主演、多部未華子をべた褒め!『ピース オブ ケイク』公開記念 田口トモロヲ監督トークショーレポート@ TSUTAYA EBISUBASHI (2015.8.26)
【出演】田口トモロヲ監督
【聞き手】平野秀朗(映画評論家)
~ラブシーンも攻めの姿勢で。リアリティーに徹した20代女子のイマドキ“下北ラブストーリー”~
『色即ぜねれいしょん』から6年ぶりとなる田口トモロヲ監督最新作は、20代女子のリアルな恋愛模様を描く、ジョージ朝倉原作の『ピース オブ ケイク』。恋愛も仕事も流されるまま生きてきた志乃を演じるのは、映画やテレビドラマで大活躍の多部未華子。志乃が恋に落ちるバイト先の店長、京志郎を演じるのは、主演作が目白押しの綾野剛が扮する他、松坂桃李、木村文乃、光宗薫、菅田将暉、柄本佑、峯田和伸ら個性豊かな人気俳優陣が、意外な一面を存分に披露し、細部まで見逃せない。漫画原作ながら、リアルすぎる恋愛模様に思わずハマってしまう、トモロヲマジック全開のラブストーリーだ。
この『ピース オブ ケイク』が9月5日(土)より全国公開されるのを記念し、タイアップ企画も行われているTSUTAYA EBISUBASHIにて、田口トモロヲ監督を迎えてのトークショーが開催された。
映画評論家の平野秀朗氏、が田口トモロヲ監督を紹介したところ、開口一番「どうも、綾野剛です」と挨拶し、一瞬にして会場は笑いのるつぼに。過去作品と少し毛色が変わったのではと聞かれ「プロデューサーからお話をいただき、まずは原作を読むところから開始した。そこにでてくるカルチャーが自分の影響を受けたものと一緒だったので、そこを窓口に描くことができると思う反面、20代の恋愛話が50代のおっさんに描けるのか。俺に描けるのか。少し無茶ぶりではないかという心配があった」と制作経緯を説明。平野氏から「めちゃめちゃいい感じ。おっさんがはまる映画」と言われ、初めて言われたと感動の様子だった。
作品の肝となるキャスティングについて田口監督は、「原作が等身大の25歳の女性の話だったので、そこのリアリティーをもった芝居をできるのは多部さんしかいないと、満場一致だった。(監督という立場で)一緒に仕事をし、すばらしいプロフェッショナルだった。現場スタッフが疲れきっていても、撮影の最後は多部さんのアップを撮って終わろう!となる。スタッフ殺しの多部さんはさすが」と多部未華子を褒めちぎると、綾野剛については「いつもシャープでエッジの聞いた役が多いが、京志郎は少し能天気で野太い木の幹のような、本能的に優しさを兼ね備えている。そういう感じをやったことはないのではと思い、ぜひとお願いした」と田口流キャスティングを披露した。
監督自身が俳優ということもあり、その演出方法も気になるところだが、「基本的に役者やスタッフと脚本という共通テキストを通して、どう思ったかということからはじめている。綾野君は体が動くので、肉体表現をしてくれるが、京志郎は野太くて、佇んでいるだけで優しさが滲み出て、相手の言葉を一つ一つ受け止める。その反面抜けたところがあるという話をし、動きを封じてもらうように、共同作業で作っていった」と綾野の新たな一面を引き出す京志郎の役作りについて語った。
平野氏が、二人がつきあっているのではないかと思えるぐらい非常にナチュラルだったと、その中でも志乃と京志郎のラブシーンについて尋ねると、田口監督は「R指定はNGという枠があったが、二人が結ばれ、キスをし、抱き合った次には翌朝という淡泊な表現にはしたくなかった。ラブシーンは恋愛映画に必須。そこは攻めたいと思い、アクションシーンと考えて、前もって全て動きを作ってから俳優に提示し、了解を得て演じていただいた」と男性スタッフで試行錯誤しながらラブシーン案撮りをしたエピソードも披露。「二人が演じると、かなり官能的、芸術的になり、そこに感情も入れてくれるので、かなり攻めた表現になったと思う」とラブシーンの出来栄えに自信を見せた。
映画全体で、自然な感じを出すために心がけたことを聞かれると「芝居のサイズ感には注意した。大げさにならず、かといって芝居が沈まないように。漫画原作だが、『そんな訳はないだろう』と思われたくないので、さじ加減が重要だった。最初はアッパーな感じのラブコメになるかと思ってリハーサルをしたが、もっとリアリティーのある現実に向き合うものにした方が、脚本いきると判断し、舵を切った」と試行錯誤の上、微妙なさじ加減があって実現したものであることを明かした。
最後に、田口監督から「脚本作りの時に『リアルな東京の恋愛を描けたらいいね』ということで本作がスタートした。東京のリアルな風景をバックに、堂々巡りを繰り返しながら、自分たちにとっての真実を求めていく恋人たちのオルタナティブなラブストーリーになっていると思う。サブキャラクターも皆さんが素直に共感できるように肉体化ができたと思うので、その辺を是非楽しみにご覧いただきたい」と観客へメッセージが寄せられた。「どうも、綾野剛です」をギャグのように挟み込み、大盛り上がりのトークイベント。主人公たちの恋愛の悲喜こもごもがグングン沁みてくるのは、リアルに徹した田口監督の演出術にあるのだと実感した。
(江口由美)
<作品情報>
『ピース オブ ケイク』
監督:田口トモロヲ
原作:ジョージ朝倉『ピース オブ ケイク』祥伝社 フィールコミックス
出演:多部未華子、綾野剛、松坂桃李、木村文乃、光宗薫、菅田将暉、柄本佑、峯田和伸
(C) 2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会
公式サイト⇒ http://pieceofcake-movie.jp/
2015年9月5日(土)~梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸ほかにてロードショー