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2023年8月アーカイブ

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 【日 時】8月25日(金)18:30~19:00 ※《上映前》
【場 所】 TOHOシネマズ 梅田(大阪市北区角田町7-10 8F)
【登 壇】 齊藤工監督



映画やドラマで俳優として活躍する一方、監督やプロデュース業でも多彩な才能を発揮している齊藤工が監督を務める映画『スイート・マイホーム』が、9月1日より公開となります。2018年、「第13 回小説現代長編新人賞」を受賞した注目の作家・神津凛子のデビュー作。窪田正孝を主演に迎え、蓮佛美沙子、奈緒、窪塚洋介ら実力派俳優たちが織りなす予測不能のホラー・ミステリーです。8月25日大阪のTOHOシネマズ梅田で行われた先行上映会に齊藤工監督が登壇いたしました。


sweetmyhome-bu-500-1.jpg第13回小説現代長編新人賞を受賞した神津凛子による長編小説を実写映画化した『スイート・マイホーム』(9月1日公開)。1台のエアコンで家全体を暖められるという「まほうの家」と呼ばれる念願のマイホームに引っ越した直後から、次々と奇妙で不可解な現象に襲われる一家を描くホラー・ミステリー。8月25日大阪のTOHOシネマズ 梅田で行われた先行上映会は満席の客席の中を歩いての齊藤監督のサプライズ登場に観客も大感激で始まった。


sweetmyhome-bu-240-1.jpg登壇した齊藤監督は「コロナ前は映画が生まれると東名阪にこうやってお邪魔することが常だったが、いつの日からかなかなか来るのが難しくなったこともあったので、久々に、しかも監督作品を持って大阪に来れたことがとても幸せです」と挨拶した。完成披露試写会を除いては国内最速となった今回の大阪の先行上映会。「作品に勢いをくれる、追い風のように応援してくれる関西のエネルギーを今までたくさん頂いていたので本当に心強いです」と感謝を述べた。


またこの日、早朝のABCテレビ「おはよう朝日です」への生出演に始まり多くの番組の生出演、収録をしたことについて聞かれると、「ツカミはないのか?みたいな空気が耐えられないとこはありますよね…」と話し、「で、オチは?と求められていることを肌で感じるときに背筋が凍る思いがしました(笑)当たり前にスタッフの方も含めて皆さんの会話がしっかりオチに向かうことが素晴らしいです」と関西人の話術に感心した様子。


2019年冬に原作の映画化のオファーを受けた時について「目を覆いたくなる描写が多い、容赦のない原作で、自分には難しいのではないかという思いがありました。しかしコロナ禍に入り、ステイホームという期間に聖域である“自宅”という場所が人によっては逃れられない環境であるということを報道などで知り、改めて“自宅”について向き合わされました。そんなタイミングで今回のお話を頂いていることはもしかしたら必然なんじゃないかという思いに変わっていき、お話を引き受けるに至りました」と振り返った。


sweetmyhome-main.jpg主演の窪田正孝さんについて「原作を読んでいる時から、自分の中での主人公のイメージが窪田さん的な人物でした。実は原作の神津先生も窪田さんの大ファンで、窪田さんを主人公のモデルにした作品が他にあるようで驚きました」と語り、撮影に関しては「全て理解した状態でそこに佇んでいてくれて、むしろ僕の“こうしてほしい”の1.5倍くらいの表現を常にしてくださっていたので言うことがなかったです」と絶賛した。


現場の雰囲気については「小さなお子さんが撮影に参加していたので繊細な現場の作り方を意識していました。寝かしつけるとか無理やり起こすとかを大人の都合でするのはやめようと。初日に子役の子が寝るシーンで本当に眠ってしまい、起こすのもしのびないので、そのまま大人たちも休憩時間にしたり、作風とは裏腹に非常に保育園感のある現場になりました」とホラー作品とは思えない和やかな撮影現場を振り返り、「お子さんたちの純然たる目線は真実を見抜きますから、ちゃんと心を通わさなければ親子に見えないと今回改めて思いました。窪田さんも蓮佛(美沙子)さんも空き時間に本当に親子のような距離感で接してくれていたので助かりました」と両親役の二人へ感謝を述べた。


sweetmyhome-sub2.jpgまた子役の磯村アメリさんについて「彼女は本当にプロフェッショナルで、現場でもスタッフ達にあだ名をつけたり、俳優部とスタッフのブリッジになってくれました。自分より小さいお子さんたちの面倒も見てたりして、彼女がこの作品の現場の母性みたいなものを担っていましたね」と女優として恐ろしささえ感じると感服した。


sweetmyhome-bu-240-2.jpg制作にあたって「自分が関わる日本の映像の現場は、予算でまず先に削られるのが食べるもの。僕は食べるものと体のコンディションとクリエイティブは直線で繋がっていると考えていて。コロナ禍になってから腸活とか菌活を日々しているんですけど、偶然、窪田さんや窪塚(洋介)さんもそういう意識の高い方たちで、この現場中はオーガニックなお弁当を差し入れたり、なるべくお味噌汁や納豆をお弁当に添えるなど、みんなの腸内環境をより良い状態にすることを心がけました。それが作品の仕上がりに繋がるということが今回、実証された気がします。日本は発酵の楽園なので、今回の試みが今後のモデルケースになったらいいなと思っています」と語った。


また海外の映画祭でも上映された本作。現地での反響について「思わぬところで大爆笑や悲鳴が起こったり、アトラクションのような感覚で受け止めてくださっていました。僕が俳優であることを認識していない方が多いので純粋に作品として見てくださって、上海、NYからこの映画のリアクションを僕自身が受け止めることができて良かったです」と振り返った。


最後に「“家の中で”何が起こるかを“映画館という館の中で”皆さんに体験してもらうべく作った作品なので楽しんでいただければと思います。今の映画業界、アメリカのストもありますが時代の変わり目にあると思います。この作品はキャスト、スタッフがコロナ禍でどうなるか先が見えない中でしっかりと現場を守りながら撮影をさせてくれました。彼らの汗はこの作品の中に滲み出ていると思います。そんな見えない力や見えない才能の思いを皆さんが受け取ってくださることが最大の僕らの報いではありますので、ぜひ楽しんでください」と作品と映画業界への思いを語り、「ここにいる皆さんが最大の宣伝部です。良いと思ったら拡散していただいて、この作品に限らず今、公開されている映画を劇場で観るということをしていただけたら嬉しいです。また映画館にいらしてください」と大阪の観客へ熱いメッセージを届け、舞台挨拶は締め括られた。
 


【STORY】

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極寒の地・長野県に住むスポーツインストラクターの清沢賢二は、愛する妻と幼い娘たちのために念願の一軒家を購入する。“まほうの家”と謳われたその住宅の地下には、巨大な暖房設備があり、家全体を温めてくれるという。理想のマイホームを手に入れ、充実を噛みしめながら新居生活をスタートさせた清沢一家。だが、その温かい幸せは、ある不可解な出来事をきっかけに身の毛立つ恐怖へと転じていく。

差出人不明の脅迫メール、地下に魅せられる娘、赤ん坊の瞳に映り込んだ「何か」に戦慄する妻、監視の目に怯えて暮らす実家の兄、周囲で起きる関係者たちの変死事件。そして蘇る、賢二の隠された記憶。その「家」には何があるのか、それとも何者かの思惑なのか。最後に一家が辿り着いた驚愕の真相とは?


■出演:窪田正孝 蓮佛美沙子 奈緒 中島 歩 里々佳 吉田健悟 磯村アメリ 松角洋平 岩谷健司 根岸季衣 窪塚洋介
■監督:齊藤 工 
■原作:神津凛子「スイート・マイホーム」(講談社文庫)
■脚本:倉持 裕
■主題歌:yama 「返光(Movie Edition Edition)」 音楽:南方裕里衣
■製作:鳥羽乾二郎 太田和宏 高見洋平 人見剛史 松下寿昭 澁谷京子 福山雅治
■製作幹事・配給:日活 東京テアトル
■制作プロダクション:日活 ジャンゴフィルム
■企画協力:フラミンゴ
■製作:日活 東京テアトル 講談社 ライツキューブ スターキャット ブルーベアハウス
■助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
■©2023『スイート・マイホーム』製作委員会 © 神津凛子/講談社
■公式サイト:sweetmyhome .jp

2023年9月1日(金)~TOHOシネマズ梅田 他全国ロードショー


(オフィシャル・リリースより)

 

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日時:2023年8月24日(木)豊中市先行上映会

場所:豊中市立文化芸術センター

ゲスト:山田洋次監督、北山雅康(巡査役)*敬称略



吉永小百合と大泉洋の親子役が話題を呼ぶ山田洋次監督の最新作

母親の恋愛に戸惑う中年息子の人生崖っぷち物語。

 

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『男はつらいよ』シリーズや『家族』『幸せの黄色いハンカチ』など時代に翻弄されながらも愛情をもって生きる市井の人々を描いては、日本の家族の在り方を問い続けてきた山田洋次監督。『たそがれ清兵衛』や『武士の一分』などの時代劇でも、武家社会の理不尽さに抗う人々を清廉に描いてきた。正に日本映画界を代表する巨匠の1人である。そんな山田監督は今年92歳を迎え、監督作90作品目となる『こんにちは、母さん』が9月1日に公開される。サラリーマンの宿命ともいうべきリストラ問題や家族の崩壊に悩む中年息子と、日々素直な気持ちで一所懸命に生きる母親の姿を通して新たな家族の情景を活写して魅了する。


東京は下町を舞台に、吉永小百合が珍しく老齢の母親を演じ、その息子役に今や超人気俳優の大泉洋をキャスティング。もうそれだけで話題になる作品である。公開を前に豊中市立文化芸術センターで開催された先行上映会に、山田洋次監督と山田組の常連俳優の北山雅康が舞台挨拶で登壇し、撮影現場の様子や今回新たに加わった俳優について語った。山田監督は、観客の入りを気にしてか登壇前に舞台袖から会場をちょっとのぞき込み、超満員の熱気に驚くお茶目な一面を見せていた。


konnichiwakasan-550.jpg吉永小百合については「顔立ちだけでなく人間として品格のある女優」と評し、今回山田組に初出演となる大泉洋を「主演スターとして通用する実力派俳優」と絶賛、宮藤官九郎については「監督としても俳優としても一流の宮藤官九郎君が脇役を快く引き受けてくれて、僕の注文にも誠実に応えてくれた」と好感を示し、現場でもムードメーカーだったYOUについては「とても楽しい人、是枝監督の言う通り、監督の意図を理解して演技してくれる人だった」と大絶賛。キャスティングの妙にも大満足のご様子。


老齢の母親の恋愛に戸惑う中年息子の物語に新たなキャラクターが加わった今回の作品は、これまでの山田組の盤石さを感じさせる懐かしさと、次世代へのエールが込められた人間讃歌に満ち溢れているようだ。戦中派の監督が少なくなった今、山田洋次監督の時代の変化を反映しながら人々の心の変容を映し出す作品と、それを丁寧に語る言葉を聴くことができたとても貴重な舞台挨拶となった。
 


〈以下、舞台挨拶の詳細〉

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――最初のご挨拶

山田監督:テレビでこの暑さのことを“危険な暑さ”と言っていましたが、この危険な暑さの中を僕の映画を観に来て下さるなんて、しかもこんなに沢山の方に来て頂けるなんて、ホント日本中いろんな所へ行ってますが、こんな超満員になるのは初めてですよ。びっくりしてます。本当にありがとうございます。


――監督作90作品目ということですが?

山田監督:数が多いというのは決して自慢じゃありませんよ。ただ沢山作ったというだけでね。巨匠と言われる人たちはそんなに沢山作るもんではないんです。


konnichiwakasan-bu-yamada-240-1.jpg――今回は山田監督作品に初出演という方が多かったですね。大泉洋さんに宮藤官九郎さん、YOUさんなど…中でも大泉洋さんは今や大人気で超売れっ子ですが、起用された理由は?

山田監督:テレビや映画などで彼の演技は観てましたけど、力のある大した役者さんだと思いました。主演スターとして通用する数少ないスターの1人ですね。

――大泉洋さんが出てくるだけで明るくなったのでは?

山田監督:そこは大事なところですね。パアッと明るくなる。明るくならない俳優も沢山いますからね(笑)。吉永小百合さんがいて、息子は誰がいいか?…息子が決まらないとこの企画は進まないのでね。僕は早い時期から息子は大泉洋がいいと思っていたんです。


――宮藤官九郎さん、YOUさんについては?

山田監督:宮藤官九郎という人は喜劇の監督としても役者としても一流の人で、そんな人が脇役として登場してくれるのかと思っていたら、「喜んでやります!」と言ってくれたので嬉しかった。ああいう形で参加してくれて、現場でもとても真面目というか、僕の注文に誠実に応えてくれてとても好感を持ちました。

YOUさんは変幻自在の人だと思っていたら、一緒に仕事していてとても楽しい人でした。どんな注文でもどんどんこなして消化してくれる人なんです。是枝監督が撮影を見に来てくれたことがあって、YOUさんは是枝監督によって見い出された俳優さんですから、「YOUちゃんはいい役者だね」と言うと、是枝監督が、「彼女は監督が自分に何を要求しているのか、よく理解できる役者ですよ」と言っていました。それは僕にもよく理解できましたね


konnichiwakasan-bu-kitayama-240-1.jpg北山:YOUさんはとてもいいムードメーカーでしたよ。YOUさんが居ると、監督も皆が和やかな雰囲気なってましたね。

(ここで突然自己紹介が始まって…)すみません!私は向島の巡査役を演じてました北山雅康と申します。今日はようこそお出で下さいました。ありがとうございます!(笑いと拍手)僕は『男はつらいよ』シリーズで「とらや」の店員で三平役をやらせて頂いてから山田監督作品に出させて頂いてますので、山田監督とは35年もお世話になっております。

山田監督:北山君は大阪に来ると急に関西訛りになるんですよ(笑)。

北山:もうダメです。堰を切ったように関西弁が出るんです。出身が京都なもんで。


――撮影現場で大変だったことは?

北山:皆さんお気付きですか?私は向島の巡査役で出ていたんですよ。特に、[言問橋(ことといばし)]のシーンは大変だったんですよ!あそこは向島と浅草を繋ぐ橋でして、普段から交通量の多い所なんです。そこを「ちょっと待って下さいね」と通行止めしながらの撮影でした。

山田監督:夕景をワンカットで撮ろうと180度以内の通行を止めなきゃいけなかったんです。

北山:終いには怒り出す通行人の方もおられて、私が巡査の格好で立ってるもんですから「お前巡査やろ、なんとかしろ!」と怒られて、エライ目に遭いました(笑)。「あの人に言うて下さい、あの人に!」と本物の巡査の方を指差してましたわ。カメラが私たちを捉えて撮って下さる時、監督はモニターの前におられるのが普通なんですが、山田監督はカメラと一緒に動いておられました。


――共演者との印象は?

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北山:やはり吉永小百合さんですね。わたしにとっても憧れの女優さんです。吉永さんが演じておられる神崎福江さんのお宅へ訪ねるシーンもありましたので、初めてゆっくりとご一緒させて頂いたのですが、普段からピリッとしたオーラのある方ですよね。福江さん役で皆さんと和やかに話しておられても、やはり他の女優さんとは違いますよね。是非、本物の吉永小百合さんに会って頂きたいです。(拍手)


――山田監督からご覧になって吉永さんの魅力とは?

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山田監督:う~ん、(少し間をおいて)品の良さというと常識的な言い方になりますが、とにかく品がいい、顔立ちだけでなく、人間としてね。とても真面目な方で、世界の問題とか人類の課題とかにも関心を持って勉強もよくされています。特にあの人は原爆反対に明確な意思を持って取り組んおられるし、非常に知的な人で、人間としてしっかりとした人ですね。バカバカしい冗談を言ってゲタゲタ笑うようなタイプではないんですけど、女性として立派な人だと思いますね。


――そんな吉永さんが演じられた“お母さんの恋”について?

konnichiwakasan-500-3.jpg山田監督:「お母さんが恋をしたらどう思う?」と40~50代の中年男に聞くと、みんな顔をしかめます(笑)。「とんでもねえよ」とか「イヤだよ」とかね。確かにお父さんが生きている場合はとんでもないことですが、「お母さんが独りだったら?」、「それでもイヤだよ」って言うんです。一人の女性として恋をしてもいいと理屈では解っていても、イヤなようです。女性と男性では受け止め方も違うようですが、はやり母親に対して神聖視しているというか、聖なる存在なんですよ、母親は。恋をするということはどうしてもセックスと繋がっていて、母親を女として考えたくないというのが、息子たちの本音のようです。でもそれはしょうがないことなんです。それを超えて人間は生きていく訳ですから、男の子は諦めるしかないんです(笑)。

――これを見ている中年男性は、少し大らかな気持ちでいて欲しいですね。

山田監督:そう思います。


――山田監督は91作目の構想とかはおありですか?

山田監督:終わったばかりで今はあまり考えられませんね。でも、監督になってから60年以上になりますが、いつも2つや3つはやりたい構想は持っているもんなんですよ。それが漬物みたいなもんで、そろそろ食べ頃かなと出してみる。今でもいくつかの企画は持っています。できたら実現したいなと思っていますが、いつかは僕にも限界が来るでしょうから、ここでは言えませんね。

――それは楽しみですよね?北山さんは次はどんな役で出たいですか?

北山:私ね、現場に1週間位居るような役しかないんですよ。次の作品ではもう少し長く現場に居られるようにして頂きたいなと思ってます。

――今回の息子役のような?

北山:とんでもない!そこまで言ったら怒られてしまいます。ご辞退いたします(笑)。


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(長内繁樹豊中市長(左)も加わっての記念撮影)


――ここで山田監督にお願いがあるのですが、次回作では是非この豊中市でロケをして頂きたいなと思っているのですが?(場内から拍手が沸き上がる)

山田監督:「わたくし、生まれも育ちも、豊中は岡町という所でございます!」(笑) 私が生まれた家がまだ残っているんですよ。あの家を映すようなロケーションができたらいいなと思っています。

――楽しみです~!(観客からも拍手!)是非よろしくお願いいたします!
 


『こんにちは、母さん』

(2023年 日本 110分)
監督:山田洋次
原作:永井愛
脚本:山田洋次、朝原雄三 
音楽:千住明
出演:吉永小百合、大泉洋、永野芽郁、YOU、桂元萌、宮藤官九郎、田中泯、寺尾聡他

公式サイト: https://movies.shochiku.co.jp/konnichiha-kasan/

2023年9月1日()より全国ロードショー
 


 

(河田真喜子)

 

 
 
 
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『A』『A2』『i 新聞記者ドキュメント』と社会派ドキュメンタリーを撮り続けてきた森達也監督による初の長編劇映画『福田村事件』が、関東大震災からちょうど100年となる2023年9 月1日(金)よりシネ・リーブル梅田、第七藝術劇場、MOVIX堺、京都シネマ、京都みなみ会館、9月8 日(金)よりシネ・リーブル神戸、元町映画館、シネ・ピピア、以降出町座で順次公開される。
 福田村事件とは、関東大震災発生から6日後の1923年9月6日、千葉県東葛飾郡福田村(現在の千葉県野田市)で、自警団を含む100人以上の村人たちにより香川から訪れた薬売りの行商団15人のうち幼児や妊婦を含む9人が虐殺された事件。歴史の闇に葬り去られていた事件を群像劇として構築。大災害時のフェイクニュースが引き金となった虐殺や、その後戦争に突き進んでいく日本の市井の人々の姿を通して、現在に通じる報道のあり方や集団と個の問題や浮き彫りにする必見作だ。
 本作の森達也監督にお話を伺った。
 

 
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―――関東大震災後、今まであまり一般的に知られていなかった福田村事件を描くにあたり、特に注力した点は?
森:戦争でも普通の事件でも、感情移入がしやすい被害者側を主軸に描く作品が圧倒的に多いです。でも加害者にも一人ひとりにもそれまでの時間があり、その行為に至る経緯がある。事件だけを切り取れば凶悪なモンスターになってしまうので、加害者の日常や喜怒哀楽をきちんと描きたいという気持ちで臨みました。
 
―――今回、フィクションを監督しましたが、ドキュメンタリーとの違いはありましたか?
森:ドキュメンタリーもフィクションもカットを組み合わせるモンタージュですから、その部分は同じです。ドキュメンタリーは撮影後にラッシュを見ながらモンタージュとストーリーを考えるけれど、フィクションは先にストーリー、つまりモンタージュを考えてから撮影するので、順番が違うだけ。ただドキュメンタリーは現実に規定されてしまうけれど、自分の想像をはるかに上回ることが起きるんです。フィクションは宇宙人を登場させることもできるけれど、自分の想像の範囲内のことしか作れない。それぞれ一長一短がありますね。そこはある程度想像がついていたので驚きはしなかったですが、こんなに大所帯で撮影をしたのは初めてで、それは大変でした。
 

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■20年前に知った福田村事件、映画化までの道のり

―――福田村事件を映画化しようと思ったきっかけは?
森:20年前に新聞で、千葉県野田市に慰霊碑を作る動きが始まったという小さな記事を読んだんです。それだけでは詳細がわからなくて、野田市に行って話を聞いたり郷土資料館で調べたりして、ほぼ資料はなかったのだけど何とか福田村事件のアウトラインを知り、テレビの報道特集枠で取り上げられないかと各局に企画を持っていきましたが、「これは無理でしょう」と検討の余地もなかった。その後に著書「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」(03)で、章をひとつ使って事件のことを書きましたが、映像化については棚上げ状態となっていたんです。『FAKE』(16)を撮った後、次はフィクションで福田村事件なら撮れるのではないかと考えて、簡単なシノプシスを書いて映画会社を回った時期もあります。でもやっぱり駄目でした。
その後に、やはり映画化を考えていた荒井晴彦さんたちに出会う。彼らが事件を知った理由は、「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」を読んで事件を知ったミュージシャンの中川五郎さんが作った曲「1923年福田村の虐殺」を、たまたま聴いたことがきっかけだと後で知りました。偶然なのか必然なのか、ぐるりと廻って繋がったという感覚です。
 
―――福田村事件で犠牲になった行商団の中には、生き残り、地元に戻った方もおられますが、関係者の方に話を聞くことはできたのでしょうか?
森:シナリオを書くためのリサーチで香川県へ行ったときに、生き残って戻られた行商団の方のご遺族と面会することができました。その方も3年前ぐらいに、はじめてこの事件のことを知ったそうです。僕に話してくれたのは、日ごろ祖父は何も語らなかったけれど、たまに縁側でお酒を飲みながら泣いていることがあり、子ども心ながら「なぜ、じいちゃんは泣いているんだろう」と思っていたそうです。今から思えば、事件のことを思い出していたのだろうと語ってくれました。
 
―――井浦新さんが演じる澤田と田中麗奈さんが演じる妻の静子は、日本統治下の京城から故郷の福田村に戻ってきたという設定で、オリジナリティーを感じました。
森:加害者と被害者に加え、もう一つの視点が欲しいと考え、触媒となる存在として澤田夫妻を加えました。井浦さんをはじめ、俳優のみなさんは脚本から人物像を深く理解して撮影に臨んでくれたので、僕からは何も言うことがないぐらいの素晴らしい演技でした。
 
―――排他的な村社会で生きる人たちとは一線を画し、他人と対等な関係を築こうとする静子の立ち振る舞いは、性的な部分も含めてとても新鮮ですね。
森:ちょっと破天荒にしすぎたかな(笑)田中さんにはとにかく無邪気になってとお願いしました。大の字で寝そべったりするところも、日頃の田中さんとは違うかもしれないけれど。オファーをしてからしばらく脚本を読み込み、熟考した上で出演を決めてくれました。
 
―――行商団が被害に遭うことは史実でわかっていますが、そこにいたるまでの道中で彼らがどのような日々を紡いでいたか、彼らの生きた証がしっかり描かれていました。
森:映画では表立って出していませんが、行商団員の設定をそれぞれ作り、年齢や、どういう場所で育ったかを俳優たちへ事前に伝えていました。昨年8月、コロナの感染者がまだ多かった時期の撮影だったので、撮影中に俳優たちとコミュニケーションを取ることは難しかったけれど、行商団のリーダー、沼部を演じた永山瑛太さんは工夫して団員役の俳優たちとコミュニケーションを取ってくれ、そのおかげでアットホームな雰囲気が作れていたと思います。また部落問題についてもそれぞれが学び、個々人で慰霊碑にも訪れていたそうなので、これも僕から何かあえて教えたりする必要はなかったです。
 
 
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■女性の優秀さを映画の中でもっと描くべき

―――関東大震災後の朝鮮人虐殺を報道しようと上司に直訴する記者が女性であることも、大正という時代を考えるとあえてそうした意図を感じましたが。
森:記者だけでなく、村や行商団の女性たちの立ち位置も意識しました。基本、戦争や虐殺などは男性の文法であるけれど、子を持つ女性も自衛の意識は強い。また一方で、女性のほうが集団の熱狂に安易に巻き込まれないと感じるときもあるので、そうした複雑さを映画の中で描きたいと思いました。
 木竜麻生さんが演じた女性記者、恩田の上司である旧世代の代表のような砂田(ピエール瀧)は、この時代の少し前に実在していたリベラル系反権力主義の平民新聞に在籍経験があるという設定を、僕自身は考えています。平民新聞が政府の弾圧を受けながらどんどん部数を減らしてしまった経緯を知っているので、下手に権力に逆らうとそれと同じことが起きてしまうという恐れを砂田は抱いている。そういう矛盾を抱えた存在に対して、青臭いけど活気のある若い女性記者を対比させたかった。本作の前に、東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんの活動にフォーカスした『i 新聞記者ドキュメント』を撮っていたので、望月さんの印象が残っていたのかもしれません。
 
―――恩田が上司に立ち向かっていく姿は、権力の前でもひるまない望月さんに重なりますね。
森:ドキュメンタリーの世界でも、『教育と愛国』の斉加尚代さんや『ハマのドン』の松原文枝さん、『標的の村』の三上智恵さんに『ちむりぐさ』の平良いずみさんなど、最近は女性監督が優れた作品をたくさん作っています。今のジェンダーの流れというよりも、女性の優秀さをもっと作品の中にも取り入れなくてはいけないという想いがありました。ここは小声で言うけれど、生きものとしては、多分女性の方が男性より優秀だと思っています。
 
 
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■村の中の異物的存在

―――一方、村の権力闘争とは無縁のところにいる船頭の倉蔵を演じた東出さんも、見事な役作りをされていました。
森:企画が始まってすぐに、「森が監督するなら役は何でもいいから、出させてください」と申し出てくれたのが東出さんでした。日に焼けた体作りだけでなく、和船の漕ぎ方も習いに行き、免許も取ったそうです。この作品の東出さんはものすごくいいと思いますよ。
 
―――なんでもやると出演を希望した東出さんを船頭役にキャスティングした理由は?
森:船頭は村の異物と捉えています。彼の不倫相手である咲江(コムアイ)も他の村から嫁いでいるので村の異物的な存在で、異物だからこそ最後の虐殺のシーンでは他の村人たちとは違う動きをするわけです。東出さんは背が高すぎることも含めて、存在するだけでその異物感が漂っていますから、彼がいいんじゃないかなと。
 
―――船頭が仕事をしている舟の上は、村とは少し離れ、どこかファンタジックな空間になっていますね。
森:それはあると思います。村人は百姓だから地に足をつけているけれど、倉蔵は田畑を持っていないから舟の上で自由でいられる。一方で財産がないということも意味するわけです。
 
 
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■加害者をしっかり描くことで見えてくること

―――関東大震災後の大虐殺は歴史的なことが積み重なり、負のうねりになっていることがよくわかります。
森:100年前のような大虐殺はさすがに起こらないと思いますが、ヘイトクライムやヘイトスピーチは今も日常的に起こっています。今回は加害者の日常や喜怒哀楽をしっかり描きたかったので、それだけの時間設定は必要になるし、加害者の人たちの日常の喜びや悲しみも全て描くことが重要でした。
 
―――行商団へ処刑を求めた人たちの描写から、当時の大義名分が浮かび上がりますね。
森:自衛や防衛を大義にすることは今も同じです。プーチンはウクライナに侵攻した理由を、ウクライナがNATOに加盟すればロシアの安全保証が脅かされることと、ウクライナ東部にいるロシア系住民を虐殺から保護するという大義名分を掲げました。かつての大日本帝国も、侵略の大義はアジアの解放です。アメリカがベトナム戦争に介入した理由は、共産主義は放置すれば際限なく隣国に感染するというドミノ理論を信じたから。世界中の軍隊の存在理由は自衛や防衛です。本音と建て前はともかくとして、自衛意識の高揚は気をつけなければいけないと思っています。
 
―――豊原功補さんが演じた村長の葛藤も後半にかけて増していきます。
森:当時は大正デモクラシーの時代ですが、結局国家と世論に負けて、軍国主義に走ってしまうわけで、それはデモクラシーやリベラルの弱さです。人権や平等などへの意識は理論ですから、怖いとか危ないなどの情念に負けてしまう。村長の存在は、時代のメタファーにもなると思います。
 
―――森さんがドキュメンタリー『A』『A2』で長年とらえ続けてきた問題と重なる部分があるのでしょうか?
森:強く意識してきたわけではないけれど、『i 新聞記者ドキュメント』もしかり、集団と個というのが僕の大きなテーマなので、きっと繋がっているのでしょうね。個が集団となったとき、どうしても同調圧力に負けてしまうし、暴走が始まったら誰も止められない。
 
 
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■映画の存在意義とは?

―――韓国をはじめ、海外では実在の事件を素早くフィクション映画にして世に問うという実録ものは数も多く力作が多いですね。
森:最近の韓国は、自分たちの負の歴史をしっかりエンターテイメント作品にして世に送り出している。ナチスやホロコーストの映画は、ひとつのジャンルのように毎年量産されています。ハリウッドも先住民虐殺や黒人差別をはじめ、自分たちの負の歴史を映画にしている。そうした視点で見れば、日本だけが取り残されているような印象を持ちます。負の歴史の映画はほぼない。
 
―――本作公開で、日本からもようやく負の歴史に真正面から切り込むフィクションが現れたと言えるのでは?
森:僕が若いころに観た『ソルジャー・ブルー』はアメリカ先住民の虐殺を彼ら側から描いていて、正義の騎兵隊がいかに残虐な存在だったかを提示した。他にも一連のアメリカン・ニューシネマを観ながら、視点で世界は変わることをとても強く実感したし、今も影響を受けていると思います。映画で多くを学べたと思う。権力と世相に迎合する映画ばかりでは発見がない。負の歴史や新たな視点を教えてくれる映画は、もっと増えてもいいのでは、と思っています。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『福田村事件』(2023 日本 136分)
監督:森達也
出演:井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、コムアイ、松浦祐也、向里祐香、杉田雷麟、カトウシンスケ、木竜麻生、ピエール瀧、水道橋博士、豊原功補、柄本明他
9 月1日(金)よりシネ・リーブル梅田、第七藝術劇場、MOVIX堺、京都シネマ、京都みなみ会館、9月8 日(金)よりシネ・リーブル神戸、元町映画館、シネ・ピピア、以降出町座で順次公開
(C) 「福田村事件」プロジェクト2023
 
 
 

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■日程:8 月 8 日 (火) 18:30~19:00

■場所:TOHO シネマズなんばスクリーン1

■登壇者:佐藤浩市(62)、横浜流星(26) (敬称略)


 

人生を取り戻そうと、このファイトに賭ける!この夏一番の胸アツ映画

 

今や日本映画界の重鎮と言える佐藤浩市と、作品毎に徹底したキャラクター構築で成長著しい横浜流星をW主演に、静かなる力強さで心を掴む瀬々敬久監督、さらには、若き日々より生き様を問う様な作品で多くの共感と勇気をもたらして来たノンフィクション作家・沢木耕太郎原作の映画化という、まさに豪華コラボレーションで贈る映画『春に散る』が 8 月25 日(金)より全国公開となる。


harunichiru-pos.jpgかつて世界チャンピオン目前で挫折した広岡仁一(佐藤浩市)は、渡米後40年ぶりに帰国し、自分を育ててくれた〈真拳ジム〉を訪ね、父親からジムを引き継いだ真田令子(山口智子)と再会。さらに、かつて〈真拳ジム三羽烏〉と呼ばれていた佐藤健三(片岡鶴太郎)と藤原次郎(哀川翔)を訪ねると、困窮の果てに孤独な日々を送っていることに驚愕する。そこで、3人の共同生活の家を購入。そこへ黒木翔吾(横浜流星)という青年がやってきて、ボクシングを教えてほしいと懇願する。翔吾は不公平な判定負けを期し一度はボクシングを諦めていたのだが、広岡の必殺拳を見た瞬間、再び闘魂に火がついたのだった。こうして、父親を亡くしたばかりの広岡の姪・佳菜子(橋本環奈)も加わり、それぞれが人生を取り戻すかのように翔吾のチャンピオンへの道に賭けていくのだった。


公開に先立ち、8 月 8 日(火)にW主演の佐藤浩市、横浜流星が大阪での先行試写会での舞台挨拶に登壇。作品への想いや現場での様子などを語ってくれた。



harunichiru-bu-500-1.jpg◆瀬々敬久監督について?

佐藤:あんまり仲がいい訳ではないけど、付き合いは長い。一番最初が『ヘブンズ ストーリー』(2010年)という4時間以上もあるインディペンデント系の作品。それからの付き合いなのでもう何本になるのかな~?

横浜:初めての瀬々組参加。とにかく熱かった!最初に、監督から「これにすべてが込められているから!」と言って漫画『ゼロ』を渡された。ボクシング練習場にも頻繁に来られ、その度に漫画の事やボクシングについてなど色々と話して下さいました。

佐藤:瀬々監督は熱いというか、ムダに声がデカい!(笑) ボクシングジムの狭い所でもやたらデカい声を出してる。というのも、瀬々監督は昔ピンク映画を撮っていて、当時オールアフレコ(後で声を入れる)のため芝居を見ながら演技指導をしていたので、段々と芝居が熱くなってくると、「もっと、もっと、もっと~っ!」(笑)と大声で叫んでいた。そん時の癖じゃないかな、声がデカいのは…。(佐藤浩市による瀬々監督再現はナマ芝居を観ているようでに迫力あった)


◆横浜流星は撮影終了後ボクシング・プロテストに合格!プロテストを受けるキッカケは?

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横浜:撮影中から佐藤浩市さんやら皆さんから後押しされたりして、撮影後も練習を続けていた。それに、格闘家への敬意を込めて失礼のないようにしたかったのと、この作品への想いを実証したかった。プロライセンスが取れるのはボクシングだけ。それなら挑戦させてもらおうと思った。

佐藤:ボクシング指導の三浦さんやレフェリー役の人も実際に国際試合でレフェリーしておられるような方で、皆で「やってみたら?」と半ば冗談で言ってたら、本気で受けると聞いて、「あっ、これが彼(横浜)のケジメなんだな」と。普通なら撮影前にライセンス取って撮影に臨むというならわかりやすいが、撮影後に取るということは、彼なりに作品へケジメを付けたんだなと思った。


 

 

◆佐藤のハードなトレーニングシーンについて?

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佐藤:僕は元ボクサー役なのになんでトレーニングしなきゃいけないんだ?と思ったが、2か月前からトレーニングに入った。彼(横浜)は半年以上前からトレーニングしていても、もっとトレーニングしたいというのが滲み出ていた。ミット打ちからシャドウなど一応基本的なことをやった。彼は格闘技へのリスペクトが強い方なので、パンチひとつでもかなり強いし重い。野球でいえば、ブルフェンでキャッチャーがピッチャーの球を受ける時のようにいい音をさせて気持ちを盛り上げるように受けなければならない。しかもいい音を出すためにはミットを引くのではなく受けに出なければならない、それがかなり肘とか肩に響いて堪えた。撮影終わってこれでゴルフできなくなったらプロデューサーを訴えてやろうかと思ったぐらい(笑)。


◆佐藤にミットで受けてもらった感想は?

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横浜:僕はそういう受けの痛みを知っているので、最初は躊躇しちゃうところもあったが、佐藤さんが「本気で来い!」と言って下さったので、お言葉に甘えさせて頂いた。でも、時々痛そうにしておられるのも見て、「申し訳ないな」と。


◆佐藤浩市とは初共演なので、やはり打つのも気兼ねした?

横浜:ボクシングは信頼関係がないと絶対できない。それが撮影前に気持ちを合わせられたので、言葉を交わさなくても距離を縮められた気がして、とてもありがたい時間だった。


◆この作品は人間関係の深い部分で心に響くものがあるが…?

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佐藤:「真拳ジム三羽烏」と呼ばれていた3人が今では〈負け犬〉に近い状況になっていて、そんな男たちが若い奴らからも含め、結果はどうあれ何とか自分たちの人生を取り戻したいという気持ちが滲み出ているような作品になっていると思う。


◆大先輩たちとの共演は?

横浜:幸せな環境の中で「翔吾」として生きられた。僕は12月1日から撮影に入ったが、それでももっと皆さんと居たかったなと思った。でもその儚さがいいのかな?とも思っている。


◆期間が限られている映画撮影について?

佐藤:色んな事情を汲みながらスケジュールは組まれていくもの。「こんなシーンから入る(クランクイン)のか!?」と思う事もあるけど、後で完成したものを見ると、逆算して良かったんだなと思うこともある。この作品でも、キャラクターの背景を多くの言葉で説明はしていないが、何となく観る人が感じ取って頂けるようにはなっていると思う。


harunichiru-500-1.jpg◆佐藤は橋本環奈とのシーンがクランクインだったというが…?

佐藤:そうです、環奈ちゃんと大分での撮影がクランクインだった。「環奈ちゃんのイメージが違って見える」とよく皆さんに言われ、それは良かったと思っている。彼女自身も今までとは違うキャラクターに賭けるものがあったとようだ。セリフで説明しなくても、佳菜子が生きてきたものが滲み出せるように頑張っていたと思う。


◆橋本環奈とは若い者同士?

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横浜:彼女もまた役と真摯に向き合っていて、自分も余裕のなかった時だったので、カメラが回ってなかった時にもあまり話さなかった。芝居を通して心を通わせていくというか、二人のシーンは少ない上に余白もあるので、そこは皆さんで感じ取って頂けると嬉しいなと。


◆大阪キャンペーンの一環として出演した「とんぼりステーション」での生放送は?

佐藤:道頓堀は、まさに深作欣二監督の『道頓堀川』(1982年)で僕が心斎橋を歩くシーンから始まった…僕が23歳の時。あれから多少変わったけど、大阪独自の雰囲気は変わってないような気がする。

横浜:活気付いていたよう。もうちょい映画のことを語りたかったけど(笑)。


◆お祭や花火大会も再開され、ようやく以前に戻ってきたという感じだが?

佐藤:日常を取り戻しつつも、「もう大丈夫なんだよね?」という気持ちが戻ってきたように感じる。

横浜:もっとキャンペーンなどでも大阪に来たい!

佐藤:ほんと、もっと大阪に来たいよね。大阪の方々がどんな感想を持って下さっているのかを聞くのも楽しみだし。


harunichiru-bu-500-2.jpg◆最後に。

横浜:きっと熱い作品になっていると思うので、何か感じるところがあったら是非周りの人たちに広めて下さい。よろしくお願いいたします。

佐藤:本日は暑い中お出で下さいましてありがとうございます。映画はもっと熱いです。予想をはるかに超える感動があります。多くのお土産を持って帰って頂ける作品になっていると思います。今日はお互い打ち合わせした訳でもないのに、ペアルックのように、ゆるゆるパンツです(笑)これで二人の関係がどうなのかわかるでしょう?この作品は、痛いのが苦手の女性でも、それを乗り超えたちょっと違う視点でボクシングシーンを楽しめると思います。どうぞ最後までお楽しみ下さい。
 


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◆原作:沢木耕太郎『春に散る』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
◆監督・脚本:瀬々敬久 共同脚本:星 航 
◆音楽:田中拓人 撮影:加藤航平
◆佐藤浩市 横浜流星 橋本環奈 / 坂東龍汰 松浦慎一郎 尚玄 奥野瑛太 坂井真紀 小澤征悦  / 片岡鶴太郎 哀川翔 窪田正孝 山口智子
◆公式サイト:https://gaga.ne.jp/harunichiru/
◆配給:ギャガ
◆©2023映画『春に散る』製作委員会

2023年8月25日(金)~TOHOシネマズ(梅田・なんば・二条・西宮OS)他全国ロードショー


(河田 真喜子)

 

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