レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2015年9月アーカイブ

kokosake-550.jpgメインキャスト声優が大阪に登場!
「タコ焼きはわなかか“くくると聞いております(笑)」
映画『心が叫びたがってるんだ。』舞台挨拶

2013年、アニメファンの枠を超え、心揺さぶる感動作として興行収入10億円を突破する大ヒットを記録した『劇場版あの日見た花の名前を僕達は知らない。』。テレビアニメオリジナル作品としては日本歴代2位の記録を打ちたて、実写ドラマ化も決定する等、今現在も”あの花現象”を巻き起こしている。そのスタッフが再集結して贈る劇場版オリジナルアニメーション『心が叫びたがってるんだ。』が全国公開中です。大阪に声優の方をお迎えしての舞台挨拶が実施されました。


『心が叫びたがってるんだ。』キャスト来阪舞台挨拶

■日時:9月26日(土)15:45~■会場:TOHOシネマズなんばシアター5

■ゲスト(敬称略):水瀬いのり[みなせいのり](成瀬順役)

内山昴輝[うちやまこうき](坂上拓実役)
 

9月19日(土)より公開された映画『心が叫びたがってるんだ。』のPRのため、メインキャストの声優を務めた水瀬いのりさん、内山昴輝さんが登壇しての舞台挨拶が実施されました。


kokosake-b-1.jpg映画の上映終了後、満員のお客さんの前に大きな拍手で迎えられ、登壇したお二人。

内山さんは「さっき来て早々タコ焼きを食べました。宜しくお願いします。」と大阪ならではのトークでお客さんの心をギュッ!っと鷲掴み。水瀬さんは「本日はご来場頂きありがとうございます。短い時間ですが、本編を観られた後と言うことで色々お話しできればお思います。宜しくお願いします。」と挨拶した。


公開から一週間を迎えた本作。SNSやレビューサイトから大きな反響あり、それは声優のお二人にも伝わっているようで、「私もTwitterとかで、ここさけ。今日観てきたよー、とか最近ほぼ毎日、いろんな方から感想を頂いていて、それが凄く嬉しいなぁと思っています。」と話した。更に芸能界からも反響があり、AKB48の横山由衣さんが公開初日に映画を観に行かれたことや、NMB48の渡辺美優紀さんが、実は舞台挨拶の前日に同じ劇場(TOHOシネマズなんば)に映画を観に来て、号泣したとインスタグラムに投稿されていたことなどが紹介されると、「えー!」とお二人も驚いた様子を見せていました。


大阪での舞台挨拶ということで、何かしたいことがあるか聞かれると内山さんは「タコ焼き食べたかったけど、さっき叶っちゃった(笑)」と言うと水瀬さんは「わなか!」と食べたタコ焼きについて反応。「タコ焼きはわなかかくくると聞いております!」と答え笑いを誘い、水瀬さんは「USJ!」と答えるも「行く時間があるかなー?」と苦笑いを見せていました。


劇中では歌の部分が全部聴くことが出来ないのでは?と聞かれた内山さんは「良いのがあるんですよ。映画にはサウンドトラックと言うのがあるんですよ。」とニンマリ。「真面目な話、本編で撮ったんですけど、あれは一部で、サントラ用に我々歌を撮りまして、それは本編より長い、曲が丸々入っていますので、本編観てまたサントラの方で曲聴いたら印象変わると思うし、また違う面白さがあると思います。」とちゃっかり宣伝を入れつつ、歌の魅力を紹介した。


最後に水瀬さんは「今日もそうですけど、劇場で私たちが一生懸命月日をかけて作った映画を皆さんが観てくれているというのが凄く嬉しいです。なのでぜひ、お友達とか家族とか色んな人に『ここさけ。』凄く良い作品だったよって言って、また誰か違う人でも同じ人とでも良いですし、何度でも観て頂いて、より心に残る作品になってくれたら嬉しいなと思います。」と話しました。内山さんも「この映画は観た後に色々なディティールを誰かと話したり、登場人物たちがあの後どうなるんだろうと想像したくなる映画だと思うし、そう言う意味で繰り返し見たくなる映画になってると思うので、これからも『ここさけ。』を宜しくお願いします!」と満員のお客さんに向け話し、舞台挨拶を締めくくりました。


kokosake-500-1.jpg【STORY】
活発でおしゃべりだった少女・成瀬順は、自分の話してしまった<あること>によって家族がバラバラになってしまい、突然現れた”玉子の妖精”に、二度と人を傷つけないよう、おしゃべりを封印されてしまう。高校2年生になった順だったが、そのトラウマから、口だけではなく心も閉ざし、目立たないように生活していた。しかしある日「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命され、ミュージカルの主役に抜擢されてしまう・・・。

2015年9月19日(土)~梅田ブルク7、TOHOシネマズ梅田 、T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸、ほか全国ロードショー

© KOKOSAKE PROJECT

(プレスリリースより)

 

 

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東出君は野心家、自分を狂わせたがっていた~『GONIN サーガ』石井隆監督、東出昌大さん(主演)、インタビュー
 

~「激流」「濁流」のような撮影を経て、19年ぶりに甦る『GONIN サーガ』と、バイオレンスアクションの魅力とは?~

 
『GONIN』(95)で、佐藤浩市、根津甚八をはじめ、本木雅弘、竹中直人、椎名桔平、ビートたけしら豪華キャストによるバイオレンスアクションが大反響を呼んだ石井隆監督。19年の時を経て、『GONIN』の続編となる『GONIN サーガ』が誕生し、いよいよそのヴェールを脱ぐ。
 
物語は、『GONIN』で襲撃の犠牲になった挙句、上部組織五誠会から汚名を着せられ破門となった若頭久松(鶴見信吾)の息子、勇人(東出昌大)、組長だった親(永島敏行)を同じく殺され、今は五誠会の三代目誠司(安藤政信)のボディーガードをしている大輔(桐谷健太)、誠司に弱みを握られ囲われる元アイドルの麻美(土屋アンナ)、そして勇人の母に19年前の事件の真相を探りに来たルポライターの森澤(柄本佑)の人生が交差し、クライマックスの弾けるようなシーンに結実していく。19年前の事件から逃れられない運命の遺児たちがみせる復讐劇には、新キャストのみならず、前作のキャストも登場し、前作のファンは懐かしさを覚えること必須だ。特に、今回限りの俳優復帰を果たし、19年前の事件の生き残り・氷頭を演じる根津甚八の俳優魂に、心撃ち抜かれることだろう。
 
降りしきる雨の中の銃撃戦、華々しい散り際の美学、そしてちあきなおみや森田童子の生きる儚さを感じる名曲。これぞバイオレンスアクションの醍醐味を堪能できる本作の石井隆監督と主演の東出昌大さんに、キャスティング、撮影秘話や、19年の時を経て実現した続編への想い、そしてバイオレンスアクションの美学についてお話を伺った。
 

 

■石井監督「ずっと、いつかはという思いで、『GONIN』のようなバイオレンスアクションものを書きためていた」

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―――『GONIN』(95)以降、続編の構想はどんな変遷を経てきたのですか?
石井隆監督(以下石井監督):19年の中には色々なことがありました。『GONIN』(95)、『GONIN2』(96)と撮って、これから当分、バイオレンスをやっていこうと言われていたのですが、突然梯子を外されてしまって。僕としては、いつでも撮れるように、その時々のスターをイメージして「3」「4」「5」とシナリオを書いていたので、途方に暮れてしまった時期が00年から2年ぐらい続きました。なぜ自分がどこに企画を持ち込んでも撮らせてもらえないのか。それが、業界の大きな流れに巻き込まれてしまったということだったのですが、『花と蛇』(04)で久しぶりにオファーがあり、ヒットしたものですからしばらくはその路線が続き、あっという間に5~10年経ちました。その間もいつかはという思いで『GONIN』のようなバイオレンスアクションものを書きためていました。バイオレンスはある程度の予算が必要なので、やりたいと思ってもなかなか叶えられません。それに、最近は皆、原作ありきの映画化なので、完全オリジナルの脚本はなかなか通らない企画でした。
 
そんな中、角川さんで3本撮った後、重役の方の中にも何人か『GONIN』のファンがいらして、「石井さん、バイオレンスやろうよ。『GONIN』なんてどう?」と逆に声をかけられてビックリしました。「みんなで縛りを解こう」とまで言ってもらいました。そこからまた紆余曲折はありましたが、東出君とも出会え、続編の映画化に至った訳です。本当に感謝しています。
 
―――東出さんとの出会いも『GONIN サーガ』誕生の鍵となったようですが、東出さんをお知りになったきっかけは?
石井監督:吉田大八監督は同じ大学出身で、直接の映研の後輩というわけではありませんが、劇場公開作品は見ていました。その中で『桐島、部活やめるってよ』に出演している東出君の立ち姿を観たのがきっかけです。彼が根津さんや、椎名桔平さんなど、僕が長いお付き合いをしている事務所に所属していることが分かり、ご縁があるかもと思いました。当時、既に東出君は人気がありましたから、撮影のスケジュールとりが厳しかったけど、やっと「来年ですが」と1ヶ月空きそうなところを押さえていただいた。ですから、1ヶ月で撮り終えないと、と。
東出昌大さん(以下東出):怒涛の勢いで撮りましたね。
石井監督:1ヶ月丸々空けてくれて。映画に理解の深い事務所なので本当に有り難かったです。
東出:その1ヶ月は他の仕事はなし。最後の方のダンスパーティーシーンは本当に昼夜を問わず撮影しました。朝6時に撮影が終わって、9時には別の現場とか。それぐらい詰め込んでやっていましたね。
石井監督:だから、あまり飲まなかった?
東出:そうです。シャンパンも出たのですが、それどころじゃなかったですね。疲労感もすごかったし、今飲んだら寝てしまうと思って・・・。
 
 

■東出「アクションはイキイキとやらせてもらった。勇人の人生を考えると、解放、理性をとばして輝いていた瞬間」

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―――19年前に大ヒットした石井監督『GONIN』、待望の続編ですが、主演に選ばれたときの気持ちは?また、プレッシャーはありませんでしたか?
東出:僕は『GONIN』ファンで、石井監督と一緒にお仕事ができるのは、とてもうれしかったです。リメイクとなるとプレッシャーを感じるかもしれませんが、今回は新たなストーリーでもあります。根津甚八さんが事務所の先輩で、当時を知るスタッフからも熱い想いは伺っていましたが、特にプレッシャーはなかったです。アクションシーンは、イキイキとやらせていただきました。親に嘘をついて建設現場で働いている勇人の人生を考えると、解放できたというか、理性をとばして輝いていた瞬間だと思います。
 
―――かなり密度の濃い撮影だったようですが、エピソードや、共演者との思い出は?
東出:桐谷さんは「激流」と言い、僕は「濁流」だと思っていましたが、混沌と色々なものが混ざり合い、勢いの強い日々でした。桐谷さんと顔を合わせても、お芝居のことは覚えていますが、その時に何をしゃべったとか、何をしたか全く覚えていません。それぐらい撮影に集中し、熱量があったのだと思います。桐谷さんは、男らしくて兄貴肌で、見た目の意味ではなく、背中の広い人です。役では幼馴染であり舎弟という設定だったので、現場ではお互いに役の愛称で呼び合っていました。今、改めてお互いを本名で呼ぶのは照れるよね、とさっき桐谷さんと話をしていたところですよ。
 
 

■東出「撮影現場で、根津甚八さんと佐藤浩市さんが寄り添う姿に、胸の中でものすごく熱いものがこみ上げてきて、現場の隅で泣いた」

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―――ベテラン、同世代を含め、俳優のみなさんやスタッフの熱量が詰まった作品ですが、共演して一番刺激を受けた方は?
東出:根津さんですね。撮影現場で、佐藤浩市さんと根津さんが寄り添う姿を見たときに、俳優として人生をかけているということや、19年の重みなど、胸の中でものすごく熱いものがこみ上げて、現場の隅の方で泣いてしまいました。あとは、石井監督です。人生を映画にかけていらっしゃるような。
 
―――東出さんは他の現場も経験されておられますが、その中でも石井監督は特に「人生を映画にかけている」と感じたのですか?
東出:そうです。先日、柄本明さんにお会いしたときには「石井監督、変態だったでしょ?」と言われたのですが(笑)。土屋アンナさんも「この世で存在する本当に一握りの天才の一人」とおっしゃっていましたが、本作で竹中直人さんが演じた明神にも通ずる“狂気”みたいなものを感じます。集中されているのは分かるのですが、どこか飄々とされていて、誰も見ていないところに目を向けて、海を潜るように深いところで思考されている姿が、狂気を感じさせますね。
石井監督:いいのか、悪いのか。変態と言われたり、天才と言われたり、どっちなのかな?(笑)
東出:“狂人”です。
石井監督:落ち着くところは、そこか!
 
 

■石井監督「東出君は野心家。自分を狂わせたがっていた」

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―――東出さんと一緒に仕事をする前と後で、イメージは変わりましたか?
石井監督:東出君は、動き方や表情、天然でイノセントな感じがファンに支持されていたのですが、『GONIN サーガ』は従来のイメージを壊さずに、東出君の違う面を引っ張りださなければならない内容です。彼の内面性がそれを受け止めてくれるのか不安もありましたが、東出君はどんどん違う方向に行きたがる野心家。自分を狂わせたがっていましたね。もっと狂わせればよかったかなと。
東出:今後もよろしくお願いします!
石井監督:なかなか、そうは思わないですよ。東出君は容姿端麗で、スターの条件をそのまま持っているので、普通は企画の方が彼に合わせるでしょう。映画会社からは、お客様が遠ざかってしまうかもしれないから、狂った芝居なんかさせない方がいいという話になりますよ。でも、本人は自分の好きな方向に走ろうとしているので、みんなで止めた方がいいです(笑)。
東出:いやいや・・・走らせてください!その時々で、求められるものはあるかもしれませんが、いろんな役をやりたいですから。お芝居は難しいものですし、毎回同じような感じでは、お客様に飽きられてしまいます。ご飯も食べていけなくなりますから、いい役者にならなくてはと思いますね。
 
 

■石井監督「(根津さん出演に)これが最後でいいのかという気持ちで撮影した。とても優しく、ファンの気持ちに応えようと、そちらの方で一生懸命頑張ってしまう方」

―――本作限りのスクリーン復帰となる根津甚八さんの役柄やその演技、演出がとても印象的でした。
石井監督:根津さんはキャリアが長く、様々なところで活躍されてきましたし、この出演が最後だといわれると、「これが最後でいいのか」という気持ちに囚われながら撮影していました。後で、奥様から、根津さんが銃を撃つ稽古をされていたというお話をお聞きしたので、それなら一人で撃つシーンを用意すればよかったと後悔しましたね。根津さんはとても優しい人で、ファンの気持ちに応えようとそちらの方で一生懸命頑張ってしまう方です。それで身体を壊してしまう典型的な憑依型の役者さんでした。外国でも、物凄いことをやる役者さんで、体を壊し、精神を病んでしまう方が少なからずいます。そういった役者たちが纏った業やリスク、危うさを根津さんはいつも持っていました。
 
―――『GONIN サーガ』は、これから長く続く東出さんの俳優キャリアにおいて、どんな位置づけの作品になると思いますか?
東出:『GONIN サーガ』に携わることができたのは、誇りです。俳優業ではよくあるかもしれませんが、初めてのガンアクションであり、初めての人殺しという非日常な行為を経験できたのも『GONIN サーガ』でした。僕の俳優人生の中で、勇人同様に“弾けた”作品になったと思います。
 
―――最後に、石井監督がバイオレンスアクションを描く上で、外せない美学とは?
石井監督:雨と血と闇と逆光……かな。銃や刃物を持ちながらよろよろと立ち上がる、血がどんどん流れ出る男。それと逆境に屹立するファムファタール。この5つをどう組み合わせるかが、僕にとっての映画かもしれない。
 
(江口由美)

<作品情報>
『GONIN サーガ』
(2015年 日本 2時間9分)
監督・脚本:石井隆
出演:東出昌大、桐谷健太、土屋アンナ、柄本佑、安藤政信、根津甚八、竹中直人他
2015年9月26日(土)~TOHOシネマズ新宿、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、OSシネマミント神戸、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト⇒http://gonin-saga.jp/
(C) 2015『GONIN サーガ』製作委員会
 

kouyahijiri-b-550-1.jpg『高野聖』中村獅童舞台挨拶

(2015年9月23日(水・祝) MOVIX京都にて)

・原作:泉鏡花『高野聖』
・脚本&演出:坂東玉三郎、石川耕士
・出演:坂東玉三郎、中村獅童、中村歌六
・公開日:『高野聖』2015年9月26日(土)~10月2日(金) 
・料金:一般2,100円/学生・小人15,00円 
・コピーライト:『高野聖』宣伝写真©篠山紀信

公式サイト: http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki

公開劇場:札幌シネマフロンティア、MOVIX利府、MOVIX仙台、MOVIXつくば、MOVIX宇都宮、109シネマズ佐野、MOVIX伊勢崎、MOVIXさいたま、MOVIX三郷、MOVIX川口、109シネマズ菖蒲、MOVIX柏の葉、東劇、MOVIX亀有、MOVIX昭島、109シネマズ二子玉川、MOVIX橋本、109シネマズ湘南、MOVIX清水、ミッドランドスクエアシネマ、MOVIX三好、109シネマズ四日市、MOVIX京都、神戸国際松竹、MOVIXあまがさき、なんばパークスシネマ、MOVIX八尾、MOVIX堺、MOVIX倉敷、MOVIX日吉津、MOVIX周南、福岡中洲大洋 


 

~修行僧の高潔さに妖力を封じた女と、美しい女を追慕する修行僧の恋心~

シネマ歌舞伎のために新たな映像を盛り込んだ『高野聖』の楽しみ方を、中村獅童が紹介。

 

nezumikozou-240.jpg10年前、初めて観たシネマ歌舞伎『野田版鼠小僧』(第1弾)に爆笑してしまった。野田秀樹による脚本・演出の面白さに加え、山田洋次監督による映像監修は歌舞伎役者の普段とは違う超個性的なキャラを際立たせ、アップや俯瞰のアングルを駆使した映像に大興奮した覚えがある。そのシネマ歌舞伎も最新作『三人吉三』で第22弾となる。過去に製作されたシネマ歌舞伎を毎月1週間限定で上映されているのが、《月イチ歌舞伎》。9月26日(土)~10月2日(金)に上映されるのは、『海神別荘』と『高野聖』。その内の『高野聖』の舞台挨拶付き先行上映会が、9月23日(水・祝)、シルバーウィークの最終日にMOVIX京都にて開催された。


本作で坂東玉三郎と共演している中村獅童が、京都南座にて公演中の『あらしのよるに』(9月26日まで)の終演後、舞台挨拶に登壇。本作で修行僧の宗朝(そうちょう)を演じた中村獅童は、山奥で出会った坂東玉三郎演じる妖艶な女がもたらす美しくも怪しげな恐怖の世界で、煩悩に惑わされる若き修行僧の苦悩ぶりを熱演している。


kouyahijiri-240-1.jpg『高野聖』は、泉鏡花の世界観を歌舞伎で再現し続けている坂東玉三郎が石川耕士と共に脚本と演出を手掛け、平成20年に歌舞伎座にて初演された。本作のシネマ歌舞伎『高野聖』は、初演以来3年ぶりに上演した博多座公演の際に製作された。公演中の撮影が多いそれまでのシネマ歌舞伎とは違い、公演終了後の舞台上を使ったシネマ歌舞伎用の新たな撮影を敢行。芝居のスケール感を出すために、宗朝が山中で道に迷うシーンをロケーション映像で表現。[歌舞伎舞台+映像]によって、これまでにない奥行きのある新しいシネマ歌舞伎『高野聖』が完成した。さらに、坂東玉三郎による分かりやすい前説映像もあり、泉鏡花の原作ファンも歌舞伎ファンも楽しめる作品となっている。

 
 


【あらすじ】
高野山の修行僧・宗朝は、飛騨高山から信州松本へ向かっていた山中で、富山の薬売りが近道をしようと危険な山道へ行ったのを助けようと、自らも幽玄漆黒の山道に足を踏み入れる。たちまち道に迷い、大量の山ヒルに襲われて命からがら辿りついた一軒家で、この世のものとは思えないような美しい女に出会う。腑抜けのように空を見つめる男と暮らす女は、親切なことに宗朝に一夜の宿を貸し、また谷川での水浴をすすめる。ところが、自らの裸体を宗朝の体に寄せて来る。その妖艶さに身構えた宗朝は、山中の獣たちが女に絡みつく異様な光景を目撃する。そして、……。


黒ずくめのスーツスタイルで登壇した中村獅童は、坂東玉三郎がこだわりをもって創り上げた『高野聖』の見所や作品への想いについて語ってくれた。また、南座で公演中の『あらしのよるに』への思い入れから、亡き母への優しい心遣いも見せて、一段と大きな度量を感じさせた。


【シネマ歌舞伎『高野聖』について】

kouyahijiri-b-240-1.jpg――― 泉鏡花の『高野聖』は博多座での公演だそうで?
はい、4年前に福岡の博多座で上演されたものです。坂東玉三郎兄さんが女を、私が宗朝を務めました。

――― 坂東玉三郎さんとの共演は如何でしたか?
普段から色々ご指導頂いておりますが、この作品では特にいい勉強になりました。

――― 二人だけのシーンが多いようですが?
シネマ歌舞伎は公演中の撮影が多いのですが、お客様の前にカメラを置くわけにはいかないと、終演後にシネマ歌舞伎用に撮影されました。夜の9時か10時くらいから、夜中の3時、4時くらいまでかかりました。

――― そんなことって珍しいことなのでは?
そうですね。玉三郎兄さんのこだわりの演出や編集が丁寧になされています。意味のあるシーンではアップになり、ひとつの映画として十分に楽しんで頂けると思います。

kouyahijiri-b-240-2.jpg――― ロケーション撮影があったようですが?
宗朝が山道で迷うシーンは東京の芝公園でロケされました。

――― 宗朝という役は難しかったのでは?
泉鏡花作品はセリフがとても美しいのですが、役者にとっては難しい世界観ですので、玉三郎兄さんとみっちり練習しました。丁度その頃大量のセリフのある『海神別荘』も同時にやっていて、泉鏡花の世界を勉強させてもらいました。

――― 寡黙な役でしたが?
セリフは少なくても、雰囲気を醸し出すことによって物語る必要があったので、そこが難しかったですね。

――― 玉三郎さんからは何かリクエスト3があったのですか?
別にリクエストはありませんでしたが、ヒントは下さいました。そのヒントを基に自分なりの考えで演じて、セリフの美しさや泉鏡花の世界観を表現しようとしました。

――― 泉鏡花の世界観は表現するのに難しかったのでは?
難しいものもありますが、玉三郎兄さんが丁寧に説明して下さいましたので、やりがいのあるとてもいい経験をさせて頂きました。

――― 趣きのある博多座は如何でしたか?
博多座はとてもいい劇場です。お客様も熱い方が多く、楽しみ方がお上手。猿之助さんや勘九郎さんに七之助さんらと一緒に演じた《新春浅草歌舞伎》をやらせて頂きましたが、舞台を盛り上げて下さいました。



【公演中の『あらしのよるに』について】

――― 公演中の『あらしのよるに』に関して特別な思い入れがおありだとか?
kouyahijiri-b-240-3.jpgNHKの絵本の読み聞かせの番組で声だけの語り部のお仕事に出会いました。今は亡き母も動物たちの友情物語が大好きで、この世界観が歌舞伎にも通じるものがあると言っていました。それを10年越しに歌舞伎の舞台で演じることができて本当に嬉しく思っております。また、母が育った京都の地で座頭として公演できて、感慨深いものがあります。

――― この童話は歌舞伎化は想像しにくかったのですが?
皆さんそのように思われたようで、出だしが悪く不安でした。どうやって歌舞伎にするんだ?という疑問もあり、どこまでこの世界観が受け入れられるのかと不安の中で幕が上がったのですが、大勢のお客様にお出で頂きとても嬉しく思っております。お陰様でこのシルバーウィークは「満員御礼札止め」となりました。東京での再演の声も上がっていて、京都でヒットしたものを東京で公演するのはあまりないことなので、とても感謝しております。

――― 歌舞伎には珍しくスタンディングオベーションが巻き起こってましたが?
確かに、歌舞伎では珍しいですね。子供たちも声をあげて笑ってくれて、大人も子供も最後まで退屈せずに観てくれてとても嬉しかったです。勘三郎兄さんから「歌舞伎を観たことのない人を振り向かせるのが仕事や」という心に残るお言葉を頂戴しましたので、いろんなことを通じて中村獅童を知って頂いて、これからも新しいことにチャレンジしていきたい。中村獅童ならではの道を歩んでいきたいと思っております。


 


最後に、シネマ歌舞伎『高野聖』の見所について、「魑魅魍魎(ちみもうりょう)のうごめく独特の陰影のある世界観を映像化したもので、時間をかけて編集にもこだわった作品ですので、どうぞお楽しみ下さい。」と舞台挨拶を力強く締めくくった。

(河田 真喜子)

 

popura-550.jpg『ポプラの秋』中村玉緒記者会見

・(The Letters 2015年 日本 1時間38分)
・原作:湯本香樹実『ポプラの秋』(新潮文庫刊)
・監督:大森研一   ・音楽:清塚信也
・出演:本田望結 中村玉緒 大塚寧々 村川絵梨 藤田朋子 宮川一朗太 山口いづみ 内藤剛志(特別出演)
2015年9月19日(土)~シネスイッチ銀座、シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、9月26日(土)~京都シネマ、109シネマズHAT神戸 ほかにてロードショー
公式サイト⇒ http://popura-aki.com
・(c)2015『ポプラの秋』製作委員会



~現代人の心を癒す不思議なおばあさんと天国への手紙~


popura-nakamura-1.jpg9月19日公開の映画『ポプラの秋』(大森研一監督)に“不思議なおばあさん”役で出演した中村玉緒(76)が18日、来阪。主役を務めた子役の本田望結ちゃんと65歳差の共演を「ホントに楽しかった。これで望結ちゃんも映画好きになってくれるでしょう」と充実の笑顔を見せた。

 

―――最初のご挨拶
中村玉緒「皆さんとお会いするのは鴈治郎襲名披露の時以来でしょうか? ご無沙汰いたしております」。

―――10歳(撮影時)の本田望結(みゆ)ちゃんと共演でしたが?
玉緒「今の子役の方はすごいですね。望結ちゃんは10~11歳で大人と子供の間ぐらいだったんですが、リハーサルと本番では全然違うんです。本番に強いんですね。家族の皆さんも良くて、望結ちゃんのお母さんにもよくしてもらいました。撮影から1年会ってないので、舞台挨拶が楽しみです」。

popura-240-1.jpg―――気難しいおばあさん役は普段のイメージとは違いますが、役作りの苦労は?
玉緒「苦労はしていません。映画は大好きなので、ホントに楽しくやらせてもらいました。年代的に無理はしません。綺麗にとかシワ伸ばしたりとかせず、普通にやれました」。

―――映画が合う、ということですか?
玉緒「ええ、テレビとは大きさが違いますね。カメラのことではなくて、ワンカットワンカット、丁寧に撮っていて、お天気待ちしたりする。みんな座って、ご飯食べたり、おやつをみんなで持ち寄ったり、映画でないと味わえないことがいっぱいあります」。

popura-nakamura-2.jpg―――勝新太郎さんが亡くなって20年近くたちます。様々な思いがあると思いますが、一番の思い出は?
玉緒「うーん、あまりにも波乱万丈だったので…。でも(思い出は)楽しい面しかありませんね。子供を2人ともインターナショナル(アメリカンスクール)へ行かせましたが、これは勝の考えです。今でこそ、みなさん行かせますけれど、当時は少なかった。主人がハリウッドに出たかったんでしょうね。私も出てほしかった。それで、子供に英語を習わせたんでしょう。私は今、韓国ドラマが大好きですが(笑)」。

―――女優生活は長い?
玉緒「私は22歳の時から映画に出ていますが、現役のままでどんどんやっていきたい。先ごろ“着物の作家”として25年目を迎えまして、東京で記念のパーティーをやったんですが、私は芸能生活何周年といった催しはやりません。だから、望結ちゃんも女優だけ、というんじゃなくてスケートもどちらも“二足のわらじ”でやってもらいですね」。

popura-nakamura-3.jpg―――映画では「手紙を天国に届けるおばあさん」ですが、私生活で手紙は?
玉緒「手紙は書きますよ。主人と夫婦げんかしたら、別れそうになるから手紙がいいんです。今でも、親子の間では手紙が多いです。娘は“ありがとう”とか“ママ、今日は疲れたでしょ”とか書いてくれます。メールはいまだに書けないのでね。前は日記も書いてたけど、あれは悪いことが出来なくなる。パチンコばっかりしてたことなんか書けませんわね(笑)。家計簿も付けてましたが、最後は赤字ばかりになって、やめました。小学校時代は初恋の人に手紙出したかったんですが、字が下手なので出せませんでした(笑)。でも、文字っていいものですね。兄とは近所なんですけど、メモ帳に書いて渡してます」。

―――娘さんのメモは残してますか?
玉緒「ええ、引き出しに入れてます。読み返してないから、溜まってますが」。

―――映画ではお棺に手紙を入れてましたが、何を入れたいと思いますか?
玉緒「入れないのがいいでしょう。出来るだけ軽い方がいいと思う」。

popura-240-2.jpg―――望結ちゃんは勝さんのこと知ってましたか?
玉緒「彼女のおばあちゃんがちょうど私と同じぐらいで、ご家族から座頭市などの話を聞いてたようです。望結ちゃんは初主演で現場の雰囲気がものすごく良かったんで、これで映画が好きになったと思いますよ。昔“子役は育たない”というジンクスがあったけど、今はない。望結ちゃんは今で良かった」。

―――天国に持っていきたいものはありますか?
玉緒「持っていきたいものはありません。生きてるうちに全部やっときたいと思います。主人には会いたいと思います。天国か地獄か、どっちにいるか分かりませんが(笑)。地獄にいても会いに行きたいです」。

―――最後にお客さんに『ポプラの秋』のアピールをお願いします。
玉緒「とてもさわやかな映画です。こんな人(おばあさん)が都会にも身近にいてくれたらいいのになあと思います。ストレスが多い世の中、みなさんのストレス解消、はけ口になりますように」。

 


★『ポプラの秋』

popura-240-3.jpg大好きだった父を突然亡くした8歳の千秋(本田望結)は母(大塚寧々)と2人でポプラの木のあるポプラ荘に引っ越す。そこで会った大家のおばあさん(中村玉緒)は“天国に手紙を届ける”不思議な配達人だった。千秋は死んだ父に伝えたかった溢れる思いを手紙に綴っていく。父に届く、と信じて…。

『夏の庭‐The Friends』『岸辺の旅』の湯本香樹実のロングセラー小説の映画化。フィギュアスケートでも注目の本田望結の映画初主演作。映画出演100作を越える大ベテラン、中村玉緒とは65歳差の共演。

原作は97年の発表以来、アジア、欧米など世界10ヵ国で翻訳、出版されている。今年の第18回上海国際映画祭「パノラマ」部門の正式招待作品。現地上映で喝采を受けた。

(安永 五郎)

 akaitama-550.jpg 男の妄想物語『赤い玉、』高橋伴明監督インタビュー

2015年9月10日(木) 十三・シアターセブンにて

・2015年 日本 1時間48分 R18+
・監督:高橋伴明

・出演:奥田瑛二、不二子、村上由規乃、花岡翔太、土居志央梨
2015年9月26日(土)~第七藝術劇場、京都シネマ、10月3日(土)~神戸アートビレッジセンター ほか全国順次公開
公式サイト⇒ http://akaitama.com/

・コピーライト:(C)「赤い玉、」製作委員会
 



 ~“盟友・奥田瑛二”主演による男の妄想物語に
  やんちゃな暴れん坊・伴明監督の本領を見た~


akaitama-di-1.jpg高橋伴明監督が『愛の新世界』以来、20年ぶりにエロスに挑んだ野心作。人生の半分を過ぎようとする男たちが経験する、「老い」が「性」に追いつく時間と葛藤を、現実と妄想の狭間で描く。主人公の映画監督・時田に奥田瑛二。時田の人生を狂わせる女子高生・律子にオーディションで選ばれた新人・村上由規乃のほか柄本佑。製作に名を連ねている高橋恵子も特別出演している。
 

【物語】
大学で映画撮影を教えながら自分は新作撮影に入れない映画監督・時田は、映画の登場人物のように人生を放浪している。彼の私生活には唯という女(不二子)が根を下ろしているが、時田を虚構の世界に誘うように女子高生・律子(村上)が現れ、時田の人生を狂わせていく…。

 


―――『愛の新世界』以来20年ぶりのエロスにまつわる映画。確かに最近では珍しい。こんな映画なかった、という気がするが?
妄想する主人公・時田の半分はボクであとの半分は奥田瑛二かな。動物は妄想が出来ない。妄想するのは人間だけの特権。女性が妄想しないのはDNAに組み込まれている。現実と妄想の境にいる男の話です。

―――かつては日活ロマンポルノがあり、こういう映画は確実に人気があったものだが?
日本映画に性をテーマにしたものが少ない。時代のニーズではなくなったんだろうね。独立プロも最近は、メジャーみたいになってきてるし、あぶなげなものは出来にくいね。

―――奥田瑛二さんにいかにもぴったりの作品だが、彼とは初めて?
akaitama-2.jpg以前に一度、テレビで仕事している。会いたいということで夕方、飲みながら話したら“学校に教えに来い”という話なら断ると言っていたけど、映画の内容を説明するまでもなく、出演は引き受けてもらった。お互い、共通する部分があった。こういう映画がもっとないといけない、と意気投合した。この映画はR15。これまでR18でやってきたけど、やっぱり制限ないのがいいね。

―――『愛の新世界』では日本初のヘア(露出)映画として話題を呼び、映画史に名を残すことになったが?
あれだけで騒がれ過ぎたね。でもこの映画でもヘア露出はあるし、今では当たり前になったかもしれない。

akaitama-di-2.jpg―――この映画は、最近監督が足場にしていた京都造形芸術大学の“北白川派”の作品ではないが、監督の立場は変わったのか?
映画学科長は来年3月に辞めます。後任はまだ言えないけど、ほかの映画監督が決まってます。これでまた映画を撮れるかな、と。この映画では、学生たちがのべ40人スタッフで手伝ってくれてるし、彼らは相当鍛えられたはずです。

―――最近の学生たちが“監督になりたいと思ってない”という話を聞いて驚いたものだが、そのあたりの事情は?
監督というのは、全責任を負わなくてはならない。学生たちにはそれは大変ですからね。ただ、彼らは早い卒業生でもまだ20代。監督はもっと年とって経験を重ねなくはならないですからね。スタッフとして力をつけてきてはいる。この映画でも、主要なスタッフはほとんど学生がやっている。

―――造形大で言えば、監督志望以上に女優志望で新人がどんどん出てきているようだが?
akaitama-4.jpg 『MADE IN JAPAN こらッ』の大西礼芳(あやか)や、山田洋次監督『小さなおうち』の黒木華(はる)。この映画でも、新人・村上由規乃が頑張ってくれた。彼女は入学式の時から注目していた。度胸がよく、テレるということがなかった。奥田瑛二もすっぽんぽんだったからね。

―――久々に1本撮ったら、次はという期待が高まる?
1本撮ったら、仕事に向けるエネルギーが出てきてね。この後すぐ、2本脚本書きましたよ。1本はオファーあったもので、詐欺師の話。近く撮影に入ります。エロスをテーマにしたものもあります。“赤い玉、”というのはホントの話かどうか、一種の都市伝説みたいなものかも知れない。けど、この年で“オスである”にはどうあらねばならないか、と思ったらホントはカッコ悪いんだと思う。現役でいようとして、カッコ悪く妄想するしかない。

(安永 五郎)

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『フリーダ・カーロの遺品−石内都、織るように』小谷忠典監督インタビュー
 

~「私は過去を撮っているのではなく、今を撮っている」

 フリーダ・カーロと写真家石井都の魂が共鳴する瞬間~

 

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メキシコを代表する女性画家、フリーダ・カーロ。独特の色遣いとシュールレアリズムを体現するだけでなく、不自由な身体で最後まで画家として、また愛を求めて力強く生き抜いた女性として、死後50年経った今でもメキシコだけでなく、世界のファンを魅了している。そんなフリーダ・カーロの遺品を撮影するプロジェクトがメキシコで立ち上がり、日本を代表する写真家、石内都さんがその依頼を受けたのだ。
 
石内さんといえば、ドキュメンタリー『ひろしま〜石内都・遺されたものたち』で広島被爆者の遺品を撮影する様子や展示での反響が映し出され、今までとは違う「被爆者の遺品」の捉え方にハッとさせられたことは、記憶に新しい。本作では、かつてから石内さんの熱烈なファンだったという小谷忠典監督が、石内さんのメキシコ撮影旅行に完全密着。さらに別途メキシコ取材を敢行し、遺品を通じて感じ取るフリーダ・カーロの真実や石内さんとの魂の交流、フリーダ・カーロのアイデンティティを支えた民族衣装の作り手たちへのインタビュー、さらに死者と共に過ごす祭りを盛大に行い続けているメキシコという国の死生観にも触れている。
 
 
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陽光降り注ぐメキシコのフリーダ・カーロ博物館の一室で、特別な照明は一切使わず、自然光だけで撮影する石内さん。多くの遺品を選びながら、かかとの高さの違う靴や薬瓶の数々も美しく撮りあげる。フリーダがお気に入りだったという民族衣装のテワナドレスを、彼女が身に着けているかのように、ひだまで綺麗に再現し、丁寧にディスプレイする。そういった作業を通じて、フリーダと会話をしているかのような石内さんの表情がとても魅力的だ。また全編を通じて、メキシコならではの鮮やかな色合いが映し出され、太陽の国メキシコを旅しているような感覚を与えてくれるのだ。
 
本作の小谷監督に、石内さんの撮影に同行することになったいきさつや、実際に撮影現場に密着して感じたこと、またメキシコのアイデンティティを象徴する死生観や民族衣装についてお話を伺った。
 

■石内さんは今まで思い続けてきた人、このチャンスを逃してはいけない。

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―――小谷監督は、長年石内都さんのファンだそうですが、どれぐらい前から石内さんの写真に触れていたのですか?
十数年前、僕の学生時代に、写真に文章が添えられた石内さんの写真集『キズアト』があったのですが、それが一番印象的ですね。僕が『LINE』という映画を作ったときは、石内さんへのラブレターのような作品でした。絶対に石内さんに観ていただきたいと思い、パンフ用のコメントをいただけないかとお願いし、トークショーにも登壇していただきました。
 
―――石内さんの『LINE』に対する感想は?
コザ吉原に入って、ああいう形で撮ったのは非常に貴重だし、傷へのアプローチも好感を持ったとおっしゃっていました。コメントでも「沖縄の女達の純仕事の磁力を表出させた」と書いていただきました。
 
―――石内さんを映画のテーマにしようと思ったきっかけは?
『LINE』で石内さんにお会いしたとき、とてもすてきな女性だったので、彼女を撮りたいとそのときに思いました。ちょうど『百万回生きたねこ』を撮っていたので、それが落ち着いた2012年12月にお電話したのです。
 
―――電話でお話をしてからほんの2週間後にメキシコ行きというハードルの高い状況ながら、撮影を決断した一番の動機は?
石内さんのプロジェクトは最近NHKや他の映像作家が密着することが多いのですが、偶然にもメキシコのプロジェクトは誰も撮影として同行しないということも大きかったです。ただ、今まで思い続けてきた人ですから、このチャンスは逃してはいけないという気持ちが一番ですね。

 

■このプロジェクトを通じて、石内さんは写真表現、僕は映像表現で対峙したい。

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―――フリーダ・カーロの作品を撮影するプロジェクトですが、監督ご自身はフリーダ・カーロに対してどのような印象を持っていたのですか?
僕は、ビジュアル・アーツ専門学校に通う前に奈良芸術短期大学で油絵を専攻していたので、フリーダ・カーロの情報は知っていましたし、石内さんが彼女の遺品を撮ると聞き、ぴったりだと思いました。僕も『LINE』で娼婦の方の体の傷を撮っています。フリーダ・カーロも傷だらけの作家ですし、僕も含めて三者がつながったというイメージがありました。
 
―――憧れていた石内さんを密着する撮影は、どんな気持ちで挑みましたか?
よく石内さんに「僕はファンです」と言っていたら、「そんな安っぽいことは言うな」と。石内さんは十数年ファンで、僕自身の制作にも大きな影響を与えていた方です。影響が大きすぎて撮影できないのではないかと思うぐらいでしたが、このプロジェクトのどこかで石内さんは写真表現、僕は映像表現で対峙したいという思いがありました。緊張感をもって撮影しました。
 
―――石内さんの仕事ぶりを間近で見た感想は?
3週間、遺品撮影に密着させてもらいましたが、フリーダ・カーロはメキシコでは英雄ですし、石内さんも偉人としてのフリーダの大きさをよく分かっていて、最初は緊張されていました。フリーダ・カーロをしっかり撮ろうと思われていたのでしょう。ただ、フリーダ自身が針と糸でストッキングを修繕した痕跡を発見されたときぐらいから、石内さんがフリーダに対して親しみを持つようになった風に見受けられました。
 
 

■遺品をモノというより、フリーダと対話したり接しているように撮影。

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―――撮影するものを選ぶときや、洋服をフリーダが着用していたように整えているときの石内さんの表情がイキイキとしていました。最初はあまりフリーダに興味を持っていなかったとおっしゃっていた石内さんですが、撮影を通じて、フリーダとどのような関係を築いたように映りましたか?

フリーダが身につけていたものや、普段生活で使っていた遺品を300点ぐらいの中から選んで撮影していましたが、重たいフリーダのイメージがどんどん剥がれていって、一人の女性として、フリーダを洗い流しているようなイメージがありました。石内さんの撮影の一つの形でもあるのでしょう。モノというより、フリーダと対話したり、接しているような感じでした。時代も、国も越えてフリーダ・カーロと出会い、コラボレーションすることによって全く違う新たなフリーダ像を二人で一緒に作っているように見えました。最後は二人が仲良くなっている、とけあっているような印象を受けましたね。
 
―――撮影中に親友の訃報に接するなど、プライベートな面での石内さんにも触れたのでは?
石内さんは、遺品の撮影だけではなく、メキシコの文化遺産やご主人のディーゴ・リベラさんの壁画も撮影されていました。それはフリーダの遺品だけではなく、スペインの歴史や文化に触れ、フリーダの背景にあるものを写真でも掬い取っていたのだと思います。カメラで遺品を撮っても、目に見えない部分が映っているように感じましたし、石内さんの親友が亡くなられた後は、遺品の撮影に変化が生まれたと感じました。目に見えない石内さんのまなざしをきちんと映像化、可視化するのが、僕が映像で入った役目だなと思いましたので、3週間の撮影が終わってから1年後に撮影クルーだけでメキシコに行き、目に見えないまなざしを可視化する取材をしました。具体的には、死者の祭りや刺繍家の方たちの取材ですね。
 

■目の前にある遺品と対峙するからこそ、新しいイメージが出てくる。

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―――石内さんと一緒に行動した中で、印象的だったことは?
「私は過去を撮っているのではなく、今を撮っている」という言葉が印象的ですね。過去を撮っていると定着したイメージでしか捉えられないものが、目の前にある遺品と対峙するからこそ、新しいイメージが出てくるのだと思います。『ヒロシマ』という写真集もそうですが、僕たちが原爆で被災された方の遺品と考えると、暗くて、重くて、辛いというイメージで捉えてしまいますが、石内さんはそれを「かわいい」と思ったからキレイに撮ったとおっしゃっていました。それは過去ではなく、今を撮る力だと思います。フリーダも遺品が見つかったときに、最初はメキシコの男性写真家が何人か撮ったそうなのですが、僕も見せてもらいましたが、暗い中でエロチックに撮られている写真でした。フリーダ・カーロ博物館はほとんどが女性スタッフなのですが、彼女たちがフリーダに抱くイメージとそれらの写真とは違ったので、写真を撮ってくれる方を探して、石内さんに辿りついたそうです。実際にできた写真もすごく気に入っておられました。
 
50年間ずっとしまい込まれていたものが、メキシコのフリーダ・カーロ博物館の庭に出されて、天日干しのようにされていて、フリーダがとても気持ちよさそうにしている気がしました。
 

■服は地域や国も反映。縫う、染める、織るという服を作る行為が持つ生命感を一番感じた。

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―――メキシコの追加取材では、彼女のルーツでもあるテワナドレス発祥の地、オワハカを訪れ、なぜフリーダがこのドレスを愛したのか、その背景が見えてきますね。
石内さんのご友人に象徴される個人の死から、メキシコのもっと大きな死生感につなげるために、死者の祭りを撮りたい。そして、フリーダ・カーロの背景にあるものとして、民族衣装を捉えようと思っていました。海外ジャーナリストの記事も含めて、夫ディーゴ・リベラは土着的嗜好が強かったためフリーダにテワナドレスを着せていたと、よく言われています。ただ、遺品の中でもテワナドレスの数が圧倒的に多かったですし、フリーダの母親がテワナドレス発祥の地、オワハカ出身なのです。僕の解釈では、フリーダは多分母の故郷に来て、自分のアイデンティティとしてテワナドレスを着ていたのだと思います。フリーダは混血児なので、ヨーロッパの衣装なども着ていたのですが、晩年テワナドレスを多く着ていたというのは、このドレスを着ることによってフリーダが安らげ、ぼろぼろの身体をこのドレスが守っていたのではないかと思います。訪れてみると、実際にフリーダがオワハカを訪れたと証言してくださる方もいました。
 
―――テワナドレスの刺繍家たちを多数取材されたことで、作品がメキシコの伝統や魂にまで通じるものになったのでは?
僕は既製品ばかり着ていて、親から譲り受けた服など一枚も持っていませんが、村に行って、実際にドレスを触ってみると、民族衣装が外界世界と内面世界の狭間にあるような存在だと感じました。映画の中でもオワハカのダンサーが「第二の肌」と表現していますが、まさにそう感じたのです。その人が着ていたときの感情や記憶が、服にすごく内包されていると思います。
 
服は地域や国も反映させていますし、縫う、染める、織るという服を作る行為が持つ生命感を一番感じました。映像に出てくる刺繍家たちの先祖は奴隷で、貴族のために作っていたのですが、それでもただ作らされていたわけではなく、自分たちの好きな花を取り入れることで楽しみを見出していらっしゃったそうです。
 

■メキシコは陽気で明るい反面、影もあるコントラストのある国。過去の制圧を受け入れたからアイデンティティを守れた。

―――冒頭でも登場する、3000年前から続いている死者の祭りは、日本の慎ましやかな死者に対する迎え方と違い、かなり賑やかですね。
死者を迎える概念が全く違いますね。沖縄もそうですが、悲しい歴史を持っている場所は逆にすごく明るい面があります。メキシコも、あれだけ制圧や闘争の歴史がある中で、笑い飛ばさなければやっていけないという状況下で、あの明るさがある気がします。陽気で明るくて、本当に愛想がいいのですが、仮面の国とも言われており、仮面の裏では泣いている。陽気で明るい反面、影もあるコントラストのある国だと感じました。
 
―――死生観の他に、メキシコでの取材で興味深かったことはありましたか?
歴史上混血の国で、血も混ざりあっているのがすごく面白く、あのミックス感は他では味わえません。現地の人がおっしゃっていましたが、「メキシコは、アメリカやスペインなど他の国の人が制圧しにきたが、それを受け入れたから自分たちのアイデンティティを守れた。それを拒否していたら、全てなくなっていたかもしれない」と。
 
(江口由美)

<作品情報>
『フリーダ・カーロの遺品−石内都、織るように』
(2015年 日本 1時間29分)
監督:小谷忠典
出演:石内都
2015年9月12日(土)~シネ・リーブル梅田、9月26日(土)~神戸アートビレッジセンター、今秋~京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒http://legacy-frida.info/
(C) ノンデライコ 2015
 

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ヘリコプターで江口洋介、本木雅弘が華麗に登場!『天空の蜂』神戸ヘリコプターイベント&記者会見レポート
(2015年8月23日 場所:ヒラタ学園・神戸エアセンター)
ゲスト:江口洋介、本木雅弘、堤幸彦監督
 

「スーパーアクション映画、日本一諦めない男を演じた」(江口)

「『ゴジラ』のように、小さいお子さんにも怪獣映画と思って観てもらいたい」(本木)

「たくさんの語るべき要素を二時間強の“娯楽作品”にまとめることが僕の仕事」(堤監督)

 
ベストセラー作家、東野圭吾最大の勝負作にして、映画化不可能と言われてきた史上最悪の原発テロに迫るサスペンス大作『天空の蜂』。95年に出版されてから20年経った今、江口洋介、本木雅弘を主演に迎え、堤幸彦監督が完全映画化し、9月12日(土)から全国公開される。
 
 
<ストーリー>

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防衛庁からの依頼により開発された巨大ヘリコプター“ビッグB”の納品日、開発した技術者・湯原(江口洋介)らが式典の開始を待つ間に、湯原の息子・高彦が乗っていたビッグBが何者かの仕業で自動操縦され、飛び立ってしまう。行き先は福井県の原子力発電所「新陽」。“天空の蜂”と名乗る犯人の要求は、日本の全原発を破棄すること。「新陽」の真上、800メートルの上空で大量の爆弾を積んだままホバリングしているビッグBの燃料がなくなるまで8時間がリミットと告げるのだったが・・・。
 

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『天空の蜂』劇場公開に先駆け、ヒラタ学園・神戸エアセンターで行われたヘリコプター&レッドカーペットイベントでは、映画さながらの迫力でヘリコプターが空中を旋回したあと轟音と共に着陸。

ダブル主演の江口洋介と本木雅弘が、ヘリコプターから颯爽と登場した。二人で格納庫へと敷かれたレッドカーペットを進みながら、特別招待された観客たちの熱い声援に笑顔で応えた。

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引き続き、ヒラタ学園・神戸エアセンター格納庫で行われた記者会見では、イベントで登場した江口洋介、本木雅弘に加え堤幸彦監督も登壇。
 
 
 
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まずは江口洋介が「ヘリコプターに乗って撮影を思い出しました。400メートルぐらいの上空で、監督は『もっと上がってくれ』と。本来ヘリにはドアがあるものなんですね。撮影ではヘリ上から手を出して大型ヘリを止めるシーンもあり、かなり緊張しました。スーパーアクション映画になっているので是非とも劇場でご覧ください」と過酷な撮影の様子も交えて挨拶すると、本木雅弘は、誰も知らないと思うがと前置きしながら「神戸にヘリで降り立ったのは、3人グループのデビュー3年目イベントで神戸ポートピアランドに降りて以来31年ぶり。そのように(『天空の蜂』も)奇跡が起こり得ます。映画では、困難が目の前に現れたときに自分は何を守り抜けるのかを問うています。小さなお子さまからご年配まで楽しめます」と、31年ぶりのヘリでの来神と映画で起こる奇跡を重ねながら、幅広い年代が楽しめる娯楽作品であることをアピール。
 
堤幸彦監督は、「この映画は東野圭吾先生が20年前にお書きになった大変な問題作。2年ぐらいこの作品に向き合い、なんとか仕上げ、届けることができました。2時間強、絶対飽きさせないエンターテイメント作品です。ぜひ映画館でご覧ください」と感無量の面持ちで挨拶した。
 
ここで、航空整備士育成を行っている学校法人平田学園大阪専門学校の学生の皆さんから三人への花束贈呈が行われ、既に映画を鑑賞した三人から質問が寄せられた。

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「(ヘリコプターシーンについて)高いところは大丈夫かと思っていましたが、ドアのないヘリはこんなに怖いものかと思いました。マネをしないで」(江口)
 
「(息子を助けるシーンについて)何度かスカイダイビングをして撮りました。助ける方は実写です」(堤監督)
 
「(どんな人に観てほしいか)みなさんのような若い方ですが、もっと小さいお子さんにも観てほしいです。かつて『ゴジラ』という映画があり、人間の欲望が生み出した産物だったという理由がありましたが、今回の巨大へりや原発も人間の生み出した、ある意味怪物です。その二つの対決とそれを見守る観衆という怪獣映画として感覚的に見てもらい、成長されたとき映画の背後に隠れていた大きなテーマに気付いて、理解してもらえれば何よりだと、脚本の楠野さんもおっしゃっていました」(本木)と、対話形式で質問に答え、未来の空の安全を担う学生の皆さんへエールを送った。
 
その後に行われた質疑応答では、高校生記者からの質問も飛び交う熱気を帯びたものになり、堤監督からは映画化において重点を置いた点が、また江口洋介や本木雅弘からはそれぞれの役の捉え方や撮影秘話が語られた。その模様を詳しくご紹介したい。
 
 

 
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―――濃密な内容で、キャスト、スタッフの思いが詰まった作品だが、撮影中大変だったことは?
江口:ほとんどスリリングなシーンの連続でした。本木さんと二人でカーアクションをするシーンではロードを本木さんの運転で爆走するのですが、一つのハンドルを取り合って、何テイクも、何テイクも重ね、山を上から下までS字で降りていき、アキレス腱から骨盤からインナーマッスルが貼るぐらいでした。
本木:車内は、今の暑さの三倍ぐらいで、呼吸困難でしたね。
堤監督:声を撮らなくてはいけないから窓も締め切っていました。私の演出的指示は、とにかく何かあったら「あっ」とか「うっ」と言ってくれと。
江口:あのシーンは長かったですね。560テイクぐらい撮りましたか?
堤監督:それはないですが、30テイクぐらいあったかもしれませんね。
本木:専門用語が飛び交う世界で、それをこなすのが大変でした。その中、今枝役の佐藤二朗さんは非常に滑舌が良く、監督は佐藤さんが演技する度に「大オッケー!」とおっしゃっていました。一番大変だったのは、昨年の初夏の頃、東京ではゲリラ豪雨が降り続けていましたが、1995年の灼熱が照りつける8月8日という設定だったので、雨の中でも照明部の方がその日の太陽を作り続けていたことです。撮影も時間との闘いですから、一定の太陽に仕立てていくのは本当に大変で、クレーンの上の照明部の皆さんはトイレの用も足せずに頑張っていらっしゃいました。
 
 

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―――20年前に発刊され、映像は不可能と言われた『天空の蜂』映画化は、かなり覚悟のいる仕事だったのでは?
堤監督:私一人の力量では到底立ち向かえない原作です。非常に緻密に解析されており、人間ドラマとして深い部分もあります。ただ私も20年ぐらいかけて作り上げたチームがあります。そのチームで、原子力発電所はどのようなものか。ヘリコプターがどうやって飛ぶのか。それが分からないと、映画の最後に大変大胆なくだりがありますが、そこには行きつきません。本当にゼロから学び、膨大な資料と向き合い、ロケ場所を探しながら、台本に反映し、長い撮影期間をかけました。また、撮り終わってから何カ月もCGの作業を行いました。中空に浮かんでいる金属の物体にリアリティーを出すことがこんなに大変だとは思いませんでした。
 
 
―――東日本大震災から4年が経ち、今も原発の問題がある中で、特に現在の高校生に伝えたいことは?
堤監督:映画の中で背景として原子力発電所はいい面も悪い面もあり、そこから目を背けてはいけないことを申し上げたいつもりです。みなさんも学習した知識と、足と目と耳と口と鼻と、友達、親、先生と使えるものはすべて使って、自分が納得いくまで調べ、自分なりの結論をだすことが色々なことにおいて必要です。自分が疑問に思ったことは、逃げずに向き合うことが大事です。
 
 
―――子どもを命がけで守る場面があるが、その姿勢に共感する部分はあるか?
tenkuuhachi-6.jpg江口:映画が始まって7分ぐらいで子どもがへりに乗り合わせ人質になってしまい、日本全国民も人質という大事件が起きます。役を演じる中で、自分の子どもが今、空中にいると思うと、立っていられるのか、こんなに冷静にせりふをしゃべれるものなのかと、色々なことを考えました。阪神大震災といい、東日本大震災といい自分の日常にはない怖さがあるのだと、家族ができると余計に敏感に反応し、何かできないかという気持ちが強まります。今回湯原を演じましたが、何か自分が成し遂げたいというものから逃げてはいけない。立ち向かわなければいけない。そこには根性が要るという、根性の映画で日本一諦めない男を演じました。その姿を何も言わなくても、子どもは見ていると思います。
 
 
―――江口さんとの初共演はどうだったか?
tenkuu-s-eguchi-2.jpg本木:江口さんには、同じ80年代に青春をすごし、90年代を中心に活動してきたという親近感や、共に結婚して家族があるという役に近い状況があります。今回の湯原と三島はある意味、陰と陽で性質が分かれていますが、基本的には仕事に没頭する反面、家庭をないがしろにし、親子間のコミュニケーションをうまくとれなかったという後悔を抱えている男です。その辺は、私たちの不定期な仕事と共通するところがあり、お互い共感している雰囲気が伝わりました。基本的に江口さんは普段も情熱をたくさん称えている方で、私はどちらかと言えばウジウジといった感じですので、そのコントラストが映画の役割にも有効だったのではないか。我ながらいい組み合わせだったと思います。
江口:この組み合わせ以上のものはないでしょう。一緒にやっていて本当に刺激されます。三島の言っていること、そのセリフに奥行きがあり、それを本木さんは見事に言ってくれるので、本当にやりやすかったです。
 

―――本木さんが演じた三島は本作のサスペンス部分を盛り上げているが、三島をどのように解釈して演じたのか?
tenkuu-s-motoki-2.jpg本木:脚本と共に東野さんの原作を読んだとき、「意志の見えない仮面を付けた沈黙の群衆」というフレーズが出てきますが、私もまさにその一人でした。世の中では、予想外のタイミングで大変な事件が起きますが、それに対し自分は距離を置いてやり過ごしてきたタイプでした。本作には、そういった自分への戒めをこめて参加した部分があります。三島は自分が抱えた親子の関係の中で、息子とうまくコミュニケーションが取れなかったために、息子を悲しい境遇にさせてしまった後悔がありますが、その根元はどこにあるかといえば、「沈黙の群衆」に行きついたのです。最終的に三島なりの賭けに出る訳ですが、そこには息子への懺悔、自分への戒め、未来への教訓や願いを込めていたと思います。

 
―――本作を作るにあたり、堤監督はどこに一番重点を置いたのか?
堤監督:東野さんのお書きになった内容は、非常に科学的かつ緻密である洞察力と、原発に対する警鐘を発しています。我々が3.11を通じてリアルに感じている現実問題や、巨大な輸送機を作らざるをえない防衛産業の狙いとは何か、事件がおきた後の警察機構のあり方の問題など、今起きている日本の現実を象徴するようなことがこの映画の素材としてたくさんあります。また江口さん、本木さんの二人をトップランナーとして、たくさんの役者さんが全身全霊で演じていただいたこと、現実にはない巨大な飛行物体を作るVFX、ロンドンのリチャード・ブリン氏によりハリウッド並の音楽をつけていただいた音に対する膨大な作業と、語るべき要素もたくさんあります。個人的には親子のことが演技演出的に訴えたい、強い要素の一つです。それらの皆さんに訴えたい、考えていただきたい色々な要素を2時間強にまとめ、「娯楽作品」としてお届けすることが一番私の仕事だと感じ、今回20年連れ添ったチームと共に作り上げました。「娯楽作品」というのが、一番大事なところです。
(江口由美)
 


<作品情報>
『天空の蜂』
(2015年 日本 2時間18分)
tenkuuhachi-530.png原作:東野圭吾「天空の蜂」講談社文庫
監督:堤幸彦  脚本:楠野一郎  音楽:リチャード・プリン
出演:江口洋介 本木雅弘 仲間由紀恵 綾野剛 國村隼 柄本明 光石研 佐藤二朗 やべきょうすけ 手塚とおる 松島花 石橋けい 竹中直人 落合モトキ 向井理 永瀬匡 石橋蓮司 他
2015年9月12日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、ほか全国ロードショー
配給:松竹 
公式サイト⇒ http://tenkunohachi.jp/
(c)2015「天空の蜂」製作委員会
 
『天空の蜂』作品レビューはコチラ

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主演、多部未華子をべた褒め!『ピース オブ ケイク』公開記念 田口トモロヲ監督トークショーレポート@ TSUTAYA EBISUBASHI (2015.8.26)
 
【出演】田口トモロヲ監督
【聞き手】平野秀朗(映画評論家)
 

~ラブシーンも攻めの姿勢で。リアリティーに徹した20代女子のイマドキ“下北ラブストーリー”~

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『色即ぜねれいしょん』から6年ぶりとなる田口トモロヲ監督最新作は、20代女子のリアルな恋愛模様を描く、ジョージ朝倉原作の『ピース オブ ケイク』。恋愛も仕事も流されるまま生きてきた志乃を演じるのは、映画やテレビドラマで大活躍の多部未華子。志乃が恋に落ちるバイト先の店長、京志郎を演じるのは、主演作が目白押しの綾野剛が扮する他、松坂桃李、木村文乃、光宗薫、菅田将暉、柄本佑、峯田和伸ら個性豊かな人気俳優陣が、意外な一面を存分に披露し、細部まで見逃せない。漫画原作ながら、リアルすぎる恋愛模様に思わずハマってしまう、トモロヲマジック全開のラブストーリーだ。
 
この『ピース オブ ケイク』が9月5日(土)より全国公開されるのを記念し、タイアップ企画も行われているTSUTAYA EBISUBASHIにて、田口トモロヲ監督を迎えてのトークショーが開催された。
 
 
映画評論家の平野秀朗氏、が田口トモロヲ監督を紹介したところ、開口一番「どうも、綾野剛です」と挨拶し、一瞬にして会場は笑いのるつぼに。過去作品と少し毛色が変わったのではと聞かれ「プロデューサーからお話をいただき、まずは原作を読むところから開始した。そこにでてくるカルチャーが自分の影響を受けたものと一緒だったので、そこを窓口に描くことができると思う反面、20代の恋愛話が50代のおっさんに描けるのか。俺に描けるのか。少し無茶ぶりではないかという心配があった」と制作経緯を説明。平野氏から「めちゃめちゃいい感じ。おっさんがはまる映画」と言われ、初めて言われたと感動の様子だった。
 

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作品の肝となるキャスティングについて田口監督は、「原作が等身大の25歳の女性の話だったので、そこのリアリティーをもった芝居をできるのは多部さんしかいないと、満場一致だった。(監督という立場で)一緒に仕事をし、すばらしいプロフェッショナルだった。現場スタッフが疲れきっていても、撮影の最後は多部さんのアップを撮って終わろう!となる。スタッフ殺しの多部さんはさすが」と多部未華子を褒めちぎると、綾野剛については「いつもシャープでエッジの聞いた役が多いが、京志郎は少し能天気で野太い木の幹のような、本能的に優しさを兼ね備えている。そういう感じをやったことはないのではと思い、ぜひとお願いした」と田口流キャスティングを披露した。
 
監督自身が俳優ということもあり、その演出方法も気になるところだが、「基本的に役者やスタッフと脚本という共通テキストを通して、どう思ったかということからはじめている。綾野君は体が動くので、肉体表現をしてくれるが、京志郎は野太くて、佇んでいるだけで優しさが滲み出て、相手の言葉を一つ一つ受け止める。その反面抜けたところがあるという話をし、動きを封じてもらうように、共同作業で作っていった」と綾野の新たな一面を引き出す京志郎の役作りについて語った。
 

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平野氏が、二人がつきあっているのではないかと思えるぐらい非常にナチュラルだったと、その中でも志乃と京志郎のラブシーンについて尋ねると、田口監督は「R指定はNGという枠があったが、二人が結ばれ、キスをし、抱き合った次には翌朝という淡泊な表現にはしたくなかった。ラブシーンは恋愛映画に必須。そこは攻めたいと思い、アクションシーンと考えて、前もって全て動きを作ってから俳優に提示し、了解を得て演じていただいた」と男性スタッフで試行錯誤しながらラブシーン案撮りをしたエピソードも披露。「二人が演じると、かなり官能的、芸術的になり、そこに感情も入れてくれるので、かなり攻めた表現になったと思う」とラブシーンの出来栄えに自信を見せた。 
 
 
映画全体で、自然な感じを出すために心がけたことを聞かれると「芝居のサイズ感には注意した。大げさにならず、かといって芝居が沈まないように。漫画原作だが、『そんな訳はないだろう』と思われたくないので、さじ加減が重要だった。最初はアッパーな感じのラブコメになるかと思ってリハーサルをしたが、もっとリアリティーのある現実に向き合うものにした方が、脚本いきると判断し、舵を切った」と試行錯誤の上、微妙なさじ加減があって実現したものであることを明かした。
 
 
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最後に、田口監督から「脚本作りの時に『リアルな東京の恋愛を描けたらいいね』ということで本作がスタートした。東京のリアルな風景をバックに、堂々巡りを繰り返しながら、自分たちにとっての真実を求めていく恋人たちのオルタナティブなラブストーリーになっていると思う。サブキャラクターも皆さんが素直に共感できるように肉体化ができたと思うので、その辺を是非楽しみにご覧いただきたい」と観客へメッセージが寄せられた。「どうも、綾野剛です」をギャグのように挟み込み、大盛り上がりのトークイベント。主人公たちの恋愛の悲喜こもごもがグングン沁みてくるのは、リアルに徹した田口監督の演出術にあるのだと実感した。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ピース オブ ケイク』
監督:田口トモロヲ 
原作:ジョージ朝倉『ピース オブ ケイク』祥伝社 フィールコミックス
出演:多部未華子、綾野剛、松坂桃李、木村文乃、光宗薫、菅田将暉、柄本佑、峯田和伸
(C) 2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会 
公式サイト⇒ http://pieceofcake-movie.jp/
2015年9月5日(土)~梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸ほかにてロードショー