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2024年2月アーカイブ

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 井上淳一(『福田村事件』製作・共同脚本)が脚本・監督を務める『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』が2024年3月15日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、3月16日(土)より第七藝術劇場ほか全国ロードショーされる。
 
 『止められるか、俺たちを』(白石和彌監督)に続き、若松孝二監督を演じる井浦新をはじめ、シネマスコーレ初代支配人の木全純治を話題作への出演が続く東出昌大、映画監督への夢を断ち切れない大学生アルバイト、金本法子を芋生悠、シネマスコーレで若松監督と出会い、弟子入りを志願する井上淳一を杉田雷麟が熱演。80年代半ば、VHSの普及で映画館への客足が遠のき始めた時期に、特色のある編成と、それまで自主上映するしかなかったインディペント映画を育てる場として、新しい映画館(ミニシアター)を作り上げるまで、運営する木全と井上や金本らの青春物語がクロスする。
 来阪した井上淳一監督、出演の芋生悠さん、杉田雷麟さんにお話を伺った。
 

 
――――前作から10年後のシネマスコーレ誕生の舞台裏と、井上さんを含むそこに集う人たちの群像劇を撮ったいきさつは?
井上:『止められるか、俺たちを2』を作ろうなんて一度も思ったことがありませんでした。コロナ禍のシネマスコーレを追ったドキュメンタリー『シネマスコーレを解剖する。』のパンフレットに「スコーレを作る時の話だったら、止め俺2ができるんじゃないか。タイトルは『止められるか、木全を』で」と100%冗談で書いたら、スコーレ界隈から「面白いから本当に作ってほしい」と声が上がって、助成金(ARTS for the future! 2)を使って、1千万円ぐらいで撮れるんじゃないかと思い始めた。でも、木全さんの話だけじゃもたなくて、仕方なく自分のことを書くしかなかった。さすがに「取り返しのつかないことになるかも」と思ったけど、逆に構想何年でいつか自伝をやりたいみたいな感じじゃなかったのが良かったのかもしれません。
 
 
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■井浦さん、東出さんの厳しい目があったからこそ書けた脚本(井上)

――――なるほど、当初からの狙いではなかったんですね。
井上:最初は1千万で作れる規模のものを考えていて、第一稿はお金のかかりそうな撮影シーンとかを全部、木全さんと井上のインタビューの中で語るというふうにしていた。そしたらそれを読んだ東出さんから「(前作が)好きなので、それを超える熱量、かつ新しい地平にどうすれば辿り着くのか、想像の羽を大きく羽ばたかせながらこの台本に向き合い続けたいと思います」というメールが来た。ということは面白くないということじゃないですか。それでこれはヤバいと本気になった。
 
――――どんな改変を加えたのですか?
井上:まずインタビューで語らせていたところを全部シーンにしていった。もう製作費のことを考えるのはやめよう、こんなことを書いて撮れるかな?という自分の演出力を考えるのもやめよう、まずは面白いシナリオを書こうと。他には、例えば金本はお姉さんキャラで、一緒にスコーレでバイトするのは後輩だった。それが、スコーレの常連だった田中俊介さんが出たいと言ってくれたんだけど、役がなくて、その後輩を先輩にすることが思いついた。それで金本と一度ネている設定にして、金本より先に就職という問題に直面するようにした。それで、物語にも幅が出来たし、金本にも陰影が加わった。そうやってキャスティングで豊かになったところも多い。撮影の蔦井孝洋も「面白いホンだけど、傑作になるには何かが足りない」と言い続けてくれたし、東出さんもだけど、(井浦)新さんもいろいろ言ってくれたし。スタッフ、キャストの厳しい目がなければ、シナリオでここまで粘れなかったかもしれません。
 
――――ちなみに、井浦さんからはどんなご指摘があったのですか?
井上:やはり何かが足りないと言っていて、ある時、この時期の若松さんって、淋しかったんじゃないかと思ったんです。前作の登場人物たちはアラフォーになり、みんな売れて離れていった。盟友の足立正生さんは日本赤軍と合流してアラブに行ったまま。そこに子ども世代の僕が言ったわけですが、一緒に闘うという感じじゃなかったと思うんです。それでそのことを書いて、新さんにLINEしたんです。そしたら「それに気づいたのなら、脚本に書いて下さい。ただ僕は古いアルバムさえ用意してもらえたら、やることは分かっていますが」と返信が。しかし、そこは僕も脚本家としても意地がありますから、それで書いたのが、若松プロの事務所で井上が目覚めると若松さんが静かに電話しているシーンです。いいシーンになったと思っています。あと、新さんとクレジットの話になったことがあるんです。そしたら新さんが「この映画のトップは芋生さんだ」と。この映画の中で一番変わるのは金本なんです。そういう意味では主役は金本と言っても過言ではない。それを新さんは読み取っていた。さすがだなと思いました。
 
――――シナリオ段階での密なやりとりの結果は、作品を見れば分かりますね。
井上:東出さんもクランクイン直前まで、どう演じるべきか悩んでいたと思います。木全さんって、ドラマの基本である「対立と葛藤」がないんですよ。本人は「ないんじゃなくて、しないんだ」と言っていますが、とにかく悩みを見せないし、怒らない。だから芝居場を作れないんです。東出さんも撮影前に木全さんにはじめて会った時、「ガーッと怒ったりしないんですか」とか訊いていたけど、木全さんは「ないない」としか言わない。最初は木全さんが主役のつもりだったので、東出さんにも主役オファーだったんですよ。だから僕は降りられても文句は言えないなと思っていた。でも、たぶんシフトチェンジして、若い二人をサポートする触媒のような存在を見事に演じてくれた。東出さんはスゴいですよ。外見はあんなに違うのに、木全さんにしか見えないし。
 
 
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■井上さんの脚本に信頼を寄せ、オファーを快諾(杉田)

――――杉田雷麟さんは若松監督に弟子入りする頃の井上さんを演じていますが、いつ頃オファーされたのですか?
杉田:『福田村事件』の撮影前です。
 
井上:『福田村事件』のオーディションで500人近い俳優さんに会ったのですが、杉田さんが来た時に別の惑星から違う生き物が来たかと思うくらいオーラがあって、驚きました。これは僕だけでなく、みんな言っていた。僕は福田村のオーディションなのに「ラッキー、井上が来た!」と一人で喜んでた。雷麟くんは10代から売れているのに、何も余分なものが付いていない感じと、どこか今の自分に満足できていない感じがものすごく良くて、『福田村事件』で役が決まる前に、本作の出演をオファーしました。
 
――――監督本人役というのはプレッシャーがありましたか?
杉田:『福田村事件』のラストシーンで脚本の改訂を巡っていろいろな意見がありましたが、僕と井上さんは同じ意見だったし、こういう差し込み(脚本)を書く人なんだと信頼が厚くなりました。井上さんが書く脚本なら、僕はなんの心配も要らないと思ったし、演じるにあたり最初は緊張しましたが、あとは僕が演じてみなさんにどう思っていただけるかなと。それだけでしたね。
 
――――井上監督と同世代なので、80年代地方都市の高校生映画デートとその後のエピソードがリアルかつ面白かったです。
杉田:あのシーン、ダサくていいですよね(笑)。僕も演じた井上のようなダサい部分があるんですよ。相手の興味の有無など気にせず、自分の知識をひけらかしてしまうとか。演じていて恥ずかしくなって来たりして…。
 
井上:僕、ほとんど演出してないんですけど、あのシーンだけは「映画の知識をひけらかすところから、すでに口説きに入ってるからね」と言いました。そんなこと、上手くいくわけないのに、ずっと勘違いしてきた。もう自虐というか、カミングアウトというか、ごめんなさいという感じで。でも、自分のことだといいですよね。どれだけダサく書いても、誰にも怒られない(笑)。前作は遠慮してないと言いながら、どこかでやっぱり遠慮してましたから。
 
 
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■インディーズ映画に育ててもらったので金本役で恩返しがしたい(芋生)

――――なるほど(笑)。それでは、芋生悠さんのキャスティング理由は?
井上:『37セカンズ』から芋生さんのファンだったんです。あの映画、後半で脳性麻痺の主人公が対まで双子のお姉さんを探しに行くんですけど、それまでがあまりに良かったんで、変なお姉さんが出てきたら台無しじゃないかと不安だった。そしたら、出てきたのが芋生さんで。もうこれしかないっていうくらいピッタリで、3シーンだけなのに圧倒的な存在感だった。僕、誰だろうって、映画館出た途端に検索しましたからね。それ以来、芋生さんとはいつか仕事したいと思ってきたんです。
 
芋生:映画館や映画愛の話なので、これはやりたいと強く感じました。いままでインディーズ映画に育ててもらったので、金本役を演じることで映画に恩返しができるのではないか。そう思ったんです。今、自分で脚本・監督した短編映画も撮り終わったばかりですが、全部実費で挑んだので、気がついたらすごくお金がかかってびっくりしています。
 
井上:映画を作るときはしっかりしたプロデューサーがいないと、お金がいくらあっても足りない(笑)。芋生さんは、寂しげで何かが足りないというイメージの役が多いけれど、『37セカンズ』のようにきちんと自分の足で立って、強くて、そんな人がちゃんと最後に笑えるような話にしようというイメージがありました。
 
 
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■コロナ禍の批判に対するカウンターになるのではないか(井上)

――――芋生さんがおっしゃるようにミニシアターの日々の運営のこと、特に立ち上げ時の苦労が細かに描かれているのも胸アツな部分です。やりたいプログラムと動員力のあるプログラムの乖離とか、潰さないように運営する苦労もたっぷり描かれていますね。
井上:映画も同じで、この企画をやりたいけれどお客さんは来るのかとか、インディーズでもそこを外して考えられないし、逆にそれがあるからこそ鍛えられる部分も間違いなくある。コロナ禍で、「SAVE the CINEMA」や「ミニシアター押しかけトーク隊」(荒井晴彦、森達也、白石和彌、井上淳一の4人が全国の映画館を応援するため行ったオンライントーク)という活動をやったのですが、その時に「映画の作り手なら、ヒットする映画を作って、ちゃんと客を入れることがミニシアターへの最大の応援なんじゃないか」という声を聞きました。何もしない人に言われたくないし、それが出来たら苦労しないとは思ったけれど、その批判はある意味当たっている。ミニシアターはコロナで危機になったわけではなくて、その前から苦しかった。だから、ミニシアターの映画を作ることでもしミニシアターに貢献できたら、その批判に対するカウンターになるのではないかと思いました。なので、お客さんが来ないとホントにシャレにならないんですが(笑)。
 
――――確かに時代が変わっても変わらないものが写っている一方で、若松監督と井上さんとの師弟関係は、映画関連の学校で映画作りを学ぶことが主流な今ではなかなか得られない体験ですね。叱り飛ばされる事も度々ですが、師弟関係を疑似体験した気分です。
杉田:(若松監督に弟子入りするなら)僕は自分では根性がある方だと思うので、続くと思います。理不尽に怒られたら、逆に突っかかるタイプなので。元々サッカーや、ボクシングはプロになろうと思ってやっていたぐらいですし。
 
芋生:わたしも空手10年ぐらいやっていますが、それは根性ありますね。
 
井上:あの頃って、今よりもう少し人と人との距離が近かったというか、ガンガン人の絶対防衛ラインに踏み込んできたし、踏み込まれてきた。今はお互いに手探りというか、ちょっと慎重になり過ぎてる気がするんですよね。それで救われている人もいると思うから、単純に昔は良かったとは言いたくないけど、それでももう少し「幅」や「余白」みたいなものはあってもいいかなという気はするんですよ。それを若松さんとの関係で描きたかったというのはあるかな。
 
芋生:『青春ジャック〜』で井浦さん、東出さんや井上さんなど本当にいい先輩に出会えたし、スタッフのみなさんも本当に熱くて、繋がっている感じがして、すごく嬉しかったですよ。撮影から帰ってきても、「ああ、幸せだったな」と思うぐらい、本当に楽しかった。
 
 

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■競い合っていた方が相乗効果でよくなることを井浦さんは知っていた(芋生)

――――若松監督を演じた井浦さんの、魂が乗り移ったような演技も熱かったですし、名古屋でミニシアターという当時他がやっていないことに着手し、みんなで映画を作り上映して来た熱というものも伝わってきましたね。
芋生:井浦さんが撮影前に、私と杉田さんを呼んで「この二人にかかっているから」と。
 
杉田:僕も撮影前日に「この映画は、明日の芝居にかかっているから」と井浦さんに言われました。当日もずっと現場にいて、自分の出番は終わっているのに、写真を撮ったり、最後の屋上のシーンもいらっしゃいました。
 
井上:映画の中でも、僕の初監督作が若松さんにジャックされていくシーンがありますが、今回も若松さんに見守られている気分ですよ。若松さんじゃなくて、新さん演じる若松さんなんですけど。でも、僕、本番中に新さんが雷麟くんに「井上!」と怒鳴るシーンで「ハイッ!」って返事しちゃいましたからね(笑)。本番中なのにスタッフが笑うからなんだろうと思ったら、僕が返事していたという。『福田村事件』でもそうだったけど、新さんは座長として、本当に現場全体を見てくれている。あそこまでの人はなかなかいないんじゃないかな。本当に若松さんがいるみたいでした。
 
芋生:現場全体を見て、私と杉田さんはバチバチした関係の役だけれど、競い合っていた方が相乗効果でよくなることを、井浦さんは知っていたんでしょうね。最初はハッと思ったけれど、ありがたかったです。東出さんも面倒をよく見てくださいましたし、木全さんぶりが見事でした。
 

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■ミニシアターへの応援歌みたいな作品(杉田)

――――ミニシアター黎明期からインディペンデント映画を上映する場所として育っていく過程を紐解くという意味でも、意義のある作品ですね。
井上:この映画で若松プロの事務所として撮影したのは、名演小劇場の事務所なんですよ。その時はまさか名演が3ヶ月後に閉館するとは思ってもみなかった。昨年は名古屋シネマテークも閉館したし(ナゴヤキネマ・ノイとして2024年4月に再始動)、ミニシアターの危機は終わっていない。むしろ、これからだと思う。だからこそ、この映画に限らず、本当にミニシアターに映画を観に行って欲しい。
 
杉田:図々しいかもしれませんが、ミニシアターへの応援歌みたいな作品ですから。やはりミニシアターの空間が好きですし、スタッフが手書きで感想を書いたり一つ一つの作品に愛をもって、送り出してくれている気がします。
 
芋生:だからこそ(ヒットするように)私たちも頑張らなくてはと思います。
 
井上:ガザで虐殺が続いていますが、例えばそんな時にガザのドキュメンタリーや劇映画を上映できるのはミニシアターだけなんです。シネコンでは絶対にかからない。沖縄の映画も福島の映画もシネコンではかからない。そういう意味で大袈裟でなくミニシアターは「表現の自由の最前線」なんです。若松さんがそこまで考えて、シネマスコーレを作ったわけじゃないだろうけど、若松さんの蒔いた種が少しずつ開いてる気がするんですよ。だから、絶対になくしてはいけない。
 
――――そして芋生さんや杉田さんが演じた映画や映画館に魅せられた若者たちの青春映画としても末長く愛される作品なのではないかと思います。
井上:TikTokが日常に入りこんでいる今の若者たちの青春はたぶん書けないけれど、まさかこんな手があったかと自分でも驚いたんです。パンフレットに寄稿してくれた人たちがなぜかみんな自分の青春時代のことを書いているんですよ。誰もが最初から何者かであったわけではなく、何かになりたい、なろうとした時期があったはず。この映画は、誰にでもあるそういう柔らかい部分にふれる映画になっているみたいなんですよ。青春を描くというのはこういうことなんだなと自分でも驚いています。
 
杉田:ひたむきに若松監督を追いかける井上が羨ましく思いましたが、今の時代でも似たようなことはできるんじゃないかと思っています。
 
芋生:金本はずっとメラメラと燃え続けているけれど、ずっと空回りしていて、生きるために表現は絶対に必要な人だと思うのです。そういうもがく姿は共感する部分があり、青春しているなと感じました。私は今、女性の監督とご一緒することが多いんです。映画監督の吉田奈津美さんと仲がいいのですが、撮影時に川向こうでカメラマンと吉田さんが意見をぶつけ合っているのが聞こえてきて、本当にたくましい。ドラマの現場だと女性の方が多いぐらいだし、時代は変わってきています。金本みたいな人が頑張ってくれた結果が今に繋がっているのだとしたら、そのときに諦めないでくれて、ありがとうと言いたいですね。
(江口由美)
 

<作品情報>
『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(2023年 日本 119分) 
脚本・監督:井上淳一
出演:井浦 新 東出昌大 芋生 悠 杉田雷麟 コムアイ 田中俊介 向里祐香 成田 浬 吉岡睦雄 大⻄信満 タモト清嵐 山崎⻯太郎 田中偉登 髙橋雄祐 碧木愛莉 笹岡ひなり
有森也実 田中要次 田口トモロヲ 門脇 ⻨ 田中麗奈 竹中直人
2024年3月15日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、3月16日(土)より第七藝術劇場ほか全国ロードショー
©若松プロダクション
 

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ダイアン・キートン、リチャード・ギア、スーザン・サランドン、エマ・ロバーツ、ルーク・ブレイシー、ウィリアム・H・メイシーら豪華キャストが集結したロマンティック&ヒューマン・コメディ『アバウト・ライフ 幸せの選択肢』3月8日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国公開いたします。


本作は不器用な大人たちの“幸せ探し”を描いた感動作。6人の主人公による、最高の人生の見つけ方をユーモアと感動を交え綴るのは、『クイズ・ショウ』でアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞作品賞にノミネートされ、ニューヨーク映画批評家協会賞を受賞したマイケル・ジェイコブス監督。ニューヨークタイムズから「観た後に愛する人たちと語り合いたくなる、楽しくて完璧な脚本」と評された。その脚本に惚れ込んだオスカー俳優のダイアン・キートンスーザン・サランドンウィリアム・H・メイシーリチャード・ギア、ジュリア・ロバーツの姪エマ・ロバーツルーク・ブレイシーら豪華俳優陣が奇跡の共演。ニューヨークを舞台に最高にお洒落でチャーミングな6人が、愛と人生のアンサンブルを奏でます。観る者を心地良い世界へといざなってくれる、極上の音楽にも大注目!!


ミシェル(ロバーツ)は交際中のアレン(ブレイシー)との結婚を望む一方、煮え切らないアレン。2人は親たちの経験から結婚生活について学ぼうと、両家顔合わせのディナーの席を設ける。だが驚いたことに、互いの両親はすでに顔なじみだった。なんとお互いの配偶者同士で不倫をしていたのだ!厳しい状況に追い込まれた親たちは、子供たちに自分たちの不倫を隠しながら、配偶者の愛人と正面対決を図る。だがある事をきっかけに6人の運命は予測不可能の展開に…。
 



「映画を見たあと観客が愛する人たちと語り合えるような作品になることを願っています」

マイケル・ジェイコブス監督オフィシャルインタビュー

 

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この映画は私が20歳の頃に書いた脚本がもとになっています。まだ人生経験が乏しい時に書いたんですが、それを60代になった自分の視点で書き直しました。脚本を書き上げるうえで分かったのは、“愛してる”という言葉は簡単に言えるのに、その言葉に責任を負うのはなんて難しいんだろうということです。


700話以上のテレビドラマ、ブロードウェイでの2人芝居、オフブロードウェイでの1人芝居、そして作品賞にノミネートされた映画の脚本を書いたあと、僕が人生で重きを置いていることを題材に脚本を書きたいと思いました。僕は38年間結婚生活を続けています。妻と共に人生を歩んでいく中で、どんな苦難を経験しても、別れようと思ったことは一度もありません。同時に、夫婦の絆が固く見えた友人夫婦が離婚していく様子もたくさん見てきました。夫が妻に失望し、妻が夫に「人生を台なしにされた」と愚痴をこぼす。間違った決断や破滅した人生の物語を聞いているうちに、「これはコメディ作品のテーマになる」と常々思っていました。そして、やっと脚本にできるほど十分な人生経験を積んだのです。


脚本はキャスティングする前に書き上げました。特定の俳優を想定して書いたつもりはなくて、このような幸運に恵まれるとは思ってもみませんでした。


aboutlife-500-1.jpg本作品の脚本の執筆中、登場人物たちや彼らが感じるフラストレーションについて理解が深まると、笑いが込み上げてくるようになりました。彼らが感じるフラストレーションは、人生の終わりが見え始めた年齢に近づいたことで、これからをどう生きるかという疑問から生じたものであるからです。結婚の価値や、なぜ我々がこんな失態をおかしてしまうのかを探るうえで、リアルなだけでなく普遍的に共感を覚えるようなシーンが次々と浮かんできました。登場人物たちが陥った状況に大笑いし、時に涙を流し、そして物語に入り込んだ瞬間が最も印象深いです。『アバウト・ライフ 幸せの選択肢』には現実と創作のバランスをうまく取ったコメディになってほしい。恋愛と結婚を題材に、恋愛と結婚のどちらが勝つか期待しながら、映画を見たあと観客が愛する人たちと語り合えるような作品になることを願っています。


【作品情報】

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監督・脚本:マイケル・ジェイコブス
製作:ジョナサン・モンテパレ『ボーンズ アンド オール』
音楽:レスリー・バーバー『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
撮影:ティム・サーステッド『リトル・ミス・サンシャイン』
編集:エリカ・フリード「セヴェランス」
出演:ダイアン・キートン、リチャード・ギア、スーザン・サランドン、エマ・ロバーツ、ルーク・ブレイシー、ウィリアム・H・メイシー
2023/英語/95分/原題:Maybe I Do/字幕翻訳:長夏実
配給:AMGエンタテインメント
© 2023. FIFTH SEASON, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://aboutlife-movie.jp

 

2024年3月8日(金)~新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA 、シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinéma神戸国際 ほか全国順次ロードショー


(オフィシャル・レポートより)


『フレディ・マーキュリー The Show Must Go On』

クイーン・コンシェルジュで本作字幕監修者の吉田聡志氏と

音楽ライターで「クイーンは何を歌っているのか?」著者の朝日順子氏

アフタートークレポート
 

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伝説のバンド《クイーン》ボーカル フレディ・マーキュリー、

語り継がれる本当の姿


2018年に公開された『ボヘミアン・ラプソディ』以降若い世代を巻き込み人気が再燃したクイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーについて語られたイギリス発の最新ドキュメンタリー『フレディ・マーキュリー The Show Must Go On』が2月16日(金)より世界に先駆け日本初公開されました


本作は、名曲「ボヘミアン・ラプソディ」誕生秘話とフレディをはじめブライアン・メイらクイーンのメンバーのインタビューを収録、その後音楽界に与えた影響などを考察したドキュメンタリー映画です。その公開記念トークショーが、2月17日(土)14時30分の回上映終了後に行われました。登壇者にはクイーン・コンシェルジュで本作字幕監修を務めた吉田聡志氏と音楽ライターで「クイーンは何を歌っているのか?」著者の朝日順子氏を迎え、2月のクイーン来日公演に纏わる話やロンドンのサザビーズオークションで見たフレディ・マーキュリーが愛した日本の品々や衣装のことなど、本作同様リアルな視点でフレディ・マーキュリーそしてクイーンというバンドについてお2人に語っていただきました!!
 


日時:2月17日(土) 14時30分の回上映後 

登壇者:吉田聡志(クイーン・コンシェルジュ)、朝日順子(音楽ライター・翻訳者)(敬称略)

場所:新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3丁目15番15号)



――クイーンの来日公演はいかがでしたか?

朝日順子:まだ興奮冷めやらない感じですが、私は前回よりずっと良かったなと思いました。アダム・ランバートの魅力が最大限に引き出されていて、ソウルフルな感じとか。前回はメドレー形式もあったんですが、今回はじっくり聞かせる感じでアダムありがとうと思いました。

吉田聡志:本当に素晴らしいショーで、お金もかけているし、パフォーマンスも素晴らしい。クイーンのファンを50年やっていて良かったなって。その中でも今回はナンバーワンかもしれない。本当に感動しました。


freddie-pos.jpg――吉田さんは今回本作の字幕監修として関わっていただいて、1975年の初来日からずっとクイーンを追いかけていらっしゃるということですが映画の感想をお聞かせください。

吉田:クイーンの特にフレディってあまり簡単な人じゃなくて、取材するのも難しいし、インタビューも嫌いと言われていますが、それなのにフレディが信頼している4人の方が主に出てきて大げさでもなく、そのままフレディのことを素直に語ってくれている、その真実性が今回の映画で関わらせていただいて強く感じた点ですね。


――朝日さんは今回パンフレットに寄稿していただいていますが、映画の感想や気になる言い回しなどありましたか?

朝日:最後のフレディの来日公演にギリギリ間に合って中3の時に見ましたが、80年代からファンになったので、今回映画『ボヘミアンラプソディ』の映画のブームから割と悲劇のヒーローみたいに祀り上げられる傾向があって、特に海外メディアだとスキャンダラスに書く感じがしたのですが、この映画は悲劇のヒーローに祀り上げるのではなく、クイーンデビュー直後から知っている人たちがコメントし、丁寧に虚像じゃない部分、それと本人の部分とフレディが演じた部分をそれぞれどうやって彼が演じる部分を作り上げていったのかっていうことと、実際のフレディはこういう人なんだという証言をすごく丁寧に説明していて好感が持てました。


――クイーンが長い間ヒット曲を出し続けていたという秘訣は何だったのでしょうか?

吉田:曲がいいのはもちろんですが、初期のプロデューサーのロイトマス・ウェイカーが言った有名な話で、クイーンのサウンドは一つだけれど作曲家が4人いる。とてもバンドとしては強力な武器があるわけですよね。4人4様それぞれ個性が強くて、かつ得意なサウンドとかもあって、だから特徴的にはヒット曲はいっぱいあるけれど、同じようなヒット曲というものがあまりない。これは本当にクイーンならではというか最大の強みだと思いますね。


――クイーンといったらフレディ・マーキュリーという印象がすごく強かったのですが、全米でナンバーワンを取った2曲のうちの1曲はフレディの曲ではないですよね?

吉田:ライブでも大盛り上がりの「地獄への道連れ」はジョンの曲ですからね。フレディはもちろん「愛という名の欲望」を出しましたけど、そういった意味でもロジャーの代表曲も「レディオ・ガガ」もあるし、ブライアンは言わずもがなたくさん代表曲があるしということで、本当に4人それぞれがヒット曲を持っているっていうのがすごいなと思いますね。


freddie-550.jpg――その中でフレディ・マーキュリーといえば、音楽的にもしくは歌詞の面でどういった特徴を持っている方だったのでしょうか?

朝日:フレディに限らず4人ともすごくインテリで、割と俯瞰してというか自分たちをスーパースターとしてそこに入りすぎず、エンターテイナーに徹することができました。その中でもフレディは特にプロとしてエンターテイナーに徹することができたというのが歌詞にもすごく表れていて、だけどそれを誰も分からないような歌詞にはせず、万人が分かるように提供する。そこは自分たちがエンターテイナーだという自覚のもとに立っているから今でも世界ナンバーワンバンドであるのは、歌詞の分かり易さというのがすごく大きいとは思います。


――4人ともインテリだったという話ですが、音楽にもそういった面は表れていたのですか?

吉田:有名な話だとフレディ・マーキュリーが最初にミュージックライフのアンケートに答えてくれた時、4人とも共通して好きな人は2人いて、ジミ・ヘンドリックスとジョン・レノンは4人ともすごく好きなんですが、フレディはジミ・ヘンと同列のところにパガニーニって書いてあるんですよ。この人はきっと幼少からクラシックをやっていたし、クラシックとかジャズとかロックとかジャンルとか関係なくて、自分に刺激のあるものは全部取り入れて音楽を作って演奏していたから結果的に「ボヘミアンラプソディ」のような誰にも作れないすごい完成度の曲ができちゃったのかなと思ったことはあるけど、逆に歌詞の世界もあのバンドは4人4様ですよね。


freddie-500-2.jpg――今回のタイトル「The Show Must Go Onという曲のタイトルですが、こちらの「The Show Must Go Onの歌詞について何かフレディの思いなど感じるものはございますか?

朝日:これはブライアンとフレディがテーマを考え、フレディの病が進み、すごく大変な時にブライアンがフレディの思いを代弁して書いた歌詞ですが、「The Show Must Go On」という表現はエンターテインメント業界の用語で、何があっても出し物を続けなきゃいけないという言葉で、古くからサーカスの団長が叫ぶような、何があっても例えば猛獣が逃げ出してもショーを続けなきゃいけない、エンターテインメント業界の用語なんです。


この曲の歌詞の内容が大変なことが起こっているけれど動乱も剥がれ落ちそうになるけれども、微笑みは絶対絶やさず何があってもショーを続ける。どんなことがあってもショーを続けるぞみたいな。それがこの映画のストーリーにものすごくリンクしていて、いろんなことがあったけれども、最後の最後まで他のメンバー3人に支えられながら、創作活動を続けたフレディ・マーキュリーの生き様というのがこのタイトルに現れているんですよね。
 

――これはフレディ自身ではなくてブライアンがフレディの気持ちを考えて作ったということなんですね?
朝日:そうなんです。何度も確認してあまりにリンクしているので。歌も難しいですよね、ボーカルが。これ大丈夫って聞いて、スタジオでフレディは大丈夫最善を尽くすと言って、ウォッカを飲んで煽って歌い切ったという壮絶な曲なので、ぜひ家に帰られたらみなさまに聴いていただきたいなと思います。


――この頃には、もうフレディの具合が悪いということはファンの間では噂になっていたと思のですが、この曲を初めて聴かれた時のお気持ちは?

吉田:それはよく覚えていますね。ライブエイドでもう一回一致団結するじゃないですか、その後「カインドオブマジック」が出て、とてつもなくでかいマジックツアーっていうのをヨーロッパでやって、なんで日本には来てくれないんだろうって思って、悶々としていて、その次にメンバーがソロに入ってクイーンのアルバムはいつ出るんだろうと思っていたら、「ミラクル」というアルバムがようやく出て、PVはどんどん出ていくのにライブが発表されなかったんですよね。


ミラクルのツアーをやったら絶対盛り上がるし、日本ではマジックツアーが見られなかったから今か今かと待っていてもツアーが発表されない。これはなんかおかしいぞと言っているうちに、PVに出てくるフレディがなぜかモノクロだったり、なぜか頬がこけていたり、髭が生えていたりと容姿が変わっていった時に、僕らファンが見ても最近おかしくないみたいな話が出始めて、そうこうしているうちに「イニュエンド」が届いて、随分早いな「ミラクル」からの間がと思ったら、「ミラクル」の後すぐレコーディングに入っているんですよね。とにかくフレディは1曲でも多く曲を残したかったんだ。

1曲でもクイーンで歌いたかったんだというのが少しして分かって、いい意味ですごく重たい作品だと感じましたね。特に「The Show Must Go On」は。フレディがフレディ・マーキュリーであるための理由として、この曲なのかなというふうに感じたので、ある意味重く受け止めた思い出があります。

 

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――映画の中でもライブエイドを取り上げていると思いますが、その前にクイーンが解散するのではないかという噂が立っていたそうですが?

朝日:85年の時は解散する最後のライブだよと噂されていて、最後だと思って見に行きました。80年代は割と日本ではメディアの露出も少なく、ファンにとっては日陰の身というか、だから今のクイーンのブームが死ぬほど嬉しくて、80年代のファンとしては見たことのないブームで、70年代のブームを体験してないので、ここ数年間すごく嬉しいんです。


――その頃ちょうど、ライブエイドでフレディはクイーンで歌いたいと決意したのではないかとありましたが、再び結束したということがその頃の曲の歌詞か何かに現れるものはありましたか?

朝日:ミラクルというアルバムは、パーティーっていう最初の曲も含め、久しぶりにみんなでスタジオに集まって、わいわいガヤガヤ、最高だねみたいな、またやるぞっていう。アルバムジャケットも団結力を現しているんです。

吉田:来日公演を見に行った方は思ったと思うんですが、メニューの中に「I Want It All」があるじゃないですか。ミラクルから唯一選ばれている曲で、これはあくまでも僕の想像ですが、フレディがあの時ツアーをやれていれば、あの曲は1曲目じゃなかったと思うんだよね。

すごくハードでリフもかっこいい曲だけど、ただ残念ながらミラクルのツアーがなかったことで、ミラクルの楽曲はクイーンでは生演奏ができなかったんですよね。


――映画の中で初期にフレディがクイーンのビジュアルを白黒にこだわっていたという話がありましたが、これには何か意味があったのですか?

吉田:当時、75年日本に来た時、白鷺っていう衣装を着ていた。皆さんよくご存知ですよね。これはザンドラ・ローズっていう女性デザイナーで、イギリスのコシノジュンコさんみたいな人がいるのですが、彼女がデザインしたものでフレディが直接頼んだんですが、元々のデザインはブライダルかなんかの衣装なんだよね。
白と黒にこだわったというのは、これは初期のインタビューですが照明です。当時からステージングにすごくこだわっていたクイーンが、最初から照明のオペレーターとかも専門の人を雇っていく中で照明に一番映える衣装だというと、結果として黒と白なんですって。だから照明って消えてつくところが一番大事で、消えた時に真っ黒に暗転するには黒だし、いろんな照明が当たるのに綺麗なのは白だしということで、白と黒にこだわるという話がありました。


――フレディ・マーキュリーといえばもう一つとても印象的なレオタードのような衣装がありますが、あのような衣装を初めてご覧になった時、ファンとしてはどういうお気持ちでしたか?

朝日:強烈だなと思いましたが、8月にロンドンでサザビーズのオークションに合わせて一般公開されたフレディの遺品の展示を見たら、大量にあのもじもじ君みたいなボディースがあって、それを間近で見ると、すごく素敵でオートクチュールみたいな。手仕事で作られた繊細な感じがして、あ、こんな素敵だったんだ、ごめんなさい、と思いました。実物を見ると、全然印象が違いました。

吉田:慣れって怖いなと思ったんですよ。最初見たとき、あれだけ格好悪いと思った衣装が、フレディが1ミリも恥ずかしがらずにどうだっていい感じで、ステージで着ているのに慣れてくると、こんなにこの衣装が似合う人は世界にフレディしかいないとだんだん思えてきて、最後にはなんて格好がいいんだみたいな。


――朝日さんのお話にもあった、サザビーズのオークションについて。フレディ・マーキュリーはお買い物がとても好きだったっていうことですが、日本でもかなり買い物をされていたのですか?

朝日:割と新しい大正時代の日本の版画で、朱色と暗っぽい色の2色使いの地味な版画があって、ロックスターのオタクって、割と成金趣味の金ピカなんですが、フレディの品々は、こんな趣味が良かったんだという、渋いのもたくさんあるし、すごくセンスが良くてびっくりしました。

吉田:僕はね1匹だけ、あれ、1匹じゃない、狙っていたのが猫なんですよ。猫の小物をいっぱい持っているっていう話をずっと聞いていたけど、本当かなと思っていて、ガードマンの伊丹さんに色々話を聞いた時、骨董品の猫とか探して、買っていたよと言っていたから、本当かなって言ったら、いましたね、猫ね。招き猫の古いのが、20匹ぐらいいたかな。


――その他吉田さんから見たクイーンの日本の聖地とは?

吉田:今回の来日では、ブライアンが妙に張り切っていて、インスタ上がりまくっていたじゃないですか。東京は浅草とスカイツリーとか。本当にブライアンが楽しんでいていいなと思ったんですけど、聖地巡りをして、東京はもちろん東京タワーとか、あとフレディがお忍びで86年に行った有名な栗田美術館ですね。恐らくフレディのガーデンロッジの庭は、ここからインスパイアされたんじゃないかと思われる、小松川植物園だったかな。ゆかりの地をいろいろ巡って、あの、リポートをしているので、お休みの日に、一日クイーンのゆかりの地を巡りたいという方は、ぜひガイドブックとしてこの本をご利用ください。

 

――朝日さんはクイーンの聖地巡りをしたことは日本ではありますか?
朝日:「日本ではないんですけど、イギリスに行ってきて、ロンドンだけじゃなくてリバプールもクイーンの聖地があるのでおすすめです。」


――最後にメッセージ

朝日:映画の中に2人おすすめのコメンテーターの方がいて、ロージーさんという人は、クイーンはデビューした直後からずっとイギリスのマスコミに酷評されていたのですが、ロージーさんだけは最初から寄り添った人で重要人物なんです。ポール・ガンバチーニさんは長年イギリスのラジオ業界で活躍しているんですが、70年代の初期はローリングストーン紙のイギリスの派遣員としてすごい大物を大量にインタビューしていて、だから70年代の音楽にはすごく精通された方でその2人がコメントしているってのすごくいいなと思いました。

吉田:来日の感動がまた違った角度から深くなったんじゃないかなと思っております。この映画をはじめ、これからクイーン関連の色々なイベントの予定もありますので、クイーンコンシェルジュとしては皆さんにどうやったら楽しんでいただけるかと考えております。

 


CREDIT

監督・脚本・編集:フィンレイ・ボールド 
製作:ブライアン・アベック 
編集:ジョーダン・ヒル、ダニエル・ウィンター 
音響:クリスチャン・タント 
出演:カシミラ・クック、ポール・ガンバッチーニ、ロージー・ホライド、ミック・ロック、ポール・ワッツ
2023年/イギリス/49分/カラー/1.85:1/5.1ch/
英語/原題「FREDDIE」/字幕監修:吉田聡志(MUSIC LIFE CLUB)
協力: MUSIC LIFE CLUB 
配給:NEGA/配給・宣伝協力:アップリンク
©Entertain Me Productions Ltd 2023.


(オフィシャル・レポートより)


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フィリピンパブの裏側で未だ行われている偽装結婚を背景に、多文化共生のあり方をリアルに描いた、実話を基にした異色のアジアン・ラブストーリー『フィリピンパブ嬢の社会学』の東京初日舞台挨拶が2/17(土)に東京K’s cinemaで行われ、兄弟漫才コンビ「まえだまえだ」としても活躍していた主演の前田航基、共演の一宮レイゼルステファニーアリアン白羽弥仁監督原作の中島弘象が登壇した。


本作は重版を重ねる中島弘象氏による同名のベストセラー新書「フィリピンパブ嬢の社会学」の映画化作品。主人公の大学院生がフィリピンパブで働く女性と恋に落ち、ともに困難を乗り越えてくラブストーリーだ。作品の舞台である愛知県内で先行公開され大ヒットを記録し、ついに東京での公開を迎えた。
 



登壇者は満員の劇場に、観客からの大きな拍手を受けながら登場。

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主人公の大学院生・中島役を演じた前田は、「ラブストーリーの主演をさせて頂くことは多分これからの俳優人生で数えられるぐらいしかないと思うので、貴重な経験をさせて頂けたと感謝しています」と感慨深げに語った。


白羽弥仁監督が「主人公がいろんな人に出会って、いろんなアクシデントにぶつかって弾き返されるというジェットコースターのような原作の映画化なので、そのアクションに耐えられる肉体を持っている、アクション俳優として前田くんにお願いしました」と映画に前田の存在が不可欠だったことを明かすと、「本当に動けるんだぞってところを見てほしいです」と前田が続け、会場からは笑い声が上がった。


ヒロイン・ミカを演じた一宮レイゼルは本作が映画初出演。「日本に出稼ぎに来ているフィリピン人の背景や、家族愛、友人愛など大事なメッセージがたくさん詰まった話だったので、ぜひこの作品に参加したいという強い思いで参加しました」とオーディション時を振り返る。レイゼルと共演するシーンが多かった前田は、「実際の年齢も僕より1つ上のお姉さんなんで、出店でクレープをご馳走になってしまいました」と撮影エピソードを明かした。


ミカの同僚・アキを演じたステファニー・アリアンは、「現場ではアドリブをたくさん出すくらい、レイゼルさんと本当の友達になりました。」と笑顔をみせた。


最後に前田が「フィリピンはおおらかで、ポジティブで、心の余裕や許してあげる優しさのある本当に素敵な国。日常の中で、苦しいことも辛いこともあると思いますが、この映画を観て『大丈夫。なんとかなる。』そんな気持ちになっていただけたら嬉しいです」と伝え、イベントを締め括った。



さらに、大ヒットを受け拡大公開が決定。

3/1より封切となる大阪なんばパークスや池袋シネマ・ロサをはじめ、横浜ジャック&ベティ、MOVIX京都、キノシネマ天神、など全国各地での上映が決定。先行公開分も含めると単館スタートから20館へ異例の拡大公開となった。

 

併せてコメントも到着。

女優のルビー・モレノほか、フィリピンにルーツや関わりを持つ方々の他、サレンダー橋本(漫画家)、高木瑞穂(ノンフィクションライター)、飯塚花笑(映画監督)等多彩な面々から絶賛コメントが届いた。劇場情報と併せて、下記に掲載する。

フィリピンパ嬢の社会学コメン


東京  新宿ケイズシネマ公開中
    池袋シネマロサ  3/1~
         MOVIX昭島  5/10~

神奈川 横浜ジャックアンドベティ 3/16~

埼玉   MOVIX三郷 5/10~

大阪  なんばパークス 3/1~ 
    シアターセブン 3/9~

京都  MOVIX京都 4/5~

兵庫  kinocinema神戸国際 3/29~

岐阜  岐阜CINEX  3/16~

愛知  MOVIX三好  3/29~

静岡  MOVIX清水 4/5~ 
    浜松シネマイーラ 4月下旬

長野    アイシティシネマ 4/5~

別府    ブルーバード 3/29~

福岡    キノシネマ天神4/26~

熊本    熊本ピカデリー 5/10~


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パブで出会って、騙され?恋をした!

実話に基づく21世紀のアジアン・ラブストーリー


フィリピンパブを研究対象にしている大学院生・中島翔太(前田航基)はパブで偶然出会ったフィリピン人女性のミカ(一宮レイゼル)と付き合い始めることに。

しかし、彼女は偽装結婚をしていることが判明する。月給6万円、ゴキブリ部屋に監視付、休みは月に2回だけといった過酷な生活環境を目のあたりにする翔太。

一方、ミカは現状にめげることなく働き続け、故郷・フィリピンの両親の元に翔太を連れていく。彼女を大切に想う気持ちが次第に強まる翔太は、ミカに懇願され元締めのヤクザの元に乗り込むことになるが―


 

大学院生の実体験に基づいた話題の新書を映画化!

日本で働く外国人女性労働者の実態をリアルに描く


中島弘象氏による実体験を綴った話題の新書「フィリピンパブ嬢の社会学」を映画化!

フィリピンパブの裏側で未だ行われている偽装結婚のリアルを背景に、多文化共生のあり方を描いた異色のラブストーリーが誕生した。

 

前田航基が11年ぶりの単独主演

国内外で活躍する俳優陣がアンタッチャブルな世界に集結


主人公の中島翔太役には、2011年に映画「奇跡(監督:是枝裕和)」で、弟の前田旺志郎とW主演で鮮烈なデビューを飾った前田航基。今作は11年ぶりの主演(単独としては初主演)となる。ヒロインのフィリピンパブ嬢・ミカ役には、映画初出演となる一宮レイゼルが東京、愛知で開催された全国オーディションにて大抜擢。共演には、近藤芳正、勝野洋、田中美里、仁科貴をはじめ、カンヌ国際映画祭で高く評価された映画『PLAN75』のステファニー・アリアンや『ONODA一万夜を越えて』で主演の津田寛治、『東京不穏詩』で大阪アジアン映画祭の最優秀女優賞に輝いた飯島珠奈など、国内外で活躍する俳優陣が脇を固める。


多文化共生のあり方を『能登の花ヨメ」『ママ、ごはんまだ?』の白羽弥仁監督がPOPに描き出す。


出演:前田航基 一宮レイゼル ステファニー・アリアン 田中美里(友情出演) 津田寛治 飯島珠奈 仁科 貴 浦浜アリサ 近藤芳正 勝野 洋
原作:中島弘象『フィリピンパブ嬢の社会学』(新潮新書刊)
監督:白羽弥仁  脚本:大河内 聡 音楽:奈良部匠平
制作・配給:キョウタス 
©2023「フィリピンパブ嬢の社会学」製作委員会


(オフィシャル・レポートより)

FIREBIRD-inta-2.10-550-1.【3S】レバネ監督→トム→オレグ.jpg

 
1970年代後期、ソ連占領下のエストニアを舞台に兵役中に出会ったパイロット将校との愛と葛藤を描く『Firebird ファイアバード』が、2月9日よりなんばパークスシネマ、MOVIX堺、MOVIXあまがさき、kino cinema 神戸国際ほか全国で絶賛公開中だ。エストニア初のLGBTQ映画であると同時に、本作のエストニアでの大ヒットが同国で同性婚法が成立する後押しになったという。本作が長編デビュー作となったペーテル・レバネ監督とセルゲイ役のトム・プライヤー、ロマン役のオレグ・ザゴロドニーが来阪し、2月10日(土)なんばパークスシネマでの舞台挨拶後に行ったインタビューをご紹介したい。


―――遠方から来日いただき、ありがとうございます。すでに1週間近く滞在されているとのことですが、日本の印象はいかがですか?

FIREBIRD-inta-2.10-240-1.ペーテル・レバネ監督.jpg

レバネ監督:国も美しいし、文化もとても美しい。日本人の哲学なのかもしれませんが、ディテールにこだわっているのを非常に感じます。例えば、(シネルフレ 河田より)差し入れていただいたイチゴ大福!細かいところにも気を使っているところに感銘を受けています。


オレグ:日本のいろいろな人を見てきましたが、皆自分自身のことを気に留めていて、素晴らしいですね。あとは新鮮な魚。寿司が本当に美味しいです。


トム:特に日本語の響きが好きです。内容はよく理解していませんが、すごくソフトできれいな響きですね。あとは食べ物で、わたしはワサビとかスパイシーな食べ物が好きなので、何かお勧めがあれば教えてください(笑)


■戦争が終わり、平和が戻ったらキーウでも上映したい(レバネ監督)

―――2011年にレバネ監督が原作と出会い、今年日本でようやく公開されましたが、いまのお気持ちはいかがですか?またオレグさんが住んでいるウクライナ・キーウでの映画への反響についても教えてください。

レバネ監督:最初に、ウクライナではまだ公開されていません。というのもこの作品は2021年完成しましたが、翌年の2月にウクライナでの戦争が始まってしまったので、映画のキャンペーンや配信ができなかったのです。ですから、戦争が終わり、平和が戻ってきたら、キーウで上映したいと思っています。

昨日東京で舞台挨拶イベントがあったとき、ひとりの女性が上映後に感想を寄せてくれました。彼女も女性同士で恋愛をしており、周りにそのことを言うのは怖いと明かしてくれた。『Firebird ファイアバード』がもっと多くの場所で上映され、同性愛者に対する差別が取り除かれるようになることを祈っています。

 

―――『Firebird ファイアバード』はエストニアで最初のLGBTQを描いた作品と聞いていますが、社会的抑圧など今までは作れない理由があったのですか?

レバネ監督:本作を作るにあたり特に困難なことはなく、むしろ予算面も含め様々な支援を受けてきました。エストニアは人口1200万人の小さな国で、年間で作られる映画の本数もかなり少ないので、今回たまたま初めてのLGBTQ作品になったのではないかと思います。多分他の監督はLGBTQという題材に対し、それほど情熱を持っていなかったから作らなかったのでしょう。映画の感想もかなりポジティブなものが多く、人々に大きな影響を与えることができたと思っています。
 

■原作者セルゲイの生き様に触れたことが、脚色や役作りの決め手に(トム)

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―――舞台挨拶でオレグさんはオーディションでロマン役に選ばれたと話されていましたが、トムさんはどのような経緯で本作に参加し、共同脚色することになったのですか?

トム:わたしは当時ロサンゼルスで映画プロデューサー関連の仕事をしていたのですが、そこでの会議で知り合った方からレバネ監督のことを紹介され、2〜3週間後にロンドンで初めて監督とお会いしました。最初に資金集めのことを話し合い、それがうまくいったので原作の脚色をするためにふたりで2年ぐらいやりとりを重ねました。レバネ監督と共に原作者のセルゲイに会いにロシアを訪れ、彼の生き様に触れたことがその後の脚色や役作りの決め手になりました。


―――70年代、ソビエト連邦占領下のエストニアで愛し合う主人公たちを演じるにあたり、おふたりはどんな準備をされたのですか?

オレグ:リハーサルに3ヶ月、映画撮影に55日間(オレグさんは42日間)と撮影にかかった時間が非常に長かったので、その間ずっとトムと一緒にいたのは事実です。そこで軍隊の規律を学んだり、肉体的なトレーニングをはじめ、様々な準備や台本読みなども行いました。ふたりの関係性を築くにあたってのコミュニケーションについては私たちだけの秘密です。他のファンタスティックで深い愛を描く作品を演じる俳優にスキルを盗まれてしまいますから(笑)


レバネ監督:実際、オレグさんは最初、英語をあまり上手に話せなかったので、会話がないところからのスタートだったんですよ。


―――そんなふたりの距離がぐっと近づく舞台鑑賞のシーンではオリジナル振り付けの「ファイアバード」が登場しますが、登場シーンが少なく残念でした。

レバネ監督:ちょっとしたバレエ映画が作れるぐらい長時間撮影したのですが、編集でかなりカットすることを余儀なくされたんです。


―――本作はロマンの妻で、セルゲイの同僚だったルイーザ(ダイアナ・ボザルスカヤ)を含めた三角関係が、より物語を深く、そして苦悩にも満ちたものにしていますが、ルイーザ、しいては演じたダイアナさんについてどのように感じて演じていたのかを教えてください。

FIREBIRD-inta-2.10-240-1.オレグ・ザゴロドニー(ロマン役).jpg

オレグ:ダイアナさんは私と同じくオーディションでルイーザ役を射止めました、非常に優れた女性であり俳優であることは間違いないのですが、彼女はロシア人なので私よりも置かれている状況は深刻です。彼女の夫もロシアの有名俳優なのですが、残念ながらロシアは私たちの敵でもあるので、私の中で複雑な感情があることは事実です。

ロマンは愛を貫くために、そしてパイロットとしての自分の人生を守るためにルイーザを利用してしまった。そしてそんな自分自身に対して嘘をつくことが難しくなり、結局はセルゲイを苦しめることにもなるわけで、散々愛する人たちを傷つけてしまったのは間違いありません。彼が選んだのは空で、結局そこが自分の最期の場所になってしまったと思っています。


■この作品でウクライナでは見られなかった世界が開けた。国際的な映画にも積極的に参加したい(オレグ)

―――オレグさんは、この作品に出演され、俳優としてご自身が変わったことはありますか?また今後外国の作品に積極的に出たいと思われているのかお聞かせください。

オレグ:この作品に出演したことで、私の人生は非常に変わりました。ウクライナで活動するだけでは見ることができなかった世界が開けましたし、様々な機会をいただき、そして驚いたことに今私は大阪にいます!ベルリン、ニューヨーク、エストニアと広く上映されている国に行くことができました。将来的には国際的な映画にも積極的に参加していきたいです。多くの監督や演劇人は世界をターゲットにしていますので、そういう人たちと話し合いながら、今後の活動を進めていきたいと思っています。

 

―――トムさんは俳優だけでなく、脚本家やプロデューサーの顔もお持ちですが、今後どのような分野に興味を持っているのですか?

トム:私が今、興味を持っているのはリアリティーの本質です。日頃から物事を深く考えるタイプで、人生とは何かを考えるようにしています。人によって人生に起こることは様々ですし、一歩引いた目でこの先自分にどんなことか起こるのかを見ているところです。ですからプロデューサーや演劇など、いろいろと自分を取り巻くであろうものを受け止めようと思っています。


FIREBIRD-inta-2.10-500-1.【3S】レバネ監督→トム→オレグ.jpg(上の写真:3人とも逆三角形の素晴らしいスタイルなので日頃から鍛えているのかと質問すると、「いえ、親からもらった体のままです!」とオレグ)

―――最後に、この作品はLGBTQの枠を超えて、人間が持っている愛の表現の仕方や愛の意味についてしっかりと描かれており感動しました。レバネ監督は冒険家やイベントプロデューサーなど様々なキャリアを積まれていますが、映画は今回が初長編ということで、今後も映画を撮り続ける予定でしょうか?

レバネ監督:正直に話すと、この映画を撮り終えたときは、もう絶対に映画はやらないと思いました(笑)。映画を作るのはもちろん驚くべきことですが、同時に1日13時間働くこともあり、日頃寝る時間を大切にしている身としては非常に厳しかった。寝不足でも翌朝はまた撮影が始まり、大変だけど濃縮した時間でした。

一方で、ストーリーを作り、みなさんに届けることは、お金やキャリアなど関係なく、かなり楽しいプロセスだと思っています。そしてエキサイティングですよね。ラブストーリーの映画を作ることや、人々がどれだけそれに情熱を傾けることができるかを考えるのは楽しかった。やはり情熱なしに成し遂げることは難しいですから。今回の体験を経て、この12月から1月ぐらいには次回作の脚本を書こうかという気持ちになっています。
 


【 Introduction 】

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2011年ベルリン国際映画祭、監督のペーテル・レバネは見知らぬ男に声をかけられた。「この本を読んで貰えないか」本の表紙には、『ロマンについての物語』と書かれている。その週末、ペーテルは一気にこの本を読み終えた。そして、すぐに映画化を決めた。それほどに、無名の俳優セルゲイ・フェティソフが綴ったこの回想録は、ペーテルの心を深く衝き動かしたのだった。


ペーテルは2014年に、俳優のトム・プライヤー(『博士と彼女のセオリー』『キングスマン:シークレットサービス』)と知り合うと意気投合、彼らはセルゲイに多くの時間をかけてインタヴューを重ね、脚本の準備を始めた。セルゲイのことを知れば知るほど、二人はこの企画にのめり込んでいった。―― 彼の生き方は愛の力そのものであり、勇気と歓びと人生への驚きを喚び起こす―― こうして三人の共作による脚本は完成した。

ところがそんな矢先、ペーテルとトムの元に想像もしなかった報せが届く。
2017年、セルゲイ急逝。65歳の若さだった。
ペーテルとトムはもう後戻りできないことを理解していた。

4年後、『ファイアバード』は、ペーテル、トム、そしてセルゲイの想いを乗せて、漸く完成に漕ぎつけた。


【 Story 】

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1970年代後期、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)は、間もなく兵役を終える日を迎えようとしていた。そんなある日、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が、セルゲイと同じ基地に配属されてくる。セルゲイは、ロマンの毅然としていて謎めいた雰囲気に一瞬で心奪われる。ロマンも、セルゲイと目が合ったその瞬間から、体に閃光が走るのを感じていた。写真という共通の趣味を持つ二人の友情が、愛へと変わるのに多くの時間を必要としなかった。しかし当時のソビエトでは同性愛はタブーで、発覚すれば厳罰に処された。一方、同僚の女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)もまた、ロマンに思いを寄せていた。そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむクズネツォフ大佐は、二人の身辺調査を始めるのだった。


【ファイアバード】
※火・熱・太陽の象徴である“火の鳥(ファイアバード)”には、永遠の命と大きな愛の力が宿っている。しかしその圧倒的な強さゆえ、触れると火傷をすることもある。


【作品情報】

(2021年 エストニア・イギリス 107分)
ペーテル・レバネ監督・脚色作品 共同脚色:トム・プライヤー / セルゲイ・フェティソフ
原作:セルゲイ・フェティソフ
出演:トム・プライヤー / オレグ・ザゴロドニー / ダイアナ・ポザルスカヤ
配給・宣伝:リアリーライクフィルムズ
関西地区宣伝:キノ・キネマ/Ngrowing
© FIREBIRD PRODUCTION LIMITED MMXXI. ALL RIGHTS RESERVED / ReallyLikeFilms

公式HP:https://www.reallylikefilms.com/firebird
公式X(旧Twitter):@firebird_movie 
Instagram:@reallylikefilms
YouTube:@reallylikefilms6087

2024年2月9日(金)~新宿ピカデリー、なんばパークスシネマ、MOVIX堺、MOVIX京都、kino cinema 神戸国際、MOVIXあまがさき 他にて絶賛公開中!


(取材:河田 真喜子、江口 由美 文:江口 由美   場所:なんばパークスシネマ)

 

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日時:2024年2月10日(土)16:35~

場所:なんばパークスシネマ(大阪市浪速区難波中2-10-70 なんばパークス8F

登壇者:ペーテル・レバネ監督、トム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニー(敬称略)



FIREBIRD-bu-2.10-500-2.【3S】レバネ監督→トム→オレグ.jpg1970年代後期、ソ連占領下のエストニアを舞台に兵役中に出会ったパイロット将校との愛と葛藤を描く『Firebird ファイアバード』が、2月9日よりなんばパークスシネマ、MOVIX堺、MOVIXあまがさき、kino cinema 神戸国際ほか全国で絶賛公開中だ。エストニア初のLGBTQ映画であると同時に、本作のエストニアでの大ヒットが同国で同性婚法が成立する後押しになったという。本作が長編デビュー作となったペーテル・レバネ監督とセルゲイ役のトム・プライヤー、ロマン役のオレグ・ザゴロドニーが来阪し、2月10日(土)なんばパークスシネマにて上映後の舞台挨拶が行われた。その模様をご紹介したい。
 

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―――映画製作の経緯について教えてください。

レバネ監督:わたしがベルリン国際映画祭に行ったとき、セルゲイという俳優に会い、彼の自叙伝を渡され読んだのですが、思わず泣いてしまいました。力強くシンプルなラブストーリーかつ、ソビエト連邦と空軍という背景がユニークで、自分が強く思い入れるのを感じました。空軍はかなり厳しく個人の選択が制限されてしまい、こんな悲劇が起こってしまうのです。


―――最初に映画化を聞かされたときにどう感じたのですか?

トム:まず台本を渡され、最初に「ワオ!」と驚きました。軍隊の中で美しいラブストーリーが展開され、その部分もかなりユニークで感銘を受けました。


―――どのようにオファーされたのですか?

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オレグ:俳優、プロデューサーやキャスティングディレクターが選ぶ中で、モスクワに呼ばれ、彼らに会いました。最初にセリフを読んだのですが、当時はまだあまり英語が得意ではなかったので、練習する中でセリフを忘れることもありました。ウクライナ、ロシアなど移動しながら、トムらと少しずつ議論を重ねていきました。2018年9月の最初の撮影時から比べれば、徐々にではありますが英語が上達しているかもしれませんね。

トム:僕は全然ロシア語を話せませんしね(笑)。


―――ウクライナ人のオレグさんが行っている、兵士に軍服を提供する活動について教えてください。

オレグ:アメリカ、ヨーロッパに知り合いが大勢おり、ウクライナ情報をシェアしていたんです。何か支援をできないかという声があったので、軍服をデザインし、最前線で働く兵士たちに送る活動をはじめました。彼らは、僕にとってのヒーローですから。


―――タイトルの『ファイアバード』と劇中のバレエが非常に作品を象徴していると思いますが。

レバネ監督:セルゲイの自叙伝が「ロマンの物語」というタイトルだったので、「ローマ」にしようと思いましたが、古代ローマのイメージが強いと周りから指摘されました。劇中で

ストラヴィンスキーのバレエ音楽「ファイアバード(火の鳥)」を使っていますが、強烈なイメージで、映画のキャラクターを考えるとこれをタイトルにつけていいのではないかと思いました。映画の中でもセルゲイとロマンがバレエ「ファイアバード」を鑑賞するシーンがありますが、それがセルゲイの人生につながっていくので、自然な流れでした。


FIREBIRD-bu-2.10-240-4.トム・プライヤー(セルゲイ役).jpg―――セルゲイご本人にお会いしたときのエピソードを教えてください。

トム:セルゲイ本人に会いにレバネ監督とロシアへ行き、彼の生き方やふるまいを実際に目にしました。セルゲイは非常に明るく、暖かく、ポジティブな方で、この出会いをどのように脚本を書くか、どのように演じるかの決め手になりました。セルゲイは何よりも、かなり抑圧された社会の中に、ポジティブに勇気を持って生きてきたと感じたのです。


―――エストニアでは2024年元日に同性婚法が施行されましたが、映画が法の成立を後押しする役目を果たしたと思いますか?

レバネ監督:映画は強い影響力を持ったメディアだと思います。人々のいろいろなところ、経験や人生に影響を与えると信じています。本作は多少なりとも(法の成立に)影響はあったと思いますが、実際には2010年から議会メンバーやわたしたちがロビー活動をはじめ、テレビ出演してディベートを行ってきました。同性婚がどういうものなのかを人々に伝えていき、その中には喜びや苦しみを持ち合わせてもいます。男性も女性も基本的には同じ問題を抱えているので、社会の中で根気よく伝えていくことが重要でした。そんな中でエストニアにて同性婚法が施行されたのは、ある意味嬉しい驚きだったのです。ただ同じような法律が認められていたロシアでは今、この映画を上映したり、セルゲイの本を売るだけで5年間の禁固刑となり、逆に(同性愛に関することは)禁じられてしまいました。


―――最後に、日本のみなさんにメッセージをお願いします。

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オレグ:映画を好きになっていただけたら嬉しいです。

トム:足を運んでいただきありがとうございました。みなさんにお会いできてよかったです。心に深く問いかけるものになればと思っています。

レバネ監督:まずは劇場の方に感謝いたします。観客の皆さんに会える機会をいただきありがとうございます。友達にもぜひこの物語をシェアしてほしいですし、非常に美しい作品の中にいろいろなことが盛り込まれています。この映画を見て、いつも他の人に思いやりを持つ心を感じていただけたらと思います。
 

 


【 Introduction 】

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2011年ベルリン国際映画祭、監督のペーテル・レバネは見知らぬ男に声をかけられた。「この本を読んで貰えないか」本の表紙には、『ロマンについての物語』と書かれている。その週末、ペーテルは一気にこの本を読み終えた。そして、すぐに映画化を決めた。それほどに、無名の俳優セルゲイ・フェティソフが綴ったこの回想録は、ペーテルの心を深く衝き動かしたのだった。


ペーテルは2014年に、俳優のトム・プライヤー(『博士と彼女のセオリー』『キングスマン:シークレットサービス』)と知り合うと意気投合、彼らはセルゲイに多くの時間をかけてインタヴューを重ね、脚本の準備を始めた。セルゲイのことを知れば知るほど、二人はこの企画にのめり込んでいった。―― 彼の生き方は愛の力そのものであり、勇気と歓びと人生への驚きを喚び起こす―― こうして三人の共作による脚本は完成した。

ところがそんな矢先、ペーテルとトムの元に想像もしなかった報せが届く。
2017年、セルゲイ急逝。65歳の若さだった。
ペーテルとトムはもう後戻りできないことを理解していた。

4年後、『ファイアバード』は、ペーテル、トム、そしてセルゲイの想いを乗せて、漸く完成に漕ぎつけた。


【 Story 】

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1970年代後期、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)は、間もなく兵役を終える日を迎えようとしていた。そんなある日、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が、セルゲイと同じ基地に配属されてくる。セルゲイは、ロマンの毅然としていて謎めいた雰囲気に一瞬で心奪われる。ロマンも、セルゲイと目が合ったその瞬間から、体に閃光が走るのを感じていた。写真という共通の趣味を持つ二人の友情が、愛へと変わるのに多くの時間を必要としなかった。しかし当時のソビエトでは同性愛はタブーで、発覚すれば厳罰に処された。一方、同僚の女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)もまた、ロマンに思いを寄せていた。そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむクズネツォフ大佐は、二人の身辺調査を始めるのだった。


【ファイアバード】
※火・熱・太陽の象徴である“火の鳥(ファイアバード)”には、永遠の命と大きな愛の力が宿っている。しかしその圧倒的な強さゆえ、触れると火傷をすることもある。


【作品情報】

(2021年 エストニア・イギリス 107分)
ペーテル・レバネ監督・脚色作品 共同脚色:トム・プライヤー / セルゲイ・フェティソフ
原作:セルゲイ・フェティソフ
出演:トム・プライヤー / オレグ・ザゴロドニー / ダイアナ・ポザルスカヤ
配給・宣伝:リアリーライクフィルムズ
関西地区宣伝:キノ・キネマ/Ngrowing
© FIREBIRD PRODUCTION LIMITED MMXXI. ALL RIGHTS RESERVED / ReallyLikeFilms

公式HP:https://www.reallylikefilms.com/firebird
公式X(旧Twitter):@firebird_movie 
Instagram:@reallylikefilms
YouTube:@reallylikefilms6087

2024年2月9日(金)~新宿ピカデリー、なんばパークスシネマ、MOVIX堺、MOVIX京都、kino cinema 神戸国際、MOVIXあまがさき 他にて絶賛公開中!


(文:江口 由美 写真:河田 真喜子)

 
 
 
 

FIREBIRD-bu-2.9-500-2.【4S】オレグ→レバネ監督→小原→トム.jpg

【日時】 2月9日(金) イベント:18:30 ※上映前イベント

【場所】 新宿ピカデリー シアター6 (東京都新宿区新宿3-15-15)  

【登壇者 ※敬称略】 トム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニー、ペーテル・レバネ監督、小原ブラス

【MC】 東 紗友美  【通訳】 今井美穂子



2月9日(金)、エストニア・イギリス合作映画『Firebirdファイアバード』の初日舞台挨拶を新宿ピカデリーにて開催いたしました。

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本作はロシアの無名の俳優セルゲイ・フェティソフが書き遺した回想録『ロマンについての物語』を、『Robbie Williams:Fans Journey to Tallinn』の監督・プロデューサーとして知られている、エストニア出身のペーテル・レバネが映画化し、2024年1月1日にエストニアで同性婚を認めさせる原動力にもなった許されない秘めた愛を描いた感動作です。


『博士と彼女のセオリー』 『キングスマン』に出演するトム・プライヤーと、ウクライナ・キーウ出身のオレグ・ザゴロドニーのW主演キャストと、「ペット・ショップ・ボーイズ」の「Together」やModyの「Wait for Me」、BBCワールド制作のライブドキュメンタリー『Robbie Williams:Fans Journey to Tallinn』の監督・プロデューサーとして知られている、エストニア出身のペーテル・レバネ監督が緊急来日登壇!さらに、本作に深い感銘を受けたロシア出身関西育ちのタレント・小原ブラスが花束ゲストとして登場し、登壇キャスト・監督へ花束を贈呈。日本での公開の喜びや本作に込めた想い、小原ブラスさんには登壇キャストのうち、誰と恋におちたいかも発表してもらいました!



FIREBIRD-bu-2.9-500-1.【3S】レバネ監督→トム→オレグ.jpg本作は、ロシアの無名俳優セルゲイ・フェティソフが書き遺した回想録「ロマンについての物語」を基にし、冷戦時代のソ連占領下のエストニアを舞台に、2人の青年の秘められた愛を描いた物語。


FIREBIRD-bu-2.9-240-1.【ソロ】オレグ・ザゴロドニー(ロマン役).jpg「ペット・ショップ・ボーイズ」の「Together」や Mody の「Wait for Me」、BBC ワールド制作のライブドキュメンタリー『Robbie Williams:Fans Journey to Tallinn』の監督・プロデューサーとして知られる、エストニア出身のペーテル・レバネが映画化。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵・セルゲイをトム・プライヤー、パイロット将校・ロマンをウクライナ・キーウ出身のオレグ・ザゴロドニーがW主演で演じる。今回、熱烈なオファーを受けてトムとオレグ、レバネ監督がついに来日!特にオレグは、今も戦火の中にあるウクライナ・キーウ在住で、国外渡航が困難な状況の中での、奇跡の来日となった


FIREBIRD-bu-2.9-240-3.【ソロ】ペーテル・レバネ監督.jpg満席の会場に笑顔で立ったレバネ監督は、映画制作のきっかけについて、「ベルリン映画祭に参加したときに、知り合いからセルゲイの自伝を薦められて読んだのですが、涙が流れて止まらなかった。これは映画化しなければならない!と突き動かされる気持ちになったんです」。撮影の経緯については、「脚本を書き始めたころに、ハリウッドの友達のプロデューサーから主役に合う人がいると、トムを紹介されたんです。トムが一緒に脚本に参加してくれて二人三脚で2年がかりで書き上げ、その後オレグと会うことができました」と明かす。


映画化の話を聞いたトムは「僕の好きな要素がたくさん入っている話だと感じました。元々、軍部を背景にしたものが好きだったこと、冷戦時代にも興味があったので面白そうだなと。そして、愛の本質とは、性質とは何なのかを描いていたので、ぜひ参加したいと思いました」と当初を振り返り、「色んな困難、壁を乗り越えて愛に突き進む人物を描いているところも魅力でした」と作品への想いを吐露。一方で、オレグは監督が素晴らしい人物を脚本で描いてくれて、僕もとても演じがいがありました。真の愛の物語を描いているこの作品に参加できたことをとても嬉しく思っています」と笑顔を見せた。


Firebird_Director Peeter Rebane 500-1.jpg本作は、2021 年、エストニアでLGBTQ 映画として初めて一般劇場公開され、大ヒットを記録。本作のメッセージが大きな反響を呼び、公開から 2 年後の 2023 年 3 月には国会で同性婚法案が議決され、2024年1月に施行された。本作がその原動力となったことに、レバネ監督は「そもそも映画は、他者の視点を通して物事を見るというもの。社会を少しでも変えることができる力強いメディアなのではないかと思っています。共感を呼び起こす装置だと私は信じていて、この映画がエストニアで社会に影響を与えた。LGBTQに関しては、マジョリティーの皆さんにとっては大した話ではないかもしれませんが、少数派のマイノリティーの人たちにとっては人生の幸福度が大きく変わる出来事になったと思います。こうした法整備がなされたことで、私も社会の一員として認められ、私も他者と平等なのだと感じました。社会が総合的にハッピーになることはいいことですね」と真摯に語った。


FIREBIRD-bu-2.9-240-2.【ソロ】トム・プライヤー(セルゲイ役).jpgまた、トムは撮影前にモデルとなったセルゲイ本人に会ったそうだが、「本作の脚本にも参加できたことは僕にとって素晴らしい体験でした。そして主人公のセルゲイ本人に会えたことも大きな体験でした」とし、「セルゲイは、それまで抱いていた印象と違い、とても陽気で人生を謳歌しているようなポジティブ思考の方でした。ストーリーのバッググラウンドはダークで脅威がはびこる世界なのですが、そんな中でも自分の信念を曲げることなく、愛は全てを乗り越えるということを見せてくれる人でした。書面で読んだだけではわからないんですね。本人に会って伝わってくるものがある。彼と会って役へのアプローチも変わっていきました」と述懐し、本人との出会いにより、より深く役を理解していった様子。


ここで、ロシア出身のタレント・小原ブラスが登場し、3人に花束を贈った。自身もゲイであることを公言しており、独特な視点を活かしたコメントで幅広い層から支持を集める小原だが、一足先に本作を鑑賞した感想を「僕は最初にこのポスターを見て、めっちゃカッコいい人が出てるわ~と思って、良からぬ考えで観た気がするんです」と話し、会場の笑いを誘いつつ、「でもね、最初はソ連時代の迫害があったりしてちょっと重たいなと思っていたんだけど、後半になるとガラッと変わって、現代でも通じるような話になっていって、急に近くに感じたんです。良からぬ気持ちで観ようと思っている方も、最後は感動するから、そのつもりで!」と声をかけた。


FIREBIRD-bu-2.9-550-1.【花束4S】レバネ監督→トム→オレグ→小原.jpg小原の言葉に大ウケする3人。レバネ監督は「良からぬ気持ちになるのもわかります(笑)」と同意しながらも、「それに加えて、非常に美しさと苦悩がせめぎ合っているような映画になっているのかも」と分析。小原は「ゲイとかLGBRQを扱った映画は、どうしてもロマンチックに描く方向もあったり、迫害されたり、その辛い気持ちの部分を描くことがあるけれど、僕が観ると必ずしも主演の2人に全部は同意できない部分もあるんです。自分とは違うなとか・・・筋が通ってへんとちゃう?とか。でも、それが人間。ゲイの当事者が観たらちょっと肩の荷が下りるような映画にもなっていると思います」と、正直な気持ちを口にした。


さらに、MCから「登壇者の3人のうち、誰と一番恋に落ちたい?」と聞かれると、「監督やな」と即答。「僕ね、イケメンも凄く好きなんですけど、監督もイケメンですが、やっぱり権力が好きなんです。作品とは真逆なコメントになるんやけど(笑)」と言い、会場を沸かせ、トムとオレグも大爆笑し、満員の会場一体が和やかな雰囲気で舞台挨拶は終了した。
 


【 Introduction 】

2011年ベルリン国際映画祭、監督のペーテル・レバネは見知らぬ男に声をかけられた。「この本を読んで貰えないか」本の表紙には、『ロマンについての物語』と書かれている。その週末、ペーテルは一気にこの本を読み終えた。そして、すぐに映画化を決めた。それほどに、無名の俳優セルゲイ・フェティソフが綴ったこの回想録は、ペーテルの心を深く衝き動かしたのだった。


ペーテルは2014年に、俳優のトム・プライヤー(『博士と彼女のセオリー』『キングスマン:シークレットサービス』)と知り合うと意気投合、彼らはセルゲイに多くの時間をかけてインタヴューを重ね、脚本の準備を始めた。セルゲイのことを知れば知るほど、二人はこの企画にのめり込んでいった。―― 彼の生き方は愛の力そのものであり、勇気と歓びと人生への驚きを喚び起こす―― こうして三人の共作による脚本は完成した。

ところがそんな矢先、ペーテルとトムの元に想像もしなかった報せが届く。
2017年、セルゲイ急逝。65歳の若さだった。
ペーテルとトムはもう後戻りできないことを理解していた。

4年後、『ファイアバード』は、ペーテル、トム、そしてセルゲイの想いを乗せて、漸く完成に漕ぎつけた。


【 Story 】

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1970年代後期、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)は、間もなく兵役を終える日を迎えようとしていた。そんなある日、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が、セルゲイと同じ基地に配属されてくる。セルゲイは、ロマンの毅然としていて謎めいた雰囲気に一瞬で心奪われる。ロマンも、セルゲイと目が合ったその瞬間から、体に閃光が走るのを感じていた。写真という共通の趣味を持つ二人の友情が、愛へと変わるのに多くの時間を必要としなかった。しかし当時のソビエトでは同性愛はタブーで、発覚すれば厳罰に処された。一方、同僚の女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)もまた、ロマンに思いを寄せていた。そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむクズネツォフ大佐は、二人の身辺調査を始めるのだった。


【ファイアバード】
※火・熱・太陽の象徴である“火の鳥(ファイアバード)”には、永遠の命と大きな愛の力が宿っている。しかしその圧倒的な強さゆえ、触れると火傷をすることもある。


【作品情報】

ペーテル・レバネ監督・脚色作品 共同脚色:トム・プライヤー / セルゲイ・フェティソフ
原作:セルゲイ・フェティソフ
出演:トム・プライヤー / オレグ・ザゴロドニー / ダイアナ・ポザルスカヤ
配給・宣伝:リアリーライクフィルムズ
宣伝デザイン:HYPHEN 予告編監督:株式会社ココロドル
日本語字幕翻訳:大沢晴美 関西地区営業・宣伝:キノ・キネマ 北海道地区営業・宣伝協力:palmyra moon
© FIREBIRD PRODUCTION LIMITED MMXXI. ALL RIGHTS RESERVED / ReallyLikeFilms
公式HP:https://www.reallylikefilms.com/firebird
公式X(旧Twitter):@firebird_movie 
Instagram:@reallylikefilms
YouTube:@reallylikefilms6087

2024年2月9日(金)~新宿ピカデリー、なんばパークスシネマ、MOVIX堺、MOVIX京都、kino cinema 神戸国際、MOVIXあまがさき

他にて絶賛公開中!


(オフィシャル・レポートより)

 
 

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韓国年間最長No.1記録を樹立、2023年韓国国内映画賞で【25冠】と最多受賞を記録した、史実に残された最大の謎に迫る<全感覚麻痺>サスペンス・スリラー『梟ーフクロウー』が、2月9日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国ロードショーいたします。


朝鮮王朝時代の記録物<仁祖実録>(1645年)に残された‟怪奇の死“にまつわる歴史的な謎に、斬新なイマジネーションを加え誕生した『梟―フクロウ―』は、観客の無限の想像力を刺激し、2022年の韓国年間最長No.1記録を樹立。


韓国エンターテイメント界の最高峰を決める百想芸術大賞で作品賞・新人監督賞・男性最優秀演技賞の3冠を受賞。11月に開催された第59回大鐘賞映画祭でも新人監督賞、脚本賞、編集賞の3部門を受賞し、公開後も注目を集め続けている。
 

‟盲目の目撃者“が謎めいた死の真相を暴くために常闇を奔走する予測不可能な物語は、圧倒的な没入感と、緊張感をもたらし、息もできないほどの狂気が支配する118分は、観る者すべての五感を麻痺させる―。
 



【リュ・ジュンヨル & ユ・ヘジン オフィシャルインタビュー】

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これまでのコミカルな役のイメージを覆し、本作で初めて王の役を引き受けたユ・ヘジンは「自分自身のカラーを王の役を演じる際にどう溶け込ませればいいのかと大いに考えました」と明かし、朝鮮王朝第16代国王・仁祖の心理的な変化を表現するために「彼の心理状態と合った役を演じようと努力しました」と語り、特殊メイクを使わずに、顔の筋肉の僅かな痙攣を操るという超人的な演技を見せている。


対して、卓越した鍼の技術を持つ盲目の鍼医を演じたリュ・ジュンヨルは、「初めて盲目の人物を演じる中で、感情を表現することは、僕にとっての挑戦となりました」と心境を明かし、「目で演技をすることができないという大きな壁があったように思います。目が見えない演技をしている間は、感情を表現することが難しかったですね。視覚以外の感覚全てを使うことで、ギョンスの感情を伝えようと努力しました」と、これまでとは違ったアプローチで盲目の役に挑んだという。


fukurou-500-1.jpgそんなリュ・ジュンヨルの演技についてユ・ヘジンは、「リュ・ジュンヨルの演技は、より繊細になっています。これは表現が容易な役ではありませんでしたが、彼は全ての細かいディテールにまで細心の注意を払っていました」と絶賛し、『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』、『The Battle: Roar to Victory』(英題)に続き、本作で3度目の共演となるリュ・ジュンヨルとユ・ヘジンのコラボレーションに期待が高まる。


さらに、『王の男』以来17年ぶりにアン・テジン監督と再びタッグを組んだユ・ヘジンは、「デビューを果たす監督とは違って、注意深い目で映画全体を見ていました」と監督の印象を語り、「この作品は、昼夜に隠された謎を巡る、スリルに満ちた映画です」と、斬新さと真新しさをもって誕生した新しいスタイルのスリラー映画であることをアピールした。
 


【STORY】 
fukurou-pos.jpg盲目の天才鍼医ギョンスは、病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。しかし、ある夜、王の子の死を‟目撃“し、恐ろしくも悍ましい真実に直面する。見えない男は、常闇に何を見たのか―?追われる身となった彼は、制御不能な狂気が迫るなか、昼夜に隠された謎を暴くために闇常闇を駆ける―。絶望までのタイムリミットは、朝日が昇るまで―。


・監督・脚本:アン・テジン 撮影:キム・テギョン
・出演:リュ・ジュンヨル、ユ・ヘジン
・2022年/韓国/118分/原題:올빼미/英題:THE NIGHT OWL/日本語字幕:根本理恵/G
・配給:ショウゲート
・© 2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & C-JES ENTERTAINMENT & CINEMA DAM DAM. All Rights Reserved.
・公式HP: fukurou-movie.com  
・公式X:@showgate_youga

2024年2月9日(金)~新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸 ほかにて全国ロードショー


(オフィシャル・レポートより)

 
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 作家、村山由佳が大正時代の女性解放運動家・伊藤野枝の生きざまを描いた吉川英治文学賞受賞の評伝小説「風よ あらしよ」。NHK BSプレミアムでテレビドラマ化され、22年放送された同作が、『風よ あらしよ 劇場版』として2月9日(金)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX堺、キノシネマ神戸国際、シネマサンシャイン大和郡山、2月10日(土)よりユナイテッド・シネマ橿原、2月16日(金)より京都シネマ、以降元町映画館、シネ・ピピア、洲本オリオンにて順次公開される。
 本作の演出を手がけた柳川強さんに、お話を伺った。
 

 

■村山由佳さんの評伝と#MeToo運動の広がりが推進力に

――――伊藤野枝が関東大震災後に大杉栄と共に惨殺されてから、昨年がちょうど100年でしたが、本作を鑑賞し、改めて彼女の生き様や主張にしっかり焦点を絞って描いた映像作品は今までなかったなと実感しました。もともと柳川さんが伊藤野枝に興味を持ったのは、舞台がきっかけだったと?
柳川:宮本研さんが書かれた『ブルーストッキングの女たち』を学生時代に鑑賞し、大正時代の男女の群像劇ではありましたが面白いと思いましたし、ドラマ制作に携わるようになると、いつか自分でドラマ化したいという想いが芽生え、1、2度企画書を出したこともありましたが、震災で虐殺される人間の話ですから、なかなかGOサインが出ない。やはり今回原作となった村山由佳さんの評伝が出版されたのが大きかったですね。当時ちょうど#MeToo運動が広がりをみせ、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんなど女性一人で世の中に堂々と訴える人も出てきた。時代の動きと伊藤野枝がリンクしたことを認識し、ドラマ化に向けて動き出す下地がようやくできたのです。
 
――――わたしも小説は発売後すぐに読み、胸にズドンと響きましたが、柳川さんが原作を読んでの感想は?
柳川:長いなと(笑)それと、村山さんが作家として伊藤野枝にかける熱量が凄まじかった。読み終わってから、伊藤野枝を描くなら、井戸に葬られた野枝の眼差しではじまり、殺されてからの彼女の眼差しで終わるというのが映像的だと思ったのです。あと野枝が「組合」による助け合いの中で育ってきたことを語るところも、自分ではできるだけ野枝が書いた文献を読んできたけれどその中では見つけられず、村山さんが書いてくださったことで知ることができた場面で、その2点から野枝の物語を映像化する糸口を掴むことができました。
 
――――いわゆるコモンズという考え方は現在も社会の様々な場面で取り入れられつつありますよね。
柳川:やはり28年の短い生涯で、最後は虐殺される訳ですから、よく「彼女は何を成した人なのか」と聞かれるのです。でも、コモンズという考え方にたどり着き、それを論文に綴っているので、これがあるじゃないかと。そこに気づけたのは大きかったですね。
 

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■感受性豊かな野枝役は、吉高さんしか思い浮かばなかった

――――柳川さんが演出された連続テレビ小説「花子とアン」も拝見していましたが、いざ企画が通ったとき、同作でタッグを組んだ吉高由里子さんがすっと頭に浮かんだのですか?
柳川:朝ドラから10年経ち、もう一度ご一緒したいと思っていました。女性からはともすれば主張が強すぎて嫌われるかもしれない伊藤野枝を、いかにも主義者然とした人が演じると観客層が狭まってしまうかもしれない。野枝という人は実は愛嬌があり、人たらしな部分があると思うのです。また谷中村の話をしたときにすぐ泣くような感受性豊かな人だと思ったときに、吉高さんしか思い浮かばなかったです。
 
――――伊藤野枝を演じている吉高さんは声の太さが違うと思いました。オファーに対し、吉高さんの迷いはなかったですか?
柳川:吉高さんは「これに賭けている」というようなことは絶対に言わない方ですが、撮影が終わってから、タイトルに重なる「吹けよ、あらしよ」というナレーションを撮らなくてはいけなかったんです。その録音を撮り終わったときにはじめて「やった!終わった!」と吉高さんがおっしゃるのを聞いて、きっとそれまではずっと日常生活の間、野枝のままでいたのではないかなと感じました。
 
――――自由にならない現状への怒りが、パワーの源泉のようにも映りました。
柳川:吉高さんも野枝も感受性のおばけなので、いろいろなことを怒りとして溜め込まざるを得なかったのかもしれませんね。
 
 
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■一番好きなキャラクター、辻潤を演じた稲垣吾郎

――――伊藤野枝の文学的才能を開花させた最初の夫、辻潤を演じた稲垣吾郎さんには、どんな演出をしたのですか?
柳川:稲垣さんは、僕がNHKに入局して最初に携わった連続テレビ小説「青春家族」でヒロインの弟を演じていたので、30年ぶりにお会いしました。今回は、大人の色気も感じましたし、まず自分の役柄の立ち位置を丁寧に確認されました。最初に、敵役ですよねと聞かれた覚えがあるのですが、実は僕の一番好きなキャラクターが辻潤なんです。なぜかと言えば、個人が自由になることが、この社会が自由になることだという考え方を徹頭徹尾、自分一人の中で哲学的に完結させた人だからで、昭和19年に孤独死(餓死)しています。萩原朔太郎も、辻潤の人生は一つの芸術であると語っているような人ですから、稲垣さんにも彼の生き方は素晴らしいと思って描きたいとお伝えしました。
 
――――結婚させられそうになった九州の田舎から逃げてきたばかりの伊藤野枝に様々な知識を与えた存在だったと思います。青鞜社に入り、野枝がはじめて演説を行ったシーンは、大杉栄をはじめ、多くの男性たちにも伊藤野枝ここにありと示す重要な場面で、野枝の言葉が体を突き抜けるようなインパクトがありました。撮影はどうでしたか?
柳川:吉高さんもあのシーンが成立するかどうかはずっと悩んでいました。演説のセリフが文章から引用したものだったので、もう少し主観的に話せるようにセリフを調整したり、声を相当張り上げていたのでスタッフ一同、極力1回で撮りきれるように集中しました。表現が本当にしっかりとしてきて、本当にいいシーンでした。
 
――――永山瑛太さんが演じる大杉栄も、パワフルで、かつ人たらしでしたね。
柳川:実は、野枝の最初の演説シーンで、大杉は目を見開いて彼女のことを見ているんです。村山さんの原作にも大杉栄は「眼の男」と書かれているので、瑛太さんもそれを意識して演じておられたと思います。
 
 
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■こだわったのは共助になる大杉との共同生活

――――長い原作を映画化するにあたり、特に描きたかった場面は?
柳川:本当は青鞜社のシーンを多くした方が面白くなるのですが、彼女の人生の中ではまだ序章に過ぎないと思ったので削り、辻との出会いと別れを丁寧に描きました。思想的な考え方の違いから離婚に至るケースなので、そこを大切にしたことと、キーワードで言えば「共助」になる大杉との共同生活を具体的に描いていきました。主張や主義を訴えるシーンより、むしろ子どもが一人ずつ増えていくとか、村木源次郎や大杉が子育てを手伝い、野枝が原稿を書くという日常生活の描写を割と大事にしたかもしれませんね。
 
――――そういう描き方をすることで、人間、伊藤野枝の生き様や様々な表情が観客に伝わる気がしますね。死後はスキャンダラスな取り上げられ方をし、なかなか正当な評価を得られなかったという野枝ですが、ようやく彼女の成し遂げたことが評価される時代になったのではと思います。むしろ当時と今とそんなに変わらないことにも気づかされます。
柳川:ひとりの人間として自由を守るために何が必要で、何を言わなくてはいけないかを問うている作品でもあると思います。大杉の自由恋愛も、瑛太さんは女性陣に総スカンをくらう覚悟を持って演じてくれました。大杉の考え方は、一人ひとりが自由な精神を持つことで、社会も自由になるという思想ですから、あながち間違ってはいないのでは、という風に、描き手としてはあえて価値づけをせずに描こうと思いました。道徳の範疇を超えるかどうかという問題はありますが、それをダメだと断罪してしまうのも、どこか不自由な気がするので、そういう事は意識しました。そこはいろいろな議論が出てきていいと思っています。
 
 
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■野枝の怒りが込もった言葉を連呼させて

――――関東大震災後に虐殺されるまでの描写は、昨年公開された森達也監督の『福田村事件』とかぶる部分でした。特にフォーカスした点は?
柳川:歴史的には甘粕大尉が大杉らを虐殺したかどうかは定かではありません。ドラマ上そのように描くのは簡単ですが、逆に歴史修正主義と同じ土俵に乗ってしまう懸念がありました。だからそこは描かないことに決めました。また、吉高さんが演じる伊藤野枝に何度も「イヌ!」と叫んでもらうようにしました。ドラマでは野枝の最期の言葉になるわけですから、そこに怒りを込めてもらいたかったのです。また、実際には雨天ではなかったと思いますが、そこはフィクションなので「風よ あらしよ」というタイトルの通り、嵐の中、井戸に打ち捨てられ大杉が死んでいった過酷さを見せたかったですね。
 
――――平塚らいてうを演じたのは松下奈緒さんですね。
柳川:松下さんご自身が日頃から太陽のような方なので、平塚らいてうを演じていただくのにぴったりでした。らいてうは当時のアイコンのような存在でしたから。
 
――――野枝は憧れのらいてうを、ある意味あっという間に追い越してしまうような勢いがありました。そのパワフルさにも魅せられます。
柳川:らいてうは上流階級出身ですが、野枝はどちらかといえば野良犬のような野性味がありますから、その対比も松下さんと吉高さんなら出せるのではないかと。
 
――――本当に野枝はずっと、バタバタとこなれていない泥臭い走りをしていたのでは?
柳川:野枝を走らせるのと、厳しい人生の象徴である雨風をふんだんに当てることは撮影中しっかりやりましたね。吉高さんからは「筋肉痛になるよ〜」「また走るの!?」と言われましたが(笑)。
 
――――印象的だったのが、関東大震災後、親戚の家に行く前に真っ白の衣装を着た大杉と野枝が源次郎や子どもと一緒に楽しそうに踊っていたシーンです。
柳川:あのシーンは瑛太さんにどんな踊りにするかを任せたんですよ。するとYoutubeでコサックダンスを探してきて、吉高さんと話ししながら楽しそうにやっていましたね。
 

■無政府主義者に対して刷り込まれた負のイメージに気づく

――――日常の中のささやかな歓びが見える、いいシーンですね。
柳川:よかった(笑)。とかく無政府主義者は怖い人というイメージを持たれがちですが、そうではない等身大の部分を見ていただきたいという想いがありました。当時は政府から監視対象になっていましたが、彼らは本当に危険な人物だったのかと考えますよね。僕もこの作品を機会に、アナキズムについて勉強しようと思って、本を読んでいます。「アナーキー」という言葉が、人と変わったことをやる人とか暴力的な人という刷り込みが僕にもありましたが、今、そうではないということにようやく気づいた感じですね。
 
――――ありがとうございました。最後にメッセージをいただけますか。
柳川:生きづらさを抱えている人間がいて、その人が自由を求めて何をしたのかを観ていただきたいし、大正時代の女性の着物の美しさにも触れられると思います。吉高さんは今、大河ドラマ「光る君へ」で紫式部を演じていますが、彼女らしい軽やかさが垣間見える平安貴族とは違い、こんなに野太い演技もできるんだというところもぜひ観ていただきたいですね。僕自身が吉高さんのファンですから。
(江口由美)
 

<作品情報>
『風よ あらしよ 劇場版』
2023年 日本 127分 
原作:村山由佳「風よ あらしよ」(集英社文庫刊)
演出:柳川強 
出演:吉高由里子、永山瑛太、松下奈緒、美波、玉置玲央、山田真歩、朝加真由美、音尾琢真、石橋蓮司、稲垣吾郎
2月9日(金)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX堺、キノシネマ神戸国際、シネマサンシャイン大和郡山、2月10日(土)よりユナイテッド・シネマ橿原、2月16日(金)より京都シネマ、以降元町映画館、シネ・ピピア、洲本オリオンにて順次公開
公式サイト:https://www.kazearashi.jp/
製作・配給:太秦
(C) 風よ あらしよ 2024 ©村山由佳/集英社
 
 

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◆日時:2月2日(金) 18:30〜19:00

場所:T・ジョイ梅田(大阪府大阪市北区梅田1丁目12−6 E-MA ビル 7F)

登壇者:文音、松村沙友理、光岡麦監督  MC:遠藤淳
 


 

台本なしの全編アドリブのミステリー映画!?

“呪いの血”が招く殺人事件の予測不能な推理劇

 

「マーダーミステリー」という参加者が推理小説の登場人物となり話し合いながら事件の解決を目指す体験型ゲームの新ジャンルが中国で始まり、日本でもリアル、ネットを問わず多くのイベントが開催され、「リアル脱出ゲーム」や「人狼ゲーム」に続く次世代の体験型ゲームと言われている。朝日放送テレビにて 2021 年 3 月、ストーリーテラーに劇団ひとりを迎え「マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿」としてドラマ化され、その劇場版が2月16日より全国にて公開される。


madamisu-pos.jpg今までにない俳優による緊張感のある即興劇(アドリブ)と先の読めない展開が話題となり、今回豪華俳優陣による誰も知らない結末が待つミステリー映画が完成。探偵・斑目瑞男を演じる劇団ひとりや斑目の助手役の剛力彩芽をはじめ、全員が容疑者となる木村了、犬飼貴丈、文音、北原里英、松村沙友理に、八嶋智人、高橋克典などのベテラン勢も出演。


この度、富豪の後妻となりお邸の女主人を演じた文音と、そのメイド役の松村沙友理、そしてマーダーミステリー映像化の第一人者である光岡麦監督が先行上映会にて舞台挨拶に登壇し、映画の見所や撮影秘話について語ってくれた。松村沙友理と光岡麦監督は大阪出身ということもあり、関西弁でざっくばらんにトーク。パワフルで本音でトークする大阪の人が好きだという文音も、ほぼアドリブで展開していく現場に戸惑いながらもミステリー劇の面白さについて語ってくれた。
 


〈詳細は以下の通り〉

――いよいよ2月16日から公開されますが、今のお気持ちは?

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文音:ミステリー映画ではありますが、コメディー要素も多分にありますので、我慢せずに声に出して笑って楽しんで頂きたいと思います。

松村:撮影中はどんな作品になるのか全く想像つかなかったのですが、映画として斬新で凄く面白いなと感激しました。皆さんにも楽しんで頂ければと思います。

――新しい感覚の映画ということですが、監督は?

松村:(いきなり)天才監督!…言うときましたよ(笑)

光岡監督:すべてアドリブの映画ってあんまりないですし、皆さんも演じたことないと思いますので、新しい感覚の映画だと思います。


――そのお笑いに厳しい大阪ですが、皆さんにとっての大阪の印象は?

松村:私は大阪出身ですが、来る度に街が綺麗になっていってる感じがして、パリみたい!?

――パリ?どの辺が?

松村:大阪駅の辺りとか、ロンドンみたいだと思いません?ええ?褒め過ぎ?大阪のこと好き過ぎてそう見えてんのかな…(笑)

文音:ニューヨークに2年間演劇留学していたんですが、その時日本人の方とも仲良くなっていって、大阪の方は精神力と根性が凄いので、東京出身の友達がどんどん日本に帰っていく中、大阪の友達はずっとニューヨークにいたんですよ。大阪の人はパワフルなイメージが強いです。大阪の人は気持ちを包み隠さず言ってくるし、嘘がなく気持ちいいので大阪の友達が多いです。そういう人好きです!

――でも、最後は「知らんけど」が付きますけどね(笑)

文音:はい、そんなイメージです。

――パリ・ニューヨークと来て、監督は?

光岡監督:僕はずっと大阪なんで、今も大阪に住んでます。この映画館も学生の頃からよく来てました、ADの頃にも…。


madamisu-bu-di-240-1.jpg――光岡監督は本業はTV制作に携わっておられるんですよね?今回映画監督になられた感想は?

光岡監督:映画監督なんて僕らTVの人間にとっては憧れですからね、雲の上のような存在なんで、いまフワフワしてます。まだ映画監督なんて言い切れるもんじゃないんで…(笑)


――新感覚の全編アドリブ演技ということですが、現場の雰囲気は?

文音:まず一人一台の車が付き、アドバイザーが各自一人付いてるんです。まるで監視役みたいで、俳優同士が会話をしないようにと隔離状態でしたので、緊張感が凄かったよね。

光岡監督:人物設定書はあらかじめお渡ししていたのですが、「あの時こうだったよね」などと皆さんで話し合わないで下さいね、と横の会話もないようにバラバラで居てもらいました。嫌な空気だったと思います。

文音:普通、最初にご挨拶するのですが、それもなくいきなり「ヨウイ、スタート!」と撮影に入りましたので、それはもう緊張感のある現場でした。


――クランクアップまでずっと我慢されてたんですか?

松村:ず~っと人を疑ってました(笑)スタッフさんさえ疑ってました。アドリブで進められるので、その内スタッフが「実は僕が…」なんて言い出しかねない雰囲気でしたね。終いには自分のマネージャーも疑ってしまいました(笑)

――そういうキャストの表情は監督にはどう映っていたのですか?

光岡監督:皆さん人間不信になっておられたようでした。私に何か聞きたそうだな~という時でも、無視してました。どんどん嫌われていってるようでしたね。


madamisu-bu-matsumura-240-2.jpg――スタートからゴールまで先の読めない展開ですが、最も苦労した点は?

文音:全部が苦労でした!やはり終盤になって犯人が判明しつつある頃に頭の中がぐちゃぐちゃっになっていったので、その頃が精神的なピークを迎えてましたね。

松村:いろんなヒントやアイテムが提示されるのですが、それらを覚えるのに必死でした。それから次から次へといろんな事が起きるので、状況を覚えるのも大変でした。

――監督は要所要所でエッセンスを落としていくという作業だったのですか?

光岡監督:台本はないけど、事件のあらましはあったので、証拠的アイテムをその都度提示していき、後は俳優さんたちにお任せでした。その証拠をどう扱って、どう盛り上がって、誰が怪しまれていくのか、僕らも全然想定できなくて、多分皆さん探り探りしながら始まったと思いますが…。

文音:最初の私の声なんて、めちゃめちゃ小さくて!自信なくて…(笑)

光岡監督:難しやろな~やりにくいやろな~と思いながら撮っていったんですが、エンディングまでお任せなんで、どうなるんやろ?ほぼムチャぶりで、「皆さんでオチつけて下さい」と投げてましたが、次第にチームワークが築かれていったようでしたよ。

文音:最後は芝居を創り上げた一体感は凄く出ていたと思います。

光岡監督:皆さんのお陰です!それに尽きます。


――完成版を観た感想は?

文音:キャラクターのバックグラウンドが完成されて初めて分かったことが沢山あるので、2回観て理解することもありました。現場には10カメ(10台のカメラ)あったんですよ。そんな現場なんてないですから、編集も大変だったのでは?

松村:凄いです。天才!(笑)

光岡監督:(確信犯のように)言わせてますね(笑)

松村:演じてる時は、「これほんまに作品になるんかな?」と思っていたら、ちゃんと面白い作品に仕上げて下さって、やっぱ凄い!って思いました。


madamisu-bu-500-3.jpg――文音さんと松村さんは、使われなかったシーンとかありましたか?

文音:それすら忘れてる~(笑)完成作を観て、少しずつ思い出したくらいですからね。

松村:カットされてるというより、思ったより喋ってない自分の顔が使われていて、それが興味深かったです。皆さんの細かい表情も使われていてびっくりしましたね。


――劇団ひとりさんとの共演は大変だったのでは?

光岡監督:ネタバレになるのであまり言えませんが、松村さんが劇団ひとりさんに追い詰められてましたね…。

松村:あまり覚えてないのですが、リベートのように言い合ったのは面白かったような…負けたくない!という気持ちで…、

文音:さすが関西人!(笑)

松村:負けたくない!勝ちたい!と根性でバトルしてました(笑)

文音:劇団ひとりさんがめちゃくちゃ暴れるので、笑うのを堪えるのに必死でした。役を超えて自分自身が出てしまうところもあるので、それも見所の一つではないかと思います。

光岡監督:笑ってる部分もカットできなかったので、そのまま写ってます(笑)


madamisu-500-1.jpg――文音さんと松村さんのお互いの印象は?

文音:撮影中はあまり喋れなかったので…でも今日一日ずっと一緒にいて、メチャ可愛らしくて、朝からの取材で段々と疲れていくのがわかって、ありのままが可愛い女優さんだなぁと。ファーストカットから緊張してたのか、目がうるうるしていて、「なんて純粋な娘(こ)なんだろう」と思いました。

松村:文音さんは現場にいらっしゃった時からオーラというか存在感が凄くて、お屋敷の女主人としての立ち居振る舞いが素晴らし過ぎて!それにあのドレス似合う人、他にいませんよ!

文音:あれは監督と決めたんです。いくつかパターンがあったのですが、一番派手なドレスを選んだんです。

光岡監督:はい、満場一致で(笑)

松村:私はメイド役だったので文音さんの後に立つことが多かったのですが、めっちゃ文音さんの背中を見てました。「きれ~いっ!」(笑)


madamisu-bu-500-1.jpg――最後のご挨拶。

文音:この映画は台本がなく、私たちもそんな映画はやったことがないのですが、役柄なのか俳優の素なのかその狭間に新しい何かを見つけてお楽しみ頂ければ嬉しいです。

松村:撮影中はどんな映画になるのか分かりませんでした。皆さんもどこまでがアドリブなのかと不思議に思われるかも知れませんが、殆どアドリブですので驚いて頂けたら嬉しいです。1回だけでなく、2回3回観て頂ければより楽しめると思います。よろしくお願いいたします。

光岡監督:役者さんたちの力の凄さを感じたくてこの作品を企画したのですが、台本がないからこそ、役者さんたちの素のスピードやチカラや迫力を感じながら観て楽しんで頂けたらと思います。本日はどうもありがとうございました。
 


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殺された少女の怨念か、「三つ首祭り」の夜に起きた連続殺人事件。

【ストーリー】
舞台は『一夜のうちに3人の生贄の血を滴らせると死者が蘇生する』という不気味な伝承が残る鬼灯村(ほおずきむら)。その伝承をもとに「三つ首祭り」という不気味な鬼祭が行われた夜、村の長を務める一乗寺家当主が何者かに殺される。

その夜一条寺家に集まった7人に加え、祭りの最中村をうろついていた不審人物(劇団ひとり)が乱入し、犯人捜しが始まる。豪雨のため警察は来ない中、さらに殺人が……。次第にそれぞれの秘密が暴露され、殺害の動機を持つ容疑者は増えるばかり…誰が何のために殺したのか?

 

・監督:光岡麦 ・シナリオ構成:渡邊仁 ・企画:安井一成
・出演:劇団ひとり、剛力彩芽、木村了、犬飼貴丈、文音、北原里英 松村沙友理 堀田眞三/八嶋智人 高橋克典
・2024年製作/103分/G/日本
・宣伝・配給:アイエスフィールド ・配給協力:ショウゲート
・© 2024 劇場版「マーダー★ミステリー 斑目瑞男の事件簿」フィルムパートナーズ

【公式 HP】 https://madarame-misuo.com/

【公式 X】 https://twitter.com/MadarameMisuo (アカウント: @MadarameMisuo)
 

2024年2月16日(金)~T・ジョイ梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX堺、T・ジョイ京都、OSシネマズ神戸ハーバーランド 他全国ロードショー


(河田 真喜子)

 
 

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