レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2013年7月アーカイブ

hiroshima-s550.jpg『ひろしま 石内都・遺されたものたち』リンダ・ホーグランド監督インタビュー
(2012年 アメリカ=日本 1時間20分)
原題:”Things Left Behind”
監督:リンダ・ホーグランド
撮影:山崎裕
出演:石内都他
2013年7月20日(土)~岩波ホール、8月3日(土)~梅田ガーデンシネマ他全国順次公開

公式サイト⇒http://www.thingsleftbehind.jp/

(C) NHK / Things Left Behind,LLC 2012

 

~今と変わらず生きた人の佇まいを感じる、美しき「ひろしま」アート~

hiroshima-1.jpg こんなに静かで研ぎ澄まされた「ひろしま」映画を観るのは初めてだ。広島原爆被害者の写真を撮り続けている写真家、石内都さんによるカナダ・バンクーバーの人類学博物館での個展に密着。そして個展に訪れた人々が好きな作品の前で語る自身のヒロシマ写真への想いや、そこから導かれる自国の悲しい過去への誓い。観る者それぞれの想いが、ヒロシマを超えた普遍的な平和への祈りに重なっていく様子を鮮やかに切り取っていく。監督は、宣教師の娘として日本で生まれ、10歳のときにアメリカによる広島への原爆投下を知り、米国の戦争責任に関わる作品を生み出してきたリンダ・ホーグランド。初監督作品となった前作『ANPO』(10)に引き続きタグを組んだ山崎裕によるカメラワークは、まるで個展の場にいるかのような気持ちで写真に向き合わせてくれる。

 本作のリンダ・ホーランド監督に、本作独自の広島に対するアプローチや、監督が長年対峙してきた第二次世界大戦、そして自身のトラウマを原動力にした作品作りについて話を伺った。


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■石内さんの写真は、一気に広島、長崎へのアプローチをひっくり返した。

―――まず最初に、リンダ監督は石内さんの作品をどう感じ取っていますか?
 とても革新的なアプローチです。広島、長崎は大量虐殺ということで世界的にも有名になっていますが、十何万人一斉に亡くなっても落とされた命は一つ一つです。同時に魂も一つ一つ亡くなっていったということが石内さんの手法の中に秘められています。遺品は一つ一つしか撮れませんから。もう一つはモノクロイメージだったものをカラーに変えたということですね。一番おぞましい人間の姿を、一番美しいファッションに変えた。一気に広島、長崎へのアプローチをひっくり返したように思います。

―――写真展の来場者に対するインタビューでは、それらの遺品を身につけていた人のことに思いを馳せたり、自らの過去や、自国の抑圧された歴史について言及したり、来場者がそれぞれの解釈を素直に表現していたのが印象的でした。
 戦争はイヤだとか、原爆投下はかわいそうだという分かりきった言葉は、この映画の中では使えないと分かっていたので、まずは本当に写真に興味を持ってくれている人を観察しながら探しました。その人たちには展覧会を見終わった後に、一番好きな写真を選んでもらって、その横に立って「なぜこの写真が一番好きなのか教えてください」というアプローチをしました。すごくパーソナルなところで「水玉模様が好き」という人もいれば「屈辱の雨にあった母親のことを思い出した」とか、スペイン内戦に触れる人もいました。

hiroshima-s1.jpg―――かなりパーソナルで普通人には言えない深刻なことも告白していましたね。
 展示している写真に説明がないので、来場者は写真に秘められた物語を知りたいわけです。あんな強烈な写真を見ても、何の情報もない。かろうじて、着ていたのはたぶん女性だろうぐらいは分かるものの、それ以外の情報は意図的に全く提供していません。勝手にストーリーを作ったり、自分の戦争がらみの辛い秘密を告白するといった風に、あの展覧会場は神秘的で聖なる場所、自分が語っても安全というような、どこか無言の許諾を与えていた場所なのかもしれません。どれだけ傷ついた人間でも、原爆投下で亡くなった人の方がもっと傷ついて亡くなった訳ですから。

 この作品の中で父親が科学者としてあるプロジェクトに参加していたけれど、目標は原爆と聞いて辞めたという話がありました。一人の父親が勇気を出して辞めたのに、他の人は原爆と知っても作り続けたということで、何か視点がひっくり返るじゃないですか。そういう部分も見せたかったのです。

 

■バンクーバーの大自然とトーテムポールは、原爆投下に対する無言の巨大な否定。

―――何度も博物館にあるカナダ先住民が作ったトーテムポールが映し出されていましたが、その意図は?
 トーテムポールは独特の表情をしていて、ベロを出したり、人間をなめているようにも見えます。原爆を作ったり、戦争をしたり愚かなことをしている人間に対するトーテムポールなりの否定や、あざとい目線を感じて、私は好きなのです。原爆という災いを否定や批判するのに、人間の言葉はもういっぱい聞いています。このトーテムポールとすばらしい美術館と、とてもすてきなお客様に救われたと同時に、やはりバンクーバーの大自然が無言の原爆投下に対する巨大な否定に思えました。こんな自然があるのにそんな愚かなことをするのかという、どんなナレーションにも勝るパワーがあります。

 

■「原爆」のイメージから解放、亡くなった人が「うかばれる」映画にしたかった。

hiroshima-2.jpg―――石内さんも何度か語られていましたが、本作では「解放」が一つの大きなテーマになっていますね。
 「原爆被災者」という事実からは解放できませんが、イメージから解放してあげたいというのが石内さんの素直な気持ちです。私も十何万人一斉に亡くなった群像のイメージから解放してあげて、映画の最後に三人の人たちが、どうやって一人ずつ亡くなっていったか映し出していますが、個を見せるのが追悼の基本だと思うんですよね。これまでのやり方を批判しているわけではなく、映像ならではの石内さんの写真と私の映画で、個人がこういう想いで亡くなったということを証言できるのではないかと思います。

 もう一つの解放の意味は「うかばれる」。ケロイド状態の怖い人たちというイメージに縛られていたのが、石内さんにこのように撮られて、展示会で来場された方が「かわいいね。きれいだね」と言われたことによって、やっとイメージから解放されてうかばれる。そのことが前提で作った映画ですね。

―――監督ご自身は、過去のトラウマから「解放」されたのでしょうか?
 生い立ちのトラウマはあったのですが、実は前作『ANPO』を広島に持って行ったときに、とにかく広島の人たちがどこよりも熱く歓迎してくれ、それで基本的にトラウマから抜けたんですよね。今回も新作を広島で試写したら、上映後の記者会見で、35人ぐらい来てくださったのを見て、今年の8月6日は広島で過ごす勇気ができました。

 私なりにあの戦争は何だったのかという三部作を作り、日本の映画館でも公開されていますし、既に公開が始まった東京で、見終わったお客様から「これまで怖くて広島に行けなかったけれど、リンダさんの映画を見て勇気が湧いて今年の夏行きます」と言ってもらえました。トラウマの延長線上で映画を作り、色々な歴史を勉強し、石内さんにも出会い、帰るべきところに帰ってきた気がしますね。私が精一杯できることは成し遂げたという、ある種の達成感があるかもしれません。私の中の太平洋戦争は終わって、次は動物に関する映画を作る予定です。 

―――「美」の力でアメリカの「理論」に相対するとおっしゃっていますが、その意味は? 
 アメリカは原爆投下の正当化を続けていますが、それは完全に神話なんですよね。そういう神話に対抗するためには、美しいワンピースから透けて見える、「若い女性がこういう形で亡くなったんですよ」という表現でしか反論できません。理性と称してアメリカを正当化する完全な神話に対して、私は数字や理性で反論するのは意味がないと思ったのです。

 

■「人間とは何かを考えさせてくれるアートに、なぜ私たちは惹かれるのか」を追及。

hiroshima-3.jpg―――この映画では徹底的に説明の要素が省かれていますね。
 説明ではなく、感性で観てもらいたいのです。「私はあの映画を見て、あの美術館に行った気持ちになった」というのが一番のねらいです。広島への追悼や贖罪という狙いはあるのだけれど、もう一つの最大のテーマは、なぜ私たちはアートというものを体験するために美術館にお金を払って足を運ぶのか。それもリクリエーションではなく、もっと本質的なアート、人間とは何かを考えさせてくれるアートになぜ私たちは惹かれるのかも実は追求しているんですよね。

―――感性といえば、山崎裕さんのカメラワークが展示写真とのいい距離間を保ちながら、時には繊維が見えるぐらいまで肉薄し、静かな説得力を与えていました。山崎さんとの出会いや撮影で一番感じたことは?
 山崎さんとは、私が是枝裕和監督の映画『ワンダフルライフ』(98)でサンセバスチャン映画祭に呼ばれたときに、山崎さんとお会いしました。『ANPO』の撮影をお願いしたとき、「実は僕が一番最初にカメラを廻したのは、60年安保で学生の時16ミリで廻したんだよ」と、すごく想いがあったことを明かしてくださいました。一番山崎さんの感性ですごいのは、石内さんが広島で撮影している非常にセンシティブで親密な現場に、あたかもモダンダンサーみたいな軽いタッチで入っていかれることですね。

 

■ドキュメンタリーを観るとき「メッセージを受け止める」ことからもお客さんを解放したい。

―――作品を作るとき、どのようなアプローチを心掛けているのですか?
 多くのドキュメンタリーはあたかもカメラがないように作ろうとしていますが、私の場合はカメラのあることが何もかも変えると思っているので、「カメラがないように自然な姿の被写体を撮る」ことは全然狙っていません。私は、撮る以上は全部ひっくるめて美しく見せます。何かを暴露するとか、そういうところも含めて一般的なドキュメンタリー作家ではないかもしれません。映像小説家というか、ものすごく明瞭な自分の視点があって、その視点に基づいて映像を撮って編集をしています。私の生い立ちの延長線上で自分にしか見えない世界があるので、それは他人に何かを言われても気になりません。ドキュメンタリーとは何かメッセージや主張をいうものだと考えがちの人には「この映画のメッセージはありません」と伝えたいです。メッセージを受け止めるということからもお客さんを解放してあげたいのです。

hiroshima-s2.jpg―――インタビューで「私はドキュメンタリーにつきまとう客観性には興味がない」と語っておられましたが、その真意は?
 もし私の作品を見に来ていただけるのなら、あまりドキュメンタリーを期待してほしくないのです。ドキュメンタリーとは、カメラを持って真実を追求するというイメージがありますよね。客観とは英語で「objective」というのですが、例えば原爆投下は動かせない事実ですが、飛行機の中のカメラの映像と、かろうじて原爆直後に広島や長崎のきのこ雲を撮ったカメラの映像とどちらが客観的なのか。どちらも客観的だったら、なぜああも違うのか。多分お互いのいた場所からしか見えないものがあって、それは客観じゃないような気がします。客観とは何か、私もいまだにわかりません。ただ私には主観があるし、主観というのは私の真実で、それは確信を持って表現できると思うのです。

―――タイトルを平仮名の「ひろしま」にしたのはなぜですか?
 石内さんが悩み抜いて決めました。平仮名というのはもともと女言葉なので、女性の表現なのです。男性の遺品も撮っていますが、やはり美しいのは女性の花柄のワンピース等で、大半が美しい遺品です。前までは石内さんも「女性の写真家」と言われると、1ランク下に見られているようで嫌だったそうですが、今回の写真は女性にしか撮れないので、「女性の写真家」と言われてもいいという覚悟があったと思います。

―――石内さんの写真もそうですが、鑑賞後それらを身に着けて生きていた人の「気配」が残りました。
 ケロイドに覆われた恐ろしい人ではなくて、一緒にお茶でも飲んで、うちわでも煽いで、世間話をしながら時間を共有できる人たちとして、もう一度原爆投下1分前の人たちを見てほしい。それが石内さんと私の共通するねらいです。被爆者は遠い向こうにいて、私たちは偉そうに、あたかもそれから何十年間も文明が進んだところにいるように見えるけれど、実際は何も進んでいないのです。


 インタビューでリンダ・ホーグランド監督は、何度も「感性」という言葉を口にされ、今までの原爆投下や広島を取り扱った映画にはない、「美」という視点で亡くなった人個人個人に光を当てることで、新しい追悼の形を我々に示してくれた。

 上質な、肌が透けて見える素材のワンピースや、祝い着の子供用の和服、くっきりした目元の日本人形など、広島原爆被害者の遺族が広島原爆資料館に後世に伝えてほしいとの願いを込めてたくす遺品の数々は、決して原爆の壮絶さを示すだけのものではない。その瞬間まで、他の人と変わらぬ日常を幸せに暮らしてきた「生の記憶」に真っ白な気持ちで向き合えるような余白が心地よかった。写真を見ながら自分の中で何度も反芻したくなる美しい作品に静かな感動を覚えることだろう。
(江口 由美)

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フレンチ・イケメン登場!『黒いスーツを着た男』ラファエル・ペルソナ(32歳) インタビュー

~陰のある美しさから“アラン・ドロンの再来”と謳われるラファエル・ペルソナの初来日~

(2013年6月22日(土)東京パレスホテルにて)

(2012年 フランス・モルドヴァ 1時間41分)
原題:Trois mondes
監督:カトリーヌ・コルシニ(『旅立ち』『彼女たちの時間』)
出演:ラファエル・ペルソナ(『アンナ・カレーニナ』『恋のベビーカー大作戦』)、クロチルド・エスム(『美しい人』『ミステリーズ 運命のリスボン』)、アルタ・ドブロシ(『ロルナの祈り』)、レタ・カテブ(『愛について、ある土曜日の面会室』)

2013年8月31日(土)~ヒューマントラストシネマ渋谷、9月7日(土)~シネ・リーブル梅田 ほか全国にて順次公開

配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト⇒ http://www.cetera.co.jp/kurosuits/

 (C)2012 - Pyramide Productions ‒ France 3 Cinema

 


 

~成功を掴みかけた男の転落…それは全うな人生の始まりでもあった~

 

kuroisutu-1.jpg 修理工から地道に努力して10日後には社長の娘との結婚式を控えた男が、ひき逃げ事件をキッカケに、人生を見つめ直す物語。これは幸せの絶頂から転落するという暗いお話に終っていない。野心むき出しの強欲さもなく、ある結論へ辿り着いた男の葛藤をフレンチノアールタッチで描出。悲哀を滲ませながらも後味のいい印象を残した男の表情で終わるラストシーンは秀逸。それもラファエル・ペルソナの繊細な演技力の賜物だろう。世界中の女性を熱狂させたあのアラン・ドロン(『太陽がいっぱい』『地下室のメロディー』)の陰のある美しさに、確かに似ている。
 母親がスペイン人で父親がフランス人。《フランス映画祭2013》の特別ゲストとして初来日が緊急決定したラファエル・ペルソナ。フランス映画界に久しぶりに現れたイケメン俳優は、質問にも丁寧に応えて、その美しさ同様に映画への情熱を語ってくれた。

  


 

 

kuroisutu-RP-3.jpg――― 人生の崖っぷちに立つという危機的状況の主人公アルをどのように理解して演じたのですか?
ラファエル:事故前のアルの人生は、親しい友人や母親に囲まれて、成功を掴もうとしていた。ところが、そうした野心も事故で一変してしまい、自分の心の卑怯さに向き合わざるを得なくなる。そこでまず彼がした事は、起きたことの否定。事故後の彼の人生は現実の拒絶から始まり、自分がどのような状況にいるのか、自分の感情すら説明できないようになってしまいます。それを分析してくれたのがジュリエットの存在です。彼女のお蔭で物事がスッキリしてきて、最終的にアルは人生をやり直すことができる訳です。事故というのはパラドックスなものを含んでいて、悲劇でありながら、それは生まれ変わるためのキッカケにもなると理解しました。私自身、アルの神経質な面がありますから、共感することができました。

 

 

――― 本作でとても重要なシーンとなったのが、危機的状況で友人ではなくジュリエットに頼るシーンや母親にお金の無心に行くシーンなど、とても繊細な演技が要求されたと思うが、コルシニ監督の演出は? kuroisutu-RP-1.jpg
ラファエル:最初コルシニ監督のことを恐い人だと思っていました。厳しくて要求がきつい監督だと聞いていましたから。でも、これが男の監督だとそれは長所になるのに、女の監督だとそうはならないのはおかしい。私が監督に望んだのは、対等の関係。上下関係では何も始まらないからです。実は、コルシニ監督は他人に頭を押さえつけられるのを嫌がるタイプで、最初は抵抗していましたが、次第にお互い尊敬し合えるようになってきて、上手く関係を築いていくことができました。

 

kuroisutu-RP-4.jpg――― 監督自身心情的変化を繊細に撮る監督ですが…?
ラファエル:確かにその通りの監督です。時には私の心が揺れ動くようなこともありました。特に私が感動したのは、母親役の女優さんが演じるシーンです。セリフではなく、体から感じ取れる演技をしてくれました。去年のカンヌ映画祭に出品作で、重くて厳しい内容ですが、この作品を通じて深いところで理解し合えたと思います。プロとして尊敬できる監督といい仕事ができたと思っています。

 

――― アラン・ドロンの再来と言われ、「美しい」というのが持ち味になっているが、「美」には「正義の美」もあれば「悪の美」もある。今回の役は「もろさ、弱さ」を持った美しさだと感じたが、それは自分に近いものですか?
 kuroisutu-RP-2.jpgラファエル:人というのは、内面を知らなくても動物的感で外見だけで読み取れることがあります。主人公のアルの人生は万事順調だったのに、事故によって全てがダメになってしまう。自分の意志で成功への努力をしてきて、母親はそんな息子をとても誇りに思っています。フランスでは、母親が息子を誇りに思うかどうかはとても重要なことです。私自身も母親にはそう思ってほしいと願っていますので、その点では自分に近い人物のように感じました。でも、演技する前にあまりキャラクターを分析してしまうと、撮影中の突発的演技が出て来なくなります。シナリオにはなくても、例えば、車の中で感情を爆発させるシーンがあるのですが、それはアドリブでして、スタッフがとても怖がっていました(笑)。

――― そのシーンは、アルという人物の感情に共感できるいいシーンでしたね?
ラファエル:誰にでもそういうことは起こり得るのです。

kuroisutu-RP-5.jpg――― “アラン・ドロンの再来”と言われて笑っていたが、その言われ方は自分に合っていると思いますか?他の表現をするとしたら?
 ラファエル:合っているとも何とも言えません(笑)。他人様が言って下さることなので、そう言われることを光栄に思っています。ただ、意識してアラン・ドロンのような生活を送っている訳ではありません。普通に自分の人生を生きているだけです。でも、ありがたく受け止めています。


 


 

kuroisutu-RP-7.jpg今回のインタビューは、ラファエル・ペルソナのあまりの美しさに緊張してしまい冷や汗ものだったが、さらに「しゃべり過ぎてすみません」なんて謙虚に言われたり、写真撮影にも快く応えてくれたりと、なんてフレンドリーでいい人なんだろう♪  誰しもメロメロになるに違いない! と、久しぶりのフレンチ・イケメンを間近にして、ひとり盛り上がってしまった。この日はランチに懐石料理を食べに行き、その美しさと美味しさに、「こんなの初めて食べる!」とひたすら感動していたらしい。

  『アンナ・カレーニナ』にも出演。『黒いスーツを着た男』を皮切りに、『恋のベビーカー大作戦』はWOWOWの《W座からの招待席》で、放送前に全国特別無料上映会が開催される。他にも出演作が目白押しの大注目株!久しぶりのフレンチ・イケメンの登場である。

(河田 真喜子)

 


 

★【カトリーヌ・コルシニ監督からの特別メッセージ】

陰のある主人公アルの表情といい、夜の撮影といい、構成力も素晴らしく、ひき逃げ事件という悲劇から始まった物語が、最後は後味のいい映画となっている『黒いスーツを着た男』。当初予定されていたカトリーヌ・コルシニ監督のインタビューが中止となり、シネルフレの質問に対し、特別にメッセージを寄せてくれた。

――― 幸せを掴む直前に罪を犯してしまった主人公が、迷いながらも罪から逃れることなく、良心に従ったところに感動しました。犯罪組織の一員でありながらそうした行動をとった主人公の変化がこの映画の一番大きなポイントだと思います。それを表現するのに、どのように考えて演出したのですか?
 kuroisutu-2.jpgコルシニ監督:ジュリエットが近付いたから、真実を知っている女を前に嘘を続けられなかったのです。つまり、ジュリエットは、イライラさせる存在だけど、天使のようにアルを見離さない女なんです。

――― 被害者の妻ヴェラの存在が、アルとジュリエットを追い詰めているように感じられましたが、それは罪の大きさを実感させるためでしょうか?それとも、アルとジュリエット、ヴェラという3人が、現状からより落ち着いた生き方をするキッカケとして対比させたのでしょうか?
コルシニ監督:観客に、彼らの苦しみを実感してもらいたかったからです。

――― その3人のキャラクターや立場や気持ちの変化が繊細な表情で汲み取れましたが、具体的に俳優たちに演出指導したのですか?
コルシニ監督:俳優の頭の中で起きていることを、表情に出すように求めました。
 


*3回目の来日となるコルシニ監督は、実にオトコマエな方で、大の日本びいきで、夜も居酒屋へ飲みに行ったり、漫画ショップへ行ってお土産用にフィギアを買ったりしていたらしい。

rikyu-b550.jpg『利休にたずねよ』完成会見

市川海老蔵、映画完成と市川團十郎[特別出演]との共演を語る!

中谷美紀が、人間千利休に寄り添い、利休への熱き思いを語る!

7月10日(水)開催/完成報告会見 

 『利休にたずねよ』(12月7日公開/配給:東映)で稀代の茶人・千利休を演じる市川海老蔵、利休を見守り、寄り添う妻・宗恩を演じる中谷美紀、そして監督の田中光敏が登壇し、完成報告会見を行いました。マスコミ向けに先行しておこなわれた特別試写会直後の興奮冷めやらぬ中、3人が登場。会見の場で市川團十郎の【特別出演】が発表となりました。海老蔵さんは團十郎さんとの競演を、中谷さんはこの作品への熱い思いを語りました。


 

【日時】 7月10日(月)13:40~  【場所】 新宿バルト9   
【登壇者】 市川海老蔵(35)、中谷美紀(37)、田中光敏(54)


◆本作の話がきた時の感想

rikyu-1.jpg市川海老蔵(以下、海老蔵):監督と脚本家がお手紙をくれたんです。「どうしてもこれを海老蔵君にやってもらいたい」と。今まで数々の名優が演じていましたので、僕じゃないだろうと思って丁重にお断りをしたんですけれど、「どうしてもキミがいい」と更に手紙がきたんですね。それからわざわざ会いにきてくださいまして、そこで「なんで僕なんですか?」と聞いたら「パッションです」とわけのわからないことを言われて(笑) そこからもう1度会うことになった時に、前向きにいろいろ作品のことを聞いて、お受けすることになりました。

中谷美紀(以下、中谷):10代の頃から「お~いお茶」という商品の広告をやらせて頂いていましたので、女優人生はお茶と共にあったといいますか、お茶と共に歩んできましたので、茶道というものにも興味を持ったんです。それもありこの作品が映画化される前から、何か関わりたいと思っていました。利休の役が平成の狼藉者の海老蔵さんということで(笑)いろいろな意見があったんですが、私としてはどんな困難なことがあっても、利休の妻を演じてみせる。この作品を良い物にしてみせると思っていました。


◆映画の感想

海老蔵:僕は自分の作品では泣かないし、自分が出ているからって贔屓目で見ないんですが、終った後に泣いたな、涙がでたな。というところは新しいことでした。本を読んだ方、利休や歴史に興味のある方はもちろんなのですが、若い方にも見てもらったら、芸術は普通の人から始まったんだなと、わかってもらえるんじゃないかなと思った部分で、良い映画だと思いました。

 

◆市川團十郎(特別出演)との共演について、

rikyu-3.jpg海老蔵:父が武野紹鷗の役を引き受けた時に、家に呼ばれて「出させて頂きます。」と言われたんですね。倅ながら私達は普段から敬語ですし、距離もあり師弟関係でもあるんですが、「今回はあなたが主役です」ということで、そんな言い方をされたんです。父はシーンとしては3、4シーンなのに、武野紹鷗の資料を山のように積んで、かなりこだわって役作りをして、監督にもこのシーンは利休にこうさせた方がいいというようなことを随分前から言っていました。ただ僕はそうしたくなくて。今日ご覧いただいた形にしたかった。普段はそういうことを言うと「いいえ、違います」と、父が主張したやり方にしたかったと言うんですけど、今回は体調が悪かったんでしょうね。監督がシーンについて父に言いに行くと言った時に「抵抗すると思いますよ」と言ったんです。なのに父は二つ返事で「うん」と言った、それを聞いた時にドキッとしました。でも現場にきたら「違う」と言うんじゃないかと思ったんですが、何事もなく務めていた。

武野紹鷗と与四郎(利休)、もしくは團十郎と海老蔵、師匠であり倅であるという関係性は父じゃなかったら駄目だっただろうし。父はこの映画が公開する時に、もしかしたら自分の命はないのかも知れないと認識していたんじゃないかなというような節も感じてしまったので、なんか父の姿を映画で見ると、改めてこの作品に出演してくださって、弟子という形で出演して、言葉で言い表せないものがありました。

 

◆海老蔵さんとの共演について

中谷:原作も本当に緻密に作られた物で、監督の美意識の高さは利休に匹敵するぐらい素晴らしく、また、海老蔵さんの演じている利休を見て3ヶ所ほど涙するシーンあったんですが、そんな作品をご一緒することができて、監督、海老蔵さんには感謝しています。


 

《作品概要》

【原作】「利休にたずねよ」山本兼一著(PHP文芸文庫刊) -第140回直木賞受賞作-
【監督】田中光敏『化粧師』(2001年)『火天の城』(2009年)
【脚本】小松江里子 NHK大河ドラマ「天地人」
【出演】市川海老蔵 中谷美紀 伊勢谷友介 大森南朋 ほか                     
【配給】東映

公式サイト⇒ http://www.rikyu-movie.jp/

2013年12月7日(土)~全国東映系公開

 

 

 

 

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ぶっ飛び時代劇!『桜姫』青木崇高インタビュー

(2013年 日本 1時間35分)
監督:橋本一
出演:日南響子、青木崇高、麻美ゆま、平間美貴、星野あかり、七海なな、マリエム・マサリ、HIRO、クロちゃん(安田大サーカス)、野々村真、平山祐介、風祭ゆき、徳井優、合田雅吏、でんでん

2013年6月29日(土)~りヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル梅田、アポロシネマ8、T・ジョイ京都、ほか全国ロードショー

公式サイト⇒ http://sakurahime-movie.com/#page_a

© 2013「桜姫」製作委員会


 

~時代劇が似合う長身俳優のココロ~

 

  型破り時代劇『桜姫』に主演した青木崇高が30日、舞台あいさつのため来阪、インタビューに応えた。

sakurahime-2.jpg 『桜姫』は四世鶴屋南北の「桜姫東文章」をもとに橋本一監督らが大胆に脚色した自由奔放な時代劇。京・清水を舞台に聖女・桜姫と僧・清玄の流転と堕落を描く“大南北”らしい物語。高貴な姫君が女郎に転落するお話は今ならワイドショーネタだが、映画では美少女モデル日南響子が桜姫に抜擢されて話題を呼んだ。桜姫は、一夜襲われて結ばれたワケあり稼業の権助(青木崇高)に恋心を寄せ、家を飛び出して遊女・風鈴お鈴として権助を待つストーリー。『茶々  天涯の貴妃(おんな)』など時代劇を手懸けたこともある橋本監督が、古巣・東映を離れて撮った異色時代劇。『一命』や『龍馬伝』『るろうに剣心』など時代劇での仕事が目立つ青木崇高(33)に時代劇の心得を聞いた。
 


―――立ち回りの仕草が決まっていたが。
 青木:見せ方は気を遣いました。『るろうに剣心』(12年)の前だったら違っていたけど、腰を落として体の軸を据える、という所作の基本が分かってきた。ストーリーはもちろん大事だけど、立ち回りが時代劇ですから。どうしたらいいか、監督にも聞いた。『桜姫』ももとは歌舞伎。決めるところは決めるアソぶところはアソぶ、という感じで、お客さんを混乱させる方が面白いのでは、と。
(鶴屋)南北も調べてみました。歌舞伎だから特にどうこうということはないけど、ホン(脚本)を改訂していくたびに変わっていきましたね。

―――いつから目覚めたのか?
青木: 時代劇ではないけど、所作などは朝ドラ「ちりとてちん」で着物の所作などを覚えた。時代劇は一昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」で立ち回りを学んだ。東映京都撮影所のスタッフから「あれよかった」と言われてお墨付きをもらった気がした。

sakurahime-aoki-1.jpg―――橋本監督とは?
青木:初めてでした。この映画ではテレビじゃ出来ないことをやろうと撮影前に話し合った。たばこを道端に捨てることなど、もう出来ない。昔は刑事ものなどでは定番だったのに、いまでは難しくなっている。やれることをたくさんやってみようと話し合った。  言葉も急に現代風になるし、音楽も和洋折衷で全然いいんじゃないか、とか型にはまらないのは監督の考え通りです。

―――2年前に米国留学している。目的は?
青木:語学です。このまま英語しゃべれない人生を送るのか、と思ったら、どうしても行きたくなった。事務所(スターダスト)公認で半年間、専門学校に通った。向こうで日本映画を見られる、ということもありました。どれほど日本映画が興味を持たれているのか。日本で思っているほどではなかったけど、三池(崇史監督)さんの人気は凄かったですね。英語は今も続けています。

―――時代劇俳優は確かに少なくなっているので期待は大きい。これまで見てきた中で一番好きな時代劇は?
青木:ウーン、1本だけあげるのは難しい。やっぱり三船さんですね。黒澤さんの『椿三十郎』は凄かった。

(安永 五郎)

typist-d550.jpg『タイピスト!』レジス・ロワンサル監督(42歳)インタビュー

(2013年6月24日(月)東京パレスホテルにて)


 

(2012年 フランス 1時間51分)
監督:レジス・ロワンサル
製作:アラン・アタル『オーケストラ!』 
撮影監督:ギョーム・シフマン『アーティスト』
出演:ロマン・デュリス『スパニッシュ・アパートメント』、デボラ・フランソワ『ある子供』、ベレニス・ベジョ『アーティスト』、ミュウ=ミュウ『オーケストラ!』

2013年8月17日(土)~ ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー


★作品紹介⇒ こちら
★《フランス映画祭2013》デボラ・フランソワ&レジス・ロワンサル監督トークショーのレポート⇒ 
こちら
★公式サイト⇒ http://typist.gaga.ne.jp

© 2012 – copyright : Les Productions du Trésor – France 3 Cinéma – France 2 Cinéma – Mars Films - Wild Bunch - Panache Productions – La Cie Cinématographique – RTBF (Télévision belge)© Photos - Jaïr Sfez.


 

typist-1.jpg 女の子の夢を乗せたカラフルでキュートなエンターテンメント映画『タイピスト!』で長編映画監督デビューを飾ったレジス・ロワンサル監督。彼自身相当なシネフィルらしく、ビリー・ワイルダーやヒッチコック、ゴダールやエリック・ロメール、ジャック・ドゥミといった監督作品へのオマージュが至る所に散りばめられ、映画ファンとしてはワクワクするような映画だ。主人公ローズを演じたデボラ・フランソワにも、1950年代の女優、オードリー・ヘップバーンやグレース・ケリーやマリリン・モンローなどを参考にするように言ったとか。ただし、真似するのではなく、吸収するようにと。かつて盛んに行われていたタイプライターの早打ち大会にヒントを得て脚本も手掛けたというレジス・ロワンサル監督にお話を伺った。

 

――― 最初『マイ・フェア・レディ』を思い浮かべたが、あれは調教のような関係性だったのに対し、タイプライターの早打ちコンテストを主軸にしながら、父親の支配から逃れ田舎から出てきた女の子と、「1番になれ!」と父親に言われながらも2番手に甘んじているルイとの、其々の心の葛藤を絡ませ、よりラブストーリーに深みを出していましたね?
typist-d2.jpgレジス・ロワンサル監督(以下監督):確かにこの映画を見て『マイ・フェア・レディ』を思い起こされると思いますが、その関係性は大きく違いますね。貴女の考えに私も大いに賛同します。あれは一方通行で、オードリー・ヘップバーン演じる女性は心から解放されている訳ではありません。この映画のローズは、チャンピオンにもなり、愛もゲットして、女性としてより大きく開花させています。おそらく60年代のローズはスーパーウーマンになっているかも!?(笑)

――― なぜタイプライターなのか?
監督:ある日タイプ早打ちコンテストのドキュメンタリーTVを見て、これに憑りつかれてしまったんです。クレイジーだが、タイプライターそのものは人類の歴史を語っているのではないかと魅了されました。この器械で、様々な物語を創り出すことができるし、スポーツとしての競技にもなる。勿論タイプライターは今では使われていませんが、キーボードは残っていて、我々には深い関係の存在だと思います。スポーツとしても、あまりにも超人的な競技とは違い、当時身近な器械だったタイプライターの早打ちだと、自分にもできるのでは?と、ハードルを下げて共感できたのではないかと思います。

typist-d1.jpg――― なぜ1958年なのか?
監督:1958年を選んだ理由は、60年代移行する過渡期で、これから何かが始まるという期待にあふれていたからです。僕はファッションやインテリアのデザインや色彩も音楽も大好きなんです。映画では、ヒッチコックの『めまい』、ダグラス・サークの『悲しみは空の彼方に』、ジャック・タチの『ぼくの伯父さん』、アルベール・ラモリスの『赤い風船』など、1958年の映画は傑作ばかりです。それに、小津安二郎の『彼岸花』もこの年ですね。私はあの彼岸花の色彩に圧倒されました。

――― 映画の中でも色彩の影響は大きいですね?
監督:そうなんです。私はカラフルなパレットが大好きでして、『タイピスト!』でも、衣装やインテリアは勿論ですが、表情を映すネオンの色や照明にもこだわりました。

typist-3.jpg――― ロマン・デュリスの芸域の広さに感心したが、監督は彼をどう思う?
監督:私は彼の作品をずっと見てきました。私がまだ短編を作っていた頃には、彼は既にいろんな作品に出演し、ドラマやコメディなど何でもこなしていました。それに、監督の選び方が絶妙な俳優だなと思っていました。彼の演技で好きなところは、決して声だけでなく、体全体で演技をするところがあり、ちょっとダンサーに近いものを持っています。彼がそれを意識しているのかどうかはわかりませんが、僕は体が雄弁に語るような俳優が好きなんです。それから、彼は努力家で、準備の段階からリサーチをして役作りを万全にするし、現場でも新しいことを提案してくれるし、この撮影期間中、僕等はとても意気投合して仕事ができました。

typist-2.jpg――― それは楽しい現場だったのでは?
監督:やろうとしていることはハードルが高くて、挑戦と緊張の日々でした。パリに車でやって来るシーンなど、かなりの準備が必要でした。大変なんだけど現場にはマジカルな空気が流れていたのか、スタッフもキャストも全員が全身全霊で臨んでやり遂げることができたのです。僕にとっては初めての長編映画で、生きるか死ぬかの死活問題として、スタッフ全員が理解して付いて来てくれました。キャストもスタッフも僕の仕事ぶりをリスペクトしてくれて、確かに撮影現場は楽しくてやりやすかったです。

――― 現場の雰囲気の良さが『タイピスト!』の陽気さに反映しているのでは?
監督:その通りです。でもそれは、僕自身が計算したものではありません。みんなのお蔭なんです。次はシリアスな作品になるかも知れませんよ。

――― 持ち味を活かした作品を作って頂きたいですね。
監督:私の友人も「独自の持ち味がある」と言ってくれるのですが、私自身はそれをあまり知りたくないのです。なぜなら、それに逆らって無理に違うことをしようとするからです。

――― デボラ・フランソワについては?
監督:デボラは素晴らしい女優です。僕はデボラの熱狂的ファンでもあるので、あまり客観的に言えないんですよ。撮影を一緒にやって来たのに、よく覚えていないんですよ~(笑)。


 

 子供の頃から映画少年で、特にクラシカルな映画が大好きだったとか。好きな映画について語る時の監督は、少年のように目を輝かせ身を乗り出して語る。もっとシネフィルについてお話したかった。大好きな1958年の映画が盛り込まれた『タイピスト!』は、新しい時代への息吹と、映画全盛期の勢いを感じさせてくれる。だが、クラシカルな形態をとりながら、自らの力で、自分らしく生きることの幸せを謳い、女性が社会に出て働くことが当たり前になった現代を生きる私たちに、改めて自由に人生を選択できる幸せを実感させる。

デボラ・フランソワについては、二人で登場したトークショーのレポートをご覧下さい。
《笑いと涙のトークショー!『タイピスト!』のヒロイン:デボラ・フランソアとレジス・ロワンサル監督が来日の歓びを語る》⇒ http://cineref.com/festival/2013/06/post-13.html

(河田 真喜子)

zinzin-s550.jpgzinzin-1.jpg『じんじん』企画・主演大地康雄インタビュー
(2013年 日本 2時間9分)
監督:山田大樹
出演:大地康雄、小松美咲、佐藤B作、中井貴恵、井上正大、若村麻由美、絵沢萌子、中田喜子、板尾創路、手塚理美他
2013年7月13日(土)~テアトル梅田、8月3日(土)~京都シネマ、8月10日(土)~元町映画館他全国順次公開

※2013年度ゆうばりファンタスティック国際映画祭W受賞<ファンタランド賞(作品)、人物賞(大地康雄さん)>
公式サイト⇒http://www.jinjin-movie.com/
(C) 2013『じんじん』製作委員会

 

「絵本を中心にやさしい町づくりが根付いた剣淵町、ここに日本の明るい未来を見たんですよ」

zinzin-2.jpg心底優しい気持ちになれる映画に出会えるのは、本当にうれしいものである。俳優であり『恋するトマト』で監督デビューも果たした大地康雄が、絵本で町おこしを行っている北海道剣淵町やそこで読み聞かせをする町の人たちに出会い、温めてきた企画が映画化された。先行公開された北海道をはじめ、熱い感動を呼んでいる本作は、町の人が仕事の空き時間にボランティアで行っている絵本の読み聞かせが大きな見どころだ。家族よりも芸の道を選んだ大道芸人の銀三郎と離れ離れになった娘とを結ぶ鍵としても絵本が登場し、絵本の魅力が散りばめられている。修学旅行にやってきた高校生たちが、農業研修をするうちに目を輝かせるようになったように、雄大な剣淵町の自然の中で私たちも失っていた何かを取り戻せそうな力のある作品である。

本作の企画およびコミカルな魅力を見せる主人公銀三郎を演じる大地康雄に、剣淵町と出会ったきっかけや、絵本や読み聞かせが子どもや大人に与える影響、そして剣淵町の魅力についてお話を伺った。

 


━━━絵本の読み聞かせが物語の軸となる映画であることに感銘を受けました。しかも、町ぐるみで読み聞かせをしている地域は非常に珍しいですね。
町ぐるみで読み聞かせを始めて、25年ぐらいになるそうです。25年もやっていれば、私よりも読むのがうまい読み聞かせの達人が何人もいるんですよ。何よりも剣淵町は、絵本を真ん中に置いて優しい町になることに成功しています。いいことだらけの剣淵町を是非全国に紹介したかったのが、映画を作る上での大きな動機になっていますね。

zinzin-s1.jpg━━━剣淵町のみなさんと交流することになったきっかけは?
前作『恋するトマト』を作ったのが、全部つながっています。農業がテーマの作品で、北海道で上映会を50カ所ぐらいで行ったのですが、旭川上映会後の交流会で、「大地さん、私の故郷に帰る前に寄ってくれないか」と何度も声をかけてくださる方がいました。翌日帰る予定だったのですが、あまりにも熱心に誘ってくださるので飛行機を一本遅らせて、渋々行ったんです。何があるのかとお聞きすると「絵本です」とおっしゃるけれど、その時はピンときませんでした。剣淵町に着くやいなや絵本の館に誘導され、ちょうど子どもたちに読み聞かせをしているところに出くわしました。十数名の子どもたちが床にべったり座って、どんどん絵の近くまで詰め寄り、最後のオチで全員同時に床にひっくり返って大爆笑していたのを見て、正直びっくりしました。次に農家のお父さんが『つきのよるに』(作・絵:いもとようこ)を読み聞かせると、皆泣いていて、子供たちの表情が輝いていました。絵本とはこんなに豊かな感情を育てているのか。大げさな言い方をすれば、ここ(剣淵町)に日本の明るい未来を見たんですよ。

━━━なるほど、絵本の館とは感動的な対面を果たされたのですね。
お母さんたちに、絵本を読んで日常生活にどのような変化があるのかとお聞きすると、皆さんが「読み聞かせをするようになって、思いやりのある子になりましたよ」とおっしゃいます。言語力や想像力がついたり、人の心を読みとる力がついたり、引っ込み思案で学校に行くのを嫌がっていた子が通えるようになり、友達がどんどんできて喜んでいたりしますね。絵本を読み聞かせしている大人も童心に戻って子どもと一緒に物語に入っていくことで、枯れていた感性が甦るんですよ。生き方、心の持ち方が変わってくるし、子どもの喜ぶ姿を見てこちらが元気をもらえる。だから、読み聞かせは大人の方こそ得るものが多いと聞きました。

━━━大地さんが演じる銀三郎には、モデルとなる人物がいるのですか?
毎年田植えの時期に、兵庫から田植えを手伝いにやってきて、女子高生と一緒に農業研修もやり、秋の収穫が終わってまた兵庫に帰っていくという方にお会いしました。なぜ毎年来ているのかと聞くと、「剣淵は本当に心が癒されて、元気をもらえる。剣淵は心のふるさとだ」とおっしゃっていました。この方が銀三郎のヒントになって、心のふるさとを持った男の話ができるのではないかと思ったのです。 

zinzin-4.jpg━━━劇映画としてエンターテイメント性を持たせながら、メッセージをうまく表現されていましたが、一番留意したことは? 
私は、13年間テレビドラマ『刑事・鬼貫八郎』シリーズに出演していました。人殺しの話なのですが、糖尿病なのに目を盗んでお饅頭を食べたりしていたというコミカルな部分が続けることができた秘訣だったと思います。その時の脚本家が、本作で脚本を担当した坂上かつえさんで、「いつかは人情喜劇だけの作品をやりたい」と二人で話していたので、本作の脚本を考えたとき真っ先に連絡しました。すぐに坂上さんを剣淵町に連れていき、取材してもらったら、帰ってから3ヶ月後にせりふ入りの第一稿を渡してくれたんです。驚いたことに皆この第一稿を読んで泣いたんですよ。これで一気に火がつきました。一年ぐらいで決定稿を書き上げるまでに、人もお金も集まってきましたね。

━━━脚本を担当された坂上さんが、大地さんの意図を見事に反映させ、『じんじん』の輪が広がっていったのですね。
坂上さんの上手いところは娯楽映画で育ってきたので「映画は娯楽だ」という思いが体に染み込んでいるのです。大事なことを伝えたければ伝えたいほど、面白くしなければならない。教育映画ではないので、楽しんでもらわなければいけないという点で考えが一致しました。絵本の切り札は最後に持ってきて、最初は面白い昔話をばあちゃんから聞かされたという話(実話)から始まり、剣淵町でどうして絵本の館ができたのか、農業研修なども全部取材して脚本に取り入れています。剣淵町の皆さんは飲み会でもマイ絵本を持参して、読み聞かせをしあっています。お互いにダメ出ししたり、絵本が町の人々の中に根付いています。何よりも大事なのは絵本を真ん中に置いて、やさしい町づくりができていることですね。

━━━銀三郎さんを見ていると、寅さんを彷彿とさせました。
坂上さんは私のコメディの部分を知っていますし、山田監督も『刑事・鬼貫八郎』シリーズを担当されたので、私の演技を知り尽くしています。だから鬼シリーズの集大成のようなものですね。関西は笑いに厳しいですが、この作品は関西で通用しますか?

━━━吉本新喜劇とはまた違うテイストですが、松竹新喜劇のような人情喜劇の中に泣かせるような味わいがあって、とても楽しかったです。
映画を観て、「理性をキープしながら笑えて泣けた」とおっしゃっていただきました。また、「悪人が一人もいない映画で感動したのは初めてだ」とか、「素直に泣けた」という人が一番多かったです。これは絵本の力でしょうね。私は小さい頃、映画ばかり見ていたので、新鮮でした。

zinzin-3.jpg━━━久しぶりに中井貴恵さんが映画出演され、剣淵町で生きる主婦を熱演していましたが、出演に至る経緯は?
偶然近所の病院で中井さんが絵本の読み聞かせをされると聞き、見に行きましたら『つりばしゆらゆら』(作:もりやまようこ、絵:つちだよしはる)を読まれ、本当に感動したんです。感動のあまり、その場で中井さんに会わせていただき、絵本を題材にした映画にでてほしいと直談判して、快諾いただきました。普通出演交渉はプロダクションを通しますから、後で社長にお詫びしましたし、大変失礼なことをしたとは思いますが、そういう想いは伝わるんですね。今回学んだことは、「人生は志だ」。私利私欲ではダメですが、志さえあれば、人は集まってくれるのです。

━━━絵本のお話はどうやって作っていったのですか?
ドリアン助川さんは私の釣り仲間で、ある日一緒に釣りに行った帰りに彼のライブに誘われたんです。どういうライブをするのかと聞くと、「クロコダイルとイルカ」というので見に行くと2時間語って歌って、感動ものでした。クロコダイルの気持ちになって、無骨なクロコダイルが自分が生きてきた意味や、存在価値や、愛を語っていくのです。しかもドリアンさんが絵本もあるというので、見せてもらったのが映画で登場した『クロコダイルとイルカ』でした。坂上さんもすっかりドリアンさんのファンになって、脚本に入れてくれました。

zinzin-s2.jpg━━━この映画を観ると、過疎で困っている地域の自治体の人が何かヒントを得られる気がします。年齢問わずに楽しめるのも魅力ですね。
札幌の中学生に観てもらい、100人にアンケートを書いてもらったら、ほとんどが「家族の大切さが身に沁みた」とか「愛の大切さがわかった」とか「まじ笑った、感動した」という意見を書いてくれました。子どもにもきちんと伝わったのが、うれしかったですね。
 
剣淵町も映画のロケ地になるのが初めてなものですから、最初は皆さん本当に剣淵で映画が撮れるのかと疑心暗鬼だったようですが、いざ始まると炊き出し部隊が無農薬野菜を使ったお料理を作ってくれ、本当に力をもらいました。エキストラも人口3000人の町なのに300人が必要でしたが、それでも剣淵町の皆さんが集まってくれました。

━━━関西の上映でどんな感想が聞けるか、楽しみでは?
最初笑っていただけたら、成功ですね(笑)今、日本中が心の問題をどうしたらいいか、考えていると思うんですよ。物質は豊かになったけれど、大事な心が置き去りになってしまった。東日本大震災以来、大事なことがぬけ落ちてきたと気づいている人は多いと思います。「心の忘れ物をしたときに、取りにきてほしい」。まさに剣淵の人たちがよくおっしゃるこの言葉が、映画のメッセージなのかもしれません。


「わたしはただ種を蒔いただけ。色々な方が水をやって、育ててくださった」と『じんじん』が出来るまでの過程を表現した大地康雄さん。本作は映画ではじめて総務省、全国市長会、全国町村会の後援を受けており、今後日頃映画に触れることのないような人にも観てもらえるよう上映活動を広げていくそうだ。心温まる人情劇を見て、親子や地域の子どもたちと絵本を通して共有する時間の尊さに改めて気付かされた。(江口由美)

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