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2022年4月アーカイブ

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 『孤狼の血』シリーズの白石和彌監督最新作、『死刑にいたる病』が、5月6日(金)より梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinema神戸国際他全国公開される。
 原作は、「ホーンテッド・キャンパス」の櫛木理宇。24件の殺人容疑で逮捕され、そのうちの9件の事件で立件・起訴、死刑判決を受けた榛村大和(阿部サダヲ)が、犯行当時営んでいたパン屋の客で大学生の雅也(岡田健史)に手紙で最後の1件の免罪を証明してほしいと依頼する。それまでの用意周到な犯行とは違う手口の殺人事件を追ううちに、雅也がたどり着いた衝撃の真実とは?柔和な態度と細やかな気配りで相手と信頼関係を築きながら、自らの餌食にしてしまうシリアルキラーの榛村と、彼に引き寄せられる雅也から眼が離せないサイコサスペンスだ。
 本作の白石和彌監督にお話を伺った。
 

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■とにかく魅力的なシリアルキラー、榛村大和

――――原作で一番魅力を感じた点は?
白石:原作者の櫛木理宇先生は、作家になる前にシリアルキラーのウェブサイトを作っておられた筋金入りのシリアルキラー好きなのですが、小説家としてデビューしてからあまりそこに触れる作品を手がけてこられなかった。「チェインドッグ」(「死刑にいたる病」の改題前タイトル)ではじめて登場させているので、櫛木先生が理想とし、そのとき推しのシリアルキラーを全部詰め込んでいるのが主人公の榛村大和なのです。
 実際に日本でシリアルキラーはいませんが、本当に日本という土地に根付いているかのような人物造形ですし、とにかく榛村大和が魅力的なのでまずは見てみたい。榛村に巻き込まれて話がどこに行くかわからない感じに強く惹かれ、これはやっておかないとダメだなと思いました。
 
――――今回、脚本は初タッグとなる高田亮さんですね。
白石:荒井晴彦監督の『火口のふたり』の試写に招かれたとき、偶然、高田さんも同じ回で観ておられ、試写の後、いつも東映の方に連れていってもらっているお店に、「いいとこありますから、行きましょう」とお誘いしたんです。高田さんと初めて話をするなかで、こういう面白い方と仕事をしたいなと思いました。ちょうど『死刑にいたる病』の映画化について考えていたころだったので、高田さんに脚本をお願いできてよかったです。
 
 

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■阿部サダヲの「底知れない眼」をもっと見たかった

――――高田さんに書いていただくにあたり、何かリクエストしましたか?
白石:衝撃的な24の事件を全て語ると時間がかかるので、最初は『親切なクムジャさん』(パク・チャヌク監督)のように冒頭に固めたらどうかと提案し、高田さんも了解されたのですが実際に書いてみるとうまくいかず、そこからお互いにキャッチボールを重ね、高田さんの良さが引き出せるようなものに着地していきました。原作では榛村の魅力を語る上で、彼の両親についての記述にページを割いていたのですが、今回は阿部サダヲさんの魅力があれば、それで十分観客を惹きつけられると思い、できるだけ現在の話に主軸を置きました。
 
――――なるほど。最初から榛村役は阿部さんと決めておられたのでしょうか?
白石:『彼女がその名を知らない鳥たち』で、阿部さんの眼がときどき真っ黒になり、底知れない感じを覚えました。それは阿部さん演じる陣治と蒼井さん演じる十和子が電車に乗り、イケメンを突き飛ばした後、満員電車だったのがいつの間にかふたりきりになり、陣治が十和子を見るというシーンです。「阿部さん、5分前に人を殺してきた眼で、十和子のことを見てもらっていいですか」とオーダーし、陣治の寄りのショットを撮ったときの阿部さんの眼が、僕の中でこびりついて離れなくなった。本当にときどき思い出すような眼をしていました。今回脚本で榛村のことを書いてもらっているときも、そんな阿部さんの眼が思い浮かび、あの眼をもっと見てみたいと思ったのです。
 
 
 
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■雅也とシンクロする岡田健史

――――その闇まで引き摺り下ろされるような榛村の眼に立ち向かう雅也を演じた岡田健史さんも大健闘されていました。岡田さんの代表作になりますね。
白石:この作品が初主演作です。経験豊富でこなれすぎているよりは、ちょっと戸惑いながら取り組んでもらった方が、彼が演じる雅也とシンクロするのではないかと考えました。岡田さんは青春映画にも多く出演されていますが、陽と陰のどちらかといえば、陰の要素の方が強いように感じたのです。初対面のときも、すごく真面目で、曲がったことが大嫌いで、とても頑固な雰囲気が漂っている。阿部さんが吸い寄せられるような眼なら、岡田さんの眼は真っすぐに迫ってくる。その出会いのときの感覚が大きかったですね。
 
――――教師の父の期待に応えられず、三流大学に入った雅也が、学校でも孤立する様子が強く印象付けられるシーンも何度か登場します。
白石:雅也は他の大学生と生きている時間のスピードが違うというを表現したくて、雅也が歩く時はノーマルスピードで撮影し、後ろの大学生たちはよく見るとスローモーションになっています。スローモーションのところはカメラが2倍で動かなければいけない。それをノーマルスピードに戻して雅也と同じスピードになるというとても面倒臭いことをやってました。最後にCGで合成するのですが、なんでこんなことを考えついちゃったんだろうと(笑)思うくらい大変なことになってしまって。
 
――――そんな孤独な雅也は、どんどん榛村に取り込まれたり、どこかでそれに反抗する変化を表現する演技が必要でしたが、白石監督から岡田さんにどんな演出をしたのですか?
白石:岡田さんはポイントを的確にプランニングしていて、「次はこうしたいです」と自ら提案してくれ、自分で考えをしっかり持って演技をしていました。雅也の恐る恐るという感じも非常に抑制の効いた芝居でちゃんと計算を演じていましたし、予想以上の手応えを覚えました。ほとんど僕からお願いすることはなかったです。素晴らしい役者になると思います。
映画においてイメージが固まりすぎていないということが、大きな武器になると最近感じています。阿部さんと共演経験がないというのも、出て頂く上で重要な要素でした。何度も共演の経験があるとそれはそれで、関係が出来上がっている利点はあると思いますが、面会室で久しぶりに会う緊張感は初共演の方が絶対に面白い。本人たちもお互いどんな芝居をするのかドキドキしていましたし、僕も不安と楽しみでよくわからない感情で面会室に臨んでいました(笑)。
 
 
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■中山美穂、岩田剛典が個性的な役をどう演じたのか

――――イメージが固まりすぎていない俳優が映画にもたらす力と共に強く印象付けられるのが、パブリックイメージのある俳優たちがその気配を消すかのような新境地に挑んでいることです。今回、雅也の母、衿子を演じた中山美穂さんはいかがでしたか? 
白石:子どもが母親に「土壁食べてたんでしょ?」と問い詰めるわけですが、実際、そんな会話したことないですよね。聞かれる母を中山美穂さんが演じてくださいました。中山さんは僕にとってずっと大切なアイドルなのはもちろん、頂点の景色を見た方ですよね。そんな方がこの役を演じたらみんな驚くだろうなと。松尾スズキ監督の『108〜海馬五郎の復讐と冒険〜』に出演されていたのを見て、やってくださる予感はしていました。実際に中山さんもすごく楽しんで演じてくださいましたね。榛村に触られたところは、心のかさぶたのように見えるといいなと思って演出しました。
 
――――謎の男を演じた岩田剛典さんも、贅沢な配役だなと。
白石:岩田剛典さんもスターオーラを消して、あっという間にこの作品世界に溶け込んでくれました。作り込み、彼のスキルや経験値の高さを感じました。岩田さんは『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』で日本アカデミー賞新人俳優賞にノミネートされたとき、テーブルが同じだったのでご挨拶し、ぜひ一緒にやりましょうとお話したのです。岩田さんは「『孤狼の血』じゃないのか!」と思われたかもしれませんが、ちょっとひねりをきかせて、今回謎の男として出演していただきました。でも、こうやって出ていただけたので、次は『孤狼の血』をとオファーしやすいですよね(笑)セリフや登場シーンはあまり多くないですが、追いかけたり、肉体的なパフォーマンスが必要な箇所もあったので、さすが岩田さんだなと、より大好きになりました。
 
――――阿部さんが演じるシリアルキラー、榛村には独特のスタイルを感じますが、白石監督とお二人で作り上げたのでしょうか。
白石:要所要所は相談しながらです。原作同様に、阿部さんには今回中性っぽい雰囲気でいきましょうと、最初の衣装合わせではスカートを履いてもらったりしました。最終的には、太いラインのパンツスタイルで、榛村独特の美学を表現しています。また、小屋を建てることができ、水門のあるロケーションを見つけられたのも大きかったですね。毎回ロケ場所からイメージが湧くことが多く、そこがいい場所を見つけられれば、映画がうまくいく可能性が飛躍的に上がりますね。今回も脚本上では川の設定でしたが、水門があるし、現場のスタッフたちがどんどん作り込んでいく。榛村が被害者とお別れするシーンですが、美しく撮りたいと、結構こだわっています。
 
 
 
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■シリアルキラーだが、何周かすると笑える榛村は「完璧な人」

――――シリアルキラーの物語である一方で、雅也と父との関係だけでなく、謎の男の子ども時代に出会った身近な大人など、トラウマを植え付けてしまう関係性も描いていますね。
白石:優しく近づいてきても優しい大人とは限りません。榛村のようなシリアルキラーは中々いないだろうけど、一つひとつの事件は実際に起こっても不思議ではない。ネグレクトやDVのニュースは毎日のように目にするわけで、社会との向き合い方は考えざるを得ません。ただ、この話はスリラーでもあるけれど、榛村目線で物語を反芻すると笑えてくる。だって映画館で高校生が入ってくるのを先に入って待っているんです。どんなリサーチ力だよ!と思いますね。榛村はパン屋をワンオペで経営しながら、毎日いろんな学生たちと仲良くなる努力をしている。一方で家に獲物がいれば、その相手もするわけですから、本当に忙しい人ですよ。例えシリアルキラーであっても自分の欲望を叶えるには努力が必要なんだなと(笑)。
 
――――榛村は、手紙の字もとても美しいですよね。あの字で丁寧に手紙を書かれたら、それがたとえ殺人犯だとはいえ、説得力がありました。
白石:そうなんです。演出部の松本さんが書いてくれたのですが、本当に今までたくさん勉強してきた几帳面な人の字ですよね。今回はスタッフ内で、匿名の手紙を書いてもらってオーディションをしたのですが、段違いに美しかったです。字は人を表すといいますから、榛村はたまたま人を殺さないと生きている実感をもてないだけで、実際は優しくて人当たりが良く、自分に素直で、純粋で、嘘をつかない。完璧な人です。たまたま社会とはうまくやっていけないだけなのです。
 
――――榛村と雅也の面会室のシーンが度々登場し、だんだんとふたりの関係性が変化していきます。迫力のあるシーンも多かったですが、どのように撮影したのですか?
白石:『凶悪』の時はカメラを動かさず、面会室で向き合うそれぞれの正面のバストショットをカットバックするだけというある種ストイックな方法論で臨んだのですが、今回は逆にやれることはなんでもやろうと挑みました。カメラを感情に合わせて動かしたり、ガラスの写りを照明の強弱で調整したり、美術の今村さんがカメラが行き来できるように弧形の壁を作ってくれたり、と撮影しながらみんなでアイデアを出し合って、二人ともがその眼に吸い寄せられそうなシーンを構築していきました。
 
 

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■製作現場を健全化しなければ、観客も安心して映画を見ていただけない

――――最後に、今映画界ではセクシャルハラスメント、パワーハラスメントに対して次々に被害者から声が上がり、映画監督たちや原作者が声明を出すなど、業界の悪しき部分を変える動きが起こり始めています。白石監督は以前からハラスメント研修を取り入れておられましたが、改めて今の映画界や、これから取り組みたいことについてお聞かせください。
白石:この作品もリスペクトトレーニングをしてから撮影に臨みましたが、それをするのがマストになってほしい。また、監督やプロデューサーは映画を作るという場面においては当然権力を持っていることをきちんと認識して仕事をしなければ、当たり前の現場を作れないと自覚しなければいけません。
 本当なら、スタッフのリスペクトトレーニングという全体のものと並行して、プロデューサーや監督など権力がある人専門のトレーニングも作って受けるべきかもしれません。そういうことから始めていかなければ、一般の観客のみなさんには納得いただけないでしょう。やはり、安心して作れない映画を、観客が安心して見てくださるはずがないですから。そういうところから健全化することが必要です。
 また、性被害を受けた人が声をあげてくださったことで、ようやくこのような動きが出てきたわけですから、被害を受けた方々を孤立させてはいけないしケアを忘れてはいけません。一方、加害をした人たちには、映画会社も映画業界も厳しい態度で臨まなければ、性加害の再発につながってしまいます。
 あとフリーの俳優にはオーディションの情報がなかなか届かず、ワークショップでツテを作り、なんとかキャスティングしてもらうという状況だと思うので、フリーの俳優にも平等にチャンスを与えられるシステムを考えていくことも必要でしょう。
 これだけ様々な問題が噴出しても、大手映画会社や映連、日本映画監督協会がきちんとした声明を出したり、システムを変えようという動きが起こらないのは残念の極みですが、もはやそれでは立ち行かないところに来ています。だから、映画業界のために何か少しでも力になりたいと思っています。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『死刑にいたる病』(2022年 日本 129分)
監督:白石和彌  原作:櫛木理宇著「死刑にいたる病」早川書房
出演:阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、宮崎優、鈴木卓爾、中山美穂他
2022年5月6日(金)より梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinema神戸国際他全国ロードショー
公式サイト https://siy-movie.com/ 
(C) 2022映画「死刑にいたる病」製作委員会
 
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 高畑勲監督、宮崎駿監督と共に数々の名作を世に送り出してきたスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー。その人生やキャリアを、影響を受けた本や映画を切り口に紐解きながら、スタジオジブリの作品作りの裏側に迫る「鈴木敏夫とジブリ展」京都展が、4月23日(土)に開幕した。(6月19日(日)まで。月曜休館※4月25日(月)、5月2日(月)は臨時開館)
 
 
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 名古屋での幼少期、青年期から、上京し、学生紛争の最中で過ごした大学時代、そして徳間書店でのキャリアや、スタジオジブリ設立にもつながった日本初の商業アニメ専門誌「アニメージュ」編集長時代、さらに初めて明かされるスタジオジブリ設立秘話と見どころが満載の4階展示。子ども時代の4畳半部屋を完全再現した他、大きな影響を受けた『大菩薩峠』(内田吐夢監督)、『ポリアンナ』(デヴィッド・スウィフト監督)や、人生初のファンレターを書いたヘイリー・ミルズの逸話を紹介。尾形英夫氏、徳間康快氏、氏家齊一郎氏ら人生のキーパーソンとの出会いやエピソードも興味深い。また、ジブリ映画の印象的なセリフを鈴木プロデューサーが筆書きした文字が立体化して展示されたフォトスポットや、湯婆婆と銭婆のおみくじスポットも出現し、ジブリファンには嬉しい仕掛けもたくさん用意されている。
 
 
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 鈴木氏個人のライフワークにスポットを当てた3階展示では、自己表現とも言える書の数々をはじめ、なんといっても圧巻なのは、人生で読んできた本、8800冊を集めた本の小道だ。鈴木氏の隠れ家「レンガ屋」で4部屋に分かれて収納されている本たちが、レンガ屋同様に、一面にウィリアム・モリスの壁紙が貼られ、とても落ち着いた雰囲気の中、知の財産に浸れる空間になっている。自身の書も展示されている本の部屋にて23日鈴木氏が取材に応じた。
 

■本に囲まれた中にいる幸せ

 

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「この夏で74歳になりますが、人生を振り返るような展示です。今まで自分から何かしたいと言ったことはなかったけど、『自分が今まで読んできた本を一堂に介したい。子どもの頃から70年ぐらいの本を並べて、真ん中に立ちたい』という希望があったので、今回実現してうれしいし、本に囲まれた中にいるのが幸せだったんです」と喜びを表現した鈴木氏。2019年夏に長崎で開催して以来3年ぶりに京都での開催となったが、「京都と奈良は日本最大のテーマパーク。ある時代のものがあまりいじられることなくそのまま残っています。そういう街は見るものがたくさんあるわけで、そこでこの展示を企画した人は大胆だと思うし、そんな街でジブリの展示を見てもらえるかどうか、僕としてはハラハラドキドキです」。
 

■本も映画も名セリフで内容を掴む

 

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 会場でジブリ作品の印象的なセリフが展示されていることに話が及ぶと「色々な本を読むと、一冊の中のあるフレーズをまるごと覚えるのが得意なのですが、同様に映画も、セリフで映画の印象をかためたりするので、名セリフが好きでしたね。ドイツの劇作家、ベルトルト・ブレヒトの『英雄のいない時代は不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと不幸だ』という言葉がすごく好きだったので、それを少し変えて引用させてもらったことがあります。『ゲバラのいない時代は不幸だがゲバラを必要とする現代はもっと不幸な時代だ』(『チェ 28歳の革命/39歳の別れの手紙』)」と名キャッチコピーを数々生み出してきた鈴木氏ならではの発想を語った。
 
本展示では、今まで読んできたほぼ全ての本を展示しているが、実は引越しなどの度に処分するか悩んだ本も多かったと鈴木氏は明かす。「『キネマ旬報』で一番古いものは大正時代からあります。戦後の昭和21年に復刊し、それ以降は持っているのですが、本当に何度も捨てるかどうか悩みました(実際には膨大なバックナンバーが並んでいる)。一方大好きだった『少年マガジン』はあるとき全て捨てたんです。悩みながら持ち続けてきた本たちを今回展示していますので、純粋に、それを多くの方にみていただければと思っています」

 

■自分の置かれた状況を楽しむ

 

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 今回の書籍展示にあたり、柳橋閑氏による15時間に渡るインタビューを刊行(その内容は会場で平日限定配布される「読書道楽」に収録されている)。書籍リストを見た柳橋氏から鈴木氏が最初に指摘されたのは、ベストセラーはあまり読んでいないということだったという。「通常プロデューサーだったら読むべきなのでしょうが、結局自分の好きな本しか読まなかった。読んだら楽しそうだなというのが基準でしたね。ふと思い出しましたが『千と千尋の神隠し』の速報を、日頃は予告編も速報も見ない宮崎駿が突然観ることになり、観終わった瞬間彼が『面白そうだね』と。自分で作っているのにと思いながらも、そう言われたらもう成功ですよね。つまり誰かを楽しませようと考えるのではなく、一緒に楽しむことですね」。簡単なようで難しい、何事も「楽しむ」のが鈴木流であることは、どんな逆境に置かれても自分の状況を客観的に見ているという姿勢にも通じる。
「自分がある危機に遭遇したとき、『今、俺大変なんだ』と客観的に見て笑っている、もうひとりの自分がいるんです。自分の置かれた状況を楽しんだ方がいい。誰でも一つや二つ、辛いことがあると思いますが、その状況をチャンスであり、次に進むステップだと考えますね」
 
 最後に鈴木氏は、「僕たちが子どもの頃は、娯楽といえば映画や本しかなかった。今はゲームをはじめいろいろな楽しいものがある中、映画に特化していく人はなかなかいないと思う。それでも今回の展示を見て、『映画をやってみよう』と思う人が現れたらうれしいですね」と期待を込めた。
 
 
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本展示を開催している京都文化博物館の3階フィルムシアターでは、4月23日(土) から6月19日(日)まで、「みんな映画が好きだった、僕も  -京都府所蔵映画作品より鈴木敏夫セレクション」を開催。鈴木氏が中学、高校時代に観た日本映画の中でも強い印象を受けたという名作を自らセレクト。日本映画で一番好きな作品に挙げた『人情紙風船』(山中貞雄監督)をはじめ、小津安二郎監督、増村保造監督他、日本を代表する監督の名作が勢揃いする。4月22 日にトークイベントとともに上映された『座頭市物語』(三隅研次監督)も5月に再上映される。
(江口由美)
 
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※会場で無料配布される「名古屋の鬼ばばあ」には鈴木氏と娘の鈴木麻美子氏、月間「アニメージュ」5代目編集長を務めた渡邊隆史氏のエッセイを収録。平日限定で無料配布される鈴木氏と柳橋氏のインタビューを収録した全287ページの「読書道楽」もお見逃しなく!
 
 

<開催概要>
展覧会名: 鈴木敏夫とジブリ展
会期   :2022年4月23日(土)〜6月19日(日)
休館日  :月曜日※ただし4月25日(月)、5月2日(月)は臨時開館
開室時間:10:00~18:00 ※金曜日は19:30まで(入室はそれぞれ30分前まで)
会場   :京都文化博物館 4階・3階展示室(京都市中京区三条高倉)
展覧会公式HP:https://suzukitoshio-ghibli.com/ 
 

2022 年 大スクリーンで観るべき、“ベスト・オブ・ザ・ベスト”の至高の 1 本!

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各界の”ベスト・オブ・ザ・ベスト”が集結!!

『トップガン』を愛してやまないおいでやすこが、

『ウマ娘 プリティーダービー』より

宣伝パイロット・マヤノトップガン役 星谷美緒、トウカイテイオー役 Machico

トップガンの”胸熱”ポイントを徹底ナビゲート!!

日本にただ一つ!"胸熱"巨大ヘルメット型スタンディも初お披露目!!

 

リアルな映像にこだわった迫力のスカイ・アクションシーンと、常識破りの伝説的パイロット・マーヴェリックと若きパイロット達が繰り広げる”胸熱”なドラマが期待を集める、全世界待望のスカイアクションムービー最新作『トップガン マーヴェリック』が、5 月 27 日(金)からいよいよ日本公開。ハリウッドのベスト・オブ・ザ・ベスト、トム・クルーズが 36 年間誰にも企画を渡さなかった渾身のハリウッド超大作が、ついに劇場に!36 年ぶりの最新作、いよいよ公開 36 日前!


この度、4 月 21 日(木)に、『トップガン』 を愛してやまない、おいでやすこがと、ウマ娘 宣伝パイロット・マヤノトップガン(星谷美緒)、トウカイテイオー(Machico)が登壇のカウントダウンイベントを実施いたしました!


イベントでは、筋金入りの映画好き・おいでやすこがのお二人が“ベスト・オブ・ザ・ベスト”アンバサダーとして登場!全世界がその公開を待望してやまない『トップガン マーヴェリック』の”胸熱ポイント”をエンジン全開で語り尽くしました! また、昨年に本作の“宣伝パイロット“就任が発表され大きな話題をさらった、「ウマ娘 プリティーダービー」のマヤノトップガン(星谷美緒)、トウカイテイオー(Machico)も参戦! 初公開のメイキング映像も公開されつつ、日本にただ一つしかない特製巨大ヘルメット型スタンディの除幕式を実施! 公開36日前を大いに盛り上げる華やかなイベントとなりました!


《『トップガン マーヴェリック』カウントダウンイベント 概要》

■日時:4月21日(木)19:00~19:40

■会場:TOHOシネマズ日比谷 スクリーン7 (東京都千代田区有楽町 1-1-2 東京ミッドタウン日比谷4F)

■登壇者:おいでやすこが、星谷美緒、Machiko(敬称略)

映画『トップガン マーヴェリック』公開カウントダウンイベント LIVE!
アーカイブ視聴<4/22(金)正午より配信・期間限定>:https://twitter.com/i/events/1512084581742047236


<イベントレポート詳細>

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前作公開から 36 年。史上最高のパイロット、マーヴェリックはなぜトップガンチームに戻り、若きトップガンたちと共に前人未到のミッションに挑むのか?―いよいよ全世界待望の続編『トップガン マーヴェリック』の公開が迫る中、日米公開 36 日前を記念して執り行われた本イベントでは、本作の【ベスト・オブ・ザ・ベスト アンバサダー】に任命された、筋金入りの映画好き、おいでやすこがのお二人が登壇。開口一番、小田が「カウントダウンイベントに、どうも皆様、おいでやす~!」と軽快に挨拶を済ませ、こがけんも「大好きなトップガンの宣伝に携われるということで興奮しております!」と感慨深げにご挨拶。


本作の魅力を最大限に伝えるために今回のアンバサダーに就任した二人だが、こがけんは生粋のトップガンファンとして、この作品が伝説たるゆえんとなる”胸熱”ポイントを語り尽くす役目を担い、小田は戦闘機のエンジン音と同程度となる約 120db の発声量を武器に、映画ファン以外にもアピールする役目を担いイベントに臨んだ。


TOPGUN-ivent-おいでやすこが-500.JPG小田が持ち前の音量全開でキーワードを叫びつつ本作にまつわる【『トップガン』のココが凄い!】のキーワードトークを繰り広げる展開に。まず初めに数々の危険なアクションに挑んできたトム・クルーズ自身が劇中で本当に戦闘機に搭乗し、撮影に臨んだ【トム・クルーズ、凄いエピソード】では、いくつもの危険なスタントを自らこなしてきたトムのとんでもなさに、こがけんが「ジャッキーチェンが、スタントをもう出来ないとスタントマンに譲ったあたりのタイミングでトム自身がスタントをしだすという…考えられないですよ!このリアルが本当に凄いなと僕は思います」と驚愕。


TOPGUN-ivent-こがけん-240.JPG続いて、【ベスト・オブ・ザ・ベストのスタッフが集結】というキーワードではトムの飽くなき情熱を支える偉大なるスタッフたちにフォーカス。途方もない費用と熱い想いをかけて作り上げられた、まさに最大級のスケールの本作に、最高級のスタッフが一堂に会したことについて、こがけんは 「ここまでのクリエイターたちが集結した本作は、絶対に間違いない作品だと思っています。まだ見ることができていないんですけど…(笑)」と述べ、“前人未到の一作”が作り上げられたことをアピールしました。


そして、続いてのキーワード【リアル追及のベスト・オブ・ザ・ベスト】では、本作に登場する戦闘機は、“実物”を使用し、トム・クルーズの徹底したこだわりによって、CG を使用せずリアルに飛行・撮影したという驚きのエピソードが。また、共演者たちにはトム監修のスペシャル訓練メニューも敢行されたことが明かされ、その徹底的なこだわりにはおいでやすこがの二人も脱帽しきり。加えて IMAX カメラを戦闘機のコックピットに6台搭載し、その万全の体制での撮影に思わず「ほかの映画にはない、特殊な体験になると思います。」とこがけん。小田も「映画の技術や CG が発達しているのに、こんなにリアルにこだわりまくって映画の歴史変わる感じしますよね」と述べ、かつてない映像体験を後押しするというエピソードの数々に思わず小田が「制作陣もトムに頭を抱えていたのでは!?でもだからこそ、これだけ凄い映画が作れたんじゃないかと思いますね!」と笑う一幕も。


TOPGUN-ivent-おいでやす小田-240.JPGその他にも、前作に登場したグースの息子・ルースターが登場するという胸熱ポイントでは、「1 作目で少し登場したあの子が!?」と小田が驚く場面がありつつ、アイスマンについての話題では、こかげんが「めちゃくちゃ好きなライバルキャラクター!」と述べ、「ヴァル・キルマーが再び登場すると知った時は本当にオーマイガー!」とステージ上で倒れこむほどに大興奮。マーヴェリックとアイスマンの関係性について「青島と室井的な感じですか?」と日本人にはおなじみとなる絶妙な例えを小田が披露し、会場に笑いを誘う場面も起こった。


数多くの胸熱ポイントをまとめてもらった後、小田がこの映画の魅力の総括を求められ「言えるか!こがけんが全部言うとるやないかい!」と気合の入った本作の数々のエピソードにタジタジの様子だった。


キーワードトークの後、つい先日解禁されたばかりの最新予告編を放映。迫力の映像においでやすこがの二人も「鳥肌がスゴイ!」と感動した様子。こがけんは「『トップガン』が公開された当時、米海軍航空隊への志願兵が増えたり、マーヴェリックの愛車kawasaki の Ninja や MA1、レイバンのサングラスなど、本当に社会現象でしたよね」と熱気を振り返ると会場も共感。


TOPGUN-ivent-ウマ娘-500.JPGそんなトークの中、こがけんの口から今話題のスマホゲーム「ウマ娘」という単語が。同ゲームに登場する名馬「マヤノトップガン」について触れられると、ここから新たなゲストとバトンタッチすることに!そうして盛大な拍手の中登壇したのは、昨年に続き今年も日本のベスト・オブ・ザ・ベストなコンテンツとして人気を博しているゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」より、マヤノトップガン役 星谷美緒、トウカイテイオー役Machico のお二人!


TOPGUN-ivent-Machico-240.JPG登壇早々、MC より「マヤノトップガンの名前の由来は『トップガン』からですか?」と聞かれると、星谷は「はい!この名前は(マヤノトップガンの)馬主さんの好きな映画「トップガン」に由来していると言われてます!」とのこと。また、宣伝パイロット・マヤノ役の星谷をサポートするためにやってきた、トウカイテイオー役 Machico は「この映画が公開されていなかったら、私たちはこうして出会っていなかったかもしれません!繋がりというか運命のようなものを感じますね!」とステージは和気あいあいな雰囲気に!そんな中、前日 4/20 がトウカイテイオーの記念すべき誕生日だったということで、会場全体が祝福の拍手につつまれ、演じた Machico 自身も誕生日当日は SNS 上でイラストを描き祝ったと述べた。


いよいよ、本格的に宣伝活動が始動し、宣伝パイロットとしての活躍が期待される二人が「誇りを持ってつとめさせていただきます!」と宣言する中、なんとここで星谷が宣伝パイロットの任務として、本作の過酷な撮影の裏側を収めたトレーニングフィーチャレット特別映像を引っ提げてきたことを明かし、会場は大盛り上がり!豪華キャストたちが、過酷な訓練の後に実際に戦闘機に乗り、また戦闘機内での撮影は俳優自身がカメラを操作しつつ、演技も行ったというもので、二人はそのエピソードに触れ「私たち、声優が自分でマイクなどを調整しつつ演技するようなもの。凄いです!」と驚きの表情を浮かべ、本当に鳥肌がとまらない様子を見せた。


TOPGUN-ivent-星谷美緒-240.JPGまた、星谷は「これからも情報を発信していきます!5 月には、また特別な発表やスペシャルなコラボ企画をお届けできたらと思います!是非お楽しみに!」と、このコラボレーションに更なるサプライズがあることを匂わせ、今後の期待を煽りつつ、今後の宣伝パイロットとしての活動に意欲をみせた。1 作目ももちろん鑑賞しているという二人、星谷は「マーヴェリックがかっこよくて、イケイケな感じなのにグースとのシーンでは熱くなるものがあり…心を動かれることがすごく多かった!」と感嘆。Machico は「グースがすごく好きで、正反対の性格だからこそ、マーヴェリックとの男同士の友情やドラマに、惹かれました!」とマーヴェリックとグースが二人の推しであることが窺えた。


イベントの締めくくりには、おいでやすこがの二人が再び登壇し、4 人が勢ぞろいして賑やかなステージに。36 年越しの最新作、いよいよ公開まで 36 日となった本作から、"胸熱"仕様の巨大ヘルメット型スタンディ特別スタンディの除幕式を執り行うことに!除幕のスイッチをこの場を代表して星谷が押すと、戦闘機パイロットが被るヘルメットを模した特製スタンディが出現!ゴーグル部分から予告編が流れるという胸熱仕様のこのスタンディは、日本で唯一、TOHO シネマズ日比谷劇場ロビー内にて設置されるとのことで、会場は大いに盛り上がった。


TOPGUN-ivent-ヘルメットスタンディ02-500.jpgそんな興奮も冷めやらぬ中、Machico が「こだわり抜いたリアルを早く映画館で、大きなスクリーン、大音量で楽しみたいと私自身も思いましたので公開を楽しみにしております! そして、「ウマ娘 プリティーダービー」宣伝パイロットとしてのマヤノトップガンの 活躍にも是非、注目していただきたいです! 応援よろしくお願いいたします!」とアピール、星谷も「ウマ娘でマヤノトップガン役が決まった時にはまさか、自分がこんな素敵な公開カウントダウンイベントに立たせて頂けるなんて思わず、本当に光栄です。前作は劇場で観ることは叶いませんでしたが、今作は迫力あるスクリーンで観られると思うと本当にワクワクしています。これからも、宣伝パイロットとして頑張っていきたいと思います!テイクオーフ!」と続けて締めくくり、公開まで待ちきれなくなること間違いナシの熱気に包まれた。
 


<STORY>
TOPGUN-pos.jpgアメリカのエリート・パイロットチーム“トップガン”。しかし彼らは、ベスト・オブ・ザ・ベストのエースパイロット達をもってしても絶対不可能な任務に直面していた。任務成功のため、最後の切り札として白羽の矢を立てられたのは、伝説のパイロット“マーヴェリック”(トム・クルーズ)だった。記録的な成績を誇る、トップガン史上最高のパイロットでありながら、常識破りな性格と、組織に縛られない振る舞いから、一向に昇進せず、現役であり続けるマーヴェリック。なぜ彼は、トップガンに戻り、新世代トップガンと共にこのミッションに命を懸けるのか?大空を駆け抜ける興奮、そして“胸熱”な感動がここに!スカイ・アクション最新作がついに公開!
 

■監督:ジョセフ・コシンスキー『オブリビオン』
■脚本:クリストファー・マッカリー『ミッション:インポッシブル:フォールアウト』、他
■製作:ジェリー・ブラッカイマー『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー、デヴィッド・エリソン
■キャスト:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、ヴァル・キルマーほか
■全米公開:2022 年 5 月 27日(金)
■原題:Top Gun Maverick
■配給:東和ピクチャーズ
■コピーライト:(C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
■公式サイト:https://topgunmovie.jp/
■公式 Twitter:@TopGunMovie.jp
■公式 Facebook:@TopGunMovie.jp
■公式 Instagram:@TopGunMovie.jp

ベスト・オブ・ザ・ベストの胸熱スカイアクションムービー5 月 27 日(金)~全国ロードショー


(オフィシャル・レポートより)

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“映画”を愛するすべての人へ 巨匠チャン・イーモウが贈るラブレター


「私自身が感じている映画への追憶や想い そして情熱を表現した作品」


これまで3度米アカデミー国際長編映画賞にノミネートされ、多くの映画祭で華々しい受賞歴を誇る中国の巨匠チャン・イーモウ監督の最新作『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』が、5月20日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開いたします

2021年トロント国際映画祭に正式出品され、大きな話題となった本作は、監督が長年映画化を熱望していた企画であり、その全体にあたたかく流れるのは、チャン・イーモウ監督の確かな”映画への愛”。


onesecond-550.jpg文化大革命時代の中国を舞台に繰り広げられるノスタルジックで普遍的な物語と、広大な砂漠を大胆に映し出す圧倒的な映像美。フィルムの中にたった1秒だけ映し出されているという娘の姿を追い求める父親と、幼い弟との貧しい暮らしを懸命に生き抜こうとする孤独な少女。決して交わるはずのなかった2人が、激動の時代の中で運命的に出会い、そして彼らの人生は思いがけない方向へと進んでいくー。


主人公の逃亡者を演じるのは『最愛の子』『山河ノスタルジア』『オペレーション:レッド・シー』などで人気を博すチャン・イー。逃亡者と出会い奇妙な絆で結ばれていく孤児の少女・リウの娘を演じるのは、本作が記念すべきデビュー作となる若手俳優リウ・ハオツン。さらに小さな村の映画館を仕切り、人々から尊敬の念を集める人格者・ファン電影に、実力派俳優ファン・ウェイ。時代の波に翻弄されながらも、映画をこよなく愛する魅力的なキャラクターを味わい深く演じてみせた。


■『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』 
 チャン・イーモウ監督メッセージ映像⇒ https://youtu.be/U89O-KkU3Ak



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(左の写真:左からチャン・イー、リウ・ハオツン、チャン・イーモウ監督)


そして今回特別に撮影され、解禁となったチャン・イーモウ監督のメッセージ映像は、日本の観客にむけて「日本の皆さん こんにちは。チャン・イーモウです。『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』の監督です。今作が日本で上映されることを非常に嬉しく思います」という挨拶からスタート。


映画には40~50年前の私の青春時代の記憶が描かれています。あの過酷な時代の中で、映画を観ることは正月のような一大イベントでした。物語は、あの時代を生きた人々の映画への強烈な渇望、映画がもたらした、人々の夢や未来への希望を表現しています。私自身が感じている映画への追憶や想い、そして情熱を表現した作品でもあります」と身振り手振りを加えながら、力強く語るチャン・イーモウ監督。


そして、「ご覧になった多くの方が、あの時代の映画と人々の関わり方や、歴史の記憶の中における我々の世代の青春や映画への夢に対して、共感していただけると思います」と続け、最後に「この映画がみなさんの心の中の何かに触れ、考えるきっかけになればと願っています。ありがとうございます」と語りかける。監督の言葉一言一言から、本作にかける熱い想いと映画愛が伝わってくるメッセージ映像は映画ファン必見!映画を愛する全ての人へ捧げる、巨匠からのラブレターをぜひ劇場のスクリーンで。
 


【STORY】
onesecond-500-2.jpg1969年―文化大革命真っただ中の、激動の中国。造反派に歯向かい、西北部にある強制労働所送りになった男(チャン・イー)は、妻に愛想を尽かされ離婚。最愛の娘とも親子の縁を切られてしまう。数年後、22号という映画本編の前に流れるニュースフィルムに、娘の姿が1秒だけ映っているとの手紙を受け取り男は、一目娘の姿を見たいと強制労働所から脱走。逃亡者となりながらも、22号のフィルムを血眼になって探し続け、映画が上映される予定の小さな村の映画館を目指す。だがフィルムを村まで運ぶ男の隙をついて、素早くのフィルムの1缶を盗み出す子供を目撃。ボロボロの格好をした小汚い少年だと思ったその子供は、孤児の少女・リウ(リウ・ハオツン)だった。果たして、逃亡者の男は愛しい娘の姿を見られるのか?


監督・脚本:チャン・イ―モウ 『妻への家路』
出演:チャン・イー 『オペレーション:レッド・シー』 リウ・ハオツン ファン・ウェイ 『愛しの故郷』
2020年/中国/中国語/103分/シネスコ
原題:一秒钟/字幕翻訳:神部明世
配給:ツイン
© Huanxi Media Group Limited     
公式サイト onesecond-movie.com

2022年5月20日(金)~TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー


(オフィシャル・リリースより)

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アカデミー賞®主演男優賞『ジョーカー』 ホアキン・フェニックス主演
  ×  
  『人生はビギナーズ』 マイク・ミルズ監督
×
   『ムーンライト』『ミッドサマー』A24製作

 

『カモン カモン』

LiLiCo、よしひろまさみちが共感の連続!!

公開前トークイベントレポート!!!

「この映画をきっかけに、誰かと本気で向き合って、

訊いてみたこともないような話をしてみて」

 

ホアキン・フェニックス主演×マイク・ミルズ監督×A24製作の映画『カモン カモン』が、4月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開となります。本作の公開に先立ち4月6日(水)ユーロライブにて、映画コメンテーター・LiLiCoさんと映画ライター・よしひろまさみちさん登壇のトークイベントを開催いたしました。


◆日時:4月6日(水)

◆場所:ユーロライブ(渋谷区円山町1‐5 KINOHAUS 2F)

◆登壇者:LiLiCo(映画コメンテーター)/ MC:よしひろまさみち(映画ライター)



『ジョーカー』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスと、『人生はビギナーズ』『20センチュリー・ウーマン』のマイク・ミルズ監督が初タッグを組んだA24製作の映画『カモン カモン』の試写会が4月6日(水)都内にて開催され、上映後に映画コメンテーターのLiLiCoさんと映画ライターのよしひろまさみちさん登壇のトークイベントが開催された。


cmoncmon-500-1.jpgのサムネイル画像本作は、ラジオジャーナリストのジョニー(フェニックス)が妹に面倒を頼まれた9歳の甥っ子ジェシー(ウディ・ノーマン)との共同生活を通して、初めての子育てに戸惑いながらも、絆を見出していく姿を美しいもモノクロームの映像で綴った感動のヒューマンドラマ。


甥っ子との“想定外”の日々を描いた本作を観た感想を、LiLiCoさんは「自身を重ね合わさることがあった。子供って本当に色々考えてますよね」とコメント。よしひろさんは「お互い子供はいないけど、自分の子供の頃のことを思い出しません?」と質問すると、LiLiCoさんは同意し、「プラスお友達の子供たちのこともね。お腹にいるときから知っている彼らとお話しをすると、彼らすごく大人なんですよね。独身の時代とか、 “LiLiCoがフラれたよ”って親が子供に言ってるんでしょうね。そうすると5、6歳の子供が“なんでかな、LiLicoはキレイなのに”って言うの。親の言葉を受けて、自分の中で噛み砕いて、子供ながらに色んなことを考えて話しているんだろうね」と思い出を振り返った。


cmoncmon-ivent4.6-240-1.jpg自身にも姪っ子と甥っ子がいるというLiLiCoさんは、「地球の反対側にいるので、遠い存在になったら嫌だなと思っている。私も叔母は、遠い存在だった。だからこそ自分はそうならないように、姪っ子たちに会ったときは頑張ってお話ししようと思っているし、この映画のジョニーと被っていることが多い」と主人公ジョニーへの共感を語った。一方で、ジェシーにも共鳴する場面も。「私が9歳のとき弟が生まれて、弟のお世話をするお母さんになった気持ちもあるけど、自分も本当はお母さんに甘えたい。どういう風に大人たちと接したら、私と真剣に接してくれるんだろうかと、まさに映画に出てくるような。甘えたいし我が儘でいたい、だけどどこか大人にならないといけないジェシーの気持ちがすごく分かる」と述懐した。


LiLiCoさんが好きなシーンに、ジョニーが子供へ「自分の親が自分の子供だったら何を教えたい?」と尋ねる場面を挙げると、よしひろさんは「自分の親がどう思っていたんだろうって、考えさせられたよね。もっと話を聞いていれば、もっと仲良くなれたかもしれない。もしこの映画が20年前に作られていたら、親に見せたかった。たらればを考えるときりはないんですけど、今あるものも大事にしたいって思えるのが、この映画をきっかけに出来るんじゃないかなって思う」と熱く語り、続けてLiLiCoさんも「私もお祖母ちゃんが亡くなる前にもっと話せばよかったなと未だに思う。何歳になっても、どこか離れてしまっても、例えどんなに話していても、もっと話しておけば良かったって皆が思うこと。だから家族や周りがご健在のうちに、ちゃんと話をしてくださいね」と観客に訴えた。


cmoncmon-500-4.jpgのサムネイル画像ジョニーとジェシーが関係を築くにあたり、2人の会話が重要になっている本作。よしひろさんは「難しい世の中じゃないですか。その中で会話って本当に重要」と強調。これに対し、LiLiCoさんが「全ての問題はコミュニケーション不足。カップルも夫婦関係も、コミュニケーション不足が原因」と重ねると、よしひろさんから「家でもこれだけ喋っているから、家でも円満なんですよね」とツッコミが入り、LiLiCoさんも思わず照れ笑い。「会話を大事にしてるの。話したくないこともあるけど、嫌われる勇気で会話する。でも、それを乗り越えたときに良いものが生まれる。家では、ご飯を食べるときはテレビもラジオも消す。夫婦で必ず向き合っている」と夫婦円満のコツを明かした。


cmoncmon-500-3.jpg『ジョーカー』の狂気のイメージから一転、甥っ子に振り回される主人公を自然体で演じたフェニックスについては、「実は、『ジョーカー』より『her』やこの映画のホアキンが好きなの。ジョーカー役より、本作のように普通を演じることの方が難しい」とLiLiCoさん。一方よしひろさんは、フェニックスの相手を務めたジェシー役のノーマンについて「イギリス人なのに完璧なアメリカ英語を話している。これまで天才子役は何人も出てきましたけど、この子は伸びしろが凄そう。将来の目標はティモシー・シャラメと公言している」と期待を語った。


ジョニーとジェシーの物語と並行し、劇中では所々、ジョニーによる子供たちへのインタビューシーンが織り込まれる本作。これらのシーンには、ミルズ監督の「すべての大人は子供と彼らの未来に責任がある」という強いメッセージが込められているが、このインタビューシーンについてよしひろさんは、「お先真っ暗な話ではない。これだけ情報過多な社会だと、子供たちの耳に環境破壊だとか色んな暗い話が入っている。それでも子供たちは希望を持っている。子供たちから教わることの方が多い」と説明。これにはLiLiCoさんも深く頷いた。


cmoncmon-ivent4.6-500-1.jpg最後に、LiLiCoさんは「なかなかコミュニケーションがとれない世の中で、SNSなど便利なツールもいっぱいあって、繋がっている感じになっている。でも直接話さないと、自分を表現できなくなってしまう。この映画をきっかけに、電話でもいいから、家族や友達とか誰かと本気で向き合って、訊いてみたこともないような話をしてみると何かが広がると思う」と太鼓判を押し、よしひろさんは「映画のキャッチコピーにも“君の話を聞かせて”とあるように、まずは対話しましょうって思える作品。一言で伝わりきらない作品だからこそ、自分の言葉で伝えてほしい」と観客にメッセージを贈った。トーク終了後には、映画のポスターを真似たポーズを披露し、大盛り上がりでトークイベントは締めくくられた。

『カモン カモン』は、4月22日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。


『カモン カモン』

【STORY】
comoncomon-550.jpgNYでラジオジャーナリストとして1人で暮らすジョニーは、妹から頼まれ、9歳の甥・ジェシーの面倒を数日間みることに。LAの妹の家で突然始まった共同生活は、戸惑いの連続。好奇心旺盛なジェシーは、ジョニーのぎこちない兄妹関係やいまだ独身でいる理由、自分の父親の病気に関する疑問をストレートに投げかけ、ジョニーを困らせる一方で、ジョニーの仕事や録音機材に興味を示し、二人は次第に距離を縮めていく。仕事のためNYに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが…。


監督・脚本:マイク・ミルズ 『人生はビギナーズ』『20センチュリー・ウーマン』
出演:ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、モリー・ウェブスター、ジャブーキー・ヤング=ホワイト
音楽:アーロン・デスナー、ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
2021年/アメリカ/108分/ビスタ/5.1ch/モノクロ/原題:C’MON C’MON/日本語字幕:松浦美奈
© 2021 Be Funny When You Can LLC.  All Rights Reserved.

公式サイト:https://happinet-phantom.com/cmoncmon/

2022年4月22日(金)~ TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー


(オフィシャル・レポートより)

 
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 注目作家、彩瀬まるの原作を、主演に岸井ゆきの、共演に浜辺美波を迎えて映画化した中川龍太郎監督最新作『やがて海へと届く』が、4月1日(金)よりTOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸他全国ロードショーされる。
東北へ一人旅に出た大学時代の親友、すみれ(浜辺美波)が消息を絶ってから5年。真奈(岸井ゆきの)はすみれの不在を受け入れられずにいたが、すみれの母(鶴田真由)や、すみれの恋人だった遠野(杉野遥亮)は、彼女を亡き者として扱い、真奈は反発を感じずにはいられない。遠野からすみれが愛用していたビデオカメラを渡された真奈は、ある日、意を決して、そのビデオを再生する。そこには真奈とすみれがふたりで過ごした時間と、真奈の知らないすみれの秘密が映されていた…。
  すみれへの想いを抱えて生きる真奈を演じる岸井と、活発に見えてどこかミステリアスなすみれを演じる浜辺。それぞれがみせる表情に、お互いを信頼し、そして強く慕う気持ちが滲み出る。すみれがいない部屋に差し込む柔らかな光、時には全てを、時には悲しみをも洗い流してくれる海など、自然の中でいきる人間の脆さや運命をも密かに感じさせる。中川監督20代の集大成と言える圧巻のラストにも注目してほしい。
本作の中川龍太郎監督にお話を伺った。
 

 
――――本当にスケールの大きな作品で感動しました。原作から変更した点も多く見受けられましたが、原作を読まれた時にどこが映画の核になると感じましたか?
中川:原作を映画化するにあたり、どこか自分と繋がっていたり、実感できる部分があるか。それが大事だと思うのです。友人の死はわたしも経験していますし、真奈とすみれのように、お互いに自立した存在として相手を尊敬していたけれど、片割れのような存在がいなくなってしまったという物語は自分で描ける。そこを一つの軸にしました。
 

『やがて海へと届く』main.jpg

 

■真奈とすみれは、お互いに憧れを抱く「もう一人の自分」

――――真奈とすみれの関係は、親友でもあり、どこかお互いに恋焦がれているような微妙なニュアンスが表現されていますね。
中川:真奈とすみれはお互いに憧れを抱いているのだと思います。憧れという感情はある意味、恋愛と近いものに見える瞬間があることは事実です。自分に欠けているものを埋め合わせてくれる、もうひとりの自分みたいなイメージではないかと岸井さんや浜辺さんと話していました。
 
――――冒頭、真奈がすみれの荷物を片付けに行き、部屋で佇んでいるシーンがあります。じっくりと真奈の佇まいを見せることで、彼女の底知れぬ悲しみや、すみれが生きていると思いたい気持ちが伝わってきました。
中川:岸井さんに真奈が失った時間を実感してもらう必要があったので、特にこちらからは指示せず、岸井さんが感じるままに演じてもらったシーンです。その長さが、真奈が思考するときのテンポになっていきました。
 
――――なるほど、そのシーンのテンポは岸井さんに委ねたんですね。
中川:撮影のとき、もっと早くと指示を出すのは違うと思った。本当はもっとセリフがあり、脚本ではもっと最後の方に出てくるシーンだったのですが、編集でだいぶんシーンの構成を変え、長さも短くなりました。それでもちょっと長すぎたかなと思っていたのですが、そう言っていただけて良かったです。
 

■自分なりに震災との距離感を表現

――――すみれが消息を絶った場所について、原作では明言されていませんでしたが、映画では東日本大震災の被災地へ実際に足を運んでいます。中川監督ご自身が2011年3月11日に体験されたことや、映画の作り手としていつかは描こうと考えておられたのか、お聞かせください。
中川:大学生時代に東京で被災し、その2年後に友人が亡くなりました。ですから、僕が社会人として生きてきた時間は震災後の日本であり、僕はその時代を、友人を失った個人として生きてきたという感覚がすごくありました。震災のときにあまりリアリティーを持てなかったのは、どこか歴史的なものを見ている感覚があったと思うのです。多くの方が被災し、亡くなられましたが、そのおひとりおひとりに、その死を悲しみ、ずっと思い続ける人たちがいらっしゃる。個人から見た悲劇という視点から、東日本大震災を描いてみたいという想いはずっとありました。
 友人を訪れに東北へ足を運んだこともあったのですが、陸前高田の壁のような巨大防波堤を見たり、今回出演していただいたみなさんのお話を聞いたりする中で、自分なりに震災との距離感を表現してみようと気持ちが固まっていきました。
 

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■被災をして家族を亡くされた方々とこの物語を地続きで描きたい

――――真奈が職場の同僚、国木田と東北に向かい、地元の人たちがカメラに向かって震災で亡くなった家族の話をする集いに参加するシーンがあります。俳優と現地の人たちの両方が登場しますが、その意図は?
中川:いろいろな作品を観たときに、現実に起きた悲劇とフィクションの中の悲劇はどうしても分断されてしまうと感じていました。ドキュメンタリーで観る“死”とフィクションで観る“死”は違いますよね。身勝手かもしれませんが、僕にとってはつながっているのです。身近な死を題材に映画を作ってきたという自分の経緯もありますし、フィクションをずっと撮ってきたので、実際に被災をして家族を亡くされた方々とこの物語が地続きであるべきだと思ったんです。
 
――――実際に被災された方の話を、岸井さん演じる真奈が聞いている。やわらなか地続き感があり、物語に強度が増した気がします。
中川:東日本大震災のことを描くときに、被災された方に出演してもらわず、東北の風景を借景として取り込むだけなのは不誠実ではないかと思っていました。原作者の彩瀬先生はご自身が東北で被災されているので、あのような形で物語を書くことができますが、僕にしろ、岸井さんや浜辺さんにしろ、そこまでの体験をしたわけでありません。だから、その物語が存在する根拠、いわば重しとして、被災された方の存在が重要だったと思います。
 
――――真奈とすみれ、それぞれの視点で描くにあたり、ビデオカメラを用いていますね。カメラを相手に向けることは暴力性が生じる場合もありますが、今回は、記憶する装置という意味合いに見えました。
中川:コミュニケーションの手段としてビデオカメラを映画では登場させています。さきほどの被災者の方の話を撮るのもそうですし、自分が知らない世界のもう片方の面を知るための、コミュニケーションの媒介であり、何かを暴くためのものではありません。どちらかといえば、手紙のようなものですね。
 

■すみれから真奈への視点を表現しなければ、この原作でやる意味がない

――――すみれが「わたしたちには世界の片面しか見えていないと思うんだよね」という言葉がとても印象的でしたが、映画でもすみれと真奈、それぞれの視点を見せる構成にしていますね。
中川:僕はこの物語を真奈の話だけにするのは、ちょっと違うと思っていました。真奈だけの話にすると、生者が死者について都合の良い解釈をする話になってしまうのかという恐怖がありました。すみれから真奈がどのように見えていたかを表現しなければ、この原作でやる意味がない。真奈のグリーフワークの話だけではいけないと思ったのです。今回、すみれが死にゆくパートはアニメでしか表現できないと思い、積極的にそちらを選択したので、すみれパートは最初と最後にしか入れられませんでした。
 
――――確かに、今まで喪失感とどう向き合うかという生者視点の物語が圧倒的に多いですね。もう一つ、被災地でさきほどの家族のことを話すシーンと同様に、俳優も地元の人も混じっての正面を向いたスチール写真が次々と映し出されるシーンが圧巻でした。その意図は?
中川:あのポートレイトはスタッフ間でも様々な意見があり、最後まで撮るかどうかもわからない状況でしたし、脚本でも今とは違う位置にあったシーンです。僕は、生きている人間の世界だけではなく、生者も死者も、この世界に並存しているという考えで、実際に被災されて大切な人を亡くした方々と、物語の中のすみれ、さらには過去のすみれと死の直前のすみれも全て同じ瞬間に存在している。ポートレイトはその発露なのです。死者の世界と生者がいる現実の世界の違いもなく、過去と未来の違いもない。全てが今、この一瞬に存在していることを示したかったのです。
 
――――何かセリフを言うとか、エモーショナルなお芝居をするということではなく、ただじっと真正面を見つめているポートレートたちを見ていると、ただ存在する、そのことの力強さや美しさを大いに感じました。ちなみに、先ほど言及のあったアニメパートは脚本を書いたのですか?
中川:アニメパートは自分で詩を書きました。原作ではある種の心情が吐露されているのですが、それをアニメという具体表現にするのは統一のイメージを共有することが難しいです。悲しみの色、みたいなものも人によって違うでしょうし、むしろはっきりとわかるように、具体的に特定できる言葉のみをなるべく用いて詩を書きました。その詩から、アニメーションを担当していただいた久保さん、米谷さんと話し合い、絵コンテに起こしてもらい、編集作業をしながら作っていきました。お二人とも素晴らしい方たちなので、とても楽しかったですね。
 

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■岸井ゆきの、浜辺美波との役作り

――――岸井さんとは、どのようにして真奈を作り上げていったのですか?
中川:岸井さんとは、真奈を演じる上で疑問があれば、その都度話をしてきましたが、役作りのため事前に何かを指示してやってもらうことはなかったです。すみれを演じた浜辺さんは、若い頃から芸能活動をされており、一般的な学校生活を送る時間がなかったと思うので、すみれが通ったことに設定していた女子校に来ていただき、そこの先生と話をしてもらったり、学校見学をしてもらいました。また、女子大生と会話をしてもらい、体ですみれが置かれていた環境を感じてもらう時間を作りました。さらに、カメラをお渡しして、ご自身の身の回りのことを撮影してもらい、すみれというキャラクターを演じる上での下地作りは、丁寧にやらせていただきました。
 
――――真奈とすみれの関係を作るため、岸井さんと浜辺さんが、クラインクインまでに一緒になる時間を多く持つようなことはあったのですか?
中川:現場で初対面とならないように、事前に対面する時間は作りましたが、このおふたりが特別仲良くなる必要はないと感じていました。というのも、真奈とすみれはそれぞれ独立した人だという捉え方ですから。むしろ、一見するとその気持ちが伝わらないぐらいの方がいいんじゃないかなと。
 
――――確かに、お互いに恋人がいたりもしましたし、常に一緒にいるという関係ではなかったですね。
中川:言語化するのが難しいですが、あのふたりは相談相手なのかもしれません。真奈とすみれは共通のものが好きだから仲が良いのではなく、共通の嫌いなものがあるから仲が良い。「ああいう男は許せない!」とか、ふたりの間には連帯感があるのだと思います。
 

■テーマ面、映画の外的要因面で一区切りとなる作品。これからは生きることの肯定を描きたい

――――中川監督は今までも死と向き合う作品を作ってこられましたが、『やがて海へと届く』は、今までの作品と何か違う部分がありましたか?
中川:僕は友人との出会いから映画を撮り始め、友人の死を題材にした作品で、ささやかな形ではありますが世の中に映画監督として出ることができた。この作品で死と向き合うというテーマに一区切りをつけることができたのかなと思っています。1月27日に公開されたスタジオジブリが制作の愛知県観光動画『風になって、遊ぼう。』では冒険することや、生きていくことの肯定が描かれているので、これからはバイタリティーのあるパワフルな作品を作っていきたいですね。
 また、映画の外的要因から言えば、今回は商業映画に多く出演されている俳優を起用し、ある程度の予算を出していただきました。その上である程度好きなように撮らせてもらえたというのは、自主映画として何もないところから撮り始めた身として、一つの区切りになるのではないかと思っています。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『やがて海へと届く』PG-12
2022年 日本 126分 
[監督・脚本]中川龍太郎 [脚本]梅原英司
[原作]彩瀬まる「やがて海へと届く」講談社文庫
[出演]岸井ゆきの、浜辺美波、杉野遥亮、中崎敏、鶴田真由、中嶋朋子、新谷ゆづみ、光石研
[劇場]4月1日(金)より全国ロードショー
[配給]ビターズ・エンド
(C) 2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会
 

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