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『EDEN』

 
       

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★山本太郎インタビューはこちら

       
作品データ
制作年・国 2012年 日本
上映時間 1時間41分
原作 脚本:羽原大介、李鳳宇
監督 武正晴
出演 山本太郎、中村ゆり、高橋和也、齋賀正和、池原猛、小野賢章、大橋一三、入口夕布、高岡早紀、浜田晃、藤田弓子
公開日、上映劇場 2013年2月2日(土)~シネ・ヌーヴォ、第七藝術劇場

 

~悲しみを乗り越え、あふれてくる人間賛歌のパワー~

 

eden-2.jpg 2011年に他界した俳優の原田芳雄が生前に企画を温めていた、船戸与一の短編小説「夏の渦」の映画化。登場人物のほとんどがニューハーフやゲイで、マイノリティとして社会から差別される側の人たちをあたたかく見つめ、描いた作品。映画の最後で、彼らがくりひろげるダンス、音楽は、フェリーニの『8 1/2』をほうふつさせ、すばらしい。彼らの笑顔の裏にどれだけの涙と悲しみが隠されているのか教えてくれる。

eden-5.jpg 舞台は、新宿のショーパブ「EDEN」。店長のミロはじめ従業員は、皆ゲイやニューハーフ、トランスジェンダーばかり。ミロの42歳の誕生日、泥酔して連れて帰った客のニューハーフ、ノリピーが心臓発作で急死する。家族から、息子ではないと遺体の引取りを拒否され、店の従業員たちで、千葉にあるノリピーの実家まで遺体をトラックで送り届けようと決意する…。

 女性の心を持って、男性の身体で生まれてしまった…それゆえに、社会から差別される彼ら。ゲテものと呼ばれたり、どんなにひどい偏見と蔑視の目にさらされても、仲間同士でいたわりあい、たくましく明るく生き抜く姿が、コミカルに描かれる。迷ったり悩んだりしながら、自分に正直に生きる決心をした彼らの勇気、心意気がじんわりと伝わってくる。互いに悪態をついたり、好きなことを言い合える仲間同士の居心地のよさ。観客もまたいつしか彼らといっしょに一喜一憂していることに気付かされる。

eden-4.jpg 「女の子のまま三途の川を渡らせてあげたい」と、ノリピーの弔いの支度をするシーンがいい。ミロを演じる山本太郎のオネエ言葉や女性らしい仕草も意外に似合っている。数年ぶりに、故郷の家族にかけた電話での東北弁が心に迫ってくる。高橋和也演じる“髭の女人”ぶりも、肝っ玉がすわっていて魅力たっぷり。ノリピーの家族の姿は、ゲイを含めマイノリティにあまりに不寛容な日本の社会のありようを浮き彫りにするとともに、親子の絆の深さを思わずにはいられない。

 ロングとアップを巧みに使いわけた撮影、とりわけ、彼らが千葉の実家を後にするあたりからの描写が見事で、「赤いスイトピー」の歌とあいまって、深い情感を呼びおこす。羽原大介と李鳳宇の脚本により、EDENの店の面々が生き生きと映し出され、見事な人間賛歌のドラマとなった。

 最後にくりひろげられる、祝祭的な雰囲気は見事。シーナ・イーストンの「モダンガール」に乗って、どんなつらいことがあっても、めげないし、ひるまない。みんなで音楽に乗って、笑顔で歌って、踊って、人生を歩んでいこうというエネルギーにあふれている。きっと、誰もが、人生に立ち向かう勇気と元気を彼らからもらうにちがいない。

(伊藤 久美子)

公式HP⇒ http://sumomo.co.jp/eden/

©2012映画『EDEN』フィルムパートナーズ

 

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