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『あはらまどかの静かな怒り』キャストインタビュー

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あはらまどかを演じた映画初出演の中学生、西村花音さん、まどかの友達の長岡花怜(カレン)と女子学生の姿をした怪物の二役を演じた、同じく映画初出演の片山瑞貴さん、まどかが、妖精のシナモンから神社に植えるよう託された、ひなたくんという名前の花の声を演じた川久保まりさんに、撮影についてのお話をうかがいました。インタビューには、脚本も担当した川村正英プロデューサーも同席してくれました。


上手に笑うことができない少女の心の成長をファンタジー色豊かに描き、全編神戸ロケで撮影された本作は、11月11日から1週間、神戸の元町映画館でプレミア公開されます。
 


【まどかを演じて】

───初めての映画出演はどうでしたか?

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西村:プロモーションビデオみたいなので少しだけ演技したことがありましたが、演技の経験がなくて、今回のオーディションで合格して、すごく嬉しかったです。いきなり主演というのはちょっと不安がありましたが、オーディションの時から、衣笠監督、スタッフの方々がリラックスしていいよと言ってくださり、緊張がほどけ、全力でできました。


───クライマックスのシーンの撮影は最初のほうにあったのですね。

西村:神社での怪物とのシーンの撮影が、撮影スタートしてから2日目で、泣くシーンもあり、どうやったらうまく表現できるか、自分の中ですごく考えて、結構悩んでいたシーンで、監督とたくさん相談しました。監督は、私の意見を尊重し、あなたの好きなように、思うようにやったらいいよと言ってくれて、緊張が解けました。結果として、泣こうと思って泣いたのではなく、勝手に涙が出てきましたので、まどかになれたのかなと思うと嬉しかったです。


【まどかの友達と怪物の二役を演じて】

───怪物はいつも笑いながら、まどかに近付いてきますが、このアイデアは片山さんなのですね?

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片山:脚本では、まどかに静かに近付く感じで、笑うシーンではなかったんです。でも、もっと臨場感を出すために私ができるのは、息遣いよりも笑い声だと思いました。その方がもっとまどかを脅かすことができるかなと思って、撮影初日に、監督に提案しました。監督は、最初から、自分の意見や、やりたいことをどんどん言ってくださいと言っておられたので、臆することなく、気軽に相談できました。息を押し殺した笑いもあれば、高らかに響く笑いもあり、いろいろ笑い方を変えてみたので、そのことも感じてもらえたら嬉しいです。


───怪物と、花怜と二つの役を演じて、どうでしたか?

片山:実は、オーディションの時には花玲役だけで、撮影の数週間前に、怪物役の打診がきたんです(笑)。監督に、怪物役を置いた構想とかについて聞きにいき、いろいろ考えて、「まどかの心の中にいる、人間に恐怖の感情を与える怪物」というのを意識して役作りに取り組みました。まどかの思っている怪物は、いわゆる普通の怪物ではなくて、自分の内面に訴えかけてくるような、人間の怪物に近い感じです。心理的に追い詰めて、静かに近付いていくのが効果的だと思いました。

花怜は、まどかの中の友達(イマジナリーフレンド)なので、怪物とは反対の存在です。そのギャップをどうやったらより大きく表現できるのか、それぞれの役を調節して、違った一面を出せるよう意識しました。

花怜役と怪物役を同じ時間帯に撮影することがあり、髪型も全部違うので、髪型が仕上がってからでないと、気持ちを切り替えできない感じで、悩みながら気持ちを作っていきました。


───怪物を演じるということで、ホラー映画を観たりしましたか?

片山:ホラー映画は全然無理で、3日くらい寝れなくなります(笑)。小さな頃から文学小説に触れる機会が多かったので、今回も、観るのは苦手なので、怪談とかの短篇小説を読みまくりました。笑ってみてはどうかという着想も小説から得たものです。


【ひなたくんの声を担当して】

───現場では、どんなふうに撮影されたのですか?

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川久保:カメラに写らないぎりぎりの場所に、台本を持ちながら立って、雰囲気と距離感を感じながら、自分が花になって、話しかけている気持ちで声を出していました。


───川久保さんにとっての、ひなたくんのイメージは?

川久保:小学生ぐらいの、少年っぽいイメージです。でも、花の一生はすごく短いので、短い人生をすごく真剣に、一生懸命生きています。元気なときには、少年の高い声に戻ったり、自分の中でパターンを幾つか持って、いつも考えながらやりました。

アニメとか映画の吹替えでは、目の前に画面があって、それに慣れているのですが、今回は、目の前に見えているのは女優さんたちです。物語を想像する、その想像力の中に自分を持っていきながらも、今、目の前に見えている現実に合わせながらセリフを言うのは、バランスとか難しく、すごく頑張りました。

 

【まどかとひなたくん】

───ひなたくんは、どんな存在でしたか?

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西村:ひなたくんの存在はとても大きかったです。ひなたくんと出会ってから、まどかの内面も変わっていきます。出会った当初は、こいつなんやねん、みたいな感じでしたが、段々、ひなたくんとの関係も変わっていって、ひなたくんもいろいろ抱えていることがわかり、「まどかの家に庭ある?」と尋ねた言葉が、まどかにとっては、ひなたくんの決意の言葉に聞こえ、この言葉はまどかにとっても、ひなたくんにとっても、つらかったと思います。ひなたくんと庭を見ながら、話をするシーンは、泣きそうなくらい心が痛んで、そのあとのシーンでは、本当に号泣してしまいました。そのシーンが一番緊張していたので、事前にいろいろ考えて、段取りのときは不安でしたが、泣いてしまって、いろんな考えがどこかにとんでいってしまい、本番はすっとまどかになれて、自分自身に怒ったり、自分のことのように演じられました。

 

【印象深いシーン】

───どんなシーンの撮影が、一番印象深いシーンになりましたか?

西村:クライマックスのシーンやひなたくんが亡くなるシーンはもちろんですが、校長先生との掛け合いのシーンが本当に楽しかったです。特に地震の撮影は、カメラの撮影の仕方が面白すぎて、校長先生と二人とも笑ってしまってNGを出しましたが、楽しかったです。校長先生を演じる西出明さんは、大先輩で緊張しましたが、フレンドリーで、たくさん話しかけてくれて、気持ちの切替えとかアドリブとか、演技について学ぶことも多く、緊張がほぐれました。最後のお母さんとの食事のシーンもすごく好きです。お母さんを演じる泉希衣子さんとは、一度共演したこともあったので、信頼感があって、落ち着いて楽しく演じられました。


aharamadoka-片山瑞貴-240-2.jpg片山:怪物役としては、神社でのまどかに近付くクライマックスのシーンが、私にとっては撮影1日目だったので、すごく記憶に残っていて、こんな感じだと演技の感覚をつかむきっかけになりました。花怜役としては、まどかに電話をする声だけのシーンがあって、川久保さんから学ぶことも多く、勉強になりました。


川久保:ずっと少年の声がしたくて声優になったのですが、今まで、吹替では、強い女性の声が多く、少年の声を試しても、そういう声なら結構いるみたいな感じでした。今回、監督や川村さんから、アニメじみた声は要らない、実写のみんなが動いている中での生きた声がほしいから、オーディションで私を選んだと言ってもらえて、自信を持てました。役としても、物語を重くさせずになごます雰囲気のキャラをセリフとして表現しようとしました。まどかに、ずっといてねと言われたシーンは恋人のような雰囲気になりながらも、心が繋がった、すごく好きなシーンです。
 

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【本作について】

西村:ファンタジー要素が入ってくるところ、ちょっとおもしろいシーンが入っているのが、個人的にめちゃ好きですが、どのシーンも監督といっぱい相談して、思い入れがあります。最後のほうは全部やりきれたという感じで、いい作品になったと思います。


片山:演じるというのは初めてだったので、違う人間になりきって目線を動かしてみるとか、物事を考えてみるという仕事に携わってみて、とても奥深いと思いましたし、もっと挑戦したいと思います。今回、リラックスして演技できたのは、キャストもスタッフもみんな、いい人ばかりで、監督を中心にあたたかい雰囲気で、勉強とかで追い詰められていた時でも、撮影現場に行くのは楽しみでした。


川村:脚本は書きましたが、実はセリフにはあまりこだわりはなく、セリフよりもアクションのほうが重要で、セリフは飛んだり、忘れてしまったりしてもかまわないという考えは、監督と共通しています。何を見て、何を思っているかがわかったら、セリフは要らない、絵はできる、視線とアクションがそろったらいいと思っています。


インタビューは以上です。
 



aharamadoka-500-3.jpg映画初出演で主演の西村さんは撮影当時14歳。衣笠監督いわく、オーディションの時には、普通、気に入られたいとか、何かやってやろうという欲が出てくるものだけれど、西村さんは、それがなく、きちんと自分で考えて、自分なりに一生懸命、ストレートに言ってることが伝わってきて、かつ、こちらが何を言いたいのかをきちんと受け止めてくれたそうです。そんな彼女に、撮影2日めで、いきなりクライマックスの撮影ということで、現場では心配の声も少しあったそうですが、監督は、西村さんのあの表情、あのシーンが撮れた時は、嬉しくなって思わず、俳優さんって楽しい仕事ですねと言って、この映画は、あとはこのクライマックスに向かって進んでいけばいいから、これでいけると確信されたそうです。


片山さんは、怪物役だけではなく、長岡花玲という、まどかの想像上の友達でもあり、現実のクラスメートでもあるという、難しい役を演じました。脚本上は、現実の花玲と、まどかが想像(妄想)している花玲とは、描き分けられていますが、映像になると見分けがつかず、監督いわく、観客が見ている映像がどちらかは、むしろ観客を惑わすしかないと思ったそうです。


映画初出演の若い二人が、ベテランの監督やスタッフ、共演者の、ざっくばらんであたたかい雰囲気に支えられ、演技に挑戦して、自分で考え、意見を言って、大いに学びながら、撮影を通じて、大きく成長されたことを、インタビューを通じて実感しました。これからの活躍が大いに期待される西村さんと片山さん、お二人の輝きをぜひ劇場でご覧ください。


(伊藤 久美子)


<作品情報>

『あはらまどかの静かな怒り』

(2023年 日本 88分)
監督:衣笠竜屯
脚本: 川村正英、衣笠竜屯 
出演:西村花音、片山瑞貴、川久保まり、西出明、栗田ゆうき、泉希衣子、夢香
製作・配給: 
神戸活動写真商会 港館
 (C)衣笠竜屯

公式サイト→https://aharamadoka.minatokan.com/

2023年11月11日(土)~17日(金)~元町映画館プレミア公開


 

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