レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2013年2月アーカイブ

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デンゼル・ワシントン、アカデミー賞受賞したら、日本語で「ありがとう!」を約束!
ロバート・ゼメキス監督はデンゼル・ワシントンの熱演を大絶賛!
オスカー受賞者同士の「強い信頼の絆」で完成した映画「フライト」

デンゼル・ワシントン、アカデミー賞受賞したら、日本語で「ありがとう!」を約束!
ロバート・ゼメキス監督はデンゼル・ワシントンの熱演を大絶賛!
オスカー受賞者同士の「強い信頼の絆」で完成した映画「フライト」

 

名匠ロバート・ゼメキスと名優デンゼル・ワシントンの最強のタッグが贈る、衝撃と感動の物語『フライト』。公開に先立ち、本年度アカデミー賞<主演男優賞>にノミネートをはたし、3度目の受賞に期待の高まる主演のデンゼル・ワシントンと名匠ロバート・ゼメキス監督が緊急来日しました。
 

 ・2月20日(水) 11:00~11:50
・会場:ザ・リッツカールトン東京2Fグランドボールルーム(東京都港区赤坂9-7-1 東京ミッドタウン)
・登壇者:デンゼル・ワシントン(58)、ロバート・ゼメキス監督(61)、ウォルター・F・パークス(プロデューサー/61)、ローリー・マクドナルド(プロデューサー/59)

<取材来場> スチール40台、ムービー20台、記者・マスコミ関係250人 合計310

 

主演のデンゼル・ワシントンは4日後に発表されるアカデミー賞で3度目の受賞へ期待が高まる中、4年ぶり5度目の来日。巨匠、ロバート・ゼメキス監督も4年ぶりで久々の来日となりました。さらに、ハリウッドを代表するヒットメイカーでプロデューサーのウォルター・F・パークスとローリー・マクドナルドも参加。ハリウッドの名優と最高のフィルムメーカーによって完成された注目作「フライト」について熱い質問が飛び交いました。

4年ぶりの来日の感想を尋ねられ、デンゼル・ワシントンは「4年経ったと知らされ、(来日が)とても久々だと感じています。日本に戻ってこれて嬉しいよ。」と笑顔で回答。4日後に控えたアカデミー賞の発表で、受賞したら日本語で「ありがとう!」というよと約束してくれました。

本作では、心に問題を抱え葛藤に悩むパイロットを演じているが、“オスカー俳優”には「役作り」に関する質問が相次ぎ、デンゼル自ら、解説しながら実演も。「脚本が素晴らしく、非の打ち所がなかったのでアドリブもしなかった。」と撮影エピソードも披露。
「日々、演技を研究する毎日であり、慢心することなく鍛錬を積んでいるので、これまでに自分が演じた役に満足してきたことはない。」と役者としての信念を述べると記者たちから感嘆の声が漏れました。

それに、応えるようにロート・ゼメキス監督は、「(デンゼル・ワシントン)とは撮影中、彼の演技に驚き興奮が収まらなかった。私の演出など全く必要なかったよ。」とデンゼル・ワシントンの演技を称賛。

プロデューサーのウォルター・F・パークスも「(デンゼル)は脚本に忠実に敬意を持って演じてくれた。彼が演じるウィトカー機長はとても難しい役だが、敬意を持って演じてくれたことに本当に感謝している。」

ローリー・マクドナルドは「誰でも持ち合わせている“人間の弱さと強さ”を演じ分けており、デンゼルは本当に素晴らしい。」と大絶賛だった。

 一方、デンゼル・ワシントンは「ロバート・ゼメキス監督は、撮影現場で演技に関してさまざま模索させてくれた。不安を感じることなく懐が深く信頼できる監督。」とゼメキス監督との強く深い絆を感じさせた。

また、ゼメキス監督からは、本作の一番の見どころでもある冒頭30分からの“飛行機の背面飛行での不時着”シーンについて、「時間のかかるシーンだったが、素晴らしいチームワークで撮影した。想定できる技術を全て駆使し、実際に30人ほどのエキストラを逆さ吊りにして撮影したんだ。」とアクロバティックな撮影の様子も明かしてくれました。

公開が待たれる、『フライト』は3月1日(金・映画ファーストデー)より全国公開です。

<補足情報> デンゼル・ワシントンは過去アカデミー賞2度受賞し、3度目に期待高まる。
 (受賞歴→『グローリー』(1989)助演男優賞、『トレーニングデイ』(2001)主演男優賞)

 

flight-1-1.jpg<『フライト』作品紹介>
多くの命を救った、高度3万フィートからの奇跡の緊急着陸。彼は英雄か、犯罪者なのか?アカデミー賞最有力、衝撃と感動の話題作。
男は一夜にして、ヒーローになった。フロリダ州オーランド発アトランタ行きの旅客機が原因不明の急降下、ウィトカー機長は草原への緊急着陸に成功し
多くの乗客の命を救う。それは、どんな一流パイロットにも不可能な、まさに奇跡の操縦だった。マスコミがウィトカーの偉業を称え、彼は一躍、時の人となる。
ところが、ある疑惑が浮上する。彼の血液中からアルコールが検出されたのだ。ヒーローは一夜にして地に堕ちた。あの時、機内で何が起きたのか?様々な人の人生を巻き込みながら語られる、衝撃の事実とは?
人生の闇にのみ込まれた男が、本当の栄光とは何かを見出すまでの魂の軌跡を描き出す。デンゼル・ワシントンの圧倒的な演技力が光る感動のドラマ。

201331日(金・映画ファーストデー)より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!

★作品紹介⇒こちら
★公式サイト⇒ http://www.flight-movie.jp/

 

lemon-s1.jpg『たとえば檸檬』片嶋一貴監督インタビュー
(2012年 日本 2時間18分)
監督:片嶋一貴
出演:韓英恵、有森也実、綾野剛、古田新太、室井滋、内田春菊、伊原剛志他
2013年2月23日(土)~第七芸術劇場、3月2日(土)~京都みなみ会館、3月9日(土)~元町映画館、他全国順次公開
公式サイト⇒http://www.dogsugar.co.jp/lemon
(C) 2012 DOGSUGAR

~境界性人格障害を鮮烈な演技で表現、見たこともない痛切な母娘物語~

lemon-1.jpgこんなに痛切な母娘物語は観たことがない。男を作って出ていくくせに、過干渉で全てを奪っていく母親(室井滋)から逃げたくて仕方がなかった20歳のカオリ(韓英恵)。引きこもりの娘を抱え、大手企業の秘書を務める一方、万引き常習犯でセックス依存症の40歳の香織(有森也実)。万引きで捕まったとき、現場にいた刑事の河内(伊原剛志)から境界性人格障害を指摘された香織と、野心家の石山(綾野剛)に彫金の才能を見いだされながらも、母親の邪魔が入り、精神が混濁していくカオリが思わぬ形で交錯していく。前作『アジアの純真』で鮮烈な印象を与えた片嶋一貴監督が、バブル時代と現代の2つの時間軸で、二人のカオリ/香織他、登場人物を対比させて描く衝撃の母娘物語『たとえば檸檬』。関西公開を前にキャンペーンで来阪した片嶋監督に、本作の狙いや撮影の舞台裏についてお話を伺った。


―――前作『アジアの純真』とは一転して、個人にフォーカスしたストーリーですが、構想のきっかけは?
脚本の吉川次郎さんとは前々作の『小森生活向上クラブ』(古田新太主演)で一緒に仕事をしたのですが、前作『アジアの純真』を撮った後に、「また一緒にやろうぜ」といった話になったんです。『アジアの純真』のときは政治的な要素が強かったので、海外の映画祭に行って政治的なスタンスや、世界をどう見るかといったことを色々語ってきたのですが、そういう広い見方というよりはむしろ、人間関係の最小単位である親子関係、それも母娘の関係をきっちり描くことによって、世界につながっていくのではないか。そういったきっかけで本作に着手し始めました。

―――母と娘の話ですが、実は母娘ではないと分かったときの衝撃は大きかったです。このような構造をどうやって組み立てていったのですか?
吉川さんも僕も男兄弟なので、母娘の関係性なんて夢にも考えたことがなかった世界ですが、それがおもしろいのではないかと話し合いました。僕が企画の時に投げかけたのは、まずタイトルは『たとえば檸檬』でいくということ。檸檬のようなものは一つの象徴なので、話が作りやすくなります。もう一つは母と娘の配役についてです。韓英恵は『アジアの純真』の主役ですし、有森さんは『小森生活向上クラブ』に出演いただいたり、一緒に呑んだりすることもありましたので、この二人を主役に据えました。そして時間が交錯するものを作ろうということで、最初は母と娘の話を考えていたわけです。

けれど、実は(母と娘とは)違うというのがおもしろいのではないかと思い始めました。そのとき吉川さんが、自分の友達の境界線人格障害の人の話を聞かせてくれたのです。調べてみると、境界線人格障害というのは幼少期の母の抑圧的な行動などから生じやすいと分かって、今回の物語の核に据えられるのではないかと考えました。有森さん演じる香織が万引きした後寿司屋へ行ったり、愛人と会ったり、刑事に暴言を吐くとか、あれは皆モデルになった人の実話を元にしています。

―――有森さんは『東京ラブストーリー』のイメージがまだ残っているので、本当にびっくりしました。本当に凄味のある演技です。
 lemon-2.jpg30代の頃の有森さんを知らない方が多いですね。20代だった『東京ラブストーリー』からいきなり飛んで『たとえば檸檬』を見たら、それは驚きますよね。16歳ぐらいからこの世界で活動されていますから、時代の傷跡みたいな形で有森さんを捉える世代もいるわけです。『東京ラブストーリー』もバブル期でしたし。

 

―――本作でも現在と並行してバブル期を描いています。最初は気づかなかったのですが、一度気づくとバブルの傷跡が意図的に映し出されていますね。
それぞれの時代の人物が最後になって結びつく構造になっています。例えば昔は「愛じゃない、尊敬だ」と言っていた奴が、今では「愛ですよ、愛」と言い続けていたり。

―――普段、母が娘を虐待したというニュースを耳にすると、母親への批判的感情が沸き上がってしまいますが、伊原さん演じる河内の「表現の仕方が普通とは違うんだ」という言葉に、愛情表現がいびつなだけという新しい認識をさせられました。
みんな壊れた人たちばかりなんですよ。みんな何かに依存しているという意味では、「この物語はあなたの物語ですよ」という展開で、非常に重層的な色々なキャラクターがでてくる形にしたかったのです。 

―――母娘の血からは逃れられないいう、血縁の絆の深さも現れています。 
最後に檸檬のレリーフがでてきたとき、自殺はやめようと思うのですが、その後香織が何十年か生きたとしても幸せにはなれそうにないんです。救いってどこにあるのだろうと考えたとき、やはりそれは自分で探していくしかないということなのかもしれません。

―――母娘を実際に描いてみて、苦労した部分はありますか?
 lemon-3.jpg二つの時代の物語を作って、合体させるわけですが、こちらの世界でやっていることを、もう一つの世界でもやっていように意識的に見せたり、時代が違うことを地続きのように見せることで、サスペンスを作りだし物語を構成するという試みを、きっちり本にしてからは現場に臨みました。現場は役者さんが体当たりの演技をみなさん見せてくれました。有森さんはこれでもかというぐらい(役を)作ってきて下さるので、こちらもだんだんサディスティックになって、さらにもっとと(笑)

この撮影中に震災があったんですよ。3月の頭から撮影して、有森さんと伊原さんの最後のラブシーンを撮っているときにグラッときたんです。やはり震災があると、お金のある作品の現場は次々と撮影を延期されたのですが、こういうローバジェットの作品は一度止めたら終わりで、一度スタッフを解散したら二度と映画はできません。ガソリンはないし、停電にはなるし、晴れた日にやっていたら計画停電のアナウンスは入るし、本当にこれで出来るのかなと思いました。被災者の方のことを考えましたが、そのとき自分たちに出来ることは「この映画を最後までがんばること」だと、皆必死になりましたね。

―――全てを奪う母の存在が強烈で、その後のカオリの人生にトラウマのような影響を与えてしまいますね。
今まで被害者と思っていたカオリが、急に加害者になってしまうシーンがあります。それは非常にやりきれないことであって、ああいうことが20年後の境界性人格障害につながるのでしょうね。 

―――自ら起こした事件がきっかけで、香織を見守るようになる刑事、河内もかなり辛い設定でした。 
自首することも、自殺することもできず20年間経ってしまう訳ですが、二度と会うこともないと思った香織に会うことによって、ますます心の傷が深まってしまう。伊原さんが最後になぜ死ぬのかという質問を受けることもあるのですが、それは死ぬしかないだろうと。もしあそこで香織と幸せになってしまったら、この映画は違う映画になってしまいます。

―――最初からタイトルにと決めていた「檸檬」ですが、冷蔵庫の腐りかけの檸檬など、いろいろな檸檬が登場します。本作の「檸檬」はどんなイメージで使ったのですか?
この映画の中でいろいろな檸檬がでてくるということは、いろいろな象徴になっています。若い頃の檸檬というのは、自分たちの周りの困難を乗り越えようとする気持ちであったり、腐ってくると自堕落の象徴となったりします。英語のスラングで檸檬は「壊れもの」という意味があり、欠陥品という意味で使われるのですが、まさに欠陥品ばかりのキャラクターがでてきますから。 

―――殺したいと思っても、やはり母親は好きだという非常に複雑な心境を描ききっていますね。 
lemon-4.jpg母親も辛いんですよね。今は母性愛神話が崩壊していると言われています。母は子どもを愛さなければいけないというしがらみがありますが、愛せない人や不器用な人もいるはずです。でも、社会がそれを許さないので、子どもを愛せない人は辛いのです。社会に規律があった時代ではなくなっている今、弱い人はどんどん依存せざるをえなくなっています。

 

―――若松監督の助監督のご経験もおありですが、若松監督から影響を受けたことは? 
若松監督は本当に面白い方で、いい加減なところもたくさんありましたが、やはり自分のお金でちゃんと映画を作って、最後に自分の力で公開までもっていくということをやってきた監督なので、映画を作る覚悟を切に学びました。演出とかそういうレベルの話ではないですね。

―――これからはどんな作品を手がけていきたいですか?
本作がきっかけで、『完全なる飼育』シリーズをやってみないかと声をかけていただきました。シリーズ一本目は新藤兼人脚本、和田勉監督と一番有名なのですが、その後若松監督も撮っていて、好き勝手なことをやっているんです(笑)シリーズもののエンターテイメント作品に声をかけてもらったのは初めてだったので、うれしいです。今までは自分の企画として自力でこぎつけたところがありましたから。観ている側をエンターテイメントとして引っ張れる映画を作っていきたいですね。一方で、インディペンデント系のものをやっていける二本立てで考えられれば幸せです。

―――最後にこの作品で一番の見せ場は?
本当に役者の方々が体当たりの演技をしていて、役者の才気と意欲で成り立っている映画だと思います。それを観てほしいですね。


万引き、セックス依存症、アルコール依存症と、様々な症状に陥る人間や、バブルの栄光をひきずった人間など、人間動物園さながらのきわどいキャラクターが勢揃いの本作を観ていると、人間は何かに依存しなければ壊れてしまう生き物なのかという想いが胸をよぎる。本作で描かれる、様々なトラウマから依存バランスが保てず壊れてしまった人たちは時に観るのが辛くなるが、そこを剥き出しにするのが片嶋流なのだろう。インタビュー中でも話題にのぼった有森也実や、二作連続主演となる韓英恵の鬼気迫る演技は言うまでもなく、今、一番旬の俳優、綾野剛がライブシーンも披露しながら、バブル時代の寵児となる石山をナルシスト度満点で演じ、新しい一面を垣間見ることができる。母親の愛に気付かずに育った女が、死の間際に見たものは何か、ぜひ劇場で確かめてほしい。(江口由美)

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『牙狼〈GARO〉~蒼哭の魔竜~』通天閣ヒット祈願レポート

garo2-ss2.jpg(2013年2月8(金) 大阪通天閣5F展望台にて)

ゲスト:松坂慶子、雨宮慶太監督

 

(2012年 日本 1時間36分)
監督:雨宮慶太
出演:小西遼生、久保田悠来、蒼あんな、蛍雪二郎、奥田ゆかり、渡辺裕之、松坂慶子

2013年2月23日(土)~梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T-ジョイ京都、109シネマズHAT神戸、他全国ロードショー

公式サイト⇒ http://garo-project.jp/SOUKOKU/

(C)2012 雨宮慶太/東北新社

 


 

~『牙狼〈GARO〉』に華やぎの魔法をかけた松坂慶子!~

 

garo2-2.jpg 大阪は通天閣5階にある展望台で、『牙狼〈GARO〉~蒼哭の魔竜~』通天閣ヒット祈願が開催された。雨宮慶太監督と松坂慶子さんが、寒風吹きすさむ2月のキャンペーンにもかかわらず、まるで春の温もりを感じさせるような風をもたらしてくれた。雨宮監督の独創的世界観で活躍する黄金騎士を主人公にした『牙狼〈GARO〉』は、TVシリーズを含め8年のロングランを続けるヒット作品。本作は、劇場版第二作となる。


garo2-ss3.jpg――― ご挨拶を。
雨宮:こんにちは。『牙狼〈GARO〉』の監督、雨宮慶太です。通天閣は初めてなんですが、凄く眺めがいいので、緊張しています。
松坂:皆様お忙しい中ありがとうございます。今回私は女王ジュダムというチャーミングな役をやらせて頂きました。どうぞよろしくお願いいたします。

――― 通天閣のイメージは?
雨宮:こんなに高いとは思わなかったです。
松坂:久しぶりです。お昼に来たのは初めてで、とても綺麗ですね。それに金色がキラキラしていて、今年は蛇年なんで金運がアップするように感じます。

――― 松坂さんが演じられたジュダムという役は美しいものが大好きということですが、何か気になるところはありますか?
松坂:文字にも服とかとても興味ありますので、ジュダムとしてはもうここに住みたいと思っちゃいます♪

――― 松坂さんは個人的に集められているものはありますか?
松坂:可愛いものが好きですね。通天閣のミニチュアのネックレスがあればいいのですが(笑)

garo2-ss5.jpg――― 監督は独特の世界観で作品を創って来られましたが、何かインスピレーションを受けるようなところはありませんか?
雨宮:和の感じがあるので、居心地がいいですね。

――― ホラーに松坂さんを起用されたのは?
雨宮:今回はホラーではなく、ファンタジックな作品です。美しいものが大好きという女王ですので、これは松阪さんでなければ演じられないと思いまして、何度かお願いして出演して頂きました。

 

 

 

garo2-ss4.jpg――― 監督からの熱烈なオファーに対して?
松坂:とても光栄なことです。映像の化身のようなイメージもあり、いろんな映画に出演した女優に演じてほしいという監督の思いがありまして、素敵な原作を頂きました。人々に忘れ去られた物、もう一度ぼくたちの事を思い出してという国の女王なんですが、監督にいいことを教わりまして、それは、今まで大事にしてきたものをもう一度思い出してあげようということと、自分の仕事でも幼い頃からでも愛されてきたことを風化させては勿体ないなと。自分はいろんな出会いに恵まれてきたんだな、その想い出も時々宝箱から出して思い出そうと。そうすることでとても幸せな気持ちになれました。本当に出会えて良かったと思える作品です。

――― とても素敵なコメントですね?
雨宮:そう言って頂けて感無量です。この役は、第一線で活躍された人でないとダメだと思っていましたので、実現できて本当に嬉しかったです。また、いろいろ相談させて頂きながらこのジュダムという役を創り上げていきました。松坂さんのアイデアも随所で活かされていますよ。例えば、ホクロとかアクセサリーとか衣裳とか。
松坂:毎朝6時くらいに撮影所に入って、4時間くらいメイクと衣装にかけるんですが、ああやっと支度が終わった~!と思ったら、撮影はこれからですよ!と言われました(笑)監督自らアイラインを付け加えることもありました。それくらい細かいディテールにこだわって丁寧に作れたことは楽しかったですね。

――― 役柄としては新たなチャレンジですよね?
松坂:今回は、人ではなく物なんですよね。初めての役柄ですが、どこか無機質で、人に裏切られて歪んだ愛や悲しみを抱えている複雑な役柄でした。でもどこか少女のような無邪気さのある怖い女王。監督に自分の中の新たなものを引き出して頂いて、また、監督のデッサンの女王に次第に似てきたのが嬉しかったですね。

――― それはジュダムに同化されていったのでしょうか?
雨宮:デッサンのジュダムが正解ではなく、カメラの前に存在する松坂さん演じるジュダムが正解なんです。それが毎日演じていくうちに揺るぎないものになっていったのだと思います。

garo2-ss6.jpg――― 今回松坂さんはアクションに挑戦されてますが?
雨宮:アクションは初めてだと仰るのびっくりしたのですが、それでもワイヤーアクションや立ち回りをやって頂きました。
松坂:緊張しましたが、現場に入ると「やってみたい!」という気持ちの方が勝っちゃいました。コツや着地方法などを教えて頂きながら、以前から憧れていたワイヤーアクションができて嬉しかったです。

――― 事前に柔軟体操とかされたのですか?
松坂:ストレッチだけはするように言われました。でも、あまり体力がないので、練習し過ぎると本番で動けなくなるので、ほどほどに。
雨宮:元々柔軟な体をしておられて、以前社交ダンスで優勝されたとかで、足も他の人より高く上がってびっくりしました。

――― 出来栄えは?
雨宮:見て頂ければお分かりだと思いますが、迫力あるアクションに仕上がっています。
松坂:愛と悪の表裏一体のような役で、しかもCGを駆使した作品ですので、より心情を大切にして演じました。



 ここでヒットを祈願して絵馬に願い事を書いてもらう。ビリケン像を挟んでポーズ。その後、通天閣の守り神幸運のビリケン像の前で、記念撮影。黄金騎士〈GARO〉も登場して、よりパワーアップ!!!

春らしいピンクのワンピースに白いシフォンのストールを羽織った松坂慶子さん。3年前『大阪ハムレット』でおおさかシネマフェスティバルで主演女優賞を受賞された時よりほっそりされて、益々美しくなられたようだ。

(河田 真喜子)

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『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』御法川修監督インタビュー

(2012年 日本 1時間46分)
監督:御法川修 
原作:益田ミリ著『すーちゃん』シリーズ 幻冬舎刊
出演:柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶ、井浦新、染谷将太

2013年3月2日(土)~新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー

公式サイト⇒ http://sumasa-movie.com/
© 2012 映画「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」



~地道に生きる人への愛おしさあふれる応援歌~

sumasa-1.jpg 3人の30代独身女性が織りなすドラマは、ありふれた日常の延長上にあるような自然な流れで見る者の心をつかむ。精査されたセリフからは、現代を女性ひとりで生きる難しさや切なさを、それでも日々少しずつ前向きに生きる輝きを見せてくれて、地道に普通に生きる人のための応援歌となっている。

 柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶ、この個性派3人のキャスティングだけでも驚きだが、それぞれが今までにないキャラクターを自然体で演じて、男女の区別や年齢を超えて共感することが多い。「単に癒されるだけの映画にはしたくなかった」という御法川修監督の言葉どおり、本当の優しさとは、積極的生き方とは、自分の気持ちに正直に生きることとは、見る者の心に様々な思いを投げかけてくれる。
 


――― 映画化のキッカケは?
初めてこの作品を読んだ時、独身の私は、映画の仕事をしていると言っても何の保障も確信がある訳でもなく、〈すーちゃん〉は僕と同じだ!と思ったんです。益田ミリ作品に対する感動が最初の衝動として、映画が完成するまでずっと繋ぎとめられたのです。

――― 主役3人のキャスティングは?
これだけの規模の映画となると、プロデューサーと相談して、脚本も納得がいくまで時間をかけてから、キャスティングの段階に。3人の皆さんは第一希望でオファーしたら快く受けて下さったのです。

――― 主役の3人だけでなく、脇役の皆さんへの焦点の当て方が絶妙ですね?
sumasa-5.jpg原作に出会った時に感じ入ったことは、心の中でつぶやく声が絶妙で、クスっと笑いながらブラックな気分を残す。それに対し慎重になったのは、表では笑って裏では舌を出すような、本音と建前とは違うようなものではなく、この主人公たちみたいに30歳を過ぎると、年齢を重ねて来て、無意識の内に社会の中で責任ある役割を担わされ、若い時みたいにはいかなくなる。

――― 内面の成長ですね?
やはり、相手がどう思うか、気を配るようになる。心の中で自問自答する彼女らに共感するかもしれないが、実はリアルな事象で、これらが日々の中で一番見失われていることだと思う。目の前のことで精いっぱいで、正直な気持ちを曖昧にしていると思うんです。

――― 現代人を反映している?
震災以降、世の中は目にするもの耳にするものが不安だらけで、先行き不透明で神経過敏になりがち。ネガティブに閉じこもるより、信じられるもの、今日より明日、少しずつでも良くするためにも、逆に自分の寂しさや切なさにちゃんと向き合い、自分の心と体と同化して、自分の心の声に耳を澄ましたり、考えたりする時間が必要です。自分の手の届く範囲の中にいっぱい見過ごしているものや素敵なものがあるのではないか?それらをちゃんと見つけていく心と体の眼差しを獲得できれば、少しずつだけど、日々を豊かに、より奥深く手にすることが、この映画を通してできるのではと思ったのです。

――― 表現しにくいことですね?
それを映画にすると、ドラマチックな展開のない構成だし、日々繰り返される当たり前のしぐさを丁寧に描いていくしかない。俳優さんたちも、テクニックで演じるのではなく、俳優である前に人間として心を覗き込むことを恐れない強さを持っている人たちに、それぞれのキャラクターになってもらいたいと思ったのです。
3人の女優さんたちが、今までのパブリックイメージとは違い、いかに日々を丁寧に生きているか、ウソじゃなく、いろんな所で見せてくれていると思う。ストーリーとは別に、彼女たちの佇まいから、人間ってこんなにも愛おしい存在であるということを、もう一度目を開かされるような映画であってほしい。

――― それでこのキャスティングになったのですね?
キャスティングの際も、そういう感覚を共有してくれるかどうかによって決めた。カッコつけた表情は全く必要なかったので、あるがままの表情を見せてくれることが重要でした。役者さんたちも、僕の求めるものが解放された感じなので、自由に緊張感もなく穏やかな時間を捧げてくれたと思います。

――― 撮影期間は?
2012年の春に、1か月も掛かってません。

sumasa-7.jpg――― 井浦新と染谷将太の存在は?
女性たちの物語の中で、彼らが造詣してくれたキャラクターの男性の在り様に、監督としてとても満足しています。映画を通して、男も女も、悪意がなくても人を傷付けてしまっているということに対し、いかに敏感に繊細になっているのかということを示したかったので、お二人は映画に素敵なものを提供してくれました。
新さんが演じた中田マネージャーというのは、とんでもない奴なんだけど、それを単純に悪人として描いてしまうと、よくあるドラマになってしまう。人間としてもマナーとデリカシーを持っていて、一歩引いて気遣いするが故に、肝心なことを自分本位じゃないところに流されていってしまう。男性として肯定はできないけれど、そういう風に、痛みを伴いながらすれ違ってしまう一人の男性の在り様として新さんはいてくれました。
 sumasa-8.jpg染谷君の場合は、柴咲さん演じるすーちゃんが、健気に地道に生きている女性なんで、ちゃんと彼女を見守ってくれる視線がほしいという、スタッフみんなの願いだったんです。

――― 演出方法は?
ウソのないようにするという確認はしたが、仕草について指示したことはなかったです。柴咲さんが「撮影に通うということが癒しだった」と言って下さって、本当に嬉しかった。そんな彼女の気持ちが映画をたおやかにしていたと思います。

――― 柴咲さんに合ったキャラクターだったのでしょうね?
そうですね。

――― 柴咲コウさんはお料理好きだと聞いてますが?
彼女は普段から、自分のためにもきちんと料理を作っている人なんだなぁということは感じられました。言葉少ないけど、僕やスタッフに届ける言葉をちゃんと言って下さる方です。

――― 女優業だけではなく歌手活動にも力を入れておられ、出演作品も選んでおられるように感じますが?
彼女は女優という枠を超えて、ひとりの表現者として確認したいことがいっぱいあるように感じます。作り手である僕たちが、この作品を通してどういうことを表現しようとしているのか、ということを含め、参加するかどうかを決めているようです。女優として参加するだけでなく、作品をどう作り上げていくかを、共有できる方でした。

sumasa-2.jpg――― 柴咲コウの魅力満載ですね?
よく見所を聞かれますが、彼女のさりげない仕草、例えば、瞬きひとつにしても、箸の上げ下ろしにしても、振り向いた時の表情、すべてが切なげで・・・そこに感じられることを自分たちが生きることとイコールになるような感じなんですよね。

――― 最後のまいちゃんのセリフが気になったのですが?
すーちゃんだから気を許して言った言葉です。でも、すーちゃんの負担にならないよう、後で「ごめん」と電話してくる。

――― そのシーンの意味は?
絶えず迷うというのは人間として避けられないことです。迷うということも年齢を重ねていくと、いろんな選択肢が生まれてきます。それは何も悪いことではないんです。

――― 男女の違いは?
男性か女性かというジェンダーは設けていません。むしろ、女性の心情をリサーチして作っていたら、こんな映画は作れなかったと思います。

――― カラーについて?個性を際立たせるための考え?
勿論そうですが、別に語る程のことではありません。それは隠し味なんで(笑)。

――― 脚本について?
プロデューサーと脚本家と3年かけて仕上げました。特別なことなど何も起こらない構成ですが、巧妙に練られた脚本です。特に、映画をよく見ている人に見てほしいです。

sumasa-k3.jpg――― 共感しやすいセリフが多かったが?
見る側の気持ちを穏やかにして、変な緊張感を強いるものにはしないように仕上げたつもりです。ただ、共感するだけで終わる映画にはしたくない。好きでなげやりに生きている人はいないと思う。自分の手の届く範囲の中で、見過ごしていることをもう一度見つめ直して、“慈しむ”という行いをきちんと実感することで人と繋がることができる。人にちゃんと気持ちを伝えることができると思います。

―――単なる癒し系に終わっていない映画ですね?
この映画の本質をちゃんとつかんでくれたら、最後にただ明るい気持ちにはなれないと思う。主人公たちは、今後大変な試練の日々が続くと思うので、3人の友情物語でありながら、肝心なことは其々で決めていく、という孤独と寂しさと切なさを、しっかり受け止めてくれたら、見終わって、すごく人恋しい気持ちになると思うんです。
でも、そういう気持ちをネガティブにとらえないで、その気持ちこそ大切に温めてもらいたい。
そうしたら、きっと、映画を見終わった先に、ちゃんとご自身の生活の中で、いい意味で昇華してくれるのではないかと思います。

 



sumasa-6.jpg 世の中が、ある事の解釈に対しひとつの見方しかできず、偏ったまま議論されるのは想像力の欠如としか言いようがない。狭い了見でしか判断できないのは寂しいことだ。すーちゃんは、誰かを傷付ける訳でもなく、健気なまでに地道に生きている女性だ。まいちゃんは、人並みに頑張ってきたつもりが、何か無理をしてきたようだ。現状打破という積極的な生き方の先に到達した心境とは?さわ子さんは、別に人生を諦めている訳ではない。ただ、譲れない基本的な事をしっかりと持った芯の強い女性だ。それぞれの生き方に多少の違いはあるが、みんな自分の気持ちに正直で、自分の足で立って生きている。それが見ていて心地良く映る。自分もそうありたいという思いがあるからかもしれない。

 この映画を見て思うことは人様々だろう。だが、これだけは言える。何かを考えずにはおられないということ。表面的な癒しだけでなく、本当に自分が求めているものとは? 自分にとっての幸せとは? ……いろんなことをこの映画は提示してくれているようだ。

(河田 真喜子)

nightpeople-s1.jpg『ナイトピープル』門井肇監督インタビュー
(2012年 日本 1時間30分)
監督:門井肇
原作:逢坂剛『情状鑑定人』より「都会の野獣」(文春文庫刊)
出演:佐藤江梨子、北村一輝/若村麻由美/三元雅芸/杉本哲太
2013年2月16日(土)~シネマート心斎橋、3月16日(土)~元町映画館、他全国順次公開
公式サイト⇒http://www.u-picc.com/nightpeople/
(C) 「ナイトピープル」製作委員会

~究極の三角関係に挑む!ガンアクションにこだわりの山形発サスペンスエンターテイメント~

nightpeople-2.jpg 直木賞作家逢坂剛原作の傑作短編を、佐藤江梨子、北村一輝、杉本哲太といった個性派俳優を揃え、『休暇』で海外映画祭からも高い評価を得た新鋭門井肇監督が映画化。街中での銃撃戦など時には香港映画を彷彿とさせるアクションシーンを挿入しながら、過去に縛られる男・信治(北村一輝)と秘密を抱える女・萌子(佐藤江梨子)、そして二人につきまとう刑事・曾根(杉本哲太)の三人の二転三転する人間模様をスリリングに描写。最後まで先の読めない騙し合いが繰り広げられるサスペンスエンターテイメントだ。
 ハラハラドキドキする一方、どこか突っ込みどころのあるVシネマテイストすら感じる快作で新境地を開いた門井肇監督に、映画化するにあたってこだわった点や見どころを伺った。 


nightpeople-s3.jpg―――原作は短編ですが、映画化するにあたってどのように新しいキャラクターやストーリーを膨らませていったのですか? 
原作は短い短編で、主要人物はこの映画でいう主役3人だけがでてくるような話ですが、長編映画にするにあたっての肉付けが必要で、面白いキャラクターを作りたいと考えました。本筋のラインともう一つ、隣のところに葛西というヤクザの役を新たに作りました。そこで話が絡まりながら展開していきます。若村さんが演じた恵子も北村さん演じる主人公を描く中で必要になってくるキャラクターです。ただあまり深く描きすぎるとアクション映画という観点からズレてしまうので、そのバランスが難しかったです。

―――本作も含めて3作品は文芸作品の映画化ですが、これは監督の意図ですか?プロデューサーとの話し合いの中での方向付けですか?
小池プロデューサーとのやりとりの中で、自然にセレクトした結果です。今回は逢坂さんの中でもあえてアクションの入っていない短編を、逢坂チックにアクションを足して作っていくのが面白そうだなと思いやってみました。シナリオライターやカメラマンはアクションや香港映画が好きな人たちで、アクション監督やガンコーディネーターも皆ジョニー・トー監督作品などが大好きなので、彼らと相談しながら作っていきました。

―――主演の3人は個性派揃いでしたが、現場でのエピソードは?
 nightpeople-3.jpg杉本さんなどはアクのある感じで演じてくれました。シナリオを結構気に入って始めてくださったので、役柄に対して思い入れをすごくお持ちで、衣装あわせの段階からいろいろ考えて持ってきて下さったり、曾根刑事がトレードマークみたいに首に巻いているマフラーも杉本さんの提案でした。
北村さんは、ものすごくシナリオを気に入って下さり出演していただくことになったのですが、色々と意見を言ってくれました。シナリオに関しても、「こうした方がいいのではないか」という提案をしてくれます。例えば「薬を実は飲ませていなくて、ポケットに隠していた」という部分は北村さんの提案なんです。本当は一歩手前の段階で「薬は飲ませたんだけど、偽薬だった」で終わらせていたのですが、実はそもそも飲ませてもいないのに、相手はのたうち回ったというひねりを入れてくれ、面白くできました。

―――佐藤江梨子さんは、二面性のある難しい役だったと思いますが、萌子の「おっさん、話長いんだよ!」という捨て台詞が忘れられません。
シナリオライターはやはり、あの台詞を言わせたかったみたいですね(笑)。キャラクターがコロコロ変わるし、他の人も皆何かを演じているという役回りなので大変だと思います。特に佐藤さんが演じた萌子は、全く違う人を演じつつも実は妹の復讐があったり、犯罪を犯したふりをしているという二転三転する何重もの役柄を演じなければならなかったので、きっと難しかったでしょう。

―――新キャラクターの葛西と恵子は非常にエッジが効いていました。特に葛西役の三元雅芸さんのアクションは、香港映画のワンシーンのようなキレがありましたね。
三元さんはアクション俳優として活躍されていて、今回本筋の隣のラインで、この映画の中で大事になってくる動きの部分を担当してもらいました。原作では、本筋のところでアクションはなく、アクション部分は完全に僕たちが作り出したものなので、そこの部分は大きく動ける役者さんに入ってもらおうと、お願いしました。

―――若村麻由美さんの悪女ぶりも見応えがありました。
今回の若村さんは非常に男性の観客から人気があり、ショットガンをぶっ放す姿は魅力的なようです。若村さんも映画だけに登場する役で、信治の過去を語る人としても大事ですし、萌子の正体を知らせるなど物語を進めていくのに重要な役柄でしたね。

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―――本当に街中での銃撃戦が展開されているのも興味深かったです。
それがこの映画の売りになると思っています。日本の場合は今の時代に繁華街での銃撃戦撮影はなかなかできないです。人が本来いるような場所で役者がバタバタと動き、車がでてくるという中ではできないです。今回は山梨県甲府市で撮影したのですが、甲府の商店街にご協力いただけ、完全封鎖は難しいので、車を通したりしながら撮影しました。逆に演じている後ろで車が通っているのがリアルに見えましたね(笑)。

―――一方、信治と萌子が銃に弾をうまく充填できず、ポロポロこぼれて「そんなにモタモタしていて大丈夫?」とツッコミたくなるようなシーンもありました。
 nightpeople-4.jpg街中の銃撃戦をやるというのが企画の段階で大事なテーマでした。その中であまりにも突拍子もなくなる描写は避けたい。ただドンパチやればいいとは思えなくて、銃撃戦でもリボルバーのように弾数が決まっているのにどんどん弾を打つようなことは避けたいし、訓練も受けていない人が打っても、そうそう弾が当たる訳ではないですし。装填しようと思って弾をこぼすこともあれば、間違って仲間の背中を打ったり、そういうところをきちんとやっていきました。どんどん打とうという意見もありましたが、僕の方で弾数や撃ち方がぎこちないところ等にこだわるという方針を通しました。

―――前作も今作も、究極の選択を迫られる人たちの話という捉え方ができますが、そういうストーリーに惹かれるのでしょうか?
 nightpeople-s2.jpg人が決断するときが面白いと思っています。前作も前々作も勇気をふりしぼって何かをする話で、自分でもどこかで勇気を振り絞って物事に当たりたいと思っている部分があります。
今回の映画の場合だと皆どこか悪いことをやっている人たちですが、悪い中でもどこか憎めない人たちでいてほしい。原作の信治は本当に悪い人で終わっていますが、僕としては彼らが惹かれていくところを描いていくと余計感情移入してしまうので、いい感じで次につながっていきたかったです。ハッピーエンドとはいかなくても、まだこの人たちはつながっていってほしい。エンディング自体はどこかでみたような風景であっても、危機感より映画が気持ちよく終わることが大事なので、そういう映像を使ったという部分はありますね。後味の悪い映画はどうしても好きになれません。

 

  

―――ほかにこの映画を作る際に、譲れないことや心に決めていたことはありますか?  
本当に厳しい条件で、12日間で撮影しました。アクションであっても人のドラマを大事にしなければいけないと思っているので、テンポよくアクションを撮るだけではイヤでした。序盤のアクションにつながるまでの部分の、人の関係性を見せたり、駆け引きをしたり、惹かれあったりという部分をできるだけ急がないで、時間をかけるようにして丁寧に作りました。そこが譲れなかったところです。きちんとできないとアクションが浮き上がってしまいますから。

―――公園での炎のパフォーマンスが非常に印象的でしたが、どうして作品に取り入れたのですか?
今回の映画は全部山梨で撮ったので、山梨で活動している方々をうまく映画に取り入れて生かせたらという想いがありました。炎パフォーマンスグループの「和火」も、音楽を作ってくださった「風カヲル」も山梨で活動されている方です。どういう形で映画に生かせるか考えたときに、火というのは現場でみるとパフォーマンスが訴えかけてくるので、三元雅芸さん演じる、復讐に燃えるチンピラ・葛西の信条を燃え盛る火で表現するとうまくいくのではないかと思い、葛西の登場のところにあえて重ねて扱ってみました。

―――まさしく「メイド・イン・山梨」の映画ですね。フィルムコミッションの支援の力も大きかったのでは?
市街地での銃撃戦もフィルムコミッションの方が随分手を貸して下さいました。快く思わない人もいるでしょうが、フィルムコミッションという自治体の方が認めて手伝ってくださると、すごく力になります。

―――これからどういう題材にチャレンジしていきたいですか?
題材は何でもやってみたいというのが正直なところです。原作物もいいですが、そろそろオリジナルもやってみたいです。オリジナル作品は特別で、責任の度合いも大きいですが、なかなかやらせてもらえないというのはそれだけ難しいことでもあります。でもそこは挑戦していきたいですね。一つの決断がいい場合もあれば、人によって悪い場合もある。誰も責めらないけれど、ひどい目に遭う人も、逆に助けられる人もいるような、選択についての人間ドラマを描きたいと思います。ただ暗い一方の映画になることは避けたいです。『休暇』を撮っているときもそうですが、どこかで気持ちが抜けるところがないと辛いので、そこは大事にしたいと思います。ひたすら真面目に撮るのではなく、エンターテイメント性を忘れないで撮りたいと思います。  

―――最後に門井監督から「見逃さないでほしいおすすめシーン」を教えてください。  
北村さんが、すごくもだえる一番の長回しを観てほしいですね。萌子と分かれて部屋の中で悶々と考えているところがありますが、僕がお願いしてああいうシーンになりました。男はあのぐらい迷っているんだ、勝手に動いているようであれぐらいウジウジ考えているよ、というところを見てもらいたいです。編集では間を抜かれて切られたのですが、ダメだと元通りの長さで使ったシーンです(笑)。あのもだえっぷりが売りですね。 (江口 由美)

 

 

2013AKB48-s550.jpg(C)CINE REFLET

『DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?』大ヒットスタート御礼!3都市同時舞台あいさつ

2013年2月7日(木)TOHOシネマズなんば
登壇者:AKB48 加藤玲奈、藤江れいな/NMB48 小笠原茉由、小谷里歩、上西恵、吉田朱里

(2013年 日本 2時間08分)
企画:秋元康
出演:AKB48

2013年2月1日(金)~全国ロードショー

公式サイト⇒ http://www.2012-akb48.jp/

(C)2013「DOCUMENTARY of AKB48」製作委員会


 

~少女から大人へ、新たなステージへファンと共に~

 〈AKB48〉――この人気グループについて今さら紹介する必要もないだろう。というより、下手に触れると、ファンの皆様からお叱りを受けそうな気すらするアンタッチャブルな世界だ。現在公開中の『DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?』の大ヒットスタート御礼!の舞台挨拶が、2月7日(木)大阪・名古屋・福岡で同時開催され、大阪ではTOHOシネマズなんばにて行われた。

2013AKB48-1.jpg 〈AKB48〉の2012年を追ったドキュメンタリーは、前田敦子の卒業を中心に、第一期生が少女から大人へと成長する大転換期を鮮明にみせていると同時に、ライバルであっても共に戦い抜いた者同志の友情と強い意志を描いている。ファンならずとも、その厳しい世界に身を置き切磋琢磨する彼女たちを応援したくなる。


 

――― 最初のご挨拶を。
 2013AKB48-s1.jpg加藤:AKB48チームBの加藤玲奈です。よろしくお願いします。
藤江:AKB48チームBの藤江れいなです。今日は来て下さってありがとうございます。最後まで楽しんで帰って下さい。
小笠原:NMB48チームNの小笠原茉由です。今日は本当にありがとうマチュ~ン!
小谷:NMB48チームNの〈りぽぽ〉こと小谷里歩です。今日はよろしくお願いします。
上西:NMB48チームNの上西恵です。よろしくお願いします。
吉田:NMB48チームNの〈あかりん〉こと吉田朱里です。今日は楽しみましょう。よろしくお願いします。

――― 本作は2012年を追った作品ですが、みなさんにとって2012年はどのような年でしたか?
 2013AKB48-s4.jpg加藤:昨年はいろんなことがありまして、私にとって一番大きなことはチーム4がなくなったことだったんですが、でも新しいチームになって、いろんな先輩方と一緒になれて、頑張ろうと思えた年でした。
藤江:2012年はとても濃かったな~と。前田敦子さんの卒業が一番が大きかったですね。新しいチームが始まったので、いろんなAKB48を見て頂けたら嬉しいなと思っています。
小笠原:昨年は、個人的なことですがR-1グランプリに出場しまして、自分の殻が破れたような気がしました。歌手なのか芸人なのか、周りの方を困らせたんですが、もっともっと素を出していって、NMB48のメンバーとしても、一芸人としても、楽しんで行こうと思えた年でした。
小谷:りぽぽは、ホップ・ステップ・ジャンプというようなことが起こった年でした。(それだけ?)
上西:私は将来女優さんになる夢を持っているのですが、初めてドラマに出演させてもらって、少しでも夢に近付けた年だったのではないかなと思っています。
吉田:2012年は高校生になったということで、中身も外見もちょっぴり大人になったのではないかなと思っています。

――― 本作では多くの涙が描かれていますが、2012年で一番多く涙を流したのはどんな時でしたか?
 2013AKB48-s3.jpg加藤:チーム4がなくなってしまった時は、全員で集まって泣きました。
藤江:チームKの千秋楽で一番泣きました。チームの一人一人が挨拶する度に泣いたので、多分10回くらい泣いたと思います。
小笠原:去年2歳になった姪っこちゃんがいて、その子に〈サボテン〉と呼ばれ、何だか訳わからず涙がどっと出てしまいました。今では〈まゆおばちゃん!〉なんて呼んでくれます(笑)。
小谷:私はふたつあるんですが、どっちが聞きたいですか?(どっちでもいいよ!)
ひとつはお化け屋敷へテレビで行かされた時と、踊りを覚えなければならなかった時です。(ヘタレやな~)
上西:2月27日に「てっぺんとったんで」というファーストアルバムが発売されます。その中の「12月31日」という曲があり、紅白歌合戦に出られなかった悔しさを歌った曲なんですが、そのミュージックビデオ撮影で、NMB48のメンバーが泣くシーンの収録の時が一番泣いたかなと思います。
吉田:去年「ワンちゃんが欲しい!欲しい!」って言っていたら、ある日ドア開けたらパパとママがワンちゃんをプレゼントしてくれました。その時に嬉しさのあまり泣きました。

――― 加藤さんに伺いますが、板野友美さんが卒業を発表された初日に一緒に舞台に立っておられましたが、あの日の楽屋の様子は?
 2013AKB48-s2.jpg加藤:あの日突然知らされて、何がなんだか分からなかったんです。板野さんは憧れの人でしたので、卒業されるのはとても悲しいことなんですが、楽屋は板野さんもみんな泣いていました。

――― 藤江さんに伺いますが、昨年は前田敦子さんの卒業もありましたが、近くでご覧になって如何でしたか?
藤江:メンバーの卒業はとても寂しいのですが、卒業したことによって、新しい道を作ってくれるというか、これからAKB48を目指す人たちにも、具体的将来像を示してくれるのではないかと、期待しています。

――― 最後に全員にお聞きします。今年の抱負と目標を。
 2013AKB48-s5.jpg加藤:モデルさんになることが夢だったんですが、最近女優さんにもなりたいと思うようになりました。一所懸命努力して、少しでも夢に近付きたいと思います。
藤江:私は2月1日の19歳のお誕生日を迎えたので、10代最後の年でやりたいことは沢山あります。念願のファッションショーにも出して頂き、モデルとしても活躍できたらと思います。それ以外にも映画やドラマやいろんなことにチャレンジしていきたいです。それと、AKB48の選抜復活も目指します!(拍手)
小笠原:12月31日に行われる紅白歌合戦に単独出場を目指して頑張りたいと思います。
小谷:以下同文です。
上西:メンバー皆同じ気持ちです。
吉田:以下同文です。

2013AKB48-s6.jpg――― 最後にひとこと。
加藤:AKB48をもっともっと好きになって頂けたら嬉しいです。〈AKB48第二章の始まり〉と言われてますので、メンバーも一所懸命頑張っていきますので、みなさんこれからも応援よろしくお願いします!


 

 〈AKB48〉も〈NMB48〉も皆同じように見えていたが、最近映画のキャンペーン取材などで、一部のメンバーに出合ってみて、一応に皆個性的で可愛い!それは外見だけではない。自己PRの仕方も、自分がどう見られるのかもよく分かった上でステージに立つという、はっきりとした意志が伺える。これは大人でもできない自己表現だが、彼女たちは幼い頃から訓練されてきている。特に、AKB48とNMB48の違いも鮮明だ。自信というか、覚悟が違う。彼女らの目指す頂点とは?――― 新たなステージに入った彼女たちの輝きに注目していきたい。

(河田 真喜子)

取材写真:(C)CINE REFLET

koukannikki-s550.jpg『ボクたちの交換日記』舞台挨拶(13.2.6 大阪ステーションシティシネマ)
登壇者:内村光良監督、伊藤淳史、小出恵介
 koukannikki-1.jpg(2013年 日本 1時間55分)
監督・脚本:内村光良
原作:鈴木おさむ「芸人交換日記~イエローハーツの物語~」(太田出版刊)
出演:伊藤淳史、小出恵介、長澤まさみ、木村文乃、川口春奈、佐藤二朗、佐々木蔵之介
2013年3月23日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、T・ジョイ京都、神戸国際松竹、109シネマズHAT神戸、他全国公開

『ボクたちの交換日記』試写会プレゼント(3/3〆切)
公式サイト→http://koukan-nikki.jp/ 

(c)2013「ボクたちの交換日記」製作委員会

~内村監督は「鬼」だった!?うけない芸人の気持ちを身をもって体験!~

koukannikki-2.jpg 鈴木おさむのベストセラー小説「芸人交換日記~イエローハーツの物語~」を〈ウッチャンナンチャン〉の内村光良監督が映画化、結成して12年の売れない芸人コンビ「房総スイマーズ」の、夢を追い、挫折し、それぞれの道を歩んだ末にたどりついた絆を描いた感動作『ボクたちの交換日記』が3月23日(土)から公開される。伊藤淳史と小出恵介が次第にコンビ間の本音をさらけ出しながらラストチャンスにかけるお笑いコンビを熱演。売れない、うけない辛さや夢と現実、家族との狭間の葛藤、夢を追いかける勇気、諦める勇気などを、交換日記を軸に描いていく一方、また芸人裏事情の描き方や、劇中コントに内村監督のこだわりが感じられる作品だ。

 公開に先駆け大阪ステーションシティシネマで行われた舞台挨拶付き先行プレミア上映では、満席のお客様を前に、初の監督と主役二人のそろい踏みとなり、内村監督も感無量の様子。映画でもたびたび登場するコントシーンでの猛シゴキぶりに小出恵介より「内村監督は鬼!」発言や、劇中コント以上に面白い!? 伊藤淳史と小出恵介の掛け合いぶりに、思わず内村監督からお褒めの言葉がかかる場面もあり、大いに盛り上がった舞台挨拶となった。


(最初のご挨拶)
内村監督(以下監督):すっげえー!ちょっとあがっています。すっごくいい劇場にびっくりしていることと、こんなにたくさんのお客さんが入ってくれて、感無量でございます。ありがとうございます。
伊藤:こんばんは!僕もすごくあがっています。こんなきれいな会場で、大きなスクリーンの中集まっていただいて、今日はすごく幸せです。映画、楽しんでいってください。よろしくお願いします。
小出:みなさんこんばんは。小出恵介です。『ボクたちの交換日記』ということで、映画すごく面白いと思います。自信をもってお届けできると思います。公開は3月23日ですが、今日見ていただいて面白かったら、周りの人に勧めていただければと思います。よろしくお願いします。

koukannikki-s3.jpg―――一番最初作品を撮るとき、どのようなことを考えましたか?
監督:純粋に依頼があったんですね。「この本をもとに監督してもらえませんか」と渡されたのが鈴木おさむさんの『芸人交換日記』というお笑いの世界を正面から撮ると。自分のいる世界ですから、正面切って撮れるのかという戸惑いはありましたね。でも実際に鈴木おさむさんに会って、「内村さん、これ如何様にも料理してやってください。原作変えちゃっていいですから」というぐらい寛大に言ってくださいました。後、僕らの世代より2つぐらい後の世代の話だから照れなくできるのではないということで、吹っ切って撮る決意をしました。

―――お笑いコンビを演じた伊藤、小出コンビのキャスティングについては?

監督:伊藤淳史君は逆にプロデューサーの方から「伊藤淳史君どうですか」と言われたんですが、『西遊記』で共演してから家族ぐるみのつきあいで、嫁さん同士も仲良いので、ちょっと近すぎるということで、一旦断りました。それから小出君が気になっていて、バラエティーで1、2度共演したぐらいですが、すごく印象がよくて。小出君を田中役でいこうと思っていたんですけれど、『ルーキーズ』など優等生のイメージがあったのに、実際一緒に食事してみると彼、雑なんですね。粗野なんです。私、面食らってしまいまして、とんだ優等生だと。食事した日に一発で「これが甲本だ」だと決めました。じゃあ田中役をどうするとなったときに、伊藤淳史が再浮上してきたんです。やはりコントを教えるには、一人気心の知れた人がいた方が教えやすいのではないかと思い直して、もう一度頭を下げて伊藤君にお願いしました。
伊藤:再浮上してきてよかったです(笑)。

koukannikki-s2.jpg―――実際に田中役を演じると決めたときはどうでしたか。
伊藤:内村さんが監督すると知っていて、田中役ということで台本を読ませていただきましたが、すごく面白くて。でもお笑い芸人さんの役を演じるということにすごくハードルの高さを感じました。今お笑いはブームだと思うし、みなさんお笑いに慣れているので、それだけクオリティーの高いものをやらなければいけない。監督が内村さんなので、すべてお任せすればいいものができるだろうし、すべて内村さんのせいにできるし(会場笑)。ここはおんぶにだっこで頑張ろうという決意で臨みました。  

 

 

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―――甲本という役柄をお聞きになったとき、どう思いました?  
小出:僕は最初に原作を読ませていただいて、ものすごくすてきな交換日記なんですけれど、鈴木おさむさんの芸人さんに対する愛情や、いろんなものを見てきたすごく熱い想いがダイレクトに伝わり、素晴らしいなと思いました。こういうものを映画にするときは、逆にハードルが上がるというか、難しいだろうなと思ったのですが、甲本という人間にそのときから感情移入して臨みました。といって、見ていただいたらこんなに真面目な感じじゃないですからね。えっといった感じになりますから。 

―――当然、コントのシーンはありますよね。 
監督:本当に二人にはすごくコントの練習をしてもらいました。3、4回やったあと、新宿の本当にお笑い芸人さんがライブをやっている場所で飛び入り参加させたんです。すごくすべりましたね。最初出てきたときの「キャー」だけでしたね。あそこがピークでした。それから二人が本当に脇汗とか掻いちゃって、ものすごい汗びっしょりで舞台袖に帰ってきて。小出君なんて「俺、もうお笑いできねえー」というぐらい。それぐらい「うけない」ということを知ってもらったんです。それ以降の練習は目の色が違うんですよ。リハーサルも食らいついてくるというか。全然違いましたね。それから撮影の合間も自主的にネタ合わせしてくれるようになって、すごく感謝しています。 

―――お芝居はすごくお上手なお二人ですが、コントはまた違うのですか? 
小出:全然違いますよ。地獄をみました。あんなアウェイになることないですよ。
伊藤:すごいですよ、みんなの目が。「人ってこんな目できるんだ」というぐらい冷えきっていて、本当に申し訳ない気持ちになりました。

koukannikki-3.jpg―――練習を重ねて、映画も撮り終え、今の気持ちとして二人でコンビを組みたいと思いますか?
小出:とにかく監督が鬼でしたので。本当に目の色を変えて鬼でした。すごかったです。熱意とこだわりと。
監督:全然鬼じゃないって・・・鬼じゃねえよ~
小出:(記者に)「鬼監督」って書いてください!
伊藤:ずっと同じ場所でやっているというシーンがあるんですが、その日は撮っても撮っても終わらない。
小出:OKなんて出ないんじゃないかという。
伊藤:出ないのではと不安な中とり続けましたね。
監督:最終的にはOKを出しました。わたくし、鬼ではございません(笑)。

―――コンビを組んだ甲本役の小出さんは、共演されてどんな方でしたか?
伊藤:見ていただいたら分かると思いますが、僕たち二人のコンビを中心にいろんな物語が進んでいくのですが、結構個々で出ているシーンが多くて、分量的には半分ずつぐらいなんです。台本でもちろん話は知っているのですが、実際に完成を見たら「甲本っていいヤツじゃん。あれ?この映画こんなに泣けたんだっけ」と自分で振り返ってしまうぐらい、甲本という人間を台本のイメージ以上に好きになりましたね。

koukannikki-s5.jpg―――田中役の伊藤さんはいかがでしたか?
小出:交換日記ということで、実際に日記を書くんですよ。実は自分たちの字で書いているのですが、まあ字がきれい。まあ丁寧。普段の字とのギャップがすごい!これがスクリーンに映ると思った瞬間の気合いの入れ方がハンパじゃない。
伊藤:役柄、役柄~
小出:役柄にすごく寄せているということなのですが、最初田中が書く「嫌です」という言葉が出てきます。「嫌です」の完成度、すごいですよ。
伊藤:練習したもん。
小出:下書きもしているんですよ。鉛筆で下書きして、ボールペンで書いてましたね。
伊藤:その跡が映っていないか不安です。こんなに大きいスクリーンだと・・・。
小出:「こいつ下書きしてる」ってバレたら・・・
監督:君たち、掛け合いうまくなってるね~(会場拍手喝采)

―――内村監督のお墨付きですから!
監督:静岡からはじまってキャンペーンで一人のときも多かったし、やっと大阪で三人揃ったんです。すごくそれもうれしいんですよ!こうやって三人で揃っているのが久しぶりなので、それもあってすごく感動しています。

koukannikki-s4.jpg(最後のご挨拶)
伊藤:この映画はコンビの愛や、それを支えてくれる人の愛や、いろんな愛がこもった映画になっていると思います。まだ夢を持っていない子供たちであったり、今夢を見つけようとしている人、追いかけている人、その夢をあきらめてすばらしい現実を歩んでいる人、どんな人たちが見ても感じてもらえるものがたくさんあると思います。今日見ていただいて、面白いと思ってくださったら、ぜひ大切な方と2度、3度、4度、5度、6度ぐらい劇場に足を運んでいただけたらと思います。よろしくお願いします。今日は楽しんで見てください。ありがとうございました。
小出:女性だと夢を追いかけている馬鹿者二人、愚かな男をすごくかわいいなと微笑ましく見守ってくださるのではないかなと思います。それと夢を追いかけるのは美しいんだなと言うことをやっていて感じました。夢が叶おうが叶わなかろうがすてきなことだと感じたので、そういうことを感じていただけるとうれしいです。ありがとうございます。
監督:本当に大きなスクリーンに我々の作った映画がドンとでるかと思うと楽しみで、ワクワクで。昨年の仕事の半分はこれにかかりきりだったので、皆さんに見ていただけるのは本当にうれしいです。ただただ見てくださいということです。見てよかったなと思ったら、3月23日公開以降ももう一度来ていただければと思います。本当にありがとうございました。(江口由美)

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『さまよう獣 』内田伸輝監督インタビュー

(2012年 日本 1時間34分)
監督・脚本:内田伸輝 
出演:山崎真実、波岡一喜、渋川清彦、山岸門人、森康子、田中要次、津田寛治

2月2日(土)~シネ・ヌーヴォ、2月23日(土)~ 神戸アートビレッジセンター、5月~京都シネマ

公式HP⇒ http://www.makotoyacoltd.jp/lovebombs/
(C)2012「さまよう獣」Partners


 第11回東京フィルメックス最優秀作品賞に輝いた第1作『ふゆの獣』(2010年)で、複数の男女のどろどろした恋愛関係を、俳優たちの感情をむき出しにした激しい即興演技で描き、鮮烈なデビューを飾った内田伸輝監督。第2作『おだやかな日常』(2012年)では、原発事故による放射能の見えない恐怖に翻弄される、東京に住む女性たちの姿を描き、評判を呼んだ。今般、公開された『さまよう獣』は、監督にとって最初の本格的商業作に当たる。映画の宣伝のため来阪された内田監督に本作の魅力についてうかがいましたので、ご紹介します。

〈物語〉
samayou-2.jpgとある田舎の村に、訳ありの美しい女性がやって来て、村の若い男たちは彼女に夢中になる。キヨミと名乗る女は、老女キヌの家に間借りし、キヌの孫同前で寡黙な青年マサルと3人で暮らし始める。そこに、キヨミを追って東京から恋人と名乗る男が乗り込んでくる……。


 

 

【作品のテーマ、スタイルについて】 

samayou-s2.jpgQ:本作の発想はどこから思いつかれたのですか?
A:製作側から女性を主人公にした物語といわれましたが、僕としては、単純に恋愛ものを描くのは、3月11日の震災以降、どうしてもできなくなってしまいました。震災前の映画を観ていると、日常風景とか生活の風景は、どちらかというと「退屈の象徴」として描かれるケースが多かったと思います。でも、震災を経て、「日常」が繰り返されることがどんなに大切かに、僕たちは気付きました。「日常」を描くことで、そういうメッセージを伝えたいと思いました。

Q:『おだやかな日常』と『さまよう獣』と続けての公開ですね。
A:2作の脚本をほぼ同時進行で書いていきました。前者は、放射能を恐れる母親たちの話として、東京の現状を僕なりにみて描いた作品です。後者は、さらに進んで、どんな脅威があっても、人間は皆ご飯を食べなきゃ生きていけないわけで、「食べる」という日常の行為を意識して、食欲にこだわってつくりました。

Q:キヨミとキヌとマサルが三人で食卓を囲んでご飯を食べるシーンが繰り返されますが、構図にはこだわったのですか?
A:今まで手持ちカメラでせめていく映像でしたが、この作品では、極力、日常風景として落ち着いた映像をつくりたいと思い、手持ちカメラはほとんど使わず、あらかじめカットわりをして、ほとんどフィックスの映像で撮っていく形にしました。

Q:即興をやめようと思ったのは何か理由はあるのですか?
A:『ふゆの獣』では、脚本はなく、プロットだけ準備して、あとは俳優にアドリブで自由に演技してもらいました。『おだやかな日常』では、第10校まで脚本を書いて、現場では即興で撮影していくスタイルでした。『さまよう獣』では、きっちり脚本どおりに演じてもらい、即興はほとんどなしで撮影しました。今まで即興による演出しかやったことがなく、僕にとって新しい挑戦で、これを経験しないと次に進めないように思い、一度基本というものに従って撮っていきました。役者がどう演じるか、どうしゃべるかを細かく観察して、しゃべり方が少しでも違うとだめ出しをして、僕自身が思い描くキャラクターに近づけていくので、キャラクターがより明確になるのがメリットだと思いました。即興の場合は、動きが自然になって、感情面がとても激しくなるというメリットがありました。
 


 

【主人公の女性像について】

samayou-5.jpgQ:恋愛ドラマを描くにあたって、モデルとかあったのですか?
A:以前、会社に勤めていた女性から、恋愛についての相談を受け、男性があまりに暴力的でも、女性が逆らえないでいるという話を聞きました。『ふゆの獣』は、そういう恋愛依存に苦しむ女性が主人公の映画です。『さまよう獣』は、恋愛依存から抜け出したい、抜け出さないといけないと行動に移した女性を主人公にしました。誰がモデルになったかといえば、あえていうなら『ふゆの獣』の女性がモデルになった形ですね(笑)。

Q:撮影場所はどこですか?
A:撮影したのは山梨です。キヨミがボストンバッグ一つで逃げてくることを考えると、北海道とか九州とかでなく、途中の甲信越のほうが「とにかく逃げ出してきた」というリアリティが出ると考えました。

Q:キヨミを演じる山崎真実さんへの演技指導は?
A:山崎さんには、影のある女性を意識して、動いてもらいました。常にいろんな男性に対して八方美人で、相手に応じて自分の性格が変わったように見せる。村の青年タツヤに対しては「タツヤくんと一緒にいると元気になるね」と言い、シンジには「シンジさんといると気持ちがやすらぐ」とセリフも使い分けます。東京ではそんな生活をしていて、それが嫌で逃げ出してきたのに、田舎でも、同じ八方美人をやってしまう。そんな状況をいかに自然にみせるか、なんとなくキャラが変わっているようにみえるよう、印象づけました。

samayou-s1.jpgQ:バーのマスターを演じる田中要次さんが、キヨミには水商売の経験があると見抜きますよね。その言葉に傷ついた彼女が“昔の自分”から抜け出そうとする決意と勇気が伝わってきます。
A:キヨミは、自分の過去を見抜かれたおかげで、逃げ出す前と同じことをしている自分に気付きます。田舎での淡々とした日常の中で、今まで身体にしみついた都会の生活を少しずつ捨てていこうとします。この抜け出そうとする過程をどうつくるか、物語の階段をどう上がらせるのか、脚本段階で悩みました。結局、自分の身に着けていたものを一つ一つはがしていくだろうなと、マニキュアをおとしたり、派手な下着を燃やしたり、些細な行動で彼女自身が葛藤している姿を描きました。

Q:風呂場の天井を伝う水滴のシーンは、脚本の段階からあったのですか?
A:ありました。抜け出したくても抜け出せないというキヨミの心情を、水滴が天井から落ちるか落ちないかわからない、落ちそうで落ちない感じで、表しました。

 


 

【映画のおもしろさ】

samayou-s3.jpgQ:キヨミとマサルが逃げるのを、キヨミの元恋人(津田寛治)が追いかけていくシーンが楽しく、可笑しかったです。
A:特にこだわってやりたかったシーンではありません。偶然にもマサルがキヨミの手を引いて逃げることで、二人の関係性が周りの人にもわかるという、単純に“逃げる”という構図でした。でも、この追いかけっこで流れる音楽が、すごくおもしろくて、あそこで爽やかな曲を持ってくるとは、僕自身予想もしていませんでした(笑)。初めてあの音楽を映像にあてはめたのを観た時、僕は大爆笑してしまい、まさか音楽ひとつで、あの追いかけっこが、爽やかな青春映画になるとは思わず、びっくりしましたし、同時に嬉しかったです。映画って皆でつくるものじゃないですか。僕の予想しない、いい方向に進んだという意味で、それが一番発揮できたのがあのシーンだと思います。

Q:津田寛治さんがおもしろかったですが、津田さんへの演出は?
A:津田さんには、どういう人間性なのかということと、津田さん自身のなんとなく蛇っぽいキャラクターを出してほしいと伝え、あとは、津田さんが自由に演じてくれました。僕らは、本当にひどい奴だなと思いながら、おもしろがって撮っていました。ほんとにおもしろくて、観る度に笑ってしまいます。

Q:英語のタイトル『LOVE BOMBS』はどういう意図ですか?
A:配給側から出された案の中で、これが一番、僕がそのタイトルを聞いて大笑いしたし、おもしろいということであっさり決まりました。インスピレーションという感じです。ある意味、津田さんの存在が爆弾になるんでしょうね。平和な日常を送っていたところに、津田さんみたいな爆弾がやってくることで、一気に物事が動き出す。爆弾は、ゆっくりではなく突然破裂するものなので、そういう意味でもぴったりなタイトルだと思います。

Q:画家を目指していたそうですが、映画に目覚めたのはどんなきっかけだったのですか?
A:高校の時、国語の先生が授業で『羅生門』をみせてくれて、すごく衝撃を受けました。それまでハリウッド映画しか観たことがなく、僕らがちょっと映画を撮ろうとしても撮れるような内容ではありませんでした。『羅生門』の、すごく限られたミニマムな設定の中で、ものすごいサスペンスを展開していくところに衝撃を受け、こういう映画を撮ってみたいと直感的に思いました。これがきっかけで、映画づくりを意識し始めました。

画家を目指して油絵を描いていたのですが、油絵を製作する過程は、キャンバスにまず絵の具の白を塗って、それが乾くのを待ってから、今度は下書きを薄く描く。色が混ざってしまうので、乾くのを待って、どんどん色を乗せていきます。水彩画とか水墨画はわりと短期間で描けてしまいますが、油絵はすごく時間をかけて、ゆっくりと絵が完成していく、その過程が、一つ一つの積み重ねが完成していく映画づくりにとても似ていて、どんどんはまっていったという感じです。


 きゅうりのお漬物を美味しそうに食べるシーンがあり、その音が食欲を誘う。これがあれば、ご飯2杯位いけるほど、きゅうりのお漬物が好きだと語る内田監督。映像学校を出た後、ドキュメンタリーやバラエティ、写真の現像や大道具と、いろいろな映像の現場を見て、撮影、編集やさまざまな技術を学んだそうだ。人と人が会って話すことが、人間関係を成立させる上で一番重要で、日常によくありふれた話だけど、人と人との間のおもしろさや、人と人が一緒に生活していくということを描いていきたいと語られた。次回作は、どんな内田ワールドが展開するのか、今から楽しみである。

(伊藤 久美子)

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『牙狼〈GARO〉~蒼哭ノ魔竜~』小西遼生インタビュー

 

(2012年 日本 1時間36分)
原作・脚本・監督:雨宮慶太
出演:小西遼生、久保田悠来、蒼あんな、藤田玲、山本匠馬、中村織央、影山ヒロノブ、柳原哲也、螢雪次朗、渡辺裕之、松坂慶子

2013年2月23日(土)~梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸、他全国ロードショー

公式サイト⇒ http://garo-project.jp/SOUKOKU/

(C)2012 雨宮慶太/東北新社


 

~小西遼生、『牙狼<GARO>』の独創的世界と撮影現場を語る~

 

garo2-11.jpg 人気特撮『牙狼<GARO>』シリーズ劇場版第2作『牙狼〈GARO〉~蒼哭ノ魔竜~』は、主役の〈冴島鋼牙〉最終バージョンということで、物語のテーマ性やアクション・CGなど様々な新要素が盛り込まれ、雨宮慶太監督が創造する魔界迷宮の世界観に新境地を拓いている。さらに、今回は松坂慶子が初めてワイヤーアクションに挑戦するなど、久保田悠来や蒼あんな等を迎えての豪華キャストの活躍にも注目。年齢を問わず、女性ファンが多いことからも、その人気の高さがうかがえる。豪快なアクションばかりではなく、今まで見せたことのない小西遼生扮する〈冴島鋼牙〉の内面的変化に、新しいヒーロー像を見るようだ。

 

【STORY】

“ヒト”を守るため、大いなる力“ガジャリ”と契約した魔戒騎士の冴島鋼牙は、魔竜が持つという“嘆きの牙”を持ちかえるため“約束の地”に降り立つ。ところが、戦いのための牙狼剣、魔法衣、魔導輪を失ってしまう。不思議少女メルや息を吹き返したカカシと出会ったり、“緑の城”の女王ジュダムの“美しいモノのコレクション”として狙われながら、嘆きの海から現れる魔竜を追い求めて、不思議の国を旅する鋼牙。果たして、牙狼剣、魔法衣、魔導輪を見つけ出し、“嘆きの牙”を手にすることができるのか?


公開を控え、小西遼生さんがキャンペーンのため来阪し、新作『牙狼〈GARO〉~蒼哭ノ魔竜~』にかける思いを語ってくれた。


konishi-4.jpg――― 冴島鋼牙役を長く続けて来られたが、役のイメージは?
時間経過と共に自分も変わっていくが、初期に比べて鋼牙も大人になっているし、性格も変わってきている。今回は、鋼牙最後の戦いということで、今まで戦いがメインだったのを、戦いから一歩離れたところにいる鋼牙の人間性が描かれています。主役として再発見することが多くて、ここまで大きくなったのか?と感じました。

――― 今回ほぼグリーンバックの撮影で大変だったのでは?
現場には機械とグリーンの幕しかなく無機質で、映画の中のファンタジーさは一切なかった。いつもはロケーションの繋がりでグリーンバックの撮影に入るので、状況が分かりやすかったのですが、今回は監督の説明を聴きながら、広さや奥行き高さを想像しながら、いろんな所を歩いているつもりで演技しました。雨宮監督の凄さは独創性にあり、『牙狼<GARO>』の基本となる世界観はそこにあります。地味で難しい現場でしたが、面白かった!

――― ずっと険しい顔をしていたが?
今回は穏やかな方です。今回の特徴は、今までホラー的悪と剣で戦うのを使命としてきた鋼牙が、ファンタジーの世界で得体の知れない連中相手に戦うことです。未知の世界に飛び込み、敵意はないが、歌えや笑えと言われ、それに困惑する鋼牙が見所でしょうか。ファンタジーの世界に違和感なく溶け込む必要がありました。元々キャラクター性が強い作品ですが、技術の進化もあり、7年前の作品と比較すると、今回は上手く融合していると思います。

konishi-2.jpg――― 松坂慶子さんがワイヤーアクションに挑戦しているが?
雨宮監督も、「松坂さんの回し蹴りなんて、誰も見たことないだろう!」と絶賛していました。立ち回りも現場で振り付けて即実演という、稽古もしないで、見事に足が上がっていました。ご本人は「踊りをやってたから、それに助けられたわ~」などと仰ってましたが、それにしても見事だなあと驚きました。ワイヤーで吊り上げられるにもコツがあり、初心者には難しいこと。それを上手にバランスをとってアクションしておられました。

――― 松坂慶子さんに気を遣った?
嬉しいことに、アクションシーンを喜んでやって下さいました。誰でも不安だと思うのですが、最初に「小西という役者は、相手のアクションを受けるのが上手いので、安心してやって下さい」と監督が言われたみたいで、とても信頼して演技して下さいました。現場では緊張せずに、松坂さんも集中して楽しんでやっておられたようです。

――― ゲストによって現場の雰囲気は違いますか?
7年やっていると皆さんに息子みたいに思われているのですが、大物ゲストが来ると、僕に対するケアがなくなる!(笑)これ『牙狼<GARO>』の特徴! いつもは主演だからと大事にして頂いているのですが、ゲスト優先で、「鋼牙後回し!」ってされます。ゲストの拘束時間に配慮するので、それは仕方ないのですが・・・。それに、僕はアクションよりリアクションの方が得意で、リハーサルやスタントなしでもできます。時々、「少々鋼牙に当たってもいいから」なんて言われ、「おいおい!…別にいいけど」てな具合です(笑)。

――― 『牙狼<GARO>』は雨宮監督の独創性が大きな特徴ですが、美術は?
 garo2-2.jpg雨宮監督のイメージを基に、美術担当の人がプラスαさせながら作り上げています。具体案を言わず漠然としたイメージだけで作っていくのですが、そこは監督と美術との信頼関係ができているので、NGが出ることはあまりないようです。監督のイメージを具現化するのが、其々の仕事ですから。

――― スタッフもあ・うんの呼吸なんでしょうね?
本当に独創的なんで、スタッフも大変だと思います。一番大変なのはCG部。映像は直せるので、監督の細かいダメ出しがあり、時間かけて直しているんです。今回は「モノ」をテーマにしているので、各パートに「自分で考える」というノルマを課して、僕のアイデアも二つ採用されてました。

――― どの部分ですか?
ザルバと戦うシーンです。「何やりたい?」と監督に聞かれ、「今まで相棒だったザルバの全身像と戦うシーンって、観客も見たいのでは?」と言ったら、やらせてもらえました。それから、ラストシーンも。それは監督も同じことを考えておられたようです。ラストカットの鋼牙がとてもいい表情をしていますが、僕はあのシーンを演じている時が一番楽しかったです。このように、脚本は監督が考えますが、CG部や美術部などの各パートにもアイデアを募り、みんなでひとつの作品を作り上げるという一体感が湧いてきました。物作りの基本的楽しさを実感できた現場でした。みんなの愛情がこもっています。

――― 役者としてのアクションは?
『牙狼<GARO>』の現場で初めてアクションに挑戦しました。僕の運動神経については、イチかバチかだったのでは? 僕は不器用な方でして、藤田玲君の方が柔軟で運動神経がいい。僕は人一倍たくさん実践経験を積ませてもらった結果、少しずつアクションが身についてきました。

konishi-3.jpg――― 長年同じ役をやることで制限してきたことは?
別にありません。ただ、シリーズものは毎回違う印象で見てもらえるように、その時その時の自分自身の血を通わせたものにしたかった。より男らしく、ある時は貫録を出す、演技の幅を広げてきたつもりです。

――― 他の仕事と重なったりする時、髪型は?
舞台の場合ごまかせるのですが、舞台とTVが交互に来ると、撮影の時のキャラクター作りがちょっと大変でした。そんな時は『牙狼<GARO>』基準でいきました。『牙狼<GARO>』の撮影に入る前はトレーニングしています。ワイヤーの高さも徐々に上がって行き、40mの高さでもスタントなしでやりました。そんな高さで必死で演技していても、「ちゃんと映ってるから~」と監督は言ってましたが、結局顔写ってなかったです(笑)

――― 今後やりたい役は?
舞台が中心になりますが、いろんな役をやりたいです。悪人というより、裏表のあるような業の深い人間臭い役、例えばシェイクスピア劇に出てくるような人物像に興味があります。

――― 時代劇は?
時代劇もやりたい!是非やってみたい!(笑)


と、マネージャーの方を向いて時代劇出演を訴える小西遼生さん。その端正な小顔と細身の体格だと、さぞかし凛々しく美しい若武者になれることだろう。時代劇ファンとしては、『牙狼』シリーズで培った剣さばきを活かすためにも、是非とも時代劇に挑戦してほしいと期待してしまう。

(河田 真喜子)


★小西遼生さん出演の舞台『ピアフ』の情報はコチラをご覧ください。

http://www.tohostage.com/piaf/index.html

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『EDEN』山本太郎インタビュー

 

(2012年 日本 1時間41分)
監督:武正晴
脚本:羽原大介、李鳳宇
出演:山本太郎、中村ゆり、高橋和也、齋賀正和、池原猛、小野賢章、大橋一三、入口夕布、高岡早紀、浜田晃、藤田弓子

2013年2月2日(土)~シネ・ヌーヴォ、第七藝術劇場

★作品紹介はこちら

★公式HP⇒ http://sumomo.co.jp/eden/

©2012映画『EDEN』フィルムパートナーズ


eden-4.jpg “反原発”俳優・山本太郎が(38)主演映画「EDEN」(武正晴監督)公開に合わせて1日、来阪キャンペーンを行った。一昨年亡くなった名優・原田芳雄さんが温めていた船戸与一の原作を、元シネカノンの李鳳宇プロデューサーが武正晴監督と組んで映画化、ゲイやニューハーフの世界を描いた“社会派喜劇”はケッサクだ。

  「反原発」発言から所属事務所をやめざるを得なくなった山本に、李プロデューサーがオファーした初仕事だった。役どころは新宿のショーパブ「エデン」の店長兼演出家ミロ。けったいな人間ばかりのこの映画ではニュートラルな役どころで、山本はちょっと変わったその世界に浸って楽しそうに見えた。


―――事務所やめた後の最初のオファーにやりがいが?
事務所からは「(辞めずに)いとけ」と言われたが(反原発発言で)、事務所に電話が殺到し機能が止まってしまった。残っていたら静かにしてなきゃならないけど、それは無理、と分かっていたんで…。電話は原発推進派もいるし、金もらってないけど、安全だと思いこんでいる人もいる。事務所は『ほとぼりさめるまで待て』と言ってくれたけどね。

―――山本さんの行動は誰も出来ないから目立つ。
広告費だけで260億円。原発だけじゃない、あらゆる業種が関連している。あんな(僕の)発言があったら商業放送で使われる訳ないですよ。といって僕に悲愴感はありませんけど。

eden-s2.jpg―――いつ頃から反権力だったのか。連合赤軍を扱った高橋伴明監督の映画「光の雨」はきっかけになったか?
反権力志向は昔からだった。「光の雨」がきっかけのように思われるけど、あの(主役)森恒夫にはまったく心動かされなかった。連赤は斜めに見ていて、森恒夫は自己満足でしかない。閉鎖集団の中で誰がイニシアチブを取るかで争っただけ、と小馬鹿にしていた。映画の中のアジ演説も空虚そのものに感じて、撮影中、アジ演説をマーチン・ルーサー・キング牧師の演説に変えたら? と言って監督に拒否されましたけどね。生活するのに必死な人にはコミット出来ない運動だった。

―――「光の雨」の山本さんは確かにそういう役だった。
ナメてかかっていたかな。運動が先鋭になって、一人一人に力があることを理解しようという気はある。

―――事務所辞めた時に来たのが「EDEN」の仕事だった。
製作の李鳳宇さんは私たちにとっては若きレジェンド。李さんから電話もらって、仕事に参加出来るのがうれしかった。『岸和田少年愚連隊』(96年)『ゲロッパ!』(03年)から出さしてもらっている。『EDEN』はホン読んだら、人間動物園みたいな話。その中で私の役・店長ミロは比較的ニュートラルだった。田舎の母親に電話するシーンが一番の見せ場だと思って気合い入りましたね。あのシーンがあったからこそ、この役を引き受けた。
 eden-5.jpgところが、その電話のシーンに感情のピークを持っていこうとしているのに、ノリピーの母親役の藤田弓子さんが、堪らなく泣かせる演技をされるので、藤田さんを見るだけで感情が爆発しそうでした。共演者の中では、藤田さんのことを〈小型原子炉〉と呼んでました(笑)。

―――李プロデューサーとは縁がある?
李さんは僕にとってレジェンド的存在。メジャーだけが映画じゃない、ということを見せてくれた人。テレビの韓流ドラマに留まらない、韓国映画の良さを教えてくれた人でしたね。僕は『夜を賭けて』などにも出ていて、かなり影響は受けた。

eden-2.jpg―――久々に関わった映画の仕事は?
市民運動が忙しかったけど、役者やってみて、よくも悪くもやっぱりこの仕事が好きなんだな、と思った。映画を作っている雰囲気が好きだった。少人数のスタッフで、高校の文化祭なんかで夜まで居残って作業している、そんなワクワク感、その手作り感がいい。そんな気持ちになれるのが演技、表現することですね。現場が好きなんだとつくづく思った。画面に映った時の色合いが好きです。

―――撮影は実質11日間だった?
そうなんです。狂ってますよね。ようこの日数であれだけの内容を撮れたと思う。これで事故が起こらなかったのが不思議。現場がひとつになってたんですね。ときどき面倒くさいなという気持ちが生まれることがあるもんだけど、そんなことは全くなく一気にやれたのは、李さんや武監督の人柄でしょうね。

eden-s1.jpg―――ゲイの役について?
違和感なくやれた。現場では、本番でなくてもオネエ言葉を使っていた。台風迫る中の怒涛のラストシーンを撮り終えて、みんなでお風呂に入っていたら、あのヒゲ面の高橋和也さんが「やぁ、どうもお疲れ!」と急にオッサンに戻って入って来られたのにはびっくりした(笑)。女湯に男が入ってきたみたいな!? 早くも次の仕事モードに切り替えた高橋さんはエライ!僕はしばらくはオネエの仕草が残ったが。

―――武正晴監督は?
武さんは役者への愛情があってとても細やかに見せる。気に入ったらひとつカットを増やしたりして、一人ひとりに気を遣っていることがはっきり分かる。

―――山本さんはこれからどうするのか、という疑問が残るが?
原発問題にかかわっていくでしょうね。映画の仕事は李さんのほかに、深作健太監督から声をかけてもらった。

―――先の見通しは暗い?
そうですね。もう日本を離れるしかない。放射能はもうとんでもないレベルにまで来ている。国外に出るしかないと思う。3~5年後、どうなるか、チェルノブイリ以上の事態になるかもしれない

―――反原発の映画人も多く、福島以前から反原発映画も多い。もう山本太郎監督が撮るしかないのでは?
反原発映画も見ましたが、園子温監督の『希望の国』が精一杯でしょうね。あれで、あんなにいろんな媒体で取り上げられるんだ、と勇気持った人が多いのでは。自分が撮るなら、ドキュメンタリー以外にないでしょうね。自分自身が劇場みたいなもので、リアルライフで(反原発)やってるんですから。原発で出来るのは朗読ぐらいじゃないですか、吉永小百合さんみたいに?

(安永 五郎)

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