レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2013年5月アーカイブ

GIjo-o550.jpg

イ・ビョンホンが大阪ジョーを制圧!!『G.I.ジョーバック2リベンジ』大阪城スペシャルイベント

大阪城天守閣とファン1000人が青色に染まる!

「世界一熱い大阪のファンのみなさん、おおきに!!」

世界最強の刺客イ・ビョンホンが大阪ジョーを制圧!!

 

【大阪城イベント】

2013年5月29日(水)18:30~20:00 大阪城天守閣にて
登壇者:イ・ビョンホン、ジョン・M・チュウ監督、月亭八光(つきていはちみつ)

<取材来場>スチール30台、ムービー20台、記者・マスコミ関係合計100名/集まったファンの人数1000人(応募総数12000通)


 

  『G.I.ジョーバック2リベンジ』が、6月7日(金)よりついに全国で先行公開致します!

GIjo-o1.jpg公開に先駆け、前作に続き悪の組織〝コブラ〟の冷酷な暗殺者・ストームシャドーを演じるイ・ビョンホン(42歳)と監督を務めたジョン・M・チュウ(33歳)が、本作を引っ提げ日本にジョー陸!! 27日月曜日に東京都内で行われたジャパンプレミアに続き、全国4大都市(東京を含む、名古屋、大阪、福岡)を巡る大規模キャンペーンの一環として、ついに大阪にもジョー陸!悪の組織〝コブラ〟のイメージカラーでもあるブルーカーペットをひいてのセレモニー、特設ステージでは忍者が入り乱れてのアクション演出など、ハリウッド超大作に相応しいプレミアイベントが、大阪のシンボル大阪城天守閣前で行われました。

 この日、お昼過ぎに名古屋での舞台挨拶で大村愛知県知事との共演を果たしたイ・ビョンホンとジョン・M・チュウ監督は、イベント後すぐに直線距離で約130kmの移動をして大阪入り。大阪城の天守閣前では史上初めてハリウッド映画のイベント実施という事もあり、応募総数12000通の中から選ばれたファン1000名が集まり、関西ならではの熱気が会場を包んだ。
 

GIjo-o3.jpg ブルーカーペット上に登場したイ・ビョンホンは、都内で行われたジャパンプレミアとは打って変わってベージュのジャケットにタイトなデニムというラフなスタイルで登場し、早朝から待ちわびたファンからは大きな歓喜の声が。サインや写真撮影に丁寧に応じるイ・ビョンホン、ジョン・M・チュウ監督のファンサービス、さらにド派手な忍者演出に会場のボルテージは急上昇。そんな熱気を帯びた会場の特設ステージで舞台挨拶がスタートし、集まった大阪のファンへの印象を聞かれるとイ・ビョンホンと監督は「日本で最も情熱的なファンのいるところ」と答え、熱狂的なファンの熱い歓迎に感動した様子。

大阪城天守閣と、ファン1000人が"青一色"に!!

GIjo-o8.jpg そしてフォトセッション時には謎の“コブラ”スイッチが登場。会場に集まったファンが一斉に青色のペンライトを振り、「ジー!アイ!ジョー!」の掛け声と共にイ・ビョンホンがスイッチを入れると、大阪城がなんとコブラカラーの青色にライトアップされ、<大阪城が大阪ジョー>になった。壮大なその姿にはイ・ビョンホン、ジョン・M・チュウ監督共に驚きの表情を浮かべた。
 

GIjo-o2.jpg さらに先ほどド派手なアクションを披露したスネークアイズがステージに登場。しかし何か違和感が…歩き方もたどたどしく、背も小さい気が?おもむろにそのマスクを外すと、なんと前作からの大ファンで、関西を中心に活躍する月亭八光が。「イ・ビョンホンさん、こんばんは。握手させてもらってもいいですかぁ。」と突然イ・ビョンホンへ近づき、いよいよイ・ビョンホンと握手を行おうかと言うときには会場から大爆笑と悲鳴が起こった。

 大阪らしい演出が飛び出した今回のイベントでは「休むまもなくアクションが続き、スカっと出来る事間違いなし。この夏、大阪のように最も熱い作品です。」と魅力を熱く語って締めくくり、大きな拍手の中で幕を閉じた。


 

GIjo-o4.jpg――― 大阪の街や大阪のお客さんの印象は?
イ・ビョンホン:大阪、おおきに!(日本語で) 何度来ても情熱的な大阪のファンにあえてうれしいです。良い意味でクレイジーな大阪のみなさんが大好きです。
監督:イ・ビョンホンから世界で一番熱いファンのいるところと聞いていたので、そのファンの前にこうして来れて最高だよ。

――― お二人のお気に入りのシーンはどこでしょうか?
イ・ビョンホン:クールで謎めいたストームシャドーのキャラクターが解き明かされます。彼の内に潜む怒りや苦悩などバックストーリーが描かれているから、そこが一番のおすすめだよ。ぜひ楽しんでほしいよ。
監督:ヒマラヤの山腹で忍者が飛び交うシーンだね。しかも3Dだから迫力がすごいんだ。イ・ビョンホンの腹筋が触れるくらい飛び出すからお楽しみに!

――― 日本の皆様へのメッセージをお聞かせください。
イ・ビョンホン:G.I.ジョー バック2リベンジはアクション超大作です。怒濤のアクションに休む暇もありません。そして、熱い夏を吹き飛ばすような爆発や破壊なども随所にちりばめられています。大阪のファンのように熱い作品です。ぜひ劇場で会いましょう。

2013年6月7日(金)より、TOHOシネマズ梅田他にて先行公開!(一部の劇場を除く)

★大阪プレミア上映舞台挨拶レポートはこちら
★ジョン・M・チュウ監督インタビューはこちら
★福岡セレモニー&舞台挨拶はこちら


 

【作品情報】

G.I.ジョーバック2リベンジ

(原題:G.I. Joe: Retaliation)
(2013年 アメリカ 1時間51分)

監督:ジョン・M・チュウ
出演:ブルース・ウィリス、ドウェイン・ジョンソン、イ・ビョンホン、チャニング・テイタム、レイ・パーク、エイドリアンヌ・パリッキ、D.J.コトローナ

2013年6月7日(金)TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば にて先行上映、6月8日(土)~全国ロードショー

★プレミア上映舞台挨拶レポートはこちら
★ジョン・M・チュウ監督インタビューはこちら

★公式サイト⇒ http://www.gi-j.jp/

(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved. Hasbro and its logo, G.I. JOE and all related characters are Trademarks of Hasbro and used with permission. All Rights Reserved.

    


GIjo-o5.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GIjo-o7.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GIjo-o10.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GIjo-o6.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GIjo-o11.jpg

 

 

 

 

 

 

 

GIjo-o9.jpg

 

 

 

 

 

 

 

(撮影:河田 真喜子)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GIjo-b550.jpgイ・ビョンホン、日本のインテリアに興味津々!『G.I.ジョー  バック2リベンジ』舞台挨拶

~イ・ビョンホン、ファンの熱烈声援にエネルギー充電!~

(2013年5月29日(水)TOHOシネマズ梅田にて)

ゲスト:イ・ビョンホン(42)、ジョン・M・チュウ監督(33)

 

(原題:G.I. Joe: Retaliation)
(2013年 アメリカ 1時間51分)

監督:ジョン・M・チュウ
出演:ブルース・ウィリス、ドウェイン・ジョンソン、イ・ビョンホン、チャニング・テイタム、レイ・パーク、エイドリアンヌ・パリッキ、D.J.コトローナ

2013年6月7日(金)TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば にて先行上映、6月8日(土)~全国ロードショー

★大阪城イベントレポートはこちら
★ジョン・M・チュウ監督インタビューはこちら
★福岡セレモニー&舞台挨拶はこちら
  ★公式サイト⇒ http://www.gi-j.jp/

(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved. Hasbro and its logo, G.I. JOE and all related characters are Trademarks of Hasbro and used with permission. All Rights Reserved.


 

GIjo-b1.jpg 例年より早い梅雨入りとなった日本列島に、爽やかな風を吹き込む『G.I.ジョー  バック2リベンジ』出演のイ・ビョンホン(42)とジョン・M・チュウ監督(33)の来日キャンペーン。東京、名古屋に続き、大阪でのイベントに登場。夕方、「大阪城、GIジョー」とダジャレに乗じた大阪城でのイベントの後、梅田の映画館での舞台挨拶が行われた。ゲストのお二人は勿論、取材陣もファンの皆さんも大阪城から梅田へ大移動。10分遅れの登壇となったが、会場のお客様は熱狂的に大歓迎♪  さすが、イ・ビョンホンの人気は桁外れだ。


 

GIjo-b4.jpg――― 最初のご挨拶
監督:皆さんお越し下さいましてありがとうございます。大阪の皆さんに映画を見て頂けてとても興奮しております。皆さん大きな声を出して喜んでおられますが、お水を沢山飲んで下さいね。とても面白い作品ですので、どうぞお楽しみ下さい。
ビョンホン: 「おおきに、大阪の皆さん!」大阪の皆さんにお会いするのは約2年ぶりくらいですね。やはり大阪の皆さんは今でも情熱的ですね(笑)。ちょっとだけ気持ちが沈んで疲れていたのですが、皆さんにお会いしてまたエネルギーが充電できたような気がします。本当に熱い声援をありがとうございます。
 

GIjo-b2.jpg――― 「おおきに」という日本語はどなたから習いましたか?
ビョンホン:以前、大阪のファンの皆様とお会いする機会があったのですが、その時にスタッフから教えてもらいました。

――― 嬉しいですね~。さて、この映画のお気に入りのシーンは?
ビョンホン:私が忍者の役で出ているから言う訳ではありませんが、本当に圧巻のシーンですので紹介したいと思います。それは、ヒマラヤ山脈を背景に多くの忍者が岩壁でロープを使って戦うシーンです。是非3Dで見られるのをお勧めいたします。この映画の原作は数十年間多くのファンに愛されてきた漫画なんですが、多くのキャラクターが登場して、それぞれ戦い方が違うんです。そのアクションを比べながらご覧になると、より楽しめると思います。
 

GIjo-b3.jpg――― スティーブン・ソマーズ監督からバトンを引き継いでプレッシャーもあったと思いますが、特に気を遣った点やこだわった点は?
監督:この仕事を頂いた時、母が喜んでくれるかと思い伝えた処、母はただただイ・ビョンホンさんに会えることに興奮していました(笑)。今回本当に楽しい経験をさせて頂いたのですが、クレイジーな凄い作品になっています。またイ・ビョンホンさんからも多くのことを学びました。彼の素晴らしい演技によるストームシャドーをお楽しみ下さい。
 

 

GIjo-bb1.jpg――― 日本の印象は?東京とか京都とか大阪とか観光する時間はありますか?
ビョンホン:なかなかプライベートな時間は持てませんが、それでもいいレストランやバーなどへ行く事ができました。私は元々インテリアに興味がありまして、日本に来ると綺麗なインテリアを見る事ができるので、どこに行っても、まずインテリアに注目して一所懸命見てしまいます。

――― 大阪で食べた中でお気に入りの物とか、行ってみたい所とかは?
ビョンホン:大阪では美味しい物を食べに行く時間がないので、いつもお好み焼きやたこ焼を食べています。時間があればお好み焼きやたこ焼き以外の美味しい物を食べに行きたいと思います。

――― ファンの皆さんも教えてあげて下さいね。(客席から、「串カツ!」の声があがる。)
ビョンホン: 「串カツ」?(笑)

――― 新世界とイ・ビョンホンさんは似合いますかね?(客席から微妙な反応…) さて、監督から「ここは見逃さないでほしい!」という処がありましたら教えて下さい。
監督:戦車で格闘するシーンや、ブルース・ウィリスさんやドウェイン・ジョンソンさん、イ・ビョンホンさんなどが登場するシーンなどです。特に、皆さんにはイ・ビョンホンさんの鍛え上げた素晴らしい肉体を見て欲しいですね。今回は3Dなので、6(シックス)パックが3倍の18パックになるのではと思われます(笑)。さらに、3Dですから、アクションに対し、除けながら見て下さいね(笑)。

――― 冒頭のシーンから、イ・ビョンホンさんが真っ白な衣装をパッと脱ぐシーンがありますのでお楽しみに。
(観客:興奮気味に「え~!!!」)

……(イ・ビョンホンと監督がバックパネルにサインを書く。)……

GIjo-bb3.jpg――― イ・ビョンホンさんから最後のご挨拶を。
ビョンホン:今日はお忙しい中お越し下さいまして、本当にありがとうございました。短い時間でしかご挨拶できずに残念です。でも、こうして来て頂いた以上は映画をご覧頂きたいです。今度いつ大阪に来られるか分かりませんが、出来るだけ早く大阪に来る時間を作りたいと思います。この映画は壮大なアクションでエキサイトできる映画ですので、どうか周りの男性の方にもオススメ頂きたいと思います。どうか楽しんでご覧下さい。ありがとうございました。
 


 

GIjo-bb2.jpg 大阪城での1時間半に及んだイベントに続いて梅田の映画館での舞台挨拶。確かに、大阪城でのイベント後半では少々お疲れ気味のイ・ビョンホンさん。映画館でのファンの熱狂的な「ビョンホンシー!!!」コールにエネルギーをもらったようで、いつものキラースマイルが戻っていた。ビョンホンファンの絶叫に近い歓声に、チュウ監督もびっくりして興奮気味。帰り際、ファンから差し出されたビョンホンうちわを監督が手に取り、「どうしてボクに?」と不思議そうな表情で会場を後にしていた。

(河田 真喜子

simauta-550.jpg

『旅立ちの島唄 ~十五の春~』吉田康弘監督インタビュー
 

(2013年 日本 1時間54分)

監督・脚本:吉田康弘
出演:三吉彩花、大竹しのぶ、小林薫

2013年5月25日(土)~梅田ガーデンシネマ、神戸国際松竹、6月22日(土)~京都シネマ

公式サイト⇒  http://www.bitters.co.jp/shimauta/

(C)2012「旅立ちの島唄~十五の春~」製作委員会


 

~親が子を思い、子が親を思う気持ちが凝縮~


simauta-2.jpg 沖縄本島から東へ360キロ、那覇から飛行機で約1時間、船で13時間かかる南大東島。人口約1300人の島には高校がない。15の春を迎えた子ども達は、皆、家族と離れ、旅立たなければならない。“ボロジノ娘”は、島に実在する少女民謡グループ。毎年3月4日にボロジノコンサートが行われるが、中学を卒業する娘たちは、島の人達を前に「アバヨーイ(八丈島の方言で“さようなら”の意。卒業の春に父母へ贈る感謝の島唄)」という別れの唄を歌いきって、島を出ていく。主人公仲里優奈はボロジノ娘のメンバーの一人。島でさとうきび畑を営む父、優奈の姉や兄の高校進学とともに那覇に行ったまま島に帰ってこない母。15の春を迎えるまで1年間の優奈の成長を、父と娘の関係を軸に、家族の姿とともに描いていく珠玉の人間ドラマ。公開を前にキャンペーンで来阪した吉田監督からお話をうかがった。

 


 

◆映画づくりのきっかけ

simauta-s1.jpgQ:南大東島を舞台にした映画をつくることになったきっかけは?
A:プロデューサーから、南大東島のドキュメンタリー番組を観てほしいと言われ、観てみると、とても興味深く、番組の最後のコンサートで、女の子が島唄「アバヨーイ」を歌い、両親や島の人達がじっと聴いている場面があり、これは映画にできる題材だと思いました。言葉で説明しなくても伝わる、いいシーンがみえてきて、映画になるなと思い、自分で脚本を書きました。

◆主演の三吉彩花さんについて

Q:主人公の仲里優奈に三吉さんをキャスティングしたのは?
A:島の女の子ということで、繊細でナイーブな子、いまどきの子というよりは奥ゆかしく、内に秘めたタイプにしたいと思っていました。三吉さんは自分の内なる世界をきちんと持っていて、たたずまいといい、ぴったりでした。彼女が15歳の春になる瞬間の、今しかできない芝居を映したいと思い、撮影時期も、実際に彼女が中学を卒業したばかりの2012年GWになりました。

Q:ラストで島唄「アバヨーイ」を歌っている三吉さんの美しさは輝くようでした。いろんな経験を重ね、1年でどんどん美しくなっていきますが、その魅力はどうやって引き出されたのですか?
A:三吉さん自身が初めて主役をやるというプレッシャーを乗り越えていく過程と、主人公の優奈が成長していく過程がリンクしたと思います。「アバヨーイ」という唄に向き合うことがそのまま彼女にとっては役に向き合うことだったので、歌いきった時には、ひとつ壁を乗り越えたと思います。本人は、このシーンにすごくプレッシャーを感じていたようで、途中で悔し泣きをした時もあり、僕達も最後まで歌えるかなと思ったこともありましたが、十五歳なりに女優魂を発揮して、頑張ってくれました。三線(さんしん。沖縄の撥弦楽器。三味線。)も演奏して、あの独特な節回しの島唄もしっかり最後まで歌ってくれて、たいしたものだと思いました。

Q:「アバヨーイ」は一曲分丸ごと映像を使っていますね。
A:撮影の時は、1曲全部使うかどうか決めていませんでした。でも編集の時に、これは途中で切れないなと、島唄は歌詞が非常に意味深くて、一部だけを選択することはできず、全部使いました。

◆ベテラン俳優の小林薫さん、大竹しのぶさんについて

simauta-3.jpgQ:優奈の両親を演じた小林さんと大竹さんのキャスティングは?
A:小林さん、大竹さんとも、シナリオを書く前から想定していました。二人に出演を断られたら、企画自体を潔く諦めるくらいの覚悟で、シナリオがラブレターになればいいなと思って書きました。大竹さんとは前作の『キトキト!』(07年)に主演してもらいましたし、シナリオさえよければきっと出演してくれるというプロデューサーの言葉を信じて、シナリオを持って行って、感想を聞かせてくださいとお願いに行きました。

今回、僕達は、できるだけドキュメンタリーに近い、人間が匂い立つような、日々の暮らしを見つめる映画にしたいと考えていました。オーバーな表現のセリフは削除していこうという方針でやっていたのですが、役者さん向けについ見せ場を用意してしまっていて、そういうところをもっとそぎ落とせるんじゃないかと小林さんから指摘していただいたりして、僕達が目指すものをさらに背中を押してくれるような前向きなご意見をいただき、一緒に父親像をつくっていった感じです。

◆映画のテーマ「家族」について

Q:監督の前作『キトキト!』では母と息子、今回は父と娘です。監督にとって、家族は大きなテーマなのですか?
A:自分の手に届く範囲の題材として、家族というのは身近です。背伸びしたものをつくるよりは、自分が表現できるものということで、家族をテーマにした映画がたまたま続きました。今回、父と娘にしたのは、母と娘なら、母は娘に触れることができます。たとえば髪の毛を触ったり、言葉も交わしやすい。でも15歳という年頃の娘を持った父親は、娘とも距離ができ、気安く触ることもできません。そういう“言葉ではないもの”を切り取りたいと考え、父と娘の話になりました。

Q:父が娘を黙って見ているシーンが多く、心に迫ってきました。
A:言葉をできるだけ少なくして、目線とか表情で伝えることを、小林さんと一緒に模索していきました。作劇におちいらないよう、そこに父親が存在しているということを、表現できるよう徹しました。

simauta-s2.jpgQ:小林さんが、この映画について、父と娘、現代場小津安二郎を観ている気持ちになったとパンフレットでコメントされていますね。
A:全く意識していたわけではありません。でも、離島で生きている家族の姿は、家族の原点というか、今、忘れかけている家族の何かを感じさせることが多いとわかってきました。離島には、“別れ”という通過儀礼があるからこそ、相手への思いやりが極まる瞬間があります。今回、そういう家族の絆の純粋性、親と子が互いを思いやるということを題材に、描くことができました。それがたまたま、かつて日本の家族を撮った当時の映画の匂いに近かったのではないかと思います。家族への思いは、何かきっかけがないとなかなか芽生えません。今の日本でテーマにしづらいのは、今の家族にそういう場面がなくなってきているからかもしれません。

Q:大竹しのぶさんは出番が少なかったですが、母親として存在感がありました。
A:島を出たまま帰ってこれなくなった人達もいて、そういう島のネガティブな側面、「島の宿命」もきちんと描きたかったので、大竹さん演じる母親に体現してもらいました。映画の中では直接描かれてはいませんが、母親がこれまでに背負ってきた時間の流れというものも踏まえて演技していただき、難しい芝居で、大竹さんしかできる人はいないと思いました。

◆映画のもう一つのテーマ「距離感」について

Q:「距離」というのは?
A:高校生の子ども達がいる沖縄本島と、両親が暮らす島とは360キロ離れています。離島はまわりが海なので、さらに距離を感じると思います。でも、子どもが島を出て行ったことによって、逆に、親子の心理的な距離は近づいたと感じる家族もいます。毎朝、子どもにモーニングコールをしたり、なんでもない時に電話をかけて声を聞いたりしているのです。かたや、家の中にいて毎日顔をあわせても、なんだか距離のある親子、家族もあります。物理的な距離と、気持ちの上での距離とは、必ずしもイコールにはならないと思い直しました。この映画がそういう家族のあり方を見つめ直すきっかけになればいいと思います。

Q:優奈と初恋の少年とが少し距離を置いて向き合って挨拶する姿を、引いた画でとらえたショットが印象的でした。
A:あの距離感ですね。シネスコサイズの画面の端と端に人を立たせて、最初に出会った時の二人にはこんな距離感があるということを表現する意味で、そういう構図にしました。この構図のショットは、他にも何度も入れていて、姉が帰ってしまい、父と娘が台所に立っている時も、二人を画面の両端に立たせています。この映画のもう一つのテーマは“距離”です。だから、そういう構図は、意識的に使うようにしました。

◆島の風景について

Q:日本の昔の田舎の風景を観ているような感じがしました。
A:南大東島のパノラマ観をスクリーンで表現するために、できるだけ引きの絵、広い絵を見せていこうと思い、劇場で観た時に、わっと広がる感じを出したくて、シネスコサイズにしています。画面の半分は空、半分はさとうきび畑みたいなパノラマ観をできるだけ出したいと思いました。

Q:海をバックに優奈が三線を弾いている場面は、いろいろなことが煮詰まってきて初めて、優奈と海が一緒に映っているという感じがしました。
A:南大東島は地形がすり鉢状になっているので、島のまん中にいると海が見えません。どこまでも大地が続いているような錯覚がして、北海道にいるように見えます。でも、海側にいくと、北大東島は見えますが、それ以外は360度、海ばかりです。本土の沖縄と遠く離れていることを実感します。優奈が海に向かって一人で三線を弾きながら歌うシーンは、彼女がこの島を出て行くことを、卒業コンサートの直前になって、あらためて強く意識し出した頃と考えて、撮った場面です。

Q:本土の緑とは色が違うと思いましたが、島の風景は、実際にその季節に撮ったのですか?
A:南大東島は二毛作をやっているので、さとうきびの生長の違いで、一年を表現することができました。さとうきびが生い茂って高くなっている畑と、植えたばかりの丈が低い畑と、使い分けています。農家の方にお願いして、畑の一角を刈りとらずに、映画撮影のGWまで待ってもらいました。収穫時期は1月から3月初旬頃までで、早朝とともに仕事を始め日暮れた後まで、集中的に一気に刈ります。雨が降らない日はすごく忙しいです。

◆島の人達の協力について~島全体が“撮影所”~

simauta-s3.jpgQ:2週間で撮影されたというわりに、一年間がとても丁寧に描かれていて、驚きました。
A:南大東島に渡ってから、ロケ自体は2週間、那覇でもロケは5日間ほどやっています。大事なのは準備です。撮影が始まるまで、島の人達と何度もコミュニケーションを重ね、お酒も飲み交わし、一緒に映画をつくってくださいとお願いして、撮影にのぞみました。島の人達には、相当の負担をかけたと思います。

僕だけでなくプロデューサーや製作の人達も、撮影が始まる1か月前から島に住み始め、下準備をしました。僕も何度も取材を兼ねて、島にはできるだけ通わせてもらいましたが、やはり東京から来た人間ということで、最初は警戒されて、打ち解けるまでに時間がかかりました。でも、いざ味方になってくれたら、本当に心強い人達で、島の人達がいなかったら映画なんてつくれないと思いました。島全体が“ひとつの撮影所”みたいな感じでした。エキストラが急に要るとか、急に雨が降ったから家の中に入ると、その家の人も協力してくれたり、急に晴れたから屋外のシーンを撮ることになったら、エキストラの方々をもう一度電話で呼び集めてくれたり、村営放送で、予定を変更して何時から何番のシーンを撮影しますと流して、皆を集めてくれたりもしました(笑)。

Q:島を出て行く子ども達の乗った船を見送るシーンとか、島の人達に臨場感がありました。
A:毎年、島の人達が経験している場面ですから、皆よくやってくれました。島の婦人会や青年会といった人達にはできるだけシナリオをお渡しして、エキストラという扱いではなく、出演者、スタッフという考え方で接しました。島のエキストラの方々にしても、ただ座っているだけでなく、絶対何かやってくれます。というのも、映画で描いていることは、島の人達自身が経験したことのある場面ばかりだからです。実際に子ども達を見送ったことがある親御さん達は、子ども達が乗った船を見送るシーンでは本当に涙を流していました。今どういう場面を撮っているか、できるだけ説明して、ただ意味もなく座っている人は一人もいないよう、皆、主人公の仲里優奈の15年間を知っている島の人という設定ですから、島の人たちも自ら乗って演じてもらえるよう、できるだけ細かくシーンの説明をしました。撮影現場では気付けませんでしたが、編集の時になって、島の人達のいい表情にたくさん気付かされ、「このおばあ、こんな顔してたんだ」とか、「このおじい、こんなしみじみしたいい顔してくれてるな」というのがいっぱいあって、島で撮った甲斐があったと感じ入りました。

Q:島の方言そのままだと、観客にはわかりにくいですが、あえて字幕はつけなかったんですね。
A:島の方言をどこまでやるのか、字幕をつけるかつけないか、という問題は、最初にありましたが、わからなくても大丈夫、伝わるはずという自信過剰なところがあって(笑)僕は、字幕は要らないという考えです。

南大東島は、東京の八丈島からきた人達が開拓した島です。だから八丈の言葉が残っていて、それは、沖縄の人達もわかりません。島で普段しゃべっている言葉は沖縄の言葉ですが、南大東島ならではの単語が少し残っていて、そういう言葉は島唄に取り込まれて残っています。

◆「十九の春」について

Q:優奈が失恋に近いかたちで島に帰ってきたところに「十九の春」という歌が流れますね。
A:映画の副題は『十五の春』なので、「十九の春」という歌とも何かリンクするものがあり、観客の皆さんもきっとこの歌を思い浮かべるかなと思い、それならいっそこの歌を使おうということになりました。歌詞もわりと場面にリンクしていて、シナリオ段階から入れていました。「十九の春」は、元々女性と男性のデュエットの返し歌で、映画では、女性が歌う部分の歌詞しか使っていません。

Q:優奈が失恋して家に帰ってきて、お風呂に入るというのは監督の思いつきですか?
A:お風呂に入って、手の傷が水にしみて、「あぁ終わったんだな。もううまくいかないんだ、私達」と、優奈があらためて思う場面をつくりたかったんです。沖縄では、お風呂に湯をはって湯船に浸かることは滅多になく、ほとんどシャワーという家庭が多いです。沖縄の映画スタッフには、20数年間湯船に入ったことがないという人もいました。だから、浴槽に湯をはるということが、父親のさりげない優しさを伝える表現になればいいかなと思い、このシーンをつくりました。

Q:順撮りですか?
A:完全な順撮りではありませんが、たとえば、正月の初詣の帰りに、父と娘が二人並んでさとうきび畑を歩いてくるワンカットは、父親と娘の距離感を伝える大事なシーンなので、二人の間に距離感が生まれていないと撮れません。だから撮影の後半で撮りました。そういうなにげないけれど大事な場面こそ、雰囲気が出てしまうので、極力、撮影を後半に持っていきました。

Q:先行上映がされた沖縄本土の人達の印象はどうでしたか?
A:南大東島のことは、知っていても、行ったことがない人がほとんどで、沖縄でもどこか忘れられているような存在でした。他の島と比べて、地理的にも全然違う場所にぽつんとあるので、行きづらいようです。全く島のことを知らず、この映画を観て初めて知ったという意見も多かったです。

Q:最後に観客の皆さんにメッセージを一言、お願いします。
A:この映画では、沖縄の南大東島の離島で生きる小さな家族の生活を丁寧に描きました。離島で生きている人々の苦しみや喜びや葛藤を描くことによって、家族の絆を見つめた映画になっています。この映画をとおして、観客の皆さんご自身の家族のありかたを少し考えていただけるきっかけになればいいなと思います。


 娘は、島に一人で残す父のことを思い、父は、旅立っていく娘のことを思う。その思いが最後の島唄「アバヨーイ」で交錯し、凝縮する。近年、親子の関係をここまで率直にまっすぐ見つめ直した作品も、なかなかないと思う。なかでも小林薫がいい。思春期の娘を持ち、言葉をかけたくてもかけにくい。一定の距離を保ちながら、静かに娘を見守る父の深い愛情が、寡黙なありようからにじみ出る。優奈の淡い初恋、島を出た母を慕う気持ちと裏返しの嫌悪感、優奈を慕う男の子の不器用な恋、母が娘を大切に思う気持ち、いろんな人のいろんな感情が島の美しい自然の中で奏でられていく。

 親のない子はいない。親への感謝の気持ちは、誰もが抱く共通のもの。最後の「アバヨーイ」をぜひ劇場で聴いてください。吉田監督の脚本、演出の腕は見事で、今年公開予定の『江の島プリズム』も楽しみだ。

(伊藤 久美子)

 

tanita-s550.jpg牛丼大好き!優香主演『体脂肪計タニタの社員食堂』舞台挨拶

(2013年5月16日(木)ワーナーマイカル大日にて)

ゲスト:優香(32)、浜野謙太(31)

 

(2013年 日本 1時間41分)
監督:李闘士男
出演:優香、浜野謙太、宮崎吐夢、小林きな子、草野イニ、草刈正雄

公開情報 : 2013年5月25日(土)~角川シネマ有楽町、ワーナーマイカル大日、TOHOシネマズなんば 他全国ロードショー

★作品紹介⇒ こちら

★公式サイト⇒ http://www.tanitamovie.jp/

(C)2013「体脂肪計タニタの社員食堂」製作委員会
 


 

~いつも食べてばかりの優香に、特殊メイクに苦労した浜野謙太~

 

tanita-550.jpgのサムネイル画像 「TANITA」(タニタ)といえば、世界初の体脂肪計を開発した健康計測機器メーカー。そのタニタの社員食堂がテレビで紹介されるようになったのは、どの定食もカレーライスも500kcal前後という低カロリーなのに美味しいという評判が高まってのこと。さらに刊行されたレシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂~500kcalのまんぷく定食~』は520万部を突破するベストセラーとなる。 さらに、タニタの社員の健康維持を目的にした社員食堂にまつわる事実を基に映画化が決定! 食事療法によるダイエットの極意とノウハウを分かりやすいビジュアルで詳しく教えてくれると同時に、傾きかけた会社を立て直そうと奮闘する二代目副社長や社員らに元気をもらえ、アクティブな気持ちになれる。何度もダイエットに失敗している人必見の映画だ。

 中々就職できない栄養士の菜々子を演じた優香と、気弱でおデブの二代目副社長の幸之助を演じた浜野謙太が、5月25日の公開を前に舞台挨拶を行った。「牛丼大好き!」という優香は、昨年発行された写真集の撮影のため改めて体作りに挑戦。その際、食事をイチから見直し、ダイエットに成功。そして本作の出演依頼があり、食事によるダイエットを体験したばかりで、縁のある仕事と感じたという。一方、最近映画出演が続く浜野謙太は、作品ごとに目を疑うような変貌ぶりを見せ、映画ファンを驚かせている。今回は、デブの特殊メイクで、これまた見まごうばかりの変貌ぶりで、気弱な可愛いおデブちゃんを演じて楽しませてくれる。
 


 

【舞台挨拶】

tanita-s1.jpg――― 最初のご挨拶を。
優香:栄養士の菜々子を演じております優香です。今日はありがとうございました。とても楽しい作品ですので、皆さん楽しんで下さい。
浜野:副社長の幸之助を演じております浜野謙太です。ポスターだけ見たら「お前誰だよ?」という感じですが、シリコンいっぱい付けたり、頑張ってトレーニングして外見を変えたり、いろんなことに挑戦した作品です。先の見えない日々もありましたが、今日こうして皆さんに見て頂けることになってとても嬉しく思っております。今日はよろしくお願いいたします。

――― 完成した作品を見た感想は?
優香:とにかく、可愛いです! 幸之助を始め、肥満3(スリー)が可愛い! 見終わった後に、楽しかったなとか、お腹も空いたなとか、明日から頑張ってみようかなと思いました。
浜野:優香さんのキレ具合が面白い!肥満3に対しちょっとイラッとするんです。

――― それが優香さんの役でしたが、撮影は楽しかったですか?
優香:とっても楽しかったです。「こら~っ!」と怒鳴ったりする役だったので、スカッとしました。それにしても、こうもダメな人っているのかな?と思いました(笑)。
浜野:僕は、ダメな人の気持ち、よく分かります。

――― 映画の中では美味しそうなお料理が沢山出てきますが、実際それらを食べたのですか?
 tanita-s5.jpg優香:はい、朝・昼・晩と食べてました。美味しいものを沢山食べられて、ホント楽しかったです。
浜野:撮影で使う料理を作る厨房があって、そこへ行くといつも優香さんが先に行ってて、美味しそうにパクパク食べてるんですよ(笑)。
優香:はい、どれも低カロリーでヘルシーなんで、いっぱい頂きました!

――― 先程言われた「先の見えない日々」とは?
優香:やっぱり特殊メイクですね。浜野さんはすごい時間掛かったんですよね?
浜野:6時間位掛かりました。僕だけ夜中の2時入りとか!? 取るのにも1時間位掛かりました。メイク中は気持ちいいんで寝てましたが……。

――― 優香さんも特殊メイクされたのですか?
優香:はい。高校生の頃はポッチャリさんということでしたので、特殊メイクして頂きました。女子からは「可愛い!可愛い!」って好評でしたが(笑)。
浜野:男性から見ると、「優香」というパブリックイメージが大きかったので、それが壊れた瞬間のショックは大きかったですよ。
 tanita-s7.jpg優香:『FLaU(フラウ)』という雑誌の今月号の表紙に、私の太った姿と今の姿が載っているのですが、サマーズの大竹さんに、「これはマイナスイメージだな!」って言われました(笑)。

――― なんか抱きしめたくなるような可愛らしさでしたが。
優香:友達になりた~い!って言われました。

――― 大阪は「食い道楽」の街ですが、何が一番好きですか?
(二人一緒に、「せ~の!」と声を合わせて言おうとしたら、別々の食べ物を言ってしまった!)
浜野:インデアンカレー! 最初甘くて、後から辛さが襲ってくるという。以前ライブ前に食べて大変なことになってしまったことがあります。
優香:私は「たこ焼」です。駅で買って新幹線の中で食べるという、実に迷惑な話なんですが…蓬莱の豚まんも好きです。

――― 美の秘訣は?
優香:え~っ!? ……やはり、食べて、運動して、よく寝ることですね。不規則な生活なんですが、寝ないともう持たなくなってきました(笑)。

――― これから映画をご覧になるお客様には、その美味しい食事の部分をご堪能頂けるかと思いますが、最後のメッセージをお願いいたします。
 tanita-s4.jpg浜野:「太っている人を可愛く撮ろう!」という監督のコンセプトがありまして、太っているからダメだとか、痩せているからダメだという訳ではなく、心と体のバランスが大事だということをテーマにしています。心も体も元気になれる映画です。菜々子と幸之助を応援する気持ちで見て頂けたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。
優香:去年写真集を出したのですが、食の面からも自分自身を見つめ直す機会がありました。そしてこの映画のお話を頂き、何かご縁のあるお仕事だなと感じました。映画館を出る時に笑顔になれればいいなと思います。どうかごゆっくりとお楽しみ下さい。
 


 

【囲み取材】

――― 写真集を出した後に出演依頼があったのですか?
優香:去年の4月に写真集を出して、夏くらいにこの映画のお話を頂きました。

tanita-s2.jpg――― 撮影で痩せましたか?
優香:沢山食べていたんですが、撮影中はよく動いていたので痩せましたね。撮影が終わると、ホッとしてまた太りましたが。
浜野:僕は激太りでした(笑)。

――― 食生活への意識の変化は?
浜野:野菜から先に食べるといいというのも初めて知りました。いつもご飯からとか、一番良くない食べ方ですね。

――― 現場の厨房にはどれくらいの頻度で行っていたのですか?
優香:毎日3食ですね。お腹いっぱいになるまで食べていました。でも、野菜のゆで方も固めで、よく噛まないといけないので、ダイエットには効果的だったと思います。

――― 元々太らないタイプ?
優香:太るタイプです。家系図を見てもみんな同じような体形しています。太る星の下に生まれているので、気を抜くとポッと太っちゃうタイプです。何を食べると太るかとか、バランスのいい食事の摂り方とかを知りました。とにかくご飯が大好きで、それに合う納豆やめんたいなどのおかずも大好きで、つい食べ過ぎちゃいます。

――― ストップがかかったことは?
優香:牛丼ばかり食べていたことがあって、その時には止められました。今でも時々食べていますが、サラダを付けるようになりました。食べたい物は食べる!という主義です。

――― 運動はどれくらい?
優香:ジムへは週に1度くらいですが、家で柔軟体操をしています。肩甲骨を動かすと太りにくいらしいです。
浜野:へ~そうなんだ~、何分くらい?
優香:適当!(笑)

――― 自分でも料理しますか?
優香:自分ではあまりしません。プロにお任せするのが一番かな(笑)。タニタ食堂ではダシをしっかりととって濃い味付けにはしていませんでした。とにかく、ダシが効いてましたね。

――― 優香さんのキレ具合は?
浜野:自然でしたね~(笑)。こんなの優香じゃない!なんて思わなかったし、ほんと自然でした。僕自身、「ダメだな~」と思いながら演じていたので、そういう時にバシ!っと言ってもらえて気持ち良かったです。卵の殻を投げつけるシーンは面白かったです。

――― 最近キレたことは?
優香:自分にイライラして、つい独りゴト言っている時があります(笑)。

 


 

tanita-s6.jpg 細見の体をゆるやかな黒のシフォンドレスで包んで登場した優香さん。そのエレガントな装いにいつもより大人っぽく感じられたが、自分を語る様子は至って素直で、どんな表情をしても可愛いらしかった。本作では主演を務め、インド映画ばりのダンスを披露したり、キレて怒鳴ったり、一所懸命レシピ研究に没頭したりする姿も、どれもこれも可愛らしく綺麗! 彼女の魅力満載の映画でもある。

 それにしても、浜野謙太には今回も驚かされた。この日は優香に質問が集まったが、浜野謙太の本作での健闘ぶりは主演男優賞もので、彼の役作りについてや、父親役が草刈正雄というのについても質問したかった。いつも“不細工キャラ”のイメージで出演する浜野だが、終始穏やかな表情で優香の語りに相槌を打ったりフォローしたりする様子から、実際には癒し系のジェントルマンなのでは、と感じた。二人とも身長157㎝の可愛らしいコンビ。この二人の傍にいるだけで癒されるようだった。

(河田 真喜子)

hajimari-s550.jpg映画『はじまりのみち』日本映画界が誇る!! 原×細田×樋口3監督が映画への思いを語る

『はじまりのみち』
監督・脚本:原恵一
出演:加瀬亮 田中裕子 濱田岳 ユースケ・サンタマリア、宮﨑あおい
企画、制作、配給:松竹

201361日(土)~全国ロードショー 

★作品紹介⇒ こちら

★公式サイト⇒ http://www.shochiku.co.jp/kinoshita/hajimarinomichi/ 

(C2013「はじまりのみち」製作委員会

 『二十四の瞳』『喜びも悲しみも幾歳月』など数々の名作を生み出し、日本映画の黄金期を代表する木下惠介監督は、21才で松竹蒲田撮影所に入所し、31才で監督デビューするまでの下積み時代を、東京・蒲田で過ごしました。生誕100年を記念して製作された映画『はじまりのみち』は、木下監督の戦時中の実話をもとに母子の情愛を描いた物語。『河童のクゥと夏休み』『カラフル』といったアニメーション作品で高い評価を受け、同監督を敬愛する原恵一監督が初めて手がけた実写映画としても注目されています。

 つきましてはこの度、映画『はじまりのみち』の完成を記念し、原監督をはじめ、『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』などで知られるアニメーション映画監督の細田守氏、実写や特撮、アニメなどの幅広い分野で活躍する映画監督の樋口真嗣氏をパネリストに迎えた本日のシンポジウムが開催されました。



【シンポジウム概要】

 実施日:512日(日)1525 場所:東京工科大学蒲田キャンパス3号館地下1 片柳記念ホール(東京都大田区西蒲田5-23-22

パネリスト:原恵一監督 細田守監督 樋口真嗣監督(以上3名予定) コーディネーター:濱野保樹(東京工科大学メディア学部教授)



【シンポジウム内容抜粋】試写会終了後に実施 一般のお客様の前にて

濱野:細田さんと、樋口さんは原監督の初実写映画をご覧になっていかがでしたか?

hajimari-s3.jpg細田:原監督のアニメのファンでずっと見ていたのですが、実写をやると聞いて若干不安に思うところもありました。アニメとは勝手が違うため、原さん独自のテイストが無くなってしまうと思ったからです。実際に出来上がった作品を見てみると、静かだけど力がある寸分違わぬ原恵一スピリットが作品全体に漂っていて、安心しました。

樋口:僕は撮影現場を見に行った時に安心しました。スタッフが監督を愛していて、みんなで支えている感じがしたからです。見学したとき、リヤカーが出発するところのシーンだったのですが、もう少し待つと日が射すから待とう、という時の現場がとても良い雰囲気でした。贅沢な製作環境では無かったと思うが、適格な画作りと芝居がリッチで、河原でのやり取りが特に好きです。あとは、宮﨑あおいさんがとても良かった。“学校の先生”という役での、望遠での横顔が雄弁に語っているな、と思いました。

濱野:初実写映画ですが、実写を撮りたいという思いは前からあったのですか?

原:前向きにどうしても撮りたい、という感じではありませんでした。ただ、木下監督に光を当てたいとずっと思っていた自分の想いに嘘をつきたくなくて、今回引き受けました。今回の映画は、当初脚本のみでの参加予定だったのですが、やるしかないなと思い、自信は無かったのですが、自ら監督をやってみようと手を挙げ挑戦しました。

濱野:実写映画を撮影するにあたってアニメと違った点、苦労された点はどこですか?

hajimari-s1.jpg原:アニメは机に向かっての1カット1カット積み重ね。実写は大変な撮影のシーンの際に、スタッフからの要望があった時だけ画コンテを作成する、という感じでした。カット割りもカメラマンさんに頼っていました。実写はアニメと違って天候の影響も受けるので、そういう意味では大変でしたね。雨降らしも初めて体験したのですが、冬の山での雨降らしは俳優さんもブルブル震えながらの撮影で、現場は殺気立っていましたね(笑)撮り終えてからは、アニメーションと同じ作業でした。映画になっていない場合、アニメは画をイジれるけど実写ではできない。『はじまりのみち』は撮り足す必要もないくらい、ちゃんと映画になっていたので、良かったです。今回、実写とアニメの違いは本当に感じました。実写は撮影が終わるまでずっと走り続けている感じでした。 

濱野:原監督は今後も実写を撮るのでしょうか?

原:そう簡単ではないので、調子に乗って実写にも!という気持ちはありません。
細田:原監督が実写にいくと、毎年原監督の作品が見られますね!(アニメの製作期間が実写よりも長いため。) 

濱野:3人にとっての「はじまりのみち」、映画人としての挫折と再生を教えてください。

樋口:僕は、自分の仕事を俯瞰してみれないタイプ。本能で突き進む事が多いので、もう少し俯瞰してみた方が良いかなと。映画を監督するってこういう事なんだなとこの映画を見て気づかされました。映画を作るのは良い事だなと思いました。

細田:実は僕自身、劇中の映画の中と気持ち的には同じ体験をした事があります。作品を作っている最中に、母が倒れてしまい、更に諸事情で映画が出来なくなった事がありました。看病しろと言っていた母が、看病に戻ってみると一から全部無しにして実家に戻るのはありえない、と母に言われました。『はじまりのみち』の内容が自分の体験とそっくりで、当時の自分を見ているような気分になりましたね。

原:映画監督の話なので自身と重ね合わせて書いてた気もします。この仕事が出来た事も運命的。毎日ブラブラしている時にこの依頼が来ていなかったら関われていたどうかわからないですし。偶然なんだけど、違う何か運命めいたものも感じます。 

濱野:『はじまりのみち』をご覧になった会場の皆様、これからご覧になる皆様へのメッセージをお願いします。 

hajimari-s2.jpg樋口:初めて見てから2か月、思い出してもじわじわ来る。田中さんのラストシーンで空を見上げて泣くシーン等を思い出すとグッときますね。10年後見たとしても良い映画。そして明らかに10年後、20年後に残る映画だと思います。会場にいる方は試写会でタダでご覧になったという事なので、最低でも5人以上に進めてください(笑)

細田:木下惠介監督生誕100年記念映画と聞いて、ビビッている人もいるかもしれませんが、気にしなくて良いと思います。若い人や生きている中で停滞感を感じている人、モヤモヤしている人がこの映画を見てまた「はじまりのみち」へ踏み出す事が出来るかもしれない。そういった意味で若い方がたくさん見て頂くと有意義じゃないかと思います。そしてご覧になることで、木下惠介監督の映画を見たくなる、という見方で良いのではないかと思います。

原:初めて実写で監督をして、この歳でこんなにたくさん初めての経験、プレッシャーを感じる事があると思ってなかったです。やれてよかった。出来上がった作品も似たような作品が思い当たらないので、木下惠介監督作品のような過激な作品に出来たのではないかと思っています。今日の話を聞いてもう一度確かめたいと思った方は、ぜひ劇場に足をお運びください。



【パネリストのプロフィール
原恵一(はら けいいち)
1959年生まれ。群馬県出身。PR映画の制作会社を経てアニメ制作会社に入社し、「エスパー魔美」をはじめ数々のアニメの演出を手掛ける。
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(02)は、第6回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞や第57回毎日映画コンクール・アニメーション映画賞など多数の賞を受賞。その後も『河童のクゥと夏休み』(07)やアヌシー国際アニメーション映画祭で特別賞と観客賞を受賞した『カラフル』(10)など精力的に作品を作り続け、国内外で高い評価を得ている。『はじまりのみち』で実写初監督を果たした。

細田守(ほそだ まもる)

1967年富山県出身。91年東映映画(現・東映アニメーション)入社。アニメーターとして活躍後、演出家に転向。その後フリーとなり、『時をかける少女』(06)、『サマーウォーズ』(09)を発表。両作品とも国内外で多数の賞を受賞し、2010年ベルリン国際映画祭にも正式招待された。2011年には自身のアニメーション映画制作会社「スタジオ地図」を設立。自ら監督・脚本・原作を手掛けた最新作『おおかみこどもの雨と雪』(12)では、興行収入42.2億円、観客動員数344万人を超える大ヒットを記録し、第36回日本アカデミー最優秀アニメーション作品賞を受賞した。
樋口真嗣(ひぐち しんじ)
1965年生まれ。東京都出身。『ゴジラ』(84)に造形助手として参加。特撮監督を担当した『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95)で日本アカデミー賞ほか数々の賞を受賞。以降『平成ガメラ3部作』すべてに携わり、絶大な支持を集める。『ローレライ』(05)で長編映画監督デビューし、大ヒットを記録。その他の監督作に『日本沈没』(06)、『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(08)。犬童一心監督と共同監督した最新作『のぼうの城』(12)で日本アカデミー最優秀監督賞を受賞した。

 


 

enpitu-550.jpg

『赤鉛筆、青鉛筆』 ジュゼッペ・ピッチョーニ監督トーク《イタリア映画祭2013》

(Il rosso e il blu  2012年 98分)
監督:ジュゼッペ・ピッチョーニ (Giuseppe Piccioni)

出演:マルゲリータ・ブイ、リッカルド・スカマルチョ、ロベルト・エルリッカ

(大阪では、5/12(日)11:00~上映)

★座談会の模様は⇒こちら
★開会式と作品紹介Part.1は⇒こちら



~教育現場に射す一条の光を求めて~

 

 若き教師ジョヴァンニは、臨時教員としてローマの高校に赴任する。そこには、「教育は学校の中だけでいい。」というクールなジュリアーナ校長と、「未熟なままでも卒業させる。困るのは本人だ。」と教育への情熱を失い、学校そのものに幻滅を感じているベテランのフィオリート先生がいた。この3人の教師が出会う生徒たちの変化によって、失いかけていた教育への希望を見出していく。出席日数が足りない女子生徒や、親に見捨てられ転校を余儀なくされる男子生徒、かつて聴き逃した授業を大人になってから聴きにくる生徒、授業中ふざけてばかりいる生徒など、どこの国にでもいるような問題を抱えた生徒たち。そして混乱した教育現場で悪戦苦闘する教師たちの様子が、3人の教師を照合しながら味わい深く描出されている。

pichoni-1.jpg この3人の教師を演じた俳優たちがまた凄い!『もうひとつの世界』『イタリア的、恋愛マニュアル』『素晴らしき存在』などで定評のあるベテラン女優:マルゲリータ・ブイがクールなジュリアーナ校長を、『西のエデン』『あしたのパスタはアルデンテ』『昼下がり、ローマの恋』などでキラキラ輝く瞳で魅了するリッカルド・スカマルチョが新人教師を、イタリア演劇界の至宝と呼ばれるロベルト・エルリッカが知的人生を否定しながらも希望を見出していくベテラン教師を演じて、それぞれ存在感を示して爽やかな印象で締めくくっている。教育現場の問題だけをクローズアップして描くのではなく、教師の立場から、人と人とのつながりを優しく見つめたジュゼッペ・ピッチョーニ監督ならではの職人技が光る作品だ。

(河田 真喜子)



――― はじめに。
監督:日本へはしばしば来ております。この映画祭も5回目です。本日はお出で下さいましてありがとうございます。この映画はイタリアの高校を舞台にしておりますが、教師と生徒に焦点を当てて描きました。フランソワ・トリフォーの格言「現実をありのままに伝えよ」の通り、イタリアが抱える問題の一部を悲劇的に捉えず、喜劇的にごくシンプルに捉えたつもりです。

pichoni-2.jpg――― イタリアの学校や生徒の状況が抱える問題は日本と似ているのでは?
学校を舞台にしておりますが、退学、無知、信頼できない教師など、教師や生徒の問題をリストアップするつもりで作った訳ではありません。知識を授ける者、授かる者との関係を描きたかったのです。私が問題提起したかったのは、「若者を信じよう。教育はまだ何かできるはずだ!」ということです。
学校の外で起きるネガティブな事でも、学校で何か手を差し伸べられるのでは?と。先生と生徒の関係について描きたかったのです。ディケンズ作品に出てくるような過去を背負って生きている存在の年老いた先生は、高貴なイメージだが現実に失望しています。彼の皮肉はファウストのようで、今までの知識は何の役にも立たなかったという、まさに今の教育の現状を表現しているのです。

――― それでもまだ学校に希望があると信じたいです。
まだ希望は消えていません。ジュリアーノ校長が、親に見捨てられ他の高校へ転向して行った生徒を訪ねるシーンで、「何を持ってきたの?」と聞かれ、かつては「馴れ馴れしく言わないで」と言っていた彼女が、嬉しそうにバッグの中を見せようとします……そこでカメラはパンして終わります。それは、「教師は学校の中だけで生徒に構えばいい」とか、「子供は要らない」とか言っていたクールな校長自身の変化を象徴しています。彼女がその生徒に持ってきたのは「希望」なんです。今後も彼を見守っていくことでしょう。それが大人の役目であり責任でもあるのです。かつての生徒が老先生の「古典主義とロマン主義」の授業を聴きに来ます。まだ学校教育も何か出来るのではないか?それを描くのが映画の義務なのではないかと考えます。

――― 先生も生徒も意図せずに何かを探していたのですか?ソフィアのペンの意味は?
そうですね~二重構造になっているのが映画の秘めたる魅力です。皆さんが独自に解釈していくものです。私の意図は、若い先生と老先生は合せ鏡のような関係にあり、若い情熱を持って教育現場に入って来て、疲れ果てて出ていくのです。
お気付きでしょうか?最初のナレーションで、老先生が「これが私の姿だ。かつては情熱を持っていた。」と語ります。若い教師に反感を持ちながら、同時に興味を持っていたのです。情熱のある若い教師だって間違いを犯します。先生も生徒も皆何かを探し求めているのです。最初は確信を持っていたが、絶望、楽観、厳格な規則、混沌とした世界が彼らの確信を揺るがすのです。生徒たちの中の多様性や無秩序がそうなんです。大人が知恵を授けるだけではなく、生徒が学ぶためには「人を笑わせるのも知性の活路なんだ」というセリフのように、お互いを求めあって成長する場が、学校なんです。

――― 『もうひとつの世界』が6月に公開されますが・・・?
13年前に発表した作品なんですが、公開して下さって感謝しています。
作品の中の言葉で、自分たちを捨てた母親を探しているが、「なぜこの娘はシスターになった?」「神はいると仮定したとしても、祈り過ぎなのでは?」「愛し過ぎることなしに、人を愛したことにならない」。この映画は、二人の人間がリミットを超えて愛する映画です。
 



【『Viva!イタリア』上映のお知らせ】

上映作品『ハートの問題』『最後のキス』『もうひとつの世界』

  • 2013年6月29日(土)~7月19(金)⇒ヒューマントラストシネマ有楽町
  • 2013年8月開催予定⇒テアトル梅田

musuko-550.jpg

『それは息子だった』ダニエーレ・チプリ監督トーク《イタリア映画祭2013》

 

(È stato il figlio 2012年 90分)
監督:ダニエーレ・チプリ
出演:トニ・セルヴィッロ、ジゼルダ・ヴォローディ、アルフレード・カストロ、ファブリッツォ・ファルコ、

(大阪では、5/12(日)13:40~上映)

★《イタリア映画祭2013》座談会の模様は⇒こちら
★《イタリア映画祭2013》開会式と作品紹介は⇒こちら

★『赤鉛筆、青鉛筆』ジュゼッペ・ピッチョーニ監督トークは⇒こちら



~悲劇をブラックユーモアに転化できるイタリアのパワー~

 

 郵便局のロビーでひとりの男が、このパレルモで起こったある事件について語り出す。それは悲劇から始まり、奇怪な程の変遷を経て幸運を掴み、さらにそこから想像を絶する劇的顛末へと導く。謎めいた話の展開に他の待合客も引き込まれていく。物語もさることながら、父親を演じたトニ・セルヴィッロは、『湖のほとりで』『イル・ディーヴォ』『ゴモラ』『至宝』などでも強烈なインパクトを植え付けた名優。今回もお金によって怪物と化す、まさに怪演で見る者を圧倒する。

 年老いた両親と妻と収入のない息子と幼い娘の6人暮らしのニコラ。生活はニコラひとりの肩に掛かっており、毎日廃棄された船舶などから資材集めに精を出していた。ところがある日、最愛の娘がマフィアの抗争に巻き込まれ死んでしまう。悲嘆にくれるニコラだったが、多額の賠償金を政府から支払われること知って、その受領に悪戦苦闘する。待ちに待った賠償金を手にしたニコラは、分不相応な高級車を買って、人が変わったように働かなくなる。そして、さらに悲劇がこの一家を襲う。

chipuri-1.jpg このような劇的展開でカタルシスを感じさせてくれる映画も珍しい。『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』で撮影監督を務めたチプリ監督は、時代の変遷や、大きな集合住宅に向かう登場人物たちの後姿や、賠償金を得てからの生活の変化など、目に焼き付くような色彩や強いコントラストの映像でいやがうえにも釘付けにする。背景に流れるオペラ楽曲がまた劇的展開を助長する。だが、この映画は決して暗くて重い悲劇ではない。どこか愚かしい人間の営みの中に笑いを誘う描き方をしていて、そのユニークな演出と怪優たちの競演がまた面白い。

(河田 真喜子)



――― はじめに。
ダニエーレ・チプリ監督:この映画を紹介できてとても嬉しいです。シチリアで実際に起こった事件を基に作られています。

――― この物語との出会いと、映画化のキッカケは?
ロベルト・アライモ原作の小説を映画化しないかと持ちかけられたが、数か月迷っていました。最初飛ばし読みして、この小説のリアリズムとうまく折り合いがつかなかったのです。でも、ある日郵便局へ行って順番を待っていたら、ある男が来て独り語りを始めました。彼の現実認識が自分が小説と対峙する様子と重なり、これは映画化できる!と思ったのです。将来を絶たれた少年を主軸にし、一体この少年に何が起こったのか?と謎をかけながら引き込む。実際この事件の裁判記録を読んでリサーチしました。35年も服役したそうです。

chipuri-2.jpg――― ラストでおばあさんが突然リーダーシップをとってびっくりしたが、観客の反応は?
どこの国に行っても、観客の反応を見たいので上映中はなるべく客席にいるようにしています。やはりラストシーンはドラマチックで、反響は大きい。この家族は貧しい暮らしの中でお金を求めて止まないという、イタリアではごく普通の一家。あまり重くなり過ぎないよう、アメリカのアニメ『ザ・シンプソンズ』のような一家を想定しました。イタリアでは似たような事件はよく起こっていて、少年は母系社会の犠牲になったと思っています。そこで、原作と違って、祖母の存在を際立たせて恐ろしい形相で表現したのです。

――― 製作するまでのイメージは?
私の仕事の仕方は変わっていてハチャメチャなので、脚本は共同で執筆することにしています。そこから絵を空想して描き出す。自分の中にストリーテラーのような語り部がいて、子供の頃からあり得ない場所を想像するのが好きでした。今回はまずパレルモの要塞のような街(島)を想像し、そこに役者を設定し、演劇的な演出と映画をミックスさせる方法で撮影に入りました。

 

waranotate-ss550.jpg『藁の楯 わらのたて』公開記念舞台挨拶(東京)

カンヌ国際映画祭公式選出作品

【日  時】 4月27日(土)            【場  所】 丸の内ピカデリ―1 (千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン9F)【時  間】 13:00 舞台挨拶開始(30分程度) 

【登壇者】大沢たかお、松嶋菜々子、藤原竜也、伊武雅刀、永山絢斗、三池崇史監督 

 

GW最大の注目を集めるスリル&サスペンス超大作、「藁の楯 わらのたて」が、いよいよ初日を迎えました。つい先日、第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門へ公式に選出されることも決定したばかり。

ヨーロッパが認めた本作が、世界に先駆け発進します!!10億円の懸賞金がかけられた凶悪犯《クズ》を、48時間以内に福岡から警視庁に移送する、5人のSPと刑事の葛藤を描いた本作は、マスコミ試写が始まるや、そのスケールやスピード感、大迫力の映像が話題を集めました。台湾新幹線を使った大掛かりなロケや、高速道路での爆破シーンなどスケールの大きな撮影で、日本映画の限界に挑戦した本作。このたび、公開を記念して大沢たかお、松嶋菜々子、藤原竜也と豪華キャストが劇場に駆け付けました。撮影された去年の夏の暑さと同じ位、熱い想いで完成させた作品の初日を迎え、あますところなく思いを語っております。 


 

waranotate-osawa.jpg公開記念舞台挨拶

大沢この作品は昨年の夏からここにいるキャスト、監督、そしてスタッフと2ヶ月間みんなで力を合わせてプロとしての挑戦を掲げて撮った作品ですので楽しんでいただけたら嬉しいです。
松嶋:今日は普段の舞台挨拶とは違い、作品を観ていただいた後で舞台に立つので違った緊張感をもっています。昨年の夏の暑い中撮った作品ですごく凝縮した時間を過ごせました。三池監督や他のキャストの方々とご一緒できたのが楽しい時間でした。

 


  waranotate-fujiwara.jpg藤原:初日から2日目、多くの人に集まっていただきありがとうございます。今、ここで皆さんが僕に手を出しても一億円ということですけど(笑)本当に感謝しています。
伊武:良い天気ですね~良い天気の中、連休の初日に来ていただいてすごく嬉しいです。この映画は去年とっていたんですが公開するのを楽しみにしていました。


 

 


 waranotate-nagayama.jpg永山:GW初日から天気も良いし、気分がよいです。
三池監督:精一杯作った作品が公開を迎えました。今回はカンヌのコンペティション選出も有り、我々に心地よい緊張感を与えてくれて幸せです。

MC真夏に二ヶ月間の撮影をされたとのことですが現場の状況、雰囲気はいかがでしたでしょうか?
大沢:話が緊迫しており、昨年の夏はすごく暑かったのでそういった意味では良い緊張感に繋がったのかなと思います。みんなで力を合わせてすごく良いチーム枠の中で撮影ができました。

 

waranotate-matusima.jpgMC役作りに関してはいかがでしたか?
大沢:役作りに関して苦労はなかったですが、みんなが日々作品と格闘していました。
 松嶋:SPに見えるように努力しました。拳銃の構え方、身のこなし方などはすぐに身につくものではないので時間をかけてトレーニングしました。
藤原:お二人は最後まで集中力を切らさずに最後まで突っ走ってくださったのですごく頼もしかったです。難しい役柄ですがこの映画を三池監督とこのメンバーで組めることがすごく楽しみでした。

MC:凶悪犯を演じた藤原さんはいかがでした?
三池監督:あれは演技じゃないんだよ。割と素なんだよね。お酒が入るとあんな感じになってしまうんですよ(笑)
お芝居といっても完全にお芝居ではないんですよ。少女が好きということではなくて一つの個性として何かを隠して生きているという部分を演じてくれた。

 

MC三池監督はいかがでしたか?
松嶋:監督は現場でもユーモアを持ってみんなに接してくださるので緊迫したお話ですが、良い緊張感と、良い和み感で集中できました。
大沢:俳優を信じて任せてくれる方で、言葉ではなく自分の体で演じて表現して説明してくれる方なのですごく信頼できる監督でした。
waranotate-ibu.jpg伊武:九州の刑事に見えるように努力しました。普通は一つのシーンをリハーサルしてから撮ることが多いんですが、三池さんは(リハーサルを)やらないんですよ。次どうくるのか役者としてもわからないから緊張するし、面白い角度から来るし、こういう映像になるのか、という驚きもあって。白紙でいられるんで、非常に楽しい現場でした。
永山:ずっと緊張していました。演じるキャラクターは普段と違うのですごく快感を感じていました。

MC大量のパトカーや護送車を使ったりとスケールの大きな作品ですがいかがでしたか?
三池監督:我々日本の映画を撮っている人から見たらスケールは大きいかもしれないが、ハリウッドの人からするとそうでないかと思います。なのでスケールを売りにしているつもりではないです。ただ清丸を移送するためにはこのぐらい必要と思って撮っていたら結果的にこうなりました。今回、手作りなんですよ。日本で映画用に使えるパトカーが15台ぐらいなので、白い車を買ってきてみんなで塗ったんですよ(笑)

waranotate-miike.jpgMC高速鉄道のシーンは台湾で撮ったんですよね?
三池監督:JRの人が貸してくれないんです(笑)それどころか東京ではパトカーのランプをつけて撮っちゃいけないんで僕らは地方に撮影をしに行くんです。映画を作る人間からすると、映画を撮りずらい場所になっている。撮りやすい場所になっていってくれたら嬉しいですね。


MC最後に一言お願いします。
大沢:GW初日にこんなに沢山の人にお越しいただき感謝しています。良いGWをお過ごし下さい。


 

大沢たかお 松嶋菜々子 岸谷五朗 伊武雅刀 永山絢斗 余 貴美子 / 藤原竜也 / 山﨑 努
原作:木内一裕「藁の楯」(講談社文庫刊) 監督:三池崇史
主題歌:「NORTH OF EDEN」氷室京介(ワーナーミュージック・ジャパン)Produced by Rob Cavallo
配給:ワーナー・ブラザース映画

www.waranotate.jp     www.kiyomaru-site.jp

26(金)新宿ピカデリー他 全国ロードショー

 


★カンヌ国際映画祭公式選出、おめでとう!!!

世界が選んだ、日本のエンターテイメント

『藁の楯 わらのたて』

                

GW大注目のスリル&サスペンス超大作「藁の楯 わらのたて」。

4月26日(金)の公開を目前に、本作が、来月15日(水)~26日(日)まで開催される第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門へ公式に選出されることが決定した!!!!!

カンヌ国際映画祭と言えば、世界三大映画祭の一つであり、

毎年数千人の映画関係者が集まり、世界各国のマスメディアから注目されることで知られる最大級の映画祭。

なかでもコンペティション部門は、世界中の2000~3000本の映画の中から、わずか20本前後しか選ばれない狭き門で、最高賞であるパルム・ドールの行方にも注目が集まる。前回のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『愛、アムール』がアカデミー賞外国語映画賞を受賞したことも記憶に新しい。

 

三池監督が、台湾新幹線や開通直前の高速道路でのロケをするなど“日本映画の限界に挑戦”し、映画出演のオファーを受ける前から原作を読んでいた主演の大沢たかおも「映画化されるならハリウッドがするだろうと思っていた。日本映画でこの作品にトライすると聞いてすごいことだと思った」という本作は、日本映画の枠を飛び出すハリウッド級のスケールと、葛藤を抱えながら任務を全うする強くも脆い人間の姿、次の世代への希望を繊細に描いている。

海外でも熱狂的な人気を誇る三池監督。作家性の強い作品や、深く趣のある作品がラインナップされることの多いカンヌ国際映画際において、ハリウッドのようなダイナミックな展開と人間の真理を描いたドラマ性を両立させた本作がヨーロッパに認められたことは、世界における日本映画の新たな可能性を期待させる。

また、三池監督作品としては『一命』に続く2回目のコンペティション部門選出、3年連続出品となり、カンヌ常連で『キル・ビル』『パルプ・フィクション』などのクエンティン・タランティーノ監督など、世界の名だたる監督達と、名実共に肩を並べることとなる。

 


 

<大沢たかおコメント>
カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出され、心から嬉しいです。昨年の夏の撮影から、スタッフとキャストが一生懸命になって様々な挑戦をしながら完成させた映画です。世界中の映画の中から選ばれた事を光栄に思います。

<三池崇史監督コメント>
コンペティションへの招待=ビックリ&光栄です。正直申しますと意外です。それだけに大感動です。だから、いい気になってレッドカーペットを歩いてこようと思います。それが、いい宣伝になって沢山の人に『藁の楯 わらのたて』を観ていただけると嬉しいです。そう、私はそんな小さい男です。しかし、小さいからこそ生み出せる映画がある。カンヌはそれを見逃さなかった。凄い映画祭だと思います。ありがとうカンヌ。

 <主題歌・氷室京介コメント>
三池監督、出演者の皆様、関係者の皆様、カンヌ映画祭選出おめでとうございます。
世界に認められる作品に参加させて頂けた事は、大変光栄なことで嬉しく思います。



 凶悪犯の命に10億円の懸賞金がかけられた!全国民の殺意が向けられるなか、48時間以内に凶悪犯の身柄を福岡から警視庁に移送するため、5人のSPと刑事が選ばれた。その任務に徹する警視庁警備部SPに大沢たかおと松嶋菜々子。そして、クズ=連続殺人犯・清丸国秀に藤原竜也。今、考えうる最高のキャストが集結した本作のメガホンをとるのは、海外でも熱い支持を得ている奇才・三池崇史。日本映画史上かつてないスケールで描かれるアクション、刻々と迫るタイムリミットをめぐるサスペンス、誰も予想できなかった驚愕のクライマックスへとすさまじいスピードで突き進んでいく、日本のエンタテインメント大作映画の歴史を変える作品が誕生した!

 

 

nagamine-500.jpg『長嶺ヤス子 裸足のフラメンコ』大宮浩一監督インタビュー
(2013年 日本 1時間25分)
監督:大宮浩一
出演:長嶺ヤス子他
2013年5月4日(土)~第七藝術劇場、6月1日(土)~神戸アートビレッジセンター他順次公開
公式サイト⇒
http://www.hadashinoflamenco.com/
※第七藝術劇場5/4(土・祝)11:55回上映後、長嶺ヤス子さん 舞台挨拶予定

~ “長嶺ヤス子”という生き方から、「フラメンコ」を感じる~

nagamine-s1.jpg 「日本人のフラメンコはいやらしい。」長嶺ヤス子が語ったこの言葉を聞いたとき、私はドキリとした。というのも私自身が、一番の趣味として長年フラメンコを習っているからだ。でも言葉の意図はすごく分かる。「フラメンコ」とは長嶺ヤス子の人生そのもので、単に着飾ってスペイン人のように踊ることではないのだから。

 日本のフラメンコダンサーの草分け的存在である長嶺ヤス子。『無常素描』、『ただいま それぞれの居場所』の大宮浩一監督が、彼女の喜寿を目前とした日々や、犬や猫たちと命を共にする生活、画家としての顔を映し出しながら、「長嶺ヤス子のフラメンコ」をあぶりだす稀有なドキュメンタリーを撮り上げた。直腸ガンを患い、退院からわずか1か月後に復帰した尺八や鼓を従えての舞台や、喜寿を祝う記念コンサートなど、他の追随を許さないオリジナリティーのあるフラメンコとその気迫に魅了される。一方、100匹以上の犬や猫たちと猪苗代で暮らす生活や、偶然の出会いからその家に住みついてまで介護している寝たきりの犬、ハチを介護する姿など、永遠の少女のような表情を見せながら、か弱き命に寄り添りそう長嶺ヤス子の生き方に、フラメンコに通じる「いのち」を感じずにはいられない。

 2011年4月から約1年にかけて長嶺ヤス子を撮り続け、「震災後被災地で撮影できずにいたとき、大きく背中を押してもらった」という大宮監督に、長嶺さんから感じ取った「フラメンコ」や、編集のポイントについてお話を伺った。


━━━どういう経緯で長嶺さんのドキュメンタリーを撮ることになったのですか?
僕の世代であれば、誰でも長嶺さんのお名前やフラメンコダンサーであることは知っていますが、実際にお会いしたこともありませんでした。震災直後、僕はカメラを持って被災地に入ったものの、何も撮れずに帰ってきました。そのとき長嶺さんが入院されたことを聞き、ちょっと会ってきてみようかという気持ちになって、お見舞いに行きました。

━━━お見舞いが初対面とは、勇気がありますね。
 nagamine-2.jpg映画を撮るきっかけなんて、そんなものですよ。お見舞いの言葉を述べたあと、自己紹介を兼ねて映画を撮っている人間だとお話すると、「あらまあ、大変ね。ご苦労様。ありがとう」と早速色々なことをお話ししてくれそうな勢いだったんです。そこで初対面にもかかわらず、「映画を撮らせてもらえますか」と切り出してみたところ、「いいわよ」とあっさりお返事を下さいました。翌日(病室に)お邪魔したときの映像が、映画の冒頭部分のシーンです。

━━━監督が再び被災地に行き、『無常素描』を撮りあげることができたのは、長嶺さんの撮影を始めた影響が大きいのでしょうか?
長嶺さんの撮影で、落ち着きをもらいました。「しっかりしろ」と励ましてもらったように感じましたね。東日本大震災にも動ぜず、ご自身のことを語り続けておられましたから。4月に長嶺さんと撮影を始められたことで、その後『無常素描』という被災地に改めて向かえたのだと思います。

━━━フラメンコの踊りのシーンと、動物たちと暮らす日常のシーン、そして絵に自分を投影させるシーンと3つの柱がありますが、作品としてこれらのバランスをどう構成していったのですか。
長嶺ヤス子の踊る姿を、踊る以外から想像してもらえるような映画を観念的には目指したかったです。ぼくの力量では残念ながらできませんでしたが、なるべく踊るところは、象徴的にみせるぐらいで、減らしたいと最初から思っていました。

━━━前作『ただいま それぞれの居場所』は介護の話でしたが、本作でも犬のハチを介護する様子を映し出し、前作とつながるテーマを持っているようにも感じました。偶然そうなったのでしょうか。それとも意図的に介護の部分を取り入れたのでしょうか。
撮影を始めた後の6月ぐらいから、長嶺さんハチ君のが面倒を見はじめたので、そういう意味では偶然ですね。長嶺さんは、東京にいる間は常にハチ君と一緒にいるんです。僕らが撮影を想定していた約1年間で、長嶺さんの日常の場がハチ君と一緒にいる場だということは、紛れもない事実でした。何かを仕込むことはしたくないので、長嶺さんがそこにいるのなら、そこでカメラを廻すしかない。構成をある程度考えながらも、1年という撮影で撮れたものの中から、長嶺さんという人間をどう表すのかと考えました。結果的にですが、死生感を含めた長嶺さんが言うところの「いのち」が表現されているのではないでしょうか。

━━━大宮監督は、人生で初めてご覧になったフラメンコが、長嶺さん手術1ヶ月後のライブだそうですね。どんな感想を持たれましたか?
 nagamine-4.jpg凄かったですよ。フラメンコというカテゴリーから外れているというより、パフォーマーとしての長嶺さんにカルチャーショックを受けました。大腸ガンの手術から1ヶ月、しかも76歳で大丈夫だろうかという思いがありましたが、それを勝って(踊りに)圧倒されました。一番最初に長嶺さんの動きを見たのはリハーサルで、その次の本番が初めてのフラメンコですが、僕もカメラマンもびっくりしたんです。僕らも一緒に驚きながら撮影したいので、ありとあらゆることが初めてでした。

━━━フラメンコに限らず、長嶺さんの生活に密着する中で、初めて体験することが多かったのではないでしょうか?
すごく観念的な話になりますが、長嶺さんと僕は最終的には感覚が近づいたと思っています。例えばハチ君とのコミュニケーションが、長嶺さんのフラメンコなのです。フラメンコというきらびやかな衣装を着た世界のイメージは、分かりやすいですよね。でも長嶺さんは生きざまがフラメンコなのです。フラメンコを習っている方が、(長嶺さんのセリフで)「日本人はフラメンコを辞めた方がいいわよ」といわれるのは驚かれるでしょう。

━━━私もフラメンコを習っているので、その言葉にはドキッとしました。でも長嶺さんが意図していることは分かる気がします。きっとジプシーたちが表現するような「土臭さ」がないということでしょう。また、日本のフラメンコダンサーはフラメンコ教室を運営している方が多いですが、長嶺さんは生徒を集めて教えるような活動はされていませんね。
そういうアナーキーさのイメージは、会う前から感じていました。そこが長嶺さんのところに向かった一つの要因ではありますね。皆が足並みを揃えてしまう世の中で、ちょっと撮りたいなと思えたのは、震災直後ぜんぜん動じていないということにも繋がっています。普通は震災後みんな怯えて、だんだんと忘れていくのですが、長嶺さんは一貫しています。

━━━弱きものに対する愛情は溢れんばかりにある代わりに、人間社会で起こっていることには無頓着を通していらっしゃいますね。
 nagamine-3.jpg長嶺さんのコメントは使う位置を間違えると、すごく嫌みになります。フラメンコに対するコメントから、踊りではなくて生きざまとして長嶺さんはフラメンコを捉えていると解釈できます。日本のフラメンコは表層的なものにしか見えないという意味で使っているのだと思います。そういう意味では「日本人はフラメンコを辞めた方がいいわよ」という一言を理解してもらうことが、一つの編集指針となりました。すごく乱暴な言葉ですが、「フラメンコ」という言葉を普遍的な何に変えても、当てはまると思うんですよ。日本人は、右といえば皆右に走って行ってしまう。「もう生きるのもやめたらいいのよ、日本人は」、そういうことなんですよね。長嶺さんは、「あなたの主体はどこなの?」というスタンスは一貫しておっしゃっていらっしゃいます。

━━━編集で一番苦労されたところは?
僕たちは漠然とした長嶺さんのイメージができたのですが、それを具体的に、どういう風なコメントと映像によって少しずつ理解してもらえるか。少し長嶺さんに気持ちを寄せてもらってから、喜寿の舞を見てもらえるようにすると、あの踊りでハチ君や猫たちがきちんと感じらるのではないかと思いました。見るたびに同じシーンでも印象が違うんです。同じ踊りでも前回見たときと印象が違ったりして、今回編集に時間がかかりましたね。

━━━長嶺さんは「死が永遠につながる」といった表現をされていましたが、死を恐れてはいないということでしょうか。
そうです。「私は死んじゃいけないの」と断言していらっしゃいます。死も物理的、肉体的な死はありますが、「それすら受け止めた次にくる、もう一度くるかもしれない生」というのは、仏教の倫理的な感覚にすごく近いのではないでしょうか。長嶺さんがそういう考えなので、最後に「ハチ君が子守してくれたのかもね]」という言葉が出たのでしょうね。

━━━長嶺さんは「自分の踊りを通して、踊りを見ている人の人生を見てほしい」とおっしゃっていました。踊り手なら、自分の踊りを観てもらいたいのではと思いますが。
長嶺さんはサービス精神がすごくおありで、「私を鏡にして」みたいなことをおっしゃいます。「私であなた自身を感じて」ということですよね。時々観念的なことをさらりと言われるので、その瞬間は聞き逃してしまうのですが、編集していると言葉の重みに気付かされます。深い言葉なので、聞かせたい言葉の後は、しっかり間をとらなければならなかったり、そういう(編集での)ディテールが難しかったです。長嶺さんの人柄を出すために、言葉を理解してもらうための余白や余韻の組み合わせにちょっと苦労しましたね。 

━━━映画の中で一番好きなシーンは? 
冒頭と最後で使っている散歩のシーンなのですが、あれはちょっとメルヘンチックで、すごくシュールなんです。衣装や帽子、ワンちゃんもしっかり仕込んだ劇映画のようで、あのカットがすごく好きですね。
一つ一つのシーンや、言葉など、映画ってそれぐらいしか他人の人生に入っていけない。でもどこか引っかかってほしいんですね。すっと流れちゃって、泣いて終わるだけでは、(映画を観た後に)何も残らないです。本作を観て、何か(心に)引っかかるところを見つけていただければうれしいです。

━━━「裸足のフラメンコ」という言葉をタイトルに入れた理由は?
長嶺さんがスペイン留学時代に、「あなたはスペイン人の真似をしている。靴を脱いでやってごらん」と言われたそうです。靴を脱いで踊ったら、「それだよ!」と言われ、それ以来長嶺さんは、靴を脱いでスペインで踊っていたという話を伺いました。ステージでも、靴を脱いで踊る演目があるそうです。そういう意味と、長嶺ヤス子の着飾らない、「ヌードのフラメンコ」のような生きざまを、僕たちが撮影を通じて感じさせてもらった。そういう二重の意味でタイトルにつけました。(江口 由美)

月別 アーカイブ