レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2021年2月アーカイブ

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骨太ヒューマンドラマ『ひとくず』がシネコンで拡大公開!上西監督、木下ほうかに「次はラスボスでがっつり!」
(2021.2.19  なんばパークスシネマ)
登壇者:上西雄大監督、木下ほうか、徳竹未夏、古川愛
 
 
 子ども時代に虐待を受けた者が、虐待する側にまわる負の連鎖に着目し、孤独な魂が寄り添い、家族になるまでの日々を人間味たっぷりに描く上西雄大監督作『ひとくず』。昨年の3月に東京公開されたものの、コロナウィルス感染拡大の緊急事態宣言で上映が中断し、京阪神での公開も10月に大幅にずれ込んだものの、作品を見て感動した観客が『追いくず』という熱烈なリピーターになり、第七藝術劇場の上映終了後もセカンドランのシアターセブンで3か月に渡るロングラン上映を続けている。今年に入って東京、神戸、京都でのアンコール上映に続き、全国拡大公開も始まり、遂にお膝元のなんばパークスシネマで上映が始まった。なんばパークスシネマ公開初日(2/19)に上西雄大監督、木下ほうかさん、徳竹未夏さん、古川愛さんを迎えて行われた舞台挨拶の模様をご紹介したい。
 
 
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 主人公の母親役の徳竹未夏さんと娘を虐待する母親役の古川藍さんの二人が司会役となった舞台挨拶では、感染拡大防止で50%の減席ながら最大スクリーンでの上映でリピート13回の『追いくず』なども含めて200人を越える満席の客席と、今までにないシネコンの巨大なスクリーンを見て上西監督は感極まった様子で最初の挨拶。その様子を見た木下ほうかは「1シーンしか出ていません。気まずい、なんで呼んだん?」と吉本新喜劇ばりの絶妙なツッコミで笑いを呼んだ。
 
 
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 そんな木下にオファーした経緯を聞かれた上西監督は、「劇団員の前で『木下ほうかさんに出てもらいたい』と言ったとき、夢のような話だと思って誰も信じなかった。ほうかさんに脚本を読んでもらい、最後に『がんばろう』と握手して言ってもらえたんです。ここまでこられたのは木下ほうかさんのおかげ」と木下に感謝の言葉を伝えると、木下も「小規模の映画で3月から上映が開始され、1年以上続いて、こんなにでっかいスクリーンで!というか画質大丈夫(笑)。次もどんどん新作撮れる、それはもっと目立つ役で!」と同作の拡大公開を心から喜びながら再タッグをリクエスト。上西監督も「次はラスボス役でがっつり!」ともはや息ピッタリのコンビぶりをみせた。
 
 
 さらに上西監督はここまでの歩みを振り返り、「一旦、コロナで劇場がロックダウンされて、上映が半年間止まっていましたが、10月から大阪で上映が再開できました。こういう状況なので、劇場で舞台挨拶出来るのは本当にありがたいし、最上段までお客さまがおられて感無量です。やっとの思いで東京でロードショーにこぎつけ、万感の思いで今日は本当に一生に残る思い出です。ここまで来れる力を与えていただいて、本当にありがとうございます』と感謝の言葉を重ねた。さらに、「虐待について知って心が壊れ、救いを求めて書いた脚本ですが、非常にたくさんの方が受け取っていただいた。映画が終わればいろんなお言葉をいただけて、その人の人生のそばに置いていただける。僕は役者として意義を持てました」と『ひとくず』がお客様に届いたことの意義を改めて語った。
 
 

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 『ひとくず』サポーターの方々から花束贈呈も行われ、感極まっているキャストたちにツッコミを入れてきた木下も「これちょっと泣きそう・・・ちょっとかっこ悪い・・・」と、ついに本音が飛び出した舞台挨拶。最後は、「『ひとくず』はこんな土砂降りの中でも、走りきれると思うし、コロナの波が終わった後まで走りきる力を持っている映画です。観ていただいて、口コミの方を広げていただいて、たくさんの方にいろんな思いを伝えられるように力添えをお願いいたします。みなさま、誠にありがとうございます』と上西監督が締めくくった。これからもまだまだ多くの人に届いてほしい、熱い思いが詰まったヒューマンドラマだ。
(江口由美)
 

<作品情報>
『ひとくず』(2019年 日本 117分)
監督・脚本・編集・プロデューサー:上西雄大
出演:上西雄大 小南希良梨 古川藍 徳竹未夏 城明男 税所篤彦 川合敏之 椿鮒子 空田浩志 中里ひろみ 谷しげる 星川桂 美咲 西川莉子 中谷昌代 上村ゆきえ 工藤俊作 堀田眞三 飯島大介 田中要次 木下ほうか
現在、なんばパークスシネマで絶賛上映中、2月27日〜元町映画館、3月12日〜京都みなみ会館でアンコール上映
公式サイト→https://hitokuzu.com/ 
 
 
 
 

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人生のロスタイムを手に入れたダメおやじの92分一本勝負!

愛と感謝と懺悔のイタリアン疾走コメディ!

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パレルモの生まれ変わった美しい街並みを映画で堪能!

 

イタリアで大ヒットしたコメディ映画『ワン・モア・ライフ!』が3月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国ロードショー致します。


『ローマ法王になる日まで』のダニエーレ・ルケッティ監督が贈る本作は、シチリア島パレルモの美しい街並みを舞台に、天国へ旅立つまでの92分をリアルタイムで進行させる演出で、本国イタリアで大ヒットを記録。観るものを釘付けにした。思いがけず人生のロスタイムを手に入れたダメおやじのパオロ。“幸せとは何か?そして家族とはー?” 愛と感謝と懺悔のイタリアン疾走コメディ!



かつてマフィアが闊歩したパレルモを舞台に、石畳の路地で生活する人々の日常を明るく描く


本作の舞台となっているのが、ルキーノ・ヴィスコンティ監督の『山猫』でも舞台になったシチリア島のパレルモ。昨年ヒットした『シチリアーノ 裏切りの美学』でも描かれたように、パレルモは1990年代までは犯罪組織コーザ・ノストラが牛耳る町だったが、現在ではインスタ映えする旧市街や透明なビーチ、目の前の地中海で獲れたシーフードが自慢のリストランテで話題の人気リゾート地に生まれ変わった。劇中ではパオロが不倫相手とデートするシチリア州立美術館、待ち合わせの名所プレトーリア広場やパレルモの胃袋的存在のカーポ市場、町と海を一望できるモンテ・ペッレグリーノなど、人気の観光スポットが次々と登場。生まれ変わった新生パレルモの今を見せてくれる。


なかなか海外旅行に行くことができない状況下、ぜひ映画の中で美しいパレルモの名所を巡って旅行気分を味わっていただきたい!


【STORY】

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中年男のパオロは、いつもの交差点で交通事故に遭ってしまう。死の瞬間、脳裏によぎったのは愛する妻と子供のこと。…ではなくて、恋人に告げられた深すぎる一言や、客待ちタクシーの列の謎など、取るに足らないことばかり。しかし、そんなことよりも、予想外に短い寿命に納得できないパオロは天国の入口で猛抗議。すると、前代未聞の計算ミスが発覚し、92分間だけ寿命が延長され、地上に戻れることに。傷心のパオロは、それまで勝手気ままに生きてきた自分を戒め、家族の絆を取り戻すと一念発起。92分一本勝負の人生やり直しが始まる!


監督・脚本:ダニエーレ・ルケッティ(『ローマ法王になる日まで』)
出演:ピエルフランチェスコ・ディリベルト(ピフ)、トニー・エドゥアルト
2019年/イタリア/94分/シネスコ/5.1ch/言語:イタリア語/
原題:Momenti di trascurabile felicità/英題:Ordinary Happiness
日本語字幕:関口英子/後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム/
© Copyright 2019 I.B.C. Movie
公式サイト: http://one-more-life.jp

2021年3月12日(金)~ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他、テアトル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 全国順次公開


(オフィシャル・レポートより)

 

 

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 CMディレクターとして活躍、短編『地球は青かった』(15)、『声』(18)が世界で高い評価を得ている串田壮史監督の初長編作、『写真の女』が、2月27日(土)から第七藝術劇場で公開される。
第15回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門で世界初上映後、世界の映画祭を席巻した本作。男手一つで育てられ、父の遺した写真屋を継ぐ一人暮らしの械を演じるのは平田オリザ主宰の青年団で精力的に活動している永井秀樹。セリフのない女性恐怖症の男の日常を細やかに演じている。械の日常に突然の異変をもたらすインスタグラマーの女、キョウコを演じるのは元バレリーナで、現在は俳優として活躍している大滝樹。かつて華やかな世界に身を置いた者だからこそわかる、観られる喜びと孤独への絶望感を等身大で表現。さらに見合い写真用にレタッチを依頼する女性客を鯉沼トキ、いつも遺影を依頼する馴染みの葬儀屋の男を猪股俊明が味わい深く演じている。女たちが本当の自分とは一体何なのかを問う場面に、他人を通してでしか自己評価ができない現代人への風刺も鋭く描きこまれた異色のラブストーリー。劇中で度々クローズアップされる、カマキリが重要なモチーフになっているのも注目したい。
 本作の串田壮史監督と主演の永井秀樹さんにお話を伺った。
 

 

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■日常会話を普通にみせる青年団の演劇に出会った時、「これだ!」と思った(永井)

――――永井さんは平田オリザさん主宰の青年団で長く活動をされておられますが、入団したきっかけは?
永井:早稲田大学在学中からしばらく自分たちの劇団で、それこそ劇団☆新感線やつかこうへいの真似事のような演劇をしていましたが、次第に違和感を覚えていたんです。当時は岩松了さんや宮沢章夫さんによる静かな演劇が流行っていて、僕自身、当時から小津映画のように淡々とした作風が好きだったので、「これだ!」と思っていたのですが、平田(オリザ)の劇団もそれをやっていると聞いて、青年団の門を叩いたんです。見たこともないのに(笑) 
 
――――青年団と言えば所属俳優の演技が上手いことと、平田オリザさんの緻密な演出のイメージがありますが、実際稽古は大変ですか?
永井:昔はとにかく秒単位で動きを指示し、びっくりするような演出でした。言い方に語弊があるかもしれませんが、俳優はただの駒だから言った通りに動けばいいということなんです。演技に気持ちを乗せる必要なんて一切ない。とにかく演出通りに動くということなんです。例えば「相手に向かって話終わった2秒後に、手に持ったコップをテーブルに置いて」とか、同時に会話が進行している時「自分の目前の会話に対して、ちょっと反応して」とすごく細かい演出が付くのです。
 
――――ひたすらタイミングを覚えこませる演出ですね。逆に言えば自分で考えて動きなさいという演出方法だと戸惑ってしまいますね。
永井:平田演出にどっぷり浸かっていたときは、僕もそうでしたね。「考えて」とか「物語はこういう流れだから」と言われても、心の中でそんなのどうでもいいやん、どうしてみんなはそんなに考えるのかと思っていました(笑)ただ、しばらく青年団を離れ、他の劇団の作品に出演するようになったことで、少し平田流から浄化され、一般的な演出を理解できるようになりました。
 
実は平田も、俳優にちゃんと考えてほしいという思いがあったようなんです。ただ、俳優はどうしても自分の気持ちでやりたがり、それだけを伝えようとするので、物語として見ているとつまらなくなってしまう。そういうものがぶつかり合う演劇になってしまうのを避けるために、わざと当時は細かいところまで指示していたわけです。今は平田も気持ちの流れに沿ったセリフの強弱を指導したり、普通の演出もするようになりましたね。
 
 
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■普通に見える人を探して、永井さんに迷わずオファー(串田)

――――演出家も俳優もお互いに成長し、本来の狙いを共有できるようになったということですね。本作の前に、串田監督の短編『声』で永井さんを主役に抜擢。この作品が初の永井さんの初映像作品になったそうですが、キャスティングの経緯は?
串田:『声』は10分の短編です。キャスティングディレクターには主人公が町工場勤務の男なので、町工場の服を着ただけでそう見える人とリクエストしました。他の候補の方は普段演劇をして自分を出す仕事をされているので自己主張の強さが染み付いている演技をされる方が多かったんです。永井さんの資料として最初拝見した映像が、バウムちゃんねる×映画・映像監督コラボ企画で、上田慎一郎監督の『ナニカの断片』だったのですが、永井さんは公園のベンチにただ座って、その前で黒服の人たちが何かやっているのを見ているだけなんです。「座っているだけ、見ているだけ」ができるし、一目でその人が普通の人であることがわかる。僕は普通に見える人を探していたので、永井さんに迷わずオファーしました。
 
 
 

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■究極的にはしゃべらずに、そこにいるだけで成立するような俳優になりたい(永井)

――――『声』も『写真の女』もセリフのない役ですが、違和感はなかったですか?
永井:『声』は、一人で生活し、一人で働いているので、しゃべる理由がないなと思いながら演じていました。その経験があったので『写真の女』は「またか」と思うぐらいで(笑)俳優は普通セリフをしゃべりたがるようで、突然セリフが削られたりするとすごく落ち込む人もいるのは確かですが、僕自身は究極的にはしゃべらずに、そこにいるだけで成立するような俳優になれたらいいなと思っているんです。だからセリフなしでも、むしろそれで成り立たせてくれるのかとありがたい気持ちですね。
 
――――『写真の女』のシナリオを読んだ時の感想は?
串田:撮影の半年前に、いわば永井さんをキャスティングするためのA4で2枚ぐらいのシノプシスを見ていただきました。今回はシナリオを書く前に、キャストを先に決めたかったんです。そこまであらすじは気にしていないだろうなと思っていましたが…。
永井:どうせ変わるだろうと思っていたし、そこは串田さんに任せておけばいいかと。セリフがないというのと、女の人に食われる人だよとか、写真を撮っている人だよいうぐらいの情報だけでしたが、とにかくまた串田さんと映画を作れることがうれしかったですね。『声』は1日で撮影したのですが、撮り方や現場の進め方、緊急時の対応の仕方が心地よくて、任せられる監督だなと思ったんです。
 
――――キョウコ役の大滝樹さんは、キョウコと親しいものを感じますね。
串田:キョウコ役に関しては、すべて大滝さんのプロフィールを元にしています。大滝さんは元バレリーナーで「くるみ割り人形」が代表作ですし、外国で活動の後、数年前に帰国されたというところもキョウコに取り入れています。大滝さんも映像作品はこれが初めてなので、その驚きもこの作品の持ち味になっていると思います。
 
 
 

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■役作りは特にせず、その一瞬一瞬が面白くなることを考えて(永井)

――――写真屋を継ぎ、ずっと一人で生きてきた主人公械を演じるにあたって、何か役作りをしたのですか?
永井:青年団のスタイルなのですが、そのシーン、そのシーンを切り取る形で演じられればと思っているし、その一瞬一瞬が面白くなることしか、基本的には考えないんです。それをつなぐのは監督や演出の作業ですから。今回、械という役を与えられてはいますが、実際に動くのは僕なので、各シーンで僕だったらどう動くかと思って動いています。それに加えて写真のことを気にしてみたりすることはありましたが、それ以上の役作りはしないですね。
串田:僕はいつも撮影するときは、現場で皆を集めて、スケッチブックに描いたシーンのト書きと、そのシーンで撮影する画のパターンを説明し、一度永井さんに動きをやってもらう。そこでカメラマンがアングルを探ったらすぐに本番に入るんです。
 
――――リハーサルはしないんですね。そのやり方は串田さんオリジナルですか?
串田:非常にCMっぽい撮り方ですね。絵コンテがベースにあり、その通りに進んでいくので現場で監督が葛藤することもなく、ただ撮るだけなんです。カメラがドンと置かれた後に、役者さんを指定の場所へ誘導するのでアドリブのしようがないかもしれませんね。今回、一番アドリブがあったのは、見合い写真にリタッチを要求するシーンです。女性客役の鯉沼トキさんに自由にリタッチの指示をしてもらい、後ろでプロのリタッチャーが作業をするという形でした。「目を大きく」とか色々と指示されていましたね。
永井:そういう制限を与えられることに対しては、あまり嫌じゃないんです。違和感を感じずハイハイとやるから、串田さんにとっては使いやすいのかもしれませんね(笑)。
 
 
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■上演後、「出ていらしたんですか?」と驚かれるのは役者冥利に尽きる(永井)

――――微妙な表情の変化が、声にならない声になっていましたね。
永井:自然に反応しただけなのですが、よくそれを捉えてくれたと思います。
串田:やっぱりつい大げさになってしまいますから、自然な表情でいるというのは難しいんです。
永井:お客様も自然に見てくれるといいなと思っています。「こういうキャラなんだ」と思われるのは嫌なんですね。舞台をやっていて、お客様の反応で一番うれしいのは、終演後「出ていらしたんですか?」と驚かれることなんです。以前体育教師の役をしたときに、お客様から「本当に体育教師やってらっしゃるんですよね」と聞かれたことがあり、本当にうれしかったんですよ。元々体育教師の人が舞台に引きずり出されたみたいに思ってもらえると、僕にとっては役者冥利に尽きますね。人によっては「もっとガツガツいきなさい!」とアドバイスを受けることもあるのですが、それをやってしまうと僕の場合はかえって嘘になってしまいますから。
 
――――キョウコ役の大滝樹さんとの共演はいかがでしたか?
永井:大滝さんは現場のムードメーカーで、キョウコそのままの雰囲気をお持ちでしたね。
 
――――キョウコは赤色がテーマカラーなのに対し、械は常に真っ白な下着や服を身につけていますが、徐々に赤に侵食されていくという色を使った表現も秀逸でした。
串田:サイレント時代にはできなかった、カラー映画ならではの色によるキャラクター付けということで、械の周りに赤がイメージカラーのキョウコ、緑がイメージカラーの女性客、黒がイメージカラーの葬儀屋の男が集まってくるので、械は濁らないように常に白を着てもらいました。純潔や人を寄せ付けない反射のイメージも重ねています。
 
――――カマキリも重要なキャストですが、永井さんはカマキリとの共演時間も長かったですね。しかもカマキリ指導の方もついておられたそうで。 
串田:カマキリ指導をしてくださった渡部宏さんには現場や、リモートで色々とサポートしていただきました。動いている餌しか食べないとか、どうすれば上を向いて歩いてくるカマキリと目を合わせることができるかとか。そういうカマキリの習性を教えていただき、親密さを表現できるように撮影しましたね。
永井:実際にカマキリを見ていると楽しくて、よくわからないまま動いている彼らをじっと見ていると無になれるんです。無邪気そうと言われますが、それこそ僕の演技の中で唯一のアドリブかもしれません。
 
 
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■時が止まってしまった登場人物たちがそれに気づく物語(串田)

――――串田監督は、本作のテーマの一つとして時間を挙げておられますね。
串田:械は少年時代から同じ場所に住み、時間が止まってしまっているし、キョウコもかつての華やかだった時間で止まっていて、その姿がインスタグラムのタイムラインでずっと存在しているからかつての自分が今の自分を追い詰めてしまう。葬儀屋の男も、幼い娘を亡くし、その時間で時が止まってしまっているんです。レタッチで小学生の娘を成長した姿にし、娘がこれだけ成長したことを実感することで今の自分が年老いたことに気づく。そういう物語でもありますね。
 
――――レタッチの音やカマキリが食べる音など、音が際立つ映画でもあります。
串田:この作品は全部アフレコなんです。画面の中で強調したいものがある場合は、音によって観客の目線が誘導できるようにしたり、画面の外に人がいることを示したければ足音を強調したり。そういうことは全部アフレコでないとできません。音にこだわるのは、映画館で映画を見るのは、完全な静けさの中で音の良さが際立つからという思いがあるからですね。
 
――――最後にこれからご覧になるみなさんにメッセージをお願いいたします。
串田:100秒予告がすごく良くできているので、そちらを観ていただければ、初監督作品ではありますが、信用して観ていただけると思います。映画の面白さは予告編で大体わかりますから、ぜひ、予告編をご覧ください。
永井:この作品は僕の演じる械が立っている横にカメラがある械目線の映画だと思います。械が見ている一コマ一コマを一緒に見て、楽しんでいただければうれしいです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『写真の女』
(2020年/日本/89分)
脚本・監督:串田壮史 
出演:永井秀樹、大滝樹、猪股俊明、鯉沼トキ 
2020年2月27日(土)から第七藝術劇場で公開
 
(C) 2020「写真の女」PYRAMID FILM INC.
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「理想の死に方を提案したい」『痛くない死に方』高橋伴明監督、長尾和宏さん(原作)インタビュー
 
 在宅医療による平穏死を提唱する尼崎の開業医、長尾和宏さんの著書「痛くない死に方」「痛い在宅医」を原作に、高橋伴明監督(『赤い玉、』)が終末期医療の現実と理想を描く『痛くない死に方』が3月5日(金)からテアトル梅田、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、京都シネマ、イオンシネマ京都桂川、MOVIX堺、3月12日(金)から塚口サンサン劇場、豊岡劇場にて公開される。
 
 苦い経験を心に刻みながら、在宅医療の道を歩む主人公河田を、『火口のふたり』などの柄本佑が演じる他、河田の誤診から実父を苦しい死に追い込んだと後悔する娘を坂井真紀、悩める河田にアドバイスを与える先輩医師長野を奥田瑛二、全共闘世代のガン患者本多を宇崎竜童が演じている。平穏死から程遠い死に方、枯れるように死んでいく理想の死に方に家族と死について話したくなるような作品。要所要所で在宅による終末期医療で肝心なことや、自分の意思で自分の死に方を選ぶ方法もさりげなく盛り込まれている。同時期に公開される長尾さんの仕事ぶりに密着した毛利安孝監督『けったいな町医者』と合わせて観ることで、より病院や医者との付き合い方や、平穏死を迎えるために必要なことがわかるだろう。終末期医療を見事に言い当てた川柳にも注目してほしい。家族や夫婦の絆、青年医師の成長を描いたという点でも見応えのある、真面目に死を捉えたヒューマンドラマだ。
 
 本作の脚本も手がけた高橋伴明監督と、原作者で医療監修を手掛けた長尾和宏さんにお話を伺った。
 

 

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■余計な力を入れずに作った「理想の死に方の提案」(高橋)

――――「痛くない死に方」の原作者で在宅診療医の長尾先生との出会いは?
高橋:「痛くない死に方」を拝読した後、築地の本願寺で長尾先生の講演会があったんです。それが初対面でしたが、そこでいきなり歌を歌い出したので、びっくりして。この人は規格外だなと(笑)
 
――――原作を元に、どのようにして脚本を作ったのですか? 
高橋:映画の前半はまさに原作通りなのですが、それだけだと中身も辛いし、自分自身が映画にするのも辛い。長尾先生の他の本も読ませていただきましたし、他にも死に関連する本を多々読み、在宅医に関する知識を蓄えていたので、それらを取り入れながら今自分で考えられる「理想の死」を後半部分にくっつけました。理想の死に方の提案ですね。余計な力が全然入らずに作れた作品でした。
 
――――今回、高橋伴明監督によって映画化された感想は?
長尾:高橋監督の作品はずっと観ていましたし、時代の先端を行く作品を作っておられてカッコいいと思いましたし、奥様(俳優の高橋恵子)と結婚された時のことは記憶にバッチリ残っているぐらいです。そんな方が、医療ものの重いテーマのものを撮っていただけるということが、とてもうれしかったです。自分がやってきた素材を高橋監督が脚本という形で料理していただき、しかも色々な調味料を加えて、僕が言いたかったことを一点の無駄もなく入れてくださった。しかも川柳というユーモアも加えてくださった。カルタにして売りたいぐらいです(笑)
 
 
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■阪神・淡路大震災で踏ん切り、町医者になり「平穏死」を知る(長尾)

――――長尾先生に密着したドキュメンタリー『けったいな町医者』で阪神淡路大震災が勤務医から町医者、そして在宅医になるきっかけになったとおっしゃっていましたが、今一度その経緯を教えていただけますか?
長尾:芦屋市民病院で消化器医として勤務して10年目の頃、個室にいる胃ガンの患者さんに夜呼ばれ、家に帰ることと抗がん剤を止めるという二つのお願いを聞いてくれないかと頼まれました。上司に相談した結果どちらもダメだと伝えると「僕はダメな人間です。一度だけ浮気をしたんです」と泣かれたのです。驚いて声をかけて帰宅した真夜中に病院から電話があり、その患者さんが病院の屋上から飛び降りたと。僕はその患者さんを殺してしまったと思いました。その後、阪神・淡路大震災があり、今もコロナで大変ですが当時も無政府状態になっていて、自分で動かなければダメだと踏ん切りがつき、小さな雑居ビルの一角で開業医として再出発しました。当時、朝夕注射にきてくれた肝臓ガンの患者さんがいたんです。その方の具合が悪くなって自宅まで診に行くようになり、僕の初めての在宅医としての看取りとなりました。
 
肝臓ガン専門病棟で仕事をしていたこともあったので、毎日末期の肝臓ガンで血を吐いて血の海になって亡くなる姿を見ていましたが、その患者さんは手厚い治療を施されることもなく、血を一滴も吐くことなく亡くなった。肝臓ガンの患者さんでこのようなケースを見たのは初めてでした。これが平穏死なんです。在宅医もだんだん増えてきて、今は非常勤を入れて8人の医者が600人ぐらいの患者さんを診ています。規模が大きくなっても600人全員と関わるようにしているんです。
 
――――柄本佑さんは『心の傷を癒すということ<劇場版>』で阪神淡路大震災時に避難所などで被災者の「心のケア」に積極的に取り組んだ安先生をモデルにした精神科医を演じていますが、長尾先生の原作を元にした本作では苦い失敗を経て成長していく在宅医を演じています。役作りで監督から何かアドバイスはされたのですか?
高橋:今回は柄本さんに限らず、ほとんど役作りや登場人物の狙いをほとんど話していないですね。時々宇崎さんがロックンローラーになってしまうので、「ちょっと抑えて」と言ったぐらいですね。柄本さん自身も長尾さんの往診に1日同行し、患者さんとどんな接し方をしているかを見ているので、それを参考にしたのではないでしょうか。何かをきっかけに成長させるというのは、映画の王道ですから。
 
――――長尾先生をモデルにした主人公河田の先輩、長野を演じているのは奥田瑛二さんですね。
長尾:奥田瑛二さんが撮影現場で、僕が普段言っていることを言っていただけたのは、やはり全く重みが違います。俳優が語るのは、こんなに人の心に届くものなのだと思いましたし、奥田瑛二さんには感謝しかありません。
 
 
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■下元さんなら紙おむつを履いてくれると思った(高橋)

――――前半、苦しみ抜いて死んでいく老人を演じた下元史朗さんの演技が実に真に迫っていました。
高橋:死ぬ間際に過呼吸になるのですが、その呼吸の仕方は医療監修もしていただいた長尾先生がすごくこだわっておられたんです。ここはリアルにやろうと腹を決めたので延々とカメラを回しましたが、実は役者は大変なんですよ。あとは、紙おむつの姿を他の役者さんは絶対に撮らせてくださらない。他の男優は全員、「自分なら紙おむつは絶対だめだ」と。僕は下元さんなら履いてくれると思っていました。ただあの紙おむつ、もう少しシンプルにならないですか?
長尾:NHKスペシャルでもあんなシーンはないですが、みなさんが知りたいのは紙おむつの実態だとか、そういうのが知りたいんですよ。
 
 
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■リビングウィルと死の壁を描いた初めての映画(長尾)

――――ラストに「リビングウィル」が説明されていましたが、これもこの作品の一つの提案なのですか?
長尾:現在、日本でリビングウィルは3%の人しか書いていません。日本人の終末期医療は3分の2は家族、3分の1は医者が決めており、自分で決めているのは3%ということです。国際的にみれば極めて特異で、欧米では認知症にならない限り100%自分で決めます。日本は世界で唯一リビングウィルが有効であるという法律がないのですが、もう少し希望を出したり、話し合ったりしてもいいのではないか。国は人生会議という言葉を昨今使っていますが、その核となるのはやはり本人の意思です。遺言状もそうですが、紙に書くことで重みが増します。そういうこともこの映画で知っていただけるとうれしいし、高橋監督がリビングウィルを映画で扱ってくださったというのは、映画としても初めてではないかと思います。
 
また、宇崎竜童さん演じる本多が直面する「死の壁」は、亡くなる前に自然と悶えるんです。病院だと麻酔がかかっているので眠ったままになるのですが、自然の最期は死の壁があり、それを描いた最初の映画だと思います。一枚の川柳にも話せば一時間かかるぐらいの重みがありますし、映画という時間の制約がありながら、この一本の映画の中に僕が書いた10冊ぐらいの本の内容が散りばめられています。
 
――――本多が亡くなる前、河田が一緒にお酒を飲んだり、『けったいな町医者』での長尾先生の「笑うこととしゃべることがリハビリ」という言葉を聞くと、やりたいことをやれるのが一番だと思いますね。
長尾:それができるのは現時点では自宅なんです。病院も本当は変わらなければいけないので、病院のお医者さんにこの映画をぜひ見ていただいて、ディスカッションしたいです。僕は強烈なアンチテーゼで本を書いているし、『痛くない死に方』『けったいな町医者』は病院の先生が正視したくない2本だと思います。だけど正視してほしいし、市民の声を聞いてほしいと思います。
(江口由美)
 

『痛くない死に方』(2020年 日本 112分) 
監督:高橋伴明 
原作:長尾和宏「痛くない死に方」ブックマン社
出演:柄本佑、坂井真紀、余貴美子、大谷直子、宇崎竜童、奥田瑛二、大西信満、大西礼芳、下元史朗、藤本泉他
3月5日(金)からテアトル梅田、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、京都シネマ、イオンシネマ京都桂川、MOVIX堺、3月12日(金)から塚口サンサン劇場、豊岡劇場にて公開
©「痛くない死に方」製作委員会
 

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文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2020」

日本の映画界を担う若手作家3作品を一挙初上映!!

ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2020「合評上映会」

 

特定非営利活動法人映像産業振興機構(略称:VIPO、理事長:松谷孝征、東京都中央区)が、日本における商業映画監督の育成への取り組みとして、2006年度より企画・運営する、文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2020」において、今年度の製作実地研修で完成した短編映画3作品の「合評上映会」が都内にて開催されました。


【日時】2月3日(水) 15:30~
【場所】丸の内TOEI ②(東京都中央区銀座3-2-17)
登壇】植木咲楽監督、木村緩菜監督、志萱大輔監督
    安田聖愛、肘井ミカ、今里真、駒木根隆介、仁科貴、遠山景織子、小林涼子、関口アナン


映像産業振興機構(VIPO)が企画・実施する「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2020 」で製作された短編映画3作品が、一般公開に先駆けて合評上映会でお披露目された。舞台挨拶に登壇した3人の若手監督は、今年は感染予防対策として座席数が半数に制限されているものの多くの観客で埋まった客席をみて、無事にスクリーンで作品を観てもらえることに安堵し嬉しそうな様子だった。


ndjc2020-pos.jpg上映された3作品は、監督・脚本を務めた卒業制作『カルチェ』がPFFアワード2018にて入選、第19回TAMA NEW WAVEにてグランプリを受賞し、大学卒業後は石井裕也監督のもとで監督助手を務めた植木咲楽監督作『毎日爆裂クッキング』、日本映画大学在学中からピンク映画や低予算の現場で助監督として働き、卒業制作では「さよならあたしの夜」を16㎜フィルムで制作し、現在は様々な監督のもとで助監督として働く木村緩菜監督作『醒めてまぼろし』、映像制作団体osampoを主催し、never young beachなどアーティストのMVを手がけ、監督作『春みたいだ』がPFFアワード2017やTAMA NEW WAVE正式コンペティション部門などに入選し、海外の映画祭でも出品・上映された志萱大輔監督作『窓たち』の3作品。いずれも35ミリフィルムで撮影・編集された30分の短編。


合評上映会は、文化庁梶山正司参事官の挨拶ではじまり「ndjc:若手映画作家育成プロジェクトは、日本映画の才能の発掘と育成を目的として今年で15年目となります。今回の3人の監督には、是非、国内外で活躍して日本映画界を盛り上げていってほしい」と若手監督たちへ激をとばした。


ndjc2020合評上映会-500-bakuretsu.JPG1作品目の『毎日爆裂クッキング』植木咲楽監督は、重いテーマをコミカルな様子で描いた理由ついて聞かれると「もともと食べ物をテーマにした映画を作りたいと思っていました。昨今の状況や自分の人生の中で、なにかしら罵倒されたり、不当な扱いを受けることは誰しもが経験のある事なのかなと思い、それを作品にしたら面白いかなと思って撮りました。なるべく重い空気を笑い飛ばしてしまいたいなと、個人的には思っていたので、こういったテイストの作品になりました」と明かした。

また、一番の勝負シーンを聞かれると「文が卵を割るシーンは、初めて文の本当の感情が表に出るシーンだったので、大事に撮りたいなと思ったシーンでした」と答え、主人公の文役を演じた安田も「最初は、卵を入れたかごにたまたま手が当たってしまって卵を割ってしまうという場面だったんですが、現場で急遽、文の感情が爆発して卵を割るっていう演出に変えたとき、私も文の感情がそこで爆発的に出すことができて良かったなと思えるシーンです」と述べた。

今後、どんな作品を撮っていきたいかを問われると植木監督は「なるべく誠実な映画を作っていきたいです。できれば、見過ごされてしまったり、蔑ろにされてしまいそうなもの、歳を取ったらそういったことを忘れていってしまうのではないかという危機感があるんですが、そういう経験で感じた悔しい思いや、そこから助けてもらった時の嬉しさとかを忘れないで映画を撮っていきたいと思います」と語った。また、出演者の渡辺えりからのビデオレターが届き「これからも弱い者の味方の映画を撮っていってください」という渡辺の励ましのメッセージに、感謝する様子の植木監督だった。


ndjc2020合評上映会-500-samete.JPG続いて2作品目『醒めてまぼろし』木村緩菜監督は「私自身、あまり友達や恋人的な存在もなく、拠り所というか帰るところが無いとき、自分が一人で生きていくためにはどうしたらいいだろうと思った時に書いた脚本です」と今回の作品テーマを選んだ理由を説明。

演出については「主演の小野さんとはいろいろ話し合いました。どういう気持ちでいくかということを、限りなく言語化していく作業というか、その時どういう感情であるかということを中心に沢山話し合いました」と話した。主人公・あき子の母親役を演じた遠山は「監督と話し合っていく中で、あき子の感情がただの思春期の反抗として見せたくないという軸があったし、私もあき子の気持ちに共感できるところがあったので、今日、出来上がった作品を観ていて、あき子の反抗する姿がすごく刺さりました」と初めて完成した作品を観た感想を語った。

劇中であまりBGMを使用しなかったことの理由を聞かれると、木村監督は「なるべく生の音を録って使おうとあらかじめ決めて準備していました。この作品には音楽はいらないなと、音楽である一定の感情を塗りたくることをしたくない、音楽で挽回するということをしたくなかった」とその気持ちを明らかにした。

今後撮りたい作品について聞かれると「言葉で説明できない感情をちゃんと映画にできたらいいなと思います」と次回作への意気込みを語った。


ndjc2020合評上映会-500-madotachi.JPG3作品目『窓たち』志萱大輔監督は、絶妙な男女のすれ違いを切り取ったストーリーを「ndjcに応募した脚本をいろんな人に読んでもらって意見をもらい、直して直してこの脚本になった」と話した。朝子役を務めた主演の小林は「撮影準備期間には監督とは恋バナをたくさんしました。皆さんそれぞれ、少しやましかったり悲しかったりするのが恋愛だと思いますが、男性から女性から、いろいろな視点を詰め込んだお話しなので、どんな度合いで表現するのがいいのかを話し合うため、念入りに丁寧に恋バナをさせていただきました」と撮影裏のエピソードを披露した。

印象的なラストシーンについては脚本を書き換えていくうちに少し違ったものになったらしく「一番最初の脚本では“信号が青に変わっても進めない”としか書いてなかったけれど、その後、脚本を直して別のラストシーンにしたけれど、また元のラストシーンに戻し、“点滅している”という部分を足して書き直しました。引きの映像も撮っていたけれど、場所の説明になってしまう気がして、ただ、赤と青、そして点滅だけで表現できないかなと思って最終的にこのシーンになりました」と説明した。

今後、どんなテーマに興味があるか聞かれると「映画を作ることが好きなので、それを長く続けていくというのはどういう事だろうと考えた時に、長く撮り続けていった時に、自分はどういった作品を撮っているんだろうということに興味があります」と自身の考えを表明した。


スーパーバイザーの香月純一氏は3人の若手監督それぞれに称賛のメッセージを送り、「今年のndjc2020の3本は、それぞれの作品がリンクしているようでもあり、またバラエティに富んだ作品になったと思います。今年のこの3人の監督がますます活躍していって欲しいと思います。そのためにはここにいる皆さまのご指導ご鞭撻が大事になってきます。皆さまどうぞよろしくお願いいたします」と締めくくった。会場からは監督たちへの期待を込めた温かい拍手が広がり、合評上映会は好評のうちに幕を閉じた。


2021年2月26(金)~角川シネマ有楽町を皮切りに、名古屋(3/12〜)、大阪(3/19〜)にて一般公開


(オフィシャル・レポートより)

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