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林遣都&東伸児監督、市原悦子との撮影秘話を語る。『しゃぼん玉』舞台挨拶

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林遣都&東伸児監督、市原悦子との撮影秘話を語る。『しゃぼん玉』舞台挨拶
(17.3.25 テアトル梅田)
登壇者:東伸児監督、林遣都さん 
 
直木賞作家・乃南アサのベストセラー小説『しゃぼん玉』が林遣都主演で映画化、関西では3月25日(土)よりテアトル梅田、シネマート心斎橋、京都シネマにて公開されている。監督は本作が初長編作となる、TV「相棒」シリーズで監督を務めてきた東伸児。素晴らしい日本の原風景であり、歴史ある平家まつりが行われている宮崎県椎葉村を舞台に、市原悦子、綿引勝彦らベテラン俳優陣らと林遣都が紡ぎ出す魂の物語は、間違えることはあっても、誰でも人生をやり直せると、そっと背中を押してくれる。
 
公開初日のテアトル梅田で上映後に行われた舞台挨拶では、まだ映画の余韻が残る満席の劇場に東伸児監督、伊豆見翔人役の林遣都さんが登壇。観客とのあまりにもの近さに驚きながらも、立ち見のお客様も見える客席を前に、感謝の言葉で始まった舞台挨拶の模様をご紹介したい。
 

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―――ご覧になった観客からは「今までにない林遣都さんの一面が見れた」という声が多い作品ですが、新しい林さんの一面を出したいという狙いはあったのですか?
東監督:特別そういう思いはありません。3年ぐらいかけて脚本を書きましたが、キャスティングについては林君がスケジュールがちょうど空いていて出演してもらえそうだということで、1時間ほど会ってお話したことがありました。その時の林君がとても良くて。ちゃんと20代の青年として挫折もあり、きっと誰かを羨んだり妬んだりしたこともあるだろうと思ったんです。キャスティングは共犯者、この人と心中したいと思う人を見つけることなのですが、共犯者を見つけるには、何か一つでもいいから「この人となら、一緒に闘っていけるのではないか」と思えることを感じることが大事。新しい一面というより、この林遣都が演じる伊豆見翔人を見たいと思って演出しました。
 
―――演じる側として、今までの作品とは違う自分をという意気込みはありましたか?
林:常にどの作品でもそのように思っているので、今監督におっしゃっていただき、そこまで自分の中身を見ていただいていたのだなと、鳥肌が立ちました。
 
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―――映画の中で林さん演じる伊豆見は、逃亡先の宮崎県椎葉村で出会うスマ(市原悦子)やシゲ爺(綿引勝彦)らから、たくさんの愛情や厳しい言葉もかけられます。お二人が今までお仕事の中で愛情や厳しさを教えてもらった人はいらっしゃいますか?
東監督:大学入学時に上京し、大学を卒業するときに映画監督を目指そうと思ったのですが、その時に「夢があって羨ましい」という言葉と、日本映画が一番底の時期だったので「夢ばかり見て、どうするんだ」という言葉をずっと色々な人からかけられたのです。そんな時、電話で実家の母親が「お前は勇気があるよ」と言ってくれました。確かにその時の自分はすごく勇気を出していて、それを母親に言い当てられた時にすごくホッとしましたね。
林:デビュー作(『バッテリー』)の滝田洋二郎監督が、今までで一番厳しかった監督でした。当時僕は15歳ぐらいでしたが、何も分からない時に怒鳴り散らされ、本当に怖かったです。その分、うまく出来た時や、必死に食らいついていったときは、それと同じぐらいの愛情で返してくださいました。今でも年に一度連絡を取らせていただいているのですが、その時も厳しい言葉をかけてくださいますし、「ずっと勉強しなさい。でもいい子になっちゃだめだよ」と。大きなきっかけを下さった方ですね。
 
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―――林さんと市原悦子さんとの共演シーンは、本作の大きな見どころですが、林さんご自身は市原さんにどんなイメージを持たれていましたか?
林:遠い、遠い次元の方。小さい頃から「日本昔ばなし」を観ていましたし。お会いすると、みなさんがお持ちのイメージ通りの「スマおばあちゃん」に近い、心の優しいおばあちゃんでした。
 
―――芝居についてのお話はされましたか?
林:ほとんどなくて、最初にお会いしたときに「とても難しい役ですね」と一言だけ言われました。最後、とても難しく重いシーンを撮影した後に、「役者という仕事は大変だけども、しっかりとやっていかなければいけないですね」という言葉をかけていただきました。
 

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―――東京での舞台挨拶で市原さんは、来場できないからとボイスメッセージを寄せて下さり、林さんも感極まっていらっしゃったそうですね。
林:市原さんから「林さんとの共演は忘れられないものになりました」という言葉をいただき、その言葉は僕の生涯の宝物です。この撮影以来お会いできていないので、早く元気になっていただきたいし、映画の感想も聞いてみたいです。僕も、ずっと見ていただけるように、役者業を頑張っていきたいです。
 
―――林さん演じる伊豆見は人の温かみに触れることができず、孤独をずっと抱えて生きてきた、そして将来への不安も抱えている人間です。どうやって生きていけばいいかわからないという手探りの若者像は共感できる部分が強かったですか?
林:原作を読んだとき、自分とはかけ離れた人間だと感じ、共感しようとも思わなかったです。改めて自分が苦しいことも嬉しいことも、学生生活も恋も、当たり前のように家族と過ごしてきて恵まれているなと感じました。この役はすごく覚悟がいる役でした。
 
―――若い人が上の世代と繋がっていく様子も丁寧に描かれていましたが、どのようなメッセージが込められているのでしょうか?
東監督:僕自身田舎から上京し、アルバイトをしながら大学に行き、一人で都会にいた訳です。そういう人が道を踏み外すことは全然不自然ではなく、そこにあるものに手を出すか、出さないかだけのことです。僕がなぜ手を出さなかったのかと考えると、やはり裏切れない誰かがいる。悲しませてはいけない誰か、家族や親、兄弟、友人がいる。そういう人がいることがとても大切で、この映画ではそれを見つけることができたという話なのです。
 
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―――最後に一言ずつお願いいたします。
東監督:少し市原さんのお話をさせていただくと、市原さんはラストシーンは死にたかったと。生きていてもらえませんかと僕は話しましたが、このラストシーンはそんなにハッピーエンドだとは僕も思っていません。伊豆見は帰る場所が出来た。それはとても素敵な話ですが、ファンタジーではない。帰ってきた時から現実が始まり、仕事や結婚はどうするのか。一番大きいのは、スマの老いをどうするのか。僕はそれを背負って伊豆見には生きていってもらいたいのです。市原さんは、彼の重荷になりたくないと思っていたようですが、それを背負って生きていくラストシーンにさせてもらいました。今日はありがとうございました。
林:この『しゃぼん玉』は、僕にとってとても大事な作品で、監督はじめスタッフ、キャストの皆さん、そして宮崎県椎葉村というとても素敵な村の皆さんの支えがあり、僕もこの役を務めることができました。出来上がって、色々な方の感想を聞き、益々自信を持ってもっとたくさんの方に観ていただきたいと心から思っています。みなさん、是非勧めていただければうれしいです。今日はありがとうございました。
(江口由美)

<作品情報>
『しゃぼん玉』
(2017年 日本 1時間48分)
監督:東伸児
原作:乃南アサ『しゃぼん玉』 (新潮文庫刊)
出演:林遣都、藤井美菜、相島一之、綿引勝彦、市原悦子
2017年3月25日(土)~テアトル梅田、シネマート心斎橋、京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒ http://www.shabondama.jp/
(C) 2016「しゃぼん玉」製作委員会