『最強のふたり』ティーチイン レポート
ゲスト:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ、共同監督
(原題:Intouchables)
(2011年 フランス 1時間53分)
共同監督・脚本:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、オドレイ・フロール、アンヌ・ル・ニ
配給:ギャガ 共同提供:WOWOW
2012年9月1日~TOHOシネマズ (シャンテ、梅田、なんば、二条、西宮OS)、OSシネマズミント神戸 他全国順次公開
・作品紹介⇒こちら
・公式サイト⇒ http://saikyo-2.gaga.ne.jp/
©2011 SPLENDIDO / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / TEN FILMS / CHAOCORP
★第24回東京国際映画際・グランプリ(東京サクラグランプリ)
・主演男優賞W受賞(フランソワ・クリュゼ、オマール・シー)
★セザール賞 全9部門ノミネート・主演男優賞受賞(オマール・シー)
★リュミエール賞 主演男優賞受賞(オマール・シー)
こんなに笑って感動して泣ける映画に出会えるなんて!人生はまだまだ楽しみに満ちている、と生きる活力が湧いてくるようだ。9月1日から公開される『最強のふたり』は、実話をベースにしたユーモアあふれる感動作。事故で全身麻痺となった富豪フィリップとスラム出身で前科のある黒人青年ドリスは、何もかもが対称的で出会うはずのないふたりだったが、不協和音を立てながらも、いつしか本音の部分で強い絆で結ばれる。
何がこの二人を繋ぎ合せたのだろうか……その謎は、二人の行動や言葉のひとつひとつに注目してみると、毒もあるが愛もあることに気付く。いつも本音で屈託なく入り込んでくるドリスを黒人俳優のオマール・シーが躍動的に演じる一方、体の不自由なジレンマを抱えながらも優しい笑みで理性的に応えるフィリップを、『唇を閉ざせ』や『PARIS(パリ)』のフランソワ・クリュゼが品よく演じて、まさに見事なコンビネーションを示している。
*猛暑続きの日本でも多くの方に見て頂いて、心満たされる感動で夏バテを払拭してほしいものです。
【STORY】大統領官邸近くのサントレノ地区にある屋敷で多くの介護人に支えられて生きるフィリップは、ジェット機を所有しクラシック音楽や絵画や詩を愛するセレブ。だが、事故で全身麻痺となり、最愛の妻も亡くす。不採用通知3つで出る生活保護手当を目的で新しいヘルパーの面接にやってきたドリスは、スラムの集合住宅に住み前科もある黒人青年。体の不自由なフィリップに対して同情も遠慮もしなければ容赦もない。まわりの心配をよそにそんなドリスを採用し、ちくはぐなコンビ生活が始まる。それは、静かで調和に満ちた生活から一変し、躍動感あふれる活気ある生活となっていった。
6/21(木)より開催された『20thアニバーサリー フランス映画祭』でオープニングを飾った『最強のふたり』。本作の監督と脚本を務めたエリック・トレダノ監督とオリヴィエ・ナカシュ監督が来日し、上映後に観客とのティーチインを行った。
日時:6/21(木)20:00
場所:有楽町朝日ホール
登壇者:エリック・トレダノ監督、オリヴィエ・ナカシュ監督
MC:満席の会場のお客様に一言お願いします。
エリック監督:皆様にこうして映画を見ていただくことができて大変感動しております。会場の隅で、皆さんの反応を見ておりましたが、すごく楽しんで見て頂いたので胸が熱くなりました。
オリヴィエ監督:何度観ても感動する映画ですね~(笑)。フランスから遠く東京に来て、皆さんに泣いて笑ってもらえて、とても名誉に感じております。
━━━この映画は実話を基に作られたそうですが、経緯を教えて下さい。
オリヴィエ監督:2003年に、(映画のモデルになった2人の)テレビドキュメンタリーを夜、2人でホテルで見ていたんです。私たちは、実際に、普通は出会わないような2人が出会う、そのドキュメンタリーにとても感動したんです。これまでに3本エリックと一緒に撮った長編があったんですが、この話を僕らの4作目にしようと決めました。本当に可能性がある映画だと思ったんです。
━━━モデルとなったお2人は、この映画を観ましたか?
エリック監督:もちろん。完成し、一般の人に試写をする前に、真っ先に見てもらいました。全身麻痺のフィリップのモデルの方は「両手で拍手をしたいです!?」とジョークを言い、ドリスのモデルになったアルジェリア人の方は「僕って本当は黒人だったんだ~!?」と言っていました(笑)。二人とも、この映画をとても気に入ってくれて、我々にとっても、彼らにとってもとても感動的な時間でしたね。
━━━アルジェリア人を黒人俳優にした理由は?
オリヴィエ監督:黒人俳優のオマール・シーとは大分前から一緒に仕事をしております。モデルとなったアルジェリア人もオマールも移民の第二世代ですので、違和感はありませんでした。そもそも、オマールのために書いた脚本なのです。
━━━フランソワ・クリュゼの起用は?
オリヴィエ監督:オマール・シーはTVでは人気者ですが、映画界ではあまり有名ではありません。一方、フランソワ・クリュゼの方は、舞台や映画や作家活動など大変に有名な俳優ですので、そのギャップがこの役にピッタリだと思ったのです。彼に演じてもらって本当に良かったです。
━━━主演2人の掛け合いはとても面白く感動しました。実際のモデルに忠実な部分、脚色した部分を教えて下さい。
エリック監督:二人が出会う面接のシーンで、生活保護申請の書類にサインをもらいに来たとか、二人とも女性好きというエピソードは実話です。絵画のくだりや、オペラを観に行って「木が歌ってる!」というシーンはコミカルに見せるための創作です。二人の間のユーモアや辛口なやりとりは実際のものに少しだけシナリオを加えてより感動的にしました。オマール・シーの方が実物よりダンスがうまいですよ(笑)
━━━日本のフランス映画のイメージはアラン・ドロンの映画のようなイメージですが、この映画は人種問題などフランスの実状がリアルに描かれてますね?
オリヴィエ監督:今、ヨーロッパは経済危機など、さまざまな問題を抱えています。かつてのヒーロー像は美男だとか超人的で人間離れしたものが多かったが、今の人々に受けるヒーロー像は、リアルで普通の人間なんです。本作の主人公2人は、障害や移民の問題で社会から排除された人間です。誰もそういう境遇になりたくないと思っているが、その「怖い」とか「不安」という気持ちの上に「笑い」を入れることで、彼らがリアルなヒーローに見えてくるんです。それがフランスだけでなく世界でヒットしている理由ではないかと思います。
━━━とても面白くて大笑いしましたが、撮影中もそうでしたか?
エリック監督:撮影中はとても寒かったので、あまり笑う気にはなれませんでした(笑)
━━━ハートウォーミングな作品の割にシンプルな音楽だったが・・・?
オリヴィエ監督:喜劇と悲劇の間にあるような物語なので、ベースにあるのは、身体障碍者と社会から外れた役なので、あまり大げさな曲ではなく、削ぎ落としたようなシンプルな曲にしてもらいました。
━━━2人で監督するのはどういう感じでしょうか?葛藤とかありましたか?
エリック監督:そうなんです。ほとんど僕一人で作りました(笑)
オリヴィエ監督:いえ、作ったのは僕です。彼はコーヒーを入れただけでした(笑)
エリック監督:意見は常に食い違い、撮影中は死闘を繰り広げ、ボクシングでなぐり合い、負けた方は目の周りが黒くなり、腕も動かない状態でした(笑)
それは冗談ですが、思春期のころから二人とも映画が大好きで、情熱を分かち合ってきました。4本も一緒に映画を撮っていますので、これからも一緒に映画を作っていきたいと思っております。もう次の計画もありますよ!
お二人とも観客の質問に、茶目っ気たっぷりのユーモアを交えながら答えては、映画同様、最強のコンビネーションで観客を楽しませ会場を沸かせていた。フランス映画祭で観客賞を受賞している。
(河田 真喜子)
[『最強のふたり』はフランスで2011年興収No1、フランス映画史上歴代2位となったメガヒット作。ドイツ、オーストリア、韓国などでも大ヒットを記録し、各国でフランス映画歴代No.1の興収を樹立し、9月1日の日本公開にも期待が高まっている。]