝しています」と振り返っていました。


sonoshunkan-bu-O-240-1.jpg小林さんは「行定監督は、作品からは想像できないほど優しくて気さくな方です。でも、撮影に入ると厳しくて怖いという印象です。作品の話をしていてもそういう印象がありました。だからこそ、遠慮なくぶつかることができました。撮影前に食事に行ったときには、主人公・蓮の孤独、純粋さについて自分がどう思っているのかということを伝えました。そして、僕自身のバックグラウンドも伝えることで、蓮と監督とそして僕の血肉の通った物語になったと感じました。撮影中は監督が船長の船に乗ったつもりで、暴れさせてもらいました」と行定監督とのやりとりを明かしました。


これに対し、行定監督は「僕は優しくもないし、気さくでもないですよ」と笑いながらも「すごく前から気になっているダンサーであり、パフォーマーでした。なんといってもインパクトがある。この体つきと首の太さ、これを活かせないかというのが頭にありました。一緒にご飯を食べたら、店は用意してくれるし、お金も払ってくれる。ものすごいジェントルマンぶりを見せてくれました(笑)」と説明する監督の背後で、スクリーンに映る小林さんが、身振り手振りで再現し、ツッコミを受ける場面も。


「3時間くらいの会話でしたが、小林くんがどういう人間なのか、しっかりと伝わってきました。クライマックスのラストシーンは彼のアイデアです。彼の意見は非常に的確だったので、話していくうちに、あて書きにしようと思いました。これほどのあて書きをして作った作品は、今までの僕の作品にはありません。とてもピュアな男ですからね? 合ってますか?」と行定監督が小林さんに問いかけると、「合ってます」と笑顔で返答。これに対し行定監督は「本当にそうかなぁ?」と返すなど、息の合った掛け合いを見せていました。そして「ちょっと汚れた役という設定だったのですが、そういう部分だけではない(純粋な部分がある)というのは、小林くんの存在が活かされたと思っています」と絶賛。小林さんも「あて書きは、役者としては大変ありがたい話です。と同時に、求められることもすごく大きいのですが、この物語を通して、新しい自分を発見できたので、感謝しています」と満足の表情を浮かべていました。


sonoshunkan-bu-O-240-2.jpg続いての回答は、本作で役者デビューを果たした今市さん。「クランクインする前に2回食事をしたのですが、そのときはまだ台本ができていなかったので、映画の話も、演技の話も特にしませんでした。監督が僕の”人となり”を知ろうとしてくれていたので、小さい頃、学生時代、三代目に入るまでの経緯、そしてプライベートについて話しました。監督もご自身のプライベートをすべて話してくれるので、僕も素直に話すことができ、信頼関係を作ることができました。その関係でクランクインできたのは本当によかったです。海外での撮影で、初めての演技。右も左も分からないので、信頼関係がないと成り立たなかったと思います。監督がいてくれたからこそ『ついていこう!』と思えたので、ブレずにつとめさせていただきました」と監督との信頼関係について、熱く語っていました。


sonoshunkan-bu-T-240-2.jpg佐野さんは「小竹さんから洞内監督を紹介されたのですが、写真を見たら怖そうな印象だったので、衣装合わせには少しドキドキしながら行きました。だけど、話してみたら怖い感じは全然なくて、ディスカッションしやすかったです。気づいたら、衣装合わせの前に30分も話し込んでいました(笑)。作品に対する想いや背景を説明していただき『後はまかせた!』みたいな感じで。事前にいろいろと知ることができていなかったら、作品との向き合い方は違っていたかもしれません。とてもいい現場でしたし、監督に料理してもらったという感じです」と洞内監督の初対面を振り返っていました。これに対し、洞内監督は「僕は、食事をするというスタイルではなく、衣装合わせで話をするというアプローチにしました。佐野玲於という表現者に主体的に演じてほしいと思っていたので、役のディレクションは彼に託しました。結果、それは正解でしたね。想像以上のリアリティを持ってきてくれたので、本当に良かったです」と笑顔を浮かべていました。


sonoshunkan-bu-T-240-1.jpg佐藤さんは「役に対してのディレクションは特になく、出会ってすぐに衣装合わせをして、髪型を決めて、本読みをして、じゃあ、やってみよう!って。あまりにもポンポンポンと進んでいくので、僕自身は少し不安がある状態で撮影がスタートしました」と当時の心境を明かします。これに対し、井上監督は「短い話なので、文脈をわかってもらうには必要最低限のセリフだけでいい、と考えていました。あとは映像で表現したかったし、大樹くんもしっかり準備してくれていたし、本読みの段階で、表情で表現できると確信し、セリフを削っていきました」と撮影時の様子を解説していました。


ここで、AKIRAさんが「早く今市の作品を観たいと思っています」とコメントすると、照れ笑いを浮かべる今市さんに大きな拍手が送られます。 AKIRAさんは「いや、僕はもう観たんですよ。今、お客さんがそう思っているんじゃないかな?と心の声を代弁してみました」と茶目っ気を見せ、今市さんが「最高の兄貴です」と頭を下げる場面も。AKIRAさんの今市さん推しは止まらず「今市が演技していることが『Beautiful』です」と自身が主演した作品のタイトルにかけ、俳優・今市さんを褒め称えます。続けて「普段、今市は泣くことはありません。でも映画の中では泣いています。演技している今市さん、素敵です」と続け、会場の笑いを誘っていました。照れまくる今市さんに、会場から何度も大きな拍手が送られていました。


ここからは、それぞれの作品の感想をお互いに語ることに。

次々と演技に挑戦するメンバーが増えることに対し、AKIRAさんは「EXILE  TRIBE」のメンバーが、新たな道を開拓中だと説明したうえで、「今回、ここにいるメンバーのそれぞれが日本を代表する監督とタッグを組んでいます。今市のさらなるレベルアップを全国のみなさんにもぜひ、観てほしいです」とここでも”今市愛”を大爆発させていました。


小林さんは「『GHOSTING』の玲於がまさにゴーストだと思いました。そこに注目してほしいです」とコメント。小林さんの”推し”の佐野さんは「AKIRAさんの、希望を見つけた瞬間の笑顔がめちゃくちゃ素敵です。劇場では撮影はできませんが、DVDが出たときには、写真に撮って待ち受けにしてください」とニッコリ。ここで小林さんから「今市くんは?」と問いかけられた今市さんは、『魔女に焦がれて』の大樹くんですね」と回答。佐藤さんが「ありがとうございます」と一礼すると、今市さんは「以上です」と締めくくってしまいます。これに対し佐野さんは「特に推してないですよね?」と不満そうに訴える場面も。今市さんは「いえ、推しています」と回答しつつも、具体的なシーンやセリフをコメントすることはなく、いたずらっぽく笑い、この質問コーナーを締めくくりました。


次の質問は「特にここに注目して!という作品のアピールポイント」について。AKIRAさんは「言葉よりも、観て感じていただくことが大事な作品だと思います」とコメント。すると順番がまわってきた小林さんが「この後、コメントしにくいですね」と苦笑いしつつ、「横浜を舞台にしたヤクザと売春婦の物語ですが、それはあくまで役柄であって、描いているのは人と人とのやりとりです。短編は短い時間ですが、シーンの積み重ねから何か感じ取っていただけると思っています」とアピールしました。行定監督は、「小林直己あっての作品です。その佇まいひとつがすごく物語っています。撮影中は、彼自身のあり方や、その瞬間瞬間流れている空気をまとう中で奥底にある孤独や寂しさが伝わり、胸に迫るような気持ちになりました。それがみなさんにも伝わるといいなと思っています」と俳優・小林直己を絶賛。


今市さんは「主人公の健太がメキシコに行き、さまざまな人に出会う中、成長していきます。彼の成長を見届けてほしいと思います。メキシコのリアルが描かれていて、これは実際に起きていることです。昨日、松永監督とも改めて話したのですが、この作品を通してそれが届けられるとうれしいですし、観た方の人生を少しでも変えられたらいいと思って作りました」とアピールしていました。するとすかざす、AKIRAさんが「素敵な作品です。ぜひ、みなさん観てください」とオススメする場面もあり、会場から拍手が送られていました。


佐野さんは「どの作品もとても素敵で、印象的なシーンがいっぱいあります。僕の作品が唯一、ワクワクする要素やファンタスティックな世界観を描いていると思います。監督がノスタルジックで素敵な映画にしてくれたので、そこに注目して下さい。過去を思い出すきっかけにしてもらえたら楽しいかも」とおすすめポイントを解説していました。洞内監督は「現実離れした作品なので、それを信じてくれるかどうかはお客さん次第です。佐野くんが命を与えてくれた作品で、すべて佐野くんにかかっています(笑)。映画館への愛もたっぷりと詰まっていますし、あとはすべて佐野くんに託したので、そのへんも含めて受け止めてください」とコメント。


佐藤さんは「舞台は学校で、他の作品にあった”生と死”というテーマは僕の作品にはありません。こういう学生時代だったな、こんな恋愛していたな、青春時代憧れていたなとか、思いを馳せながら観ていただきたいです。演じているときはわからなかったのですが、完成した作品を観て、僕なりにショートフィルムの魅力が分かった気がします。CINEMA FIGHTERS projectの中で、この第三弾が一番好きです」と力強く語っていました。井上監督は「小竹さんからのリクエストは、大人もキュンとする青春映画でした。大樹くんのシネマファイターズに出たいという熱い想いも詰まっています。大樹くんを通して、切ないラブストーリー、青春映画を撮りましたので、楽しんで観てください」とコメントしていました。


フォトセッション後の、最後の挨拶でAKIRAさんは「全国の会場に足を運んでくださったみなさん、ありがとうございます。今日は今市の作品を推していましたが、直己もハリウッドの作品にトライしてパワーアップしています。そして、Jr. EXILE世代で頑張っている玲於や大樹の姿もとても頼もしく感じます。5本違った世界観の作品が観れるのは、とても貴重な機会だと思います。これだけ素晴らしい監督が集結して作り上げた素晴らしい作品を、ぜひ楽しんでください」と呼びかけました。


大阪会場との中継はここまで。


ここからは、会場に詰めかけたファンによる写真撮影のコーナーに。写真をSNSに投稿する際のハッシュタグはAKIRAさん自らが考案。


そして、最後に東京会場のファンへAKIRAさんから改めて挨拶があり「素晴らしい監督と一緒に、楽曲からインスピレーションを沸かせてショートフィルムを作るというのがこのプロジェクトのミソです。なので、楽曲にも注目してほしいです。せっかくなので、玲於と大樹からも一言ずつ」とバトンを渡します。


佐藤さんは「最後に主題歌が流れるのですが、歌詞もぜひチェックしてほしいです。5作品に5色、それぞれの色、メッセージがあります。いろいろな感じ方ができる作品なので、劇場で楽しんでください」とアピールしていました。


佐野さんは「ショートフィルムは、海外でも人気が高く、注目されています。LDHを筆頭にこういったプロジェクトに参加できること、そして豪華な監督とタッグできることは本当にうれしいし、ありがたかったです。5つのストーリーにそれぞれ共感できる部分があるので、何か感じ取っていただけたらと思います。ありがとうございました」と締めくくり、イベントは幕を閉じました。



sonoshunkan-550.jpg三池監督 の『Beautiful』には *EXILE AKIRA*、 
行定監督の『海風』には*小林直己*( EXILE / 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)、 
松永監督の『On The Way』には*今市隆二*( 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)、 
洞内監督 の『GHOSTING』には*佐野玲於*( GENERATIONS from EXILE TRIBE )、 
井上監督 の『魔女に焦がれて』には*佐藤大樹*( EXILE / FANTASTICS from EXILE TRIBE )が 出演。
 

<各話あらすじ> 

『Beautiful』  
アパートの自室で光司は首つり自殺をしようとしていた。 だが、大きな地震が辺り一帯を襲う。瓦礫の中で気が付いた光司は、 助けを求める女性の微かな声を聞き、無我夢中で下の階の住人・千恵を助け出す。だが、どこか千恵は様子がおかしい。 彼女もまた、地震が起きる直前に大量の薬を飲んで死のうとしていた。奇妙な偶然に、乾いた笑いを浮かべる二人だったが、一瞬にして変わり果てた世界を前に、光司は千恵にある提案をする。 
 
『海風』  
横浜のとある風俗街。この街を取り仕切るヤクザの蓮は、客からひどい扱いばかり受けていた中年の娼婦・蘭を気に掛け、一夜を共にする。 幼いころ親に捨てられた蓮は、蘭に母のような温もりを覚えた。 若いころから娼婦として生きてきた蘭もまた、蓮に離れ離れになった実の息子を重ねた。孤独で傷つきながら生きてきた二人が互いの喪失感を補うかのように親密になっていったその矢先、ある事件が起きる。 
 
『On The Way』 
メキシコ移民のサポートをするNPO法人の母の代わりに、健太は仕方なく一人メキシコにやって来た。スタッフのダニエルが話しかけても、健太はやる気を見せない。移民センターには、様々な事情を抱え命がけでアメリカを目指す人たちが訪ねてくる。今まで経験したことのない過酷な状況の人々と接し、健太は言葉を失う。ある日、健太は歩いて国境を目指す人たちを車で送ろうとする。反対するダニエルを押し切り、健太たちはセンターを出発したのだが…。 
 
『GHOSTIMG』  
2009年、満月の夜。一人の若者・バクは事故で死んだ。死者が過去の一日に戻れることを知らされたバクは、魂のまま「あの日」に戻る。10年前の1999年、ガールフレンドのメイと一緒に、お祭りに行くはずだった日。そしてそれは、メイが河原で亡くなった日。バクの魂は、少年時代のバクに電話をかけているメイの前に現れる。親との問題を抱え、塞ぎ込んだメイが目の前で橋から落ちようとするそのとき、バクは思わず手を伸ばす…。 
 
『魔女に焦がれて』 
高校三年の雅人は、中学卒業前に真莉愛に告白をして以来、彼女と気まずい関係のまま。だがある日真莉愛に話しかけられ、進路の悩みを言い当てられる。雅人の悩みが「見えた」真莉愛は、その不思議な力で解決方法を探る。真莉愛の能力はすぐに知れ渡り、彼女は女子生徒たちに恋や進路の相談を頼まれるようになる。だが、ある日突然真莉愛の力に異変が起こる。真莉愛の助言は外れるという噂が次第に広がり、彼女はクラスで孤立していく。雅人はそんな真莉愛を見ていられず…。 
 

<作品概要> 

5本のショートフィルムによるオムニバス映画 
 

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■作品名、監督 
『Beautiful』 三池崇史 
『海風』 行定勲 
『On The Way』 松永大司 
『GHOSTIMG』 洞内広樹 
『魔女に焦がれて』 井上博貴 
 
■主な出演者 
EXILE AKIRA、蓮佛美沙子 (『Beautiful』) 
小林直己、秋山菜津子 (『海風』) 
今市隆二 (『On The Way』) 
佐野玲於、畑芽育 (『GHOSTING』) 
佐藤大樹、久保田紗友  (『魔女に焦がれて』) 
 
【製作】:LDH JAPAN 
【制作】:パシフィック・ボイス 
【配給】:LDH PICTURES
【公開】:2019年11月8日(金)  
【クレジット】:©2019 CINEMA FIGHTERS project 
【公式サイト】:http://sonoshunkan.toeiad.co.jp/
 

(オフィシャル・レポート)

 

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「魅力的な人間は、より演技者として力を発揮できる」
山崎まさよし主演作『影踏み』篠原哲雄監督インタビュー
 
 『月とキャベツ』(96)の篠原哲雄監督と、同作主演で俳優デビューを果たしたミュージシャンの山崎まさよしが再タッグを組み、横山秀夫(『64-ロクヨン-』シリーズ)原作を映画化した『影踏み』が、11月15日(金)よりテアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都他全国ロードショーされる。
 
 
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 山崎が演じる修一は、深夜に人のいる家に忍び込み、現金だけを盗み取る凄腕の「ノビ師」。修一が忍び込んだ家で火災に見せかけて夫を殺そうとした女(中村ゆり)を目撃した瞬間に、幼なじみの刑事・吉川(竹原ピストル)に逮捕される。その吉川が不審な死を遂げ、事件の真相を追ううちに、保育士をしながらずっと修一のことを待っている幼馴染の久子(尾野真千子)をも巻き込んでいく。修一のことを兄のように慕う啓二(北村匠海)や、久子に交際を申し込んだ久能(遠藤賢一)など、修一が自身の過去と向き合わされるキャラクターたちの存在感も見事だ。『月とキャベツ』から時を経て、大人の男の孤独や背負ってきた過去を静かに表現しながら、依然としてピュアな部分を持ち続ける繊細な修一を演じる山崎の演技にも注目したい。
 本作の篠原哲雄監督に山崎と再タッグに至るまでの道のりや、キャストたちの撮影の様子について話を伺った。
 

■伊参発の『月とキャベツ』を毎年上映する伊参スタジオ映画祭。シナリオ大賞創設から繋がった縁が、山崎まさよしとの再タッグへ。

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――――まずは、この作品を制作するきっかけになったという伊参スタジオ映画祭と、その経緯について教えてください。
篠原:山崎まさよしさんをキャスティングする前に、どこでロケをしようかと考えていると、今回と同じプロデューサーの松岡周作さんが、当時は小栗監督の『眠る男』の制作担当をされていて、「一年間を通して映画制作できる場所(スタジオ)を群馬の伊参に作ったから、『月とキャベツ』も群馬で撮ったらどうか」と声をかけていただいたのです。群馬はほぼ初めてでしたが1週間ぐらいロケハンし、廃校を利用した伊参スタジオのような、別の廃校を見つけ、そこで『月とキャベツ』を撮影しました。その後、伊参で緒方明監督が『独立少年合唱団』を撮ったのを機に、『眠る男』と『月とキャベツ』の3本を上映し、それが2000年の第1回伊参スタジオ映画祭になったのです。
 
 
――――10年足らずのうちに、伊参で3本も映画が制作されたということも凄いですが、伊参スタジオ映画祭で毎年『月とキャベツ』が上映されているのも、ファンにはたまらないですね。
篠原:今でいう聖地巡礼ですが、『月とキャベツ』が好きで、ロケ地を訪れるファンが当時後を立たなかったのです。伊参スタジオに宿泊されるファンの方もいたそうで、自主的に映画のファンサイトを作ったり、『月とキャベツ』を観たいというファンがずっといらっしゃる。ぼくは「他の映画を上映した方がいいんじゃないですか?」と真剣にお話しても、事務局の方は皆「やることに意義があるんです」と毎年『月とキャベツ』を上映してくださる。すごくありがたいなと思っています。
 
 
――――原作者、横山秀夫さんともこの映画祭で出会われたそうですね。
篠原:シナリオ大賞を創設し、若い作家たちが集まる場所として彼らに門戸を開きたいと言い出したのは、僕です。その流れで審査委員をやることになり、2003年から16年続け、もう30本以上の中編や短編が制作されています。この3年ほど、地元の上毛新聞記者でもあった作家の横山秀夫さんと審査委員をやっており、2016年『月とキャベツ』20周年上映のゲストで来場した山崎まさよしさんと、『64―ロクヨンー』の原作者として来場した横山さんが出会った。そこから山崎さんが横山さんのファンだということもあって意気投合し、20周年だからぼちぼち僕と再タッグを組んで何か撮ったらどうかと、横山さん原作の話を映画化する流れになったのです。横山さんの代表作はほとんど映画化されている中、なぜか「影踏み」だけは残っていて、横山さんの方から推して下さったんです。
 
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■山崎まさよしは「一枚絵にできる人」。素朴だが男らしい魅力を出すように心がけて。

――――山崎さんと久々に組まれた印象は?
篠原:山崎さんとはその後も『けん玉』や太宰治の「グッド・バイ」(「BUNGO-日本文学シネマ-」)でタッグを組んでいますが、その度にお芝居が上手くなっています。『月とキャベツ』はミュージシャンの初芝居ということで、演技は未知数でした。ただ、他の候補がいる中で、この人は一枚絵にできる人だと思いましたし、ライブを見に行った時、お客さんの巻き込み方などに、惹きつけるものがあり、彼はエンターテイナーだと感じました。きっとお芝居もやれるという直感がありましたね。今回も、セリフだけではなく、自分の言葉でしゃべってほしい。素朴だけれど男らしい魅力を出すように心がけました。今までは、「俳優じゃない」と言っていましたが、これだけ主役もやっていますから、これからは俳優と名乗ってやっていくと思います。
 
 

■魅力的な人間は、より演技者として力を発揮できる。 

――――素朴さの中に、強い目力があり、孤独を背負った表情がいい歳の重ね方をされているなと思わされました。

 

篠原:俳優はこうでなければならないということに凝り固まっているタイプはあまり好きではないんです。その人が演じる上で、やっている人間が役に現れると思うのです。だから魅力的な人間は、より演技者として力を発揮できるのではないか。それに演技の上手さが加われば、よりいい役者だと思えるんです。ミュージシャンの方は、自分で考える人が多いんです。竹原ピストルさんも、北村匠海さんもそうですが、俳優ではないとおっしゃりつつも、人間的魅力が演技に出てきて、普通の演者ではないものを感じますよね。竹原さんは山崎さんをすごく慕っていて、二人のシーンは2日だけでしたが、終わるのがもったいないぐらい、特別なものが出ていたと思います。
 
――――北村匠海さんが演じる啓二と、修一のやりとりも微笑ましかったです。
篠原:北村くんは上手いんですよ。さらりとした身のこなしや佇まい、素ぶりで表現するので、僕から何も言わなくても考えてやってくれましたね。
 
 
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■「この座組みで決めました」という尾野真千子は、一緒に仕事をして、とても気持ちがいい人。

――――修一の幼馴染で、ずっと彼を愛し続ける久子を演じた尾野真千子さんの演技も、圧巻でしたが、キャスティングの理由は?
篠原:この作品で一緒に仕事をするのは3本目ですが、あの世代の女優さんの中で、映画にこだわっている女優の一人だと思っています。一緒に仕事をして、とても気持ちがいい人なんです。山崎さんのことが非常に好きで、一緒に組みたいと思っていたそうで、この作品のオファーをしたとき、内容に関わらず快諾してくれました。本人も「私読んでないです。この座組みで決めました」とおっしゃっていましたから(笑)
 
――――「一緒に仕事をして、とても気持ちがいい」というのは演技が上手いのとはまた違う視点で、最高の誉め言葉ですね。
篠原:映画は皆で作るということの認識をどこかでしっかり持っている人ですね。例えば、今回尾野さんは幼稚園の保育士役で、現地の実際の幼稚園児に映画に出てもらったのですが、通常は本番までに助監督が子どもたちの中に入り、緊張せずに臨めるようにもっていくんです。でも尾野さんは「私はそういう役でしょ。私がやらなくてどうするの」と思ってくれているので、一緒になって子どもたちの間に入ってくれました。今までもそうやって、一緒に映画を作ってきましたし、だからこれからも一緒に映画を作りたい女優さんですね。一方、撮影ではまさにガハハと関西弁で笑っているかと思えば、「ヨーイ、スタート!」でガラリと変わる。気っ風が良い人ですね。
 
 
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■今までにないアプローチも加えた、山崎まさよしの劇中音楽秘話。

――――今回も音楽は山崎まさよしさんが担当しています。劇中の音からエンディグ曲まで、心情に寄り添い、余韻が残る曲でしたが、篠原監督からオファーしたことはあったのですか?
篠原:本人から、途中で賛美歌的なボーイソプラノを使ったらいいのではと言ってくれたので、今までにはないアプローチだったので、いいねと。「影踏み」というテーマ曲や、赦しというテーマを出していく中で、最初は中村ゆりさん演じる葉子にと作っていたミステリアスな曲を、結局全部久子のシーンに使ったんです。久子はどこか悲しさを持っている女性なので、その内面を映し出すようなものになりました。そして、全体的にサスペンスな雰囲気を出す曲も作りました。ラストのテーマ曲は、相当悩んで作っていましたね。じっと待っていたら、最後の最後に素晴らしい曲が出てきました。
 
――――最後に、ノワール的な要素の濃い作品ですが、修一と啓二が川沿いを自転車二人乗りで通り過ぎるシーンは、すごく幸せな気持ちになりました。
篠原:山崎さんとは日頃プライベートで接しているわけではないけれど、彼のことは信頼しています。『月とキャベツ』の時はまだ若かったけれど、今の方が格好良くなりましたね。自転車って、僕の映画の中で重要なんです。大事な時にはよく自転車に乗っている。『月とキャベツ』でも乗っていましたね。
(江口由美)
 

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<作品情報>
『影踏み』
(2019年 日本 112分)
監督:篠原哲雄 
原作:横山秀夫「影踏み」(祥伝社文庫)
出演: 山崎まさよし、尾野真千子、北村匠海、中村ゆり、竹原ピストル、中尾明慶、藤野涼子、下條アトム、根岸季衣、大石吾朗、高田里穂、真田麻垂美、田中要次、滝藤賢一、鶴見辰吾、大竹しのぶ他
11月15日(金)よりテアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト → https://kagefumi-movie.jp
(C) 2019 「影踏み」製作委員会

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