レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2023年11月アーカイブ

IMG_6850.jpg
 
  第80回ヴェネチア国際映画祭オリゾンディ部門でNETPAC賞を受賞した塚本晋也監督最新作『ほかげ』が、11月24日(金)よりユーロスペース、12月1日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、今冬豊岡劇場ほか全国順次公開ほか全国順次公開される。
 
『野火』『斬、』に続く戦争三部作の最終章とも言える本作は、終戦直後を舞台に、家族を戦争で亡くした女性や、戦争孤児、復員兵らがもがきながら懸命に生きる様や、戦場体験が精神を蝕み続ける様を痛切に映し出す。『生きてるだけで、愛。』をはじめ、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」主演を務めている趣里のほか、『J005311』では監督を務めた河野宏紀、利重剛、大森立嗣、そして国やジャンルを超えて表現者として活躍している森山未來らが出演。新鋭の塚尾桜雅が演じる戦争孤児の目に映る戦後の喧騒と大人たちの葛藤は、今もあまたの場所で戦争が繰り返され、新しい戦前と呼ばれる現在、リアリティをもって胸に迫ってくることだろう。
本作の塚本晋也監督に、お話を伺った。
 

 

■戦場体験によるPTSDは、取り去ることが難しい

――――本作を拝見すると、終戦で出征した家族が戻ってきても、戦地でのトラウマから家族に暴力を振るってしまい、誰も幸せになれない結果を招いてしまうことを痛切に感じます。
塚本:戦地から帰ってきた人が必ずしも全てそのような態度を見せたわけではありませんが、生き残って帰ってきたわけですから、そこに加害行為があったことは少なくないはずでしょうし、その体験がトラウマとなってしまう。そのPTSDは取り去ることが難しく、高度経済成長期は懸命に働くことで一瞬忘れることができても、定年後に再び戦地での記憶が蘇り、夜中にうなされたりする人もいらっしゃるようです。
 
――――元々は戦争大作の企画を進めておられものの、コロナで大きく方向性が変わったとのことですが、どうやって製作へのモチベーションを維持されていたのですか?
塚本:僕は『斬、』(2018)の公開が終わって、新しい企画を完全に立ち上げようとしていた時期にコロナ禍へ突入したので、完全に止まっていた時期が結構ありました。静かに家で映画を見ながら、本当は作りたかった戦争大作の準備を水面下で粛々と進めていました。ただ、それがあまりにも難しい企画で始めるのが難しく、最初「闇市企画」と銘打っていた本作に着手し始めたのです。
 
 
hokage_sub3.jpg

 

■闇市企画から『ほかげ』が誕生するまで

――――一方で、ミニシアターを訪問して撮影したミニ動画を無料公開されていますね。
塚本:当時ミニシアターが大変だったので、お邪魔して撮影をしたかったのだけど、当時は東京から地方へ人が行くことも嫌がられる状況だったので、公共の施設を使わず、誰にも合わないようにタイニーハウスを作り、「誰にも触れないで来ました!」とマスク姿ですっと現れ、撮影して去ろうと思ったのです。車の中に、昔から作りたかった小さい家を作ってね。「タイニーハウスで豊岡劇場に行く」動画もあるんですよ。その撮影の間にも、今回の撮影用にカメラを実験しました。
 
――――「闇市企画」から、どのような変遷を経て『ほかげ』になったのですか?
塚本:ヤクザやテキ屋、愚連隊が登場し、それぞれの思惑が渦巻くようなものを最初は考えていましたが、規模が大きすぎて一旦白紙に。当時パンパンと呼ばれていた人と戦争孤児とのエピソードも実際に数多くありましたので、その女の人と戦争孤児を起点に、帰還兵を織り交ぜて描こうと方向性が決まっていきました。手記でご自身の体験を書いている人も多いので、それらを参考にしながら、自分で想像して、キャラクターを作っていきました。
 
 

hokage_main2.jpg

 

■役が憑依するタイプの俳優、趣里は「いつか、ご一緒したかった」

――――女を演じた趣里さんの、戦争孤児と出会うまでと出会ってからの心境の変化も交えた演技が素晴らしかったです。
塚本:いつかはご一緒したかったのですが、先延ばしにしていたら、自分があと何本作れるかわからないなと思い、この機会にオファーさせていただきました。趣里さんは、役が憑依するタイプの俳優で、『生きているだけで、愛』を観た後は、あんな感じの人なのかと思っていましたが、実際にお会いすると、ほがらかすぎてビックリしました。撮影前にお会いしたときに役の内容をお話して大体のコンセンサスを取り、その後に衣装を着て、セットの中でリハーサルを行う形でした。ただ昨年夏が異常な暑さで続けることが困難だったので、途中で「もういいか」とやめました。ただ大体は掴んでいただけたので、残りはポイントだけ説明し、素晴らしい演技をしていただきました。
 
 
hokage_sub5.jpg

 

■500人以上応募のオーディションで選ばれた河野宏紀は、「存在感が秀でていた」

――――趣里さんが演じた女の元にやってくる復員兵を演じたのは、初監督作『J005311』でPFFアワード2022グランプリを受賞した河野宏紀さんです。
塚本:河野さんは演技をするときに素直で嘘がない。本当の感情で演じられるまでは、演技ができないタイプだと思います。丁寧に、真摯にその役に向き合ってくれました。オーディションでは500人以上応募があったのですが、僕は自分で撮影もするので、映したくなる人がいいんです。そういう観点でも、河野さんは存在感が秀でていました。
 
――――復員兵は元教師で、教科書だけは自分の拠り所のように大事に持っており、同じく女の家に居ついた戦争孤児に勉強を教えるシーンがとても印象的でした。
塚本:映画では描かれていませんが、孤児の裏設定として、疎開先で親戚にいじめられ、脱走して帰ってきたら、東京の自宅も空襲で焼けて両親共に亡くなったので、全く勉強することができなかった。でも勉強したいという気持ちはあり、復員兵が優しく教えてくれるものだから、彼は勉強する気持ちになれたのです。
 
 

hokage_main1.jpg

 

■戦争孤児の気持ちが、リアリティをもって迫ってきた

――――戦争孤児を演じた塚尾桜雅さんは、ほぼ全編登場し、この眼差しが何を象徴しているのだろうと考えずにはいられませんでした。
塚本:戦争孤児を調べていると、彼らは被害者なのにゴミ扱いされ、憎まれて育たなくてはいけない非常に可哀想な境遇だったことを知りました。僕自身うまく言葉にできないのですが、自分は戦争孤児ではないけれど、そうであっても不思議ではないと思えるような感覚がありました。彼らは両親が亡くなったので、仕方なく上野に集まり、かっぱらいでも何でもして生きてきた。戦争中は上野にたどり着いた人たちが、親戚のためにと思って持ってきたおにぎりを、空襲で焼け死んでしまったから、そこにいた戦争孤児に差し出すということもよくあったそうです。でも、戦争が終わると、人々が急に彼らに冷たくなり、何ももらえなくなった感じとか、闇市がついに現れたとき、お宝のような場所が幻想のように立ち上がり、ここは色々できる場所だと弾んだ気持ちになったことなどが、とてもリアリティをもって自分に迫ってくるのです。
 
――――特に目力がすごいですね。
塚本:監督とカメラが別だと、瞬間的にカメラマンにとりたい画を伝えられず、何回も撮り直すことになると思いますが、僕も撮影しながら彼の目力のすごさに気づいたので、臨機応変に必要な方向へグッと寄ることができました。強い意志を示すときの目力だけでなく、寂しげなときの目の光のキラキラした感じも素晴らしいと思いました。
 
――――映画で登場する闇市もすごくリアリティがありましたが、こだわった点は?
塚本:闇市には以前から思い入れがありましたので、小規模低予算の作品であっても半端なことはしたくなかった。『野火』のときもお世話になった深谷の中嶋建設と、海獣シアターの美術スタッフが汚しや装飾に至るまで緻密に行いました。また中嶋建設には戦後本当にあった闇市の大鍋や、古い建具などがあったので、全部お借りしました。先ほど話に出た教科書も通常ならデザイナーが作り直しますが、戦前の教科書が実際にあったのです!
 

■戦争や戦後の実態を、映画的表現で見せる

――――リアリティといえば、女の部屋の中が一瞬にして焼け野原になるシーンも衝撃的です。
塚本:最初に柱に細かいひだができ、それが焼け跡の廃墟に変わっていくというイメージがあったので、それをなるべく崩さないように、空襲の後の外の世界を部屋の中で表現しました。外をそのまま映してもCGっぽさが出るだけで、あまり効果的に思えなかったので、もう少し違う形で、面白く感じられる方法はないかと考えたのです。後半、女が自分の病気に気づくのですが、梅毒で最初にでき物が現れたとき、そこがグジュグジュし始める感じが映った瞬間、炎の音とともに焼け跡が映る。ただ廃墟を見せるのではなく、女自身のグツグツと炎のイメージを掛け合わせた方が、映画的表現にしています。結局、女が病気になってしまったのも戦争のせいでもありますから、この二つを繋げて、熱さや息苦しさを出しました。
 
――――森山さんの起用は今回が初ですか?
塚本:NHK大河ドラマ『いだてん』で、同じシーンはなかったのですが、打ち上げの席やオープンセットでお会いしたことがあったぐらいでしたが、森山さんもいつかは出演していただきたい俳優だったので、前半が趣里さんメインなら、後半は森山さんメインでとお願いしました。彼の体での演技を、この映画でもぜひやってもらいたいと。軽やかさと重さと、いろいろなことが一度に演じられる俳優です。
 
 
hokage_sub1.jpg

 

■闇市の最後の名残の風景と、『野火』のお客様からのエピソードから構想した描写

――――地下道のシーンも、現実を突きつけていました。監督自身の幼い頃の印象から生まれたシーンとお聞きしましたが。
塚本:映画の地下道とは違うのですが、渋谷駅下に大きなガード下があり、そこに傷痍軍人の方々や、今から思えば闇市の最後の名残と言える、敷物の上にガラクタやおもちゃを並べていたおっちゃんとか。僕はそのおもちゃを見るのが楽しみだったのですが、その場所が不思議なことになぜか原風景として、いつまでも自分の中に残っていたので、いつかその風景のことを映画で描きたいと今でも思っているのです。白装束の傷痍軍人でも、生活能力のある方もいれば、完全にそれを失っていた方もいたという話を『野火』の大阪舞台挨拶でお客様から聞いたことがあります。生活能力のない傷痍軍人の吹き溜まりのような場所があり、お酒や小便まみれで、怖いし臭いし、とても近寄れなかったと。その話と、渋谷のガード下で僕が昔見た原風景が繋がって、映画後半の地下道の描写になった。そこから、物語を逆算して作っていきましたね。
 
――――長年タッグを組んでこられた石川忠さんの音楽を本作でも起用されています。そのことで、より一層『野火』『斬、』と戦争三部作のつながりが感じられますね。
塚本:他の音楽家を探すという選択肢もあったのですが、いつの間にか、石川さんの奥さまから使用許可をいただき、ハードディスクにあった曲を探していました。もちろんすでに使用している曲もありますが、未使用の曲もありますので、この作品のテーマになるような曲を選び、そこから展開していきました。
 
――――最後に、タイトルの『ほかげ』について、教えてください。
塚本:『野火』も戦争の火だけでなく、生活の火のイメージがあるように、この作品も戦争の火とその陰に生きる人というイメージがあります。また、女の部屋の中にあったアルコールランプの火や復員兵が持ってきた小さな火の陰で生きる人というふたつの意味を考え、火とその陰に生きる人というイメージでつけています。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ほかげ』(2023年 日本 95分) 
監督・脚本・撮影・編集:塚本晋也 
出演:趣里、森山未來、塚尾桜雅、河野宏紀、利重剛、大森立嗣他
2023年11月24日(金)~ユーロスペース、12月1日(金)〜シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、今冬豊岡劇場ほか全国順次公開
※第80回ヴェネチア国際映画祭オリゾンディ部門NETPAC賞受賞
公式サイト⇒ https://hokage-movie.com/
(C) 2023 SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATER
 

copocopo-bu-550-1.JPG

◆日程:11月17 日(金)18:30~

◆会場:TOHO シネマズ梅田 【シアター8】
     (大阪市北区角田町 7-10 本館 8F 劇場ロビー/7F シアター8)

◆登壇ゲスト:馬場ふみかさん(28)、北村優衣さん(24)、仁同正明監督(50ちょい)


 

大阪人ならではのあっけらかんと飄々とした“カッコつけへんカッコ良さ”

通天閣の見える大阪下町にある“レトロ”というか、お湯も出ない、お風呂もない、古いおんぼろアパートを舞台に、そこに流れ着いた訳あり老若男女の群像劇。
 

copocopo-pos.jpg

茶髪ロン毛のヤンキー風だが至ってクールなねえちゃん・ユリ(馬場ふみか)を主人公に、管理人でもないのにやたら住人の世話をやきたがるおっちゃん・宮地(笹野高史)、時々キレるニッカポッカ履いてる建設作業員の鉄平(倉悠貴)、いつもビシッとスーツでキメてる色男の中条(東出昌大)、そして、誰彼構わず「タバコ交換しよう」と話し掛けてくるおばちゃん(藤原しおり)という、少々変わり者の入居者たちの人生模様をユリの目線から描出。お互い干渉しないが全くの無関心でもない。付かず離れず、何かあれば玄関先で様子を見守るという不思議な関係。


それぞれいろんな事情を抱えながらも誰に頼る訳でもなく、大きな法を犯すこともせず、地道に最低限の生活を送っている。今にも立ち退きを通告されそうなおんぼろアパートなのに、妙に居心地が良さそうに思えてくるから不思議だ。それもこれも、個性派俳優たちが醸し出す飄々とした雰囲気がそうさせているのかもしれない。


そんなアパートに時々遊びにくる場違いな女子大生の高橋(北村優衣)や、悩みを抱えるユリの弟のカズオ(前田旺史郎)に、いきなり娘にビンタする強烈なおかん(片岡礼子)など、ドラマチックな展開とは無縁だが、愛すべき人々への優しい眼差しに癒される不思議な映画だ。


公開初日を迎えた11月17日(金)、大阪を舞台にした映画『コーポ・ア・コーポ』の舞台挨拶がTOHOシネマズ梅田で開催された。「公開初日に舞台となった大阪で舞台挨拶ができることはとても嬉しい!」と主人公のユリを演じた馬場ふみかと女子大生役の北村優衣、そして仁同正明監督が登壇して、その歓びを語った。
 


(詳細は以下の通りです)

――最初のご挨拶

copocopo-bu-240-baba-1.jpg

馬場:皆さん今晩は!舞台となった地で初日を迎えることって中々ないことなので、とても嬉しく思っております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

北村:今日は大阪で初日が迎えられてとても嬉しいです。上映前ということでお話できないこともありますが、皆さんと楽しい時間が過ごせたらいいなと思っております。

仁同監督:平日のお忙しい処をお越し頂いて嬉しいです。どうもありがとうございます。


――大阪が舞台の映画で初日を迎える率直な感想は?

馬場:大阪でも撮影した作品を一番最初に皆さんに観て頂いて、とても嬉しく思っております。

北村:実は私は大阪での撮影には来ていないので、こうして来られて嬉しいです。

仁同監督:18歳まで堺で育ちまして、監督になりたいと上京して、こうして監督作を持って舞台挨拶をさせて頂いてとても嬉しいですし、ありがたいと思っております。


copocopo-bu-240-kitamura-1.jpg――大阪の印象や想い出は?

馬場:大阪へはお仕事で何度か来る機会があったのですが、丁度1年前になるかな?この映画の撮影で来た時に、東京より街が元気な印象がありました。東京は常にせわしなく暗い感じがする時があるのですが、大阪はとても元気な感じがしました。まだ暗い内の早朝から自転車で街を走るシーンがあるので、そこを楽しみに観て頂ければいいなと思います。

北村:大阪へは観光で何度も来たことがあります。海遊館へも行ったことがありますが、ただただ食べてました。美味しい物が多いですからね。


――大阪が舞台のこの映画を作られた経緯は?

仁同監督:この作品は漫画が原作なので、出版社の編集者の方に「こういう本を作ったんだけど映画化とかできない?」と相談されたのが最初です。読んでみたら何とも言えない大阪独特の“カッコつけへんカッコ良さ”とか、あっけらかんと飄々とした大阪人ならではの雰囲気が出ていて、とても懐かしく、是非やりたいなぁと思いました。


copocopo-240-jindou-1.jpg――そういうお気持ちで撮影された訳ですが、撮影中何か気を付けられたことは?

仁同監督:撮影中の苦労というか、馬場さんも北村さんも大阪の人ではないので、北村さんは役柄上、標準語で話す関西風の人という感じだったので、まだそんなに心配することはなかったのですが、馬場さんは新潟出身でほぼ東京暮らしなので、大丈夫かな~と心配しました。他の役者さんも大阪弁を使う時には同じように課題になってくると思いますが、イントネーションとか大阪弁にばかり気を取られると、エモーショナルな演技が損なわれてしまうことになり兼ねないのですが、馬場さんは完全に大阪人のユリになりきって演じて下さいました。きっと馬場さんはそういう努力を見せないタイプの俳優さんだと思います。カッコいいなと思いましたよ。


――バリバリの大阪人・ユリを演じられた馬場さんは自身で気を付けられたことは?

馬場:普段周りに大阪弁で話す人はいるのですが、私自身は新潟出身ですし、お芝居でも大阪弁を喋ることもなかったので、「これはヤバい!」と思って沢山練習しました。共演者の皆さんは結構関西出身の方が多くてネイティブに話されるので、これはちゃんと話せるようにならなきゃと思いました。

――大阪の人間から見ても何の違和感もなくて、後から新潟出身と聞いてびっくりしたぐらいです。

馬場:ほんとですか~嬉しいです。クランクインする前に時間を掛けて練習しました。本作にも出演されている芦那すみれさんに付きっ切りで教えて頂きました。


copocopo-550.jpg――北村さんは何か気を付けられたことは?

copocopo-240-takahashi-1.jpg

北村:私が演じた高橋という女子大生はアイドルみたいな存在だなと思ったので、どうにかこのイメージを壊さないようにしなきゃと思いました。コープの人とは違う風を運んでこられるように、キラキラしたアイドルを意識しました(笑)。

馬場:撮影現場に北村さんが初めて来られた時に、「うわぁ、アイドル来た!」って思いました(笑) 凄い!眩しい!ってね(笑)

北村:普段しない髪型やレトロな服装に助けられて、ニコっと笑えました(笑)。


――監督にとっても北村さんのアイドル感というものは問題なかったのでしょうか?

仁同監督:僕もアイドルに憧れて育ってきましたが、「アイドルって表に出ていない時ってどんなんやねん?」と思ってましたので、北村さんのお陰で、アイドルに変身する瞬間を見ることができたんです。凄いエネルギーでアイドルに変わっていったので、そこは凄かったですね。

――コープに住んでいる住人って濃い人たちばかりですので、北村さんが演じる高橋は爽やかな風のような存在ですよね?


――馬場さんは初めて脚本を呼んだ時の感想は?

馬場:とても面白かったです。あまり読んだことのない不思議な空気が流れている作品だと思いました。大阪の言葉が喋れないのに大丈夫かな?と思いつつも、作品自体が面白くて魅力的でしたので、是非やりたいなと思いました。


――クランクイン前に打ち合わせとかされたのですか?

馬場:監督から長いメールを頂きました。ユリについての設定というかプロファイルみたいなものをいっぱい送って頂いて、お陰でよく理解できました。

仁同監督:勿論原作もありますが、すべてが書かれている訳ではないので、想像したり編集者の人に聞いてみたりしてユリというキャラクターを創り上げていったんです。

――そういうことは他の俳優さんたちにもされていたんですか?

仁同監督:いいえ。ユリは主人公なのにあんまり喋らないしリアクションも控え目なキャラクターなんですよ。ですから、しっかりと人物像を準備しておかないと、存在感を示せないというかリアクションの意味が伝えられないと思ったので、僕も予習復習の意味も兼ねて馬場さんに長いメールで説明したんですよ。


copocopo-bu-240-baba&kitayama-1.jpg――本作を初めて観た時の感想は?

馬場:不思議でした!凄くゆっくりと時間が流れる映画だと思いました。

北村:あまり観たことのない映画でしたよね。でも、こういう映画を観たかったような…大きな波がある訳ではないけれど、生き様も表れていて、人間味あふれる愛おしさを感じるような映画だなと思いました。

馬場:撮影現場もそんな感じだったんです。現場って普通時間に追われてぴりぴりしているものですが、今回はとてもゆっくりと時間が流れていて、それだけ順調に撮影が進んでいたということもあるのですが、こういう作品は今までなかったなと思いましたね。


 

copocopo-500-1.jpg

――共演者とのエピソードは?

馬場:ず~っと喋ってました(笑)。そのまんまこのコープに住んでいるんじゃないかと思える程。実際、コープの脇にある駐輪場でみんなで輪になって喋ってました。

北村:笹野さんが凄いお喋りで(笑)、豆知識みないなものをいっぱい教えて下さって、とてもありがたかったです。


――監督から見た馬場さんと北村さんの魅力とは?

仁同監督:北村さんは、アイドル的な存在の高橋に変身する瞬間のエネルギーが凄かったですね。目つきや一挙手一投足とかに入れ込む情熱が強く、演じることがとても好きなんだなぁと思いました。

馬場さんは、言葉をはじめ衣装やヘアスタイルもユリになり切っておられて、カットになってもユリのまんまでしたね。一見何を考えているのか分からない役なので、「どんなこと考えてんだろう?」ともっと知りたくなってくるんですよ。観ている人をグッと惹き込ませる女優さんだなとずっと思ってました。

馬場:めっちゃ褒められましたね~(笑) 実際、ユリと近い部分が多いかなと…例えば、常に客観視できる目を持っているとか、他人に流されずに自分自身をしっかり持って生きているとか、私もそういう風になりたいなと思っています。

北村:馬場ふみかさんのいい気の抜け方がとても心地が良くて、お芝居する時も変な緊張をしないので、一緒に居てとてもやりやすかったですね。


copocopo-500-yuri-1.jpg――本作の注目点は?

馬場:ユリはコープで皆と一緒にいる時もそうですが、弟や母親と一緒にいる時に見せるユリの人間性にも注目してほしいです。

北村:高橋としては、石田君と二人きりになる時のドキドキ感が伝わってくれればいいなと思いますし、ユリちゃんと一緒に公園を散歩するシーンなど、違う世界の高橋がコープにどうしようもなく好奇心を抱くあたりにも注目してほしいです。

仁同監督:自分でも「この映画はどんな映画なんかな?」と問い続けてきましたが、やっぱり「囚われない生き方」ということではないかと思います。世間体とか収入のためとか、他人と比較するとか、良きにつけ悪きにつけうるさい世の中ですが、それらに囚われないで自分らしい生き方を貫く逞しさがこの映画の中には存分に描かれていると思います。そんなことを感じ取って頂けたら嬉しいですし、僕もそんな生き方をしていきたいなと思っています。


copocopo-500-2.jpg――最後のご挨拶

北村:私も大好きな映画が出来ました!このキャッチコピーにあるように、「世の中いろいろあるけど、まあいいか!」と思えるぐらい気の抜けた愛おしい人がいっぱい登場しますので、それらを楽しんで頂けたら嬉しいです。

馬場:初日に大阪に来られるのが幸せだなと。この映画にはどうしようもない人たちがいっぱい出てくるんですけど、それでも愛おしい気持ちになり、そして不思議な時間が流れる映画ですので、楽しんで頂ければ嬉しいなと思います。

仁同監督:観て頂いて、多分めちゃくちゃ感じて頂けることが多いのではないかと思います。自分で言うのも何ですが、いい映画なんでよろしくお願いします!
 



出演:馬場ふみか 東出昌大 倉悠貴 笹野高史 前田旺志郎 北村優衣 藤原しおり 片岡礼子
原作:岩浪れんじ 「コーポ・ア・コーポ」
監督:仁同正明
脚本:近藤一彦
主題歌:T字路s「愛おしい日々」(Left Brain Inc.Mix Nuts Records)
製作:ジーオーティー  制作プロダクション:アットムービー
配給:ギグリーボックス
2023 年/日本/97 分/ビスタサイズ/5,1ch/映倫区分:G

公式サイト:https://copo-movie.jp/

2023年11月17日(金)~TOHO シネマズ(梅田、二条、西宮OS他)、あべのアポロシネマ、 109シネマズHAT神戸 他全国ロードショー!


(河田 真喜子)

 
 
 

rinjinX-bu-550-2.JPG

◆日程:11月15日(水)18:30~19:00

◆会場:大阪ステーションシティシネマ 【シアター1】
(大阪府大阪市北区梅田 3-1-3 ノースゲートビル 11F)

◆登壇ゲスト:上野樹里さん、林遣都さん



rinjinX-pos.jpgもし、人間と同じ姿形をした他の惑星から来た難民Xがいたらどうするだろう?触れることで人間そっくりにコピーしてしまい、人間社会に紛れて生活をする。人と争わず傷付けることなく静かに生きる人間以上に優しい存在だという。だが、コロナ禍のパンデミックのように、誰かが感染しているのでは?と不安と恐怖で疑心暗鬼になって人間同士で攻撃し合う事態になり兼ねない。誰がXなのか? Xの正体を突き止めようと犯人捜しのように誰彼なく疑って見てしまう。そんな世の中にあって、ある崖っぷち状況の週刊誌の記物がⅩのスクープを獲ろうとターゲットの女性を騙して近付いていく。だが、次第に大切な何かを見失っていく自分に気付いて、本来為すべき行動をとっていく。


人間とは何か? 偏見や思い込みで他者を判断していないだろうか?日々不安を掻き立てられるような事が次々と起こる世の中で、何を信じて、何に拠り所を求めて生きていけばいいのだろうか?そんな不安な気持ちや自分自身のものの観方を改めて考えさせてくれるミステリーロマンス、『隣人X-疑惑の彼女-』がいよいよ12月1日(金)から全国公開される。Xの嫌疑を掛けられた主人公の柏木良子を演じた上野樹里と、崖っぷち週刊誌記者を演じた笹憲太郎を演じた林遣都が、公開を前にして開催された先行上映会の舞台挨拶に登壇。


二人とも厳しくも丁寧な演出で定評のある熊沢尚人監督とは2度目のコラボとなり、30代を迎えた俳優としての意欲を監督にぶつけては手応えを感じ取っていたようだ。そして、初共演となるお互いの魅力についても語ってくれた。
 


(詳細は以下の通りです。)

――最初のご挨拶

rinjinX-bu-ueno-240-1.jpg

上野:今日は週の真っ只中のお忙しい中お集り頂き誠にありがとうございます。今日は楽しんでいって下さい。

林:今日はお忙しい処をご来場下さいましてありがとうございます。(お二人とも関西出身ということもあり…)関西弁出ないね?

上野:出ないんですよ~。

林:今日は取材などで記者さんたちと話している時には関西弁が出ていたのに…僕も関西出身なのに人前で関西弁で話すのは無理ですね~(笑)


――今日は朝から大阪のマスコミ取材を受けられていましたが?

林:関西弁が出るのは僕にとってオフモードなんでしょうね、仕事時には出ないもんですね。

上野:大阪の記者の皆さんはしっかり作品を観てから楽しい質問をして下さって、今日はとても充実した時間を過ごすことができました。


――上野さんは加古川出身で加古川市の観光大使もされてますけど、大阪の思い出とか印象とかはありますか?

上野:そうですね~大阪は、長年CMをさせて頂いている大和ハウスの本社があるとか、以前大阪NHKで朝ドラに出演させて頂いたこととか…ユニバーサル・スタジオへは行ったことがありますよ。叔母と一緒だったのですが、叔母が乗り物酔いしちゃって支えるので精いっぱいで、ゾンビが襲って来てもそれどころじゃなくて、もうゾンビも追っかけて来ませんでした(笑)


rinjinX-bu-hayashi-240-1.jpg――林さんは大津市出身ですが、今回の作品では大津市での撮影が多かったようですね

林:はい、ほぼオール大津ロケです。

――ご家族の方も撮影を見に来られていたのですか?

林:良子さんと二人で歩くシーンで港が見える所があるのですが、そこは僕が学生の頃の悩める時期によく行っては自分自身と向き合っていた場所でして、実家からも近いので、今回も家族に撮影を見に来てもらっていました。まさかそこで上野樹里さんと一緒に歩ける日が来るとは…とても感慨深く、その日の撮影は素敵な一日となりました。


rinjinX-500-2.jpg――お二人は初共演ということですが?

上野:はい、そうです。林さんは今回、無精髭を生やした記者の役なんですが、それがとても大人の色気が出ていたように感じました。独りでひっそりと暮らしていた36歳の良子が笹という記者にどんどん距離を縮められていくのですが、ドキッとするシーンもあったので、林遣都さんのファンの方は、そんな林君にドキドキしながら映画を楽しん頂けると思います。

それと、林さんはとても真面目な方で、最初のリハーサルの時から凄い熱量で臨んでおられたので、この映画は絶対面白くなると思いました。この映画で共演できて、とてもいいタッグが組めたと思っています。


林:本当に上野樹里さんと出会えて良かったなと思います。撮影後も取材などで何度かお会いする機会があったのですが、毎回思う事は人間力が凄い方だということです。考え方とか生き方とかがお芝居に滲み出ていて、今の時代に必要な何かをお持ちの人だなと思います。映画の中の良子さんもそういう人なんですが、その良子さんを樹里さんが演じられたから良かったと心から思っています。皆さんもこれから映画を観て頂ければ、僕が言いたいことを分かって頂けると思います。


――この良子さん役は是非上野樹里さんにと熊沢尚人監督がオファーされた訳ですが、熊沢監督とは『虹の女神』(‘06)以来ですね?

rinjinX-bu-ueno-240-2.jpg

上野:はい、二十歳の頃に岩井俊二さんプロデュースの映画で熊沢監督とご一緒させて頂きました。でもその時は岩井さんも編集に携わっておられたので、今回のような熊沢監督・脚本・編集のような密な作業に携わったのは初めてです。17年ぶりですので、どれだけ成長した姿を見せられるのか?台本頂いた時にすぐに読んで、すぐに電話をしました。監督の電話番号も知らなかったので調べまくって掛けました。それから1年半をかけて良子という女性を創り上げていったのです。


――林さんも熊沢監督とは『ダイブ』(‘08)以来だそうですが?

林:当時、まだこの仕事を始めたばかりでしたので、とても厳しい監督という印象が強かったです。年を重ねていくと厳しく指導して下さる監督とは中々出会えないもので、今回お話を頂いた時には15年ぶりですが、今の自分を確認するためにも是非ご一緒したいなと思いました。愛情のある厳しさは全く変わってなくて、一つの役をやるにも丁寧に向き合って下さるし、足りてない部分があると細かい部分まで詰めて来て下さいました。『ダイブ』の時には若者が集まる青春映画だったので、熊沢監督のことを陰で“鬼沢”と呼んでいたくらいです(笑)ああ、思い出しましたね、“鬼沢の千本ノック”!でも、そうして追い込んで頂いたからこそ発揮できる表情や演技もあるので、今回15年ぶりにご一緒させて頂いて、いいことばかりでした。


――上野さんはキャラクターに合わせて衣装とか小物にこだわられたとか?

上野:脚本が徐々に形になっていくと、良子さんのシルエットやイメージも膨らんでいき、街中を歩いていても良子さんを探している自分がいました。髪型を変えてみたりアクセサリーや服でも自分の私物を使ったりしていました。実は良子さんと同じカーディガンを他の作品でも着ていたんですよ(笑) 監督とも相談しながら選んでいましたが、そこで意見がズレることもなかったので、良子さんのビジュアルや声のトーンなど、徐々に創り上げていきました。


rinjinX-500-1.jpg――上野さんは撮影中の住居も借りられたとか?

上野:本当は良子みたいにアパートを借りて住みたかったのですが、それはさすがに危ないだろうということで、プロデューサーからお許しが出ませんでした。そこで、マンスリーの家を借りて色々持ち込んで、仕事の帰りにスーパーに寄って自炊してました。ホテルに缶詰になるのは息苦しいので、そこで暮らすように過ごせたらと思って…。


――林さんは週刊誌記者の役だと聞いた時の感想は?

林:記者は身近なお仕事でもあるので、一度覗いてみたいな面白そうだなと思ってやらせて頂きました。笹という役はこの映画の目線としても描かれているように、笹が何かに気付いて変わっていくことはこの映画の大事な部分でもあるので、その役割をしっかり果たさないといけないなと思っていました。


rinjinX-500-4.jpg――この映画の注目点は?

上野:観終わった後、どこが印象的だったかをSNSとかでも話し合ってほしいですね。心の中って自分自身でもよく分からないし、偏見や何かしらのフィルターを通して物事を見ていることを、笹という人物を通して体感してほしいです。一度観て頂いて全部わかった上でもう一度、今度は良子の目線で観るとか、男性と女性の立場で見直すとかして頂いたら、また違った楽しみ方ができるのではないかと思います。


――上野さんはインスタライブでもこの作品について答えておられますが?

上野:はい、92分!皆さんに沢山の質問を寄せて頂きましたので、それに答えていきました。


――林さんの注目して欲しい点は?

林:やはり良子さんですね。彼女を始めとする登場人物は我々が無くしてはいけない大切なものを持っている人たちなんです。それぞれが大変な思いを抱えながら生きているのですが、そういう人たちに感じるものがとても大切なことで、怖い世の中ですが、日常の中に目を向けてみるとこんなにも素敵なことが散らばっていることに気付かされると思います。


rinjinX-500-3.jpg――最後のご挨拶

rinjinX-bu-hayashi-240-2.jpg

林:これから名古屋へ行きます!(笑) 今回は大阪を満喫する時間がありませんが、またゆっくりと来たいと思います。最近僕もユニバーサル・スタジオへ行きまして、「ザ・フライング・ダイナソー」に乗りまして…あれは凄かった~!(笑) コロナ禍からしばらく経っても世の中まだまだ不安なことがいっぱいあります。この映画が身近にある素敵なことに目を向けるキッカケになればいいなと思います。それぞれの感想をSNSなどで発信して頂ければ嬉しいです。僕、探しますので! 今日はどうもありがとうございました。


上野:今日は公開前なのに観に来て下さいまして本当にありがとうございます!世の中目まぐるしくどんどん変わっていっています。勿論いい部分もありますが、惑わされたり自分の大切なものを見失ったりして、大切な人の心の中がどれだけ見えているのだろうとか、また耳を傾けて生きているのだろうかと考えてしまいます。生きていくだけも精いっぱいだし、生きていくためにはお金が必要だし、いろんなことに気を付けながら恐怖と向き合いつつ日々を重ねていきます。

コロナ禍で入学していろんな行事を楽しめないまま卒業していく高校生などを見ていると、この隣人Xのように世の中から孤立した存在というものがよく理解できると思います。私も一番忙しかった20代の頃にあらぬ記事を書かれて傷付いたことがいっぱいありました。人を楽しませたいという想いでやっているのに、それが報われない。でも、そういう時代を経たからこそ、この縦社会から離脱して生きている良子を今演じることができるのだろうし、笹という記者との関係性も20代の私にはよく理解できなかったでしょう。

そうしたパーソナルな部分にも注目して楽しんで頂きたいです。もっと素直に、何のフィルターもかけていない目で世の中を見ていくってどんな感じなんだろう?と、この映画を観て自分なりの想いを見つけて頂けたらいいなと思います。どうぞお楽しみ下さい。
 


rinjinX-550.jpg

二転三転する真実、交錯する想いと葛藤―

予測不能なラストが待ち受ける、異色のミステリーロマンス

【STORY】

世界中に紛争のため故郷を追われた惑星難民Xが溢れ、日本にも既に潜入して来ているのではないかとパンデミック時のように疑心暗鬼になっていた。人間の姿をそっくりコピーして日常に紛れ込んだ X がどこで暮らしているのか、誰も知らない。X は誰なのか、彼らの目的は何なのか。犯人探しのように世間の関心を集める中、週刊誌記者の笹憲太郎(林遣都)は、ある事情を抱えながらも躍起になってXのスクープを追い掛けていた。そこで、取材対象の1人・柏木良子(上野樹里)にターゲットを絞り正体を偽って距離を縮めようとするが、次第に良子の人間性に惹かれていく…果たして良子はXなのか、嘘と謎だらけの関係性に人として向き合うべき信頼が揺らいでいく。

 

◆出演:上野樹里 林遣都 黃姵嘉 野村周平 川瀬陽太 / 嶋田久作 / 原日出子 バカリズム 酒向芳
◆監督・脚本・編集:熊澤尚人
◆原作:パリュスあや子「隣人 X」(講談社文庫)
◆音楽:成田旬
◆主題歌:chilldspot「キラーワード」(PONY CANYON / RECA Records)
◆製作:2023 映画「隣人 X 疑惑の彼女」製作委員会 (ハピネットファントム・スタジオ AMG エンタテインメント ポニーキャニオン 恆星多媒體股份有限公司 講談社 スカーレット)
◆配給:ハピネットファントム・スタジオ
◆2023 年/日本/120 分/カラー/シネスコ/5.1ch
◆©2023 映画「隣人 X 疑惑の彼女」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社

◆公式サイト:https://happinet-phantom.com/rinjinX/

2023年12月1日(金)~大阪ステーションシティシネマ 他全国ロードショー!


(河田 真喜子)

 

 
v1.jpg
 
 モニカ・ベルッチ主演の『アレックス』(2002)やシャルロット・ゲンズブール、ベアトリス・ダルを起用した『ルクス・エテルナ 永遠の光』(2020)など、大胆な暴力や性描写で、賛否両論を巻き起こしてきたギャスパー・ノエ監督の最新作、『VORTEX ヴォルテックス』が、12月8日(金)よりシネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ橿原、12月15日(金)よりシネ・リーブル神戸、アップリンク京都ほか全国順次公開される。
 認知症を患った妻と、心臓に持病を持つ夫。80代の老夫婦が老老介護をしながら暮らす日々を、その命が尽きる日まで追い続けるヒューマンドラマ。夫婦それぞれの行動を2つの画面で同時に追い続けるという驚きの手法で、老いや妻に隠した秘密、それぞれの人生を紐解いていく。たまに訪れる息子との会話は、親の介護世代には他人事とは思えないリアルさ見事に映し出しているのだ。
11月16日(木)、シネ・リーブル梅田で行われた先行プレミア上映では、上映前にギャスパー・ノエ監督が登壇。最初のご挨拶が「儲かってまっか?」と、必死で覚えた関西弁を披露。東京へは映画(『エンター・ザ・ボイド』)を撮影するぐらい何度も足を運んでいたが、周りから関西を絶対に気にいると推され続けていたというノエ監督。念願の観客との交流に大きな笑みを見せた。
 
 
VORTEX:メイン写真 .jpg

 

■実体験をもとに、老人が登場するメロドラマを

2年前のロックダウン中に、1ロケーションで完結し、俳優2〜3人という制限の中で作れる企画をプロデューサーから打診されたノエ監督は、母が認知症で10年前に亡くなっていたこともあり、認知症や老いについての映画を構想していたという。そこから10ページぐらいの脚本を書き、ロケーションを探し、1ヶ月後には撮影に入るというハイスピードで進行したことを明かした。もう一つのコンセプトはメロドラマ。
「暴力やセックスなど刺激的なものではなく、もっと大人らしいテーマで撮りたかった。2020年は個人的にも体調が悪く、ずっと家に引きこもっていたが、溝口監督や木下監督の映画をたくさん観ていたんです。中でも『楢山節考』に大きな影響を受けたことが、この映画につながっています。登場人物が若い人より、老人が出演している方がさまざまな人に共感してもらえます。誰にでも家族に祖父や祖母がいるでしょうし、観終わってから自分の家族のことを思い出したという感想もいただきました」
 
 
VORTEX:サブ4.jpg
 

■2画面構成で表現する老夫婦の心の距離

 本作の特徴はなんといっても、夫婦それぞれの動きを2画面構成で見せる点だ。過去2作品ですでにこの手法を使っていたというノエ監督は、脚本を書いた後、どうやって撮ろうかと考えたときに、2画面構成を使うことが一番適しているのではないかと考えたという。「同じ屋根の下に住んでいる老夫婦がどんどん離れていくという表現に的確。また、映画をよく観る人ではなくても、どういう感情を伝えようとしているのかわかります。2台のカメラで撮影しましたが、撮影しやすい場面もあれば、しにくい場面もありました。中盤に、夫と息子、妻と孫の4人がテーブルを囲むシーンがありますが、妻を演じるフランソワーズ・ルブラが僕の指示はないところで突然泣き始めると、夫を演じるダリオ・アルジェントが手をすっと取る姿を2台のカメラで撮影したのです。分割されているので、微妙に手の位置がずれていて、そのシーンのことを褒められることもありますが、アクシデントで撮れたシーンでした」
 
また本作はドキュメンタリーっぽいという感想も多いそうで、ノエ監督は、自然光を使っていることや、シチュエーションを説明し、その中で俳優が即興でキャラクターを作るからこそ生まれる自然さもあったことを明かした。
「ダリオ・アルジェントは『サスペリア』や『インフェルノ』などで非常に有名な映画監督ですが、ぜんぶ即興で、セットの上でキャラクターを作り上げていくので、セリフを覚えられないなど気にしなくてもいいと、この役を演じてもらうように説得しました。老人が自分の飼ってる犬の世話をできなくなるダリオと僕が好きな映画『ウンベルト・D』(1952)や、黒澤監督の『生きる』などを引き合いに出し、俳優でなくても演技はできると。実際の演技は素晴らしかった」と絶賛。
 
 
v2.jpg

 

■現場はアドリブの競い合い!?

現場ではダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、そして息子役のアレックス・ルッツダリオの3人とも、自分の方のアドリブがよいとお互いに競争しながら作っていたという。コロナ中の撮影でうつらないようにという緊張感があったというノエ監督。
「ダリオは、自分が撮影するときも2〜3テイク以上は絶対に撮らない。僕がもっと撮りたくても、2〜3テイクで完璧だからと去ってしまい、それ以上は撮れなかったんです。彼は
実際に映画監督になる前は映画評論家でしたし、実際にフランスに住んでいたことがあるので、フランス語も堪能でうまく役を演じていました。加えて、フランソワーズは70年代に公開された主演作『ママと娼婦』の大ファンで、妻役をぜひとオファーしました」
 
 大阪では大好きな映画ポスターを買いに行きたいと語ったノエ監督。最後に「ぜひ泣いてくださいね。そして楽しんでください」と観客にメッセージを送り、上映後にもふれあいタイムを作ることを自ら公言。初大阪舞台挨拶を大いに楽しみ、語ってくださった。誰しもが通る老いと死を見つめたノエ監督のまさに新境地と言える作品は、親世代、子世代、孫世代とさまざまな世代に共感をよび、自分の人生と照らし合わせたくなることだろう。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『VORTEX ヴォルテックス』” VORTEX”
2021年 フランス 148分 
監督・脚本・編集:ギャスパー・ノエ
出演:ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、アレックス・ルッツ
劇場:12月8日(金)よりシネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ橿原、12月15日(金)よりシネ・リーブル神戸、アップリンク京都ほか全国順次公開
© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA
 
 

bokunikumanai-500-11.jpg

大変お世話になっております。幸せな人生を選ぶ決意の手紙を20万人以上がシェア。フランスから発信された感動の世界的ベストセラーが映画化! 『ぼくは君たちを憎まないことにした』が公開中。


本作は、家族3人で幸せに暮らしていたアントワーヌが、テロ発生から2週間の出来事を綴った世界的ベストセラー『ぼくは君たちを憎まないことにした』の映画化である。最愛の人を予想もしないタイミングで失った時、その事実をどう受け入れ、次の行動に出るのか。


bokunikumanai-550.jpg誰とも悲しみを共有できない苦しみと、これから続く育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一晩で20万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクールダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。


たった一人の言葉が世の中の声を変えていく。ヒーロー視しない演出が人間の弱さと強さを浮き彫りに

 パリ中心部にあるコンサートホールのバタクラン。アメリカのバンド、イーグルス・オブ・ザ・デスメタルのライブ中に3人の男たちが1500人の観客に銃を乱射し、立てこもった。少し前には、パリ郊外のスタジアムで行われていたフランス対ドイツのサッカー親善試合や周辺のレストランで過激派組織「ISIL」の戦闘員が自爆テロを起こしていた。バタクランには、アントワーヌの妻、エレーヌと友人がいた。安否確認すらままならないカオスの中で、2日後に判明したのは、友人は生き延び、エレーヌは犠牲となった受け入れがたい事実だった。


bokunikumanai-500-2.jpgパリ同時多発テロから8年。憎しみの連鎖を断ち切る1つの答えがここにある!

ロシアのウクライナ侵攻やTVではパレスチナ、イスラエルのニュースが連日放送され、世界中で起こっている止められない“憎しみの連鎖”を目の当たりにし、気持ちがどうしても沈んでしまう昨今。本作も130人が犠牲となったパリ同時多発テロで、最愛の人を失った父と子を描く中で、主人公がテロリストに「憎しみを贈らない」と決意表明し、幸せに生きていくことを誓う。この決意に至るまではもちろん苦しみや悲しみにもがき苦しむ主人公たちの姿が描かれる。それでもアントワーヌと息子のメルヴィルは、それらを抱えて幸せに生きていくことでテロに負けないと心に決める。まさに本作は、憎しみの連鎖が蔓延る世界に生きる我々が観るべき強いメッセージを伝えてくれる。


11月13日でパリ同時多発テロから8年が経つ。憎しみや怒りを乗り越えていかないと終わらない“憎しみの連鎖”を断ち切るヒントを今作は教えてくれる。
 



天才子役のかわいい場面カット9枚も一挙解禁!


本作で映画評論家の町山智弘が「とんでもない天才が現れた」と大絶賛したのが、母親を失ったメルヴィルを演じたゾーエ・イオリオ。劇中のメルヴィルは1歳の男の子だが、ゾーエは女の子で撮影当時は3歳。監督はフランス、ドイツ、ベルギー、スイスでオーディションを行い、ゾーエを見つけたそうで、「初めて見た瞬間から、この子だ! と誰もが確信したのを覚えている。」と初対面で特別な子だと分かったという。「ゾーエは他の子たちとは違って、大人の俳優のようにシーンを理解して感情を表現したんだ。とても器用で賢くて、自分の考えを表現できる特別な3歳児だった」と振り返る。3歳児がそもそも演技をできることが驚きだが、ゾーエは母親の不在、失った哀しみ、父と過ごす幸せな時間など様々なシーンで類まれなる演技を披露し、観る者の心を揺さぶる。


解禁された場面カットも当時ゾーエが3歳ということを考えると、「とんでもない才能が現れた」という賛辞も決して大袈裟ではないことがわかるだろう


<STORY>

bokunikumanai-pos.jpg

2015 年 11 月 13 日金曜日の朝。ジャーナリストのアントワーヌ・レリスは息子のメルヴィルと一緒に、仕事に急ぐ妻のエレーヌを送り 出した。息子のために健康的な朝食を手作りして体調管理に気を配り、おしゃれでユーモアのセンスもある。最高の母であり、最 愛の妻が、突然、天国へ行ってしまった。そんな時でも息子はお腹を空かせ、砂で遊び、絵本の読み聞かせをねだる。誰とも悲し みを共有できない苦しみと、これから続くワンオペ育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を 奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一 晩で 20 万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクー ルダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。


監督・脚本:キリアン・リートホーフ『陽だまりハウスでマラソンを』
原作:「ぼくは君たちを憎まないことにした」
2022年/ドイツ・フランス・ベルギー/フランス語/102分/シネスコ/5.1ch/
原題: Vous n‘aurez pas ma haine/英題:YOU WILL NOT HAVE MY HATE 
日本語字幕:横井和子/提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
©2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion nikumanai.com

公式サイト:http://nikumanai.com

TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、TOHOシネマズ西宮OS、他全国公開中


(オフィシャル・リリースより)

aharamadoka-西村花音-550-1.jpg

 

あはらまどかを演じた映画初出演の中学生、西村花音さん、まどかの友達の長岡花怜(カレン)と女子学生の姿をした怪物の二役を演じた、同じく映画初出演の片山瑞貴さん、まどかが、妖精のシナモンから神社に植えるよう託された、ひなたくんという名前の花の声を演じた川久保まりさんに、撮影についてのお話をうかがいました。インタビューには、脚本も担当した川村正英プロデューサーも同席してくれました。


上手に笑うことができない少女の心の成長をファンタジー色豊かに描き、全編神戸ロケで撮影された本作は、11月11日から1週間、神戸の元町映画館でプレミア公開されます。
 


【まどかを演じて】

───初めての映画出演はどうでしたか?

aharamadoka-西村花音-240-1.jpg

西村:プロモーションビデオみたいなので少しだけ演技したことがありましたが、演技の経験がなくて、今回のオーディションで合格して、すごく嬉しかったです。いきなり主演というのはちょっと不安がありましたが、オーディションの時から、衣笠監督、スタッフの方々がリラックスしていいよと言ってくださり、緊張がほどけ、全力でできました。


───クライマックスのシーンの撮影は最初のほうにあったのですね。

西村:神社での怪物とのシーンの撮影が、撮影スタートしてから2日目で、泣くシーンもあり、どうやったらうまく表現できるか、自分の中ですごく考えて、結構悩んでいたシーンで、監督とたくさん相談しました。監督は、私の意見を尊重し、あなたの好きなように、思うようにやったらいいよと言ってくれて、緊張が解けました。結果として、泣こうと思って泣いたのではなく、勝手に涙が出てきましたので、まどかになれたのかなと思うと嬉しかったです。


【まどかの友達と怪物の二役を演じて】

───怪物はいつも笑いながら、まどかに近付いてきますが、このアイデアは片山さんなのですね?

aharamadoka-片山瑞貴-240-1.jpg

片山:脚本では、まどかに静かに近付く感じで、笑うシーンではなかったんです。でも、もっと臨場感を出すために私ができるのは、息遣いよりも笑い声だと思いました。その方がもっとまどかを脅かすことができるかなと思って、撮影初日に、監督に提案しました。監督は、最初から、自分の意見や、やりたいことをどんどん言ってくださいと言っておられたので、臆することなく、気軽に相談できました。息を押し殺した笑いもあれば、高らかに響く笑いもあり、いろいろ笑い方を変えてみたので、そのことも感じてもらえたら嬉しいです。


───怪物と、花怜と二つの役を演じて、どうでしたか?

片山:実は、オーディションの時には花玲役だけで、撮影の数週間前に、怪物役の打診がきたんです(笑)。監督に、怪物役を置いた構想とかについて聞きにいき、いろいろ考えて、「まどかの心の中にいる、人間に恐怖の感情を与える怪物」というのを意識して役作りに取り組みました。まどかの思っている怪物は、いわゆる普通の怪物ではなくて、自分の内面に訴えかけてくるような、人間の怪物に近い感じです。心理的に追い詰めて、静かに近付いていくのが効果的だと思いました。

花怜は、まどかの中の友達(イマジナリーフレンド)なので、怪物とは反対の存在です。そのギャップをどうやったらより大きく表現できるのか、それぞれの役を調節して、違った一面を出せるよう意識しました。

花怜役と怪物役を同じ時間帯に撮影することがあり、髪型も全部違うので、髪型が仕上がってからでないと、気持ちを切り替えできない感じで、悩みながら気持ちを作っていきました。


───怪物を演じるということで、ホラー映画を観たりしましたか?

片山:ホラー映画は全然無理で、3日くらい寝れなくなります(笑)。小さな頃から文学小説に触れる機会が多かったので、今回も、観るのは苦手なので、怪談とかの短篇小説を読みまくりました。笑ってみてはどうかという着想も小説から得たものです。


【ひなたくんの声を担当して】

───現場では、どんなふうに撮影されたのですか?

aharamadoka-川久保まり-240-1.jpg

川久保:カメラに写らないぎりぎりの場所に、台本を持ちながら立って、雰囲気と距離感を感じながら、自分が花になって、話しかけている気持ちで声を出していました。


───川久保さんにとっての、ひなたくんのイメージは?

川久保:小学生ぐらいの、少年っぽいイメージです。でも、花の一生はすごく短いので、短い人生をすごく真剣に、一生懸命生きています。元気なときには、少年の高い声に戻ったり、自分の中でパターンを幾つか持って、いつも考えながらやりました。

アニメとか映画の吹替えでは、目の前に画面があって、それに慣れているのですが、今回は、目の前に見えているのは女優さんたちです。物語を想像する、その想像力の中に自分を持っていきながらも、今、目の前に見えている現実に合わせながらセリフを言うのは、バランスとか難しく、すごく頑張りました。

 

【まどかとひなたくん】

───ひなたくんは、どんな存在でしたか?

aharamadoka-西村花音-240-2.jpg

西村:ひなたくんの存在はとても大きかったです。ひなたくんと出会ってから、まどかの内面も変わっていきます。出会った当初は、こいつなんやねん、みたいな感じでしたが、段々、ひなたくんとの関係も変わっていって、ひなたくんもいろいろ抱えていることがわかり、「まどかの家に庭ある?」と尋ねた言葉が、まどかにとっては、ひなたくんの決意の言葉に聞こえ、この言葉はまどかにとっても、ひなたくんにとっても、つらかったと思います。ひなたくんと庭を見ながら、話をするシーンは、泣きそうなくらい心が痛んで、そのあとのシーンでは、本当に号泣してしまいました。そのシーンが一番緊張していたので、事前にいろいろ考えて、段取りのときは不安でしたが、泣いてしまって、いろんな考えがどこかにとんでいってしまい、本番はすっとまどかになれて、自分自身に怒ったり、自分のことのように演じられました。

 

【印象深いシーン】

───どんなシーンの撮影が、一番印象深いシーンになりましたか?

西村:クライマックスのシーンやひなたくんが亡くなるシーンはもちろんですが、校長先生との掛け合いのシーンが本当に楽しかったです。特に地震の撮影は、カメラの撮影の仕方が面白すぎて、校長先生と二人とも笑ってしまってNGを出しましたが、楽しかったです。校長先生を演じる西出明さんは、大先輩で緊張しましたが、フレンドリーで、たくさん話しかけてくれて、気持ちの切替えとかアドリブとか、演技について学ぶことも多く、緊張がほぐれました。最後のお母さんとの食事のシーンもすごく好きです。お母さんを演じる泉希衣子さんとは、一度共演したこともあったので、信頼感があって、落ち着いて楽しく演じられました。


aharamadoka-片山瑞貴-240-2.jpg片山:怪物役としては、神社でのまどかに近付くクライマックスのシーンが、私にとっては撮影1日目だったので、すごく記憶に残っていて、こんな感じだと演技の感覚をつかむきっかけになりました。花怜役としては、まどかに電話をする声だけのシーンがあって、川久保さんから学ぶことも多く、勉強になりました。


川久保:ずっと少年の声がしたくて声優になったのですが、今まで、吹替では、強い女性の声が多く、少年の声を試しても、そういう声なら結構いるみたいな感じでした。今回、監督や川村さんから、アニメじみた声は要らない、実写のみんなが動いている中での生きた声がほしいから、オーディションで私を選んだと言ってもらえて、自信を持てました。役としても、物語を重くさせずになごます雰囲気のキャラをセリフとして表現しようとしました。まどかに、ずっといてねと言われたシーンは恋人のような雰囲気になりながらも、心が繋がった、すごく好きなシーンです。
 

aharamadoka-inta3-500-1.jpg

【本作について】

西村:ファンタジー要素が入ってくるところ、ちょっとおもしろいシーンが入っているのが、個人的にめちゃ好きですが、どのシーンも監督といっぱい相談して、思い入れがあります。最後のほうは全部やりきれたという感じで、いい作品になったと思います。


片山:演じるというのは初めてだったので、違う人間になりきって目線を動かしてみるとか、物事を考えてみるという仕事に携わってみて、とても奥深いと思いましたし、もっと挑戦したいと思います。今回、リラックスして演技できたのは、キャストもスタッフもみんな、いい人ばかりで、監督を中心にあたたかい雰囲気で、勉強とかで追い詰められていた時でも、撮影現場に行くのは楽しみでした。


川村:脚本は書きましたが、実はセリフにはあまりこだわりはなく、セリフよりもアクションのほうが重要で、セリフは飛んだり、忘れてしまったりしてもかまわないという考えは、監督と共通しています。何を見て、何を思っているかがわかったら、セリフは要らない、絵はできる、視線とアクションがそろったらいいと思っています。


インタビューは以上です。
 



aharamadoka-500-3.jpg映画初出演で主演の西村さんは撮影当時14歳。衣笠監督いわく、オーディションの時には、普通、気に入られたいとか、何かやってやろうという欲が出てくるものだけれど、西村さんは、それがなく、きちんと自分で考えて、自分なりに一生懸命、ストレートに言ってることが伝わってきて、かつ、こちらが何を言いたいのかをきちんと受け止めてくれたそうです。そんな彼女に、撮影2日めで、いきなりクライマックスの撮影ということで、現場では心配の声も少しあったそうですが、監督は、西村さんのあの表情、あのシーンが撮れた時は、嬉しくなって思わず、俳優さんって楽しい仕事ですねと言って、この映画は、あとはこのクライマックスに向かって進んでいけばいいから、これでいけると確信されたそうです。


片山さんは、怪物役だけではなく、長岡花玲という、まどかの想像上の友達でもあり、現実のクラスメートでもあるという、難しい役を演じました。脚本上は、現実の花玲と、まどかが想像(妄想)している花玲とは、描き分けられていますが、映像になると見分けがつかず、監督いわく、観客が見ている映像がどちらかは、むしろ観客を惑わすしかないと思ったそうです。


映画初出演の若い二人が、ベテランの監督やスタッフ、共演者の、ざっくばらんであたたかい雰囲気に支えられ、演技に挑戦して、自分で考え、意見を言って、大いに学びながら、撮影を通じて、大きく成長されたことを、インタビューを通じて実感しました。これからの活躍が大いに期待される西村さんと片山さん、お二人の輝きをぜひ劇場でご覧ください。


(伊藤 久美子)


<作品情報>

『あはらまどかの静かな怒り』

(2023年 日本 88分)
監督:衣笠竜屯
脚本: 川村正英、衣笠竜屯 
出演:西村花音、片山瑞貴、川久保まり、西出明、栗田ゆうき、泉希衣子、夢香
製作・配給: 
神戸活動写真商会 港館
 (C)衣笠竜屯

公式サイト→https://aharamadoka.minatokan.com/

2023年11月11日(土)~17日(金)~元町映画館プレミア公開


 

aharamadoka-550.jpg


全編神戸ロケで撮影され、主役のあはらまどかを演じた映画初出演の中学生、西村花音さんが圧倒的な輝きを見せ、大人になることへの期待と不安を繊細に、ファンタジーを織り交ぜながら描いた『あはらまどかの静かな怒り』がいよいよ11月11日から神戸の元町映画館でプレミア公開されます。

「映画制作の教科書」シリーズの著者でもある衣笠竜屯監督と、監督と共同で脚本を執筆されたプロデューサーの川村正英さんに、映画への思いを存分に語っていただきましたので、ご紹介します。


【企画について】

───この映画の企画は、どんなところから始まったのですか?

川村:『シナモン初めての魔法』の続編を作ろうという話になった時、たまたまアッバス・キアロスタミ監督の『友だちのうちはどこ?』(1987年)を観ていて、監督が、今の日本の少年少女達が置かれている状況と酷似していて、これを日本でやりたいと言い出したんです。

監督:『友だちのうちはどこ?』は、大人達から、ちゃんと宿題しなさい、忘れちゃダメと言われて、子ども達は問答無用でやっていたのに、主人公の少年は、隣の席の友達のノートを間違えて家に持って帰ってしまう。友達は、今度宿題を忘れたら退学と先生から言われたばかりで、主人公は友達にノートを返すため、友達の家を探しにいく。結局見つからず、本当はいけないことだけれど、友達の宿題を代わりにやってしまう。ラスト、先生にわからないように、こっそり友達に、宿題やってあるからねと言ってノートを渡し、事なきを得ます。子ども達は仕付けなければいけないという大人達のモラルに反抗して、子ども達が優しさで戦う“大反抗物語“に見えました。

aharamadoka-di-240-1.jpg

    (衣笠竜屯監督)

【思春期の子ども達】

───それで、子どもの映画を作ろうという形になっていったのですか?

監督:人を好きになるってどういうことか、子どもが学んでいく話にしたかったんです。『シナモン初めての魔法』は、結婚して自分の家庭をつくるのに恐怖や迷いがあって、それを乗り越えていく話でした。シナモンのシリーズは自分の世界から一歩踏み出して社会に出て、成長していく話をやっています。

思春期の時に恋愛するのは、家庭から少しはみ出したところへ行かなくちゃいけなくて、両親にも秘密で、最初は怖いものです。私の中でも、小学校高学年ぐらいの時に、女の子を可愛いなと思うこと自体が、自分で怖かった時期があります。成長していいのかという怖さ、モラルから外れて秘め事を自分の中に持つ感覚です。どうやってこの思春期を乗り越えていくのかというのは、この映画で一番やりたかったことです。

 

aharamadoka-500-1.jpg

【まどかと母親】

───まどかは、母親から、喧嘩するな、人に嫌われるなと押し付けられているようですね?

監督:私が生まれてきた世代は反抗期があって、大人は間違ってる、きたないと思うことをエネルギーにして、親から離れて、自分の恋を見つけて、段々大人になっていけました。でも、今は、大人は優しくなっているから、そういうことができなくなっていて、成長することが大変だと思います。

だから、誰かを好きになったら、親の言うことは聞かなくていい、突き進んでいいと言ってあげたい。親に反抗するのも、実は親が悪いんではなくて、親が悪いと思い込んでいるだけというのも、少し言いたかったことです。まどかの母親も悪気があったわけではなく、毒親ではないですね。

aharamadoka-500-6.jpg

【謎の存在、ひなたくん】

───ひなたくんは、初めから花という感じだったんですか。どんなキャラクターとして作られたのですか。

監督:『友だちのうちはどこ?』の最後に出てくる、ノートに挟まれた花を喋らせようみたいな話になった覚えがあります。まどかの同級生の男の子、初めての異性みたいなイメージです。だから、声変わり前の男の子の声ということで、初めから女性に声をお願いしようと思っていました。

まどかはそれまで自分が同性にしか興味がないと思い込んでいて、友達になりたいというのと、異性に魅かれるというのとの違いがまだわかっていません。小学生の頃、一緒に遊んでいた同級生が、中学になって、急に異性になるという感じです。

ひなたくんは自分の子孫を残したいという思いで頭がいっぱいで、まどかには、最初理解できません。でも、実は、子どもを残すというのは、すごくいいことだと気付く。そのことに気付けるかどうかが、まどかにとって、モラルからはずれて、いい子でいられなくなるという最初のハードルでした。

映画の後半、まどかとひなたくんが二人で部屋にいるところは、まどかがプランターとかたくさん買い物してきて、一緒に暮らそう、新しい生活が始まるという、実は同棲です。

川村:1970年代、日本映画で同棲ものが流行りましたが、あの感覚です。

監督:子どもの頃、そういうのを観るとドキドキして面白かったんですよね。例えば「ケーキ屋ケンちゃん」というテレビドラマシリーズも、たまにちょっと恋愛ものがあって、ケンちゃんが恋するとかすごくドキドキして楽しかったことを覚えています。まどかが、怪物から逃げて家に戻って、そこからどうして立ち上がれたのか。自分のためには頑張れなくても、ひなたくんのためなら頑張れるんです。

 

aharamadoka-500-2.jpg

【神戸の街から異世界へ】

───住宅街で、まどかが一歩踏み出すと、カットが変わって、異世界でしたね?

川村:『千と千尋の神隠し』(2001年)でしたら、ドライブに行って、トンネルを抜けたら異世界があるという、現実と異世界に境界がありますが、シナモンの映画シリーズでは、地続きでいくというか、道を歩いていたら異世界があるという。

監督:神戸の特に山の手のほうは、道をちょっと曲がると、変なほうに行ってしまいそうな感じがします。街から山のほうに行ったら、変なところに出ちゃったという感じにしたかったんです。まどかの家は海沿いの平坦なところにあって、山の上のほうに上っていくと、変なところに迷い込むという設定にしました。

川村:坂道を歩いていると、突然シナモンが通り魔のように現れて変な世界に連れて行かれる女の子という発想について、よく思い返してみると、『侠女』とかキン・フー監督の武侠映画の影響だと思い当たりました。まじめに生きていた青年が山に修行に行って、ある日、怪物じみた存在と出会って、異世界にさらわれ、怪物同士の闘いに巻き込まれてしまう感覚だと自覚して、腑に落ちました。

監督:昔からファンタジー小説や児童文学によくある話で、『スター・ウォーズ』も田舎の少年が宇宙戦争のヒーローになってしまう。人里から離れて、変な異世界に迷い込む、まぎれこむという感じ、日常のボタンをちょっと掛け間違えて、おかしなことになるという展開です。

 

aharamadoka-satsuei-500-2.jpg

(撮影風景①)

【脚本の工夫】

川村:まどか役で映画初主演の中学生の西村花音さんが演技をしやすくなるよう、脚本で心がけていたことがあります。

出待ちをさせないことです。物の影(カメラのフレームに入ってこないところ)に隠れて待っていて、カメラは舞台を撮り、そこに出てくるとか、あるいは、誰かが喋っているところに、カメラの外側から入ってくるという、いわゆる「出待ち」を俳優にさせることがありますが、この出待ちを絶対させませんでした。

これはヒントがありまして、大島渚監督の『小さな冒険旅行』(1963年)は、幼稚園児ぐらいの男の子が初めてのお使いで町に出るという映画で、大島監督ご本人か映画評論家が言われたか記憶が定かでないですが、子役に出待ちをさせていないから、ちゃんと子どもが演技できている、子どもに出待ちをさせると変に準備してしまって段取り芝居になってしまうと。

監督が用意、スタートと合図をする前から、すでにカメラは西村さんにぴったりフォーカスをあて、そこからいきなりスタートの声がかかる、こういうのは演じる側にとっては苦しいことで、まどかの気持ちがわかるねと西村さんと話していました。
 

aharamadoka-satsuei-500-1.jpg

 (撮影風景②)

【テーマをどう伝えるか】

───はじめホラーがあって、ファタンジーもあって、全体としては冒険映画のような気がしました。

川村:クッキーの妖精(シナモン)とか、花(ひなたくん)が喋ったり、ファンタジーの方向にいっているので、監督の熱いメッセージ、社会的なプロテストがどれだけ観客に届くか気になるところではあります。

監督:ストレートに本当のことを言ってしまうと、大人は汚いという、きつい映画になってしまい、それでは、本当に届けたい子ども達には届きませんので、ファンタジーを張りつけています。

『友だちのうちはどこ?』はうまいことやったなあと思います。イスラム教圏でも、ファンタジー映画とか児童映画としてつくる分なら、こんなことができるのだとびっくりしました。イスラム原理主義に対する批判で、杓子定規にコーランとかルールを守ることばかりだと、人間、腐ってしまうというのが言いたかったと思います。大人同士も本当は優しい人なのに、いがみあってしまう。設定はしているけれど、語らなくていいと思います。

 

aharamadoka-500-5.jpg

 (撮影風景③)
 

───感じてくれる人が感じてくれたらいいということですか?

監督:感じなくても、におうじゃないですか。『友だちのうちはどこ?』を初めて観た時も、私は何に感動してるのか、最後に泣きそうになったのはなぜか、全然わかりませんでした。でも、10年位してから観た時に、ああ、そういうことだと思ったんです。14、15歳の一番感受性が強い時に観た映画は心にいつまでも残っていますが、その時には、なぜ感動したのかはわからない。

本作もそんな感じです。14、15歳の子達には、心が動いたとき、どうして心が動いたかはわからなくていいと思います。わからないほうが効きますよ。映画だって、わかったらすぐ忘れてしまいます。どうして感動したのかわからないほうが、一生ずっと残ります。ずっと考えて、10年、20年経ってやっとわかる。


川村:今の日本には妙な同調圧力があると思います。特に、最近の若者は、目立つことや、人の目を極端に恐れていて、自分は他人からどう見られているか、常に気にして生きているように見えました。個性を排除して、いわゆる量産型な枠の中に収まりきろうとする傾向が見られると監督と話していました。

監督:ネットとかで皆の意見がたくさん聞こえるようになり、子どもの時からそこにさらされていると、 皆によく思われなきゃいけないという意識が強すぎて、今の若い人は喧嘩しません。若い人と話していると、いい人になろうというのではなく、悪い人になりたくないという思いが強すぎて、自分がどう生きたいのかよくわからなくなっているように感じます。恋をしようともあまり思っていない印象を受けます。

川村:若者を励ます映画をつくろうという志でつくった映画ですが、三十代、四十代の、社会に出て苦労している人の心にささる映画ではないかと思います。

監督:十代の問題を抱えたまま大人になった人が多いと思いますので、それはそれでいいのではないかと思います。

 

(インタビューは以上です。)



シナモンという妖精や、妖精学校の校長先生が登場するファンタジーや、女子中学生の姿をした怪物が出てくるホラーも織り交ぜられ、混とんとした世界は、まさに思春期ともいえます。一人の少女が、ひなたくんやシナモン、校長先生との出会いを通して、怪物とどう向き合っていくのか。冒険でもあり、成長の物語です。観客のみなさんも、かつて十代の頃、同じような心の体験があったことを思い出して、あのとき自分が乗り越えてきたものは、何だったんだろうと考えてもらえるような作品です。心のどこかに響くこと間違いありません。ぜひ劇場でご覧ください。


(伊藤 久美子)


<作品情報>

『あはらまどかの静かな怒り』

(2023年 日本 88分)
監督:衣笠竜屯
脚本: 川村正英、衣笠竜屯 
出演:西村花音、片山瑞貴、川久保まり、西出明、栗田ゆうき、泉希衣子、夢香
製作・配給: 
神戸活動写真商会 港館
 (C)衣笠竜屯

公式サイト→https://aharamadoka.minatokan.com/

2023年11月11日(土)~17日(金)~元町映画館プレミア公開


 

DSCN0256.jpg
 
水上恒司、筋トレで落ち込む倉悠貴を見て「優越感に浸ってました」『OUT』特別上映会 in 大阪(2023.11.4なんばパークスシネマ)
登壇者:倉悠貴、水上恒司、品川ヒロシ監督 
 
累計発行部数650万部を突破するヤンキー漫画「OUT」が、『ドロップ』で大ヒットを打ち出した品川ヒロシによる監督・脚本で実写映画化される。11月17日(金)からの全国ロードショーに先立ち11月4日(土)、なんばパークスシネマで行われた映画『OUT』の特別上映会では、上映後に井口達也役の倉悠貴、副総長・安倍要役の水上恒司、品川ヒロシ監督が登壇した。
 
地元大阪での舞台挨拶に緊張の面持ちで挨拶をし、「大阪のお客さんはあったかいですね」とほっこりする倉悠貴。そのあとで水上恒司が、「緊張している倉くんの隣だと緊張がほぐれます」と挨拶すれば、品川ヒロシ監督は短く刈り込んだヘアスタイルで「JO1の品川です」と挨拶し、水上と品川監督が倉に愛あるツッコミを入れる、笑いの絶えない舞台挨拶となった。その模様をご紹介したい。
 

 

DSCN0234.jpg

―――倉さんと水上さんの共演ははじめて?
倉:初対面でご挨拶したときは水上さんの腰が引くかったのに、どんどん態度が大きくなっていって。(映画で演じた副総長の)要みたいな感じで接してくるのでちょっと怖い(笑)
 
水上:彼にはそれぐらいの接し方がちょうどいいんです。撮影中には僕にとってそれが(演じる)ヒントになればいいと思ったし、ちょっとでも倉さんのヒントになればと思って、心地よくいじめていました。
 
倉:終わってもずっと同じ態度なので、怖いです。取材では(水上さんが自分のことを)嫌いと言われますけど。
 
水上:嫌い、嫌いも好きのうちです。
 
品川:いつもこんな感じです。水上くんがなんか言うと、倉がなんかブツブツ言っている。今日も倉が「人が少ないから、前よりはしゃべれるな・・・」とか、「緊張してきた・・・」と言うので、「緊張しないで!」という感じで接していますね。
 
倉:東京のパパみたいな感じで、家が近所なので遊びに行かせてもらっていますし、品川さんに対しては緊張しなくなりました。
 
品川:トボトボと現れて、トボトボと去っていくんだよね(笑)
 
 

DSCN0230.jpg

―――アクションの迫力がすごかったですね。
倉:今まで全く鍛えたことなかったので体を作るところからはじめたのですが、品川さんが一緒にジムに通ってくれたんです。ほぼ毎日、メニューを組んでもらいました。他のみんなも聞きつけて、大勢で通っていましたね。
 
水上:品川ブラザーズみたいな感じで(みんなで)ウェーっと声を上げらながらやっているんですよ。そういうのを見て、なんか可笑しいなと思っていました。
 
品川:おれと水上くんより重量が軽いのを持ち上げるけれど「こんなの持てないよ」と。
僕がアメ、水上くんがムチという感じでフォローしていました。
 
水上:落ち込んでいた倉くんを見ながら、優越感に浸ってました(笑)
 
―――実際にアクションシーンを演じるのは大変でしたか?
倉:やるしかないので、反復練習をしていました。必死になって毎日、みんなに負けないようにやっていました。
 
品川:アクションといいつつお芝居だから、高度なことをやっているけれど、気持ちを入れて芝居から入っていけばやっていけるよと、アドバイスしていましたね。
 
水上:キャンペーンが始まってから、品川さんやアクション監督らの鼎談を読んだのですが、アクションをただの形ではなく、なんで殴るのだろうとか、殴った人しかわからない痛みや、殴られたときの怒りを込めたと書かれていたんです。そして、それは暴力を肯定したくなかったからだと。それを知って、こういう座組でやれてよかったと思いました。
 

DSCN0250.jpg

―――アクションシーンではどんな指示を出したのですか?
品川:絶対にパンチが当たっているように見せたかったので、それを研究し、痛さが見えるように、頑張ってつくりました。ハリウッドだと全てCGだけど、ちょっとアナログ、半分CGというのを頑張って考えたので、具体的なやり方は教えたくない。続編ができたら、もっとすごいことを考えたいと思います。
 
―――品川組はいつもこんな(和やかな)雰囲気ですか?
品川:若い子が集まる現場なので、僕もできるだけみんなと同い年ぐらいの気持ちでいたいという思いで、一緒にいましたね。
 
倉:いい緊張感を持ちながらも、部活みたいな感じ。ライバル心もあるし、友情もある。
みんな同世代で、あいつには負けたくないという気持ちがありながらやっていたんじゃないかと思います。
 
水上:僕自身が同世代の方々と作品を通して一緒にやる作品が少なかったので、同級生の倉さんと一緒に演技をできた時間が貴重でした。
 
―――最後に、メッセージをお願いします。
倉:続編をできるように広がっていけばいいなと思っています。面白い映画なので、どんどん広げてくれたらうれしいなと思います。
 
水上:みなさん、焼肉食べたいでしょ?MTKG(明太子卵かけご飯)があるかわからないけれど、「情熱ホルモン」にぜひ行ってください
 
品川:セリフも冗談っぽく言っていることが後々になって絡んできたり、何度か見ていると気づくところもあると思います。この後漫画を読んでいただき、合わせて楽しんでいただけると嬉しいです。
 
DSCN0261.jpg
※フォトセッションごに品川監督が舞台上で倉さん、水上さんと自撮り後のリラックスしたオフショット
 
(江口由美)
 

<作品情報>
『OUT』
(2023年 日本 101分)
監督・脚本:品川ヒロシ 
原作:井口達也/みずたまこと『OUT』(秋田書店「ヤングチャンピオン・コミックス」刊)
出演:倉 悠貴 醍醐虎汰朗 与田祐希(乃木坂46) ⽔上恒司
與那城 奨(JO1) ⼤平祥⽣(JO1) ⾦城碧海(JO1)
 小柳 心 久遠 親 山崎竜太郎 宮澤 佑 長田拓郎 仲野 温
じろう(シソンヌ) 大悟(千鳥)   庄司智春(品川庄司)/渡辺満里奈 杉本哲太 
11月17日(金)よりなんばパークスシネマ他全国ロードショー
 

oshorin-bu-11.3-550-2.jpg

今では日本産メガネの95%を生産している福井県ですが、明治時代にこのメガネ産業をゼロから立ち上げた兄弟がいました。豪雪地帯のため冬は農作業ができず、収入の道がなくなる村の状況を変えようと奮闘したのが、増永五左衛門(小泉孝太郎)と幸八(森崎ウィン)の兄弟です。そして、その二人を信じて支え、見守り続けた五左衛門の妻・むめ(北乃きい)を主人公に、挑戦と情熱、家族の愛の物語を描いたのが、映画『おしょりん』です。10月20日(金)より福井県で先行公開されるや、登場人物たちの熱い情熱に満ちたストーリー展開に涙する観客が続出!満を持して11月3日(金・祝)より角川シネマ有楽町ほかにて全国公開となります!


oshorin-pos.jpg全国公開の初日となる11月3日(金・祝)、本作の主演の北乃きい、共演の森崎ウィン、小泉孝太郎、そして監督の児玉宜久が登壇の公開記念舞台挨拶を実施致しました。


熱く感動するストーリー展開は勿論、もうひとつの見どころとして話題になっているポイントが、本編の中での北乃きいと森崎ウィンと小泉孝太郎の純潔な恋模様。成功物語とは別の一面が、本編の冒頭からラストまで貫かれており、三人が互いを心から思い合う姿に、女性客を中心に共感の声が多数届いており、その撮影裏側や撮影エピソードまで、たっぷりお話いただきました! またそれぞれに今後挑戦したいことなどを語っていただき、会場は大盛り上がり!
 


◆日程:11月3日(金・祝)

◆会場:ユナイテッド・シネマ豊洲(江東区豊洲2-4-9 三井ショッピングパーク アーバンドック ららぽーと豊洲 内)

◆登壇者:北乃きい、森崎ウィン、小泉孝太郎、児玉宜久監督(敬称略)



人生を懸けてメガネ作りに挑んだ人々の情熱と愛の物語『おしょりん』が、ついに全国公開。11月3日には都内映画館で公開記念舞台挨拶が実施され、主演の北乃きい、共演の森崎ウィン、小泉孝太郎、そして児玉宜久監督が出席した。


oshorin-bu-11.3-kitano-240-3.jpg明治時代に麻生津村で眼鏡産業の礎を築いた増永五左衛門(小泉)、幸八(森崎)兄弟の挑戦と、2人を支え続けた五左衛門の妻・むめ(北乃)の姿を描く本作。物語の舞台・福井県での満席スタートから早2週間が経つが、監督&キャスト陣も福井県での舞台挨拶に参加した。


福井県での盛り上がりを目の当たりにした小泉は「映画館の中も外も熱気が凄かった。この映画はオール福井ロケなので、福井県の方々の協力がなければできませんでした」と現地の熱狂を報告。森崎は「観客の歓声が大きくて、僕らの声が通らなかった…いや、ちょっと話を盛りすぎか?」と笑いつつも大ヒットに嬉しそう。北乃は「自分でお土産を買わなくていいくらいたくさんの名産品をいただいた。帰りは荷物がパンパンで」と福井県民の愛に感謝。児玉監督は「福井をこのように映してくれてありがとうという言葉をいただきました」としみじみしていた。

oshorin-bu-11.3-morisaki-240-2.jpg

 

夫婦や兄弟という関係に加え、淡い恋心も交錯するむめ、幸八、五左衛門のプラトニックな三角関係も本作の見どころ。この関係性に小泉は「一歩間違えればドロドロ!」と笑わせつつ「そうはならずに美しい三角関係を絶妙に捉えてくれた児玉監督には感謝です」と手応え。北乃は撮影中の森崎&小泉の様子について「カメラが回っていないところでも役柄のままでいらしたのでやりやすかった」と言うと、森崎から「今も横にいる小泉さんを見てないね!」という指摘が。


 

 

oshorin-bu-11.3-koizumi-240.jpg

というのも北乃にとって小泉は、同じ横須賀出身の大先輩だからだ。北乃が「地元が同じだし、子どもの頃から見ているので…。しかも小泉(純一郎)さんの息子と言ったら…。今でもちょっと緊張する」と地元の名士的大先輩への尊敬の念を口にすると、無邪気な森崎は「急に縦社会感ハンパないね!立ち位置交換しようか?」と恐縮する北乃を面白がっていた。当の小泉は、撮影中はあえて距離を取っていたと明かし「増永五左衛門は明治時代の亭主関白な男を絵に描いたようなキャラクターなので、撮影中は距離があってもいいのかなと。それが今のきいちゃんのコメントに繋がったと思う」と苦笑いだった。


<挑戦と情熱>を描いた作品にちなんで、これから挑戦したいことをそれぞれ発表。森崎は「ミュージカル映画を撮りたい。ただし最初から監督を務めるのは難しいと思うのでプロデューサーとか?ミュージカル映画を製作する過程から携わりたい」と意外な夢を明かすと、北乃は「私はミュージカル映画に出たい。日本だとミュージカル舞台はあるけれど、映画が少ないので、いつも“映画で出来ればいいのに”と思っていたので」と返答。これに森崎が「マジで!?」と喜ぶと、北乃は「老婆Aでもいいから出たい」と公開ラブコールで、森崎を「わかりました!」とやる気にさせていた。


一方の小泉は「僕はゴルフが好きで、今年ベストスコアで76が出た。80台とは違う景色があったのでもっと先を見てみたい。パープレイが夢。全部パーに挑戦したい」と具体的な挑戦を明かしていた。


最後に主演の北乃は『おしょりん』について「私たちが全力で撮影に挑んで、沢山のメッセージを込めて出来上がった映画です。撮影地・福井県も素敵なところなので、福井に行ってみたいと思ってもらえたら嬉しいです。一人でも多くの方に『おしょりん』を広めてください」と全国での大ヒットを祈願していた
 


<ストーリー>

oshorin-550.jpg

時は明治37年、福井県足羽郡麻生津村(現・福井市麻生津)の庄屋の長男・増永五左衛門(小泉孝太郎)と結婚したむめ(北乃きい)は、育児と家事で忙しい日々を送っていた。ある日、五左衛門の弟の幸八(森崎ウィン)が勤め先の大阪から帰郷し、村をあげてメガネ作りに取り組まないかと持ち掛ける。今はほとんど知られていないメガネだが、活字文化の普及で必ずや必需品になるというのだ。成功すれば、冬は収穫のない農家の人々の暮らしを助けることができる。初めは反対していたが、視力の弱い子供がメガネをかけて大喜びする姿を見て、挑戦を決めた五左衛門は、村の人々を集めて工場を開く。


だが、苦労の末に仕上げたメガネが「売り物にならない」と卸問屋に突き返され、資金難から銀行の融資を受けるも厳しく返済を迫られ、兄弟は幾度となく挫折する。そんな二人を信じ、支え続けたのが、決して夢を諦めない強い心を持つむめだった。彼女に励まされた兄弟と職人たちは、“最後の賭け”に打って出る──。


<作品情報>

出演:北乃きい 森崎ウィン 駿河太郎 高橋愛 秋田汐梨 磯野貴理子 津田寛治 榎木孝明 東てる美 佐野史郎 かたせ梨乃 小泉孝太郎
監督:児玉宜久 原作:藤岡陽子「おしょりん」(ポプラ社)
脚本:関えり香 児玉宜久 
エンディング曲:MORISAKI WIN「Dear」(日本コロムビア)
製作総指揮:新道忠志 プロデューサー:河合広栄
ラインプロデューサー:川口浩史 
撮影:岸本正人 
美術:黒瀧きみえ 装飾:鈴村高正 衣装:田中洋子 
制作プロダクション:広栄 トロッコフィルム 
配給:KADOKAWA 製作:「おしょりん」制作委員会
©「おしょりん」制作委員会
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/oshorin/


(オフィシャル・レポートより)
 
 

月別 アーカイブ