レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2018年4月アーカイブ

DSCN6857.JPG

父と息子の間にある“距離”を日常生活の中から描く
『泳ぎすぎた夜』五十嵐耕平監督、ダミアン・マニヴェル監督インタビュー
 
『息を殺して』の五十嵐耕平監督と『若き詩人』のダミアン・マニヴェル監督が、共同監督作品として企画し、青森に住む6歳の子どもを主演に据えた小さな冒険の物語『泳ぎすぎた魚』。雪深い冬の青森・弘前を舞台に、仕事に出かけた父を探す息子の姿を追った物語は、台詞がほとんどなく、サイレント映画のような趣きと、光を取り入れた雪国の美しい景色に心がほぐれる。子どもの日常を丁寧に綴った詩集のような作品だ。
4月21日からシネ・リーブル梅田他で公開される本作の五十嵐耕平監督、ダミアン・マニヴェル監督に、お話を伺った。
 

oyogisugita-550.jpg

■比較的フレキシブルに映画を撮る者同士。リスクは全く感じなかった。(五十嵐)

五十嵐さんの映画はもちろん好きだが、まず友達としてとても好きだった。(マニヴェル)

―――『若き詩人』取材時にマニヴェル監督は、五十嵐監督に映画人として多くの共通点があると語っていました。今回共同監督として映画作りをした五十嵐監督がダミアン監督に共感できた点は?また、一緒に映画を撮ろうと思った理由は?
五十嵐:一緒に映画を撮る企画があったり、映画を撮るということが先行していた訳ではなく、最初、ロカルノ映画祭で出会った時に友達になり、ダミアンが来日するたびに飲みに行ったり、話をするうちに、どういう風に映画を撮るかを話するようになりました。僕もダミアンも、比較的フレキシブルに映画を撮るので、一般的にはあまりいないタイプの監督です。だから、一緒に映画を撮ることになっても、リスクは全く感じませんでした。何か決断をした訳ではなく、本当に自然な形で一緒にやることになったのです。
マニヴェル:映画を撮ることは、僕にとってはリスクを冒すことです。二人でリスクを取ろうじゃないかということが大きかったです。二人でやったとしても何が起きるか分かりませんが、とにかく投げ出してみようと思いました。五十嵐さんの映画はもちろん好きですが、五十嵐さんのことをまず友達としてとても好きだったですね。
 
 
―――どういうプロセスで映画作りを進めていったのですか?
五十嵐:まずは、お互いにアイデアを出し合いました。僕が最初に出したアイデアが、「子どもが撮りたい」。そしてダミアンは「雪が撮りたい」。東京やパリではなく、郊外で雪の降る場所ということで、以前僕が仕事で訪れたことのある青森の弘前に行くことにしました。一番重要な要素である子どもと雪は最初に決まっていましたね。
マニヴェル:二人の間で、あまりルールや分担を明確には決めませんでした。毎日違う場所での撮影で、毎日違う冒険が待っていた感じです。僕は時々カメラのこともしましたし、五十嵐さんが鳳羅(たから)君の演出を行う。毎回色々なことが変化していく現場でした。
 
 
oyogisugita-500-5.jpg
 
―――前作の『若き詩人』は夏の南仏が舞台でしたが、今回日本の雪を撮りたいと思った理由は?
マニヴェル:『若き詩人』は夏の話でしたから、今回は冬に撮りたいと思いました。日本の田舎を知りたいと思いました。私にとって映画を撮ることは、その見知らぬ土地を発見することでもあります。
 
 
―――子どもを撮ることも、撮る方からすればかなりリスクがあったのではないですか?
マニヴェル:子どもを撮ることも、雪深い場所で撮ることも、二人の監督で撮ることも、どれもリスキーですから、気にしても仕方がありません。もうやるしかなかったのです。もし、たくさんのリスクがあれば、何かが起こります。もしリスクがなければ、何も起こらないのではないかと怖くなります。
 
 
―――リスクがある方が、映画を作っているという実感が湧くということでしょうか?
マニヴェル:正確に言えば、快適ではない状況が映画作りにおいて大事だと思います。
五十嵐:安心・安全な場所に立っていると、何でもできるけれど、選択肢があまりありません。色々なことが起きてしまう状況にいると、出来ないことが起こり、今まで想定していなかった別のアイデアが沸き上がります。しかも、それはより良い方向のもので、それはリスクがある状況でないと起こりません。成功するかどうかは分かりませんが、やらないと、自分が目指しているもののさらに上を獲得できないという感覚はありますね。
 
 
oyogisugita-500-1.jpg

■子どもと青森・弘前のポートレイトにするために、青森の子どもの起用を最初から決めていた(五十嵐)

鳳羅君を見た時の第一印象は「彼をそのまま、映画の中に落とし込みたい」(マニヴェル)

―――青森では、まず主演の子どもをキャスティングされたそうですが、最初から役者ではなく、現地の子どもをキャスティングしようと決めていたのですか?

DSCN6849.JPG

五十嵐:最初はダミアンと、子どもと青森・弘前のポートレイトにしようと話していました。子どものポートレイトを撮る時は、当然、風景との関係性もある訳です。実際、青森の子どもに特有の動きがあるのです。寒くて服をたくさん着ているので、動きが独特ですし、滑りやすいので、歩き方も小刻みです。そういうカラダでないと、その土地のポートレイトは撮れませんから、他の土地で育った子どもに演じてもらおうとは思いませんでした。
 
 
―――鳳羅君とはライブで出会ったそうですが、最初からお二人とも「この子で撮ろう!」と思ったのですか?
マニヴェル:この子とすぐに分かりました。
五十嵐:鳳羅君が走り回っているとき、ダミアンの方を振り返ると、ダミアンも僕の方を見ていて、「この子だ」と。もう少し年上の子どもを探していたのですが、出会ったのが鳳羅(たから)君で、彼が6歳だった。最初はわんぱくすぎて大丈夫かなと思いましたが。
 
 
―――鳳羅君を撮りたいと思った一番の魅力は?
マニヴェル:その動きと、エネルギーに惹かれました。恋に落ちたときと似ています。何も計算できないし、少し奇妙で、とても深い何かを持っている気がしたのです。二人が鳳羅君を見た時の第一印象は「彼をそのまま、映画の中に落とし込みたい」ということでした。
 
 
―――これで、この映画が撮れると確信されたのですね。
マニヴェル:でも最初は、鳳羅君がちゃんと演じられるか不安がありました。最初、カメラテストをした時は、何もできなかったです。
五十嵐:鳳羅君の中には恥ずかしいという気持ちがあるけれど、表には出ていなかったです。カメラテストで初めて大勢のスタッフに会った時は、テンションが上がりきって、ずっと走り回り、会話もできない状況でした。でも2回目に会った時には、すっかり落ち着いていて面白いなと思いました。
マニヴェル:最初のカメラテストで、鳳羅君はまだ自分をコントロールできなかったけれど、とても優しかったです。僕の背中に抱きついたり、登ってきたりして、すぐに友達になれました。人懐っこさがある子なので、もう断れないですよね(笑)
 
 
oyogisugita-500-2.jpg

■撮影合間に鳳羅君が遊ぶ様子を観察し、発見したものを脚本に組み込んだ(五十嵐)

話す必要がないシーンを連続させる構成で、関係性を見せた(マニヴェル)

―――「母をたずねて三千里」が頭をよぎるような、鳳羅君の冒険ぶりが凄かったです。次は何をするだろうと観ていて飽きなかったです。一見、ドキュメンタリーのようにも見えますが、鳳羅君の自由な動きも取り入れているのでしょうか?
五十嵐:鳳羅君の自由なアイデアもたくさん入っています。片方手袋を落としてしまうとか、靴を脱いで中に入った雪を落としたり、カーブミラーに雪をぶつけたり。撮影中偶然起こることもありますし、撮影の合間や生活の様子を観察して、「こんなことをやるんだ」と発見したものを脚本に組み込んだりもしました。撮影中は、僕達が準備をしている間、鳳羅君は色々な場所でずっと遊んでいましたから。すぐ寝るので、映画の中でもたくさん寝るシーンがあります。
 
 
―――台詞がなく、サイレント映画のようですが、鳳羅君のような6歳の子どもに、何も言わずに動いてもらうのは難しかったですか?
マニヴェル:夜眠れないとか、昼間道に迷うなど、一人のアクションなので、台詞が元々必要なかった。あえて、話す必要がないシーンを連続させる構成にし、関係性をみせられるようにしました。
五十嵐:最初撮り始めて、すぐに台詞は必要ないと判断しました。一番最初に、演技の基本になる歩き方や、カメラを見ないということ、そしてしゃべらないという最初の約束を決めていたので、自分から喋り出すことはなかったですね。
 
 
oyogisugita-500-3.jpg

■小さい頃、こんな風に聴いていたなという音がこの映画に込められている(五十嵐)

鳳羅君が普段着ている服と、雪との色の対比で、色彩豊かな映画になると確信(マニヴェル)

―――台詞がない分、鳳羅君の息遣いや、雪を踏みしめる音などがとても印象的でしたが、本作の音に関するこだわりは?
マニヴェル:台詞がないので、必然的にシーンと音を作り込む必要があり、映画が音楽的になっています。
五十嵐:この映画の音の印象は、普段僕達がイメージしている音というより、子どもが聴いている音です。小さい頃、こんな風に聴いていたなという音がこの映画に込められています。雪を踏む音が楽しくて踏んでみたり、音のイメージというのは、小さい頃は今よりずっと強かったと思うのです。色々な音が気になっていたのではないでしょうか。
 
 
―――雪国の映像ですが、とても明るい色合いなのが、この作品の特徴です。前作の『若き詩人』に共通する、光が降り注ぐような“マニヴェルトーン”になっていますね。
マニヴェル:色については、簡単な作業ではありませんでした。まずは鳳羅君が普段着ている服と、雪との色の対比を考えました。そして、この映画は色彩豊かな映画になるなと確信したのです。映画で着ている服だけでなく、実際の生活で鳳羅君が使っているものも、たくさん登場します。カメラもクリスマスのプレゼントに彼がもらったものですし、写真も彼が撮ったものです。
五十嵐:父親の職場までの道にあるものを撮った写真も、この撮影の前に鳳羅君が撮っていたものですし、眠れない夜に撮った写真も、後半のポートレートに使っています。
 
 
oyogisugita-500-4.jpg

■直接触れられないけれど、何かしらお互いに思っている父と息子の関係性を描く(五十嵐)

お父さんが息子に「愛してるよ」と言うような人だったら、この映画はできなかった(マニヴェル)

―――冒頭の夜、台所で父と子が同じ構図で時間を過ごしたり、ラスト息子の洗濯物を父が干すという2つのシーンで、父子の絆が静かに伝わってきました。鳳羅君の冒険とこのテーマに結び付けた狙いは?

DSCN6852.JPG

マニヴェル:本作は子どもの冒険の話ですが、それだけではなく、息子と父親の関係が一番大事です。この映画は、父と息子の間にある距離を主題としています。ただ、映画ではそれをドラマチックに描かず、いかに日常生活の中から描けるかに重きを置いています。日常の中の悲劇、つまり父と息子の間に距離があるという事実は悲しいですが、生活というのはそういうものですね。
五十嵐:父と息子の関係性はダイレクトではありません。常にコンプレックスがあり、大人になって人前では言えないけれど憧れている部分もあります。この映画で描いていることもその要素に近くて、直接触れられないけれど、何かしらお互いに思っていることがある。そういう関係性だからこそ、将来自分に子どもができた時、父にこのように思われていたのだなと気付くのでしょう。そのようなジェネレーションの話題に関心がありました。
 
 
―――共同監督としての映画作りでしたが、お互いに学ぶ点はありましたか?
五十嵐:ダミアンは、「もっといいやり方があるかもしれない」と、いつでもどこでも新しい可能性を探しています。そういう態度は尊敬しますね。困るときもありますが、一丸となって新しい方向に向かっていける。スタッフも優秀だと思います。
マニヴェル:五十嵐さんからはたくさんのことを学びました。僕はできるだけシンプルな方法を探す映画作りをしていますが、五十嵐さんはいつも感情の鍵を探しており、その感情は僕にとってはとても複雑で、深いものを探しています。五十嵐さんの映画は一度観ただけでは分からないけれど、2回、3回観ることで、色々なものが開いていく。自分があまりできないことなので、憧れますね。
 
 
―――最後に、撮影を通じて鳳羅君の成長や本音を感じましたか?
マニヴェル:毎日本当に様々な体験をしました。魚市場でたくさんの雪が降っている昼のシーンを撮影する時、(本作にも父親役で登場する)鳳羅君の父親は魚市場で働いているため、ちょうど仕事上がりで帰宅するのを、鳳羅君が見てしまい大泣きしたことがありました。その日の撮影ができなくて大変でしたが、本当にこの映画と全く同じだなと思いました。お父さんは大好きだけど、勤務時間の都合でいつもすれ違って、なかなか会えないのです。
五十嵐:鳳羅君もお父さんが好きだと口では言いません。魚の絵を書いていますが、元々はお父さんの絵を書いてとお願いしたものの、イヤだと言われて。
マニヴェル:鳳羅君のお父さんも同じで、好きなのに好きだと言いません。逆に、もしお父さんが息子に「愛してるよ」と言うような人だったら、この映画はできなかったと思います。
(江口由美)
 

 

oyogisugita-pos.jpg

<作品情報>
『泳ぎすぎた夜』
(2017年 フランス=日本 1時間19分)
<監督>五十嵐耕平、ダミアン・マニヴェル
<出演>古川鳳羅、古川蛍姫、古川知里、古川孝、工藤雄志
公式サイト⇒http://oyogisugitayoru.com/
4月21日(土)~シネ・リーブル梅田、5月19日(土)~出町座、6月9日(土)~神戸アートビレッジセンター他全国順次公開
(C) 2017 MLD Films / NOBO LLC / SHELLAC SUD
 
※第74回ヴェネチア国際映画祭オリゾンディ部門正式出品
 第18回東京フィルメックス 学生審査員賞・Filmarks賞受賞

midnighsun-ivent-550-2.jpgパトリック・シュワルツェネッガー来日!! 『ミッドナイト・サン』ジャパンプレミアイベントレポート

(2018年4月19日(木))
ゲスト:パトリック・シュワルツェネッガー
 


midnighsun-ivent-550-1.jpg
世界一有名なシュワ息子初主演!

パトリック・シュワルツェネッガー来日!!
アイ・ラブ・ジャパン、“ I’ll be back!! ”

 
永遠のハリウッドスター、アーノルド・シュワルツェネッガーの長男で俳優のパトリック・シュワルツェネッガー(24)が、初主演映画『ミッドナイト・サン~タイヨウのうた~』(5月11日公開)プロモーションのために来日。19日に東京・新宿ピカデリーでジャパンプレミアイベントを行った。

本作は、YUI主演で2006年に公開された日本映画『タイヨウのうた』のハリウッドリメイク版。太陽の光に当たることができず夜しか外出できない病気を持つケイティ(ベラ・ソーン)と、怪我によって夢を諦めてしまった青年チャーリー(パトリック)の交流を描くラブストーリー。


midnighsun-ivent-500-1.jpg日本は3度目というパトリックだが「でも今回は特別だよ。日本の皆さんもお馴染みの作品のアメリカ版で、それをこうして日本でプロモーション出来ることがハッピーだから」と主演俳優としての初来日を喜び「しかもyuiさんにも会えることができた。とても綺麗で素敵な方。アメリカ版ができたことを喜んでくれて『泣きました』と教えてくれた。彼女は5月にバンドとしてのステージがあるようなんだけれど、僕も彼女のパフォーマンスが見たいくらいだよ」とオリジナル版ヒロインとの初対面に感激の様子だった。


一方、今回のヒロインを演じたベラについては「才能の溢れた美しい方。そんな彼女と撮影できたのは楽しい経験だったよ。彼女もここに来たかっただろうね。だって皆さんがこの作品を楽しんでくれることを誰よりも願っているんだから」と満面のパトリックスマイルこと“パトスマ”で報告した。


midnighsun-ivent-500-2.jpgまた同業者であり父親でもあるアーノルド・シュワルツェネッガーについては「僕は彼の息子であり、弟子でもあり、生徒でもある。学ぶことは沢山さ」とリスペクトし、「やりたいことへの目標を定めて、日々努力しろということを教えてくれる。ゴールを設定して、それに向かって努力することが大事。他の誰かに止められても諦めることなく、進むことが大切だといつも僕に教えてくれるよ」とアーノルド直々の人生訓を紹介した。


イベント終盤にはパトリックの来日を記念して、書道挑戦企画を実施。器用に筆を持ち、墨をつけて慎重に書いたのは「パトリック」という自身の名前。メリハリの効いた達筆なカタカナに客席から歓声が上がると「誰かほしい人いる?あげるよ!」とサービス精神旺盛だった。


midnighsun-ivent-500-3.jpg最後にパトリックは「ニッポンダイスキ!今後も映画に携わっていきたいね。そして次の作品も日本でプロモーションするために必ず帰ってくるよ」とファンに手を振り「I’LL BE BACK!」と父アーノルドの決め台詞引用で再会を力強く誓っていた。
 


midnighsun-550.jpg『ミッドナイト・サン』

≪夜しか会えない二人≫が過ごした短い時間は、
どんな瞬間も輝きに満ちている。
早くも今年最高の感涙ラブストーリーがスクリーンを席巻し、
感動の涙で包み込む!

 
太陽の光にあたることができず夜しか外出できないケイティ(ベラ・ソーン)と、怪我によって夢を諦めてしまった水泳部のチャーリー(パトリック・シュワルツェネッガー)。ある夜、彼女の歌をきっかけに2人は出会い、急速に惹かれあう。17歳の2人の初恋の甘酸っぱさと、傷ついた心を支え合う絆の強さ、小さな恋を大切に守ろうとする家族や友人たちの愛の深さは、観る者の心に「本気の恋」とは何かを語りかけてくる。

◆監督:スコット・スピアー 
◆脚本:エリック・カーステン 
◆音楽:ネイト・ウォルコット 
◆出演:ベラ・ソーン、パトリック・シュワルツェネッガー、ロブ・リグル、クイン・シェパード、ケン・トレンブレット 
アメリカ/2018年/英語/シネスコ/92分/字幕翻訳:野城尚子/原題:MIDNIGHT SUN 
◆配給:パルコ ◆提供:パルコ/バップ/松竹 
◆協力:S・D・P © 2017 MIDNIGHT SUN LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

2018年5月11日(金)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他にて全国ロードショー!


(オフィシャル・レポートより)

①ばあちゃんロード-s-550.jpg『ばぁちゃんロード』主演の文音&篠原哲雄監督インタビュー

(2018年3月28(水)大阪にて)
ゲスト:文音(30)、篠原哲雄監督(56)



持ち前の大らかさで優しい孫娘を演じた文音と、
活躍目覚ましい“美し過ぎる80代”の草笛光子によるW主演作!

 

「ばぁちゃんとバージンロードを歩きたい!」と、介護施設に閉じこもっている祖母を奮起させようとする孫娘とその婚約者の愛情物語。富山県氷見市を舞台に、ばぁちゃんっ子の夏海(文音)と忙しい両親に代わっていつも一緒にいてくれたばぁちゃん(草笛光子)とのハッピーウェディングプランは、いろんな思い出を共有してきた家族ならではの思いやりと優しさにあふれている。夏海の新たな人生の門出を祝うため「こんちきしょう!」を掛け声に辛いリハビリに励むばぁちゃん。それを支えようと奔走する夏海と婚約者の大和(三浦貴大)。そんな彼らを優しく見守る夏海の両親や介護施設の人々など、豊かな自然を背景に沢山の善意が幸せを応援する感動作となった。


baachanload-500-3.jpgデビュー作『三本木農業高校、馬術部』(2008年)以来の主演作となる文音は、昨年から『八重子のハミング』『おみおくり』と出演作が続いている。本作では、プロポーズを受けて大喜びしたり、婚約者とケンカしては仲直りしたり、近年稀に見ぬ美しさで魅了したウェディングドレス姿など、素直な幸せオーラ全開で、観る者を幸せな気分にしてくれる。


1996年の劇場映画長編第一作『月とキャベツ』以来、『はつ恋』『深呼吸の必要』『地下鉄に乗って』と新時代の日本映画の担い手として活躍してきた篠原哲雄監督。最近では『種まく旅人くにうみの郷』『起終点駅 ターミナル』『花戦』と日本の風情を活かした作品作りで信頼できる監督の一人である。今回、富山県氷見市での撮影では、中村記念病院や地元の人々の全面的協力を得て、わずか12日間で撮影したという。手慣れた映画制作手腕に加え、女優たちの自然体の演技を導き出す名演出家でもある。
 



4月21日からの公開を前に、文音さんと篠原哲雄監督がキャンペーンのため来阪されました。お二人に撮影中の秘話や作品にかける思いなどを語って頂きましたので、下記にご紹介いたします。(敬称略)


③ばあちゃんロード-s-Ayane-1.jpg――夏海というキャラクターの役作りについて?
文音:夏海は東京にも居たという設定だったので、それほど田舎っぽさを出さずに、髪を少し短くするとか、お化粧もナチュラルにするとか、監督と相談して決めていきました。今回は氷見の街全体に助けて頂いた感じがします。氷見オールロケでしたので、撮影中一度も東京へは帰らずに、氷見の空気感に自然と触れて役に馴染んでいきました。

篠原監督:正味12間で撮りあげたのですが、それも中村記念病院が全面的に協力して下さったお陰です。医療的な取材や施設の使用、さらにリハビリ棟などを特別に貸して下さいました。


―― 大らかな感じで幸せ感が素直に表現されていましたが、夏海との共通点は?
文音:夏海の「信じたことを真っ直ぐに進む」ところには共感しました。私自身は三人兄弟の長女で人に甘えることは不得手ですが、一人っ子の夏海が周りを巻き込んでいく甘え上手な女の子というところは意識して演じました。計算されていない可愛さがないと皆が力を貸してくれないと思ったからです。


baachanload-550.jpg――大ベテランの草笛光子さんとの共演はいかがでしたか?
文音:撮影前に、「あなたとしかできないこともあるだろうから、セリフにとらわれずにドキュメンタリータッチのようにやりましょうね」と言われました。

篠原監督:草笛さんは、毎回その役に合ったアプローチをされている女優さんなので、今回は普段の華やかなイメージとは違う髪の毛やメイクをして頂きました。また、文音さんとのやりとりが多くなるだろうから、リハビリのシーンも現実に起きているかのように、二人の親密さを活かして自由に演じてもらいました。


――草笛光子さんに学んだことは?
文音:型にはまらず、自然体で演じておられるところでしょうか。それはセリフの端々に感じられることで、芝居における化学反応を実感しました。篠原監督はシーンが終わってもカメラを回し続けておられたので、三浦貴大さんとも化学反応が起きたように感じました。役で位置づけられることで良さが出たと思います。


④ばあちゃんロード-s-Shinohara-240.jpg――現場の雰囲気は?
篠原監督:現場はとても面白かったですね。象徴的なシーンは夏海と大和が仲直りをするシーンです。離れた対岸から固定カメラで撮っていたカットがあり、二人が戯れている内にフレームから外れてしまったんです。でも、また戻ってきました。それは、俳優同士がその場の雰囲気を理解していたからフレーム内で演じることができたのだろうと思います。それによって次のシーンの二人の表情に繋がっていったので助かりました。

文音:そんな撮影の中で新たに生まれたことが沢山あったように思います。挑戦的で楽しい現場で幸せでした。

篠原監督:日常的なシンプルな映画の現場で新たな挑戦ができて良かったと思います。氷見市は本当に風景が綺麗なんです。夕景のシーンも、夕焼けがあまりにも綺麗だったので、弁当食べていたんですが、思い付いて急遽撮ることにしました。それが次の夏海が大和のためにコロッケを作るシーンの表情にうまく繋がっていきました。


――介護のシーンについて?
文音:実際に介護の研修を受けているところを撮ってもらいました。体を抱き上げたり移動させたりするにも力の入れ方やテクニックが必要なんです。桜田君はとても上手くやっていたので、器用だなあと感心しました。

篠原監督:草笛さんと桜田君のシーンでは、プロの理学療法士の方の指導を受けながらの演技でした。セリフと動作のタイミングをマッチさせるのはとても難しいのですが、彼はとても覚えが良くて、それをスーッと上手くやってくれました。

baachanload-500-4.jpg
――うまくコミュニケーションがとれない人を相手にする介護の仕事ですが、おばあちゃんの気持ちも丁寧に描かれていましたね?
文音:不自由な体になった姿を大好きな孫に見せたくない、というおばあちゃんのプライドや辛い気持ちが丁寧に表現されていたと思います。


――今まで沢山の女性像を描いて来られましたが、女優の変化については?
篠原監督:世代的変化はそれほど無いようですが、俳優として役への向き合い方は、最近の若い俳優の方がアプローチの仕方が深いように感じます。文音さんのようにアメリカへ演劇留学したことも大きいですし、自分でも独自のアプローチをしていかなければならないと気付いてきたのでしょう。世界のいろんな映画を観ても自然な演技に近くなってきています。同世代の橋口亮輔監督や是枝裕和監督もそうですが、演出家の方も昔の監督と違って自然な演出をする方向へと変化してきていますからね。

今回の草笛さんが自分の人生を語るシーンは独自のものです。演じる俳優さん自身が、生身のこととして人生を感じないと演じられないな、と思える瞬間でした。それはとても大きな成果だと感じました。
 



baachanload-500-2.jpg『ばぁちゃんロード』
【監督】篠原哲雄(『月とキャベツ』『起終点駅 ターミナル』『花戦さ』)
【脚本】上村奈帆
【出演】文音、草笛光子、三浦貴大、桜田通、鶴見辰吾、

【配給】アークエンタテインメント/2018/日本/89 分
【公式サイト】 http://baachan-road.com/

【コピーライト】©2018「ばぁちゃんロード」製作委員会
【公開日】4月14日(土)~有楽町スバル座、4月21日(土)~テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、近日~京都シネマ ほか全国順次公開!


★★★ お知らせ ★★★

4/21(土)の公開初日に、歌手:長渕剛さんと志穂美悦子さんのご長女・文音さんと、『花戦さ』や『プリンシパル~』など幅広い作品を手掛けられる篠原監督の舞台挨拶がございます!!

■日時:4月21日(土) 15:10~15:30(13:40の回上映後)
■場所:テアトル梅田 シアター(1) (大阪府大阪市北区茶屋町 16-7 梅田ロフト B1F)
■ゲスト:文音さん、篠原哲雄監督


(河田 真喜子)

DSCN6827.JPG

吉田羊、「人生に無駄な恋はない」という台詞に実感込めて。『ラブ×ドック』舞台挨拶
(18.4.17 阪急うめだホール)
登壇者:吉田羊、鈴木おさむ監督  
 
放送作家として数々の人気バラエティを手がけるにとどまらず、小説・エッセイの執筆や、『ハンサム★スーツ』『新宿スワン』など映画の脚本でも活躍する鈴木おさむが初めて監督に挑んだ完全オリジナル作品『ラブ×ドック』が5月11日(金)よりTOHOシネマズ梅田他全国公開される。
 
 
lovedoc-550.jpg
 
遺伝子レベルで恋愛を操作するクリニック【ラブドック】を舞台に“仕事は完璧、だけど恋愛は失敗続き”な愛すべき女性・剛田飛鳥が恋に仕事に友情に奮闘する姿を描いた、“大人が楽しめる”かつてない新感覚ラブコメディ。映画・ドラマ・CM・舞台と、男女問わず高い支持を得ている人気実力派女優・吉田羊は、本作で初の映画単独主演を果たしている。吉田演じるアラフォーの飛鳥のコミカルかつ切ない恋の相手には、野村周平、玉木宏、吉田鋼太郎という年下、同世代、年上の素敵男子3人が扮しているのも見どころだ。
 

DSCN6804.JPG

全国公開前に行われた大阪の舞台挨拶付試写会では、「羊ちゃん!」という声援が飛ぶ中、主演の吉田羊さん、鈴木おさむ監督がご登壇。大きなうちわを振っての応援に「私、アラフォーなのですが、こんなに黄色い声援をいただいて!舞台からだと客席が見えないので、ある時『うちわなんかを作ってくれたら、よく見えるのに』と言ったら、本当に作ってきてくださったので、よく見えます。ありがとうございます」と吉田が感激しながら挨拶すると、「どうも!うちの妻は、ハリセンボンと仲悪くないです!仲いいですよ!」と鈴木おさむ監督が挨拶し、観客から笑いを誘った。
 
 
クールビューティーと言われる吉田だが、自らをさらけ出すような飛鳥役を演じての感想を聞かれると、「飛鳥の魅力は、学習しないなと思うところはありますけれど、本能的に、心に素直なのが、一番チャーミングなところ。心に嘘がないように演じたので、喜怒哀楽がいっぱいあり、演じてすごく疲れました」と全力投球の演技であったことを明かした。さらに、前半は好きな人を射止めようと、計算高く立ち回るシーンもあることに触れ、「女子力を高めて演じる時には、監督から『羊さんの2割増しで可愛く演じてください』と言われ、日頃そんなことしないので、ものすごく照れました」と暴露。
 

DSCN6807.JPG

すかさず「可愛かったですよ」と合いの手を打った鈴木監督は、吉田の起用について「35歳から40歳までの恋する女性だったので、演者は独身で、しかもコメディーのセンスのある人。コメディーが上手だと泣きのお芝居も上手なので、吉田さんにお願いしたいと思いました。クールビューティーがボロボロになっていく姿を見たかった」とその狙いを語った。
 
さらに3人のタイプの違う男子との恋愛にボロボロになりながらも成長していく飛鳥と照らし合わせ、自身の恋愛観について聞かれた吉田は、「この映画の大きなテーマでもある『人生に無駄な恋はない』という一言は心からリンクできました。私自身も、生まれて今まで出会った人、モノ、事、あらゆるものが今の自分を形作っていると思うので、実感を込めて台詞を言わせていただきました」
 
 
lovedoc-500-1.jpg
 
鈴木監督からは、飛鳥の3つの恋について「キスシーンがあるのですが、それをどう見るか。あまりにもロマンチックすぎるところもあるし、笑えたり、いいなと思う人もいると思いますが、そのキーワードが、ホイップクリーム、ピンポン玉、金魚。皆さんもSNSでつぶやく時、『私は金魚』とか。楽しいと思いますよ」と映画を楽しむヒントが提示されると、吉田は「私が観客の立場なら、金魚かな。背景も含めてすごくロマンチックでステキでした。ああいうシチュエーションなら喜んで」と意味深発言もあった。
 
 
lovedoc-500-2.jpg
本作では飛鳥の友達役として登場する大久保佳代子が重要な役割を果たしているが、「女の友情も結構描いています。大久保さんは準主役級の存在。女性の友情や嫌な部分など結構リアルですよ」と鈴木監督がもう一つの見どころに触れると、司会からは妻で芸人の森三中、大島美幸の影響があるのかと鋭いツッコミが。「コンプレックスを抱いている女性は独特の人生観を持っていて、うちの奥さんは『美人は性格悪い』とずっと言ってますから。コンプレックスを抱いていたり、昔いじめに遭っていたような女友達が傍にいたらと思い、今回大久保さんに演じてもらいました」と語り、「吉田さんも広末さんも性格がとてもいい」と大島の説を「嫉妬」と一笑した。
 
 
lovedoc-500-3.jpg
 
最後に鈴木監督が「日本だと10代の女の子が見るキラキラムービーはあるのに、大人の女性の恋愛ムービーがないと思い、吉田羊さんにお願いして作りました。きっと小さく背中を押してくれると思います。もう一つの見どころで、シャチのシーンはCGではございません。それを念頭に置いていただくと、吉田さんがどれだけガッツがあるかわかると思います」
 

DSCN6831.JPG

さらに吉田は挨拶の前に、感謝の意を込めて、来場した観客の中から誕生日の人に登壇いただき、一緒に写真を撮り、サイン入りプレスをプレゼントするというサプライズを敢行。2名の方が登壇し、舞台上でフォトセッションさながらの撮影と、豪華ゲストとの交流を楽しんだ。
楽しい舞台挨拶の締めくくりに「大人だって恋をしたいけれど、大人だからそんなこと言えないと思っている人たちにこの映画を観ていただきたい。大人が恋をするのなら、こんなにカッコいいんだと思っていただき、前向きに、ハッピーになって帰っていただけたら、うれしいなと思います。笑って、泣いて、そして最後には清々しい気分になれる作品になっております。今日は楽しんで帰ってください。本当にありがとうございました」と気持ちを込めて吉田が挨拶。舞台上から客席の隅々まで目を配り、観客と交流をする吉田や鈴木監督に、改めて大きな拍手が送られた。
いくつになっても恋する気持ちを忘れたくない大人女子への全力応援ムービーを、ぜひ楽しんでほしい。
(江口由美)
 

lovedoc-pos.jpg

<作品情報>
『ラブ×ドック』
(2018年 日本 1時間54分)
監督・脚本:鈴木おさむ
出演:吉田 羊 野村周平 大久保佳代子 篠原 篤 唐田えりか 成田 凌/広末涼子 吉田鋼太郎(特別出演)/玉木 宏 ほか
ミュージックディレクション&主題歌:加藤ミリヤ
製作:『ラブ×ドック』委員会 
配給:アスミック・エース
2018年5月11日(金)よりTOHOシネマズ梅田他で全国ロードショー
 ©2018『ラブ×ドック』製作委員会
公式サイト →  http://lovedoc.asmik-ace.co.jp/
 

TheSquare-jp-500.jpg(左から)森直人さん、リューベン・オストルンド監督、菊地成孔さん


 『ザ・スクエア 思いやりの聖域』監督×菊地成孔登壇ジャパンプレミアレポート

◆実施日:4月11日(水)
◆場所:ヒューマントラストシネマ渋谷(渋谷区渋谷1-23-16 ココチビル7F)

◆登壇者:リューベン・オストルンド監督、菊地成孔(音楽家・文筆家) 
   司会:森直人(映画評論家)

 

第70回カンヌ国際映画祭 最高賞パルムドール受賞
本年度アカデミー賞® 外国語映画賞ノミネート
美術館を舞台に<毒とユーモア>で人間の本質に迫る、
傑作社会派エンタテイメント!

北欧の鬼才リューベン・オストルンド監督登壇!
監督 「恥と罪の意識こそが人間特有の感覚なんです」
なぜ今観るべきか!? 菊地成孔と本作の見どころを徹底分析!!

 
第70回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝き、本年度アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』が、4月28日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開されます。

このたび、本作の監督・脚本を務めたリューベン・オストルンドが緊急来日!そして、ヒューマントラストシネマ渋谷にて行われたジャパンプレミアに登壇。音楽家・文筆家の菊地成孔さんとトークショーを行いました!



満席となったジャパンプレミアの会場は、はるばるスウェーデンからやって来たリューベン・オストルンド監督が登場すると拍手喝采が巻き起こった。二部構成のトークショーでは始めに観客とのQ&Aが設けられ、客席からは次々と手が挙がりました。その後、音楽家・文筆家の菊地成孔さんとの対談がスタート。司会は映画評論家の森直人さんだ。


菊地さんは始めに「この映画を観て、私たちはヨーロッパについて知っているようで、いかに何も知らないのかということを感じましたね。福祉が行き届いた豊かな国だと思っていたら、巨大な貧富の差があってホームレスが物乞いをしていて……という」と、新たなヨーロッパ像を提示した本作の鋭さに言及した。


TheSquare-550.jpgそして話は、本作でオストルンド監督が描きたかったテーマの1つである“傍観者効果”に移った。傍観者効果とは、ある危機的状況が起きた際に、周囲が傍観し続け、誰も助けようとしない状況を指す社会心理学用語の1つ。『ザ・スクエア 思いやりの聖域』には、誰もが“こんな状況あるある!”と頷く日常に潜んだ傍観者効果の場面が次々と登場する。


そこには、オストルンド監督の“この映画を通じて、傍観者として受け身にならず、人間として助け合おうという思いやりの心を思い出してほしい”というメッセージが込められているのだ。菊地は「日本の場合はもはや傍観者効果に対して、問題意識を持たないほどこじらせているんです」とキッパリ。「だから、“傍観者効果は問題だ”と気づいているということ自体に、スウェーデンと日本の意識の違いが表れている。


映画の冒頭は、主人公のクリスティアンがあるハプニングに対し傍観者になるかどうか選択を迫られ、結局“傍観者にならない”道を選んだところで、新たなハプニングに巻き込まれる。そういうところが、傍観者効果に対して、すごく知的に描かれていると感じました」と述べた。


TheSquare-500-3.jpgさらに菊地さんは、「現代アートの世界の裏側を描いた作品というのは、映画史上初めてでしょう。“砂山を作っただけで大金がもらえるってどうなのよ”という、誰もが感じたことはあるだろうけど誰も言えなかった、そんな疑問を初めて扱った」とその革新性を分析。それに対しオストルンド監督は「劇中、美術館で起きる出来事の多くは、実際に起きたことがベースになっています。例えば、ボローニャのとある現代美術館では、清掃係がゴミだと思って間違って作品を片付けてしまったというハプニングがありました。煙草の吸殻と古いシャンパングラスを置いただけの作品だったようですが、その作品に約500万ユーロの保険がかかっていたので、どうしたものかと関係者は頭を抱えたそうです」と衝撃的なエピソードを明かし、観客からは驚きの声が上がった。


また、菊地さんがそうした本作の風刺的なスタイルをモンティ・パイソン的だと評すると、オストルンド監督は「モンティ・パイソンは私も大好きです!」と微笑んだ。続けて、「それと、フェリーニの『甘い生活』も思い出しました」と菊地さん。「“神なき世界で人がどう倫理的に生きるべきなのか”というヨーロッパ的な命題を、どちらも描いているなと。それに『甘い生活』は、ゴシップ紙のカメラマンという、それまではとても映画の題材にはできなかったような職業を対象にしていましたが、主人公が変わった職業という点や、その他にも主人公がスーツ姿だったり、突飛なストーリーはなくても印象的なシーンがたくさんあったり、『ザ・スクエア思いやりの聖域』と『甘い生活』には共通点が結構あるなと思いました。でも、『甘い生活』よりもこっちの方がユーモラスで苦いですね」と、映画史上の巨匠監督による名作と並べながら、ヨーロッパ映画としての観点から『ザ・スクエア 思いやりの聖域』を絶賛した。


すると、オストルンド監督は「私は、ハリウッド的な勧善懲悪には同意できないんです」と一言。「なぜなら、私たちの誰もが、良いことをする可能性もあれば、悪いことをする可能性もある。だから私は、脚本を書くときにあえて登場人物をあるジレンマに落とし込むんです。監督の私自身が“あぁ、こんなことやっちゃうよな”って思えなければ、その映画は失敗です。私の映画は全て、社会学的なアプローチを取っています。


今のメディアは、何か問題が起きた時にある個人に罪をなすりつけがちです。しかし、社会学は誰かが失敗しても、その個人に罪をなすりつけません。むしろ、そこに興味を持つんです。“そうか、私たちはこういうことができないんだ”って。だからこそ、現代は社会学的なアプローチがより必要とされている時代なんです」と続けると、菊地も「今はネットの炎上とかも頻繁にありますし、社会学的アプローチが必要と言うのはそういう意味もあるでしょう。罪の意識の変化ですね。この映画では、社会の中で何が罪なのかが問われているんですね」とうなずいた。


TheSquare-500-2.jpgさらにオストルンド監督は、こう話した。「私は、日本や東アジアの文化にも、北欧と似ている部分はあると思います。それは、面目を失うのを恐れるということです」と語り、「私の前作『フレンチアルプスで起きたこと』では、旅行先のゲレンデで雪崩が起き、父親が家族を見捨てて逃げ出すという物語の要になる場面があります。大事故にはならず父親は戻ってきますが、家族はもう彼をそれまでのようには見られません。自分に期待される役割を果たせなかったことに、父親は強い恥を感じます。この映画で私は、恥という感覚の普遍性を描こうとしました。


例えば、エストニアの沈没事故とか、多くの人命が失われた事故や災害では、統計を見ると実は生存者は男性が多数なんです。女性を先に助けようと言っているのに、男性の生存本能が勝って利己的な行動に出ている。生存本能は、倫理的な規範をとりはらう。しかし、一方でこんなことがあります。韓国で起きたセウォル号沈没事故で、生徒たちを見捨てて生き残った教師がいました。生存本能が勝ったわけです。しかし、その後、彼は自殺してしまったのです。生存本能が強くても、最終的には恥が勝ってしまった。それほど恥は人間に強い影響を与え、人間と言う動物だけが、唯一その恥の感覚を持っているんです」と、本作が描くのは決してスウェーデンやヨーロッパに限らない、普遍的な問題を扱っていると伝えた。


トークはどんどん白熱し、まだ話したりないといった空気の中、終了の時間に。最後にオストルンド監督は、「今日は皆さん、本当にありがとうございました!」と観客に感謝を伝え、「現在私は次回作を企画中で、“Triangle of Sadness”というタイトルの、男性ファッションモデルを主人公にした“美”がテーマになる予定です」と次回作をすかさずアピール。オストルンド監督が一貫して描き続ける、人間社会の普遍的な問題を扱う悲喜劇となりそうだ。今後のそうした彼の活躍を見届けるためにも、オストルンド監督の作家性が最高のかたちで表れている『ザ・スクエア思いやりの聖域』は何よりも今こそ観るべき映画だ――観客の誰もがそう強く実感する中で、ジャパンプレミアは幕を閉じた。

TheSquare-jp-550.jpg


【リューベン・オストルンド監督プロフィール】
1974年、スウェーデン西海岸の小さな島、スティルソに生まれる。2005年、長編デビュー作『Gitarrmongot(原題)』(04)を監督。長編2作目『インボランタリー』(08・未)がカンヌ国際映画祭のある視点部門でプレミア上映。長編3作目の『プレイ』(11・未)はカンヌ国際映画祭の監督週間でプレミア上映され、‘Coup de Coeur’賞を受賞した。長編4作目の『フレンチアルプスで起きたこと』はカンヌ国際映画祭のある視点部門でプレミア上映され、審査員賞を受賞。数々の映画祭に出品され、16の外国映画賞を獲得。最新作である『ザ・スクエア 思いやりの聖域』で第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に初出品され、パルムドールを受賞。これまでに24の映画賞を受賞、30のノミネートを果たしている。


【菊地成孔さんプロフィール】
1963年、千葉県に生まれる。1985年にミュージシャンとしてプロデビューを果たし、ジャズを中心に活動。現在は「菊地成孔とペペトルメント・アスカラール」、「菊地成孔ダブ・セプテット」として活動する他、作詞提供やプロデュースも行い、『パンドラの匣』(09)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18)など映画のサウンドトラックも手がけている。主な著作に「歌舞伎町のミッドナイトフットボール」、「ユングのサウンドトラック」、「レクイエムの名手菊地成孔追悼文集」「菊地成孔の欧米休憩タイム」など。TBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」ではメインパーソナリティを務めている。


『ザ・スクエア 思いやりの聖域』 

・THE SQUARE 2017年  スウェーデン、ドイツ、フランス、デンマーク合作 2時間31分
・監督・脚本:リューベン・オストルンド『フレンチアルプスで起きたこと』  
・製作:エリック・ヘルメンドルフ『フレンチアルプスで起きたこと』、フィリップ・ボベール『散歩する惑星』  
・撮影:フレドリック・ウェンツェル『フレンチアルプスで起きたこと』
・出演:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、テリー・ノタリー他
・後援:スウェーデン大使館、デンマーク大使館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本

・© 2017 Plattform Produktion AB / Société Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS

2018年4月28日(土)~シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、京都シネマ 他全国順次公開
公式サイト⇒ http://www.transformer.co.jp/m/thesquare/
・作品紹介⇒ こちら


(オフィシャル・レポートより)

 

TheSquare-di-550.jpg『ザ・スクエア 思いやりの聖域』、脚本&監督 リューベン・オストルンド監督オフィシャル・インタビュー

 (2018年4月11日(水))


第70回カンヌ国際映画祭 最高賞パルムドール受賞
本年度アカデミー賞® 外国語映画賞ノミネート
美術館を舞台に<毒とユーモア>で人間の本質に迫る、
傑作社会派エンタテイメント!


Q:カンヌ映画祭パルムドール受賞おめでとうございます。受賞したときの心境を聞かせください。また次はアカデミー賞ですか?
A:そうですね。当初、私たちの目標としていたのは、カンヌ映画祭のコンペに選ばれることでした。そしてコンペに選ばれて、物凄く緊張していたのですが、上映後の反応がとても良かったのです。やはり受賞したいと思ってしまいました。

そしてドキドキしながら、授賞式出席要請の電話を待っていたのです。そして、無事授賞式に出席することになったのですが、次々に賞が発表される中、最後の賞発表の時間になっていました。やっぱりダメだったのかなと思っていたら、パルムドール受賞でしたので、本当に嬉しかったです。素晴らしい監督たちがパルムドールに選ばれていなかったので、とてもラッキーだと感じるとともに、非常に謙虚な気持ちにもなりました。

アカデミー賞については、結果外国語映画賞でノミネートされました。日本公開はこれからですが、アメリカ公開は去年の秋でしたので、ノミネートはされましたが受賞には至りませんでした。

Q:では次回作で?
A:そうですね。でも私が尊敬している監督たちはいずれもカンヌを受賞した監督たちなので、今回のパルムドール受賞は本当に嬉しかったです。

TheSquare-550.jpgQ::あなたが映画監督を目指したきっかけは何だったのですか?
A:私は最初、スキーに興味があったので、スキー映画をたくさん見ていました。といっても、スキーしている映像に音楽がかかっているだけの映画なんですけど。そのうちに、スキー映画を制作することに興味を持ち始めました。そこで、私が今住んでいるスウェーデン、ヨーテボリの映画学校に申し込んだのですが、一回目は落ちて、二回目にようやく入ることが出来ました。それから、私のスキーへの興味と映画への興味が逆転してしまいましたので、私が映画を撮るきっかけとなったのは、スキーという事になります。

Q:ハリウッドにも進出しているクレス・バング、そして「ハンズメイド・テイル/侍女の物語」でもゴールデングローブ賞で主演女優賞を獲得した、エリザベス・モスや、『猿の惑星』シリーズでモーション・キャプチャー俳優として活躍しているテリー・ノタリーなど、素晴らしいキャスト陣となっていますが、本作のキャスティングの決め手は?
A:キャスティングのプロセスはかなり長かったのです。且つ慎重に進めなければなりませんでした。私は通常、テストせずに役を決めるような事はしないのですが、モンキーマンを演じたテリー・ノタリーだけは猿のマネがとても上手だったので、通常のプロセスを踏まずに決めました。

クレス・バングの場合は、彼は役者のみならず、人間としても少し脆い部分があって、私と一緒にシーンを演じた時に、彼が本当に思っている感情が出てくるんですね。感情が顔に出てしまう人なので、私はそういう資質がとても好きなので、彼に決めました。

そして、エリザベス・モスは私が今まで仕事をした中で、最も知的な方だと思っています。その状況を使って、相手をやり込めることが出来る人なので、今回そういう人が必要でしたので、彼女と一緒に仕事が出来て、とても幸せでした。

TheSquare-500-1.jpgそして、テリー・ノタリーですが、まず彼が猿の真似をするというユーチューブを見つけたのです。その中で、彼は手のエクステンション(器具)を付けて、どんな風に「猿の惑星」でモーション・キャプチャーをやるかを、デモンストレーションしていたのです。「これはチンパンジーです」と言うと、本当にチンパンジーなのです。そして「これはゴリラです」と言うと、すぐに「あ、これはゴリラだ」と、変わったのが分かるのです。それで、彼は凄いなと思い、彼に決めました。

Q:炎上についてお伺いします。今日本で、SNS、特にTwitterで炎上というのが、今回の映画で描かれているような状況が日々起こっています。例えば、あるスターが不倫をしたとします。するとTwitterで一般人が総攻撃して「番組から辞めさせろ」などということがあります。多分各国でも同じようなことが起こっていると思いますが、このような状況をどう思われますか?また、監督がもし炎上してしまったら、どうしますか?
A:今の時代、非常に非文明的な、非市民的な事が起こっています・それは個人に対する集団的な怒りの表し方で、非常に間違ったやり方だと思うし、怖いと思いますね。ソーシャルメディアに限らず、報道ニュースもそういうことをしていると思います。私にもそういうことがあったのですが、一番いい対処の仕方は、それが可能であればという話ですが、個人的にそれを受け取らないことです。あとは勝手にやっておいてねという風に、自分は参加しない、ということだと思います。

Q:今回、日本での滞在期間が2日間と非常に短いのですが、あなたの映画のネタになるような事はありましたか?
TheSquare-di-240-1.jpgA:もし今後、ジャーナリズムやメディアについての映画を作るとしたら、通訳付きでインタビューを受けるというのは面白かったので、使えるかなと思いました。日本語で質問されても私は全く分からなかったので(笑)。ですが、メディアの方々はとても親切で、非常に敬意を示してくれたので、取材メディアの方々には非常に満足しています。という意味でいうと、まだ見つかっていないですね、今晩見つかるかな?

Q:これから映画を観る日本のファンに向けて、一言お願いします。
A:私はこの映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』の監督&脚本をしておりますリューベン・オストルンドです。なるべくたくさんの人に映画を観に行って頂きたいと思います、大歓迎致します!


<Twitterからの質問について(3問)>

Q1:映画を作る上で最も大切な事は何ですか?
A:監督として、撮影でこういう風になればいいなという大きな期待があって、毎日その為に凄くもがいています。で、このシーンは酷いなと思うと何回も撮り直すのですが、どうしたら解決するんだろうなと思います。自分が撮りたいビジョンと、それを実現するための葛藤というものがあり、上手くいくと、監督って最高の仕事だと思いますが、上手くいかないとそれが最悪の仕事と思うのです。

私の友人が映画を撮っていて、上手くいかなくて三日目にロケ現場に車で向う車の中で、シートベルトをはずして、もう早くこのプレッシャーから開放されたいと言っていました。それほど感情的なジェットコースターになります。
 

Q2:あなたはご自身で脚本を書かれていますが。撮影に入ってから、閃いて脚本を変えてみるという事はありますか?
A:あります。映画を作るというプロセスの中で、色々な事が変わっていくので、脚本も変えています。脚本を書いているときは、机に向って自分で考えて書いている訳ですが、その時と違ってカメラに向って、あるいはカメラの向こう側に自分の選んだ俳優がいることで、また状況は変わってきます。どんな俳優とやるかによっても変わってくると思いますね。その俳優を使って、その状況というものを最大限利用するようにしています。それから、キャスティングをする時に、俳優たちが色々な即興をするのですが、その即興で凄くいいセリフを言ったりするのです。自分が書いた脚本よりもずっといいと、それをすぐ盗んだり、というように脚本の変更というのは、常に続いていくプロセスですね。
 

TheSquare-500-4.jpgQ3:あなたの撮った映画の中で、お気に入りのキャラクターはいますか?また自分に似たキャラクターはいますか?
A:自分に近いと思うのは、今回のクリスティアンと『フレンチアルプスで起きたこと』のトマスですね。自分にとても近いと思います。好きなキャラクターはいっぱいあるのですが、例えば『フレンチ~』では、クリストファー・ヒヴューが演じた赤ひげのマッツとその恋人役を演じたファンニ・メテーリウスも好きです。

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』では、あの小さな男の子もいいと思うし、クリスティアンの助手もいいと思いますし、エリザベス・モスやテリー・ノタリーも、皆さん、とてもいい演技をしてくれたので、それらのキャラクターはどれも好きです。
 

――最後にファンからのTwitterからのメッセージをお伝えします。
「あなたの作品が大好きで、ドキュメンタリーのようで、寓話でありながらとてもリアルで、観ていてとても精神が削られます、そこが大好きなんです。人間の愚かさと怖さの描写が、あまりにも日常的で鋭くて素晴らしいです。『フレンチアルプスで起きたこと』は私の2017年のNo1でした。新作楽しみにしています。」
A:とても嬉しいです。


『ザ・スクエア 思いやりの聖域』 

・THE SQUARE 2017年  スウェーデン、ドイツ、フランス、デンマーク合作 2時間31分
・監督・脚本:リューベン・オストルンド『フレンチアルプスで起きたこと』  
・製作:エリック・ヘルメンドルフ『フレンチアルプスで起きたこと』、フィリップ・ボベール『散歩する惑星』  撮影:フレドリック・ウェンツェル『フレンチアルプスで起きたこと』
・出演:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、テリー・ノタリー
・後援:スウェーデン大使館、デンマーク大使館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
2018年4月28日(土)~シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、京都シネマ 他全国順次公開
公式サイト⇒ http://www.transformer.co.jp/m/thesquare/
作品紹介⇒ こちら
・© 2017 Plattform Produktion AB / Société Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS


(オフィシャル・レポートより)