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2017年3月アーカイブ

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林遣都&東伸児監督、市原悦子との撮影秘話を語る。『しゃぼん玉』舞台挨拶
(17.3.25 テアトル梅田)
登壇者:東伸児監督、林遣都さん 
 
直木賞作家・乃南アサのベストセラー小説『しゃぼん玉』が林遣都主演で映画化、関西では3月25日(土)よりテアトル梅田、シネマート心斎橋、京都シネマにて公開されている。監督は本作が初長編作となる、TV「相棒」シリーズで監督を務めてきた東伸児。素晴らしい日本の原風景であり、歴史ある平家まつりが行われている宮崎県椎葉村を舞台に、市原悦子、綿引勝彦らベテラン俳優陣らと林遣都が紡ぎ出す魂の物語は、間違えることはあっても、誰でも人生をやり直せると、そっと背中を押してくれる。
 
公開初日のテアトル梅田で上映後に行われた舞台挨拶では、まだ映画の余韻が残る満席の劇場に東伸児監督、伊豆見翔人役の林遣都さんが登壇。観客とのあまりにもの近さに驚きながらも、立ち見のお客様も見える客席を前に、感謝の言葉で始まった舞台挨拶の模様をご紹介したい。
 

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―――ご覧になった観客からは「今までにない林遣都さんの一面が見れた」という声が多い作品ですが、新しい林さんの一面を出したいという狙いはあったのですか?
東監督:特別そういう思いはありません。3年ぐらいかけて脚本を書きましたが、キャスティングについては林君がスケジュールがちょうど空いていて出演してもらえそうだということで、1時間ほど会ってお話したことがありました。その時の林君がとても良くて。ちゃんと20代の青年として挫折もあり、きっと誰かを羨んだり妬んだりしたこともあるだろうと思ったんです。キャスティングは共犯者、この人と心中したいと思う人を見つけることなのですが、共犯者を見つけるには、何か一つでもいいから「この人となら、一緒に闘っていけるのではないか」と思えることを感じることが大事。新しい一面というより、この林遣都が演じる伊豆見翔人を見たいと思って演出しました。
 
―――演じる側として、今までの作品とは違う自分をという意気込みはありましたか?
林:常にどの作品でもそのように思っているので、今監督におっしゃっていただき、そこまで自分の中身を見ていただいていたのだなと、鳥肌が立ちました。
 
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―――映画の中で林さん演じる伊豆見は、逃亡先の宮崎県椎葉村で出会うスマ(市原悦子)やシゲ爺(綿引勝彦)らから、たくさんの愛情や厳しい言葉もかけられます。お二人が今までお仕事の中で愛情や厳しさを教えてもらった人はいらっしゃいますか?
東監督:大学入学時に上京し、大学を卒業するときに映画監督を目指そうと思ったのですが、その時に「夢があって羨ましい」という言葉と、日本映画が一番底の時期だったので「夢ばかり見て、どうするんだ」という言葉をずっと色々な人からかけられたのです。そんな時、電話で実家の母親が「お前は勇気があるよ」と言ってくれました。確かにその時の自分はすごく勇気を出していて、それを母親に言い当てられた時にすごくホッとしましたね。
林:デビュー作(『バッテリー』)の滝田洋二郎監督が、今までで一番厳しかった監督でした。当時僕は15歳ぐらいでしたが、何も分からない時に怒鳴り散らされ、本当に怖かったです。その分、うまく出来た時や、必死に食らいついていったときは、それと同じぐらいの愛情で返してくださいました。今でも年に一度連絡を取らせていただいているのですが、その時も厳しい言葉をかけてくださいますし、「ずっと勉強しなさい。でもいい子になっちゃだめだよ」と。大きなきっかけを下さった方ですね。
 
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―――林さんと市原悦子さんとの共演シーンは、本作の大きな見どころですが、林さんご自身は市原さんにどんなイメージを持たれていましたか?
林:遠い、遠い次元の方。小さい頃から「日本昔ばなし」を観ていましたし。お会いすると、みなさんがお持ちのイメージ通りの「スマおばあちゃん」に近い、心の優しいおばあちゃんでした。
 
―――芝居についてのお話はされましたか?
林:ほとんどなくて、最初にお会いしたときに「とても難しい役ですね」と一言だけ言われました。最後、とても難しく重いシーンを撮影した後に、「役者という仕事は大変だけども、しっかりとやっていかなければいけないですね」という言葉をかけていただきました。
 

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―――東京での舞台挨拶で市原さんは、来場できないからとボイスメッセージを寄せて下さり、林さんも感極まっていらっしゃったそうですね。
林:市原さんから「林さんとの共演は忘れられないものになりました」という言葉をいただき、その言葉は僕の生涯の宝物です。この撮影以来お会いできていないので、早く元気になっていただきたいし、映画の感想も聞いてみたいです。僕も、ずっと見ていただけるように、役者業を頑張っていきたいです。
 
―――林さん演じる伊豆見は人の温かみに触れることができず、孤独をずっと抱えて生きてきた、そして将来への不安も抱えている人間です。どうやって生きていけばいいかわからないという手探りの若者像は共感できる部分が強かったですか?
林:原作を読んだとき、自分とはかけ離れた人間だと感じ、共感しようとも思わなかったです。改めて自分が苦しいことも嬉しいことも、学生生活も恋も、当たり前のように家族と過ごしてきて恵まれているなと感じました。この役はすごく覚悟がいる役でした。
 
―――若い人が上の世代と繋がっていく様子も丁寧に描かれていましたが、どのようなメッセージが込められているのでしょうか?
東監督:僕自身田舎から上京し、アルバイトをしながら大学に行き、一人で都会にいた訳です。そういう人が道を踏み外すことは全然不自然ではなく、そこにあるものに手を出すか、出さないかだけのことです。僕がなぜ手を出さなかったのかと考えると、やはり裏切れない誰かがいる。悲しませてはいけない誰か、家族や親、兄弟、友人がいる。そういう人がいることがとても大切で、この映画ではそれを見つけることができたという話なのです。
 
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―――最後に一言ずつお願いいたします。
東監督:少し市原さんのお話をさせていただくと、市原さんはラストシーンは死にたかったと。生きていてもらえませんかと僕は話しましたが、このラストシーンはそんなにハッピーエンドだとは僕も思っていません。伊豆見は帰る場所が出来た。それはとても素敵な話ですが、ファンタジーではない。帰ってきた時から現実が始まり、仕事や結婚はどうするのか。一番大きいのは、スマの老いをどうするのか。僕はそれを背負って伊豆見には生きていってもらいたいのです。市原さんは、彼の重荷になりたくないと思っていたようですが、それを背負って生きていくラストシーンにさせてもらいました。今日はありがとうございました。
林:この『しゃぼん玉』は、僕にとってとても大事な作品で、監督はじめスタッフ、キャストの皆さん、そして宮崎県椎葉村というとても素敵な村の皆さんの支えがあり、僕もこの役を務めることができました。出来上がって、色々な方の感想を聞き、益々自信を持ってもっとたくさんの方に観ていただきたいと心から思っています。みなさん、是非勧めていただければうれしいです。今日はありがとうございました。
(江口由美)

<作品情報>
『しゃぼん玉』
(2017年 日本 1時間48分)
監督:東伸児
原作:乃南アサ『しゃぼん玉』 (新潮文庫刊)
出演:林遣都、藤井美菜、相島一之、綿引勝彦、市原悦子
2017年3月25日(土)~テアトル梅田、シネマート心斎橋、京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒ http://www.shabondama.jp/
(C) 2016「しゃぼん玉」製作委員会
 

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現代によみがえらせた『雪女』で描きたかったことは?
『雪女』監督・主演、杉野希妃さんインタビュー
 
長編デビュー作『マンガ肉と僕』、全編インドネシアロケの長編2作目『欲動』と、主演や出演、プロデューサー業をこなしながら話題作を世に送り出していた杉野希妃監督。3作目の題材に選んだのは、小泉八雲の「怪談」より、日本人になじみ深い短編「雪女」だ。独自の解釈を加えながらも、「雪女」の世界観を踏襲。自ら雪女/ユキ役を演じる最新監督作『雪女』が、4月1日(土)よりシネ・リーブル梅田、シネ・ヌーヴォ、京都みなみ会館、元町映画館の関西4館で同時公開される。オール広島ロケによる日本の原風景や雪のシーンを交えながら、人間の男を好きになった雪女、そして雪女の娘ウメの生き様を、幻想的な映像で綴っている。
 
監督・主演の杉野希妃さんに、『雪女』を映画化するにあたって原作から膨らませた部分や、現代によみがえらせた『雪女』に込めた思いについてお話を伺った。
 

■『雪女』映画化で出したかったのは、寺山修二監督作品『さらば箱舟』のような世界観

━━━「雪女」を映画化したきっかけは?
杉野:4年前、『おだやかな日常』でトライベッカ映画祭(ニューヨーク)に参加したとき、小泉八雲のエッセイ映画を撮る企画を進めていた現地在住のプロデューサーの方にお会いする機会がありました。小泉八雲の本についてお話するうちに、その方からふと言われたのです。「(杉野さんは)雪女っぽいから、やってみれば?」と。確かに雪女のことはなんとなく知ってはいましたし、映画化すれば面白いかもしれないとその場で思い、まずはきちんと本を読もうと帰国後八雲の「怪談」を買い求めて、初めてきちんと「雪女」を読みました。
 
━━━改めて「雪女」を読み直し、どこに魅力を感じましたか?
杉野:たくさんの驚きがありました。まず、こんなに短いお話だったのかということ。また、子どもを10人も産んでいたとか、雪女の感情が全く描かれていないなど、驚きと謎に満ちていました。ただ、その謎を解き明かしていく感覚がむしろ楽しく、私なりの解釈で映画化すれば、きっと面白いものができるはずだと。ニューヨークでの直感が映画になったのは不思議な気分ですが、神のお導きか、映画の神様が囁いてくれた。そんな気がしています。
 
━━━誰もが知っている「雪女」のイメージを膨らませ、脚本化するのは難しい作業だったと思いますが、どのようなプロセスを経たのですか?
杉野:当初プロデューサーからは、完全な現代ものとして制作することを提案されました。でも雪女のユキが洋服を着て、現代版ファンタジーのように描いてしまうのは、もったいない。私が「雪女」を読んだ時に感じた日本の原風景や雪景色を、現代の設定に織り交ぜて雰囲気を出していくことに違和感を覚えました。時代設定を変えて新しさを出すより、思想的な部分に今の私が考えていることを織り込むことで新しさを出す方が、自分らしい作品になる。そう考えて、現代のパラレルワールド的な、ある村のどこかという設定にしました。寺山修二監督作品『さらば箱舟』のような世界観、つまり「もしかすると、あるかもしれないし、ないかもしれない」というギリギリのラインの世界観が好きなのです。映像的にCGを使って表現するやり方ではなく、淡々とした静寂の中に潜む感情を大切にすることで表現していきました。
 

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■「何といわれても演じたかった」雪女役がもたらした役者人生初の体験とは?

━━━杉野さんが雪女として登場するシーンから、雪女の持つ妖艶さや儚さが漂い、特別な世界に誘われました。演じる上で、プレッシャーはありましたか?
杉野:誰に何を言われても、雪女は自分で演じてみたかった。そもそも、人間でないものを演じてみたいという願望もありましたし、俳優として「このキャラクターは掴みにくい」と思うものこそ、やる気が出ますから。雪女がどのように人間と交わり、人間化していくのかという部分も演じがいがありました。
 
━━━雪女は怖い存在というより、死への渡し人のようなニュアンスを感じますね。
杉野:雪女が死に寄り添うような感覚は残したかったですね。「ホラー映画かと思ったのに…」というご感想もいただきますが、オープニングも怖さだけでなく、どこかやさしさを出しています。おこがましい話ですが、『雨月物語』の京マチ子さんが本当にアップで映っていらっしゃるので、撮影の上野彰吾さんとギャグで「打倒、京マチ子さん!」と言いながら、どの角度やアップがいいかを試行錯誤を重ねて、撮っていました。
 
━━━雪女を演じてみて、杉野さん自身の中に何か変化や感じることはありましたか?
杉野:水野久美さん演じるばあばが死んだ後、ユキとウメの二人が慈愛の目でばあばを見つめるシーンを書いたのですが、撮影中にその表情をしようとしてもできなかったのです。ひたすら無表情で見つめる演技しかできなかった。モニターを見た時に、脚本を読んでいるはずのウメを演じる山口まゆさんも、同じく無表情で見つめていて、演出をした訳でもないのに同じ眼差し、同じ無表情で、二人の動きがシンクロする空気感がその時ありました。演じるためには自分をコントロールしなければいけない部分がありますが、コントロールできないものが確かにあると今回初めて感じました。
 
━━━物語の中心となるのはユキと巳之吉の夫婦関係とその愛ですが、劇中でその愛を表す美しいラブシーンが登場します。女性監督が描くエロスの表現が、艶っぽく、そしてラストシーンに説得力を持たせていました。
杉野:あのラブシーンは絶対に必要ですし、少し長めに撮ろうと最初から考えていました。生々しい感じであり、且つ男目線ではない感じのシーンにしたかったのです。ただ、自分で書いたとはいえ、オールアップ直前の締めのシーンでしたし、夜中からキャメラを回していたので、「なんて大変なシーンを入れてしまったのだろう」と撮影直前は一瞬後悔しましたね(笑)。
 

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■「夫婦だが緊張感のある二人」青木崇高が演じる夫・巳之吉。 

━━━巳之吉役の青木崇高さんは、昔ながらの日本男子がはまり役でした。キャスティングの経緯は?

 

杉野:私がプロデューサーを始めたころから、味のある芝居をされる青木さんと、いつかお仕事をご一緒したいと思っていました。元々海外の監督や映画人と一緒に仕事をしたいというお気持ちが強い方で、今回念願叶って巳之吉役をオファーさせていただきました。原作の巳之吉は朴訥としていて、肝心な場面でうっかり口を滑らせてしまったという雰囲気を持っています。ただ映画となると、雪女が化けて現れるのに、単に朴訥としている人だと張り合いがない。雪女が冷たいなら、巳之吉は情が深いというように、いい緊張感や張り合いのある感じで、両者が対比できる存在であってほしい。青木さんなら巳之吉の中にある感情の軋みを表現していただけると思いました。特に細かい指示は出さず、「夫婦だが、緊張感のある二人」とだけお伝えし、狙い通りに演じていただいたと思います。
 
 
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■ユキの娘、ウメは『雪女』で一番大事なオリジナルの役。

━━━山口まゆさんが演じるユキの娘・ウメは、原作にはないオリジナルの設定ですが、どのような演出をしたのですか?
杉野:山口さんには、ウメというキャラクターが今回の『雪女』で一番大事であることを説明しました。「異種である雪女と、人間の間に生まれた子どもがどういう存在なのかを、この映画で描きたい。原作にないキャラクター、ウメを作り、10人いた子どもを、ウメ一人に集約させているので、頑張って演じてください」と狙いを伝えました。ただ、あえて作り込まなくても、山口さん自身が持つ素質の中に、二代目雪女に通じるものがありました。まだ思春期で、子どもっぽいところもあれば、達観した雰囲気も備え持ち、口を開けば子どもっぽいことも話したりする。そんなアンバランスさや無防備さに色気を感じました。ウメの中には自分は人間なのか、雪女なのかという葛藤もありながら、どこかでその運命を受け入れています。山口さんのポテンシャルがあれば、多くを言わなくてもそのニュアンスを演じてくれると思ったので、安心してウメ役を任せることができました。
 
━━━ウメが成人の儀式に参加しているシーンが2回登場しますが、そのシーンを取り入れた意図は?
杉野:実は儀式のシーンで、ばあばが「儀式の意味を忘れてしまう社会は、滅びるのみよ」という台詞を入れていました。説明的すぎるので最終的にはカットしましたが、代々儀式を行う意味を本当に私たちは知っているのだろうか。そのような問題提起を含め、象徴的に映像へ入れたかったのです。2回目の儀式では、子どもから大人になったウメを描いています。最後に何を思うのか、そのウメの顔で物語を終わろうと決めていました。

 

■運命的な佐野史郎出演秘話と、あて書きの一人二役に込めた狙い。

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━━━茂作役の佐野史郎さんは、ご自身でも小泉八雲の朗読をライフワークとされ、妖怪への造詣も深いそうで、『雪女』にピッタリのキャスティングです。
杉野:佐野さんは『禁忌』という作品で、私が演じるヒロインの父親役でした。ちょうど「怪談」を読み終わり、『雪女』を撮りたいと考えていた頃だったので、撮影の合間に『雪女』の話をしたところ、偶然なことに、佐野さんもアニメーション版『雪女』(イジー・バルダ監督)のプロデュース兼声優をしているとお話してくださり、これはもう運命だと思いました。佐野さんからも「やればいいと思うよ」とおっしゃっていただいたので、その場で「佐野さんにあて書きしますので、ご出演いただけますか」と出演のお願いをしていました(笑)。
 
ずっと脚本の進捗状況をお伝えしては、「待っています」とお返事をいただいていたのですが、いよいよ出来上がった脚本をお届けした時、「大好きな幻想怪奇の世界がきちんと描かれている」と評価していただき、ほっとしました。当初から佐野さんには茂作だけでなく二役演じていただこうと決めていました。茂作は自然寄りの人間ですが、茂作の兄、雨宮は文明寄りの人間で、兄弟でも全然違うという設定になっています。
 
━━━佐野さんを二役にするという設定からも、原作「雪女」から物語が膨らんだ形になっていますね。
杉野:実は、脚本の途中段階までは茂作と神主の二役という設定でした。雨宮的存在、つまり町の権力者を象徴した存在ですが、神道という民俗学的なものを掛け合わせた世界観、しかも少しエロイという役どころです。ただ、「現代社会との対比的存在」の雨宮にする方が、本来の雪女寄りになるのではないか。雪女は自然の化身という見え方もできますし、人間は自然の一部として生きているのに、自然VS人間という二極対立的な視点で世界を見ているのではないかという問題提起が、雪女の中にもあると思うのです。文明VS自然という形で表現した方が分かりやすいのではないかと考え、今の形に落ち着きました。
 
 
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■杉野作品を象徴する川シーンと音楽の考え方。

━━━日本の原風景や雪模様の美しさも大きな見どころです。特に、渡し舟で川を行き来するシーンが意図的に挿入されていますが、何を象徴しているのですか?
杉野:長編デビュー作の『マンガ肉と僕』でも川を象徴的に出していますが、私にとって川はあの世とこの世の狭間であったり、子どもと大人の境界のゆらぎを表現できるものだと思っています。私の出身地、広島が三角州の街なので川が多く、だから私も川を見ると、とても落ち着きます。
 
━━━杉野さん監督作の音楽は、和楽器や民族楽器を使い、作品世界の雰囲気を的確に表現していますね。個人的にも非常に好きな音楽の使い方です。
杉野:私の作品を、例えば久石譲さんのような音楽を付けてドラマチックにすることもできますが、音楽を作って感情を引き出すのではなく、音の一つ一つを自然の一部としてはめ込んでいく形にしたいという狙いがありました。音楽のsowjowさんはそれを汲み取ってくれたと思います。ラブシーンの時も、二人の交わりを描く不協和音を少し入れてもらい、耳障りかもしれないけれど敢えて加えています。

 

■杉野希妃、監督としてのこれから。

━━━『雪女』で長編監督作としては3作目になりますが、どんな手応えを感じていますか?
杉野:3作とも全く違う作風になっていますし、まだ自分自身の個性を掴み切れていない部分があります。それは悪いことではなく、これからの伸びしろと考えて自分自身の作家性を模索していくのが、今はとても楽しいですね。美しさについてのこだわりや、思想の多様性という部分での個性はありますが、映像的な個性はまだまだ模索していきたいと思います。
 
━━━最後に、今の時代に映画で「雪女」を蘇らせた意味とは?
杉野:宿命から逃れられない悲恋という雪女の切ないラブストーリーは、染み入るものがあると思います。また、違う存在と交わることは何なのか、何を意味しているのかを、現代に置き換えて考えていただければうれしいです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『雪女』(2016年 日本 1時間36分)
監督:杉野希妃
出演:杉野希妃、青木崇高、山口まゆ、佐野史郎、水野久美、宮崎美子、山本剛史、松岡広大、梅野渚他
2017年4月1日(土)~シネ・リーブル梅田、シネ・ヌーヴォ、京都みなみ会館、元町映画館
※4月1日(土)シネ・リーブル梅田、シネ・ヌーヴォ、京都みなみ会館、元町映画館各劇場で杉野希妃監督による舞台挨拶あり(詳細は各劇場サイトまで)
公式サイト⇒http://snowwomanfilm.com/ 
(C) Snow Woman Film Partners
 

ndjc2016-550.jpg上の写真、前列左から、
★金 允洙(きむ ゆんす) 『白T』 
★吉野 主(よしの まもる) 『SENIOR MAN』
後列左から、
★新谷 寛行(しんたに ひろゆき) 『ジョニーの休日』
★籔下 雷太(やぶした らいた) 『戦場へ、インターン』
★目黒 啓太(めぐろ けいた) 『パンクしそうだ』


【大阪での上映】

日時: 3月18日(土)18:15
           3月19日(日)~3月24日(金)18:30

劇場: シネ・リーブル梅田map

入場料金:(5本まとめて)一般¥1,200円、学生・シニア¥1,000円
*全席指定

◆3月18日(土)/ndjc2016参加監督による初日舞台挨拶
3月18日(土)18:15開映 20:45舞台挨拶開始(21:05終了予定)
※登壇者は変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。

登壇者:津田なおみ(映画パーソナリティ)、金允洙監督、新谷寛行監督、目黒啓太監督、籔下雷太監督、吉野主監督

2017年/カラー/スコープサイズ/©2017 VIPO
公式サイト⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/



次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》は、文化庁からNPO法人映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタートした。このプロジェクトからは、昨年『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞に輝いた中野量太監督や、『トイレのピエタ』の松永大司監督、『ちょき』の金井純一監督、『話す犬を、放す』の熊谷まどか監督など、オリジナル脚本で活躍中の監督を輩出している。今回も、最終課題である35ミリフィルムによる短編映画(約30分)に挑んだ5人の作品を、3月11日からは東京にて、3月18日からは大阪にて一般公開されることになった。
 


【作品紹介】

ndjc2016-siroT-500.jpg『白T』
監督:金 允洙(きむ ゆんす) 
出演:弥尋、桜井ユキ 般若

タカラは汚れなき日々を過ごせるよう願いをこめて白のTシャツばかりを着ている。同棲中のエリとは一緒に俳優を目指していたが、エリだけが俳優の仕事を続け、タカラは他の仕事の就活中。エリが監督に抜擢されて濡れ場を演じた映像を見て以来、エリとの関係がぎくしゃくしてしまう。ある日コインランドリーで、依頼された相手をボコボコにするという〈復讐屋〉と出会ってから、タカラの気持ちがざわつき始める。

青やグレーを基調としたクールな映像は、潔癖症気味なタカラの脆さを浮き彫りにし、緊迫感を生んでいる。自らを束縛している象徴として「白T」をタイトルにしているところや、塗料を浴びるシュールなシーンなどコンテンポラリーな表現に富んだ、感覚に訴えてくる作品。
 



ndjc2016-joni-500.jpg『ジョニーの休日』
監督:新谷 寛行(しんたに ひろゆき)
出演:金井勇太 川添野愛 大塚千弘 かでなれおん 服部妙子 鈴木一功

35歳のフリーターのタケル(愛称ジョニー)が、20歳の女子大生・道子と本気で付き合おうと彼女の実家を訪ねたところ、次々と現れる都合の悪い女たちに翻弄され、最悪の気まずい思いをするというお話。

特に、台所でいそいそと夕食の準備をするハイテンションの母親と娘たちとの言いたい放題の会話を、隣室の居間で仏頂面の父親と二人でガラス越しに聞くという構図が面白い。金井勇太や大塚千弘の演技もさることながら、舞台劇のような凝縮した会話と場面設定にはインパクトがある。「本質を突けば崩れそうな男」とか「できそうもない理想ばかり語る男」とか、元カノを通じて知る自分の本性に愕然とするジョニーの表情がまたいい。
 


ndjc2016-pank-500.jpg『パンクしそうだ』
監督:目黒 啓太(めぐろ けいた)
出演:亀田侑樹 松山愛里 夛留見啓助 イワゴウサトシ 岩井堂聖子

彼女の妊娠を機にパンクバンドを辞めて彼女の実家の不動産屋を継ぐことになった隆平。披露宴の余興に花婿自らバンド演奏をすることになり、かつてのバンド仲間と練習しながら、パンクしそうな気持ちをパンク演奏にぶつける。そこへオーディションの誘いがきて、プロへの夢を諦めきれない自分に気付く。

目黒監督自身の経験に基づいた物語だという。本当にやりたいことを家族のために諦めて、現実に目を向けて生きていくという選択。それは男女に関係なく、多くの人に覚えのあることだろう。監督なりの結論なのだろうか、夢と現実に折り合いをつけながら生きていこうとする隆平と彼女の後姿が微笑ましい。
 


ndjc2016-inta-500.jpg『戦場へ、インターン』
監督:籔下 雷太(やぶした らいた)
出演:伊藤沙莉 萩原みのり 郭智博 米村亮太朗 青木健 塚本耕司

映画の撮影現場でインターン実習生として参加している麗子は、食事の準備や周辺の交通整理など、撮影隊の雑用をこなしていた。たまたま産気付いた妊婦を乗せた車を止めたことから撮影を中断させてしまい、大騒動となる。撮影のためなら無理難題を通そうとする理不尽さに反発する麗子。だが、自分と同じ歳の女優が不安を抱えながらも成長する姿を見て、撮影の醍醐味を感じていく。

撮影隊と世間とのズレ感をインターンの素直な目を通して浮き彫りにしている。また、想像力を発揮して演技に臨もうとする若い女優の葛藤もまた、撮影にかける人々の想いを象徴しているようだ。現場ならではの雰囲気を活かしながら若者の成長を描いて好感が持てる。
 


ndjc2016-SENIORMAN-500.jpg『SENIOR MAN』
監督:吉野 主(よしの まもる)
出演:峰蘭太郎 田中要次 油井昌由樹 久保晶 外波山文明

身寄りもなく独り暮らしの常吉は80歳。唯一の楽しみは老人ホームでの友人たちとの麻雀。そこで耳にするのは、老人を狙った詐欺事件や、世知辛い世の中を象徴するような噂話ばかり。誰にも迷惑かけずに日々無難に過ごしたいと思っていたが、ある夜強盗に襲われているお婆さんを助けたことで、常吉の中で眠っていたあるものが目覚める。

社会的弱者と見られている高齢者にとって、自分の健康問題と家族や知り合いの近況ばかりが気になるところ。それでも、まだ役に立ちたいと内心思っているに違いない。プロテクターに身を包んだ常吉が颯爽と夜回りに出たはいいが、逆に恐がられたり、バカにされたりと力不足を露呈することに。中々ヒーローよろしくカッコよくできないが、老人ならではの秘策で応戦する。人生諦めるには早い、今こそ“老人力”を発揮する時!

時代劇で活躍してきた峰蘭太郎が、寡黙ながら情に厚い常吉を演じて、時代劇ファンとしては嬉しかった。
 

(河田 真喜子) 


ndjc2016-200-3.jpg★金 允洙(キム ユンス)プロフィール
1986年東京都生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科修了。映画『バイバイ、マラーノ』(2013)、『或る夜の電車』(2014)を監督。HAIIRO DE ROSSI、Dragon One、ZORN、RHYME BOYA、般若などジャパニーズヒップホップのMVを多数手掛ける。第55回日本映画監督協会新人賞にノミネート。UR5ULA FILM POSSE代表。

 

 

 

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★新谷 寛行(しんたに ひろゆき) プロフィール
1980年大阪府生まれ。京都産業大学卒業。大阪の映像制作事務所で修行ののち、2006年上京、イベント会社映像制作部に入社する。2008年に退社後は、様々な制作現場で経験を積む。初めて監督した短編「カミソリ」(2015)が水戸短編映像祭、ショートショートフィルムフェスティバル & アジア、福岡インディペンデント映画祭(優秀賞)、札幌国際短編映画祭などで上映。

 

 

ndjc2016-200-4.jpg★目黒 啓太(めぐろ けいた)プロフィール
1986年新潟県生まれ。九州大学芸術工学部卒業。在学中から自主映画の制作を始める。2009
年より映像制作会社に勤務し、制作部、演出部として映画、CM、テレビ番組等の制作に携わる。2011年「大団円」が第21回シナリオS1グランプリ佳作を受賞。2013年からフリーランスの演出部として映画・ドラマ等の制作に携わる。2016年「ライフ・タイム・ライン」が第5回TBS連ドラ・シナリオ大賞受賞。現在は脚本家としてTVドラマ等に参加。

 

ndjc2016-200-2.jpg★籔下 雷太(やぶした らいた)プロフィール
1984年京都府生まれ。フォトグラファーとして活動する傍ら、ニューシネマワークショッ
プにて映画製作を学ぶ。実習作品の『告白までたどりつけない』(2014)が第五回武蔵野映画祭にて審査員特別賞を受賞。卒業制作の『わたしはアーティスト』(2015)が、SKIPシティ 国際Dシネマ映画祭にて短編部門グランプリ、PFFアワード2015にて審査員特別賞を受賞。


 

ndjc2016-200-5.jpg★吉野 主(よしの まもる)プロフィール
1985年宮崎県生まれ。宝塚造形芸術大学で映画を学ぶ。卒業後、『BALLAD ~名もなき恋のうた~』(2009/山崎貴監督)に助監督見習いとして参加。その後フリーランスの助監督として村川透、平山秀幸、佐藤純彌、佐藤太、井口昇、中村義洋、松本人志、羽住英一郎、大友啓史など、多くの監督のもとで経験を積む。

②3lion-di-500-2.jpg『3月のライオン』大友啓史監督インタビュー

(2017年2月28日(火)大阪にて)


将棋の世界で闘う桐山零を、豪華キャストにダイナミックな映像で活写!
大友啓史監督が贈る、静かなる闘志みなぎる感動巨編!


将棋界を舞台に孤独な少年・桐山零の闘いを描いた、羽海野チカ原作の人気コミック「3月のライオン」。この度、大友啓史監督による実写映画版『3月のライオン【前編・後編】』が完成し、この春二部作連続公開される。『るろうに剣心』シリーズでかつてない斬新なアクションやスペクタクル映像で異次元の時代劇を堪能させてくれた大友監督が、いまだ連載中の原作に独自のエンディングで臨んだ感動作。豪華キャストが演じる際立つキャラクターに加え、映画ならではのダイナミックな映像で作品に新たな息吹を与えた、エンタテイメント超大作の登場である。


3lion-550.jpg【STORY】
9歳の時に両親と妹を事故で亡くし天涯孤独となった桐山零(神木隆之介)は、プロ棋士の幸田(豊川悦司)に引き取られ、中学生でプロ棋士になった逸材だった。幸田家の二人の子供たち(姉弟)と共に将棋に精進してきたが、零だけがプロへの道を許された。そのせいで幸田家は家庭崩壊に陥り、とりわけ姉の香子(有村架純)は憎悪を露わにする。厳しい将棋の世界で勝ち抜くことがすべてだった零が、近所に住む川本家の3姉妹と知り合い、初めて家庭の温もりと安らぎを得る。強敵との対局や様々な人々との出会いを通じて、生きるために闘う本当の意味を学んでいくのだった。


この度、公開を前に来阪された大友啓史監督にお話を伺うことができましたので、下記にご紹介したいと思います。


――将棋の世界しか知らなかった主人公・桐山零が、孤独や不安を抱えながら、様々な人々との出会いを通じて成長していく物語ですね?
そうなんです。古典的青春ドラマというか、少年の成長小説の王道をいくようなドラマです。


――人気コミックの実写化ということで映像的にこだわった点は?
③3lion-di-240-3.jpg『るろうに剣心』のような時代劇は、キャラクター化した人物たちをテイストを間違えることなく映し換えるという作業が必要でした。今回は同時代で、将棋会館や佃島や月島など舞台設定も身近でリアルな場所ですから、コミックやアニメのキャラクターとは違って、「本当に生きている人々」という捉え方をして作らなければなりませんでした。あまりマンガチックに単純に作っていくと原作にある人物たちの内面の感情が活かされず、人間が生きているという感じがなくなってしまいます。人間って五面も六面もあるような複雑な感情を持っていると思うので、一面や二面だけを捉えたようなやり方は避けたかったのです。桐山零君も孤独で寂しくて大人しそうに見えるけど、内にはライオンを秘めています。勝負となると父親といえども打ち負かしていく。人物に対してはマンガやアニメ以上に複雑に、より複雑に描いていきたいと思いました。



――そのような感情表現について神木隆之介さんとは相談されたのですか?演出は細かい方ですか?
演出の仕方はTPOや俳優や素材にもよります。神木君とは話している内にお互い何を考えているのか理解し合えたので、彼は早い段階で「僕はアニメのキャラクターを卒業します」と言って、コミックを実写化しただけの演技ではなく、彼自身が“桐山零を生きる”という方向へシフトしていくことができました。あくまで原作を尊重した上で、映画は映画としての表現を目指した訳です。生身の人間が活かされて、生身の人間である私たちの集団芸術として創り上げていくことができたと思っています。


3lion-500-4.jpg――桐山零を精神的に追い詰める有村架純の演技が光ってましたね?
姉といえども零とは血は繋がっていないので、男女の仲になってもおかしくない。そこで、微妙な関係性の一線をひきながら、お互い乗り越えられない状況を描くのも面白いかなと思いました。家族として長い時間を過ごしていろんな事を共有していますから、誰よりもよく理解し合っている二人です。棋士としてはライバルという枷がうまく作用して、有村さんも緊張感のある関係性を生み出せていたと思います。


――それぞれのキャラが際立っていますが、キャスティングは希望通りでしたか?
一応希望は出しますが、俳優の意志やスケジュールなどのタイミングもあります。キャスティングはバランスが重要ですので、その役に似ているかとか、演技力など総合力で判断します。本作では、まず神木隆之介君が決まり、次に佐々木蔵之介さん、そして有村架純さんが決まり、少しずつ役が埋まる度にプロデューサーと相談しながら、長い時間をかけてひとつひとつ決めていったのです。


3lion-500-2.jpg――動きの少ない将棋は映画にしにくいと思われますが、1カットの将棋盤で緊迫した状況を明確に表現されてましたね?
確かに将棋盤自体は分かり辛いですよね。それより向き合っている棋士たちの表情や手の震えなどのコンディションを映すことで、どのような想いで対峙しているのかに重点を置きました。後藤(伊藤英明)が病気の妻のことを心配したり、島田(佐々木蔵之介)が山形の過剰な期待で胃が痛む思いをしたり、零が川本家3姉妹のことを心配したりと、棋士たちの精神状況を前提にした闘いを描こうと考えました。将棋の勝負は心と心の闘いでもあるので、人物の背景にあるものを描いた方が観る方も感情移入しやすくなり、将棋が分からなくてもそのシーンを観ただけで何かを感じて頂けるのではないかと思いました。


――四季折々の美しい風景や、スケール感のある歴史的建造物での撮影が、大きな魅力としてエンタテイメント性を高めていますね?
毎度のことですが、世界市場を視野におき、できるだけゴージャスになるように心掛けています。『るろうに剣心』のような時代劇だと、グレーディングという映像のトーンを決める作業で、今までのやり方だと色を抜いて渋いモノクロに近いものになってしまうところを、アメコミのようなテイストをもった新しい時代劇を目指して、むしろ色を出すように意識しました。

今回も将棋の世界は和の空間や着物が多いので、どうやって艶を出していくか…大きな対局では有名寺院や歴史的建造物などスペシャルな場所で撮影できましたが、基本的には将棋会館のような見慣れた場所が中心となりますので、どうすれば特別な場面として映るかが重要でした。そのために、山本英夫撮影監督と相談してワイドな映像が撮れるアナモルフィックレンズを使って撮影したのです。


①3lion-di-240-1.jpg――作品ごとに新たな世界を創りだしておられますが、今までの経験で何が一番役立っていますか?
ひとつには1997年から2年間、ハリウッドの撮影現場や南カリフォルニア大学等でディレクティングや脚本を学んだ経験が大きいですね。NHK時代の大河ドラマ『龍馬伝』では今までの大河とは違うことをやって相当暴れたので(笑)、殆どのことがOKかなと思えるようになりました。

その後、『るろうに剣心』のような半年かけての撮影では、色々と挫けそうになることもあったし、今回も4か月という長い撮影期間でしたが、『龍馬伝』の1年以上の撮影という密度の濃さに比べたらまだまだだよね、という精神的な耐久力ができているように感じます。


――『るろうに剣心』シリーズでは様々な年齢層に斬新な時代劇を楽しんでもらえましたね?
『3月のライオン』も老若男女に楽しんで頂けるような幅のあるドラマに仕上がっていると思います。主人公の桐山零君が穏やかな顔して内に凶暴なライオンを秘めているように、二面性が必要です。すべての事に対して、優しくて残酷、強くて弱い、常に真逆のものを持っていないと偏ってしまうような気がします。

『ミュージアム』のように人間が究極的に追い込まれていくとどういう状況になってしまうのかとか、『秘密THE TOP SECRET』のような人間の頭の中の記憶の書き換えなど、大きな仕掛けやガジェットに力を注いできたので、『3月のライオン』のような精神的に闘う人々を描いた作品を撮ることで、現実的なドラマを撮りたいという僕自身の渇望を吐き出す必要があった。いいタイミングでこの作品にとりかかれたと思います。


3lion-500-1.jpg――立て続けに新作を発表されてますが、新企画を選択する基準は?
ありがたいことに次々と企画を頂ける環境にあります。自分がやりたい作品にだけ集中すると下手すれば3年位かかってしまうので、撮りながらどうやって他の作品の準備をしていくか。撮らないと腕も鈍るので、先ず撮れるものにリーチすることも大事なことです。自分が撮りたいものを見失わないためにも両方を大事にして、そのバランスをとるのが難しいですね。私が3人くらい居ればいいのですが…(笑)。


――海外では、アカデミー賞監督賞を受賞したデミアン・チャゼル(32歳)のような若い監督が大活躍をしていますが?
彼の才能の豊かさは勿論ですが、冒頭のダンスシーンひとつとってもロスのフリーウェイを2日間貸し切って撮れるという環境が羨ましいですね。日本では絶対無理ですから。そうした撮影環境を整えられるのがロスという街で、映画の街、夢の街、まさに“ラ・ラ・ランド”なんですよ。


――お好きな監督とか影響を受けた監督などは?
ミロシュ・フォアマンやクリストファー・ノーラン、ロバート・アルトマンなど好きな監督は沢山います。この間、『沈黙/サイレンス』を観て、改めてマーティン・スコセッシ監督って凄いなと感じました。自分一人で、勝手に《スコセッシ週間》と決め、彼の過去の作品をいくつか見直してみて、撮り続ける幅も含めて改めて素晴らしい監督だと思いました。アクションだったらジョン・ウー監督。それぞれの監督が武器とするものが作品の中で発見できるような、独自性を持った監督が好きですね。私はTV界で仕事をしてきて、最初から映画監督を目指していた訳ではありません。ですが、最終的にどんな映画を撮っても何か自分のコアなものが見えてくるような、そんな監督になれたらいいなと思っています。



穏やかに、丁寧にインタビューに答えてくれた大友啓史監督。きっと現場でもスタッフやキャストへの説明を分かりやすく伝えられる監督なのだろう。原作の持ち味を、大胆な構成を基に緻密なプロットで積み上げ、新たに生きるキャラクターと躍動感あふれる将棋の映画を創り上げた。観る者を、ドラマチックな展開で惹きつけるだけでなく、主人公・桐山零と共に新たなステージへと導いてくれているようだ。


(河田 真喜子)



【大友啓史監督プロフィール】 (オフィシャルサイトより)

1966年岩手県盛岡市生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。90年NHK入局、秋田放送局を経て、97年から2年間L.A.に留学、ハリウッドにて脚本や映像演出に関わることを学ぶ。帰国後、連続テレビ小説『ちゅらさん』シリーズ、『ハゲタカ』『白洲次郎』、大河ドラマ『龍馬伝』等の演出、映画『ハゲタカ』(09年)監督を務める。 2011年4月NHK退局、株式会社大友啓史事務所を設立。同年ワーナー・ブラザースと日本人初の複数本監督契約を締結する。『るろうに剣心』(12年)、『プラチナデータ』(13年)を公開。 14年、『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』2作連続公開、14年度の実写邦画No.1ヒットを記録。日刊スポーツ映画大賞石原裕次郎賞、毎日映画コンクールTSUATAYAファン賞、日本アカデミー賞話題賞など、国内外の賞を受賞。 2016年『秘密 THE TOP SECRET』、『ミュージアム』を公開。2017年は『3月のライオン』前編(3月18日)後編(4月22日)が公開予定。



『3月のライオン』【前編・後編】2部作

3lion-pos.jpg■原作:羽海野チカ「3月のライオン」(白泉社刊・ヤングアニマル連載)
■監督:大友啓史 (『ハゲタカ』『るろうに剣心』シリーズ3部作、『プラチナデータ』『秘密 THE TOP SECRET』『ミュージアム』)
■出演:神木隆之介 有村架純 倉科カナ 染谷将太 清原果耶 佐々木蔵之介 加瀬亮 前田吟 高橋一生 岩松了 斉木しげる 中村倫也 尾上寛之 奥野瑛太甲本雅裕 新津ちせ 板谷由夏 /伊藤英明/豊川悦司
■ 配給:東宝=アスミック・エース
■2017年 日本 【前編】2時間19分  【後編】2時間20分
■コピーライト:(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会


 

■【前編】 3月18日(土) 【後編】 4月22日(土) 2部作連続・全国ロードショー!

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★イベント(2/28)⇒ こちら

★公式サイト⇒ http://3lion-movie.com/
 

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関西のティーンから人気を集めるFM802の「ROCK KIDS 802-OCHIKEN Goes ON!!-」が、名物企画・学校訪問を2/28(火)、豊中市にある大阪府立刀根山高等学校で開催した。毎回、旬のゲストと共にリスナーの学校で収録を行う同企画だが、今回登場したのは3/18(土)から前編が、4/22(土)から後編が封切られる映画「3月のライオン」に主演する神木隆之介と清原果耶の2人。通常、ミュージシャンが訪れることが多い学校訪問が、初となる、ゲストは俳優2人という状況だ。果たしてどんな展開になったのか? 
 
会場となった視聴覚室には、なんと明日が卒業式という高校3年生の生徒が集合。いつもなら体育館やホールなどの場所が多いが、今回は小規模の着席スタイルでステージとの距離も近く感じる。最初、遠慮気味だった生徒もMC・落合健太郎の「Yeah!」の煽りでスイッチオン。神木と清原が姿を現すと大歓声が響く。その様子に「元気っすね(笑)」と神木も驚き、「廊下の床の感じとか高校だなって思いますよね」と自身の高校時代を思い出したよう。一方、清原は15歳。今春中学卒業という若さに、高校生たちでさえもザワつく。「(皆さんは)先輩ですね。よろしくお願いします」(清原)と、みずみずしさが半端ない。
 
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そして話は映画のことに。神木は棋士役のため「ひたすら将棋を指す日々でした」と役作りを語り、さらに劇中の制服姿について落合に聞かれると「23歳でしたけど(笑)。でも(ここに制服姿の自分が混じっていたら)絶対にわかんない自信がありますよ」とニヤリ。ユーモアたっぷりだ。
 
空気が和らいだところで生徒からの質問タイムへ。休日は何してる?の問いに、神木は端正な容姿から想像できない、ゆる~いの過ごし方を告白する。またマンガ研究部部長の生徒からは「マンガの実写化のオファーが来た時はどんな心境?」という質問が。映画「3月のライオン」も羽海野チカのマンガが原作だけに核心をつく問いだ。これに神木は「僕もマンガ好きなんで……」と前置きして正直な気持ちを真摯に話す。清原も「ずっと台本と(原作の)マンガを持ち歩いてました」と撮影時の思い出を披露し、まだまだトークは盛り上がりそうな雰囲気だ。しかし残念ながら収録は終わりの時間に。そこで最後2人は、明日高校を旅立つ生徒に向けて温かいメッセージを贈り、名残惜しげに会場を後にした。
至近距離でゲストと時間と会話を共有できる学校訪問の良さが全開となった今回の約30分。明日の卒業式と共に生徒の忘れられない高校生活の1ページとなることだろう。
 
今回の模様は3/2(木)21:00~の「ROCK KIDS 802 -OCHIKEN Goes ON!! -」でオンエア。ぜひチェックを!
 
FM802はスマホやPCでもきけます。http://radiko.jp/#802 radikoプレミアムなら全国で聴くことができます。
放送時間に聞けなかった場合も、放送後1週間以内はradikoの新機能「タイムフリー」でさかのぼって聴くことができます。
 
(オフィシャルレポートより)
 
 

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「俳優と役が重なる瞬間、演じる以上のとんでもない何かが映像に残る」
大友監督、神木隆之介キャスティングを語る~『3月のライオン』大阪舞台挨拶
(17.2.28 TOHOシネマズ 梅田)
登壇者: 大友啓史監督、神木隆之介、清原果耶  
 
幼少期に家族を交通事故で亡くし、17歳でプロ棋士として一人暮らしをする主人公、桐山零が、ある3姉妹と心を通わせながら、自身の運命や厳しい将棋の世界に立ち向かっていく感動物語、『3月のライオン』。羽海野チカ原作の国民的人気コミックであり、TVではアニメがオンエア中の同作を、大友啓史監督(『るろうに剣心』シリーズ)が実写化。前編は3月18日より、後編は4月22日(土)より、全国ロードショーされる。
 
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子役出身で小さい頃からプロの役者として生きてきた人気俳優、神木隆之介が、生きるためには将棋をすることしか選択肢がなかった桐山零の人間として、棋士としての成長を自らの境遇を重ね合わせるかのような実感のこもった繊細な演技で体現。孤独だった零が心を通わせた三姉妹の次女、ひなたを演じるのは、NHK朝ドラの『あさが来た』でその初々しさが話題となり、今最も活躍が期待される若手女優、清原果耶。複雑な家庭事情の中、いつも笑顔で周りを明るくするひなたを瑞々しく好演、不条理な目に合わされても真っすぐに自分の考えを貫く新の強さを印象付ける。家族、将棋仲間、師弟との関係を通じて成長していく姿、静粛な中に、想像を絶する葛藤を抱えたプロ棋士の試合、その人生。様々な人の生きざまが重なり、青春物語でありながら、重厚な味わいを残す見ごたえ十分の作品だ。
 
 

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一般公開を前に2月28日(火)TOHOシネマズ梅田にて行われた大阪先行上映会では、大友啓史監督、主演の神木隆之介、ひなた役の清原果耶が舞台挨拶で登壇。大スクリーンと満席の観客を前に感動の面持ちで挨拶をする神木、清原の横で「二人を見ていると、保護者みたいな気分」と笑わせた大友監督は、「本当に早く見てほしい作品。今日は大阪に持ってこれてうれしいよね」とワクワクした表情を浮かべ、大阪出身の清原がおすすめスポットにUSJを挙げると、「若いね~。俺は道頓堀に行くよ」と親子のようなトークに。
 
 
 
 
 
 
 

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子どもの頃から大人の中で仕事をしてきた神木は、若くしてプロ棋士の道を歩む主人公零と自身で重なる部分があるかという問いに「監督に言われて気付きました。小学校の頃に親から、『一人の役者として現場に立て。できるというのは当たり前のことだから、自覚しろ』と言われてきました。子どもだけど一人の役者として見られている。その見られ方と僕が意識している相手の方という見方が、もしかすれば桐山零が、相手の棋士が本気で倒そうとしてくるなら、プロとして本気で立ち向かうという点で、共通している訳ではないけれど、共有することはできる。そう思って役作りしました」。一方、そんな神木が主人公、零のプロフィールと次々に重なったという大友監督は、「俳優と役が重なる瞬間は、どこが重なっているか分からないけれど、もしかしたら演じる以上のとんでもない何かが映像に残っちゃう可能性があります。その可能性はキャスティングの時プロフィールを考えながらやっていますが、神木君とは『るろうに剣心』の次に何をやろうかと思ったとき、(雫役が)見事にはまりました。見てもらえれば、うまくいったかどうかは火を見るよりも明らか」と作品の出来栄えに自信を覗かせた。
 
 
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零が家族のように慕う三人姉妹の次女ひなたを演じた清原は、役作りのために大友監督の提案により撮影で使った家でお泊り会を行い、「スーパーにお買い物に行ったり、原作に出てきた豚コマカレーを作ったり、みんなでお風呂に入って、寝たりしました」と長女あかり役の倉科カナ、三女そそ役の新津ちせとの絆作りに役だったことを明かすと、小さいころから祖父と将棋を指していたという神木は、「プロとなると、指し方や立ち振る舞いが全然違います。箸で物を取るように、駒に慣れているので、一から練習で、時間があればずっと指していました」とプロ棋士という役柄を演じる上で研究を重ねたことを語った。
 
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本作は零が対戦する名人級の棋士たちの将棋も見どころの一つ。脂ののった俳優陣が、個性豊かな棋士を演じているが、そんな濃いキャストの意外な一面として神木は、英兄と慕う伊藤英明が風呂の入り方や身体によい食べ物の話をしょっちゅうするという健康オタクな一面を披露。また、育ての親であり将棋の師匠である幸田役の豊川悦司について「豊川さんは、11歳の時出演した『妖怪大戦争』では倒すべき敵役で、久しぶりに再会し、『本当の息子を見ているようだ』と微笑ましく見ておられた」と言えば、大友監督も「ぼくは初めてご一緒する人が多かったが、神木君はほとんどが共演したことのある人ばかり。ぼくは2倍以上生きているのに、彼の方がキャリアは長い」と自虐的コメントで、神木の長きに渡る活躍ぶりを称えた。
 
 
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最後に「ここにいる若い二人を含めて、キャストたちが本当にいい仕事をしています。実写化するのは非常に手ごわい作品でしたが、満足のいく作品になっています。ここに来ていないキャストやスタッフの魂も入っているので、彼らの分も、よろしくお願いいたします」(大友監督)
「この作品はキャストの皆さんと監督と長い期間、すごい力を入れて撮影した作品なので、自信を持ってお届けできます。最後までしっかりと観て、この作品を愛してくださったらうれしいです。ありがとうございました」(清原)
「今から観ていただく作品が、僕らの全てなので、ぜひゆっくりと楽しんで観ていってほしいです。ぜひこれからもこの映画のことをよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました」(神木)
と挨拶し、会場から大きな拍手が沸き起こった。
 
20代ながら高校生役が全く違和感のない神木隆之介と、15歳とは思えないしっかりとした受け答えと落ち着いた物腰で、女優の品格を感じさせた清原果耶。若い二人が葛藤しながら成長する登場人物たちと重なる青春ドラマは、どの年代の人にも共感を呼ぶ重厚な人間ドラマでもあり、そしてエンターテイメント性も備えている。棋士というプロの世界もしっかり描いた大友監督の新たな代表作をお見逃しなく!
(江口由美)
 

<作品情報>
『3月のライオン 前編/後編』
(2017年 日本 2時間18分)
監督:大友啓史 
原作:羽海野チカ『3月のライオン』 (白泉社刊)
出演:神木隆之介 有村架純 倉科カナ 染谷将太 清原果耶 佐々木蔵之介 加瀬亮
前田吟 高橋一生 岩松了 斉木しげる 中村倫也 尾上寛之 奥野瑛太 甲本雅裕 新津ちせ 板谷由夏 
『3月のライオン 前編』2017年3月18日(土)~
『3月のライオン 後編』2017年4月22日(土)~
TOHOシネマズ 梅田、TOHOシネマズ なんば、TOHOシネマズ 二条、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://3lion-movie.com/
(C) 2017 映画「3月のライオン」製作委員会