レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2020年2月アーカイブ

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渋川清彦、松本穂香の現場での過ごし方を賞賛!
『酔うと化け物になる父がつらい』舞台挨拶付き先行上映会
(2020.2.21 シネ・リーブル梅田)
登壇者:松本穂香、渋川清彦、久馬 歩(脚本)
 
 アルコールに溺れる父を持った作者・菊池真理子の実体験に基づくコミックエッセイを、『ルームロンダリング』片桐健滋が映画化。松本穂香と渋川清彦のW主演で描く家族ドラマ『酔うと化け物になる父がつらい』が、3月13日(金)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、Tジョイ京都、3月20日(金)よりシネ・リーブル神戸他全国ロードショーされる。
 
 
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 アルコール依存症で、仲間たちとついつい飲みすぎてしまう父を渋川清彦が見事な酔っ払い演技で表現すれば、母を苦しめる父に反感を覚える一方、漫画で酔っ払い父を書いたことがきっかけで、自分の新たな道を切り開いていく娘を松本穂香が説得力のある演技で魅せる。新興宗教に救いを見出す母をともさかりえが演じる他、妹を元欅坂46の今泉佑唯が熱演。また、自宅やスナックで集合する野球仲間兼飲み友達には、宇野祥平、森下能幸、星田英利らが扮し、昔こういう親父たちがいたなという凝視感が満載だ。一歩間違えれば非常にシリアスな物語だが、コメディとシリアスの間を絶妙なバランスで引っ張る異色のドラマだ。
 
 
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 2月21日にシネ・リーブル梅田で行われた舞台挨拶付き先行上映会では、主演の松本穂香、渋川清彦に加え、本作の脚本を担当した久馬 歩(お笑いユニット「ザ・プラン9」)も登壇した。大阪は松本の地元だけあり、客席にはご家族や友人の姿も。いつになくリラックスした雰囲気の松本は、「サキは、モヤモヤをずっと抱えて行きている人。重い空気を自分の中に抱え、あとは監督に任せました」と役作りを回想。一方、シラフより酔っ払った状態のシーンの方が多かった渋川は、「片桐監督は長年知り合いなので、セリフも多くないし、飲みながらやってもいいかと提案しました。でもやはり緊張するし、セリフも言わなくてはいけないしで、半分も酔えなかったですね」と見事な酔っ払い演技の舞台裏を明かした。
 
 
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 一方、最初脚本を書くのに苦労をしたという久馬は、「タイトルはポップですが、実話なので、書くときはとういう風にするべきか考えました。あまり嘘をつけないですし。自分の親父も岸和田のプチ化け物で玄関でもよく寝ていたので、その様子を思い出しながら書きました」と自身の体験を重ねながら、執筆の様子を語った。
 

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 松本と渋川は初共演だが、現場ではほとんどしゃべらなかったという。「やはり役のことを意識して、あまり話さない方がいいだろうなと思いました」と当時を振り返る松本に、「(つらいシーンが多いので)ほとんど笑ってなかったね。僕は現場の様子をよく見ているのだけど、今はスマホを見ている人が多い中、松本さんはスマホを見ないで、現場にいたので、いい居方だなと思いました」と渋川が賞賛。「ぼうっとしてました」という自然体の松本が一番印象に残るシーンは、後半サキが父に気持ちをぶつけるシーンだという。

「ピリッとしてましたね。ワンカットで気持ちがつながり、松本さんの気持ちが爆発したのが良かった。監督も撮りながら泣いていましたよ」と渋川が評すると、松本も感激しきりだった。
 
 
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 そんな撮影現場に訪れたことがあるという久馬は、「手土産に551の豚まんを持参しましたが、551があって、こんな暗い日があるのかというぐらい暗かった」とシリアスなシーンの撮影に驚いた様子。「父が“嫌い”ではなく、父が“つらい”というところが切ないですね」とタイトルからサキの気持ちを代弁した。
 
 最後に
「この映画が、いろんなことに挑んでいる人へ役に立てばうれしい」(久馬)
「いい映画なので、今は色々なことがありますが、見ている間は楽しんでいただきたいです」(渋川)
「難しい親子関係や人間関係に悩んでいる人にも、ぜひ見ていただきたいです」(松本)と結んだ舞台挨拶。待機作や出演作の多い松本だが、渋川とがっつり組んで臨んだ家族ドラマへの思いが静かに伝わってきた。お酒につい依存してしまう人も、そんな家族がいる人も、そしてお酒を飲まない人もぜひ見てほしい、異色の家族ドラマだ。
(江口由美)
 

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<作品情報>
『酔うと化け物になる父がつらい』
(2019年 日本 95分)
監督:片桐健滋 
原作:菊池真理子著「酔うと化け物になる父がつらい」秋田書店
出演:松本穂香、渋川清彦、今泉佑唯、恒松祐里、濱正悟、安藤玉恵、宇野祥平、森下能幸、星田英利、オダギリジョー、浜野謙太、ともさかりえ他
3月13日(金)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、Tジョイ京都、3月20日(金)よりシネ・リーブル神戸、全国ロードショー
公式サイト → https://youbake.official-movie.com/
(C) 菊池真理子/秋田書店 (C) 2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会
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どう生きたいかは「何を見たいか、そこから何を選ぶのか」
『Red』三島有紀子監督インタビュー
 
 直木賞作家・島本理生の人気長編小説を三島有紀子監督(『幼な子われらに生まれ』)が映画化した『Red』が、2月21日(金)より梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、OSシネマズミント神戸、T・ジョイ京都他全国ロードショーされる。
 何不自由ない結婚生活を送っているように見える子持ちの専業主婦・村主塔子。かつて愛した男・鞍田と再会し、少しずつ本当の自分に気づいていき…。
 塔子を演じるのは、若手実力派女優の夏帆。自分の中に積み重なる違和感や、孤独感を余すことなく表現する。ある覚悟を持ち、塔子を全身で愛そうとする鞍田を妻夫木聡が演じる他、また塔子に興味を持つ同僚・小鷹を柄本佑、エリートサラリーマンの夫・真を間宮祥太朗が演じている。籠の中の鳥が飛び立つように、社会とのつながりを経て、人生には他の選択肢があることを実感した塔子。映画オリジナルのラストをどう受け取るのかも含め、小説とは違う世界観を味わえる大人のラブストーリーだ。
 本作の三島有紀子監督にお話を伺った。
 

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■現代的なヒロイン、塔子が、自分の中にきちんと尺度を持ち、自分の人生を生きる話になれば、価値のある映画になるのではないか。

――――原作とは設定や構成を大胆に変え、映画らしい表現が光る三島版『Red』になっていますが、三島監督が最初、原作を読んで抱いた感想は?
三島:『Red』の主人公・塔子は専業主婦で、幸せに生きていると思っている。だけど、自分の希望ややりたいことを少しずつ抑え込んで生きている事に気がついていない。自分のやりたいことを考える前に、皆が喜ぶことや気に入ることをやってしまい、世間の多くの人がいいと思うものをいいと思うようになっている。それを私は「尺度が外にある」と言うのですが、そういう日々を重ねると、だんだん自分が本当はどう生きたかったのかを忘れ、自分を見失ってしまう。今はそういう人が多い時代になっていると普段から怖いなと思っていたので、『Red』の主人公・塔子が非常に現代的に感じましたし、100年以上前に書かれたヘンリック・イプセンの戯曲「人形の家」のノラみたいだと感じたのです。大体、いつも原作を読むときは、自分がこの原作の何に反応するのかを面白がりながら読むのですが、そんな塔子が自分の中にきちんとした尺度を持てるようになり、自分の人生を生きることができるようになるという物語にすれば、きっと今を生きる皆さんに観ていただける、価値のある映画になるのではないかと思いました。自分の中に尺度があると、きちんと対話が生まれると思いますしね
 
 
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■覚悟を持って生きる人の傍らにいると、自分にも問いかけざるをえない。

――――かつて愛し合っていた鞍田との再会が、ある意味自分の尺度を取り戻すきっかけになりますね。
三島:興味深かったのは鞍田には秘密があり、それゆえ、自分の人生で何が大事か、非常に明確に見えている訳です。そういう人が10年前に深く愛した塔子と再会し、ぶつかり、「君は何を愛し、どう生きたいか」と問いかけてくる。言葉ではなく、そういう覚悟を持って生きている人が傍にいると、自分にも問いかけざるをえないですよね。そういう化学反応にとても惹かれます。
物語の後半、出張で大雪のため帰れなくなってしまった塔子を鞍田が車で迎えに来るくだりがありますが、それを読んだ時、これだ、と。非常に映像的だし、大雪という舞台が男と女を描くのに説得力があり、この雪の中の一夜を描きたいと思ったのです。夜から朝を迎えるまでを主軸として描きながら、二人が再会してから何があったのかという過去を入れ込む形にしたいという構想が、読み終わってすぐに思い浮かびました。
 
 
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■鞍田のテーマ曲・ジェフ・バックリィの「Hallelujah」が蘇らせる二人の思い出

――――一番描きたいと思われた雪の中の一夜、二人が乗る車の中で流れるジェフ・バックリィの「Hallelujah」が、雪とこだまするような余韻があり、非常に印象的でした。選曲の理由は?
三島:「Hallelujah」という曲の存在は、いつも自分に寄り添ってくれるものの一つでした。歌い方もある種エロスを感じつつ、哲学者的な深遠で美しい声で、いつも問いかけてくるものがある。そんな曲なのです。鞍田も塔子にとっては生き方を問いかけてくる存在でもあるし、鞍田のテーマとして使いたいと思っていました。一方で、鞍田のキャラクターを考えた時、建築家という職業で、古い型のボルボに乗っている…、そしたらおそらくジェフ・バックリィの「Hallelujah」が好きな人だろう。そして10年前、塔子と車の中で一緒に聴いていただろうと想像したのです。歌は歴史を一瞬にして感じさせるもので、二人が「Hallelujah」を車で聞いた時、一瞬にして10年前の思い出が蘇ってくる。そして、今どんな気持ちで二人は聴くのかを撮りたいと思ったのです。
 
――――「Hallelujah」にある種のエロスも感じるように、塔子と鞍田の情愛をどう表現するかもこの作品の大きな見どころです。
三島:最初二人が交わる時は、「鞍田が塔子を」慈しみ、塔子の存在を感じながら抱くわけです。塔子の心と体がだんだん開いていく過程を見せていくため、彼女が少し声を出せるようになる過程や、心の扉を開いていく表情の変化をつぶさに捉えていくことを心がけました。上り詰める顔ではなく、達した後にどういう顔をするかで塔子がどれだけ満たされているのか分かる。少しずつ撮るのではなく、キスして脱ぎ始めてから達した後、夏帆さん演じる塔子が観音様のような神々しい顔になるまでをワンテイクで一連の流れとして撮っていきました。そして、ラストのラブシーンは、塔子が全細胞を使って鞍田のすべてを記憶するように、「塔子が鞍田を」抱くシーンにしたいと考えました。
 

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■二人の気持ちを体感するような、体内に届く音作り。

――――吐息や二人が触れ合う音など、繊細な音が2人の体温までも感じさせるようでしたが、音作りについて教えてください。
三島:今回は2人の気持ちを体感してもらいたかったので、音を付けるときに、2人が感じている音を付けてほしいと依頼しました。2人がどんな音を聞いているのか。相手の心臓の音や、実際には鳴っていないけれど、その人には聞こえているような音など。波の音にもぜひ注目していただきたいですし、映画館でなければ体感できないような、体内に届くような声になっています。おそらく、塔子や鞍田が隣にいるような気分になれるのではないでしょうか。
 
――――塔子の夫・真は精神的に母親に依存気味のエリートサラリーマンですが、日頃はトンがった役の多かった間宮祥太朗さんの新たな一面が見えました。
三島:バラエティー番組での間宮さんを見て、単語の選び方が非常に上品だと感じていました。悪びれた野性的な役をやりたいお気持ちが大きいかもしれませんが、今回はクレバーで品のある間宮祥太朗を出してほしいとお願いしました。
 
――――一方、柄本佑さんが演じる鞍田の同僚・小鷹の身のこなしや細かい気遣いが、抜群に魅力的でした。何かアドバイスしたことはありましたか?
三島:佑さんはそもそも達観した自由さを持っているので、彼が演じれば間違いないと思って、小鷹役をお願いしました。ただ一つだけ、佑さんが「小鷹は塔子のことが好きで、でも最終的にはフラれるということでいいですよね」と聞いてきたのです。小鷹は塔子を好きだけれど、鞍田のことも尊敬していて、好きなのです。つまり塔子も鞍田も、うまくやれない不器用さや孤独さを持っており、そんな二人のことを憎めない。むしろ2人のことを一番理解していて、愛しているのが小鷹だという話をしましたね。
 

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■難しい塔子役を演じた夏帆さんを、万全の態勢で受け止める。

――――夫である真、鞍田、そして小鷹と3人の男の前で、それぞれ別の表情を見せる塔子に、女の多面性を見た思いがしました。塔子を演じた夏帆さんの目の表情が、どれも印象的でしたが、難しい表現も必要だったこの役について、どのような演出をしたのですか?
三島:みなさん、お芝居が上手な俳優ですから、環境さえきちんと整っていれば、芝居が自然と生まれると信じています。こんな空間にこういう小道具を用意しておけばこんな芝居が引き出せるとか、灰皿を向こうに用意しておけば、ここから周って行くだろう等、制作部と空間を選び、美術部と一緒にお芝居できる環境をまず整えます。そこで感じ取っていただいて、自然とお芝居になるというのが、理想ですね。
 
今回は塔子が住む豪邸で、本当は大きな窓があったのを、美術部と相談して窓を塞ぎました。そうすると、塔子はそこに立っていると自然と息苦しい気分になっていくので、自宅でのシーンはそこから演出していきました。また雪の夜、鞍田が主張先の塔子を迎えに行くシーンで、塔子が信じられないという表情で鞍田の頬を触るのですが、彼女に指示を出すのではなく、妻夫木さんに「亡霊のように立っていてほしい」とお願いしました。そうすると自然と夏帆さんが、本当にここにいるのかと思い、自然と手が出る。そういうことの積み重ねで、夏帆さんがそれらに反応していけば、自然と相手によって表情も変わり、見えている側面が変わっていったと思います。そこを目指して皆で頑張っていました。
 
――――監督の演出を受けた相手役の俳優の動きにその場で反応しながら、夏帆さんは塔子としてそこにいるような自然な演技になったのですね。
三島:それぞれの相手役に対してとても自然に反応してくれたのがよかったなと思います。ただ子持ちの専業主婦という役は夏帆さんも初めてだったので、相当悩み、もがいていました。でも主役は自分の殻を破り、新しいものを掴むために、もがく方がいいと思っているんです。理屈で分かることだけやっていても、新しいことは生まれませんから。我々キャスト・スタッフ全員で夏帆さんを受け止めるつもりでいたので、頭でわからないことでも思い切ってやってみてくれと伝えました。
 
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■どう生きたいかは「何を見たいか、そこから何を選ぶのか」

――――最後に、二人が作った家の模型の窓から見える風景や、鞍田の車のフロントガラスから見える風景など、フレーム越しの風景が象徴的に使われています。その狙いを教えてください。
三島:建築家の方と話していると、家を建てる時には、ご家族が何を見て過ごしたいかを聞くそうです。それによって、窓の方向や場所が決まるのだとか。その話に感銘を受け、鞍田を建築士に設定しました。どう生きたいかは、何を見たいか、そしてそこから何を選ぶかではないかと思うのです。『Red』は、窓越しに二人が何を見たかったのかを辿っていく映画とも言えますね。
(江口由美)
 

<作品情報>
『Red』
(2020年 日本 123分)
監督:三島有紀子
原作:島本理生「Red」中央公論新社
出演:夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗、片岡礼子、酒向芳、山本郁子、浅野和之、余貴美子ほか
2月21日(金)より梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、OSシネマズミント神戸、T・ジョイ京都他全国ロードショー
公式サイト → https://redmovie.jp/
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「自転車だけでなく、ちゃんと映画に出てくれるんだ」佐藤浩市、先輩火野正平との共演に感謝『Fukushima 50』完成披露舞台挨拶
(2020.2.10なんばパークスシネマ)
登壇者:佐藤浩市、火野正平
 
 2011年3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災。それから間もなく、テレビで目を疑うような光景を目撃し、日本のみならず、世界中が危機感を募らせた福島第一原発事故の衝撃を今でも忘れられない人が多いのではないだろうか。今まで語られることのなかった現場の惨劇と、その最中、命がけで福島第一原発を守ろうと奮闘した作業員たちや、関係者たちの姿を、とことんリアルにこだわり描いた超大作『Fukushima 50』が、3月6日(金)より全国ロードショーされる。
 

 原作は、福島第一原発事故の関係者90人以上への取材をもとにした門田隆将渾身のノンフィクション作品「死の淵を見た男吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)。官邸や東京の東電本社からの指示に対峙しながら、刻一刻と状況が変化する現場の指揮を執る吉田昌郎所長を渡辺謙が、福島第一原発1機、2機の当直長、伊崎利夫を佐藤浩市が演じる他、日本の実力派俳優が集結、海外のメディアからFukushima50(フィフティ)と呼ばれ、その勇気と行動力を賞賛された、作業員たちの決死の奮闘ぶりを、目の当たりにすることだろう。

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 2月10日、なんばパークスシネマで開催された『Fukushima 50』舞台挨拶付き先行上映会では、上映前、出演の佐藤浩市、火野正平が登壇。佐藤は原作を読む前に、監督とプロデューサーから本作のオファーがあったことを明かし「正直、時期尚早ではないかとか、プロパガンダになるのは嫌だという思いもありましたが、ほぼ現地雇用が多かったという職員の方を中心に描きたいと監督に思いを告げられ、そういうことなら最後まで一緒に走りたいと伝えました」と回想。火野も「俺たちがやった役は、逃げられないなら戦おうぜという人たち。多分あそこにいた人はそうだったんだろうなと思って。まあ、見てちょうだい」と他の共演者の気持ちを代弁しながら、自身のベテラン作業員役を振り返った。
 
 

■71歳の火野正平、控え役に気付かず、酸素ボンベを担いで吹き替えなしの熱演。

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 映画では震災後の5日間の福島第一原発の中での職員たちの奮闘が事実に沿ってリアルに描かれるが、実際に日が経てば立つほど、作業員役の俳優たちの疲れ具合が如実に表れている。震災後から時系列で撮っていったという佐藤は「皆ノーメイクで、どんどん人の顔が変わっていく。それは映画的には非常に良かった」と言えば、火野は「3週間ぐらい、一つのセットで男たちばかり50人もいてごらん…」と心底ウンザリした様子。さらに重い酸素ボンベを持ち、率先して現場に入る役を演じ、「ずっと隣に控えの人が待機していたのに、全部自分でやっちゃって、最後の日まで気づかなかった」と71歳とは思えない体力で吹き替えなしの名演を見せたという。
 時には電源が落ちて、真っ暗になるシーンもあり、現場ではスタッフたちが頭を抱えることも多かったというが、「防護服を着てしゃべるので、セリフも不明瞭でわかりにくいし、専門用語が飛び交いマイナス要素ばかり。でも、それが妙にリアルに聞こえたり、いいふうに転換していく気がして、映画の神様がいましたね」。
 
 

■人が一人もいない町に対する複雑な思いは、映画に映ってくれていると思う。

 火野は現在NHK-BSで日本全国を自転車で回る「にっぽん縦断こころ旅」に長年出演中だが、「日本はどこ行っても元被災地だから。そういう国に住んでいるという自覚がある日本人って強いなと思う。福島は被災後2年目に行って、僕が(福島の人に)頑張ってと思っていたのに、火野さんがんばって!と言ってくれた。日本人って美しいな」と、福島でのエピソードを語った。佐藤は、クランクアップ後、ラストシーンとなる数年後の桜のシーンを撮りに行ったとき、「何も終わっていない。下手すれば、始まっていないかもしれない」と痛感したという。「帰還困難区域で、人が一人もいない、生活の匂いが全くしない町が日本にあることを、どれぐらいの人が知っているんだろうという複雑な思いで見ていました。僕自身と役(伊崎利夫)と必ずしも一致はしないけれど、そういう複雑な思いは映画に映ってくれていると思います」(佐藤)
 
 

■一回り上の先輩でも、撮っているときは仲間。作業員たちの雰囲気を映画でも映し出せた。

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 終始リラックスムードの火野を前に、最初の緊張感がほぐれてきた佐藤は火野との長年の付き合いを振り返り、「かなり古いんです。僕より一回り上だけど、先輩後輩があるにせよ、僕らの世界で撮っているときは仲間です。30数年前にご一緒して、死ぬほど飲まされて、今では正平ちゃんと呼んでいます」。今回は、火野をはじめ、平田満らベテラン勢も佐藤が演じる伊崎の元で作業する仲間として加わり「自転車だけでなく、ちゃんと映画に出てくれるんだと思いました(笑)。本当に先輩が現場にいると、助かります。福島第一原発で前線の当直室にいた作業員は地元の人で、学校の先輩後輩もいました。その雰囲気が映画の中でも実現して、本当にうれしかったです」と、危機に直面した当直室の撮影に思いを馳せた。
 
 最後に「とにかくたくさんの人に見てもらいたい。よろしくお願いします」(火野)
「映画の最後に桜を見ながら僕は一言つぶやきますが、桜は自分たちのために実を作り、花を咲かせて生きている。人間は勝手にその桜に思いを馳せる。人は色々なことを自分で考えることができます。災害は深い爪痕しか残さないけれど、負の遺産にせず、少しだけ考えて、次の世代に渡したい。そう思える映画だと思います」(佐藤)と結んだ舞台挨拶。

Fukushima 50には「50人」と「50歳以上」というダブルミーニングがあり、映画の中でも未来のある若い世代は作業に行かせず、年配の作業員が率先して危険な作業に向かった事実も明かされる。真実を知るのに遅すぎることはない。まだ記憶に新しい福島第一原発事故に改めて向き合い、日本の進むべき道を考えるきっかけにしてほしい。

(江口 由美)
 

 

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<作品情報>
『Fukushima 50』
(2019年 日本 112分)
監督:若松節朗
原作:「死の淵を見た男吉田昌郎と福島第一原発」門田隆将(角川文庫刊)
出演:佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工、富田靖子、佐野史郎、安田成美
3月6日(金)より大阪ステーションシティシネマ他全国ロードショー
公式サイト→https://www.fukushima50.jp/
 (C)2020『Fukushima50』製作委員会

 

 
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「一歩踏み出したから成長できる、それが人生」
『37セカンズ』HIKARI監督、佳山明、大東駿介インタビュー
 
 脳性麻痺で体が不自由な女性、ユマが、母の束縛や親友に依存される環境から抜け出し、新しい可能性に向かって歩み出す姿を描き、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にて日本人初の観客賞と国際アートシネマ連盟賞パノラマ部門をW受賞した感動のヒューマンドラマ『37セカンズ』が、2月7日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショーされる。
 
 

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  母(神野三鈴)の束縛を振り切り、新しい世界へ踏み入れる中、介護士の俊哉(大東俊介)や舞(渡辺真紀子)と出会い、諦めの人生を、前向きな人生に変えていくユマ。一人の女性の成長物語として、ポジティブなメッセージがたくさん込められているヒューマンドラマだ。
本作のHIKARI監督、演技初体験で主演のユマを演じた佳山明さん、ユマの自立を助ける介護士、俊哉役の大東駿介さんにお話を伺った。
 

 
――――日本では女性自身の性や、障害者のリアルな生活や葛藤など、なかなかリアルに描かれない中、本作はその両方を取り入れ、とてもエネルギッシュに描いており、感動しました。この作品の企画のアイデアはどこから生まれたのですか?
HIKARI:熊篠慶彦さん(映画『パーフェクト・レボリューション』のモデル、原作者)から男性障害者の性についてお話を伺う機会があり、その時にふと、女性の障害者はどうなのかと思ったのです。当時今とは違う内容の、障害者の性に関する脚本を書いていたのですが、1年後、熊篠さんと訪問し、インタビューしたセックス・セラピストの方から「下半身不随の女性も、セックスで達することができるし、自然分娩もできる」と聞いたのです。他にも下半身不随で自然分娩をした方にインタビューし、本来ならおしっこもカテーテルを入れなければならないぐらいなのに、赤ちゃんが出てこようとする命の素晴らしさに感動しました。また以前から漫画家に興味を持っており、アダルトものは女性漫画家が多いそうなのです。しかも、性体験がない人も実際に書いておられ、人間の想像力や性と脳の働きなど、様々なことが入り混じり、この脚本に結実していきました。
 
 

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■「嘘はつきたくない」ぶれない思いが、スタッフ、キャストを一つに。(HIKARI監督)

――――ユマを描くリアリティについて教えてください。
HIKARI:映画は長い時間とお金をかけ、スタッフやキャストが一つになって作るわけですから、パッションがなければ作れない。今回、皆が一つになれたのは、嘘はつきたくないという思いに、全員が気持ちを一つにしてくれたからです。やはり障害者の人に主役を演じてもらうには、撮影日程を2週間延ばしてもらう必要がありましたが、最初からそこはブレませんでした。
 
――――佳山明さんの魅力とは?
HIKARI:初々しさ、ピュアさにすごく惹かれました。演技をするというより、目の前にあることを真っ直ぐに受け止め、それに対してリアクションをしてくれる。そういう姿勢がすごく良かったです。
 
 
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■障害者視点からくるセリフに感情移入(佳山)

 「一瞬一瞬に心を動かし、一瞬一瞬に詰め込む」明さんの演技や監督の演出が自分の糧に(大東)

――――ユマ役に共感した部分や、演じるのが難しかった部分はありますか?
佳山:ヒロインも障害当事者なので、障害者視点からくるセリフが色々あり、そこは感情移入できるなと思いました。色々なことが思い浮かびますが、ラブホテルのシーンだったり、やはり初めてのことなので、難しいことが多かったです。
 
大東:僕らは仕事として色々な作品を経験していますが、明ちゃんは初めての現場ですから。よく明ちゃんが演じるユマの生き生きした表情が良かったという声をいただくので、それを伝えると「私は用意スタート!からカット!まで、監督から言われたことを演じるのに必死で、カメラが回っていることを精一杯生きることに必死だったんです」と答えてくれました。その一瞬一瞬に答えていくというのが、明ちゃんの作品との向き合い方であり、この作品がすごく生命力豊かになったのも、その姿勢からきているのではないか。それは、今回僕が明ちゃんからすごく教わったことでもあります。
また、HIKARIさんの演出は、日本で生まれ育った自分の価値観をすごく広げてくれました。一瞬一瞬に心を動かし、一瞬一瞬に詰め込む。僕への演出だけでなく、明ちゃんに演出しているHIKARIさんも含めて、全てがメッセージとして自分の糧になったと思います。
 
――――なるほど。撮影現場の熱気が伝わってきました。
HIKARI:うれしいですね。大東さんは、舞台の経験もありますし、まじめで一緒に仕事をしていてすごく安心できます。あとは役者さん同士や、監督の私とのキャッチボールでした。映画自体を良くするために彼も私に意見を言ってくれるし、明ちゃんも「これはちょっと、違うと思います」と教えてくれました。とにかく、駿介さんと明ちゃんは、現場でも一緒に演技をすることが多かったですから、二人にこちらも教えられましたね。
 
大東:HIKARIさんは、誰に対しても分け隔てなく、ものすごく人間っぽい方です。コミュニケーション能力が高くて、親戚ぐらいの身近な距離感で接してくれるので、すぐ仲良くなれる。以前、トーク番組の司会をされている先輩に「人から何かを引き出す時には、まず自分からさらけ出すこと」と言われたことがありますが、HIKARIさんがまさにそうです。打ち解けた人と仕事をする時、親しいからこその妥協点を見出そうとしてしまいがちなのですが、HIKARIさんは仕事に対して、非常に厳しかったですね。
 
 
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■演出は彫刻のようなもの。大東さんはいかに削いでいくか、明さんは少し付け加えてユマを見出す。(HIKARI監督)

――――具体的に監督からどんな指摘を受けたのですか?
大東:「この瞬間のことだけでなく、あなたがこの先役者をやって行く上で、絶対に苦しむから、今のうちに絶対考えて、直した方がいい」と。言葉としてはストレートすぎて、すごくダメージを食らうのですが、結果的にはすごく薬になる。インフルエンザの予防接種みたいに、注射されると翌日は熱を出したりするけれど、免疫がついて強くなるみたいな効果がありました(笑)
 
HIKARI:基本的に自然体で演じてもらうスタンスです。日本に限らず、役者さんはすごく勉強をして撮影に臨んでくれますから、今回も大東さんの中にすでにあるものをいかに削いでいくかを考え、俊哉を作り出していきました。明ちゃんは、彼女自身がピュアな状態ですから、少し付け加えたり、変えることでユマを見出していきました。
 
――――役者としての大東さんに期待を込めたアドバイスだったのですね。
HIKARI:オーディションの1年ほど前に、園子温監督に誘われた会でご一緒したのが初対面でしたが、大東さん自身も非常にオープンな方ですし、お互い大阪出身ということで意気投合し、その時から心を許し、言いたいことが言える関係ができていました。ただ撮影現場で俊哉を作りあげながら、今まで苦労してやっとここまで来たのだから、もっと高いところに行ってほしいという気持ちがありましたね。
 
 
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■平気で人を傷つける暴力的な生き方を選んでしまうのは、心の障害。(大東)

――――脚本を読んでの感想は?
佳山:当事者の方にたくさんインタビューをして書かれた脚本なので、リアリティがありますし、私としてはそのリアリティにぐっと来ました。
 
大東:人間は知らない人に対しては暴力的になれるので、知るということは救いになりますし、知らないことは他人を傷つける可能性を孕んでいます。平気で人を傷つける暴力的な生き方を選んでしまうのは、心の障害に近づくのではないでしょうか。映画バージョンでは描かれていないのですが、俊哉は過去に家族を失い、その原因が自分にあったかもしれないとずっと自分を責めている男です。考えても仕方がないので、人のために生きる道を選ぶべく介護士になった訳ですが、それでも前に進めずにいる。未来を知ろうとしないので、心の障害のように前に進めなくなってしまうのは、今の日本のムードでもあるし、自分にも刺さる気がしました。
 
この映画に参加し、試写で作品を見たことで、知らないという自分を肯定でき、ものすごく外の世界に興味を持つようになりました。世界が興味に溢れたような気分です。僕はこの映画を色々な人に届けたいし、映画は娯楽ではあるけれど、時にものすごいサプリメントのような力があると感じています。
 
――――渡辺真起子さんが演じた、ユマが自立するのをバックアップする障害者専門のデリヘル嬢、舞はとてもカッコよかったです。
HIKARI:私自身、日本人でありながら、人生の半分以上はアメリカにいるのですが、日本はすごく素敵だと思うのです。古くからの文化があり、食べ物は美味しいし、綺麗し、平和だし、安全だし、素晴らしいと思う一方、どうしても「きちんとしなければ」と思う人たちもたくさんいます。舞さんのようなデリヘル嬢も、世間的には軽んじられるような存在ですが、私は他人のことなど構う必要はないと思うのです。日本では大概の人が、他人が気になって仕方がないし、メディアも書き立ててしまう。舞の常連客である障害者にとって彼女は女神のような存在ですから、舞をカッコよく描きたかったですし、他人をジャッジすること自体間違っていると伝えたかったのです。
 
――――障害者を題材にした映画は、自己犠牲的な展開に陥りがちですが、本作は非常にポジティブなメッセージが込められています。
HIKARI:小さい頃から大人の嫌な部分もたくさん見て、「絶対こんな大人にならない!」という体験もしてきましたし、一方母子家庭でしたが祖父母をはじめ多くの周りの人に育ててもらう体験もしました。また家族が経営する鉄工所で体が不自由な従業員の方達もたくさんいたので、私も普通に接していました。障害者だからという隔たりを感じることがなかったのです。今回は障害者というだけでなく、女性や性のことを色々な人に理解していただければという思いがあります。
 
 
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■一歩踏み出したから成長できる、それが人生。(HIKARI監督)

――――18歳で渡米してからの体験も、映画に反映されているのですか?
HIKARI:20代はとても苦労し、嫌な目にも遭いましたが、そんな中でもまずは自分を愛し、他人に優しくなることを心がけていると、周りはそのエネルギーを感じ取ります。社会的な問題が世界中に渦巻く中、どうすれば愛に満ちた幸せな世界になるかと考えた時、映画を見て、ふっとポジティブな、明日は頑張ろうと思える作品に出会えると、私は嬉しいと思うのです。人を通して環境を良くし、この世の中を良くしていけるポジティブな作品を届けたいですね。
 
あとは、人生は選択で、こちらの道を選んだがために失敗をすることもありますが、ピンチは100%チャンスだと思うし、それを取って上に登るかどうかは自分次第なのです。自ら一歩を踏み出したユマがいるからこそ、俊哉に出会い、舞に出会い、全然違う場所にいて、精神的にも大きく成長している。凝縮していますが、それが人生であり、描きたかったことなんです。
 

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■「私の幸せ」から「色々な人の幸せ」にどんどん波動を広げてほしい。(HIKARI監督)

――――本作に取り組んで、障害者に対する見方は変わりましたか?
大東:僕も障害者の人が周りにいる環境だったので昔は意識していなかったけれど、大人になり、どう接していいか分からないという感覚がありました。でもこの映画に参加し、自分も当事者だと感じます。90年代終わりからゼロ年代にかけて、今の社会は良くないとSNSも拍車をかけ、自己否定や社会否定に走っていきましたが、令和前後の今は面白い現象が起きています。流行っているYoutuberも究極の自己肯定ですし、「社会が黒と白で闘っているなら、私は黄色でいい」というような人が出てきて、次世代は自分を認めるムードがある、すごくいい時代になってきていると思います。皆、他人のことを否定することに疲れているんですよ。自分だけの考えで動く時代に、実はなってきているのではないかと、僕なりに捉えています。
 
HIKARI:ワガママでいいし、謙虚が美徳なのは問題です。実際に「私なんて」と言う女子が多いのですが、いつかきっと「私が!」と爆発する時がくる。それが怖いのです。言霊と言いますが、響き、波動、言葉はとても大事で、自分から発することが大事です。言いたいことを言い、やりたいことをやる。自分が幸せなら、周りを絶対幸せにできます。「私なんて」と言わず、私のことを一番に考えてもいいぐらいです。私の幸せから、色々な人の幸せに、どんどん波動を広げてほしいですね。
(江口由美)
 
 

<作品情報>

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『37セカンズ』
(2019年 日本 115分)
監督:HIKARI
出演:佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦、萩原みのり、
宇野祥平、芋生悠、渋川清彦、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり、板谷由夏 
2月7日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト → http://37seconds.jp/

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(2020年2月4日(火)@TOHOシネマズ梅田)

登壇者:掛布雅之(64) 、松村邦洋(52)



阪神タイガース球団創設85周年記念映画

トラファン“鳥肌もの”絶品シーン満載!

 

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今年、創立85周年を迎える西の名門球団・阪神タイガース初の公式ドキュメンタリー映画『阪神タイガース THE MOVIE~猛虎神話集~』が完成し2月4日(火)、大阪・TOHOシネマズ梅田で完成披露試写会が行われた。“歴史を彩る名場面”の数々がシーズン開幕よりひと足早く猛虎ファンの喝采を浴びた(ナレーターは石坂浩二)。石橋英夫監督。全国公開は2月14日

 

完成披露には、映画のナビゲーターを務めたミスター・タイガース掛布雅之氏が登場、阪神ファンの松村邦洋も顔を見せ、吉田義男、江夏豊、田淵幸一ら阪神ゆかりの名選手をものまねで再現、映画の試写会とは思えない笑いと声援を集めた。猛虎 ファンの幅広さ、根強さを改めて感じさせた。

 

 
ZXR_2200 (2).JPG映画は掛布雅之、バース、岡田彰布の“歴史に残る”バックスクリーン3連発(1985年4月17日、対巨人)の偉業に始まり、奪三振王、江夏豊の延長11回、ノーヒットノーランの快投に自らのバットで決着をつけたサヨナラホームラン(1973年8月30日、対中日)など、トラファンなら“鳥肌もの”の絶品シーンがふんだん。

 
この内容に掛布氏も「阪神の長い歴史が分かる内容になっている。阪神が個の力から生まれたことが分かる」。掛布氏自身、昭和49年のドラフト6位(当時はテスト生)で入団。「体が小さい割にボクは頑張った」とちょっぴり自慢も。そこには(先輩・藤田)平さんが結婚式で、私が代理スタメンで出場、そのワンチャンスで4の4(4打数4安打)を打ちがっちりモノにした、離れ業もあったという。

 
tigers-550-1.jpgもうひとつ、忘れられないのがライバルでもある先代のミスター・タイガース、田淵幸一氏の存在。「私の場合、田淵さんが防波堤になってくれて“4番の責任”という負の部分を全部背負ってくれた。温室にいるようなものだった」と今でこそ分かる内輪話も披露した。ついでに、昨年4番を任された大山についても言及。「田淵さんのような存在がいれば違ったはず」と今年への期待を込めて話した。

 
tigers-550-2.jpg映画では初代・藤村富美男に始まる歴代ミスター・タイガース、吉田義男に始まる歴代名ショート、赤星憲広から昨年、台頭した近本まで俊足核弾頭、代打の必殺仕事人・川藤や近年まで活躍した檜山進次郎、昨年、大腸がんを克服し、復帰戦で快打を飛ばした原口まで、伝統と新しい神話も交えた「8つの神話で紡ぐ猛虎伝説」の90分をアピールしていた。


(元“トラ番”記者:安永 五郎)


【掛布雅之】1955年生まれ、新潟県出身。阪神タイガースでの現役時代から、阪神ファンやメディアの間で「4代目(あるいは3代目)ミスター・タイガース」と称される。


【松村邦洋】1967 年生まれ、山口県出身。日本史上の人物・タレント・プロ野球選手・政治家など幅広くものまねをしている。熱狂的な阪神タイガースファンである父親に影響され自身も大変な野球好きである。


 

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『阪神タイガース THE MOVIE~猛虎神話集~』

◆2020年製作/97分/日本 ◆監督:石橋英夫
◆ナビゲーター:掛布雅之、ナレーション・出演:石坂浩二、松村邦洋、佐藤隆太、千秋
◆配給:KADOKAWA  (C)2020「TIGERS THE MOVIE」製作委員会
◆公式サイト⇒ https://tigers-movie.com/

2020年2月14日(金)~全国TOHOシネマズ系などロードショー

 

 

 

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文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019」

日本の映画界を担う若手作家3作品を一挙初上映!!

ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019「合評上映会」


特定非営利活動法人映像産業振興機構(略称:VIPO、理事長:松谷孝征、東京都中央区)が、日本における商業映画監督の育成への取り組みとして、2006年度より企画・運営する、文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019」において、今年度の製作実地研修で完成した短編映画3作品の「合評上映会」が都内にて開催されました。


【日時】2月4日(火) 15:00~

【場所】丸の内TOEI ➀(東京都中央区銀座3-2-17)

【登壇】川崎僚監督、島田欣征監督、山中瑶子監督

阿部純子、田中沙依、藤崎絢己、南岐佐、根本真陽、外川燎、山田キヌヲ、伊東沙保


映像産業振興機構(VIPO)が企画・実施する「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019」で製作された短編映画3作品が、一般公開に先駆けて合評上映会でお披露目された。舞台挨拶に登壇した3 人の若手監督は、少し緊張しつつも観客の反応を楽しんでいる様子だった。


上映された3作品は、自主映画で注目を集めている川崎僚監督作『あなたみたいに、なりたくない。』、広告映像やPV、CGデザインなどを手掛けている島田欣征監督作『Le Cerveau -セルヴォ-』、そして独学で撮った処女作「あみこ」が、第68回ベルリン国際映画祭に史上最年少で招待された山中瑶子監督作『魚座どうし』の3作品。いずれも35ミリフィルムで撮影・編集された30分の短編。


合評上映会は、文化庁森孝之審議官の挨拶ではじまり「今回で14年目となるこの事業では日本映画を担う優れた映画作家の発掘と育成を目的としています。プロとの作業を通じて実践的な仕事を学び、今回の作品制作を通じて3人の監督たちが広く国内外で活躍されることを期待しています」とプロジェクトの概要を説明し、若手監督たちへのエールを送った。


1作品目の『あなたみたいに、なりたくない。』の川崎僚監督は、「35㎜フィルムでの撮影は緊張しました。フィルムの残りを考えながら撮るのが大変で、芝居で気持ちがノッてくるまでの演技も撮りたいけれど、そうするとフィルムが足りなくなってしまうので、何歩目にフィルムを回せば間に合う、というのを撮影部の人たちが計測してくれたり、工夫しながら撮影しました」とフィルム撮影ならではの苦労を語った。今後はどんな作品を撮っていきたいかを問われると「女性として生きることが苦しかったり辛かったり、性別に縛られることがあるので、そういったものから解放される、そして女性から共感されるような作品を撮りたいです。私の映画を観てお客さんの心が軽くなったり、勇気づけられるような映画を撮っていきたいです」と今後の目標を明らかにした。


続いて2作品目『Le Cerveau -セルヴォ- 』の島田欣征監督は「SFは時間とお金がかかるので日本では撮られる本数が少ないんですが、SFが好きなので今回はSFものに挑戦しました」と今回の作品テーマを選んだ理由を明かし、「今後はコメディや青春もの、原作本のあるものなどいろいろなものを撮ってみたいです。そして今回は短編だったので、長編にも挑戦してみたい。自分の好きな映画監督が世界中にいて、そういった監督たちが作った世界を自分もつくれるように頑張ります」と次回作への意気込みを語った。


3作品目『魚座どうし』の山中瑶子監督は、本作を撮った理由を「子供の映画をずっと撮ってみたかった。子供って何だろうって考えたときに、子供っていうのは大人に振り回されるものだなと考えたところからこの映画を書き始めました」と話し、小学4年生を主人公にした理由を「先生とか親とか、まわりの身近な大人が単なる役割ではなく、大人もひとりの人間なんだと自分で気付き始めたのがその頃でした」と明かした。これからについては「映画っていうのはなんだろうなってことを考え続けることを辞めずに、結局、全員他人だということを自分では重視しているけれど、可能ならできるだけ他者の心に寄り添える作品を作り続けていけたらいいなとおもいます」と今後の抱負を語った。


スーパーバイザーの香月純一氏は3人の若手監督それぞれに称賛のメッセージを送り、「3本ともバラエティに富んだ作品になったと思います。今後もこの3人の監督たちに活躍していって欲しいと思います。そのためには皆さんのご支援、ご声援が必要です。どうぞよろしくお願いいたします」と締めくくった。会場からは監督たちへの期待と共に温かい拍手が沸き起こり、合評上映会は好評のうちに幕を閉じた。


2020年2月21日(土)より、角川シネマ有楽町を皮切りに、名古屋(3/6〜)、大阪(3/13〜)にて一般公開

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「古典的なコメディ映画の笑いと潤いを劇場に届けたい」
『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』成島出監督インタビュー
 
太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが独自の視点で完成させ、大評判を呼んだ舞台「グッドバイ」が、成島出監督(『八日目の蟬』)により映画化された。『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』は、何人もの愛人に別れを告げようとする編集者、田島と、田島から偽夫婦のパートナーを頼まれた担ぎ屋キヌ子が奇想天外な企みを繰り広げる昭和20年代前半を舞台にしたコメディ映画だ。モテ男のはずなのに災難に巻き込まれてばかりの田島役を大泉洋、美貌の持ち主でありながら牛のように力持ちでカラス声の女、キヌ子役を舞台から引き続き小池栄子が演じる他、田島がグッドバイを告げる女たちには、水川あさみ、橋本愛、緒川たまきが扮し、「グッドバイ」の修羅場を笑いに変えるような演技で魅了する。体を張った笑いや、丁々発止のやり取り、アバウトすぎる占い師の予言と、笑いのツボがいっぱい。そして最後に大事なものを見つける二人に拍手喝采したくなるのだ。本作の成島出監督にコメディ映画に込めた思いや、女優、小池栄子の魅力についてお話を伺った。
 

 
――――近年、社会派作品が続いていましたが、今回、初監督作『油断大敵』以来となるコメディを撮られています。まず、コメディ映画に対する思いについて、お聞かせください。
成島:コメディでデビューした人間ですから、ずっとやりたいと思っていましたが、デビューしてからちょうど一回りして、ようやく実現できました。コメディはヒットするかどうかの当たり外れが激しく、企画を出しても大手は尻込みしてなかなかOKしてくれません。そんな中、最近組んで映画を撮らせていただいているキノフィルムズさんは、快諾してくださいました。キノフィルムズさんのような誠実な作り方をしてくれる会社のおかげで、企画が通りにくいオリジナル作品や、コメディーを世に出すことができ、私も非常に感謝しています。逆にそれがなければ、今の日本映画はスカスカで、自己のない映画ばかりになっていると思います。
 
 
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■好きだった太宰治のユーモア小説。ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの舞台「グッドバイ」で、初めて映画化したいと思った。

――――念願のコメディで「グッド・バイ」を選んだ理由は?その魅力を教えてください。
成島:僕は中学時代から太宰治のファンで小説をよく読んでいたのですが、彼の小説には陰と陽があります。「人間失格」に代表されるような陰のドロドロした世界と、もう一つは当時ユーモア小説と呼ばれたジャンルがあったのですが、太宰のユーモアは非常に面白く、ただ世間ではなかなか評価されていなかったのです。僕は、光が当たるような太宰の陽の部分が好きだったのです。「グッド・バイ」も太宰のユーモア小説で、未完に終わったものです。ケラさんの舞台は元々好きで、よく見させていただいていたことに加え、小池栄子さんがキヌ子を演じるということも相まって、どのようにあの原作を最後まで描いたのかと思い、2015年に舞台を観に行きました。すごく面白くて、劇場がわっと笑いで包まれる。最初は一緒に笑っていたのだけれど、終わる頃には羨ましいなと思い始めたのです。
 
――――「羨ましい」が、高いハードルだったコメディ映画への布石になったのですね。
成島:実は今まで舞台を映画化したいと思ったことは一度もなかったのですが、「グッドバイ」を観劇して、初めて映画にしたいと思いました。非常に古典的な50〜60年代のハリウッドや日本のコメディ映画に近い匂いを感じたので、そういう笑いを取り戻したい。この笑いを劇場に届けることができればいいなと。
 
 
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■『グッドバイ』に登場する女性は皆、自立していて、きっぷが良く、嫉妬しない。

――――田島がキヌ子に投げとばされたり、体をはったシーンも多く、コメディならではの魅力が出ていました。
成島:この映画は本当に女が強くて、それに僕はすごく惹かれています。この女性たちは皆自立しているんです。特に、キヌ子は孤児なのに、体を張って担ぎ屋をし、自分が稼いだお金でオシャレをし、映画を楽しむ。だけど恋愛はしたことがない。そんなキヌ子はかっこいいじゃないですか。10人の未亡人と田島のような男の話だったら、嫉妬まみれになるだろうけれど、『グッドバイ』に登場する女性たちは皆、きっぷが良くて、嫉妬しない。それが現在の女性に通じるし、僕自身、そういう女性が好きなんだと思います。『八日目の蟬』にも通じますが、僕の映画は女が強くて、男がダメ。そういうパターンですよね。
 
――――最初、キヌ子の泥だらけの風貌だけでなく、野太い声に驚きました。
成島:太宰の原作にキヌ子はカラス声で、牛のような力持ちと書いてあり、小池栄子さん以外は演じられない役だと思っていました。実際にあの声を出すのは、本当に喉に負担がかかって、大変なんです。小池さんは舞台でそれをずっとやっていましたからね。最初のカラス声はすごいのですが、だんだん、声が澄んでくるので、カラス声も少しずつコントロールしていました。キヌ子からはじまり、女性陣は皆、それぞれしかできない役として演じてくれましたし、やはりそこを楽しんで見ていただければと思います。
 
――――田島役は大泉洋さんありきのキャスティングだったのですか?
成島:そうです。大泉さん独特の軽やかさや、いじられキャラであるところ、またちょっと甘ったれたり、ちょっとわがままな感じなど、彼のいいところを活かして、田島役を作り上げてくれましたね。
 
――――田島の部下で、田島の妻を演じるキヌ子に一目惚れする清川役の濱田岳さんも、純情男から一気にキャラクターが変わり、見事な振り切りぶりです。
成島:濱田岳さんは本当に達者な方で、笑えるのだけれど自然で嫌味がない。普通、口元でズラリと並んだ金歯がキラキラするとわざとらしくなってしまうけれど、彼の場合、キャラクターとして成立する。さすがです。西田敏行さんのはまり役だった『釣りバカ日誌』ハマちゃんをドラマ版で演じていますし、これからが楽しみな若き名優ですね。
 
 
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■心に潤いを感じ、朗らかな気持ちで過ごしてもらえる映画が、ギスギスしている現在には必要。

――――田島は人たらしで、彼が招いた男女の修羅場を笑いの力でコメディにしてしまう。そんなパワーがこの作品の魅力です。人たらしは、愛すべきキャラクターと捉えられていましたが、今はむしろ描きづらくなってしまったのでは?
成島:今は犯罪を犯したわけではないのに、世間の叩き方が尋常ではないと感じます。僕も辛辣な作品を撮ってはきていますが、できるだけ狭い範囲のことだけを描かないように腐心しています。狭い範囲で、深掘りする作品はもちろんあってもいいけれど、それだけでは辛すぎる。だからそろそろ『グッドバイ』みたいな作品を撮りたいという気持ちになったのです。日本にはかつておおらかな時代があったのに、寅さんみたいな職業の風来坊も、今リアルにいたとしたら、きっと付き合ってはいけない世界の人ですよね。全体的にギスギスして潤いがなくなった世の中で、この映画を観ている時ぐらいは、心に潤いを感じたり、朗らかな気持ちで過ごしてもらいたい。それは、企画の段階から思っていました。
 
 
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■チャップリンや小津安二郎のように色褪せない、きちんとしたコメディを届けたい。

――――賢く企んでいるようで、なかなかうまくいかない田島と、全然男のことを信頼もあてにもしていないけれど、払いが良ければ女房役を意気揚々とやってくれるキヌ子。どちらも人間臭さが際立ち、笑いを呼ぶ絶妙のコンビでした。
成島:笑うというのは人間にとって大事なのです。テレビで提供されるのはどうしても短い笑いなので、劇場で映画を観る2時間で、クスクスから始まり、ゲラゲラとなって、最後はドカンとくる、映画独特の笑いの世界を閉じたくない。チャップリンや小津安二郎のような古典は、映画の原点です。小津さんのユーモアは今観ても色あせませんよね。1年ぐらいで忘れられるようなシチュエーションコメデイではなく、きちんとしたコメディとして、お客様に届けばいいなと願っています。
 
――――田島に声をかける占い師が何を聞かれても「大体…」とアバウトな予言をするのが、この映画のおおらかさ、しいてはもっとおおらかに生きていいのかと思わせる、パワーワードのように思えました。
成島:そうですね。「大体」がこの映画のテーマです。「あの戦争で何百万人も殺されて…」というのが今のドラマですが、「大体、あの戦争からだね〜」という第一声で始まる映画を撮りたかったんです。
 
 
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■往年のイタリア女優のようなスケール感がある小池栄子。キヌ子は彼女でなければ演じられない役。

――――本作は小池さんが主演の映画を撮りたいという狙いもあったそうですが、何度も映画でタッグを組み、今回主演、キヌ子を演じた女優、小池栄子の魅力とは?
成島:『八日目の蟬』で一緒に仕事をしてから、この作品で5本目と成島組の常連のように出ていただいていますが、仕事をするたびに尊敬できる方です。小池さんは本当に努力家で、絶対にサボらない。それに、日本の女優にはあまりないようなスケール感があります。あんなにウエストの細い女性でありながら、「牛のような女だ」と言われて成立するところとか、ソフィア・ローレンなど往年のイタリア女優のようなスケール感がある。だから、女優として幅広いのです。キヌ子も絶世の美女でありながら、泥だらけの女でもあり、カラス声も含めて小池さんでなければ演じられない役だと思います。
 
 
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■至福感に溢れていた撮影現場。スクリーン越しにお客様に伝われば。

――――小池さん演じるキヌ子を含め、役者の演技や美術、衣装など色々な意味で、とても芳醇なコメディですね。
成島:舞台でずっと演じ、作ってきたキヌ子がすでに小池さんの中に出来上がっていたので、今回の撮影は楽しかったですね。小池さんも「いつも監督はしかめっ面をしているけれど、今回はニコニコしていたのでうれしかった」とインタビューで答えていたそうで、キャスト、スタッフのみんなも至福感に溢れていたと思います。ラストの撮影が最終日でしたが、皆幸福感に満ちていました。それがスクリーン越しにお客様に伝わればうれしいですね。やはりお客様が何となく幸せな気分になって、劇場を出てもらうのは、作り手として何よりもうれしいことですから。
(江口由美)
 

 
『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』(2019年 日本 106分) 
監督:成島出
原作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ(太宰治「グッド・バイ」より)
出演:大泉洋、小池栄子、水川あさみ、橋本愛、緒川たまき、木村多江、濱田岳、松重豊他
2020年2月14日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト⇒http://good-bye-movie.jp/
(C) 2019「グッドバイ」フィルムパートナーズ
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初演技で主演の佳山明、「みなさんの愛に包まれました」と感謝
『37セカンズ』舞台挨拶
(2020.2.2 大阪ステーションシティシネマ)
登壇者:HIKARI監督、佳山明、大東駿介 
  
 脳性麻痺で体が不自由な女性、ユマが、母の束縛や親友に依存される環境から抜け出し、新しい可能性に向かって歩み出す姿を描き、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にて日本人初の観客賞と国際アートシネマ連盟賞パノラマ部門をW受賞した感動のヒューマンドラマ『37セカンズ』が、2月7日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショーされる。
 
 
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 2月2日、大阪ステーションシティシネマで行われた舞台挨拶付き先行上映会では、HIKARI監督、佳山明、大東駿介が登壇。「明ちゃん!」と客席から声援が飛び交い、大阪出身者が勢揃いした舞台挨拶ならではの温かい雰囲気に包まれた。
 
 

■真夏の45日間の撮影、「みなさんの愛に包まれました」(佳山)

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 クランクインは2018年7月。まずは非常に暑い中45日間撮影したことを振り返り、「(オーディションで)明ちゃんに会ったのは真冬だったので、体力が持つか心配しましたし、初長編映画で長い撮影にどうなるかと思いましたが、素敵な俳優たちと一緒で楽しくて仕方なかった。順撮りで、2日目にお風呂場シーンを撮影し、最初に服を脱ぐ演技をさせてしまったけど、頑張ってくれ、明ちゃんの愛に包まれました」とHIKARI監督が讃えると、佳山も「天気はものすごく暑く、みなさんも熱く、暖かかったです。みなさんの愛に包まれました」と回想。佳山演じるユマを支える介護福祉士の俊哉を演じた大東は「明ちゃんを抱っこしているとTシャツがビショビショになりますが、霧吹きではない本物の汗が(映画に)残っています。フィクションだけど、いかに本当の状態を残せるか。監督もすごくそれを見ていたし、求められました。毎日、感慨深い現場でした」
 
 
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■カメラの位置にこだわり、「ユマの考えていること、体験していることを観客も一緒に体験する」(HIKARI監督)

 高校卒業後渡米し、南カリフォルニア大学院(USC)映画芸術学部にて映画・テレビ制作を学んだHIKARI監督。特に撮影には強いこだわりがあったという。
「求めているものがある、とても明確な方なので、現場がとても健康的だと思います。プロのカメラマンが作ったアングルを平気で変えるのですが、本当にどう切り取りたいというものが見えているんです」と大東が撮影へのこだわりを明かすと、HIKARI監督は、「車椅子女子の物語で、普通は障害者のことを壁を1枚隔てて見てしまいますが、(映画では)カメラの位置はユマの位置で進みます。最初は第三者的ですが、気がついたら彼女のそばにいて、考えていること、体験していることを観客も一緒に体験する。私もカメラマンなので、そこはこだわり、1cm単位でカメラ位置を上げることもありました」と、車椅子に乗るエマの目線で描く狙いを語った。
 
 

■「ユマから本物の心や魂が飛んできたので、今も現場では本物を常に意識している」(大東)

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 本作のオーディションを受け、初めて演技をしたという佳山は、「わからないことだらけからのスタートでしたが、監督筆頭に、みなさんにたくさん支えていただいた現場があり、この映画があり、今がある。それを改めて思います」と監督や俊哉役の大東をはじめとするキャストに感謝を伝えた。オーディションを振り返ったHIKARI監督は、「すごくピュアなところが魅力的。(演技を)何もやったことがないところに、すごく新鮮さを感じました。どう反応したらいいかわからないぐらい計算がない。そのままの明ちゃんをユマとして映画に映したいと思いました」と、一目惚れだった様子。
さらに大東は、「現場で(演じる上で)助けてあげたいと思っていましたが、結果的にものすごく救われました。初日、一緒に芝居をしたときに、グッと引き締まる気がしました。映画はその人の心の奥が写りますから、脚本の芝居をしようとすると浮くような違和感があるんです。作品に入る前に俊哉に近づける準備をしていましたが、(ユマから)本物の心や魂が飛んできたので、今も現場では常に意識しています。本物を作る作業は絶対手を抜いてはいけないですね」と、佳山との共演から大きな影響を受けたことを明かした。
 
 

■「NHKのテレビバージョンでは、映画では見えない俊哉の姿が見える」(HIKARI監督)

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 介護福祉士の俊哉役の大東とは、園子温監督に招かれた会で知り合った飲み友達だというHIKARI監督。直接電話し、俊哉役のオーディションに声をかけたという。そんな俊哉の物語について「撮影したものを全部つなげると3時間45分あるのですが、削る編集の中で、俊哉が抱えているものがすごくカットされています。その中で、大東君は微妙なニュアンスをすごく丁寧かつ不器用な感じで演じてくれました。最終的にはユマのストーリーにフォーカスして編集していますが、NHKのテレビバージョンでは、映画では見えない俊哉の姿が見えます。俊哉も過去に家族を失い、次に進みたいけれど進めない。ユマが前に行くのをサポートする中で、気がつけば自分も進んでいたのです」とバックストーリーを披露。一方、大東は「『気持ちの面で作っている表現はわかるけれど、体がまだ俊哉になれていない』と、ど直球の怒られ方をし、2日寝込むぐらいの衝撃を受けました」。
 
 
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最後に、
「この作品に参加して、映画ってすごいなと思いました。映画体験を経て劇場を出たら、少し世界が変わっている。劇場を出た後の世界にすごくいい影響を与える作品です。僕自身もすごく影響を受けましたし、希望に満ちた明日に向かっていければと心から思います」(大東)
「本日は見ていただいてありがとうございます。役者のみなさん、スタッフのみなさんに支えてこの作品があります。色々な思いがありますが、温かく愛していただけたらうれしいです」(佳山)
「脚本を書き始めて4年ぐらい。アイデアは色々なところから拾って書き進めました。毎年脚本を書いては、また書き直し、この作品は7版目ですが、これは絶対に外に出さなくてはと腹をくくりました。私の中では、一人の女性の成長期です」(HIKARI監督)
 
と挨拶し、再び大きな拍手で包まれた舞台挨拶。愛に包まれた撮影から生まれた、愛と勇気と冒険に満ちたヒューマンドラマの撮影現場の熱気に触れることができた時間だった。ユマと過保護すぎる母親との関係や、ゴーストライターに甘んじるしかなかった立場からの脱却を目指す姿、障害者女性の性についても描写し、それらと向き合う中で成長していくユマの姿を、ぜひ劇場で目撃してほしい。
(江口由美)
 

<作品情報>
『37セカンズ』
(2019年 日本 115分)
監督:HIKARI
出演:佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦、萩原みのり、
宇野祥平、芋生悠、渋川清彦、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり、板谷由夏 
2月7日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト → http://37seconds.jp/
 
 
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日本初、刑務所で行われている新しい更生プログラムとその受講生に密着した『プリズン・サークル』坂上香監督インタビュー
 
 『ライファーズ 終身刑を超えて』(04)、『トークバック 沈黙を破る女たち』(13)とアメリカの刑務所内部や、受刑者、元受刑者を取材したドキュメンタリー作品を発表し続けている坂上香監督。その最新作『プリズン・サークル』は、初めて日本の刑務所にカメラを入れ、処罰から回復へと変わろうとしている新しい刑務所の取り組みや、そこで自分の過去や罪と向き合い、新しい価値観を身につけていく受刑者たちを映し出す秀作ドキュメンタリーだ。
 
 

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 舞台となるのは、島根あさひ社会復帰促進センター(以下、島根あさひ)。施設運営の一部を民間事業者に委託し、犯罪傾向の進んでいない男性受刑者を対象にした刑務所だ。この島根あさひでは、セラピューティック・コミュニティ(以下、TC)の中でも世界的に知られるアミティのTCユニット(更正に特化したプログラム)を日本で初導入している。受刑者の中から希望者が面接やアセスメントを経て受講を許可され、30〜40名が半年〜2年にわたって、週12時間程度のTCユニットを受けている。刑務所内では受講者や担当スタッフとの会話すら禁じられる中、4名の受刑者への定期的なインタビューと、TCユニット活動を通じて、受刑者たちが自己と向き合い、コミュニケーションや信頼関係が生まれることで、封じ込めていた過去やトラウマを語り、しいては自分が犯した罪について真摯に省みるようになる。日常の刑務所生活や、出所したTC受講生OBがスタッフと集まり、実社会での体験を語り合う様子も映し出され、実社会に戻ってからも居場所があることの意義が伝わってくる。
 
 2月8日(土)から第七藝術劇場、京都シネマ、3月7日(土)から元町映画館で公開されるのを前に、本作の坂上香監督にお話を伺った。
 

 

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■『ライファーズ』が新しい更生プログラム導入のきっかけに。

―――坂上監督の『ライファーズ 終身刑を終えて』がきっかけで、島根あさひに日本初となるTCユニットが導入されたそうですが、作品の内容や導入経緯を教えてください。
坂上:アメリカのセラピー的コミュニティーやプログラムがいくつかある中で、刑務所内の更生プログラムとして民間団体「AMITY(アミティ)」が、TC/セラピューティック・コミュニティ(回復共同体)を実施しています。出所した人が一時身を寄せる場もあり、そこから社会復帰をしていくケースもありますし、刑務所にいた人が、今度はスタッフとして刑務所で働き、更生プログラムに携わるという循環もあります。『ライファーズ 終身刑を終えて』はそれらを描き出した、当事者やスタッフが主人公の映画でした。これから新しく作る刑務所プロジェクトに加わっておられた民間企業の方が、偶然この映画をご覧になり、大きな衝撃を受けたそうです。
 
個人的には、日本の刑務所は規律が行き届きすぎているので、TCユニットで大事な「語る」ことが、本当に心の底をさらけ出すところまで到達しないのではないかと懸念していました。まずは一般社会でTCをスタートさせ、ある程度の結果が出てから、刑務所のプログラムに取り入れた方がいいのではないかと思っていたのです。一方、企業の方は、イギリスやフランスなど他国の刑務所プログラムとアミティのプログラムを比較したり、実際に関係者がアミティのプログラムのトレーニングを受けた結果、日本でもできると判断されたそうです。
 
―――日本でいきなり刑務所からアミティのプログラム、TCユニットをスタートさせるということは、相当画期的なことだったのですね。
坂上:やはり民間の方が入ってこられたのは大きかったと思います。2009年、島根あさひを3日間見学させていただき、民間スタッフの方がとても頑張っておられ、受刑者と対等に接していますし、こんなことができるのかという驚きが大きかったです。スタッフのミーティングにも参加させてもらう機会があり、驚きが確信に変わり、社会の人にも知ってもらいたい、何があっても頑張るという気持ちが湧き上がりました。
 
さらに驚いたのが、受刑者が刑務所に入所した時、最初のプログラムが『ライファーズ』を観ることだったのです。TCユニットを見学させてもらった時も、今まで顔も見せてもらえなかったのに、皆、顔を出していて、私が受刑者のグループに入ると「質問があります」と手が上がったのです。映画の主人公が釈放されたかどうかという問いでした。私も本当に驚き、言葉に詰まりながら「釈放・・・されました」と答えると、大きな拍手が起きたのです。受刑者のみなさんが、本当に一生懸命に取り組み、語っている姿にもほだされましたね。
 
 
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■フリーランスへの高い壁、撮影中も困難続き。それでも諦めなかったのは「この社会に対する違和感の強さ」

―――自分の作品を受刑者の人たちがプログラムで既に観て、質問してくれるというのは、感動的ですね。撮影開始までに、フリーランスであることがハードルになったそうですが。
坂上:テレビ局の仕事であれば、カメラを持って入り、ちょっと映すぐらいのことはすぐにできると思いますが、私はフリーランスで、しかも映画なので「前例がない」と企画書も受け取ってもらえませんでした。民間のスタッフにも協力を仰いだ結果、2010年から5年間、定期的にTCの講師に招いていただき、ワークショップをしに島根あさひへ通っていました。4年ぐらい経った時、理解のある所長が着任され、6年目に企画を通していただきました。撮影が決まると同時に受刑者と話すことは禁じられたのですが、翔君や真人君は当時のワークショップ参加生なので、あらかじめ信頼してくれていたんだと思います。半年後、撮影で訪れると最初は静かだった翔君がTCでリーダー的役割を果たしていて、その成長ぶりにびっくりしました。
 
―――実際の撮影はどれぐらいかかったのですか?
坂上:2年間で、毎月通っていました。撮影の時も刑務官がぴったりと付き添い、ファインダーを覗いたりするので、カメラマンもかなり大変だったと思います。実際に現場では、受刑者のみなさんだけでなく、スタッフとも話をしてはなりません。話す時は必ず刑務官が立ち会う決まりになっているのですが、元々スタッフとは知り合いなので思わず話しかけて怒られることもよくありました。特に私一人で撮影するときは、服装まで細かく指摘され、質問をかわされることも多かったです。撮影以外は指定の部屋で待機しなければいけならず、本当に大変でした。
 
―――制限の多い撮影を乗り切ることができた、一番の原動力は?
坂上:今回は、受刑者の人とコミュニケーションを取れない、ドキュメンタリーを撮るのに信頼関係が築けないのは大きなハンデでした。2〜3ヶ月に1回しかインタビューできない状態で、なぜ頑張れたのかと言えば、この社会に対する違和感が強かったからです。島根あさひで撮影していることも公にできなかったので、クラウドファンディングもできず、自分たちだけで資金を賄うしか術がなかった。それでも応援してくださる方がいて、ここまで頑張ってきたのに悔しいじゃないですか。最後の4ヶ月で体制が変わり、新しい所長が着任すると、話すことを禁じられたがためにコミュニケーション不足になってしまったスタッフとの間に入って、調整役をしてくださり、なんとか撮影を終えることができました。
 
 
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■隔離された場所にいる受刑者たち。「自分たちを見てくれる人が来るのは、誰であってもうれしい」

―――TC参加者は、撮られることをどのように感じていたのでしょうか?
坂上:私たちは現場で妙にかしこまらないようにしていました。アイスブレイクの時間では、参加者が話したことに対し、笑うこともあり、TCのメンバーはそういう私たちの反応を見て安心したという声もありました。また、隔離された場所で、家族ですら面会に来るのが難しいので、誰でもいいから外部の人たちが来てくれる、自分たちを見てくれる人が来るとうれしいとも語ってくれました。なにせ、私たち毎月行っていましたから。他にも、事情があり、映すことがNGだった受刑者がいたのですが、出所の時、建物の出入り口で私を見つけ、事情があって協力はできなかったけれど、映画の完成を楽しみにしています」とわざわざ挨拶に来てくれ、感動して握手したこともありました。
 
―――TCでは犯罪加害者と被害者になってマンツーマンで議論するロールプレイングや、子どもの頃からの家族や対人関係を書き出して発表するなど、様々なプログラムがあり、参加者自身が進行するなど、自分を振り返り、コミュニケーション能力を高める工夫がされていますね。
坂上:支援員だけが教えるだけでなく、自分たちも教える立場に立ち、事前にしっかり準備をし、余暇時間にチームで集まってディスカッションをしたり、スタッフに助言をもらったりと、大学のゼミ発表をするような感じです。
 
―――それらの活動を重ねることで、自分の中で封をしていた痛みや過去を自らの言葉で語っています。卓也さんも「親に抱きしめられた記憶がない」と語っていましたが。
坂上:卓也君は家族のルールを話す時に最初は黙っていました。トラウマが重すぎて、記憶をどこかに押しやってしまっていました。ただ、何人かで話していると思い出したり、記憶がつながってくる。一人や二人ではできないことで、何人かで話をするからできることです。彼はわざと、さらっとした口調で話すのですが、逆にそうしなければキツすぎて生きていけなかったのかと思わされました。
 
 
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■「TCのおかげで息子が変わった」映画を観た元受刑者のご家族の意見に感動。

―――刑務所を出所後の交流についても野外でのバーベキューと、室内での活動を映し出しており、実社会に戻ってからの居場所がどれだけ必要であるかを映し出しています。
坂上:刑務所でアドバイザーもしておられる大阪大学大学院教授の藤岡淳子先生が立ち上げた「くまの会」というクローズドのFacebookぺージに元々参加しており、企画が立ち上がる前から参加し、撮影もさせていただいていました。全員から顔を出していいかどうかの確認書をもらうのですが、半分以上は顔出しNGだったのです。でも関係者向け試写会で映画を観ると、大体はOKしてくれました。実際に、最後まで家族のために顔出しを渋っていた人がいたのですが、結局、腹をくくってくれOKをくれました。試写会で家族が映画をご覧になり、「息子が映画に出て良かった。TCのおかげで息子は変わり、TCの仲間が今でも息子を励ましてくれています」と。そのご意見を聞いて泣きそうになりました。
 
―――室内でもかつてのTCのように輪になり、出所して仕事に就いたものの、続けることに難しさを感じているメンバーに先輩が厳しく意見するシーンもあり、TCでつながる仲間だからこそのアドバイスだと痛感しました。
坂上:室内のディスカッションで「俺たちは証人だからな」と言いますが、それは刑務所時代にTCで同じように仲間が活動を通じて、今まで思い至らなかったような感情が生まれたことに気づき、周りもその証人になるという体験をしてきたからこそ出た言葉です。映画の中でも象徴的な部分でした。
 
 
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■刑務所の中だけではなく、実社会と地続きの問題。TCのように本音を語れる場所がもっと必要。

―――刑務所でこのような取り組みが行われているということを、本作を通して多くの方に知っていただきたいですね。
坂上:刑務所の話ですが、実社会と地続きの問題だと思っています。ただ統制を取るべく、厳しくしていくのではなく、TCのように本音を語れる場所をもっと作った方がいいですし、そういう場所があれば、刑務所に入所する人は減るのではないでしょうか。
 

<作品情報>
『プリズン・サークル』(2019 日本 136分)
監督・制作・編集:坂上香
アニメーション監督:若見ありさ
2020年2月8日(土)から第七藝術劇場、京都シネマ、3月7日(土)から元町映画館他全国順次公開
公式サイト → https://prison-circle.com/
※京都シネマ 2月8日(土) 9:55の回上映後、坂上香監督が登壇予定。
第七藝術劇場 2月8日(土)12:20の回上映後、坂上香監督が登壇予定。
2月9日(日)12:20の回上映後、藤岡淳子さん(大阪大学大学院教授)、坂上香監督、特別ゲストが登壇予定。

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