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2015年11月アーカイブ

第2回DMI.jpgイタリア文化会館大阪主催《第2回DIM イタリアと出逢う12月》ステファノ館長インタビュー

ゲスト:イタリア共和国外務省 イタリア文化会館大阪:フォッサーティ・ステファノ館長

【開催日時】 2015年 12月5日(土)、6日(日)、9日(水)、10日(木)、12日(土)
【開催会場】 ナレッジシアター(大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪北館4F)
【料金】 無料 (全プログラム)※公式サイトより要予約
【公式サイト】 http://dim-osaka.com/ja/calendario/


★抽選でイタリア往復航空券が当たる!(スタンプ6個以上集めよう!)

★イタリアから、タンゴ、バロック、ジャズ、映画音楽、アラブ音楽のアーティストを招いたコンサート開催。

★日本初上映作品『レオーニ』『舞台裏』『ミュンヘンの時計』『SANDBOY』、4本の映画をプレミア上映。

 

ita12-leoni.jpg大阪のイタリア文化会館主催のイタリア芸術にふれるイベント《DIMイタリアと出逢う12月》が、昨年に続いて大阪グランフロントのエナジーホールで開催されます。今年は、タンゴ、バロック、ジャズ、映画音楽、アラブ音楽の各コンサートに加え、日本初上映となる映画4本の上映会も予定され、さらにイタリア往復航空券が当たる抽選会もあり、しかもすべて無料! こんなラッキーなイベントに参加しない手はない。 

朝日新聞主催の《イタリア映画祭》で上映される作品群とは違った視点の映画を、イタリア文化会館大阪独自のスタンスで紹介される大変貴重なイベントです。「音楽や映画を通じてイタリア文化芸術がもたらす可能性を拡げたい」という願いは、音楽ファンだけでなく映画ファンの心にも豊かな光明となって響いてくることでしょう。

12月5日(土)の開催を前に、イタリア文化会館大阪の館長であるフォッサーティ・ステファノ氏にお話を伺いましたので、下記にてご紹介いたします。


――― ここ数年のイタリア映画は、移民問題や経済危機の影響や政治腐敗などの社会問題を真正面から描いたものや、それらを踏まえつつ男女の愛や家族愛を描いている作品が多いように思います。イタリア映画を見れば、ヨーロッパの今がわかるといっても過言ではないようですが、今回はどんな視点で作品を選ばれたのですか?

館長:イタリア文化会館大阪の中には映画専門部隊がいる訳ではないので、イタリアのいろんなエージェントに頼るしかありませんでした。それらが提案する作品の中から選びました。

ita12-butai.jpg日本ではイタリア映画にとても高い評価を頂いているのにもかかわらず、公開されるケースが少なく、もっと多くの方に観て頂きたと思ったのです。映画祭などでイタリア映画が上映されても実際配給がつくのは4割位で、もっとプロモーションしていく必要があると感じます。さらに、西日本全体にイタリア映画を紹介する機会を拡げたいとも思っています。


15年間、朝日新聞主導の《イタリア映画祭》は、イタリア映画のショウウィンドウのような重要な役割を果たしてきました。今後も東京と大阪で開催される映画祭を支援していきますが、もっと踏み込んで付加価値を付けた形で紹介できないかと考えたのです。大きな会場でなくても、小さな会場でも紹介していければと思っています。


日本国内ではイタリア映画は特に人気が高い訳ではありませんので、来年は野村雅夫氏主催のドーナツクラブと協力して、1年間に6本のイタリア映画を、大阪の90席位の会場で上映する企画をしております。


ita12-myun.jpg選択範囲に制限がある中でも、バラエティに富んだ内容の作品を選んで紹介していきたいと思っています。今回の上映作品は下記の通りです。

  • 『レオーニ』…新しい形のコメディ。
  • 『舞台裏』…イタリア芸術の象徴でもあるミラノスカラ座のバレエ学校のドキュメンタリー。
  • 『ミュンヘンの時計』…イタリア近代文学のジョルジョ・プレスブルゲルの原作を映画化したもので、ハンガリーから亡命してきたユダヤ系である彼のフィルムグラフィ。多くの文化人と交流があった彼の先祖を描くことによって、ヨーロッパの歴史を知ることができます。ある意味難しい映画ですが、作品を通してイタリア文化に関心を持って頂ければと思います。
  • 『SANDBOY』…イタリアの女性監督がアメリカで撮った短編映画。
     

――― 日本人にとって戦後のイタリア映画はとても馴染深いものがあります。戦後復興を背景にしたネオリアリズムの作品には多くの日本人が共感し感動しました。その後もマカロニウェスタンが世界を席巻し、『ニュー・シネマ・パラダイス』のような映画を愛する人々のための傑作に酔いしれたものです。近年のイタリア映画に再び勢いが戻ってきているように感じますが?

館長:DIM《イタリアと出逢う12月》は規模が小さいので、映画祭という程のものではありません。イタリアの文化の一部として紹介したいだけです。イタリア映画の歴史は古く、特にファシズムの影響をかなり受けていると思います。というのも、チネチッタ撮影所を築き、戦後も多くの映画を作り続けてきました。中でも、ネオリアリズムは“近代映画の祖”と言われています。イタリアには国立東方学研究所(ISEASイゼアオ)という東方研究所がありますが、チネチッタと同じように知的な分野で大きな貢献をしてきました。“反米英”の意図があったので、イゼアオの存在は大きかったのです。


――― 最近のチネチッタはハリウッド映画でも使われて活気があるように感じますが?

ita12-sand.jpg館長:今は商業的方向に向いて、危機的状況だと危惧しています。作品の中にはテレビやCMの影響が出ています。数十秒という短い時間に情報を詰め込むような。イタリアには、カルロ・ヴェルドーネという素晴らしい俳優がいますが、今のところ日本ではあまり紹介されていません。というのは、彼は土地の文化に密接につながっている作品に出演することが多く、日本人には解りづらいので、紹介しにくいのです。

(カルロ・ヴェルドーネの日本公開作品:『イタリア的恋愛マニュアル』『わが人生最良の敵』『昼下がり、ローマの恋』『グレート・ビューティ/追憶のローマ』他)


――― DIMでは、ミュージシャンを始め映画人のゲストも来日するのですか?

館長:監督中心で選んでおりませんが、『レオーニ』『舞台裏』『SANDBOY』の監督が来日予定です。上映後のトークは時間的に難しいので、無理だと思います。

 


また、イタリア文化会館大阪(中之島フェスティバルタワー17階)内に併設される芸術スペースでは、イタリア人画家ダヴィデ・プーマの展示会が開催されます。いずれも入場無料(コンサート、映画上映は公式サイトより要予約)です。

【公式サイト】 http://dim-osaka.com/ja/calendario/

(河田 真喜子)

 

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個人の些細な苦しみの話から今の日本を感じてもらいたい
『恋人たち』橋口亮輔監督インタビュー
 

~新人俳優3人と名優たちが体現する愛、絶望、そしてかすかな光~

 

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困難を乗り越え生きていく夫婦の10年を描いた名作『ぐるりのこと』から7年。橋口亮輔監督の7年ぶりとなる完全オリジナル最新作『恋人たち』は、誰もが心の中で秘めている哀しみや孤独、そして今の日本を覆う不条理さを、3人の主人公の物語を絡ませながら重層的に描いた感動作だ。
 
ワークショップを経てオーディションで選ばれた新人俳優たちが演じるのは、通り魔殺人事件で突然妻を失った男、アツシ(篠原篤)、姑と同居の退屈な日常に突然現れた男に心揺れ動く主婦、瞳子(成嶋瞳子)、同性愛者で完璧主義のエリート弁護士、四ノ宮(池田良)。喪失感の中もがき苦しむ姿や、ささやかな愛を夢見た結果今の幸せを再認識する姿、そして愛する人から中傷を受け感情を爆発させる姿など、人間の生々しい感情を見事にすくい取っている。我々の生活と地続きのような空間で繰り広げられるリアルで、どこか滑稽さも滲む人間描写は、橋口監督の真骨頂とも言えるだろう。それを体現する俳優陣も、上記3人の他、安藤玉恵、黒田大輔、山中聡、山中崇、内田慈、リリー・フランキー、木野花、光石研と豪華メンバーが揃い、見事なアンサンブルを見せている。日常の小さなエピソードが積み重なり、今の日本と、そこに生きる人々がパズルのように浮かび上がるとき、そのどこかに自分の姿を重ねてみたくなることだろう。
 
本作の橋口監督に、作品が生まれる経緯や、オリジナル脚本に込めた思い、そして演出方法についてお話を伺った。
 

――2011~12年に『二十四の瞳』の予告編を作られていますが、その当時の橋口監督の状況をお聞かせいただけますか? 
橋口監督:当時はまだ自分自身、映画を撮るまで気持ちが回復していませんでしたが、木下監督の作品を観て、救われる思いがしました。震災に遭われ、なぜという思いで過ごしている方はいっぱいいると思います。木下監督の『二十四の瞳』で、家族のために働きながら肺病を患い、たった一人で死んでいく少女に高峰三枝子演じる大石先生が「そうね、苦労したでしょうね」と一声かける場面があります。台詞としてはシンプルですが、あの一言で少女はどんなに救われたことか。僕の場合、個人的になぜと思う状況に置かれていたときに、誰も話を聞いてくれる人がいなかったのですが、戦争や犯罪被害や自然災害などで人生が大きく揺れ動いたときに、それでもなんとかしてやっていこうと思うきっかけになるのは、人だと思います。 
 

■やはり演出が好きだと気付いたワークショップ「もう一度映画をやってみよう」

―――ご自身の辛い状況を経て、再び映画を撮ろうと思ったきっかけは?
橋口監督:『恋人たち』でもプロデューサーを務めてくださった深田誠剛さんが映画を撮ろうとずっと言ってくださっていたのですが、僕自身は映画に対するモチベーションが全然なかったのです。すると、まずはワークショップからと、今回主演した3人を含め、初めて若い役者さんたち45人と一緒に4日間のワークショップを行いました。人を好きになると、本来の自分ではない情けない自分が現れる。そんな恋愛劇をやってみましょうと、疑似恋愛をしながら本当の自分を探りましたが、とても良かった。僕がアドバイスをしたことで、相手が変わり、面白いものが生まれてくるのです。引きこもりで、人前でなかなかしゃべれなかった人が、パッと変わる瞬間があると、本当に感動的です。僕はやはり演出が好きなのだと、改めて気付きました。そこからもう一度映画をやってみようと思ったのです。 
 

■たとえ未熟でもいいから表現の強さを信じ、8ミリで撮っているつもりで臨む。

―――7年ぶりの新作でしたが、どんな気持ちで撮影されたのですか?
橋口監督:30歳のときに『二十歳の微熱』を撮った感覚に近かったです。あの時は僕も、出演者も含めて全員素人で、何をやっていたか分からなかったけれど、撮ってみると大ヒットした作品でした。今回も、素人の方たちを使って映画を撮るとなったとき、どういうタッチで撮ればいいのか、しばらく試行錯誤していました。僕自身、自主映画出身なのですが、ちょうどワークショップと同時期に自主映画の審査をやらせていただくようになり、再び自主映画を大量に観ることになったのです。何本かはすごくいい作品があり、十分に作家と呼べる思いの強さを秘めていました。そこで、今回の映画はたとえ未熟でもいいから、そういう表現の強さを信じてやってみようと思い、8ミリで撮っているつもりで臨みました。撮影していると、『二十歳の微熱』の頃を思い出し、気持ちがぐっと元に戻った感じです。
 
 

■僕の映画は、役者が「役を通じて自分の人生を生き直す」存在になっている

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―――主役3人、それぞれのキャラクターが演者の個性に合っていたと思いますが、特に瞳子役の成島さんのリアルな主婦像と変貌ぶりに驚かされました。
橋口監督:成嶋さんは昔お芝居をしていたときもあったそうですが、まさか自分にスポットライトが当たるとは思っていなかった。ただ演じたいという気持ちで参加したと思います。彼女が演じる瞳子も、姑と夫との生活を別に不幸だとは思っていません。これが生活だと思っているけれど、どこかに今の私ではない自分を求める部分があったのでしょう。そんなときに、光石さん演じる藤田にさらりと声をかけられ、「あっ」と思う。ときめきの表情をみせる瞳子が段々少女のように見えてくるのです。不幸ではないけれど、別の人生を望む自分が瞳子の中にはあり、それと成嶋さんがシンクロし、彼女は瞳子を通じて自分の人生を生き直していました。『ぐるりのこと』の木村多江さんやリリー・フランキーさんもそうです。僕の映画は役者さんが「役を通じて自分の人生を生き直す」存在になっているのではないでしょうか。役者のみなさんに取材をして、そのエピソードを台本に入れようとはしません。僕の作った人物像に、「この人だったら合うかな」という勘ですね。
 

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―――ワークショップから選ばれた3人を主演にして映画を撮るにあたり、キャスティングや演出で配慮した点は?
橋口監督:ご覧になった方から「素人だから下手だったね」と言われたら失敗です。全員が同じ力でそこにいなければならなかったので、僕の神経をそこに集中して作りました。今の若い俳優たちは、テレビドラマを見てお芝居を覚えるので、皆同じ芝居をするのですが、そうではないということをワークショップでも言いました。「それぞれの奥にある個性が出て、切実に感じられるように」と。ワークショップでは、演技経験が全くない人や、逆に前に出てくるような人も混じった中に演技の上手い人が2、3人いると、全体的に演技がぐっと上手くなるのです。最初は戸惑っていた人も、上手い人の演技を真似て表現するうちに、面白いものが出てきます。そうなると、他の人も触発され、最終的にはとてもいいワークショップになって終わります。だから、今回もプロの俳優が主役の3人に均等に絡むようにキャスティングしました。成嶋さんは光石さんや木野さんといったベテランとも絡み、ヌードにもなります。こちらも随分気を遣いながら見ていたのですが、全然緊張せず、すごくリアルなトーンが出せました。存在感は抜群だったと思います。主演だけはワークショップの中から選ぶという趣旨ではじまった作品で、こういう形の映画作りをするのは今では珍しいのですが、上手くいったと思います。
 
―――3人とも独白するシーンがあり、本音を吐き出す場所の大切さを感じさせます。
橋口監督:誰しも、なかなか自分の本音や胸の内を話せる相手はいないと思います。皆、色々なことを飲み込んで生きているのでしょう。主人公の3人が話すときは、相手はいるけれど聞いていないとか、電話が切れているのにしゃべっているとか、しゃべっているけれど相手は死んでいるとか、相手がいない中での恋愛で、それを『恋人たち』に集約させています。
 

■普段誰にも言わない本当の声が書けた。人を絶望させるのも人ならば、人に希望を抱かせるのも人。

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―――ただ心情を吐くのではなく、胸の奥にある本当の声が突き刺さる気がしました。
橋口監督:今回、一番いい台本が書けました。それは完成度が高いというのではなく、3人、特にアツシのあの語りで、普段誰にも言わない本当の声が書けたと思っています。色々なことを飲み込んで生きている人がこの作品を観て「ここに同じ思いがある」と思うだけでも、ちょっとした日常の支えになってくれたらいいなと思います。人間は気持ちの揺れが不安になり、色々なことに頼ってしまうのですが、本来人間はそんなものですから。そんなときに誰かに一声かけてもらったり、ちょっと飴玉をもらったりするだけで、少し気持ちが上がります。ほんの些細なことの積み重ねで、なんとか今日と明日がつながって、生きていこうと思える。『ぐるりのこと』でも思いましたが、人を絶望させるのも人ならば、人に希望を抱かせるのも人だという気持ちを、今回また新たにしました。
 

■個人の些細な苦しみの話、その、そこかしこから今の日本が見えてくれたらいい。

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―――人物を離れて、過去の東京で起こっていたこと、現在の東京で起こっていることが物語に散りばめられていますが、脚本を書く際に念頭に置いていたことは?
橋口監督:今回は100%ゼロからスタートしなければならず、それを完全オリジナルで書くのは難しいです。ただ、ワークショップから選ばれた3人がいますので、彼らの個性を生かしたものにしなければならない。長編だと、自分に引き寄せ、自分のモチーフで作らなければストーリーがもちません。予算がなかったので、『ぐるりのこと』のように10年に渡る様々な事件を盛り込むような形はとれませんでした。でも作品となって小さくならないように、どうやって今の日本を織り込み、作品に広がりを感じてもらえるか考え、製作費や彼らの演技力の様子を見て試行錯誤をし、3本の話が絡むようで、絡まないようなストーリーにしました。
 
俯瞰で見たような作品ではなく、個人の些細な苦しみの話ですが、その、そこかしこから見えてくれたらいいと思っています。安藤さん演じる晴美の皇室詐欺も、有栖川宮詐欺事件を元にしていますし、瞳子が雅子さまの追っかけをしていたというエピソードも含め、今の日本の空気を感じてもらえればと思ったのです。
 

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―――自己中心で、周りに思いやりを持たないイヤなキャラクター四ノ宮も、恋心を隠して友達づきあいしてきた聡(山中聡)夫妻から思わぬ中傷を受けます。

橋口監督:四ノ宮のエピソードのように、今の日本では弁明すら聞いてもらえません。「いじめってマスコミが作ってるんでしょ」とサラリというシーンがありますが、そういった中傷がネットの世界でも多く、いわれのないことを言及されて傷つくのです。オリンピックのエンブレム問題も、ジャッジする側がきちんとジャッジをし、批判がきても方針をきっちり説明すれば、子どもたちも納得するでしょう。何が本当で、何を信じて生きていけばいいのか分からないのが問題ですし、気持ち悪い。そこも感じてもらえると思います。

 
―――ラストシーンは川から東京の街を映し出していきますが、その狙いは?
橋口監督:今回は最後にタイトルを出そうと思っていたので、青空と川の風景の上を選びました。それを見て、これはアツシが今まで見てきた風景なのだろうなと思ったのです。アツシは孤独に生きてきて、(仕事で)舟の上に浮かんで「アイツ、ぶっ殺してやる」と言いながらも人が好きなのです。川から人間を見ていたのでしょう。これはやや深読みになりますが、僕は川からの風景を見ていると、震災を思い出します。「大都会の建物たちが、一瞬にして無くなってしまう。人の営みって何だろうな」と。
 
―――どん底から抜け出せないままのように思えたアツシにとって、職場の先輩、黒田(黒田大輔)の存在は大きな救いになりましたね。
橋口監督:アツシに輝く希望は訪れないし、黒田は輝く希望をもたらしはしないけれど、黒田のように寄り添う人がいないと、人生は辛すぎますよね。アツシの働く職場の人間は皆ヤンキーですが、裏表がないし、だからこそ救われます。「なんか、暗いですよね~」なんて言うぐらいの女の子と一緒になる方が、アツシは幸せになるのかもしれません。普通の映画なら、深い哀しみの後には女性と出会い、深い愛情に癒されていくものですが、今回は別の恋愛で救われるような展開にしたくなかった。ご覧になった方が、アツシの未来を考えて下さればいいなと思っています。
(江口由美)
 

<作品情報>
『恋人たち』
(2015 日本 2時間20分)
原作・監督・脚本:橋口亮輔
出演:篠原篤、成嶋瞳子、池田良、安藤玉恵、黒田大輔、山中聡、山中崇、内田慈、リリー・フランキー、木野花、光石研他
2015年11月14日(土)~テアトル新宿、テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ他全国ロードショー
公式サイト⇒http://koibitotachi.com/
 

raintree-550.jpgキスマイ玉森裕太が完璧大阪弁でご挨拶!『レインツリーの国』舞台挨拶

(2015年11月5日(木)TOHOシネマズ梅田にて)
ゲスト:玉森裕太(Kis-My-Ft2)(25歳)、西内まりや(21歳)、三宅喜重監督(49歳)


『レインツリーの国』
raintree-500-3.jpg・(2015年 日本 1時間48分)
・原作:有川 浩『レインツリーの国』
・監督:三宅喜重
・脚本:渡辺千穂 
・音楽:菅野祐悟 
・主題歌:「最後もやっぱり君」Kis-My-Ft2(avex trax)(つんく♂作曲)
・出演:玉森裕太(Kis-My-Ft2) 西内まりや 森 カンナ 阿部丈二 山崎樹範 片岡愛之助(特別出演) 矢島健一 麻生祐未 大杉漣 高畑淳子
・コピーライト:(C)2015「レインツリーの国」製作委員会
・公式サイト⇒ http://raintree-movie.jp/

・公開:2015年11月21日(土)~TOHOシネマズ梅田、 ほか全国ロードショー


 

~愛よ届け!素直な気持ちいっぱいの玉森裕太の関西弁が心地いい~

 

raintree-500-1.jpg丁寧に体を拭いてくれた実の息子(玉森裕太)をヘルパーと間違えてお礼を言う病気の父親(大杉蓮)。自分の子供も分からなくなった父親を寂しく思いながらも優しく応える息子。そのシーンだけでも、この息子の優しさが伝わってくる。この物語は、その優しい息子・伸が、大阪の実家を出て東京でサラリーマン勤務をしながら、本当に自分の価値観を共有できるパートナー・ひとみ(西内まりや)と出会い、内気な彼女の信頼を得ながら愛を育んでいく。イマドキ珍しいくらいのストレートさで気持ちをぶつけてくる素直なラブストーリーである。


原作は、有川浩の大ヒット作「図書館戦争」シリーズ第2弾(「図書館内乱」角川文庫刊)に登場する架空の小説を、実際に有川浩が作品化したもの。『阪急電車』や『県庁おもてなし課』と有川浩原作の作品を映画化してきた三宅喜重監督が、再びメガホンをとる。主人公・伸(しん)には、テレビドラマでも大活躍のKis-My-Ft2の演技派・玉森裕太が映画初主演。事故で感音性難聴になり、長い髪で補聴器を隠し、自分の殻に閉じこもって生きてきたヒロイン・ひとみを演じるのは、モデル・歌手・女優と幅広く活躍し、本作が映画デビューとなる西内まりや。つんく♂氏が書き下ろした珠玉のバラードをKis-My-Ft2が歌う主題歌「最後もやっぱり君」も感動のラブストーリーを盛り上げる
  


11月21日の公開を前に開催された先行上映会の舞台挨拶に、玉森裕太(Kis-My-Ft2)、 西内まりやのフレッシュコンビと、大阪出身の三宅喜重監督が舞台挨拶のため大阪の劇場に登壇した。


――― 玉森さんは初めての主演作ですが?
玉森:不安とか緊張とか関西弁とか高い壁はありましたが、こうして皆さんに見てもらえることになってとても嬉しいです。

raintree-bu-ni-3.jpg――― スクリーンデビューですが?
西内:この映画を通して、人として言葉の大切さや、人と人が思い遣る気持ちとか、本当に沢山のことを得ることができました。皆さんにも何か感じて頂けたら嬉しいです。

――― 大阪出身の監督ですが?
三宅監督:僕自身が大阪出身ということもあり、今日こうして大阪の皆さんに見てもらえて、とても嬉しく思っております。

――― 主人公・伸の地元での舞台挨拶ですが?
玉森:緊張しますね!大阪出身のサラリーマン役です。ちょっと恥ずかしい気がしますけど、今日見て頂けて本当に嬉しいです。

――― 西内さんはこういう場では緊張すると仰ってましたが、もう慣れましたか?
西内:まだまだ緊張します。この映画を大きなスクリーンではまだ見たことがないので、難聴という難しい役の中の細やかな心情がちゃんと伝わっていればいいなと思います。

――― 大阪駅前や通天閣が見せる場所や道頓堀など誰でも知っている大阪が出てましたが、大阪での撮影は如何でしたか?
玉森:大阪は2~3日の撮影でしたが、大阪の人はフランクに絡んで来られて嬉しかったですね。撮影本番中でも「なに撮影してるんや?」と大きな声で言うし、大阪のノリを感じました。

raintree-bu-di-1.jpg――― 監督も撮影中は大変だったのでは?
三宅監督:撮っている時は気付かないのですが、「カット」をかけて周りを見回すと、大勢の人だかりができていて、凄い人気者なんだなと思いました。

――― 玉森さんはとても流暢な関西弁でしたが?
玉森:25年間標準語で生きて来ましたから、メッチャ難しかったです。関西弁指導の方と三宅監督に教えてもらいながら演じました。ちょっとでも間違うと、最初からやり直しで、徹底的に関西弁を叩き込まれました。

――― 特に難しかった言い回しとかはありましたか?
玉森:単語というより、長いセリフで最後の方で間違えると最初からやり直しでしたから、フ~ってため息が出ましたね。

三宅監督:関西の人は、ちょっとでも違う言い方をされると嫌でしょう?ですから、結構厳しく指導してました。

――― 関西への印象は変わりましたか?

玉森:関西の人は何でもテキパキとやる印象でしたが、いつも「たま(・・)ちゃん」と呼ばれていたのを、関西では「たま(・●)ちゃん」と違うイントネーションで呼ばれて、とても親しみを感じました。

raintree-bu-ni-1.jpg――― 西内さんは関西弁を喋る男性をどう思いますか?
西内:関西弁だと、より男らしく、胸にグサッと来やすいように感じました。映画の中で「髪切ってみぃひん?」って言われた時はドキッとしましたね。その前の「野暮ったいから」は要りませんけどね(笑)。

――― 劇中本当に髪を切られたんですよね?
西内:はい、切りました。何だか自分自身と向き合えるキッカケになって、一歩踏み出せるような気がしたので、迷った時には髪を切ってみるのもいいのではないかと思います。

――― 女性が言って感じのいい関西弁とは?
玉森: 「メッチャ好きやねん!」と、超全力の甘えた感じで言われたいです。

――― (会場に向かって)それでは皆さん全員で!
観客: 「メッチャ好きやねん!!!」
玉森:ホ~、イイッスね~ずっと聞いていたい関西弁ですね。

――― せっかく覚えた関西弁で何か喋って下さい。
玉森: 「そやな~、オレもメッチャ好きやねん!」

――― これで皆さんと玉森さんと相思相愛になれましたね。
玉森:アツい~!(笑)

raintree-bu-ni-4.jpg――― 11月21日に公開されますが、今日来られたお客様がもう一回見る時のポイントを教えて下さい。
玉森:上司役の阿部丈二さんの芝居の細かさは1回だけでは分かりにくいかも知れませんので、もう1回見てほしいです。
西内:ラストのクライマックスシーンだけ撮影終了から1か月経ってから撮ったのですが、とても寒い日で、玉森さんがチワワみたいに震えているのが分かるかも?(笑)

玉森:真冬ですから縮みあがってました。お尻にホッカイロ入れてたくらいです!

――― 撮影中、どこかご苦労されたことは?
三宅監督:苦労という苦労はありませんでした。それより個人的に好きなシーンは、玉森君が電車の中で壁ドンするシーンで、本当に嫌がっていて、とても気に入っています。そのシーンは何回やっても上手くいかなくて、エキストラの人にこっそりと玉森君の背中を押してくれるよう頼んだんです。すると、マジで嫌がってました(笑)。

――― 最後のご挨拶を。
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三宅監督:今までの大阪弁史上、一番素敵なラブストーリーだと思います。年齢を問わずいろんな方に楽しんで頂ける映画になっていると思いますので、また違う方と見に来て下さい。よろしくお願いいたします。

西内:今の時代らしく、メールを通じて出会う二人ですので、メールのシーンが多かったと思います。今失いつつある言葉のひとつひとつを大切にするというメッセージを思い出して頂いて、明日からちょっと変わって来たなと感じてもらえたら嬉しいです。ブログやツイッターなどを通して、どうか素直な感想やご意見などをお聞かせ下さい。よろしくお願いいたします。

玉森:人として学べることの多い心温まるラブストーリーだと思いますので、沢山の方に見て頂きたいです。(関西弁で)「また見たい人と見てな!」(笑)、また劇場に足を運んで下さい。よろしくお願いいたします。


 (河田 真喜子)

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杉野希妃、最新主演作の見どころ&復帰後の心境を語る
『3泊4日、5時の鐘』記者会見&インタビュー
 

~作品の中の誰かに共感したり、反発したりするうちに自分を見つめ直せる「ミラーボール」のような映画~

 
日本を代表する名匠小津安二郎監督の定宿・茅ヶ崎館を中心として描かれる、ちょっと大人の青春群像劇『3泊4日、5時の鐘』。新鋭、三澤拓哉監督が脚本も担当し、長編デビューを果たした本作は、4月に北京で開催された第5回北京国際映画祭で注目未来部門、最優秀脚本賞を受賞しただけでなく、続々と海外映画祭出品が決定している。日本でも9月から東京で公開され、杉野希妃をはじめ、『花宵道中』の演技も記憶に残る小篠恵奈、キム・ギドク監督最新作『STOP』で主演を務め、今後更なる活躍が期待される青年団の堀夏子、本作でスクリーンデビューを果たした新星、福島珠理と4人の女たちの火花散るリアルな女子トークや、思いを寄せる男性とのすれ違いぶりが共感を呼んでいる。
 
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9月末に大阪、シネ・ヌーヴォXで開催された記者会見では、今冬、ロッテルダム国際映画祭来訪時の交通事故で長期療養中だった本作の主演兼エグゼクティブプロデューサーの杉野希妃が、約9カ月ぶりに報道陣の前に姿を見せ、記者からの質問に笑顔で答えた。シネ・ヌーヴォは、大阪アジアン映画祭2011で主演兼プロデュース作『歓待』を上映して以来、映画祭や新作公開の際必ず訪れていた、杉野にとってはまさにホームのような場所。冒頭の挨拶では、杉野も記者団も感極まって涙が混じる一幕もあった。
 
記者会見後の単独インタビューでは、『3泊4日、5時の鐘』についてのお話だけでなく、復帰した今だからこそ明かせる入院中の心境、そして今後の抱負をざっくばらんにお聞かせいただいた。その内容をご紹介したい。
 

<記者会見>
━━━復帰した現在の心境をお聞かせください。
見慣れた顔が揃っていらっしゃるので、それだけで目が潤んでしまいました。東京でも感傷的になることはなかったのですが、大阪はホームなのだと改めて思いました。本当に表舞台に立つことができるのか、事故後一カ月ぐらいは分からなかったので、今日はこのように記者会見の時間をいただけて、本当にうれしいです。ありがとうございます。
 
━━━『3泊4日、5時の鐘』について、制作の経緯を教えてください。
監督の三澤くんは、2012年から私のアシスタントとして活動しています。私の初監督作『マンガ肉と僕』では制作を、2作目の『欲動』では助監督を、短編の『少年の夢』ではプロデューサーを務めてくれました。『欲動』撮影の直後、「日本映画大学を卒業する前に一本、私の会社(和エンタテイメント)で監督作を作ってみてはどうか」と私から声をかけました。そこから三澤くんがプロットを書き、一緒に作った作品が『3泊4日、5時の鐘』です。ロッテルダム映画祭に到着した日に『3泊4日、5時の鐘』の舞台挨拶をし、その直後に交通事故に遭ったので、この作品には色々な思いが入り交じっています。日本の公開を迎えて嬉しいです。
 
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━━━杉野さんの今までのイメージを逆手にとったようなキャラクターが非常に面白かったです。三澤監督と一緒に作り上げていったとのことですが、どの程度ご自身を分析して、キャラクターに反映させているのでしょうか?
私は、いつも様々なキャラクターを演じるとき、自分のようであり、でも自分とは違うと感じています。本作の真紀はジェットコースターのようなキャラクターだったので、悩むというより、「こんな時に、こんな感情が湧くのか」とどこか客観的に思いながら、楽しんで演じることができました。脚本に関しては、キャラクターを増やして物語を肉付けしたり、台詞についてのアドバイスなどは私も一緒に行いました。ただ、基本的には三澤くんの観察力や女性に対する目線が、全面的に反映されていると思います。
 
━━━トランプや卓球など、オーソドックスな遊びをする中でそれぞれの思いを交差させる演出が光りましたが、どのような意図で取り入れたのでしょうか。
卓球は、ピンポン玉の打ち合いから人間関係がどう変わっていくかを描くために、どうしても取り入れたかったそうです。三澤くんの中に「積み重ねていく」「ペア探し」というモチーフがあり、トランプや、遺跡を発掘するシーンなどで、そのイメージを反映させています。
 
━━━以前のインタビューで、三澤監督は「ご当地映画みたいに、その場所だけで終わってしまう作品にはしたくないという思いがあった」と語っておられましたが、企画段階でどのような話し合いをされたのですか?
ある監督の言葉で印象的だったのが、「ローカルを描けば描くほど、ユニバーサルになる」。まさにその通りだと思います。深田監督の『歓待』は、東京の下町を舞台に、ローカルなものを描いたからこそ、ユニバーサルなものが生まれたという感覚が私自身の中にあります。この『3泊4日、5時の鐘』も、非常にローカルなことを描いていますが、地元の方も、海外の方も楽しめる作品にしたいという気持ちがありました。現在、海外の映画祭に招かれていますが、それは作品を受け入れていただけた結果と捉えています。
 
━━━プロデューサーや女優、時には監督と一人で様々な役割をこなしていますが、仕事の違いや、特に気を付けていることはありますか?
自分の中では、特に違うことをしている感覚はありません。私は2008年頃からプロデュースの仕事を始めたのですが、経験のない中、女優業と兼務だったので、周りからは怪訝な顔で見られることも多かったです。ですから、私よりも年下世代の人たちには、一緒に映画を学び、作っていける場を提供していけたらと考えています。私は、まだまだ肉体を使って表現していきたいので、自分がプロデュースに入っていなくても、女優として作品に参加したいですし、逆に女優として出演せず、監督だけに専念することもいずれあるかもしれません。色々なことに挑戦していきたいですね。
 
━━━これからご覧になる皆さんに、どう観ていただきたいですか?
自分が作った映画に関して「こういう風に観てほしい」という考えは、一切ありません。逆にみなさんが、全然違うことを考えて下さった方が面白いのではないでしょうか。『3泊4日、5時の鐘』はミラーボールのような映画だと思っています。作品の中の誰かに共感したり、反発したりするうちに、それが自分に跳ね返り、「私ってこういう人間なのかな」「こういう面があると思っていたけれど、違うのかも」と見つめなおすことができるのではないでしょうか。男性からしてみたら女は怖いと思うかもしれませんし、ガールズトークの話のネタにできます。お酒のつまみになりそうな映画ですね。
 

<インタビュー>
 

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━━━三澤監督は、脚本も初めての作品となりますが、杉野さんはかなり評価されていたのですね。

2012年から三澤くんとは一緒に仕事をし、色々な作品の脚本を見てもらったり、企画段階から参加してもらい意見を聞いていました。20代とは思えない映画の知識量の豊富さや、モノの見方の鋭さを持っていますし、観察力も非常に優れています。真面目な好青年ですが、少し斜めからモノをみているような発言もするので、監督として絶対いいものを作ることができるという直感が私の中にありました。彼は元々プロデューサー志望だったのですが、ウディ・アレンが好きだと言っていたので、「自分で出演し、監督もすればいいじゃない」とずっと話していました。今回は初監督作品なので、演出に集中し、出演は控えたようですが。

茅ヶ崎を舞台に、女たちのリアルなセリフがこだまする青春群像劇~『3泊4日、5時の鐘』三澤拓哉監督インタビューはコチラ
 
━━━三澤監督と同じく、本作で映画初出演を果たし、杉野さんのように女優兼プロデューサーの道を目指している福島珠理さんへ、何かアドバイスはありますか?
色んな困難はあるかもしれませんが、めげずに本当に頑張ってほしいですね。自分自身の中にある固定観念や、周りにある固定観念もどんどん取っ払っていきたいという思いがありますので、福島さんのような若い世代から作り手にも演じ手にもなりたいという人が出てくることで、日本映画界の風通しも良くなる気がします。
杉野希妃に続く、女優兼プロデューサーを目指して!『3泊4日、5時の鐘』でスクリーンデビューの新星・福島珠理さんインタビューはコチラ
 
━━━今回の杉野さん演じる真紀は、一生懸命すぎるところが逆に空回りする、コメディエンヌ的要素のあり、今までにない魅力がありました。
脚本を読んだときに、ジェットコースターみたいな感情の起伏が激しい性格で、変わり者だなと思いましたが、どこか共感できる部分もあり魅力を感じました。真面目で一生懸命なところがいつも空回りしていて、後から客観的に見ると痛々しさが笑えますね。(大阪アジアン映画祭のQ&Aで一生懸命すぎる真紀に共感したという声が挙がっていたという話を聞き)それは、とてもうれしいです!
 

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━━━仕事に復帰するまでの半年間は、復帰した今から思うと長かったですか?
入院している間は長いなと思っていましたが、今から思うと短かったような気もします。入院中は、色々な方からお手紙をいただいたり、メールをいただいたりし、今まで感じていなかったような感情が湧いてきました。そして、空っぽの言葉と心からの言葉の違いにもより敏感になりました。今後は言葉一つにしても、自分の気持ちに素直になり、自分の心と言葉を一体化させるような作業を丁寧に行っていきたいです。
 
━━━映画制作の現場を離れている間は、映画と客観的に向き合う時間にもなったのではないかと思いますが、これから撮りたい作品ややりたいことに変化が起きましたか?
当初は、また表舞台に立てるかどうか分からないという絶望感があったのですが、色々考えても、改めて「映画と心中したい」と思いました。寝たきりの時はベッド上で撮影が可能なお話を、車椅子の時は車椅子で可能なキャラクターを考えたり…。どうやったらその時の状況下で映画作りや演技ができるのか考えていましたが、考えている内に体はどんどん回復していきました。今まではがむしゃらに映画を作ってきた訳です。ただ、映画とは向き合ってきたけれど、一番重要な自分とは向き合ってこなかった。今回思わぬ時間が与えられたことで、映画と向き合うだけでなく、自分とも向き合えました。
 
━━━なるほど、自分自身と向き合い、映画への思いを再確認されたのですね。
私たちは「生きるも死ぬも表裏一体」という曖昧な中で、生きています。だから、誰も見たことのないものを見たいし、誰も解読できないことを映画制作しながら探っていきたい。それが、自分の表現方法なのだと思い知らされました。答えがすでにある上で映画を作るという方法は、私には向いていません。むしろ、宇宙の不思議を探る研究者のような感覚で、映画に接している気がします。
 
━━━「映画制作をしながら探る」という杉野さんのスタンスは、過去作品を思い返しても頷けます。療養生活を経た今、映画で描きたいことや実現させたいアイデアはありますか?
入院中は音楽が印象的な、死にまつわる作品にも数多く触れながら、生と死のはざまのミュージカルのようなものを私なりに描いてみたいという思いが強まりました。今まで私が手がけたものは、人間の感情や社会問題をえぐり出すような作品が多く、あまりキラキラしたものは描いていません。何かのはざまにいるからこそ輝くようなものを作ってみたい。色々な国の方が出演するような無国籍のミュージカルも、いつか実現させたいです。
(江口由美)
 

<作品紹介>
『3泊4日、5時の鐘』
(2014年 日本 1時間29分)
監督:三澤拓哉 
出演:小篠恵奈、杉野希妃、堀夏子、福島珠理、中崎敏、二階堂智、栁俊太郎
2015年10月31日(土)~シネ・ヌーヴォ、11月21日(土)~元町映画館、京都みなみ会館他全国順次公開
 
<ストーリー>
花梨(小篠恵奈)と真紀(杉野希妃)は休暇を取り、茅ヶ崎の老舗旅館・茅ヶ崎館に訪れる。元同僚で同館の長女でもある理沙(堀夏子)の結婚パーティーに出席するのが目的だったが、花梨は茅ヶ崎館でバイトする大学生、知春(中崎敏)にちょっかいを出す一方、生真面目な性格の真紀とは衝突してばかり。花梨のせいで予定を狂わされ、腹ただしさを隠せなかった真紀だが、大学時代のゼミの教授、近藤(二階堂智)と偶然再会し、気分が高まっていく。近藤ゼミのゼミ長を務める彩子(福島珠理)は、同じゼミの知春に思いを寄せる一方、仲良さそうにしている花梨のことが気にかかって仕方がない。理沙の弟の宏太(栁俊太郎)も加わった男女7人の関係が、次第に絡まりあっていくのだったが・・・。
 
 
 

sayonaranokawarini-ki-550.jpg一瞬一瞬を大切に生きよう!『サヨナラの代わりに』ヒラリー・スワンク記者会見@TIFF2015
(2015年10月23日 六本木アカデミーヒルズにて)
 

・原題:You‘re Not You
・2014年 アメリカ 1時間42分
・監督:ジョージ・C・ウルフ
・出演:ヒラリー・スワンク『ミリオンダラー・ベイビー』『P.Sアイラヴユー』、エミー・ロッサム『オペラ座の怪人』、ジョシュ・デュアメル、ロレッタ・ディヴァイン、マーシャ・ゲイ・ハーデン
・作品紹介⇒ こちら
・公式サイト⇒ http://sayonarano-kawarini.com/
・コピーライト:©2014 Daryl Prince Productions, Ltd. All Rights Reserved.
・配給宣伝:キノフィルムズ

・公開日:2015年11月7日(土)~ 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー!


 

★逆境にも前向きに生きる姿を圧倒的演技力で魅せるヒラリー・スワンク
 劇中歌を作詞作曲したエミー・ロッサムとの強力タッグに自信を見せる

 

困難に立ち向かう生き方が似合う女優、ヒラリー・スワンク。2度のアカデミー賞主演女優賞に輝いた演技派女優が、苦境の中でも一瞬一瞬を大切に生きる喜びにあふれた物語に感動して、自らプロデュースを買って出たが映画『サヨナラの代わりに』が11月7日から日本でも公開される。10月22日から開催された《東京国際映画祭2015》でも特別上映され、2度目の来日となったヒラリー・スワンクが記者会見に臨んだ。
 

sayonaranokawarini-550.jpg聡明な美人で誰もが羨むような人生を送っていた主人公ケイト(ヒラリー・スワンク)が、難病ALS(筋委縮性側索硬化症)発症という苦境に陥る。ヘルパーとして雇った歌手志望の学生ベック(エミー・ロッサム)との日々を通して、対照的な二人がお互い影響し合いながら、苦境の中でも自分らしく生きる喜びに目覚めていく。次第に言葉も不自由になり四肢も委縮して動けなくなる過程や、様々な感情を目で表現する難しいキャラクターを、大きな存在力と演技力で力強く生きたヒラリー・スワンクはさすがだ。


性同一性障害がまだ今ほど認知されていなかった時代、男性として生きようとした女性の悲劇を描いた『ボーイズ・ドント・クライ』(‘99)で世界を驚かせ、その5年後のクリント・イーストウッド監督と共演した『ミリオンダラー・ベイビー』(‘04)では一途な想いを貫こうと悲運に見舞われる女性ボクサーを演じて、人気実力共に演技派女優の名を不動のものにしたヒラリー・スワンク。いつも彼女の目力に惹き付けられ、彼女が歩むハードな人生に衝撃を受けてきた。彼女の素顔が知りたくて、一番会いたい女優――それがヒラリー・スワンクだった。


白の総レースのミニワンピースに黒のピンヒールをはいたヒラリー。引き締まったスリムなボディに満面の笑みを浮かべて登場。ひとつひとつの質問に丁寧に自信をもって応じていた。
 



――― 最初のご挨拶
sayonaranokawarini-ki-240-1.jpg皆様こんにちは。再び東京に戻って来られてとても嬉しく思っております。日本の美しい文化や美味しい食べ物を楽しんでおります。

――― 本作では主演だけでなくプロデューサーも務められていますが、制作のキッカケは?
とても美しい物語だと思ったからです。ALSについてはまだ原因も治療方法も解明されていません。二人のキャラクターは苦境の中で予期せぬことで友情を育むことになりますが、そこに人生の美しさや日々の瞬間を大切にしなければと思わせてくれる素晴らしいストーリーだったのがキッカケです。

――― 難病に侵されるケイトを演じてヒラリーさん自身が得たものは?
役者の素晴らしいところは、キャラクターを演じることで一人の人間として沢山の贈り物を得ることです。そのキャラクターの目を通して違う世界を見ることができ、私自身の視野がどんどん拡がっていくように感じられます。ケイトからも、人生は今の瞬間しかないのだから大切に生きなくてはならないということを学びました。また、人生で大切なのは、100%あるがままの自分であることだし、自分自身をちゃんと見てもらうことだと思うんです。ベックはケイトに贈り物をしているようですが、ケイトもまたベックに同じ贈り物を返しているんです。

――― もし、自分が限られた時間しかないとしたら、何をしたいですか?
私は本当に恵まれていると思います。いろんな役をやる度に、世界観が拡がり、世界中を旅して、自分とは違うタイプの人々と触れ合える、それが人生を豊かにしてくれています。数年前、愛する家族との時間を大切に生きていこうと誓いました。それはこの作品に出会ったからです。「一瞬一瞬を大切に生きる」これは「ポケットリスト(死ぬまでにしたいこと)」の一つであり、私は今生きているんです。

――― エミー・ロッサムを選んだ理由と共演した感想は?
sayonarakawarini-500-2.jpgエミーは素晴らしい才能を持った女優さんです。今回はオーディションだったのですが、私はオーディションの時違う作品の撮影のため立ち会えませんでした。後でエミーのテープを見た時に、彼女しかいない!と実感しました。プロデューサーも兼務していますので、こうしてキャスティングにも関われて、エミーを選ぶことができて本当に良かったと思っています。彼女は自由奔放なベックの心理状況を正確に掴んで演じてくれたので、彼女との共演は本当に本当に素晴らしいものでした!

――― 去年、ALSについて動画サイトを使った大規模なキャンペーンが行われましたが、その影響はあったのですか?
私も本作を手掛けるまでALSについては何の知識もありませんでした。あのキャンペーンを通じて世界中の多くの人々がALSに興味を持ってくれて、研究が進むように社会全体が動いてくれたことはとても有意義だったと思います。ただし、『サヨナラの代わりに』の撮影はあのキャンペーンの前に終わってましたので、タイミングは合ったという次第です。

――― 「一瞬一瞬を大切に生きることが大切」と仰ってましたが、どんなことをされているのですか?
sayonaranokawarini-ki-240-3.jpg例えば、誰かのことをふと思い出した時、「どうしているかなあ」とただ思うだけでなく、電話したりメールしたりしています。今チャリティを立ち上げる準備をしていますが、子供たちと捨てられた犬との触れ合いを通じて責任感を育んで行こうという意図です。何事も最初は大変ですが、充実した時間を過ごせます。それから、仕事からもすべて離れた1日オフの時間を取るようにしています。犬と遊んだり、散歩したり好きな本を読んだり、自分のための時間を必ず設けるようにしています。それ以外にも次のプランのために常にアンテナを張っているので、正直自分の時間を作るのはとても難しいですね。

――― 日本の学生に向けてのメッセージをお願いします。
全ての人は人生における生徒だと思います。別に学校へ通ってなくても、生きていく上でどんな逆境に在っても、諦めないで、乗り越えていくことが大変重要なことだと思います。若い時、自分を定義するのは自分自身でやるべきで、自分のために何が必要なのかを考えるべきです。自分のやりたいこと、自分の夢を叶えるために必要な事柄を日々選択していく生き方をすることが大切です。

sayonaranokawarini-ki-240-2.jpg――― しばらく休業されていましたが?
さあ?どうしていたかしら?(笑)実は父が肺の移植手術をして、その看病のため1年間仕事を休みました。

――― アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督とコラボされるとか?
はい、イニャリトゥ監督は素晴らしい監督ですので、一緒に仕事ができるのをとても楽しみにしております。まだレオナルド・ディカプリオの映画を撮っている最中ですので、もうしばらく後になりますが。

――― アニメ映画の声優もされていますが?
凄く楽しかったです。2日間だけでしたが、もっとやりたかったです。機会があればまたやりたいです。

――― オスカーのシーズンになると、受賞した時のことを思い出したり、また3つ目が欲しいと思ったりして落ち着かないのでは?
8歳で女優になりたいと思った頃は、ただいろんなキャラクターを演じたいと思っていたので、オスカーのことなど想像もできませんでした。でも受賞することはとても光栄なことです。また、オスカーのシーズンはとてもマジカルなシーズンでもあります。自分が関係している作品は勿論ですが、他の作品も観る機会が増えますし、多くの方が注目して見て下さるので、ノミネートされただけでも大きく違うのです。



sayonaranokawarini-ki-500-1.jpg「8歳の時に女優になりたいと思ってから、人生の大半を女優として過ごしてきました。人生にインスピレーションを与えてくれる様々なキャラクターを生きられることに心から感謝しています」と語るヒラリー・スワンクの謙虚さこそ、真っ白な状態でそのキャラクターを生きられる秘訣かもしれない。

 (河田 真喜子)