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『タイピスト!』

 
       

typist-550.jpg『タイピスト!』 

       
作品データ
原題 Populaire
制作年・国 2012年 フランス 
上映時間 1時間51分
監督 監督・脚本:レジス・ロワンサル  製作:アラン・アタル『オーケストラ!』  撮影監督:ギョーム・シフマン『アーティスト』
出演 ロマン・デュリス『スパニッシュ・アパートメント』、デボラ・フランソワ『ある子供』、ベレニス・ベジョ『アーティスト』、ミュウ=ミュウ『オーケストラ!』
公開日、上映劇場 2013年8月17日(土)~ ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー

★《フランス映画祭2013》デボラ・フランソワ&レジス・ロワンサル監督トークショーのレポート⇒ こちら
★レジス・ロワンサル監督インタビュー⇒ こちら
 

~夢と希望とロマンを盛り込んだ、カラフルでキュートなエンターテインメント映画~


typist-4.jpg 1950年代後半のフランス。カトリック教徒の多いフランスでは、女性は良妻賢母として家庭を守ることを理想とされていたが、時代は自由民権運動や女性の社会進出と文化革新の過渡期を迎えていた。そんな女性たちの憧れの職業№1は「秘書」。秘書と言えばタイプライター、その早打ちを競うオリンピックのような一大競技大会が人気を博していた。そんな歴史のドキュメンタリー番組をTVで見たレジス・ロワンサル監督が、「これは凄い!スポ根ドラマになる」と発案したのが映画化のキッカケとなる。長編映画監督デビュー作とは思えない洗練されたセンスに目を見張る面白さだ。

 親が決めた結婚をして田舎で一生を終えるのではなく、自分の特技(タイプの早打ち)を活かして新たな生き方をしたい!と、ローズ(デボラ・フランソワ)は保険会社を経営するルイ(ロマン・デュリス)の秘書に応募する。タイプの早打ちを見こまれて採用されるが、それ以外はまるでダメなローズは一週間でクビを言い渡される。そこでルイが提案したこととは──?
 

 typist-2.jpg ローズの唯一の才能〈タイプの早打ち〉を見抜いたルイは、世界大会での優勝を目指し、鬼コーチとなって猛特訓を始める。1本指打法から10本指への矯正、難解な文学書のタイプ、ピアノレッスン、体力作り、心理戦の訓練etc……。ルイの特訓と巧妙なローズ激励方法で次々と勝ち抜いていく。秘書として務まらなかったら父親の言う通りにすると約束したローズは、ルイによって才能を開花させ、父親も驚く活躍を見せる。

 子供の頃から「1番になれ!」と父親に言われつつも2番手に甘んじているルイ。幼なじみのマリー(ベレニス・ベジョ)を今でも愛しているが、彼女が夫に選んだのはアメリカ人のボブ(ショーン・ベンソン)。ルイの気持ちを察しながらも、友人として優しく見守るマリーの姿がいい。

typist-3.jpg ローズを演じたデボラ・フランソワは、若手女優の中でも深い想いを秘めた眼差しが印象的でシリアスな役が多かったが、本作ではコケティッシュなキャラの中にも、屈折した人生を送る男性への深い愛情を表現し、ローズの健気さをさらに印象付ける。自分のためだけではなく、愛する人のために一所懸命に闘う女の健気さに、きっと胸を熱くすることだろう。

 「1958年の映画が大好き!」と言うレジス・ロワンサル監督は、ビリー・ワイルダーやヒッチコック、ゴダールやエリック・ロメール、ジャック・ドゥミといった監督作品を盛り込みながら、新しい時代の息吹と映画全盛期の勢いを感じさせる。だがそれだけではない。クラシカルな形態をとりながら、自らの力で、自分らしく生きることの幸せを謳い、女性が社会に出て働くことが当たり前になった現代の私たちに、改めて自由に人生を選択できる幸せを実感させてくれる。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://typist.gaga.ne.jp

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