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『鍵泥棒のメソッド』合同記者会見レポート

kagimeso-s500.jpg『鍵泥棒のメソッド』合同記者会見レポート(2012年7月24日(火)大阪市内)
ゲスト:堺雅人、広末涼子、内田けんじ監督

~堺雅人危うし!! 吊し上げ会見の行方は?~

kagimeso-1.jpg(2012年 日本 2時間08分)
監督・脚本:内田けんじ
出演:堺雅人、広末涼子、香川照之、荒川良々、森口瑤子
2012年9月15日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://kagidoro.com/
© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会
★第15回上海国際映画祭にて最優秀脚本賞を受賞!

 3年かけて脚本を練りこんだ内田けんじ監督と、主役の堺雅人と広末涼子の3人がキャンペーンのため来阪。合同記者会見では終始和やかな雰囲気で、広末涼子の素直な言動に堺雅人がツッコミを入れ、監督がそれをフォローするような形で笑いを誘っていた。

 『運命じゃない人』(2005年)や『アフタースクール』(2008年)では、ごく普通の男があり得ないシチュエーションに巻き込まれ、それを複数人物の視点から、もしくは時間軸をズラしながら事件の核心に迫るという大変ユニークな手法でサスペンス・コメディに仕上げ、観る者を楽しませてくれた内田けんじ監督。ところが、最新作では今までの手法とは異なり、展開の鍵として登場人物のキャラクターを明確に性格付けて、引き寄せられるように絡み合う人間模様が豊かな情感を醸し出している。これまで以上に、軽妙なストーリーテリングの面白さと深みのある人間ドラマで魅了する。

kagimeso-2.jpg【STORY】 ルーズな生活の果てに自殺未遂の35歳の売れない役者・桜井武史(堺雅人)が、銭湯で転んで記憶を失った羽振りの良さそうな男・コンドウ(香川照之)のロッカーの鍵を盗んだことから、危険な歯車に巻き込まれていく。そこに、ある理由から突然結婚宣言をした雑誌編集長の水嶋香苗(広末涼子)が絡む。香苗はバイト募集条件も結婚相手の条件も同じ、「健康で努力を惜しまない人」。そんな香苗が、記憶を失ったコンドウと出会い、シンパシーを感じる。コンドウと入れ替わった桜井の命運は ?コンドウの記憶は? 香苗の婚活の行方は?


【最初のご挨拶】

kagimeso-s2.jpg監督:今日は大好きな役者さんと大阪に来られて嬉しいです。
堺:とても素敵なラブストーリーができたと思っています。よろしくお願いいたします。
広末:本当に楽しくて実力のある役者さんと、それに、しっかりとしたイメージのできている監督とお仕事ができてとてもいい経験になりました。沢山の方に見て頂きたいです。

━━━内田監督の作品は脚本の面白さがクローズアップされる事が多いが、現場での監督の様子や演出は?
堺:現場での監督の様子が語られないのは、あまりにもスムーズ過ぎて我々の記憶に残らないからではないかと。監督はイメージに沿って的確な指示を出されるので、それに従っていけば順当に進んでいく。特にこれというトラブルもなく、とてもスムーズな印象で、いつも楽しそうにされていました。
広末:監督には迷いがない。理性的で、形容詞など使わず具体的な比喩を用いて演出されることが多く、それが面白くて、さすが本を書かれる人だなあと思いました。初日に香川さんと焼き鳥を食べに行った時とても嬉しそうにしておられ、その理由は「お二人が喋ってくれてますねぇ。3年かけて練りに練った脚本を役者さんが喋ってくれると、こんなにも嬉しいものなんだ」と。監督するだけでなく脚本も手掛けると、作品に対する愛情も違ってくるようです。
堺:僕には何の比喩もなかったよ!
監督:若干ひいきしてました(笑)。

━━━3人の出演配分やキャラクターの吸引力については、最初から計算していた?
 監督:私自身がわくわくするかどうかが問題。キャラクターのデフォルメ感はかなり意識しました。具体的には、香川さんがお風呂場で転ぶシーンの、香川さんのお尻の位置の高さに全てのキャラクターのデフォルメを込めました(笑)。『少林サッカー』ほど高く上がってませんが、現実ではあり得ないほど高い位置にしました。

kagimeso-s3.jpg━━━前作に続いての出演だが?
堺: 『アフタースクール』の時は脚本を読んでも訳が分らなかったのですが、今回は1回読んだだけで意味が分かったという安心感がありました。3年かけた脚本は、技巧を凝らしながらもミステリーの部分を残し、ラブストーリーという筋が1本通っています。それは監督ご自身の変化だと思うし、前2作を見ておられる方もその変化を楽しんで頂ければいいなと思います。今回は何分にも香川照之さんとの共演ですから、演技合戦になるのも不利だと思い、肩の力を抜いて「あなたと張り合う気はありませんよ~」とアピールして現場に入りました(笑)。

kagimeso-s4.jpg━━━内田けんじ作品について?
広末:私も一気に読みました。楽しくてわくわくしながら現場に入りました。初めて堺さんと香川さんの3人で撮影があった日の会見で、「大人のシュールな笑いあり、監督の沢山の肉付けの末に最後はドンデン返しがある作品ですが、ピュアなラブストーリーですよね」と言ったら、お二人が「えっ!ラブストーリー?」と驚かれたのです。お二人は自分たちの性格が入れ替わる部分に大きなイメージを抱いていたようですが、監督に確認したら「これはラブストーリーですよ!」と仰って下さいました。読み方や視点によって大きく変わっていくようで、きっとご覧になる方も、内田監督らしいなとか、キャラクターの誰かと共感するとか、感情移入の仕方によって全然違って見えてくるのではないかと思います。
 堺:広末さんは最初から「素敵なラブストーリーができました!」と言ってました(笑)。
 監督:合同会見だとバレてくるね(笑)。 

━━━後半、堺雅人さんの絶妙な演技力が問われるシーンがあったが? 
 堺:あれは本気でやって、結果、下手になってしまった!
 広末:香川さんも驚いてましたよ。どうしたらあんな演技が出てくるんだと。
 監督:下手というか、浅はかなんだよね(笑)。自分に酔っている感じがあったね。
 堺:でも、あれは監督の口真似ですよ。
 監督:違う、違う!僕、あんな浅はかな演技しない!(笑)
 広末:見ていて恥ずかしくなるような演技をするシーンがあって、あの演技プランはどうなってるんだろうと?
 堺:え~っ!? これって、ある意味吊るし上げだよ!?(笑) 確かに刑事ドラマに憧れてたので、あれはちょっと考えたよ。そうした浅はかな役を本気でやらせるんだから……それにしても、見ていて恥ずかしくなるような演技とはね~(笑)

kagimeso-s5.jpg━━━香川さんの面白さは?
 広末:ワンテイクは少なくて、何回も撮り直すのを楽しんでおられました。「もう1回できるんだ~!」と。みんなで構築する芝居を楽しんでおられたようです。
 堺:「役者が現場でできることはそんなに無いんだよね~生き様が出て来るんだよね」と、常に全力投球されていました。記憶を失った部分で香川さんが着る服をわざと似合わないような服ばかり選んだのに、どんどん着こなしていって、ガッカリしました(笑)。何でも似合うんです!
 広末:Tシャツのロゴが面白かったですね。
 監督:そう!「WANDER NIGHT」(ワンダー ナイト)、それがタイトル候補にもなったよ。

━━━広末さんは今回笑わない役でしたが……?
広末:とにかく笑わないように、感情を出さないように、常にテンションを低くしていたので、怒っているように見えないかと、その辺のさじ加減が難しかったです。でも監督に「大丈夫!」と言われ、不思議と違和感なく、新しい経験をさせて頂きました。
 監督:撮影合間に見せる表情豊かな笑顔が素晴らしく、これを封印するんだと思うと申し訳なくて……こぼれおちる情感がそこにあったからこそ、美しく見えたと思います。
広末:周りの人にも今までの役の中でも一番好きだと言って頂けて、とても愛すべきキャラクターだと思いました。


kagimeso-s6.jpg 無計画でルーズな男を絶妙な力の抜き加減で特有の存在感を示した堺雅人、記憶を失い貧しくうだつの上がらない男と狡猾でシャープな男を繊細に演じ分けた香川照之、何事も計画的で几帳面な女性を可愛い笑顔を封印して好演した広末涼子。この3人のパワーバランスが、かつてないほどのスリルに満ちたコミカルで温もりのある“ラブストーリー”を奏でる。そして、前向きに努力する姿勢こそ幸せへの“鍵”であることを実感し、勇気付けられるに違いない。またしても“内田マジック”にはまってしまった! (河田 真喜子)

 

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