レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2016』で選ばれた5人の監督作品の上映会

ndjc2016-550.jpg上の写真、前列左から、
★金 允洙(きむ ゆんす) 『白T』 
★吉野 主(よしの まもる) 『SENIOR MAN』
後列左から、
★新谷 寛行(しんたに ひろゆき) 『ジョニーの休日』
★籔下 雷太(やぶした らいた) 『戦場へ、インターン』
★目黒 啓太(めぐろ けいた) 『パンクしそうだ』


【大阪での上映】

日時: 3月18日(土)18:15
           3月19日(日)~3月24日(金)18:30

劇場: シネ・リーブル梅田map

入場料金:(5本まとめて)一般¥1,200円、学生・シニア¥1,000円
*全席指定

◆3月18日(土)/ndjc2016参加監督による初日舞台挨拶
3月18日(土)18:15開映 20:45舞台挨拶開始(21:05終了予定)
※登壇者は変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。

登壇者:津田なおみ(映画パーソナリティ)、金允洙監督、新谷寛行監督、目黒啓太監督、籔下雷太監督、吉野主監督

2017年/カラー/スコープサイズ/©2017 VIPO
公式サイト⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/



次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》は、文化庁からNPO法人映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタートした。このプロジェクトからは、昨年『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞に輝いた中野量太監督や、『トイレのピエタ』の松永大司監督、『ちょき』の金井純一監督、『話す犬を、放す』の熊谷まどか監督など、オリジナル脚本で活躍中の監督を輩出している。今回も、最終課題である35ミリフィルムによる短編映画(約30分)に挑んだ5人の作品を、3月11日からは東京にて、3月18日からは大阪にて一般公開されることになった。
 


【作品紹介】

ndjc2016-siroT-500.jpg『白T』
監督:金 允洙(きむ ゆんす) 
出演:弥尋、桜井ユキ 般若

タカラは汚れなき日々を過ごせるよう願いをこめて白のTシャツばかりを着ている。同棲中のエリとは一緒に俳優を目指していたが、エリだけが俳優の仕事を続け、タカラは他の仕事の就活中。エリが監督に抜擢されて濡れ場を演じた映像を見て以来、エリとの関係がぎくしゃくしてしまう。ある日コインランドリーで、依頼された相手をボコボコにするという〈復讐屋〉と出会ってから、タカラの気持ちがざわつき始める。

青やグレーを基調としたクールな映像は、潔癖症気味なタカラの脆さを浮き彫りにし、緊迫感を生んでいる。自らを束縛している象徴として「白T」をタイトルにしているところや、塗料を浴びるシュールなシーンなどコンテンポラリーな表現に富んだ、感覚に訴えてくる作品。
 



ndjc2016-joni-500.jpg『ジョニーの休日』
監督:新谷 寛行(しんたに ひろゆき)
出演:金井勇太 川添野愛 大塚千弘 かでなれおん 服部妙子 鈴木一功

35歳のフリーターのタケル(愛称ジョニー)が、20歳の女子大生・道子と本気で付き合おうと彼女の実家を訪ねたところ、次々と現れる都合の悪い女たちに翻弄され、最悪の気まずい思いをするというお話。

特に、台所でいそいそと夕食の準備をするハイテンションの母親と娘たちとの言いたい放題の会話を、隣室の居間で仏頂面の父親と二人でガラス越しに聞くという構図が面白い。金井勇太や大塚千弘の演技もさることながら、舞台劇のような凝縮した会話と場面設定にはインパクトがある。「本質を突けば崩れそうな男」とか「できそうもない理想ばかり語る男」とか、元カノを通じて知る自分の本性に愕然とするジョニーの表情がまたいい。
 


ndjc2016-pank-500.jpg『パンクしそうだ』
監督:目黒 啓太(めぐろ けいた)
出演:亀田侑樹 松山愛里 夛留見啓助 イワゴウサトシ 岩井堂聖子

彼女の妊娠を機にパンクバンドを辞めて彼女の実家の不動産屋を継ぐことになった隆平。披露宴の余興に花婿自らバンド演奏をすることになり、かつてのバンド仲間と練習しながら、パンクしそうな気持ちをパンク演奏にぶつける。そこへオーディションの誘いがきて、プロへの夢を諦めきれない自分に気付く。

目黒監督自身の経験に基づいた物語だという。本当にやりたいことを家族のために諦めて、現実に目を向けて生きていくという選択。それは男女に関係なく、多くの人に覚えのあることだろう。監督なりの結論なのだろうか、夢と現実に折り合いをつけながら生きていこうとする隆平と彼女の後姿が微笑ましい。
 


ndjc2016-inta-500.jpg『戦場へ、インターン』
監督:籔下 雷太(やぶした らいた)
出演:伊藤沙莉 萩原みのり 郭智博 米村亮太朗 青木健 塚本耕司

映画の撮影現場でインターン実習生として参加している麗子は、食事の準備や周辺の交通整理など、撮影隊の雑用をこなしていた。たまたま産気付いた妊婦を乗せた車を止めたことから撮影を中断させてしまい、大騒動となる。撮影のためなら無理難題を通そうとする理不尽さに反発する麗子。だが、自分と同じ歳の女優が不安を抱えながらも成長する姿を見て、撮影の醍醐味を感じていく。

撮影隊と世間とのズレ感をインターンの素直な目を通して浮き彫りにしている。また、想像力を発揮して演技に臨もうとする若い女優の葛藤もまた、撮影にかける人々の想いを象徴しているようだ。現場ならではの雰囲気を活かしながら若者の成長を描いて好感が持てる。
 


ndjc2016-SENIORMAN-500.jpg『SENIOR MAN』
監督:吉野 主(よしの まもる)
出演:峰蘭太郎 田中要次 油井昌由樹 久保晶 外波山文明

身寄りもなく独り暮らしの常吉は80歳。唯一の楽しみは老人ホームでの友人たちとの麻雀。そこで耳にするのは、老人を狙った詐欺事件や、世知辛い世の中を象徴するような噂話ばかり。誰にも迷惑かけずに日々無難に過ごしたいと思っていたが、ある夜強盗に襲われているお婆さんを助けたことで、常吉の中で眠っていたあるものが目覚める。

社会的弱者と見られている高齢者にとって、自分の健康問題と家族や知り合いの近況ばかりが気になるところ。それでも、まだ役に立ちたいと内心思っているに違いない。プロテクターに身を包んだ常吉が颯爽と夜回りに出たはいいが、逆に恐がられたり、バカにされたりと力不足を露呈することに。中々ヒーローよろしくカッコよくできないが、老人ならではの秘策で応戦する。人生諦めるには早い、今こそ“老人力”を発揮する時!

時代劇で活躍してきた峰蘭太郎が、寡黙ながら情に厚い常吉を演じて、時代劇ファンとしては嬉しかった。
 

(河田 真喜子) 


ndjc2016-200-3.jpg★金 允洙(キム ユンス)プロフィール
1986年東京都生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科修了。映画『バイバイ、マラーノ』(2013)、『或る夜の電車』(2014)を監督。HAIIRO DE ROSSI、Dragon One、ZORN、RHYME BOYA、般若などジャパニーズヒップホップのMVを多数手掛ける。第55回日本映画監督協会新人賞にノミネート。UR5ULA FILM POSSE代表。

 

 

 

ndjc2016-200-1.jpg

★新谷 寛行(しんたに ひろゆき) プロフィール
1980年大阪府生まれ。京都産業大学卒業。大阪の映像制作事務所で修行ののち、2006年上京、イベント会社映像制作部に入社する。2008年に退社後は、様々な制作現場で経験を積む。初めて監督した短編「カミソリ」(2015)が水戸短編映像祭、ショートショートフィルムフェスティバル & アジア、福岡インディペンデント映画祭(優秀賞)、札幌国際短編映画祭などで上映。

 

 

ndjc2016-200-4.jpg★目黒 啓太(めぐろ けいた)プロフィール
1986年新潟県生まれ。九州大学芸術工学部卒業。在学中から自主映画の制作を始める。2009
年より映像制作会社に勤務し、制作部、演出部として映画、CM、テレビ番組等の制作に携わる。2011年「大団円」が第21回シナリオS1グランプリ佳作を受賞。2013年からフリーランスの演出部として映画・ドラマ等の制作に携わる。2016年「ライフ・タイム・ライン」が第5回TBS連ドラ・シナリオ大賞受賞。現在は脚本家としてTVドラマ等に参加。

 

ndjc2016-200-2.jpg★籔下 雷太(やぶした らいた)プロフィール
1984年京都府生まれ。フォトグラファーとして活動する傍ら、ニューシネマワークショッ
プにて映画製作を学ぶ。実習作品の『告白までたどりつけない』(2014)が第五回武蔵野映画祭にて審査員特別賞を受賞。卒業制作の『わたしはアーティスト』(2015)が、SKIPシティ 国際Dシネマ映画祭にて短編部門グランプリ、PFFアワード2015にて審査員特別賞を受賞。


 

ndjc2016-200-5.jpg★吉野 主(よしの まもる)プロフィール
1985年宮崎県生まれ。宝塚造形芸術大学で映画を学ぶ。卒業後、『BALLAD ~名もなき恋のうた~』(2009/山崎貴監督)に助監督見習いとして参加。その後フリーランスの助監督として村川透、平山秀幸、佐藤純彌、佐藤太、井口昇、中村義洋、松本人志、羽住英一郎、大友啓史など、多くの監督のもとで経験を積む。

月別 アーカイブ