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(2019年9月9日(月)@梅田ブルク7)
ゲスト:池松壮亮(29)
今どきこんな熱血男子はいるのだろうか?…格闘技のような痛すぎる愛に「生きる覚悟」を示す主人公・宮本を、思慮深く大人しいイメージの池松壮亮が、今まで見たことのないブッチギレぶりで熱演。彼の本作に込めた想いを聴いて、改めて心を突き動かされてしまった。
宮本を演じた池松壮亮は現在29歳、12歳で出演した『ラストサムライ』(2003年)以来、演技派俳優として若手俳優陣の中でも群を抜く存在。彼が演じるキャラクターは、奥深い人間性と豊かな心情を秘め、物語だけでなく不思議な魅力の世界観をも醸し出す。彼の出演する作品では目が離せない存在の俳優だ。
そんな池松壮亮が体当たりで演じた宮本は、理不尽な社会と闘い、靖子を命がけで愛し、新たな命を守り抜く義務感に燃える熱血男子を熱演。靖子を演じた蒼井優とは『斬、』に引き続いての共演。宮本をしのぐ圧倒的パワーでハートに火をつける靖子を、これまた他の女優にはない破壊力で熱演。今だから語れる、俳優として生きることや、作品への想い、そして今や“怪優”のような存在となってしまった蒼井優ついても正直に語ってくれた。
(以下にインタビューの詳細を紹介しています。)
――撮影中大変だったことは?
肉体的にも精神的にもダメージが強かったです。映画2時間で宮本の痛みを理解してもらうためには、どんな痛みも受け入れるつもりでいました。でも、もう一回やれと言われたらやりたくないですが(笑)。
――TVドラマ版と映画版とは宮本は少し違ってきているようだが、キャラクターについて真利子哲也監督と話し合ったことは?
何十時間も話し合ってきたので、一言で話すのは難しいです。日々宮本像を決定付けていかなければならない中で、それぞれ違う宮本像を描きつつも、どこかで一致させられるよう話し合いました。特にクランクインする前は慎重に議論を重ねました。
――「傷付きたくない」と考えている今の若い男性に挑戦状を突き付けるような宮本像だが?
別に挑戦状を突き付ける気はないです。今の世の中は痛みを和らげるために経済が成立しているところがありますが、そんな中でも生き辛さを抱え、これだけの自殺率になってしまっている。本来、生きることはとても喜ばしいことであり、なおかつ痛みを伴うこともあるということを伝えられれば十分。ほんの一瞬の歓びを掴み取るために宮本は傷だらけになりながら生きていく訳ですから、リスクは付きもの。自分で経験しないと分からない。携帯を開けば人生が何たるかが分かるようになっている現代では、痛みに弱くなっていると感じます。
――今回の宮本を演じて、自分の中で変わったこと、得たものは?
「演ずることだけが俳優のゴールではない」と言いましたが、「届けることは俳優の義務」だとも考えています。一個人としてこの映画を通過して思うことは、時代の転換期にこの作品に出会えて、今一度人間らしくあらねばと思いました。
原作者の新井先生の作風は過激な表現も多いですが、過激な部分を通過してピュアな所に行き着くという作風。人間回帰を表現してきた方でもあります。宮本もそういうところがあり、自分が暴れるのは、人生の苦難に対面した時に自分自身の価値が壊れてしまって、明日を掴むために暴れている。僕自身もそうだし、関わった人たちもそうだし、観て下さる人たちもそういう処を抱えていると思う。
非人道的なことが年々増加する現代において、目に見えない圧力を感じていても、宮本のような強引さが一瞬でも変化をもたらすことができるかも知れない。靖子の過去は変えられないが、心の痛みを半分にすることはできるかも知れない。別にみんなに宮本になってほしい訳ではありませんが(笑)、この作品を通して、強さの可能性を感じ取ってほしいと思います。
――原作が書かれた時代は違うが、今本作を発表する意味は大きい。特に池松さん自身の俳優としての覚悟を強く感じたが、今までの出演作で自分に一番近い役は?
僕は自分の中に賛同する要素がないと動かないタイプです。どの役が池松かと問われたら、どれも自分に近い部分はあると思う。表現する上で、役者本人そのものが出過ぎると傲慢で危険なことになってしまうので、俳優としての価値はないと思っています。そういう意味で本作は、20代最後に置いていきたいような池松の本音が出ている作品でもあると思います。
――長いキャリアの中で、今まで演じて来たキャラクターと、30代を迎えてからのキャラクターの変化について?
漠然とある程度は予測できますが、明日でも10年後でも20年後でも、せっかく心を使う俳優という仕事をしているのですから、心の赴くままに極力自然にやっていきたいと思っています。
――やってみたい役は?
そういうのはあまりありません。日本の俳優は演ずることがゴールとされてきました。僕はそこに反発してきた部分があると思います。自分がどういう役をやりたいというよりも、いい作品に携わっていきたい。そして、自分がその一助になれれば、まだまだ俳優としてやっていけるかな、と思えるのではないかと。
――蒼井優という女優について?
あり余るパワーを女優をやることで発散しているような方。それでも、映画に偏差値があるとしたら、とても偏差値の高い方なので、別に事前にやり取りしなくても無言のままでもそのシーンの目に見えないものを掴み取ることができる。そういう方とワンシーンワンシーン積み上げていく作業はとても面白かったです。
――昨年、映画『斬、』でも共演されていましたが?
無言のうちに共有している時間がすごく長かったですが、雑談はよくしていました。
蒼井さんは普段すごくお喋りな方。僕はこうした取材ではスイッチを入れて話すようにしていますが、現場では極力話さず静かにしているタイプなのに、まあ話し掛けてくるわ!僕は本番前は助走が必要ですが、蒼井さんは本番になるとスイッチを切り替えて撮影する。そして終わったらまた話の続きをする(笑)。
蒼井さんはよく「疲れない!」と仰っていますが、僕はすぐに疲れてしまうので、それが理解できなかった。『斬、』の時もずっと元気で、「どこからあのパワーは来るんだろう?」と不思議でした。でも、本作で見てはいけないものを見てしまった!それはお昼休みの後、控室で歯ブラシを加えたまま寝ていたんです!? きっとさすがの蒼井さんも大変だったんだと思います。
――蒼井さんとは同郷ですが、雑談では方言が出たりしますか?
そもそも僕は敬語で話していますので方言は出ないです。一応、蒼井さんは5歳上ですからね。
――靖子という女性はタイプとしてどうですか?
イヤですね(笑)。1か月だけでも向き合うのは大変でしたからね。
――激しいけど、言うべきことをビシッと言える、愛情いっぱいの女性のようですが?
大好きですよ。尊敬できるし、カッコいいなと思う。一個一個の迷いからの答えの出し方とか、髪を束ねて台所に立つ姿とか、気合いとか女のプライドを持っている素敵な女性だなと思います。
それより、この映画を観て、日々を向上しようとか、今日よりも明日を良くしようとか、今頑張っていることを大事にしようとか、小さいことでも明日への活力につながるように感じてくれたら作品も本望かなと思います。
――人を愛する覚悟は、生きる覚悟につながるような気がしたが?
宮本の、生きる覚悟、靖子を愛する覚悟、親になる覚悟など、いろんな覚悟が含まれています。明日を生きることの義務、これだけ過激に情熱を燃やそうとしている宮本を見て、何かしら活力につなげて頂ければ嬉しい。(パンフレットの表紙を指して)このバラを届けるために、宮本は悪戦苦闘しているんですよ。これが総てなんです!
【STORY】
文具メーカー「マルキタ」で働く営業マン宮本浩(池松壮亮)は、ある喧嘩で負傷して上司に叱られている。愛想良くできない上に気の利いたお世辞も言えず、手柄を同僚に奪われるなど、営業マンとして四苦八苦していた。だが、この日の宮本はなぜか晴々しい顔をしていた。それは中野靖子(蒼井優)との愛を不器用ながらも貫けた、初めて感じる男としての自信だった。そこには、語るもせつない宮本の悪戦苦闘の日々があったのだ。
痛々しい程の究極の愛に挑む宮本。「靖子は俺が守る!」と宣言したものの靖子を襲った悲劇に無力な自分を責め、そして絶対敵わない相手に挑戦する!……リスクを恐れず真っ向勝負に挑む宮本の情熱と誠意は、観る者を奮い立たせ、人を愛する覚悟を教えてくれる。
(2019年 日本 2時間9分)
■出演: 池松壮亮、蒼井優、井浦新、一ノ瀬ワタル、柄本時生、 星田英利、古舘寛治、佐藤二朗、ピエール瀧、松山ケンイチ
■原作: 新井英樹『宮本から君へ』(百万年書房/太田出版刊)
■監督:真利子哲也 脚本:真利子哲也/港岳彦
■配給: スターサンズ/KADOKAWA 【R15+】
■コピーライト:(C)2019「宮本から君へ」製作委員会
■公式サイト: https://miyamotomovie.jp/
【編集後記】
取材当日は台風15号の影響で新幹線が大幅に遅延し、午前中予定のインタビューが夜の先行上映会の舞台挨拶後となった。様々な媒体の取材を経てこの日最後の取材となったが、劇中の宮本とは対照的に普段は無口で静かなタイプだという池松壮亮は、終始穏やかに飾らぬ態度で応じてくれた。インタビュー終了後も、写真や原稿のチェックは必要ないという。最近、男優でもスタイリスト付きっきりでビジュアルを気にして、厳しく写真や原稿チェックする傾向にある中、なんという自然体!その無欲な姿勢に余裕を感じさせる。益々池松壮亮が大きく見えてきた。
(河田 真喜子)
(2019年9月15日(日) @大阪ステーションシティシネマ )
ゲスト:小栗旬、蜷川実花監督
生涯で4度の自殺未遂、5度目に愛人と心中して果てた太宰治。映画は21歳の時に起こした2度目の心中事件から始まる。相手の女性だけが亡くなって、自殺ほう助罪に問われている。後に心中未遂事件の顛末を酒席で面白おかしく語っては喝采を浴びる太宰。彼の周辺には常に出版業界人がたむろし、当代きっての売れっ子作家の新作が期待されていた。だが、苦心の小説は売れても当時の文豪たちには認められず、流行作家に甘んじていたのだ。妻の美知子(宮沢りえ)は夫の女性関係は小説を書くためのものと耐え、時に叱咤激励。太宰に憧れて近寄る女たちは、太宰が発する言葉に酔いしれ、究極の恋愛対象として、優柔不断でダメな男に溺れていく。
ハリウッド進出で大注目の小栗旬は、大幅な減量で陰のあるセクシーさを、持ち前のチャーミングさで才気あふれるモテ男・太宰治を熱演。「“あれほどセクシーでカッコ良かったら、仕方ないよね”と誰しもが納得できる存在でなければ、この映画は成立しない。それが重要なキーだった」と語る蜷川実花監督の期待に、見事に応えている。太宰が発するセリフも、太田静子(沢尻エリカ)の書簡や最後に太宰と心中する山﨑富栄(二階堂ふみ)の日記から抜粋したものだという。「口にするのも勇気が要るようなセリフばかりで、自分が発する言葉によって身動きが取れなくなるようだった」という小栗の感想に対し、「言葉が秀逸だから心に刺さることが多い」と蜷川監督。
さらに、太宰に恋する女性たちの恋愛観について蜷川監督は、「昔の人の話だが今の私達にも共通するところがある。実際に人を好きになってしまうとのめり込むあまり盲目的になって、富栄と同じように、結婚もしていないのに夫婦気取りで男の総てを把握し管理しないと気が済まなくなってしまう」と分析。さらに、「富栄の日記を読んで、“自分の気持ちと地続き”と感じて、これは絶対イケる!と思った」。構想7年、本作を撮りあげた監督の思い入れの強さを感じた。
ラブシーンについて蜷川監督は、「小栗君は初めはぎこちなかった。冒頭の海辺のシーンは最後の撮影だったが、もう慣れてきて初対面の女優さんとでもすんなりキスシーンを演じていた」。小栗も、「相手の女優さんが全開で来てくれたので助かった」と振り返り、「回を重ねるごとに普通になっていく小栗君を見るのは面白かった。モニターの前で最初に観る観客としてニコニコ・ウフフしていた」と告白した監督。
大阪について――今回の来阪はキャンペーンのためゆっくりできないようで、大阪の後名古屋へ移動。大阪には仕事でよく来ているという小栗旬は、「先日も『罪の声』の撮影で2週間ほど滞在し、好きな串カツ屋さんへ行った」という。蜷川監督は「子供連れでユニバーサルスタジオへよく行っている。この秋にも行く予定」。前日の東京での舞台挨拶後、沢尻エリカと二階堂ふみと小栗旬と蜷川監督の4人で食事した際、「このまま大阪行っちゃう?」の監督の誘いに、二人の女優も大いに乗り気だったとか。「でも衣装がない!」の返事に監督は、「ドンキで買ってあげるよ。ナースとか婦人警官の衣装をね(笑)」。小栗も「本当に来たそうだった。もう一押しでしたね」と、大阪の人気が高いことを披露。
他に観客からの質問で、結核が悪化する太宰が咳き込むシーンについて、「大変でした。吐血シーンもあり咳しすぎて吐きそうになった」と。また、どうしたら色気が出せるようになるかについては、「まず痩せることが重要かも。シャープな方が色っぽく見られるのでは?」という小栗の返答に、「あと、人生経験も重要だよね」と蜷川監督がフォロー。
発表する作品毎に進化を遂げる蜷川実花監督。今までの日本映画にはない異次元の世界観で圧倒する。本作で真骨頂を発揮した小栗旬の今後のワールドワイドな活躍に期待したい。
■監督:蜷川実花
■出演:小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ、成田凌、千葉雄大、瀬戸康史、高良健吾、藤原竜也他
■配給:松竹 アスミック・エース (2019年 日本 2時間 <R-15>)
■コピーライト: © 2019 「人間失格」製作委員会
■公式サイト: http://ningenshikkaku-movie.com/
(河田 真喜子)
2019年9月13日(金) @TOHO シネマズなんば 本館・シアター1
ゲスト ◆ 伊藤健太郎(22)、玉城ティナ(21)
今や映画界だけでなく、ドラマやバラエティ番組やCM、雑誌等でこの二人を見ない日はないというくらい引っ張りだこの伊藤健太郎と玉城ティナ。最旬の二人が文字通り体当たりの演技で思春期の抑えきれない衝動をぶつけ合う映画『惡の華』が9月27日(金)から全国公開される。押見修造原作の累計発行部数300万部という伝説的コミックを完全に実写化された作品は、誰しも思い当たる思春期の“黒歴史”を重ねては共感してしまう、少々痛々しい青春グラフィティである。
サディスティックな仲村に翻弄される主人公・春日を演じるのは爽やかな目力で魅了する伊藤健太郎。変態と誤解されることを恐れるあまり仲村と悪夢の主従関係に陥ってしまう内気な少年を、中学編と高校編とで熱演。偽りの殻を被って生きている人間を精神的に追い込んでは本性をあぶり出す強烈な役どころの仲村を、本作を含め『チワワちゃん』『Diner ダイナー』『地獄少女』と今年だけでも4本の出演作で快進撃を見せる玉城ティナが、春日への想いを秘めたせつない悪魔女子の演技で圧倒する。
9月27日の公開を前に開催された先行上映会の舞台挨拶に、伊藤健太郎と玉城ティナが登壇。よく笑うイメージ通りの爽やか伊藤健太郎に対し、会話をフォローするような対応を見せる落ち着いた雰囲気の玉城ティナ。昨年11月から12月にかけて行われた撮影についてや作品への想いなどを語ってくれた。
以下にその詳細をご紹介します。
――最初のご挨拶を。
伊藤:春日を演じた伊藤健太郎です。こうして少しずつ皆さんに観て頂ける機会が増えて嬉しく思います。大阪の皆さんにどのように受け取って頂けるのか気になるところです。今日はよろしくお願い致します。
玉城:仲村を演じた玉城ティナです。今日は朝から取材を受けているのですが、いろんな所から関西弁が聞こえてきて、「私は大阪に来ているんだな~」と実感しています。今日はよろしくお願い致します。
――大阪の印象は?
伊藤:面白い人が多い!街を歩いていても「どこで買ったの?」と聞きたくなるような面白い服着たオッチャンが歩いていたりする…好きですね~そんなの。
玉城:インタビュアーの方もリアクションが凄くて、乗せられちゃうというか、ワナにはまって本音を喋ってしまいます。
――伊藤さんは、ブルマを嗅ぐシーンの事は東京で聞かれたと思いますので、大阪ではブリーフについてお話を伺いたいです。
伊藤:まさかブリーフをはいている姿をこんな大きなスクリーンで見られるとは思わなかった(笑)。面白かったのは、衣装合わせの時にブリーフをどれにしようかと選んでいる時です。最初はサイズ小さめだったのですが、それではちょっとヤバくなるので(笑)、大きめにしました。
――玉城さんがブルマをはかせるシーンでは打ち合わせしたのですか?
玉城:はい、やっぱり男の人にブルマをはかせるのは難しいので、イチ・ニ・サン!とタイミングを合わせてやりました。
伊藤:今思うとヤバくない?そこだけ見ると(笑)。
玉城:ヤバいよね、大事なシーンだけどね。ちょっとだけブリーフがはみ出るようにしたんです、よりが春日がカッコ悪く見えるように。井口監督にもそう言われて(笑)。
伊藤:それでか~!?なんか変だな~と思ってた(笑)。
――好きなシーンは?
伊藤:いっぱいあるのですが、中でも櫓のシーンは大変でしたが、思い出にも残っているし、好きなシーンのひとつですね。とにかく寒かったんですよ。夏の設定なので、薄着の上に水をかぶったりして。
玉城:私は大部分が中学生のシーンだったのですが、後半高校生になった仲村が出てくるシーンでは演じ分けに悩みました。飯豊さん演じる常盤との3人の海辺のシーンが好きです。青春を体験できたような気分でした。
――めったに服着たまま海に入ることはないと思いますが?
玉城:沖縄ではよくあることです(笑)。
――共演者とのエピソードは?
伊藤:何だか明るかったね。井口監督の人柄もあると思うけど、11月からの撮影だったので、“だんだん”とか言ってイカやチーズを焼いてみんなで食べました。
(ふとポスターを見て、)このポスターの僕って随分なで肩じゃないですか?なで肩をポスターにするかな?
玉城:なで肩にした方が中学生らしい頼りなげな感じが出るからじゃない?
――井口監督から中学生らしさを出すように言われたのですか?
伊藤:監督から150㎝ぐらいの感覚で演じてくれと言われました。肩を丸めて小さく見えるようにしてました。
玉城:映像で見ると、全然違和感なく中学生に見えてますよね。
――演じるのに気を付けた点は?
玉城:仲村という強烈な役をやるにあたって、ビジュアルは似せたかったので、髪を切って、アニメっぽくならない程度に赤く染めました。声のトーンや目線や背筋など細かくアプローチできればと思って気を付けました。
――怖い目つきの時もあればコミカルな時もありましたが、演じ分けも難しかったのでは?
玉城:仲村は強さや怖さが前面に出てしまうので、無邪気なところや可愛らしさも出してバランスをとるようにしていました。
伊藤:中学編と高校編の演じ分けのために、変化を付けたかった。髪型・ビジュアルに気を付けました。
――高校生の時のあの髪型は凄くないですか?
伊藤:あの髪型はカツラなんですよ~自分でも気持ち悪かったです(笑)。髪切れば、もう少し胸張って歩けるのに…と思ったりもしました(笑)。
――初めて台本読んだ感想は?
伊藤:「変態」とか「クソムシ」とかの言葉が際立っていたので、これは大変な作品にチャレンジするんだなと思いました。でも、読むと共感できる部分が多くて、仲村さんと出会って春日は変わっていきますが、誰でも最初の立ち位置は同じで、そこを一番わかってもらえるように演じなければいけないなと思いました。
――玉城さんはそんな強烈な言葉を言う立場でしたが?
玉城:私は原作を高校生の時に読んでいたので、実写化すると聞いて、どんなふうに実写化するんだろうと興味を持っていました。どうせ作品に関わるのなら仲村をやりたいと思っていたので、願ったり叶ったりでした。強烈なセリフもありますが、仲村はピュアだからあのようなアウトプットのやり方しかできないのかな、と思いました。そこは特に躊躇なく入れました。
――伊藤さんはスッと入れましたか?
伊藤:全然スッとなんか入れなかったですね。めちゃくちゃ難しかったですね~。
――ご自身、M的な要素があったのでは?
伊藤:どちらかと言うとS的要素が強いと思っていたのですが、春日を演じていてそんな部分も出てきたり、出て来なかったり…?ここカットね!(笑)
――お客様は喜んで下さったと思いますが。
伊藤:(会場を見渡して)いろんな年齢層の方に来て頂いてますね?
――皆さん、それぞれに思春期がおありだったと思いますので、いろんな事を思い出されたのではないのでしょうか。
伊藤:映画を観て、今日僕たちがお話ししたことを分かって頂けたら嬉しいです。映画の良さをもっともっと広めていけたらいいなと思っています。公開は9月27日。2度3度と映画館へ足を運んで頂けるようお願い致します。本日は本当にありがとうございました。
玉城:一足先に観て頂いて、皆さんの感想をお聞きしたかったのですが、是非SNSとかで教えて下さい。何かひとつでも心に残るものがあれば嬉しいです。一年前、伊藤さんも私もいろいろな思いを込めて作った作品です。どうかよろしくお願い致します。
【STORY】
山々に囲まれた閉塞感に満ちた地方都市。中学2年の春日高男(伊藤健太郎)は、ボードレールの詩集「惡の華」を心の拠り所に、鬱々とした日々を過ごしていた。ある日、密かに憧れている佐伯奈々子(秋田汐梨)の体操着を教室で見つけ、思わず匂いを嗅いで、そのまま持ち去ってしまう。そこを目撃していたクラスでも恐れられている仲村佐和(玉城ティナ)に弱みを握られ、悪夢のような主従関係に陥ってしまう。仲村に支配され追い詰められた春日は、自己崩壊と絶望の果てにとんでもない事態に巻き込まれていく……。
【監督】:井口昇 (『ヌイグルマーZ』『ゴーストスクワッド』『覚悟はいいかそこの女子。』)
【脚本】:岡田麿里
【原作】:押見修造「惡の華」(講談社『別冊少年マガジン』所載)
【出演】:伊藤健太郎、玉城ティナ、秋田汐梨/飯豊まりえ
【配給】:ファントム・フィルム/2019 年/日本/127 分
(C)押見修造/講談社 (C)2019映画「惡の華」製作委員会
【公式サイト】http://akunohana-movie.jp/
(河田 真喜子)
病院で最後を迎えるか、在宅で終えるか、人それぞれだが、カメラでその様子を捉えたドキュメンタリーがNHK地上波とBSで放送され、好評を博した。
もっぱら阪神や東日本など大震災報道を手がけ「命」をテーマにしてきた下村幸子監督は次に“終末医療”を取り上げた。「NHKスペシャルで放送された素材を映画にしたのはより多くの人に見てもらいたいから」にほかならなかった。「私のライフワーク。映画館で見てもらって、観客に問いかけたい」と語る言葉には説得力があった。
自ら現場に泊まり込んで監督、撮影もこなした「人生をしまう時間(とき)」(NHKエンタープライズ)は、カメラが臨終の場に付き添い、寄り添って見届けた稀有な作品。厳粛な死を身近に捉えながらも、生活の中にある“死ぬということ”を明るく見つめた。こんな映画は見たことない。何千本と映画を見てきた身にはお芝居の死は慣れている。だが、人が目の前(画面の中)で「息絶える実録もの」を見るのは初めての経験。これには驚いた。
超高齢化が進む日本、国は終末医療の場を病院から自宅へ移す政策を取った。家族に看取られ、穏やかに亡くなる「自宅死」に関心が高まる。だが“理想の最期”には厳しい現実も立ちはだかる。下村監督の前に現れたのが埼玉県新座市の「堀之内病院」の小堀鷗一郎医師80歳。文豪・森鴎外の孫で東大病院の外科医で手術の名人だったが、たどり着いたのが在宅の終末期医療だった。
型破りな小堀医師が一方の主役でもある。ざっくばらんで経験豊富。患者への気配りを忘れず去り際には「また来るからね」と付け加える。そんな小堀医師の特徴を下村監督はひと言で「人間力」という。ズバリ「小堀医師と在宅医療チームに密着した200日の記録」である。患者と家族とともに様々な難問に向き合い、奔走する医師や看護師、ケアマネジャーたちは“一人の人生の終わり”に何が出来るのか。映画はまさに命の現場からの“生中継”でもある。
映画は9つのエピソードで綴られる。いずれも身近な問題として「いつか通る道」と背筋が伸びる思いだ。すべてが近しいテーマなのだがとりわけ、70代の夫婦が103歳の母親を介護する(第1章)、78歳の母親が53歳の子を看取る(第2章)は切実。中でも、胸に響いたのは末期の肺がんを患う父親と、見守る全盲の娘のくだり。父親は妻が脳梗塞で倒れた後、娘のことを思って在宅での闘病を希望した。「このまま(病状が)持ち直してくれれば」という娘に小堀医師は「今が持ち直している状態。今みたいな日が1日でも長く続けばけっこう」と釘を刺す。父が死に向かっていることを娘は本当に分かっているのか、と疑問に感じている。
医師は父親に「庭になる百目柿を取りに来た」といい、父親は「まだ青いよ。もう少し匂ってから」という。いよいよ臨終の場、娘は父親の息を確かめ、文字通り息絶えるまで「喉仏が動かなくなって」死んだことを娘が確かめる。小堀医師が「死亡時間」を記入して彼の終末医療が終わった。
そこには日本人がいつしか忘れてしまった家族ならではの温かい絆があった。名匠・小津安二郎監督が晩年、繰り返し描いた宝物“日本の家族”は最後の「東京物語」では崩壊の兆しも予感させたが、この臨終の場面に引き継がれたようだった。ラスト、百目柿がいくつもなっているアップの場面は命は終わっても家族の思いは終わらない、という象徴ではないか。
■2019年 日本 1時間50分
■監督・撮影:下村幸子
■小堀鷗一郎、堀越洋一
■コピーライト:©NHK
■公式サイト: https://jinsei-toki.jp/
(安永 五郎)
(2019年9月9日(月)@梅田ブルク7)
ゲスト:池松壮亮(29)
「痛すぎるだろう、そんな愛は…」と思わず引いてしまいそうになる宮本と靖子のラブストーリー。平成に入って間もないバブル崩壊直前の1990年に連載がスタートした新井英樹原作『宮本から君へ』は、昭和の熱血サラリーマンを引きずるキャラクターが、社会に底流する理不尽な試練にもめげず、七転八倒しながら生き抜く姿を圧倒的パワーで描写。昨年TV放送されたドラマで宮本を演じた池松壮亮は、22歳の時にこの原作に出会い、それ以来宮本は歴史上のどの人物よりヒーローとなったという。
ドラマでは“サラリーマン篇”が描かれたが、映画では“宮本と靖子の愛”に焦点が当てられ、その容赦ない描写にただならぬ熱量を感じとることができる。それと同時に、傷付くことを極端に避ける緩みきった現代人に“喝っ!”を入れるような痛快さで圧倒する。共演は蒼井優、井浦新、一ノ瀬ワタル、佐藤二朗、松山ケンイチ、柄本時生など、宮本を翻弄する面々も豪華版だ。
台風15号で交通がマヒする中来阪した池松壮亮が、先行上映会の舞台挨拶に単独で登壇。本作への想いや撮影秘話など、慎重に言葉を選びながらも正直に語ってくれた。単独ということもあり、映画『宮本から君へ』が持つパワフルな魅力は勿論、池松壮亮の思慮深さと奥深い人間性に魅了される内容の濃い舞台挨拶となった。
以下はその詳細を紹介しています。
――池松さんにとって思い入れの強い作品の公開を前にした今の心境は?
他の作品より時間がかかってしまい、ようやくここまで辿り着くことができました。公開されるのが楽しみな反面、ドキドキしています。個人的にも平成最後にこの作品に取り組み、こうして令和元年に公開されて、自分が辿ってきたひとつの20代最後の集大成として、皆様に届けられればいいなと思っています。
――ドラマから映画まで1年間空きましたが、宮本を演じる難しさは?
やることは確定していましたので、精神的には繋がっていました。とはいえ、そう簡単にはできないハードな役ですので、それなりの心構えや覚悟は必要でした。
――ドラマから変わった点は?
映画は2時間勝負で作られており、映画だけでも成立していますので、ドラマを見ておられない人でも大丈夫です。この前段階にドラマ(宮本のサラリーマン篇)があるのですが、あまり関係ないです。
――自分にとって宮本はヒーローだと仰ってましたが?
僕はこのように真っ直ぐに自我を持って目の前の正しさに向き合わずにきました。社会に順応しようと処世術を身に付けると同時に、自分の心も殺してきたような気がします。でも、宮本は目の前に何があろうとリスクを恐れず、清く正しい美しさを獲りにいける人です。バカでどうしようもない人ではありますが、僕にはできないことをやれる“ヒーロー”として僕は掲げているのです。
――冷静な池松さんですが最近“熱く”なったことは?
今熱いです。「何かを届けたい!」という熱い気持ちでいっぱいです。
――熱量が凄い作品ですが、現場の雰囲気は?
平成最後に取り組んだ仕事だったのですが、私だけでなく監督やプロデューサーや他の老若男女が平成を生きて来た中で、新時代への期待や不安もあり、やり残したことや罪や償い祈りのようなものを全部宮本に託したからだと思います。いろんな人たちが「最後に詰め込め!」という気持ちで作っていますので、新たな時代への大きなプレゼントになればいいなと思っています。
――青春の縮図、熱い想いは関西にも通じるものがあると思いますが、関西はいつ以来ですか?
年に1回ぐらいは来ていますよ。前回は日帰りであっという間に帰ってしまったので、今回は1泊します。この後友人と食べに行く予定なんですが、「何食べたい?大阪のうまいもんは肉か粉もん」と言われ、その二択しかないの?「肉か粉もん」以外の物を教えて下さい。
(会場から「串カツ」という声があがり)
いいですね~串カツは大好きです!
――蒼井優さんとの共演は?どんな女優さんですか?
ご存知のように凄く力のある女優さんです。とてもストレートな方で、清々しく分かりやすい方で、僕より「宮本」みたいな人です。同じ福岡出身ですが、僕なんかよりよっぽど男らしい!共演者としても仕事しやすく、何度共演しても新鮮に感じられる女優さんです。本作でもその新鮮さが出ていると思います。
――蒼井優さんとの共演は、「頼もしくもあり、救われた」と仰ってましたが、どんなところでしょう?
宮本と靖子はお互い着火し合いながら相乗効果を生み出しています。時々とんでもない方向へいくような関係ですが、蒼井さんはもの凄くパワーのある人ですので、彼女が投げたボールをそれ以上のパワーで投げ返さなきゃならなくて、共演するのはとても大変です(笑)。でも、結果的には映画のためになっています。お互いプッシュし合ってできたシーンも沢山ありますので、どうかお見逃しなく。
――これからご覧になる皆様へのメッセージを。
2時間、宮本の生き様をたっぷり堪能して頂ければ嬉しいです。自分の生き恥も含め、宮本の力を借りて、新しい時代を迎えた皆様へのプレゼント、もしくはラブレターになれればいいなと思っております。本日はどうもありがとうございました。
串カツを食べて帰ります!(笑)。
【STORY】
文具メーカー「マルキタ」で働く営業マン宮本浩(池松壮亮)は、ある喧嘩で負傷して上司に叱られている。愛想良くできない上に気の利いたお世辞も言えず、手柄を同僚に奪われるなど、営業マンとして四苦八苦していたが、なぜかこの日の宮本は晴々しい顔をしていた。それは中野靖子(蒼井優)との愛を不器用ながらも貫けた、初めて感じる男としての自信だった。そこには、語るもせつない宮本の悪戦苦闘の日々があったのだ。
痛々しい程の究極の愛に挑む宮本。「靖子は俺が守る!」と宣言したものの靖子を襲った悲劇に無力な自分を責め、そして絶対敵わない障害に挑戦する!……リスクを恐れず真っ向勝負に挑む宮本の情熱と誠意は、観る者を奮い立たせ、人を愛する覚悟を教えてくれているようだ。
(2019年 日本 2時間9分)
■出演: 池松壮亮、蒼井優、井浦新、一ノ瀬ワタル、柄本時生、 星田英利、古舘寛治、佐藤二朗、ピエール瀧、松山ケンイチ
■原作: 新井英樹『宮本から君へ』(百万年書房/太田出版刊)
■監督:真利子哲也 脚本:真利子哲也/港岳彦
■配給: スターサンズ/KADOKAWA 【R15+】
■コピーライト:(C)2019「宮本から君へ」製作委員会
■公式サイト: https://miyamotomovie.jp/
(河田 真喜子)
(2019年9月8日(日)@なんばパークスシネマ)
ゲスト:加藤雅也(56)、中村ゆり(37)、松本利夫(44)、中山こころ(26)、和泉聖治監督(72)、中野英雄プロデューサー(54)
9月6日(金)から全国公開されている映画『影に抱かれて眠れ』は、今どき珍しく知的なクールさに魅了される作品である。横浜の街を舞台にヤクザな闇世界を描きつつ、弟分の難儀を助け、惚れた女の最期に光を灯した純愛と粋な生き様の男の物語。ハードボイルド作家・北方謙三原作、講談社創業100周年記念出版作品「抱影」が映画化されたもの。その影の中には、街の兄貴分として慕われる画家の、優しさに裏打ちされた熱くて強い想いが潜んでいる。ハードボイルドというよりフレンチノアールのような悲哀に満ちた余韻が印象的な映画だ。
9月8日(日)、なんばパークスシネマの舞台挨拶に主演の画家役の加藤雅也に、弟分にEXILEのメンバー・松本利夫と、密かに想いを寄せる女医役の中村ゆり、『相棒』シリーズの代表監督の和泉聖治監督、今回プロデューサー業に徹した俳優の中野英雄、そして急遽指名された「金髪のちんちくりん」役の中山こころが登壇。映画を観終えた観客の前で撮影秘話や作品に込めた想いを語った。
台風15号の接近で戦々恐々としている関東方面からやってきたゲストたちは、暑い大阪にやってきて、まずは大勢の観客にお礼のご挨拶。
――ハードボイルドについて?
加藤:ハードボイルドは日本では作りにくい状況の中、一所懸命に作った作品です。一人でも多くの方に観て頂いて、これからも作り続けたいと思っておりますので、応援の程宜しくお願い致します。
中村:不器用ながら肩を寄せ合って生きているような、ちょっとノスタルジックな雰囲気の素敵な作品です。公開できて本当に嬉しく思っております。
松本:今回ハードボイルド映画ということで、辞書などで調べてみたのですがピンと来ませんでした。でも、加藤雅也さん演じる主人公の生き様を見ていると、抽象的な捉え方なのかな?と思いました。今日は皆さんが観終えた後のトークなので話しやすいと思います。映画の中では僕だけが生き残っていますので、今日も僕だけが生き残って帰ろうかなと思っております。(笑)
中山:すみません、急遽登壇させて頂きました。緊張して何言っていいか分かりませんが、よろしくお願いします。
和泉監督:静かな流れの中で始まる映画なのですが、その中で少しでも熱いものを感じ取って頂けたら嬉しいです。
中野プロデューサー(以降、中野P):若旦那が演じた役は僕がやりたかったんです。でも、監督が“若い方がいい”と仰って若旦那になったんです。
――昨日の東京・横浜の舞台挨拶と本日の大阪との熱気の違いは?
中野P:東京と変わらぬ熱気です。
加藤:(急に関西弁で)僕はバリバリの関西人ですんで…
松本:あれ?昨日と話し方が変わってません?
加藤:いや、いつもこうやで!何言うてんねん、あれは仮の姿や!(笑)
中村:今日は私も関西弁で喋ります。関西での舞台挨拶にはよく友達が来てくれるんですけど、いつも「よう猫被ってんな~」と言われ、結構プレッシャーを感じてます。
松本:昨日はお二人とも標準語でしたよ。
加藤:俺にとっては関西弁が標準語やで(笑)、昨日のは方言や!
――大阪に来られるのは久しぶりですか?
加藤:しょっちゅう来てますよ。TVドラマの撮影や、それと去年から奈良の観光大使になったしね、関西へはよく来てます。最近大阪での舞台挨拶があまりないので、もっと増えたらいいなと思ってます。関西弁で喋るとノリが違うじゃないですか?楽屋の弁当も「551」やったしな!?あれびっくりしたな?
中村:「551」はお土産によく買って帰るので、実はよく食べてるんです。
――皆さん息ぴったりな感じですが、撮影中は?
和泉監督:遠くから見てると子供が喋ってるように楽しそうにしていました。でも、現場に入ると顔が変わっちゃいますけどね。
――兄貴分の加藤さんと弟分の松本さんは今回が初めての共演だそうですが?
加藤:会ってすぐに距離は縮まりました。松本君がよく話しかけてくれるんで。
松本:いえいえ、逆なんです!加藤さんの印象はダンディな人というか、いつも家ではガウンを着てワイン片手に暗い部屋の中でクラシック音楽を聴いているような…。
加藤:そんな奴おらんやろ~、往生しまっせ!(笑)
松本:3人の関係性の中で慕う立場の男としては、裏で親しみのコミュニケーションをどうやってとろうかなと思っていたのですが、逆に気軽に話しかけて下さって、すぐに仲良くして下さいました。結構雅也さんはEXILEの他のメンバーたちとも共演されていますので、その話題から話しかけて下さったんです。
加藤:「MATSUぼっち」(TV番組)見てるよ~!とかね。
松本:ありがとうございます!
――撮影中のトーンと違うと思うのですが、切り替えはどのように?
加藤:人間関係を埋めたら芝居はしやすい。プロの俳優となると腹の探り合いになるのですが、話ができたら後は自然と演技を進められました。
――中村さんは加藤さんとの共演で印象に残ったことは?
中村:加藤さんに抱いていたイメージが崩れてしまって…
加藤:えっ、崩れたん?
中村:いえいえ、いい意味で! だって、こんなローマ彫刻みたいな顔の人はクールなのかなと思ってたら、同じ関西の人ということもあって、失礼かもしれませんが「近所のお兄ちゃん」みたいな感じでした。申し訳ないけど全く緊張せずに演じられました。
――ホテルで二人だけのシーンでは緊張感がありましたが?
中村:あのシーンは、好きな人に触れてもらえず、やっと二人きりになれたというのに気持ちを抑えるシーンでした。
加藤:周りにはいっぱい人おったけどな(笑)、裸にならなあかんし、大変やったな。
――北方謙三さん原作の映画化でしたが?
和泉監督:北方先生とは同世代なので、昔から尊敬と憧れを抱いていました。実際の先生はとてもダンディな方で、先生の原作本なんですが「映画は映画で好きに撮って」と仰って下さり、とても楽な気分になりました。
――お気に入りのシーンは?
和泉監督:最初台本にはなかったのですが、信治がアルバイト中に信治を捨てたお姉さんを見つけて追いかけるシーンです。あの街にいたらそんなシーンを撮りたくなったんです。そんな事言うと、他の俳優さん達に怒られちゃいますけど(笑)。
――仲のいい皆さんですが、キャスティングについては?
中野P:皆さん一流の俳優さんですが、それに音楽畑の人をプラスして、さらに和泉監督が撮るとなるとどうなっていくんだろうと思ったんです。僕的にはドンピシャのキャスティングとなりました。
――音楽畑の人の感性とは?
中野:いい俳優さんて歌手もされている人が多いので、歌う時の感情の作り方が上手いような気がします。若旦那もAK-69も初めての映画出演でしたし、松本さんも演技を勉強されていたんで、とてもいい味を出してくれました。
――喫茶店のシーンはアドリブだったとか?
松本:はい、ほぼほぼアドリブで演じました。カトウシンスケさんとは初対面だったのですが、それがいい意味でやりやすかったです。お互い仕掛けてきてましたね~。
――そこに中山さんが「ずっと見てる人」を演じてましたね?
中山:はい、監督に「ガラスに鼻を付けてずっと見てるように」と言われました。あの時、「金髪のちんちくりん」と松本さんに言ってもらえたんです。
松本:中山さんとも初対面でコミュニケーションをとれてない状態で撮影インしたからこそ、正直に思ったことを言えたんだと思います。
中山:余計ひどいじゃないですか!?(笑)
――苦労されたシーンは?
加藤:若旦那との対決シーンです。「これ芝居なんやけど、この人本気で刺してくるんちゃうか?」と怖くなるほどの迫力でした。
和泉監督:あのシーンの撮影は夜中に終わったのですが、僕としては朝まで撮りたかった。
加藤:本番になったらスイッチが入る人もいるので、若旦那はどっちかなと分からなかったんで、特に怖かったです。
――最後に?
松本:6日から公開になりましたが、これから全国順次公開となりますので、皆様からのお力を頂けたらと思います。
中村:楽しい舞台挨拶になりました。男気のある映画ですが、女性の方にもぜひ観に来てほしいと思っております。
中山:人前で喋るのは初めてなんですが、「漫才」が見られて楽しかったです。ありがとうございました。
加藤:男くさい作品が少なくなってきておりますが、引き続き作っていけるように願っております。皆さん、宣伝の程お願い致します。
中野P:今日は本当にありがとうございました。
和泉監督:ノアールの作品を今後も作っていきたいので、皆さんよろしくお願い致します。
映画の中の加藤雅也は、白髪の目立つ老けメイクで喜怒哀楽を最小限に抑えたクールな表情が深い人間性を感じさせていた。だが、大阪の舞台挨拶では漫才のような掛け合いで、劇場全体を笑いで包んでくれた。さすが、関西のノリを熟知した関西人ならではの舞台挨拶となった。和泉聖治監督も、『相棒』シリーズの代表監督として有名だが、映画にTVと制作本数を見ると驚くような数である。そんな大ベテランが丁寧な職人技で手掛けた「ノワール映画」は、男女を問わず誰の心にも響くヒューマンドラマとして楽しめる感動作です。
★作品紹介はこちら⇒ http://cineref.com/review/2019/09/post-989.html
(2019年 日本 1時間48分)
■原作:北方謙三(「抱影」講談社文庫刊)
■監督:和泉聖治 脚本:小澤和義 プロデューサー:中野英雄
■出演:加藤雅也、中村ゆり、松本利夫、カトウシンスケ、若旦那、熊切あさ美、余貴美子、火野正平、AK-69 他
■主題歌:クレイジーケンバンド「場末の天使」(ダブルジョイ インターナショナル/ユニバーサル シグマ)
■配給:BS-TBS
■コピーライト:(C)BUGSY
■公式サイト: http://kagedaka.jp/index.html
(河田 真喜子)
(2019年9月4日(水)TOHOシネマズ梅田)
登壇者:草彅剛、市井昌秀監督
『クソ野郎と美しき世界』(18)のヒットも記憶に新しい草彅剛と、『箱入り息子の恋』(13)の市井昌秀監督が初タッグ!市井監督が 12 年間あたためてきた“両親への想い”をヒントにしたオリジナル脚本を映画化した『台風家族』が9月6日(金)よりTOHOシネマズ梅田他で3週間限定ロードショーされる。
両親が銀行強盗で2000万円を奪い、失踪してから10年が経ち、いまだに行方知れずの両親の仮想葬儀のために集まった、長男の小鉄(草なぎ剛)と妻の美代子(尾野真千子)、娘のユズキ(甲田まひる)、長女の麗奈(MEGUMI)、次男の京介(新井浩文)。末っ子の千尋(中村倫也)が現れぬまま始まった葬儀は、何事もなく終わり、財産分与が始まるかのようにみえたが…。両親失踪の謎を抱えながら、財産は譲らないと主張する小鉄の兄弟も呆れるクズっぷりをはじめ、次々に新たな展開を呼ぶ本作の珍騒動から、それでも憎めない家族の姿が浮かび上がる。
9月4日、TOHOシネマズ梅田で開催された『台風家族』舞台挨拶付先行上映会では、主演の草彅剛と市井昌秀監督が登壇し、「ツヨポン」という大歓声に感動の面持ち。公開の嬉しさで空回り気味だという草彅は、「カミカミ王子のつよっちゃんです」と場を和ませながら、「お客さんに見てもらって映画が完成するので、いつも以上に歓声を噛み締めています」と感動が止まらない様子で挨拶。市井昌秀監督も「無事9月6日から公開できることになり、スタッフだけでなく、この公開を応援してくださったみなさんのおかげです。こんなにたくさんの人がいらっしゃるということが当たり前ではないことを身に沁みて感じています」と感無量の表情で、一言一言噛み締めながら挨拶した。
昨年の夏、栃木で最高気温を記録する酷暑の中撮影したという本作。「やっているときはこの映画大丈夫かなと心配でした。内容をよくわからずやっていたパターンだったけれど、出来上がった作品を見ると、市井監督すごいじゃないかと思って、監督を誤解していたことを反省しました」と草彅が言えば、市井監督は「天才役者の草彅さんがいますから。ちょっとどころじゃない喧嘩のシーンを、長回しで撮ったのですが、だんだん本人自身が喧嘩をしているみたいで、脂汗が出てくるのを狙っていました」と演出の手の内を明かした。
原作および脚本も執筆した市井監督は、草彅がキャスティングされてからは主人公、小鉄を当て書きしていることに触れ、「草彅さんが演じたことがないのではないかという、人間誰もが持っている汚い部分も書いています。セリフも、こんなセリフを草彅さんが言ったら面白いなというものを書きました」。草彅も小鉄役は今までで一番クズでめちゃくちゃしつこい役と断言しながら「そのクズさが、最後に大きな感動を生み出すような流れになっています。一番しつくこて、憎たらしい。その辺は大いに笑っていただけると思います」と愛すべきクズっぷりの小鉄役に自信をにじませた。
くしくも、この日は東京ドームでジャニーズ事務所社長・ジャニー喜多川さんのお別れ会が開催されたが、草彅は映画公開の喜びを語ると同時にそのことに自ら切り出し、
「今日は東京でジャニーさんのお別れ会があります。今の僕があるのはジャニーさんのおかげだと思っています。それぞれの場所からジャニーさんへの感謝の気持ちを忘れずに……(少し声を詰まらせ)たくさんのことを学んだので、これからもジャニーさんの教えを胸に抱いて、エンターテイメントの世界を歩んでいきたいと思います。ジャニーさん、本当に安らかにお眠りください。気持ちを強くもって、これからもエンターテイメントの世界で頑張っていきます!」と感謝の言葉を述べた。
さらに、『台風家族』の劇中で、小鉄が一人、個性的なダンスを踊るシーンについて「映画もすごくエンターテイメントになっていた、監督に打ち合わせで考えてきてと何度も言われていましたが、(ジャニーさんの)YOUやっちゃいなよ精神で、その場で考えて踊りました。小さい時からポンとステージに出されて頑張ってきた僕らなので、監督の要求に応えられると思ったんです」。市井監督も、「僕は考えてきたと思っていたんですけど(笑)本当に素晴らしいダンスでした」と絶賛。最後に「公開できたことが本当にありがたいです。いよいよ公開ですが、12年間ずっと待ちに待った日が9月6日になるので、本当に多くの人に見ていただきたいと思っています。よろしくお願いします」と公開にこぎつけた本作への思いを熱く語った。先が読めない展開にハラハラドキドキの、ブラックユーモア溢れる家族映画『台風家族』。最後に出るのは笑いか、涙か。ぜひ、劇場で確かめてほしい。
(2019年 日本 108分)
監督・脚本:市井昌秀
出演:草彅剛、MEGUMI、中村倫也、尾野真千子、若葉竜也、甲田まひる、長内映里香、相島一之、斉藤暁、榊原るみ、藤竜也他
公式サイト → http://taifu-kazoku.com/
(文:江口由美、写真:河田真喜子)