レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2015年5月アーカイブ

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~自由を奪われてきた老女が人生の最後にやりたかったことは・・・生きる勇気と知恵を与えてくれる感動作~

 
自然の中でひたむきに生きる人間を、ドキュメンタリーのようなリアルなタッチで描き、独自の世界感を築き続ける河瀨直美監督。最新作は、ドリアン助川さんの元ハンセン病患者徳江を主人公にした小説『あん』を原作に、ドリアンさんが「徳江を書くときにイメージしていた」という樹木希林、国際的な活躍も著しい永瀬正敏、そしてオーディションで役を射止めた内田伽羅らが結集し、心に深く染み入るヒューマンドラマを紡ぎあげた。
 

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訳あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長となった千太郎(永瀬正敏)は、桜の咲く季節に徳江(樹木希林)という女性から店で働くことを懇願される。最初は断っていた千太郎だが、徳江が持参した粒あんの味に惹かれ、徳江を採用。どら春は徳江の粒あんのおかげで大繁盛する。シングルマザーに放ったらかしにされる日々で、高校受験も諦めていた中学生のワカナ(内田伽羅)も、毎日店に訪れるうちに徳江と親しくなっていく。だが、徳江にまつわる心ない噂が広がり、千太郎も次第に窮地に追い込まれていくのだった。
 
 

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自由を奪われ生きてきた徳江、過去の傷を負って生きる千太郎、未来への希望を見いだせないワカナと、世代も生きてきた境遇も違う三人が心を通わせる様子や、自由に生きられるはずなのに、翼が折れてしまった千太郎に、人生の先輩として生きる知恵を与える徳江の姿など、人の中に息づく温かい気持ちが溢れ出る。人と出会うことが少なかった徳江が自然や小豆の声に耳を傾けている様子は、私たちが失ってしまった自然の声を聞く能力の扉を叩いてくれているかのようだ。元ハンセン病患者、徳江を演じる樹木希林の味わい深い中に初々しさも覗かせた演技、それに応えて生きる意欲をたぎらせていく千太郎を演じる永瀬正敏の生活感が滲む演技も素晴らしい。国立療養所多摩全生園でもロケを敢行。ハンセン病患者の方に対する理解も深まることだろう。桜の季節に始まり、桜の季節で終わる一年の物語は、変わらず巡り続ける季節の中で、成長し、年をとりそして消えていく人間の生を浮かび上がらせた。
 
河瀨直美監督に、新しいチャレンジに満ちた本作について、また準備で大事にしたことや、本作を通じて向き合った偏見や差別について、お話を伺った。
 

■元ハンセン病患者の方々の共感を得た原作『あん』。生きる意味を失うような出来事の中で、勇気を持って私たち自身が命を愛でてあげるような作品になれば。

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―――元ハンセン病患者を主人公にした物語で、通常よりも様々な苦労があったと思いますが、準備や役作りはどのように行っていったのですか?
河瀬監督:原作の『あん』を書かれたドリアン助川さんも、20年来の構想の末書かれたとおっしゃっていたのですが、一度は大手の出版社に断られたものの、ポプラ社の心ある編集者の方が出版化して下さったそうです。いざ出版されると、読者の方は純粋に物語に感動してくださり、一番良かったのは元ハンセン病患者の方が、この作品に共感されたことだったのです。他にも多くのハンセン病に関する書物や映像が世に出ていますが、当事者の皆さんにはどこか違和感があったのだと思います。『あん』に関しては、元ハンセン病患者の方々の共感を得たことが大きく、ドリアンさんから私に映画化したいからと、その監督のオファーをしてくださいました。 
 
ドリアン助川さんは、樹木希林さんを思って徳江さんを書いたということで、希林さんにまずアプローチし、快諾をいただいたのですが、その段階でまだ出資者は見つかっておらず、いつプロジェクトが動き出すのか分からない状態でした。 
 
永瀬さんも偶然ではありますが、ハンセン病を扱った映画のオファーを受けていたものの、なかなか出資者が見つからない壁にぶちあたっていたそうです。私も同じように断られることもありましたが、今回出資いただいたところは「ハンセン病の映画という訳ではなく、生きる意味が描けており、純粋に作品として素晴らしい」と賛同していただきました。ですから、ハンセン病だけを前面に押し出すのではなく、我々皆に起こってしまうような差別意識であったり、生きる意味を失うような出来事の中で、勇気を持って私たち自身が命を愛でてあげるような作品になればという思いを込めました。 
 
ですから、徳江さん自身の口から、自分がハンセン病患者であることを言わせないようにしました。周りの人間はそれを感じ、差別をする人もいれば、千太郎のように守れなかったと後悔する人もいます。でも徳江さん自身は、変わらず人生を全うした人という風に描いていきました。
 
 

■慣れ親しんだ自分のやり方を白紙に戻し、映画を初めて撮るときのようにコミュニケーションを重ねる。

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―――今までは新人を発掘されてきた河瀬監督ですが、今回は樹木希林さん、永瀬正敏さんと大物俳優を主演に迎え、また初めて原作ものに挑戦されています。他にも何か今回初めて取り組んだことはありましたか? 
河瀬監督:撮影監督はコマーシャルを撮ってきた方に初めてお願いしました。そういう意味では、慣れ親しんだ自分のやり方を白紙に戻して、映画を初めて撮るときのように、撮影監督や役者さんとコミュニケーションをとりながら、映画に昇華させていきました。いわばトリプルで新しいことに挑んだので、スタッフ間でもディスカッションを重ねなければいけませんでした。 
 
私はリアリティーを追求する撮り方をするので、いつスタートがかかり、いつカットがかかるのか分からない点も戸惑われました。また、こちらで撮影の準備をしていても、俳優の方がいい動きをしていたら、私はいい動きをしている方を選んで撮ろうとするのです。コマーシャルを撮っていると、準備にかける時間が大事なので、俳優はそこに合わせる感じになってしまいます。私は俳優の心模様が大事なので、そこで現場の混乱が起こることもありました。でも話し合って、改善を重ねていきました。
 
 

■撮影準備期間に、町の人たちと、ずっとその町に住んでいるような関係性を作る。

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―――撮影の準備も時間をかけたのでしょうか? 
河瀬監督:準備としては撮影の1、2ヶ月前から助監督が町に入り、町の人たちとコミュニケーションを取り、まるで自分たちがずっとその町で住んでいるかのような関係性を作りました。エキストラの方は町の人たちを起用しました。どら焼き屋も、美術部が先行して入って作り上げたお店に、千太郎演じる永瀬さんが撮影前に何日か入ってもらって過ごしながら、自然と買いに来られる一般の方にどら焼き屋として応対してもらいました。本当に接客してカンを掴むだけでなく、お昼もスタッフルームに戻るのではなく、コンビニに行って、午前中の売り上げをシミュレーションしてその範囲で買えるお弁当を買っていました。永瀬正敏の金銭感覚ではなく、千太郎の金銭感覚を体感してもらった感じです。 
 
―――オーディションでワカナ役を射止めた内田伽羅さんですが、一番惹かれた点は? 
河瀬監督:物怖じしないところですね。希林さんも、「伽羅は小さい頃から大舞台でも物怖じしなかった」とおっしゃっていました。撮影中もスタッフルームに誰もいなくなってからやってきて、黙々とお弁当を食べたり、誰ともしゃべらず静かに帰っていくので、緊張しているのかと思っていました。でも役が決まる前、私がパリにいたときに留学先のイギリスから家族で訪ねてくれたことがあったのですが、そのときも全く同じ様子で、ほとんど話さないけれど、目で弟の様子をみて世話をしていたのです。多弁ではないけれど、色々なことを見ている点も、まさにワカナにピッタリでした。 
 
 

■ずっと隔離された人生を送ってこられたにもかかわらず、前向きな方が非常に多かった療養所訪問体験。病んでいるのは私たちの方。

―――実際にハンセン病患者の皆さんと交流をされ、改めてこの作品に込めた思いが強まりましたか?

河瀬監督:『二つ目の窓』撮影中に、本作のお話をいただいていたので、奄美にある療養所に訪れ、元患者の方とお会いしました。最初お会いする前はずいぶん緊張しましたが、逆にお会いして、学ぶことがとても多かったのです。 ずっと隔離された人生を送ってこられたにもかかわらず、前向きな方が非常に多かったのです。施設はとても清潔ですし、多摩全生園では桜、奄美の療養所ではガジュマルの樹があり、それらがイキイキしていました。入所されている方が毎日きちんと掃除をされているので療養所の中はゴミひとつ落ちていませんし、製菓部や美容院、学校など必要なものは全てこの場所にあり、入所者がその仕事に従事しています。そういう情景を見ていると、もしかしたら私たちの方が病んでいるのかもしれないと思い、丁寧な生活ができていないと感じました。

 
 

■差別については知ることが大事、何が偏見なのか自分自身にも問い直す。

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―――劇中でも、風評被害で千太郎のどら焼き屋が窮地に追い込まれますが、撮影の準備段階で何か取り組まれたことはありますか?
河瀬監督:差別については、スタッフともだいぶん話し合いました。深く知らずに浅く知っている人たちが一番問題ではないかと。ですから、知ることが大事だと思い、今回は伽羅さんや大賀さんも撮影前に実際にハンセン病資料館に一日行って、全部勉強してもらってから現場に来てもらいました。全員で知ることから始め、何が偏見なのかを自分自身にも問い直しました。知らないうちに、誰かに言ってしまっていることが、偏見や差別につながっているのかもしれませんから。
 
実際、今でもハンセン病患者の方への差別は根強く、自分の村からハンセン病患者を出したと地域ぐるみの差別もあれば、実家にとっても消してしまいたい事実であることが多いのです。死んでもなお遺骨を引き取ってもらえないのは、国の責任だけでなく、私たちの感覚の中に差別が存在しているのでしょう。
 
 

■かけがえないからこそ美しい桜の花に、徳江の思いを託す。

―――河瀬監督はいつも「命」にこだわった作品づくりをされていますが、桜で始まり、桜で終わるのは命の生まれ変わりの象徴に思えます。
河瀬監督:桜は日本が世界に誇れる美の象徴です。なぜ日本人が桜の花に魅せられて集うのかといううと、一年を通してほんの少しの時間しか咲かないところに美しさを見出しているのです。永遠にあるものに対して、人はあまり心を向けません。かけがえがないからこそ、美しいと思えるのです。特に、徳江さんは二度と故郷の桜を見ることができませんでしたから、桜に託した一つ一つのセリフも、きっと故郷の桜を思いながら言っていたでしょうし、なぜ千太郎にそんなことを言ったのかも映画が進むにつれ分かってくるはずです。そこで感じてもらえることが、たくさんあるのではないかと思っています。
 
 

■かつて私たちが経験したようなリアリティーに連れ去る音にこだわり。

―――徳江さんは小豆の音や、自然の音を聞く人でしたが、徳江さんが聞いていた自然な音がスクリーンを通して伝わってきたのが印象的でした。
河瀬監督:音にはとてもこだわっています。小豆の音や春、夏、秋や冬に差し掛かる時の音、電車の音がどこで聞こえているのか、多摩全生園に入ったときの音など、細かいところまで音のデザインをしていきました。そのおかげで、かつて私たちが経験したようなリアリティーに連れ去ってくれると思うのです。この音響デザインをしたのはフランス人で、逆に言語が分からないからこそ、音を認識するかもしれません。言語ではないのだなと思いました。
 
―――カンヌで公開する際のタイトルは?
河瀬監督:1週間前ぐらいまで、悩み抜きました。最終的には「an」にしました。フランス語だと、「アン・ドゥ・トワ(1・2・3)」の「アン」になるのですが、ひらがなの最初の文字「あ」と最後の文字「ん」という意味で最初から最後につながるイメージと説明すると、納得していただけるのではないかと思っています。
(江口由美)
 

<作品情報>
『あん』
(2015年 日本・フランス・ドイツ 1時間53分)
監督・脚本:河瀨直美 
原作:ドリアン助川『あん』ポプラ社刊
出演:樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子、水野美紀、大賀、兼松若人、浅田美代子他
主題歌: 秦基博
2015年5月30日(土)~新宿武蔵野館、Tジョイ 梅田ブルク、シネマート心斎橋、OSシネマズ神戸ハーバーランド、イオンシネマ京都桂川他全国公開
※第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門オープニング作品
公式サイト⇒http://an-movie.com/
(C) 2015 映画『あん』製作委員会 / COMME DES CINEMAS / TWENTY TWENTY VISION / ZDF-ARTE
 

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~心の原風景を探す母の秘めた決意とは?~

 
息子にある決意を告げると決めた戦中世代の母が、幼き頃の原風景を探す旅。それは淡い恋心を思い起こす旅になるのだった。故岡本喜八監督の妻であり、長年、岡本作品のプロデューサーを務めてきた中みね子さんが76歳で監督デビューを果たした。シナリオライターを目指していた初心に戻り、時間をかけてオリジナルシナリオを書き上げ、シニア世代の原風景や、子世代につなぐ思いを詩情豊かに綴り上げた『ゆずり葉の頃』。八千草薫×仲代達矢のゴールデンコンビの演技に、この上ない深みと温かさを感じることだろう。
 

<ストーリー>
海外駐在中の進(風間トオル)は、一時帰国の際に女手一つで育ててくれた母、市子(八千草薫)を訪れたが、母の姿はなく、画家、宮謙一郎(仲代達矢)の新聞切り抜きが残されていた。市子は、幼い頃に心の支えとなった絵を探し、一人で軽井沢を訪れていたが、探していた絵に出会えず、しばらく軽井沢に滞在することを決める。軽井沢で様々な人と出会ううちに、宮謙一郎が軽井沢に滞在していることを知るのだったが・・・。

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市子を演じる八千草薫の、おっとりとした物腰に潜む強い決意が、彼女が今まで過ごしてきた人生の辛苦を静かに物語る。人生の終いを迎えつつある中、戦中の貧しい中に希望を見出した青春時代の淡い思い出に触れるラストチャンスと突き動かされる市子の姿は、周りの人を動かしていく。市子と謙一郎が出会い、二人だけの時間を過ごすシーンは、積年の思いが優しく溢れ出し、胸を打つ。
 
大阪で行われた記者会見では中監督が登壇し、冒頭に、市子がお世話になった軽井沢の人々に手渡す飴や飴が入った布袋のエピソードを披露した。私たち記者陣も飴玉をいただき、「NGなことは何もありませんから、何でも聞いてください。映画公開時にも参りますので、ぜひまたお会いしましょう」と、本当に飾らない姿で接してくださった中監督。ゼロからのスタートとなった本作制作の経緯や、監督をしたことで体得したことなど、岡本喜八監督のエピソードも交えながら話してくださった記者会見の模様を、ご紹介したい。
 

 

■岡本喜八(監督)の語り部を卒業し、ゼロに戻ってはじめたシナリオ書き。八千草さんに「今までで一番すっと入ってきたわ」と言われ、映画にしなくてはとの思いが強まる。

―――『ゆずり葉の頃』制作の経緯、中みね子として監督デビューした理由についてお聞かせください。
中監督:学生時代にシナリオライターとしてデビューし、岡本喜八(以降喜八)と結婚してからもテレビの仕事等コツコツとシナリオを書いていましたが、才能のある人のそばにいると、自分の才能のなさが分かってくるのです。プロデューサー、子育てをしながらシナリオを書くのはやはり難しく、シナリオを書くことを断念しました。ただ、喜八の最後の作品『幻燈辻馬車』(映画化には至らず)で、アクションはもう撮れないからとシナリオを書き直す作業を喜八と一緒にしたことがありました。シナリオを読みながら直すという日活のやり方ですが、今思えば、最後に私にシナリオの書き方を思い出させるためにしてくれた気がします。
 

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喜八の七回忌を終え、もう喜八の語り部は卒業するときだと思い、ゼロに戻って何かをはじめようと旧姓の「中みね子」の名前でシナリオを書き始めました。八千草さんのご主人の谷口千吉監督は喜八の師匠なのですが、谷口さんは八千草さんを主演にした映画をいつか撮ろうと思っておられたようで、よく喜八とその話で言い合っていたのを八千草さんと横で聞きながら、「(あの二人より)私たちで撮った方がいいわよね」と話していたのです。そんなことを思い出しながら、八千草さんを主役にしたシナリオを2、3本書いたのですが、どうしても気に入らず、脚本家の青木研次さんにご指導を仰ぎました。「主食が少し増えるのはいいけれど、おかずの多い映画は面白くならない」と最終的には完全に一人で書くように勧められ、ようやくオリジナルの脚本が書きあがったのです。
 
早速八千草さんに読んでいただくと「今までで一番すっと入ってきたわ」と言ってくださり、もう本当にうれしくて。あんな美人に言われたら、なんとか映画にしなくてはとの思いがさらに強まり、喜八とのつながりや、目に見えない皆さんの励ましをいただき、長い歴史の中から生まれた作品となりました。
 
 

■八千草さんを中心に、風が吹いて止まることのないリズムを大事に。

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―――初めての演出はいかがでしたか?
中監督:撮影に入る前に、役者さんとは徹底的に話をしました。八千草さんには気持ちを全部お話し、準備の時間を取れたのですが、仲代さんからは「芝居中にこんなにセリフが覚えられるか」と言われたりもしました。仲代さんがお忙しいので、こちらの気持ちを全て書いたことをお話し、仲代さんからはセリフを削ったシナリオが戻ってきました。そこでまた八千草さんのセリフと調整したりといった作業を繰り返しました。演出部は私を入れて3人だけとコンパクトでしたが、その分やりやすくて良かったと思います。特にカメラマンには「八千草さんの所作や仕草など、全て彼女を中心に、風が吹いているような止まることのないリズムで撮ってほしい」とお願いしました。映画には映画のリズムがありますから、そこはまず大事にしたところです。
 
 

■映画監督の孤独さや陰の部分を、体で理解する。

―――初めての監督業に臨み、一番感じたことは?
中監督:よく喜八が「映画はEndがつかないとゴミにもならない」と言っていましたが、きっと上の方から「最後までできてよかったね」と言いながら見てくれていると思います。
作品が出来た後、自分の中でもっとこうすればよかったという思いが、どんな監督でもよぎるのでしょうが、喜八は自分以外立ち入り禁止の書斎に何分か籠って、私でも声をかけることができない時がありました。「孤独のカプセル」に入ってしまうのです。映画監督は他人のせいにはできない仕事で、総合芸術の長である映画監督の孤独や演出家という仕事の本質を、今回自分が監督することで少し覗かせてもらった気がします。仕事は頭で理解することと、体で理解することとは全然違います。そういう映画監督の陰の部分や孤独の部分を知ることができました。
 
―――ご自身で監督をされて、改めて岡本喜八監督を惚れ直したのでは?
中監督:喜八はいい意味で才能があり、大変厳しい人でした。よく、結婚した方がいいかと若い方に聞かれるのですが、一人ぐらいお互いの生き様を分かってもらう人がいてもいいのではないかとお話しています。子どもは縦のつながりなので、言わずともつながりがありますが、夫婦は横のつながりなので、お互いつなげようと思わないとつながりませんから。
 
 

■親の介護や家庭、会社で頑張っている息子世代にもぜひ見てほしい。

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―――『ゆずり葉の頃』はどのような世代に見てほしいですか?
中監督:最初は「善人ばかりの映画で大丈夫か」と言われたりもしましたが、私は、人を傷つけるために生まれてきた人はいないと思っています。どの人の中にもある優しさが出てきたらいいなと思い、シナリオを書きました。
 
『ゆずり葉の頃』は、知性が残っている間に、自分の終わり方を家族に伝える物語です。私は『楢山節考』が大好きで、あの中に老後が一番描かれていると思っています。この作品は、主人公の同世代はもちろんですが、世の中に出て、親の介護や家庭、会社で頑張っている息子世代にもぜひ見ていただきたいですね。
 
 

■人間の愛情表現はそれぞれ。ベッドシーン以上に心が揺れ動くようなラブシーンと思ってもらえたら、とてもうれしい。

―――八千草薫演じる市子と仲代達矢演じる謙一郎がダンスするシーンが非常に印象的かつ、心に残るラブシーンとなっていますが、どのように作り上げていったのですか?
中監督:八千草さんと仲代さんが手を合わせて踊るのは、バロック音楽のダンスを取り入れています。私はバロック音楽が大好きで、パリでロケをするシナリオを書いていたときにこのアイデアを思いつきました。実際は軽井沢ロケのストーリーになったので、音楽担当の山下洋輔さんに、日本の誰もが知っている「あかとんぼ」のように世界中の人が知っているような曲で八千草さんのテーマとなるメロディーを作ってほしいとお願いしたところ、「キラキラ星」を選んで、編曲してくださったのです。バロック音楽ではありませんが、二人とも子どもだった時代に戻してあげたいと思い、手を合わせて無邪気に踊っていただきました。このシーンは、仲代さん演じる謙一郎が抱えている心の原風景をイメージしています。10数分をワンカットで撮影しました。
 
私を知っている人たちからすれば、男みたいな私がラブシーンを撮るなんて想像できないみたいですが、人間の愛情表現は人それぞれです。ベッドシーン以上に心が揺れ動くようなラブシーンが撮れていたら、またそう思っていただけたら本当にうれしいです。
 
―――岡本喜八監督は、この作品をご覧になったらどうおっしゃると思いますか?
中監督:喜八は他人の作品の良し悪しは絶対言いませんし、作り手としていかに映画監督が辛いかを知っている人ですから、「途中でおかしくならずに、ちゃんと皆さんに観ていただける作品が出来てよかったね」と、上から言ってくれているでしょうね。
(江口由美)
 

<作品情報>
『ゆずり葉の頃』(2014年 日本 1時間42分)
監督・脚本:中みね子
出演:八千草薫、仲代達矢、風間トオル、竹下景子、六平直政、嶋田久作、本田博太郎、岸部一徳他
5月23日(土)~岩波ホール、6月20日(土)~シネ・リーブル梅田、7月18日(土)~元町映画館、7月25日(土)~京都シネマ、今夏、シネ・ピピア他全国順次公開
※第36回モスクワ国際映画祭特別招待作品
公式サイト⇒http://yuzurihanokoro.com/
(C) 岡本みね子事務所
 
 
 
 
 

aono-ran-b-550.jpg“風雲児“天海祐希参上!『ゲキ×シネ「蒼の乱」』満場の女性ファンを前に舞台挨拶

(2015年5月12日(火)18:00~梅田ブルク7にて)


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・(2015年 日本 2時間48分)
・演出:いのうえひでのり  脚本:中島かずき
・出演:天海祐希、松山ケンイチ、早乙女太一、梶原善、森奈みはる
・2015年5月9日(土)~梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、MOVIX堺、T・ジョイ京都、MOVIX京都、神戸国際松竹、MOVIXあまがさき ほか全国ロードショー
・公式サイト⇒ http://www.aonoran.com/
・(C)2015 ゲキ×シネ「蒼の乱」/ヴィレッヂ・劇団☆新感線

 


 

★ゲキ×シネ『蒼の乱』天海祐希に女性客殺到

 

《劇団☆新感線》の舞台を映画で見せるゲキ×シネ最新作『蒼の乱』(中島かずき作、いのうえひでのり演出)で主演を務めた天海祐希が12日、公開中の大阪・梅田ブルク7で舞台挨拶を行い、女性ファンで満杯の客席から熱い声援を受けた。

aono-ran-500-1.jpg『蒼の乱』は35周年を迎えた《劇団☆新感線》が“驚愕のスペクタクル”と銘打って昨年春、大阪、東京で上演された。天海祐希のゲキ×シネ出演は4年ぶり3度目。“将門の乱”で有名な伝説の武将・平将門(たいらのまさかど)の激動の一生を描いた壮大な歴史ファンタジー。将門に新感線初参加の松山ケンイチ、大王に大ベテラン平幹二朗。天海は将門と結ばれる蒼真役で、強くて凛々しい鮮烈なヒロインを演じた。


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――― お待たせしました。天海祐希さんです! (花柄の赤いレオナールのワンピース姿で登場)

天海:『蒼の乱』を見て頂けるのは本当に幸せです。舞台を見て頂いた方も、ゲキ×シネで見て頂く方も、両方楽しんで頂けると思います。

――― 今日のお客様で昨年の舞台を見た方はどれぐらいいらっしゃいますか?
(挙手多数)天海さん、去年の公演、覚えていますか?
天海:去年の思い出…ウーン、一生懸命だった!(笑)。あとは…いか焼きをどうしても食べたくなって、1枚から届けてくれるところがあって、終演後に食べましたね。

――― それが舞台公演の楽しみ?
天海:ええ、何回か頼みました。舞台は、とにかく頑張りましたね。ゲキ×シネの映像でも、ダイレクトに(お客様に)届いてくれるでしょう。

―――「劇団☆新感線」の舞台はいかがですか?
天海:新感線の魅力は、引きで見ると、もの凄いプロ集団だけど、ちょっと近寄ると、放っといてくれない、愛すべきおせっかいな人たちです。客席で新感線見ると悔しくなります。出演していると、みんなとても頼もしいです。古田(新太)先輩は早い段階で見て下さって、“良かったよ”って言って下さいました。

aono-ran-b-3.jpg――― 相手役が“新感線”初参加の松山ケンイチさんでしたが?
天海:とてもいい意味での田舎っぽさが出ている(笑)。ほんと、いい意味なんですよ(笑)。あんなに牧歌的な大きさを感じさせてくれる、風や空の匂いを表現できる人は他にいません。それでいて、笑うと心を締め付けられるように愛おしく感じさせるんです。彼のおかげで自分の役を自然に演じられました。

――― 蒼真役と天海さんの共通点は?
天海:ありません(笑)。そんなこと考えたことありません。反乱なんかしたことありませんし。

aono-ran-b-2.jpg――― 舞台は同世代の高田聖子、森奈みはるらも一緒だったが?
天海:同い年の女の子の会話をしていましたね。最近何食べてる?とか肌の調子はどう?だとか、終わった後3人で人間ドックに入りました。みんなで“行こうか”ということで。

――― 改めて見どころというと?
天海:全部です!誇りを持って完璧だと思ってやってますから。敢えて言うと、開演からしばらくして3人で逃げるシーンがあって、そこに流れ星が流れるんです。そこは何回やっても泣きそうでした。ケンちゃんは最初、センターが分からなかったんですよ。“どういう人や!?”と思ってたけど(彼は)忘れちゃうんですよね~。

aono-ran-b-4.jpg―――ゲキ×シネの魅力とは?
天海:何でそういうこと聞くんだろう? どこ行っても聞かれる。1年前の私には、これが精いっぱいだったなあと思えたのですが、1年後に見てみると“まだまだ行ける”と。それがあるから“まだやれる”と思えるのです。完璧と思ってしまったら、それでおしまいじゃないですか。マスコミの皆さんもそうじゃないですか。
私たちの仕事が、皆さん方の潤いになるなら嬉しいですね。歌あり、踊りあり、笑いも涙もあるので、楽しんで頂けたらと思います。新感線はお稽古中で、今日は初の通し稽古だそうです。私が代表して“元気ですよ!”とお伝えに参りました。皆さんに楽しんで頂いて、また新感線と一緒に仕事出来ることを祈っています。また大阪の舞台でお会いしたいですね。

 


 【ゲキ×シネ『蒼の乱』】
aono-ran-500-2.jpg強く美しい女戦士・蒼真(天海祐希)と、坂東の草原の匂いを放つ純粋で無垢な青年・将門小次郎(松山ケンイチ)は、自由への憧憬と渇望を抱き、手を取り合って激動の時代へと飛び込んでいく。だが、国家を揺るがす大乱はすでに西海で起こりつつあった。

瀬戸内の大海賊・伊予純友(粟根まこと)は、西海と東国の二つの辺縁の地で蜂起し、都の政(まつりごと)を揺るがそうと考えていた。無垢な小次郎に惹かれる蒼真には、不安がよぎっていた。

一方、都の朝廷から海賊討伐の命を受けた弾正淑人(梶原善)は瀬戸内に向かう。東国の草原に戻った小次郎が見たのは、飢えに苦しむ民の姿。国司の妻・邦香(森奈みはる)と小次郎の叔父たちは私腹を肥やすことに精を出していた…。


 (安永 五郎)

 

『映画クレヨンしんちゃん』シリーズ、『河童とクゥの夏休み』などのアニメーション作品から、『はじまりのみち』では初実写映画に挑戦した原恵一監督の最新作『百日紅~Miss HOKUSAI~』が5月9日(土)からTOHOシネマズ日本橋、テアトル新宿、大阪ステーションシティシネマ他で全国公開される。
 

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原恵一監督自身が敬愛してやまない杉浦日向子の『百日紅』を初の長篇映画化した本作。浮世絵師・葛飾北斎の娘で、父と二人暮らしをしながら浮世絵師として絵を描き続けるお栄を主人公に、江戸の浮世を四季と絡めて描いたお江戸エンターテイメントだ。時には北斎が請け負った絵を代わりに描き、集まってくる絵師たちに男勝りの態度を見せる一方、盲目の妹お猶の面倒を見ながら、淡い恋に頬を赤らめる初々しさを持つお栄。そのクールで絵に対してひたむきな姿に、心惹かれずにはいられない。声の出演も、お栄を演じる杏をはじめ、北斎役の松重豊、北斎の家に勝手に住み着いた女好きの絵師、善次郎(渓斎英泉)役の濱田岳など魅力的なキャストが揃った。江戸時代の庶民の暮らしや、江戸の人たちが親しんだ生活の中の絵も数々登場、その風情をたっぷり味わえる作品となっている。
 
キャンペーンで来阪した原恵一監督に、『百日紅』映像化のきっかけや、お栄のキャラクター造詣、北斎との父娘関係を通して浮かび上がるお栄像についてお話を伺った。
 
『百日紅~MISS HOKUSAI~』公開記念 原恵一監督トークショーレポートはコチラ
 

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■もう映画が作れなくなってしまった杉浦さんに代わり、「『百日紅』を映画にするため、僕が”いい道具”になる」という気持ちでやっていた。

―――杉浦日向子さん原作『百日紅』を映画化することになったきっかけは?
杉浦さんの作品は昔から大好きで、ずっと映像化したいと思っていました。この作品の制作プロデューサーであるProduction I.Gの石川さんに、杉浦さんの別の作品の企画を持っていったところ、杉浦さんの『百日紅』の企画を動かしたことがあるという話を聞きました。その石川さんから『百日紅』映画化を打診されたので、是非ともという流れです。
 
―――原監督からみた杉浦作品や、『百日紅』の魅力は? 
杉浦さんという存在を山にたとえると、巨大な独立峰です。他に似た作家がいないのが魅力的です。マンガという表現を使った方ですが、演出家としても非常に優れている方というところに惹かれました。 
 
『百日紅』という作品では杉浦さんの演出力が非常に発揮されています。原作はどのエピソードも素晴らしい。それは驚異的なことで、そのような原作を映像化できるわけです。今まで映像化されてなかったことが不思議だし、逆に映像化されていたら無茶苦茶悔しかったと思います。今回幸運にも杉浦作品初めての映像化の監督になれました。 
 
―――『百日紅』を映画化する作業は、原作を尊重する部分と、オリジナリティを出す部分との兼ね合いという部分で、原作との距離感が難しかったのでは? 
仕事をしながらプレッシャーを感じていたし、ずっと悩みました。後になって自分の中で腑に落ちる言葉が浮かんだのですが、もう映画が作れなくなってしまった杉浦さんの代わりに、『百日紅』を映画にするために僕が”いい道具”になるということです。料理人で言えばいい包丁に、大工で言えばいいのこぎりやカンナという気持ちでやっていたような気がします。 
 
 

■キャスティングで一番最初に浮かんだのは杏さん。お栄は愛しさのある女性に。

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―――原作ではそれぞれ独立したエピソードを、映画では四季を通した物語として描いています。映画オリジナルはどの部分ですか?

お栄とお猶の姉妹関係は、割とオリジナルで作っている部分ですね。お猶が登場するエピソードを映画のクライマックスにしようと思っていたので、そこから逆算的に考えて、お客さんにお栄とお猶の関係を印象づけるようにしました。 

 
―――お栄は芯が強い反面、可愛らしい面もあり、現代女性も共感できるキャラクターですが、キャラクター造詣でこだわった点は?
ただのぶっきらぼうな女では可愛げがないし、様々な面を持った女性として描くべきだと思いました。そのために、乱暴な口を利くところもあれば、片思いをしている男性の前では顔を赤らめたり、恥じらう面を持つ、愛しさのある女性にしました。 
 
―――お栄を演じる杏さんは、早い段階からキャスティングを考えていたのですか? 
キャスティングで一番最初に浮かんだのが杏さんでした。実際、すごくはまったと思います。杏さんご自身も知的で、落ち着いていて、気さくで、気取ったところがない。また、真面目で勘が良く、素晴らしい女性です。 
 
 

■ありきたりな時代劇は面白くないのでロックを使用。杉浦さんも江戸マンガを描きながらロックを聞いていたし、お栄もロックな女性。

―――お栄の性格や北斎との関係を一気に見せ、江戸の遠景が映るまでの冒頭の数分間で、一気に観客を江戸時代にいざなう構成が、素晴らしかったです。この場面だけロックが流れていたのも非常に印象的でしたが、その狙いは?
ありきたりな時代劇にしたら面白くないし、杉浦さんのマンガは、本当にこういう生活が江戸時代にあったのだと思わせる作品が多いので、そのリアルな部分を大事にしたかったです。ロックを使用するのは、割と早い段階で思いついたアイデアでした。実は、杉浦さんご自身、ロックが好きで、江戸のマンガを描きながらロックを聞いていたそうです。そういう点からも、時代劇でロックはアリだなと感じました。何よりもお栄がロックな女性ですから。
 
 

■北斎の娘・お栄は、生まれたときからある運命を背負わされた女性。その晩年もミステリアスで、様々な想像が膨らむ。

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―――北斎とお栄の親子関係はかなり特殊ですが、原監督からみてこの二人はどう感じましたか? 
北斎は身勝手な人ですよね。絵を描くことしか興味がない。女は好きかもしれないけれど、それ以外は興味がない。そういう父親は、いい父親ではないでしょう。でも、お栄は呼びつけにしたり、乱暴な口を利ききながら父親の近くにいます。たぶんお栄は父親のことが好きで一緒にいるし、北斎が描く絵に惹かれていたのだと思います。史実として記録に残っていますし、劇中でも触れていますが、お栄は一度嫁いだものの別れ、死ぬまで北斎と一緒に暮らしています。相手は絵師でしたが、あまり上手い絵師ではなかったらしく、旦那の描いた絵を「下手だ」と言って不仲になったそうです。お栄は、北斎の娘に生まれてしまったばかりに、生まれたときからある運命を背負わされていた女性だという気がしますね。
 
―――『百日紅』をきっかけに知ることができた北斎の娘、お栄とその生き方は、まだまだ掘り下げたい気がしますね。
お栄という女性は、僕も『百日紅』で初めて知りましたが、魅力的な人物だと思います。ミステリアスですし、映画の最後のテロップでも出しましたが「ある時姿を消し、それきり、どこでどうなったか分からない」という生涯を送った人なのです。お墓の場所も、どこで死んだかも分かりません。お栄が人前から姿を消してから11年後に、明治になっていくので、「お栄は明治をみただろうか」とか、「明治に生きていたら、どんな絵を描いていただろうか」と考えたり、北斎の娘という諦めや、自負などを抱えていたのではないかと、様々な想像が膨らむ人物ですね。
(江口由美)
 

 【ストーリー】
百日紅(さるすべり)の花が咲く――お栄と北斎、仲間達のにぎやかな日々がはじまる。浮世絵師・お栄は、父であり師匠でもある葛飾北斎とともに絵を描いて暮らしている。雑然とした家に集う善次郎や国直と騒いだり、犬と寝転んだり、離れて暮らす妹・お猶と出かけたりしながら絵師としての人生を謳歌している。今日も江戸では、両国橋や吉原、火事、妖怪騒ぎ、など喜怒哀楽に満ちあふれている。
恋に不器用なお栄は、絵に色気がないと言われ落ちこむが、絵を描くことはあきらめない。そして、百日紅が咲く季節が再びやってくる、嵐の予感とともに……。
 
 『百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~』
監督:原恵一(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』、『河童のクゥと夏休み』、『カラフル』)
原作:杉浦日向子「百日紅」
出演:杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、美保純、清水詩音、麻生久美子、筒井道隆、立川談春、入野自由、矢島晶子、藤原啓治
制作:Production I.G 配給:東京テアトル
(c)2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会 
2015年5月9日(土)~TOHOシネマズ日本橋、テアトル新宿、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー
 

Z-s-550.jpg『Zアイランド』哀川翔、品川ヒロシの爆笑記者会見

◎ゲスト:哀川 翔、品川ヒロシ監督
◎2015年4月25日(土) 堂島ホテルにて

・ (2015年 吉本興業 角川映画 1時間48分 PG-12)
・監督・脚本:品川ヒロシ
・出演:哀川 翔、鈴木砂羽、木村祐一、宮川大輔、RED RICE(湘南乃風)、大悟(千鳥)、川島邦裕(野生爆弾)、山本舞香、水之絵梨奈、般若、篠原ゆき子、シシド・カフカ、河本準一(次長課長)、風間俊介、窪塚洋介、中野英雄、鶴見慎吾
公式サイト⇒ http://www.z-island.jp/ 
・(C)2015「Zアイランド」製作委員会

2015年5月16日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS ほか全国ロードショー


 

~“ヤクザvsゾンビ”のヒューマンドラマ!? 続編もあり?~

 

芸人出身の品川ヒロシ監督4作目『Zアイランド』(5月16日公開)が完成し4月25日、品川監督と主演の哀川翔が来阪、PR会見を行った。佐渡島での撮影では地元の方々の協力を得て、予想以上のゾンビが沢山登場した模様。映画同様、製作主旨や撮影の模様などをマジメに語ってくれたが、何分にも沢山の個性派俳優や吉本興業の芸人たちが出演しているので、普通のことでも可笑しく聞こえてしまう。この哀川翔と品川ヒロシ監督のぶっ飛び記者会見が、面白くならないはずがない!


【作品紹介】
Z-550.jpg芸能生活30周年の哀川翔には、通算111本目の主演作。元やくざ組長だった現運送屋・宗形(哀川)は、抗争でムショ送りになった武史(鶴見辰吾)の娘・日向(山本舞香)の世話をしながら暮らしていたが、武史の出所の日、娘が「父親に会いたくない」と家出。行く先は家族の思い出の地“銭荷(ぜに)島”。宗形、武史と元妻桜(鈴木砂羽)らは島に向かう。同時に宗形と敵対する竹下組の面々(木村祐一、大悟、川島邦裕、中野英雄)らも島へ乗り込む。だが、島では吉田(宮川大輔)が持ち込んだクスリが原因で“謎の疫病”が蔓延。死んだはずの人間が甦るなど、症状はまるでゾンビ。島では感染者がモーレツな勢いで増殖し始め、大混乱に陥る。


 ―――この映画のゾンビはずいぶん動きが早いが?
Z-s-Di.jpg品川監督:ゾンビ映画を見終えて、いつもゾンビの速さを気にする。最近のゾンビって速いと思う。  
哀川:速いと、この世の終わりを感じるよ。あれだけのスピードだと逃げられないので、受けの芝居になってきて、それが難しい。早さを制御しなくてはならないので、極力からませないようにした。触れないようにしてたんだけど、掴んで離さないことがあって困った。佐渡島での撮影で、佐渡の70歳位のおじいちゃんが、メイクしなくてもゾンビみたいなのに、その上にメイクして「またゾンビかよ!もっと凄くするの?」ってな具合で(笑)。
品川監督:佐渡の人にもたくさん(ゾンビ役で)出てもらったけど、撮影が終わってから、「メイク落としました?」って聞いた位の人もいた(笑)。後姿はゾンビそのもので(笑)。おじいちゃんがなかなか上手くてね。ヨタヨタ歩いて、それだけでゾンビに見えるのに、「私何したらいいですか?」なんて聞いてきたんで、「そのまま歩いとけば大丈夫!」と…。おじいちゃん毎日来て、どんどんメイクも上手くなって、終わる頃にはすっかり元気になっていた。「いいリハビリになった!」って喜んでました(笑)。佐渡の人たちは、みんなゾンビが上手くなったよ。いつでもゾンビやれるよ(笑)。

―――哀川さんは芸能生活30周年記念作品で、ゾンビ映画を選んだのは?
Z-s-Ai.jpg哀川:自分ではゾンビ映画とは思ってない。「ヤクザ対ゾンビ」の映画に、家族愛もからんでくる。普通はピンポイントで攻めるので終わりがあるが、ゾンビは殺しても殺してもどんどん増殖していくので終わりがない。嚙まれたら自分もゾンビになるという、この世界の広がり感がたまらなくて、この話が来たときには「それいいんじゃない?」と一発で決めた。実はゾンビ映画は大好きで、“ゾンビ・ストリッパーズ”という映画が面白くて、感情を持ったゾンビがとても怖かった。それを見て、日本でもヤクザ映画と同じ位置付でゾンビ映画を確立していくべきだと思った。

―――ただのゾンビ映画ではなく、いろんな感情を絡ませるのにこだわった点は?
品川監督:人間ドラマの部分は任侠映画ですね。かつての角川映画にあった『里見八犬伝』や『セーラー服と機関銃』とか『二代目はクリスチャン』や『戦国自衛隊』といった大衆演劇を映画にもってきたような映画が大好きだったので、それに西洋のゾンビをぶつけて、例えば洋食をかつお節のダシでとったらどうなるの?というものを撮りたかった。知り合いがゾンビになった時はどうするか?…西洋だと殺すか閉じ込めるしかないが、日本では独自の方法で表現できるのではないか?と考えて、あのラストシーンになった。
哀川:ゾンビになった元カノを撃てるかどうか? あのシーンはドキッとしたよ。窪塚と風間は対極にあって、現代的なシュールさがとても美しかった。
品川監督:ネタバレになるといけないが、最後の方の翔さんのシーンは日本人の美学を表現した。

――― 笑えるシーンが沢山あったが、それは欠かせないもの?
Z-3.jpg哀川:なんで宮川と川島が出ているシーンであんなに笑いをとれるのか、よく分かんないだよね(笑)。
品川監督:タイプによって違うけど、海外ではゾンビ映画はパーティー感覚なんですよ。海外の映画祭で上映した時、宮川さんが出てくるシーンでは「ワ~!」ってみな拍手するんですよ。コメディーとしてゾンビ映画を捉えてる。

哀川:決してふざけてる訳じゃないんだけどね。ゾンビは結構役のふり幅が大きくて、やってもやってもやり尽くせない感じがする。
品川監督:笑わせようとは思ってないし、出ている人たちはみんな大マジメ。ゾンビ映画の中でゾンビの話はあまりしないと思う。警察に電話するシーンでも、どう説明したらいいのか…。ゾンビの説明なんかものすごく難しいですよ。リアルな反応が可笑しい。
Z-4.jpg哀川:台本は設計図だが、本よりも映像の方がずっと面白い。監督はまた役者をその気にさせるのが上手くてね、撮影前に“今日はあなたが主役ですよ”なんてことをポンと言うんだよ。そりゃ役者は張り切りますよ。でも、「今日は哀川さんはあっちで釣りしてて下さい」って言う通りにしたら、「そこ映るから移動して!」だって。「ここで釣してろって言っただろう!?」(笑) 
品川監督:その日は哀川さん、アジ50匹釣ってました(笑)。哀川さんは島では毎晩飲んでましたね。夜は9時ぐらいから哀川さんが手品を始めて、眠くなってトランプが手から落ちたら「ハイ、おしまい!」って寝る。いい感じで健康的な毎日。ずっと天気良かったしね。

―――佐渡島を堪能した?
Z-2.jpg哀川:島は何回も回りましたね。釣りザオ10本持って行って、釣りに精出したら佐渡島の“サカナ大使”に任命された。2度目に行った時に、市長さんから任命された。トビウオやノドグロの美味いこと! 6月の佐渡島は最高ですよ。
品川監督:あまりにもノドグロが美味いんで、映画のタイトルも「ノドグロ」にしろという話も出たぐらい。でも、「それだけはやめてくれ!」と断固拒否した。

―――佐渡島での上映会は?
品川監督:島に映画館はなかったけど、1200人ぐらい入る会場で上映した。2回上映で700人ずつ、計1400人入った。人口6万人の島では大変な数ですよ。

Z-s-2.jpg―――こんなに盛りあがったら続編も出来そうだが?
品川監督:次は生き残った人が本土に渡っていく…。最終的には3部作にして、最後はハワイに行きたいな。
哀川:ゾンビは不死身だからね、いくらでもできるよ♪

(安永 五郎)