原題 | Flight |
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制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 2時間18分 |
監督 | 監督・製作:ロバート・ゼメキス |
出演 | デンゼル・ワシントン,ドン・チードル,ケリー・ライリー,ジョン・グッドマン,ブルース・グリーンウッド,メリッサ・レオ,ブライアン・ジェラティ,タマラ・チュニー,ナディーン・ヴェラスケス,ジェームズ・バッジ・デール,ガーセル・ボヴェイ |
公開日、上映劇場 | 2013年3月1日(金)~丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、他全国ロードショー |
~フライト後に転機を迎えた男の選択は?~
ウィトカーは,パイロットとしての技能は超一流で,制御不能となった飛行機をも不時着陸させる。だが,乗務中にも手を出してしまうほどアルコールに依存している。夫や父としては失格で,妻子に別居されて約3年になるようだ。それでも公の場ではそつなく対応できる社会性を備えている。不意にマスコミの取材攻勢を受けても何とか事なきを得る。彼は,乗客乗員102人中96人を救った英雄と6人を死亡させた犯罪者との岐路に立たされる。
序盤のウィトカーの目覚めのシーンが全てクライマックスの伏線となっている。一緒にいるのは客室乗務員のトリーナだ。それに続くフライトのシーンは,かつての空港パニック映画を凌駕する勢いで迫ってくる。病院のシーンから一転してウィトカーの内面に焦点を当てたヒューマンドラマとなる。飛行機は制御できても自分自身を制御できない脆弱さを抱えながら,そのために懊悩する一人の男を,デンゼル・ワシントンが魅力的に演じている。
病院の中で,理由は違えども九死に一生を得たウィトカーとニコールが,癌で死が迫っている青年と邂逅する。ミステリーゾーンのような独特のトライアングルが醸成される。人は何のために生きているのかという根源的な問題が提示されたといえよう。自らの意思で生きているようで,実は人智の及ばない力によって生かされているのかも知れない。息子が父に“Who are you(何者か)?”と問いかける。その一つの回答が本作品そのものである。
クライマックスでは,ウィトカーが事故につき公聴会で追及を受ける。今までと同様に嘘をつき亡くなったトリーナに罪を着せれば自分は助かるという状況に置かれる。観客にも彼の心境が手に取るように見えているため,同じ立場で選択を迫られる。英雄と賞賛されながらも虚飾の人生を貫くのか,犯罪者とレッテルを貼られても人間性を取り戻すのか,と。観客とウィトカーを同化させてしまうロバート・ゼメキス監督の手腕は,驚嘆に値する。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.flight-movie.jp/
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