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『ナイトピープル』門井肇監督インタビュー

nightpeople-s1.jpg『ナイトピープル』門井肇監督インタビュー
(2012年 日本 1時間30分)
監督:門井肇
原作:逢坂剛『情状鑑定人』より「都会の野獣」(文春文庫刊)
出演:佐藤江梨子、北村一輝/若村麻由美/三元雅芸/杉本哲太
2013年2月16日(土)~シネマート心斎橋、3月16日(土)~元町映画館、他全国順次公開
公式サイト⇒http://www.u-picc.com/nightpeople/
(C) 「ナイトピープル」製作委員会

~究極の三角関係に挑む!ガンアクションにこだわりの山形発サスペンスエンターテイメント~

nightpeople-2.jpg 直木賞作家逢坂剛原作の傑作短編を、佐藤江梨子、北村一輝、杉本哲太といった個性派俳優を揃え、『休暇』で海外映画祭からも高い評価を得た新鋭門井肇監督が映画化。街中での銃撃戦など時には香港映画を彷彿とさせるアクションシーンを挿入しながら、過去に縛られる男・信治(北村一輝)と秘密を抱える女・萌子(佐藤江梨子)、そして二人につきまとう刑事・曾根(杉本哲太)の三人の二転三転する人間模様をスリリングに描写。最後まで先の読めない騙し合いが繰り広げられるサスペンスエンターテイメントだ。
 ハラハラドキドキする一方、どこか突っ込みどころのあるVシネマテイストすら感じる快作で新境地を開いた門井肇監督に、映画化するにあたってこだわった点や見どころを伺った。 


nightpeople-s3.jpg―――原作は短編ですが、映画化するにあたってどのように新しいキャラクターやストーリーを膨らませていったのですか? 
原作は短い短編で、主要人物はこの映画でいう主役3人だけがでてくるような話ですが、長編映画にするにあたっての肉付けが必要で、面白いキャラクターを作りたいと考えました。本筋のラインともう一つ、隣のところに葛西というヤクザの役を新たに作りました。そこで話が絡まりながら展開していきます。若村さんが演じた恵子も北村さん演じる主人公を描く中で必要になってくるキャラクターです。ただあまり深く描きすぎるとアクション映画という観点からズレてしまうので、そのバランスが難しかったです。

―――本作も含めて3作品は文芸作品の映画化ですが、これは監督の意図ですか?プロデューサーとの話し合いの中での方向付けですか?
小池プロデューサーとのやりとりの中で、自然にセレクトした結果です。今回は逢坂さんの中でもあえてアクションの入っていない短編を、逢坂チックにアクションを足して作っていくのが面白そうだなと思いやってみました。シナリオライターやカメラマンはアクションや香港映画が好きな人たちで、アクション監督やガンコーディネーターも皆ジョニー・トー監督作品などが大好きなので、彼らと相談しながら作っていきました。

―――主演の3人は個性派揃いでしたが、現場でのエピソードは?
 nightpeople-3.jpg杉本さんなどはアクのある感じで演じてくれました。シナリオを結構気に入って始めてくださったので、役柄に対して思い入れをすごくお持ちで、衣装あわせの段階からいろいろ考えて持ってきて下さったり、曾根刑事がトレードマークみたいに首に巻いているマフラーも杉本さんの提案でした。
北村さんは、ものすごくシナリオを気に入って下さり出演していただくことになったのですが、色々と意見を言ってくれました。シナリオに関しても、「こうした方がいいのではないか」という提案をしてくれます。例えば「薬を実は飲ませていなくて、ポケットに隠していた」という部分は北村さんの提案なんです。本当は一歩手前の段階で「薬は飲ませたんだけど、偽薬だった」で終わらせていたのですが、実はそもそも飲ませてもいないのに、相手はのたうち回ったというひねりを入れてくれ、面白くできました。

―――佐藤江梨子さんは、二面性のある難しい役だったと思いますが、萌子の「おっさん、話長いんだよ!」という捨て台詞が忘れられません。
シナリオライターはやはり、あの台詞を言わせたかったみたいですね(笑)。キャラクターがコロコロ変わるし、他の人も皆何かを演じているという役回りなので大変だと思います。特に佐藤さんが演じた萌子は、全く違う人を演じつつも実は妹の復讐があったり、犯罪を犯したふりをしているという二転三転する何重もの役柄を演じなければならなかったので、きっと難しかったでしょう。

―――新キャラクターの葛西と恵子は非常にエッジが効いていました。特に葛西役の三元雅芸さんのアクションは、香港映画のワンシーンのようなキレがありましたね。
三元さんはアクション俳優として活躍されていて、今回本筋の隣のラインで、この映画の中で大事になってくる動きの部分を担当してもらいました。原作では、本筋のところでアクションはなく、アクション部分は完全に僕たちが作り出したものなので、そこの部分は大きく動ける役者さんに入ってもらおうと、お願いしました。

―――若村麻由美さんの悪女ぶりも見応えがありました。
今回の若村さんは非常に男性の観客から人気があり、ショットガンをぶっ放す姿は魅力的なようです。若村さんも映画だけに登場する役で、信治の過去を語る人としても大事ですし、萌子の正体を知らせるなど物語を進めていくのに重要な役柄でしたね。

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―――本当に街中での銃撃戦が展開されているのも興味深かったです。
それがこの映画の売りになると思っています。日本の場合は今の時代に繁華街での銃撃戦撮影はなかなかできないです。人が本来いるような場所で役者がバタバタと動き、車がでてくるという中ではできないです。今回は山梨県甲府市で撮影したのですが、甲府の商店街にご協力いただけ、完全封鎖は難しいので、車を通したりしながら撮影しました。逆に演じている後ろで車が通っているのがリアルに見えましたね(笑)。

―――一方、信治と萌子が銃に弾をうまく充填できず、ポロポロこぼれて「そんなにモタモタしていて大丈夫?」とツッコミたくなるようなシーンもありました。
 nightpeople-4.jpg街中の銃撃戦をやるというのが企画の段階で大事なテーマでした。その中であまりにも突拍子もなくなる描写は避けたい。ただドンパチやればいいとは思えなくて、銃撃戦でもリボルバーのように弾数が決まっているのにどんどん弾を打つようなことは避けたいし、訓練も受けていない人が打っても、そうそう弾が当たる訳ではないですし。装填しようと思って弾をこぼすこともあれば、間違って仲間の背中を打ったり、そういうところをきちんとやっていきました。どんどん打とうという意見もありましたが、僕の方で弾数や撃ち方がぎこちないところ等にこだわるという方針を通しました。

―――前作も今作も、究極の選択を迫られる人たちの話という捉え方ができますが、そういうストーリーに惹かれるのでしょうか?
 nightpeople-s2.jpg人が決断するときが面白いと思っています。前作も前々作も勇気をふりしぼって何かをする話で、自分でもどこかで勇気を振り絞って物事に当たりたいと思っている部分があります。
今回の映画の場合だと皆どこか悪いことをやっている人たちですが、悪い中でもどこか憎めない人たちでいてほしい。原作の信治は本当に悪い人で終わっていますが、僕としては彼らが惹かれていくところを描いていくと余計感情移入してしまうので、いい感じで次につながっていきたかったです。ハッピーエンドとはいかなくても、まだこの人たちはつながっていってほしい。エンディング自体はどこかでみたような風景であっても、危機感より映画が気持ちよく終わることが大事なので、そういう映像を使ったという部分はありますね。後味の悪い映画はどうしても好きになれません。

 

  

―――ほかにこの映画を作る際に、譲れないことや心に決めていたことはありますか?  
本当に厳しい条件で、12日間で撮影しました。アクションであっても人のドラマを大事にしなければいけないと思っているので、テンポよくアクションを撮るだけではイヤでした。序盤のアクションにつながるまでの部分の、人の関係性を見せたり、駆け引きをしたり、惹かれあったりという部分をできるだけ急がないで、時間をかけるようにして丁寧に作りました。そこが譲れなかったところです。きちんとできないとアクションが浮き上がってしまいますから。

―――公園での炎のパフォーマンスが非常に印象的でしたが、どうして作品に取り入れたのですか?
今回の映画は全部山梨で撮ったので、山梨で活動している方々をうまく映画に取り入れて生かせたらという想いがありました。炎パフォーマンスグループの「和火」も、音楽を作ってくださった「風カヲル」も山梨で活動されている方です。どういう形で映画に生かせるか考えたときに、火というのは現場でみるとパフォーマンスが訴えかけてくるので、三元雅芸さん演じる、復讐に燃えるチンピラ・葛西の信条を燃え盛る火で表現するとうまくいくのではないかと思い、葛西の登場のところにあえて重ねて扱ってみました。

―――まさしく「メイド・イン・山梨」の映画ですね。フィルムコミッションの支援の力も大きかったのでは?
市街地での銃撃戦もフィルムコミッションの方が随分手を貸して下さいました。快く思わない人もいるでしょうが、フィルムコミッションという自治体の方が認めて手伝ってくださると、すごく力になります。

―――これからどういう題材にチャレンジしていきたいですか?
題材は何でもやってみたいというのが正直なところです。原作物もいいですが、そろそろオリジナルもやってみたいです。オリジナル作品は特別で、責任の度合いも大きいですが、なかなかやらせてもらえないというのはそれだけ難しいことでもあります。でもそこは挑戦していきたいですね。一つの決断がいい場合もあれば、人によって悪い場合もある。誰も責めらないけれど、ひどい目に遭う人も、逆に助けられる人もいるような、選択についての人間ドラマを描きたいと思います。ただ暗い一方の映画になることは避けたいです。『休暇』を撮っているときもそうですが、どこかで気持ちが抜けるところがないと辛いので、そこは大事にしたいと思います。ひたすら真面目に撮るのではなく、エンターテイメント性を忘れないで撮りたいと思います。  

―――最後に門井監督から「見逃さないでほしいおすすめシーン」を教えてください。  
北村さんが、すごくもだえる一番の長回しを観てほしいですね。萌子と分かれて部屋の中で悶々と考えているところがありますが、僕がお願いしてああいうシーンになりました。男はあのぐらい迷っているんだ、勝手に動いているようであれぐらいウジウジ考えているよ、というところを見てもらいたいです。編集では間を抜かれて切られたのですが、ダメだと元通りの長さで使ったシーンです(笑)。あのもだえっぷりが売りですね。 (江口 由美)