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初演技で主演の佳山明、「みなさんの愛に包まれました」と感謝 『37セカンズ』舞台挨拶

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初演技で主演の佳山明、「みなさんの愛に包まれました」と感謝
『37セカンズ』舞台挨拶
(2020.2.2 大阪ステーションシティシネマ)
登壇者:HIKARI監督、佳山明、大東駿介 
  
 脳性麻痺で体が不自由な女性、ユマが、母の束縛や親友に依存される環境から抜け出し、新しい可能性に向かって歩み出す姿を描き、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にて日本人初の観客賞と国際アートシネマ連盟賞パノラマ部門をW受賞した感動のヒューマンドラマ『37セカンズ』が、2月7日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショーされる。
 
 
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 2月2日、大阪ステーションシティシネマで行われた舞台挨拶付き先行上映会では、HIKARI監督、佳山明、大東駿介が登壇。「明ちゃん!」と客席から声援が飛び交い、大阪出身者が勢揃いした舞台挨拶ならではの温かい雰囲気に包まれた。
 
 

■真夏の45日間の撮影、「みなさんの愛に包まれました」(佳山)

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 クランクインは2018年7月。まずは非常に暑い中45日間撮影したことを振り返り、「(オーディションで)明ちゃんに会ったのは真冬だったので、体力が持つか心配しましたし、初長編映画で長い撮影にどうなるかと思いましたが、素敵な俳優たちと一緒で楽しくて仕方なかった。順撮りで、2日目にお風呂場シーンを撮影し、最初に服を脱ぐ演技をさせてしまったけど、頑張ってくれ、明ちゃんの愛に包まれました」とHIKARI監督が讃えると、佳山も「天気はものすごく暑く、みなさんも熱く、暖かかったです。みなさんの愛に包まれました」と回想。佳山演じるユマを支える介護福祉士の俊哉を演じた大東は「明ちゃんを抱っこしているとTシャツがビショビショになりますが、霧吹きではない本物の汗が(映画に)残っています。フィクションだけど、いかに本当の状態を残せるか。監督もすごくそれを見ていたし、求められました。毎日、感慨深い現場でした」
 
 
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■カメラの位置にこだわり、「ユマの考えていること、体験していることを観客も一緒に体験する」(HIKARI監督)

 高校卒業後渡米し、南カリフォルニア大学院(USC)映画芸術学部にて映画・テレビ制作を学んだHIKARI監督。特に撮影には強いこだわりがあったという。
「求めているものがある、とても明確な方なので、現場がとても健康的だと思います。プロのカメラマンが作ったアングルを平気で変えるのですが、本当にどう切り取りたいというものが見えているんです」と大東が撮影へのこだわりを明かすと、HIKARI監督は、「車椅子女子の物語で、普通は障害者のことを壁を1枚隔てて見てしまいますが、(映画では)カメラの位置はユマの位置で進みます。最初は第三者的ですが、気がついたら彼女のそばにいて、考えていること、体験していることを観客も一緒に体験する。私もカメラマンなので、そこはこだわり、1cm単位でカメラ位置を上げることもありました」と、車椅子に乗るエマの目線で描く狙いを語った。
 
 

■「ユマから本物の心や魂が飛んできたので、今も現場では本物を常に意識している」(大東)

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 本作のオーディションを受け、初めて演技をしたという佳山は、「わからないことだらけからのスタートでしたが、監督筆頭に、みなさんにたくさん支えていただいた現場があり、この映画があり、今がある。それを改めて思います」と監督や俊哉役の大東をはじめとするキャストに感謝を伝えた。オーディションを振り返ったHIKARI監督は、「すごくピュアなところが魅力的。(演技を)何もやったことがないところに、すごく新鮮さを感じました。どう反応したらいいかわからないぐらい計算がない。そのままの明ちゃんをユマとして映画に映したいと思いました」と、一目惚れだった様子。
さらに大東は、「現場で(演じる上で)助けてあげたいと思っていましたが、結果的にものすごく救われました。初日、一緒に芝居をしたときに、グッと引き締まる気がしました。映画はその人の心の奥が写りますから、脚本の芝居をしようとすると浮くような違和感があるんです。作品に入る前に俊哉に近づける準備をしていましたが、(ユマから)本物の心や魂が飛んできたので、今も現場では常に意識しています。本物を作る作業は絶対手を抜いてはいけないですね」と、佳山との共演から大きな影響を受けたことを明かした。
 
 

■「NHKのテレビバージョンでは、映画では見えない俊哉の姿が見える」(HIKARI監督)

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 介護福祉士の俊哉役の大東とは、園子温監督に招かれた会で知り合った飲み友達だというHIKARI監督。直接電話し、俊哉役のオーディションに声をかけたという。そんな俊哉の物語について「撮影したものを全部つなげると3時間45分あるのですが、削る編集の中で、俊哉が抱えているものがすごくカットされています。その中で、大東君は微妙なニュアンスをすごく丁寧かつ不器用な感じで演じてくれました。最終的にはユマのストーリーにフォーカスして編集していますが、NHKのテレビバージョンでは、映画では見えない俊哉の姿が見えます。俊哉も過去に家族を失い、次に進みたいけれど進めない。ユマが前に行くのをサポートする中で、気がつけば自分も進んでいたのです」とバックストーリーを披露。一方、大東は「『気持ちの面で作っている表現はわかるけれど、体がまだ俊哉になれていない』と、ど直球の怒られ方をし、2日寝込むぐらいの衝撃を受けました」。
 
 
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最後に、
「この作品に参加して、映画ってすごいなと思いました。映画体験を経て劇場を出たら、少し世界が変わっている。劇場を出た後の世界にすごくいい影響を与える作品です。僕自身もすごく影響を受けましたし、希望に満ちた明日に向かっていければと心から思います」(大東)
「本日は見ていただいてありがとうございます。役者のみなさん、スタッフのみなさんに支えてこの作品があります。色々な思いがありますが、温かく愛していただけたらうれしいです」(佳山)
「脚本を書き始めて4年ぐらい。アイデアは色々なところから拾って書き進めました。毎年脚本を書いては、また書き直し、この作品は7版目ですが、これは絶対に外に出さなくてはと腹をくくりました。私の中では、一人の女性の成長期です」(HIKARI監督)
 
と挨拶し、再び大きな拍手で包まれた舞台挨拶。愛に包まれた撮影から生まれた、愛と勇気と冒険に満ちたヒューマンドラマの撮影現場の熱気に触れることができた時間だった。ユマと過保護すぎる母親との関係や、ゴーストライターに甘んじるしかなかった立場からの脱却を目指す姿、障害者女性の性についても描写し、それらと向き合う中で成長していくユマの姿を、ぜひ劇場で目撃してほしい。
(江口由美)
 

<作品情報>
『37セカンズ』
(2019年 日本 115分)
監督:HIKARI
出演:佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦、萩原みのり、
宇野祥平、芋生悠、渋川清彦、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり、板谷由夏 
2月7日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト → http://37seconds.jp/
 
 

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