レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2020年11月アーカイブ

total (2).JPG

2020年11月29日(日)13:50の回上映後 @大阪ステーションシティシネマ

 

映画『佐々木、イン、マイマイン』の関西公開を記念して11月29日、大阪ステーションシティシネマにて舞台挨拶がおこなわれ、内山拓也監督、出演の細川岳、萩原みのり、森優作が登壇した。


同作は、鳴かず飛ばずの日々を送る27歳・悠二が、高校時代に圧倒的な存在感を放っていた同級生・佐々木と仲間たちとの日々を思い起こしながら、現在の自分と向き合っていく物語。


hosokawa (2).JPG出演者の細川は大阪出身。今回は、作品のキーマンである佐々木役だけではなく、原案と脚本も担当。「登場人物全員にモデルがいて、これまで出会ったいろんな人物をハイブリッドしてキャラクターを作りました」と自分の青春時代をモチーフにストーリーを練り上げたという。


悠二の同棲相手・ユキに扮した萩原は、「細川さんから『出て欲しい』と直接オファーをいただきました。あるオーディションを受けたとき、岳くんも一緒で、彼の芝居に一目惚れをしたんです。でも名前を聞きそびれて、眠れない日々を過ごしていました。本当に片思いみたいな感じでした。そのあと、自分の主演映画が公開されたとき劇場へ観に来てくれて、走って追いかけて名前を聞きました。『この役者を知っていたい』と思い、連絡を取るようになりました。そして、『ユキ役をお願いしたい』と言われました」と経緯を話す。


hagiwara (2).JPGのサムネイル画像

 


 

細川は、萩原の芝居について「萩原さんの主演映画『お嬢ちゃん』を観に行ったとき、『名前を教えてください』と声をかけてもらったんです。萩原さんは、誰にも媚びていない芝居をするところが魅力的。『お嬢ちゃん』を観たとき、ユキ役は萩原みのりがいいと思って、内山監督に相談しました」と絶賛した。

 


 

 

mori (2).JPG

脚本がまだ形になっていない段階から今作に関わってきたという森は、「萩原さんが出てくれるなんて思っていなかったし、藤原季節が主演をつとめるとか、もう『すごいな』って。まるでお客さんみたいな感じです。内山監督、細川くんの熱がそうさせたのではないでしょうか」と、全国公開されるほど大きな展開になったことにびっくり。


悠二役の藤原季節について、萩原は「5、6年前くらいから友だち。仕事をしたのは初めてですが、東京のお兄ちゃんみたいな人。お互いにすごく格好悪い瞬間も知っていて、かなりさらけ出してきた。そうやって今まで積み重ねてきた1日、1日がちゃんと画に移れば悠二とユキになると思っていました」と、自分たちの関係性を信じて芝居をしたという。


細川は、佐々木役に関して「自分とはあまりにもかけ離れていつ人物。でもそのおもしろいやつを映画の中で超えなきゃいけなくて、マネているわけではないけど、それを超える作業がうまくいかなくて、リハーサルでも佐々木人達していなかった。それでも季節、森くん、みんながお前は佐々木だって接してくれて。僕はそこにのっかっt流だけでよくて、そうしたらおもしろがって笑ってくれて、こうやっていいたらいいって佐々木という人物を作っていきました」

kantoku (3).JPG

 

 

 


内山監督は「この作品は僕の長編デビュー。僕含めて、萩原みのりも、森優作も細川岳が大好きなんです。彼のためならなんでもできるくらい、すごい俳優。彼の地元・大阪に舞台挨拶で来ることができてすごく嬉しい」と喜び、細川は「『佐々木、イン、マイマイン』は28年間生きてきた、僕の生き様です」と作品への思い入れを口にした。

 

 


sasaki-550.jpg


【STORY】

俳優になるために上京したものの、鳴かず飛ばずの日々を送る27歳の悠二。彼はある日、 高校時代に圧倒的な存在感を放っていた同級生・佐々木と仲間たちとの日々を思い起こ す。常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していく佐々木。だが 佐々木の身に降りかかる“ある出来事” をきっかけに、保たれていた友情がしだいに崩れ ていく。
 

監督:内山拓也
出演:藤原季節 細川岳 萩原みのり 遊屋慎太郎 鈴木卓爾 村上虹郎
配給:パルコ   2020/日本/119分
© 映画「佐々木、イン、マイマイン」
公式サイト:https://sasaki-in-my-mind.com/


『佐々木、イン、マイマイン』は全国公開中。


(オフィシャル・レポートより)

★DSC05109 (2).JPG

 

草彅剛主演、内田英治監督オリジナル脚本映画『ミッドナイトスワン』公開から8週目にして依然として100館近い上映を続けるロングランヒットとなり、大ヒット公開中です!!

本作は、トランスジェンダーとして日々身体と心の葛藤を抱え新宿を舞台に生きる凪沙(草彅)と、親から愛を注がれず生きるもバレエダンサーを夢見る少女・一果(服部樹咲)の姿を通して“切なくも美しい現代の愛の形”を描く「ラブストーリー」。

日本映画界が注目する『下衆の愛』の俊英・内田英治監督が手掛けるオリジナル脚本に、唯一無二の存在感を放つ草彅剛が初のトランスジェンダー役として挑む。さらに、オーディションでバレエの才能を認められ、ヒロインを射止めた服部樹咲が本作で女優デビューし、真飛聖、水川あさみ、田口トモロヲが華を添える。ヒロインが躍る「白鳥の湖」「アルレキナーダ」などの名作に乗せて、主人公の母性の目覚めを“現代の愛の形”として描く、常識も性も超えた、感動作が誕生しました。

この度、「今年一番」「ミッドナイトスワンが頭から離れません」「またこれからも追いスワンします!」などといった皆さんからの温かいご声援にお応えし、まだご覧になっていない方々にも思いを届けるため、9月27日に行った舞台挨拶以来、2度目の舞台挨拶を実施し、主演の草彅剛、内田英治監督、音楽を担当した渋谷慶一郎が登壇いたしました。本作を応援してくださっているファンの前にて舞台挨拶を行い、改めて本作への思いや、撮影秘話、音楽製作の裏側などを語り、その模様を全国137館へ生中継いたしました。
 


【日時】 11月29日(日) 13:00~13:30 ※本編上映前イベント
【場所】 TOHOシネマズ六本木ヒルズシアター7 (港区六本木6-10-2)
【登壇者】 草彅剛(46)、内田英治監督(49)、渋谷慶一郎(47)
【MC】 武田祐子



★DSC04968 (2).JPG冒頭の挨拶で大ヒットとなった感想を訊かれた草彅は「本当にうれしいです。最初に監督から”全然、後ろ盾のない作品なんですよ”って後ろ向きな話をされていたのですが、出来上がったときに”サイコーですよ”って伝えたんです。ね?監督、大丈夫だったでしょ?」とコメント。

「オリジナル作品でマイノリティ的な要素が多いので、(大ヒットは)難しい映画のかもしれません。でも、それがいい。大ヒット的要素がないから、むしろいいと思いました。脚本を読んだときに気づいたら涙が出ていて、自分がなんで泣いているのか分からなかったけれど、それがすごく良いって感じて。そういう気持ちを映像、演技で伝えたいと思いました。こうやってたくさんの方に観ていただけたということは、その気持ちが伝わっているんだなと思っています。監督、渋谷さん、”カムサハムニダ”」となぜか韓国語でお礼をする草彅。

ふと、渋谷のほうを見て「今日はなんか、衣装がかっこいいですね。ハードな感じで、”ミッドナイトスワン“をイメージしたのでしょうか?」と問いかけたところで、「なんだかうれしくて、僕だけ喋っちゃいました。すみません(笑)」とニコニコ顔の草彅は「どうですか、大ヒットの感想は、お二方!」と質問を投げる。


★DSC05109 (5).JPG内田監督は「いい感じの映画になると思いましたが、出来上がってからは、消極的な発言を繰り返していました。最初の舞台挨拶のときにも劇場でスタッフさんから”大ヒットおめでとうございます”と言われても、なんか素直に受け止められなくて。でも、ようやく最近、認識できるようになってきました」と満足の様子。草彅は「公開10週目で大ヒット舞台挨拶なんて、芸能生活で初めてかもしれません。いや、あったかな? やっぱり、ないな。初めてです」とおどけながらも、「代表作はミッドナイトスワンになるなんて、最初冗談半分で言っていて、ハッシュタグ(#草彅剛代表作)なんてつけていたけれど、本当に代表作になった感じがします」とご機嫌な様子。


渋谷は「(大ヒットについて)本当?というノリでした。サントラのお話をいただいたときにも、”サントラって売れないんですよ。ハリウッドの超有名映画でも200枚しか売れないんです”って言われて。なので、1000枚売れたらお祝いをしようって話をしていました」と明かす。「発売日までひた隠しにしていて、いざ、発売すると告知したら1分に3枚ペースで売れ続けて。大作でも200枚しか売れないなら、1日20枚くらい梱包して出荷すればいいなんて思っていたのに、1日で1000枚売れちゃって、売り切れ状態になりました。スタッフが1人しかいないから、僕も梱包を手伝いました。でも、そういう話をすると、なんか苦労していますみたいなのを狙っている感じで嫌でしょ。なので、売れていることも、売り切れていることもひた隠しにして、追加オーダーをとっていました」と裏話を告白。

★DSC05109 (4).JPG

さらに「スタッフ1人と僕で梱包しているから、なかなかお客様のもとに届かないこともあり、”詐欺ですか?”という発狂めいたメールも来ました(笑)。売り切れを明かすと、オーダーが止まりそうなので、だんまりとオーダーを受け続けましたが、現在は、アマゾン、タワレコなどでご購入いただけます。”追いスワン”とあわせて、”追いCD”もお願いします」と呼びかけると、会場は大きな拍手に包まれた。


”追いスワン”という方が本当に多くて、うれしいです。みなさん、ありがとう!」と会場に向かってお礼をする草彅。この日も会場には”追いスワン”組がたくさんいることを受け、「口コミで広がっている映画です。いい言葉だと思いませんか、”追いスワン”って」とニコニコ。「監督は”追いスワン”しましたか?」と草彅がたずねる横で、渋谷がスマホを取り出し、何かしている様子。「”追いCD”していただけるように、今のやりとり、しっかり録音してストーリーにあげました」と微笑み、笑いを誘う。

内田監督が「”追いスワン”もちろんしました。それより草彅さんは最初”追いスワン”を平仮名で”おいスワン”って書いてましたよね」とツッコまれた草彅は「今度は間違えません(笑)、”追いスワン”ね」と照れ笑い。「1回目より2回目、2回目より3回目のほうが感動するという感想を多く見かけます。それが、”追いスワン”につながっているんだと思いました。観るたびに新しい感動がある。内容がわかっているのに泣くのって、本当に不思議ですよね。新しい感動が湧き出る感じなのかな」と熱弁。


劇場での鑑賞が初めてという渋谷が「僕は、今日が初の”追いスワン”です」と胸を張ると「初なんだから、”追いスワン”じゃない!」と笑いながらツッコミを入れる草彅に対し、渋谷は「音楽を作るときには、映像を舐めるように観るんです。なので、作り終わったあとはしばらく観られない状態になります。試写で初めて観たときに、ぜひ映画館で観たいと思いました。ちょうど今日の舞台挨拶の話が来たので、ここで”追いスワン”しようって決めていました」と返答した。

音のない映像を観るのは根気がいると明かした渋谷は、本作の音楽作りは「監督が信用してくださり、まかせていただけました。これはダメみたいな話は一切なかったです」と振り返った。テーマ音楽が流れてくると草彅の映像が目に浮かぶという声も多い本作。草彅は「本当に印象的な音楽ですよね。メロディもすごく好きです」と笑顔を浮かべた。


ここで、MCからカイロ国際映画祭・パノラマ部門での上映決定や、台湾(12/31公開)、香港(2021年公開)での公開情報、小説の売り上げは8万部を突破し、サントラも売れている状況を改めて伝えられた3人。内田監督が「僕も梱包手伝いに行きます!」と手を挙げると、草彅が「梱包しないとね。俺たち梱包ブラサーズ! こんぽ(う)、こんぽ(う)、ブラザー、ブラザー」とノリノリ。内田監督が「小説も読んでもらえて、音楽も聴いてもらえる。全方位的な映画って本当に珍しいと思います。こうなったら、せっかくなのでたくさんの方に観てほしいと思います」と前向きなコメントをすると、草彅は「いろんなところから楽しんでいただける奇跡的な作品」と改めて『ミッドナイトスワン』の魅力をアピールした。


撮影秘話について訊かれた草彅は「取材でたくさん話したので、新しい話あるかな」と考え込む。その様子を見た内田監督は「草彅さんは、メイクのときとかよくGパン映像をチェックしていました。本当に好きなんだなって思いました」と撮影現場での草彅の様子を明かす。これに対し草彅は「監督が履いていたニューバランスの靴がカッコ良かったです。おニューでしたよね。新しい映画を撮るから、新しい靴で気合が入っているのかな?なんて思いながら見ていました」と振り返る。


内田監督は「現場ではニューバランスが楽だと聞いたので、初めて買いました。草彅さんが、凪沙の赤いブーツで苦労している横で、履きやすい靴で撮影に挑んでいました」とコメントしたところで、「これって撮影秘話なのかな?」と首を傾げる草彅。「ネタに困っていそうなので、渋谷さんに音楽誕生秘話を伺いましょう」とMCが質問を切り替える。「1週間という限られた時間で作らなければいけないので、自分のスタジオに籠もって、コンピューターから流れる映画を観ながら、ピアノで作り上げました」と制作秘話を明かす。草彅が「1週間で作ったってすごい!」と驚くと「コンビニに行くと、アイスの新商品に気を取られて集中力が切れちゃうので、コンビニにも行かず、もちろん誰とも夜ご飯も食べないような状態でした。


コロナになってみんなが外でワイワイご飯を食べられない状況になったとき、不謹慎だけど”みんなも一緒になった”って思っちゃいました」と告白。メインテーマはすんなり出来上がったことを明かし「とにかく、1週間で仕上げなければいけなかったので、全体のことは覚えていません。楽譜は1枚も書いていないことだけは覚えています」という渋谷の話に、草彅と内田監督は真剣に耳を傾ける。「最近、Twitterなどで、楽譜とか販売されているのを見かけたりするけれど、僕は書いていないんですよ。みんなが、映画を観て、音楽を聴いて、楽譜を作っているようです。そういうのっておもしろいなと思いました。演奏している動画もたくさん上がっていて、トランスジェンダーの方が弾いているのも見かけました。いろんな方が演奏している動画をたくさん見かけます。上手な人も、そうでない人もいますけどね」と悪戯っぽい笑みを浮かべ、音楽の広がりの様子も明かした。


★DSC05109 (3).JPGクリスマスが近づいているということで、今年の予定を訊かれた3人。草彅は「教えないです。プライベートなことなんで」と即答しながらも、「3人ともおじさんなんで、何も予定なんてないですよ。昨年のことも覚えていない。何かやったかな?クルミちゃんの散歩かな、多分」と振り返ると、MCが「20代なら、いろいろとありそうですけど、そうですよね。こんな質問をしてすみません」と言ったところで「バカにしないで!僕、まだ、アイドルだよ」という草彅に、この日一番の大きな拍手が送られる場面も。草彅は照れ笑いを浮かべながら「ちょっとささやかだけど、スタッフの方と密にならないよう少人数で何かやりたいですね、外で。グランピングとかどうかな。風通しの良いところで、厚着して鍋。そうだ、外鍋とかいいかも。安全を考えて、やれたらいいな」と提案した。


ここで今度は来年の抱負について訊かれた草彅。「アハハハ。わかんないですよね、来年のことなんて」としながらも「こういうときは、ちゃんと答えないとダメなんだよね。まだまだ観ていない人もたくさんいると思うので、来年も『ミッドナイトスワン』をよろしくというのはいかがでしょうか。新しいハッシュタグ作りましょう。公開10週目を迎えたけれど、まだまだたくさんの映画館で上映されているので、さらに広げていきたいと思います。トレンド入りを目指すためのハッシュタグは、シンプルに”#ミッドナイトスワン大ヒット”でいかがでしょうか。長いとみんな間違っちゃうでしょ、僕も含めて(笑)」と呼びかけると、会場から大きな拍手が。満席の会場を見渡しながら、草彅は「今日は、絶対トレンド入りを目指しましょう!」と気合を入れていた。


最後の挨拶で「今日、ここに足を運んでくださった方、そして、中継でご覧いただいている全国の方たちも本当にありがとうございます」とお礼をする草彅。「公開10週目を迎えることができて本当にうれしく思っています。年齢問わず(心に)訴えかけるものがある映画で、生きていくうえで大事な気持ちを、凪沙と一果を通して感じてもらえる気がしています。生きていくのは自由だよ、偏見や差別みたいなものがなくなればいいなという気持ちが込められていると感じていますし、そういったことを考えるきっかけになる作品になれたら、創った身としてはとてもうれしいです。世界に羽ばたいていってほしい作品でもあり、身近に感じてほしい作品でもあります。また今日から始まる『ミッドナイトスワン』を今後ともどうぞよろしくお願いいたします」と呼びかけ、イベントは幕を閉じた。

イベント終了後、草彅は「『ばるぼら』も公開中!稲垣吾郎代表作『ばるぼら』」と公開中の稲垣の映画もアピールしながら、上機嫌でステージを後にした。


midnightswan-550.jpg

【STORY】

故郷を離れ、新宿のショーパブのステージに立ち、ひたむきに生きるトランスジェンダー凪沙。ある日、養育費を目当てに、育児放棄にあっていた少女・一果を預かることに。常に片隅に追いやられてきた凪沙と、孤独の中で生きてきた一果。理解しあえるはずもない二人が出会った時、かつてなかった感情が芽生え始める。

出演:草彅剛 服部樹咲(新人) 田中俊介 吉村界人 真田怜臣 上野鈴華 佐藤江梨子 平山祐介 根岸季衣/水川あさみ・田口トモロヲ・真飛 聖
監督・脚本: 内田英治(「全裸監督」「下衆の愛」) 
音楽:渋谷慶一郎  
配給:キノフィルムズ   
©2020 Midnight Swan Film Partners


(オフィシャル・レポートより)

 

 

 
 

メイン.jpeg

 
アニメならではの表現で魅了する新時代の“ジョゼ虎”に込めた希望とは?
『ジョゼと虎と魚たち』タムラコータロー監督インタビュー
 
 お聖はんの愛称で親しまれた田辺聖子が大阪を舞台に描いた青春恋愛小説の「ジョゼと虎と魚たち」。2003年に妻夫木聡、池脇千鶴で実写映画化もされた『ジョゼと虎と魚たち』が、初のアニメーション映画として、12月25日(金)より全国ロードショーされる。
 

prof (1).jpg

 監督は『おおかみこどもの雨と雪』助監督や『ノラガミ』シリーズの監督を務めたタムラコータロー。脚本は桑村さや香(『ストロボ・エッジ』)が手がけた。新進気鋭のスタッフが集結し、“新たなジョゼ”を構築。原作とも実写版とも違う現代版の主人公恒夫は、留学してメキシコの幻の魚を一目見るために、アルバイトを掛け持ちしながら海洋生物学を学ぶ努力家の大学生。ジョゼの声を演じる清原果耶と恒夫を演じる中川大志が、不器用ながらも距離を縮めていく二人を表情豊かに体現している。梅田界隈やあべのハルカス、須磨海浜公園と関西人におなじみのスポットがモデルになって続々登場するのにも注目してほしい。
 本作のタムラコータロー監督にお話を伺った。
 
 

 

■田辺聖子さんの原作から感じた「不安を乗り越えた後の希望」 

―――元々小説をアニメ化したいと考えがあったそうですね。

 

タムラ: KADOKAWAの方から、たくさん映像作品を作っているにも関わらず、文学作品をアニメ化したものは数えるほどしかないので、社内の作品からアニメ化しようという動きが元々ありました。僕もテレビシリーズがちょうど終わり、映画をやってみたいと思っていたところだったので、KADOKAWAのプロデューサーとお会いして、まずは原作を探すところから始めました。たくさん小説を渡された中の一つがこの「ジョゼと虎と魚たち」で、そこで初めてこの作品に出会ったのです。
 
―――実写版ではなく、原作本が初めてのジョゼとの出会いであったということは、純粋に田辺聖子さんが書かれた「ジョゼと虎と魚たち」に強く惹かれたということですね。
タムラ:すごく惹かれるものがありました。短編ですし、ある意味中途半端な感じで終わってしまうのですが、逆にそこが良かった。この後に何か待ち受けているのではないかと思わせる終わり方です。ジョゼはどこかでこんな関係はいつまでも続くはずがない、今が良ければそれでいいと思っているのですが、内心は不安だと思うのです。その要素だけを取り出すと、ネガディブな辛い話に陥りがちですが、大きな物語を考えると、その不安を乗り越えると本当の幸せが待っていたりする。作り手だからかもしれませんが、そこに希望を感じたのです。この作品は前向きな形で終われるのではないかと思った。だから脚本の桑村さや香さんにも、前向きな形で終わりたいとお願いしましたね。
 
―――なるほど、そこは実写版との大きな違いですね。桑村さんと新しい『ジョゼと虎と魚たち』を作るにあたり、現代を反映させたキャラクター造詣や、原作のその後までを描いていくストーリー展開などをどのように作り上げていったのですか?
タムラ:桑原さんとは、恒夫はジョゼほどパンチの強いキャラクターではなく、すぐ身近にいるようなリアルな男の子を象徴しているねと。今の大学生の話を聞くと、割と夢が可視化されていて、結構勉強して真面目。その印象からすれば、今の恒夫はこんな感じではないかというところからスタートしました。特殊な性格をした女の子と身近にいそうな男の子が出会うのがこの話の良さですから。その際に、共通して好きなものがあればお互いに歩み寄りやすいということで、海が好きだという共通事項を作り、それならば恒夫をダイバーにしてみようという感じで話が見えてきました。
 
 
サブ11.jpeg

 

■追加取材を敢行、都市も下町も身近にある今の大阪の魅力を映し出す。

―――恒夫がイマドキなのに対し、ジョゼが祖母と住んでいた家は、昭和な雰囲気が漂っていましたね。
タムラ:時代に取り残された雰囲気を出したかったので、あえてスマホなどを持たせないようにしています。ジョゼに社会性が身についていく話にしたかったので、祖母と二人だけで暮らしている感じを出そうとして、あのちょっと不思議な家が出来上がりました。大阪の都心部は開発が進んでいる一方、数駅離れると身近なところに下町があったりするんですよね。都会に近いのにこんな下町があるというのが大阪の魅力のひとつで、ジョゼの家は大阪ではあってもおかしくないようなリアルな感覚ですよね。 
 
―――大阪が舞台ということで、梅田やあべのハルカス、海遊館に須磨海岸など関西の人には馴染みのある場所がモデルとして登場していますが、かなりロケハンをされたのですか?

 

タムラ:事前にかなり下調べした上で1泊2日の弾丸ロケハンを何度か行いました。とにかく写真を撮って、あとから使えるところを探していくことの繰り返しでした。大阪にいるスタッフの知り合いに写真を撮ってきてもらったり、カメラマンだけ行ってもらったり、何度も写真を撮ってもらっては吟味を重ねました。大阪は道頓堀を背景に使われることが多いのですが、それでは今の大阪は伝わらない。新しいところも古い町並みも両方描くように心がけました。「梅田イス」なんかは映画を作っている時に出来上がったので、これは使えるかもと追加撮影してもらい、あとから書き足しました。他にも大阪はすごい勢いで変わっていく場所もあるので、どこまで最新のものを反映させればいいのか悩みましたね。須磨海岸も追加取材をすると街灯が設置されていて、あわてて後から足しました(笑)
 
 
サブ10.jpeg
 

■好きになる過程を追体験できる作品に。

―――ジョゼと、彼女の日常生活の相手をするアルバイトの恒夫が、最初はジョゼの反発を食らいながらも、だんだんとジョゼの内面がわかり、お互いに信頼し合うようになる過程が細やかに描かれています。
タムラ:この作品で大切にしたのは、お互いが好きになる過程をちゃんと丁寧に書いてみることでした。恋愛映画は好きになってからを書くことが多いのですが、どうやって好きになるのかを追体験できる作品になるといいなと思っていました。誰がどの時点で本気で好きになったのか、それを考えるのも物語の醍醐味になっていればうれしいですね。
 
―――初めて海に行くエピソードでは駅で切符を買えずにジョゼが帰ろうとし、家にずっと閉じ込められていたジョゼと社会との壁が浮き彫りになりますが、車椅子ユーザーの方にも事前に取材されたそうですね。
タムラ:生活の仕方に関しては調べてもわからないことが多く、実際ご自宅までお伺いし見たものを取り入れさせていただきました。ジョゼの部屋に素敵なベンチを置き、そこに捕まってベッドに登るといった芝居なんかは取材のおかげですね。ただ実際に車椅子で暮らしている方々というのは当然ながら全員同じ生活スタイルではないわけです。一人一人障碍の度合いも異なりますし、性格や好みによってもちがう。そこで車椅子ユーザーのためのファッションアドバイスをされている方にもヒアリングさせていただきました。幅広い車椅子ユーザーの生活スタイルを教えていただいたことで、ジョゼならばこんな生活を送っているのではないかというのがようやく見えてきた感じです。
 
 
サブ2.jpeg
 

■大人っぽすぎる清原果耶に課した、ジョゼの精神的な幼さを表現する声の演技。

―――ジョゼの声を演じる清原果耶さんに、「もっと幼く、小学生のように」と演出をされたそうですが。
タムラ:清原さんはまだ10代にも関わらず30代の役まで演じたことがあるんですよね。それくらいとても落ち着いていて大人っぽい。オーディションでの清原さんの演技がすごく良くて、特に後半のジョゼにぴたっと当てはまる感じでした。逆に恒夫と出会う瞬間はもっと精神的に幼い感じを出し、前半と後半のギャップを表現したかったのです。対人関係を学んでいなかったジョゼは子どもっぽい接し方しかできなかったので、そのジョゼの喋り方を大人っぽい清原さんに理解してもらうために敢えて「小学生ぐらい」と伝え、精神的に幼い感じを出してもらいました。それぐらい元気を絞り出してもらった方が前半のジョゼにはまるのではないかと。どれぐらいギャップを出すかを試行錯誤するために、後半を録り終えてから、前半をもう一度録り直したりもしました。そうすることでジョゼの成長が可視化でき、前半と後半の差がジョゼ、しいては清原さんの演技の魅力になったと思います。
 
―――ジョゼ役の難しさがよくわかります。大阪出身の清原さんですが、ジョゼが喋る関西弁は、日常の関西弁より少し癖が強かったですね。
タムラ:ジョゼはおばあちゃん子なので、少し古い関西弁を喋る設定ではあるんですね。「アタイ」なんて一人称、最近の20代はほとんど使わないでしょうから。とはいえ少し癖のある関西弁は田辺聖子さんの魅力の一つなので、そこを削がないように注意を払っています。あと大阪といっても地域によって訛りが大きく異なるんですよ。清原さん自身が大阪出身だということもあり、ジョゼに魂を吹き込むためにも清原さんが納得しやすい関西弁で喋ってもらった方がいいと思い、最終的にはその方向で調整しました。
 
 
サブ5.jpeg

 

■恒夫のバランスの最後のピースは、中川大志の紳士的な声。

―――一方、中川大志さんが声を演じた恒夫は、優しさが感じられてジョゼといいコンビネーションでした。
タムラ:すごくはまったと思います。先ほどの改札のシーンで少しジョゼの背中を押さなくてはいけない時に、恒夫にはある程度リーダーシップを取りつつ、上から目線にならないというバランスを求めていて、そのバランスの最後のピースが中川君の声の演技でした。彼が本来持っている紳士的な感じが非常にしっくりきましたね。
 
―――二人のターニングポイントになる須磨海岸のシーンについてお聞かせください。
タムラ:まずは大阪の人が海を見に行く時、どこに行くのかで迷いました。知り合いにヒアリングすると須磨のあたりと言われ、大阪の人が海を見に神戸まで行くことが意外に感じたのですが、大阪の話に留まるのではなく、大阪に住んでいる人の話にするとしっくりくる。そう思って須磨海浜公園を選びました。ここは公園に入ってから浜辺が広く、海辺までは距離がある。車椅子では砂に車輪を取られて簡単には近づけませんから、それが脚本のシチュエーションに自然にはまったというのもあります。また、アニメでは海が狭く見えてしまうことがあるため防波堤を省略することが多いのですが、今作ではリアルな話になると思ってあえて描いてもらっています。駅から商店街を通るのも地図上では少し回り道なのですが、道程の景色にアクセントがある方がジョゼが目移りして楽しんでいる様子を伝えられるのではないかと。変なクジラのオブジェに気を取られるジョゼも面白いですしね。
 
―――二人がそれぞれの壁を越えようとする非常に重要なシーンでは劇中画も登場します。淡い、絵本のようなタッチで感動を誘いました。
タムラ:本物の絵本作家の方にお願いしたかったんです。ジョゼの絵を担当してくださった松田奈那子さんはほどよく抽象的な絵を描かれる方で、色彩にとても魅力があり、これならジョゼの描いた絵にしっくりくると思いました。絵本のシーンに関しては発注時は脚本だけしか用意せず、まずは松田さんに構図を作ってもらうところからスタートしました。「松田さんの思うジョゼならどんな絵を描きますか?」と問いかけながら作っていった感じですね。
 
―――今回の『ジョゼと虎と魚たち』は原作や実写版よりも、ジョゼと恒夫の二人が単なる恋愛関係というより、お互いに夢に向かい、そして自立しようとしている。すごく成熟しているなと感じずにはいられませんでした。
タムラ:原作が20代前半の絶妙な時期を描いているので、そこは変えずに今の20代ならどんな恋愛をするのかからスタートしました。アニメだと恋愛物はティーンになりがちなのですが、そうするとどうしても親が出てくる。今作では20歳を超えた恋愛物語なので親は出さずにあくまで当事者が解決する問題として恋愛を描いてみました。そこが大人っぽく見えたのかもしれません。
 
 
ポスター画像 (1).jpg

 

■ジョゼが社会性を身につけるために重要だった友人、花菜の設定

―――ジョゼが自立を目指す姿はこの作品の見せどころですね。
タムラ:ジョゼには社会性を身につけてほしかったんです。恒夫はジョゼにとってはアルバイト上の付き合いだし、異性なので微妙な距離感がある。ともすれば依存にもつながるかもしれませんし、恒夫と一緒に外に出ただけでは自立したとは言えないと思うんです。恒夫以外で友人関係ができると彼女自身の自立につながるはずで、ジョゼに友達を作ることは脚本の桑原さんにもお願いしていました。だからジョゼの自立の象徴として大事にしたのが図書館司書の花菜だったのです。
 
―――ありがとうございました。最後にアニメーションだからこそ表現できたこと、取り組めたことを教えてください。
タムラ:ジョゼの空想シーンで、人魚になって泳いでいるところはアニメらしい表現ではありますね。ただそれはどちらかと言えばわかりやすい表面的なアニメらしさです。むしろジョゼみたいに強烈な人が本当にいるかもと思えるバランスを探るのは、アニメの方が得意なのではないかと思っていました。周りをしっかり書けばジョゼをリアルに感じられますし、車椅子の女性であってもそこに目がいきすぎないバランスになるのではないか。アニメならではの時間を圧縮した表現や、一つ一つの表現のメリハリを使うことでジョゼをすごく魅力的に描けるという期待感を抱いて取り組んでいました。
 
―――アニメならではのユーモアで重くなりがちな題材を魅力的に表現していましたね。
タムラ:車椅子ユーザーの方にインタビューした時、同じ境遇の人が出る映画をご覧になるかとお聞きすると「見ないです」と即答されたんです。逆にディズニーやジブリのような作品はたくさん見るとおっしゃっていたのが印象的でした。それを聞いた時にジョゼは車椅子ユーザーの方にも見てもらいたいという希望が僕の中に生まれたんです。登場人物にご自身を重ねた時に希望を持てる。そのためには軽やかに描くことが重要でした。
(江口由美)
 

<作品情報>
『ジョゼと虎と魚たち』(2020年 日本 98分)
監督:タムラコータロー  脚本:桑村さや香
原作:田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』(角川文庫刊)
声の出演:中川大志、清原果耶、宮本侑芽、興津和幸、Lynn、松寺千恵美、盛山晋太郎(見取り図)、リリー(見取り図)
12月25日(金)より全国ロードショー
公式サイト → https://joseetora.jp/
(C) 2020 Seiko Tanabe / KADOKAWA / Josee Project
 
FT-bu-550.jpg
 

EXILE NAOTO、矯正箸を購入し役作り?土屋太鳳、
家族愛に思わず涙!!

寺門ジモン監督の誕生日を祝い
5.8kgの巨大ローストビーフも登場!


■日時:11月21日(土)10:55~11:35※上映後舞台挨拶
■場所:丸の内ピカデリー1(千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン9F)
■登壇:EXILE NAOTO、土屋太鳳、石黒賢、寺門ジモン監督(敬省略)
 


構想から7年という長い年月を経て完成した寺門ジモン初監督作品『フード・ラック!食運』の公開舞台挨拶に、EXILE NAOTO、土屋太鳳、石黒賢、そして寺門ジモン監督が登壇した。

――最初のご挨拶。
寺門監督は「こんなコロナ禍に来ていただきありがとうございます。映画が上映できるだけでも嬉しいです。日本には美味しいものを食べたくなるような映画が少ないなと思っていて、そんな映画を撮りたいなという夢が叶いました。無事に公開できて良かったです」と映画公開を迎えた喜びを語った。
会場にはダチョウ倶楽部のギャグ「YAAA!」と書かれたウチワを持った寺門監督のファンの姿もあり、寺門監督は恥ずかしそうにしながらも嬉しそうな様子。

NAOTOは「撮影して1年半くらい経っていて、去年の5月頃、ちょうど令和に時代が変わる記念すべき時にクランクインし、やっと皆さまの前にこうして届けられたことを嬉しく思います」と挨拶。

土屋は「この作品が撮影された後、世界は難しい状況に突入いたしまして、皆様にお届けできるか心配でしたが、まさにお肉のように熟成することができました。美味しく召し上がっていただけたでしょうか!?」との問いかけに会場からは大きな拍手が起こった。

石黒は「コロナの時は撮影も中断して、どうしたらいいんだろうと思いました。これまで思ってもみなかったけど、こうやってみんなとスタッフと一緒に作れることは当たり前のことじゃないんだよなと思いました。無事にこのように公開できて、たくさんの方に観に来ていただけて嬉しいです」と観客への感謝を述べた。

 
映画に実体験が入っているのか?
寺門監督は「全部、実体験です。リアルなことは感動するので、こうやっていろんなお店であったリアルな体験を映画にすることができて嬉しいです」と答えると、NAOTOが「映画の中で出てくるタレを盗むシーンも本当にあった話なんですよね?」と明かすと、寺門監督は「そう!お店で食べていた時に本当に隣のテーブルでタレを盗んでいる人がいて、店長が出てきて「盗め!」と言ってタレを渡しているのをみてカッコいいなと思って。

他にもいろんなエピソードがあって、ぬか漬けも今は無くなってしまったお父さんとお母さんでやっていたステーキと一緒にぬか漬けが出てくるステーキ屋があったんだけど、お母さんがガンで亡くなられてしまって。ぬか漬けをお母さんが漬けていたので、どうするの?と心配していたけれど、3年後くらいにお父さんが「漬けた漬物食べてみてよ」と言って出してくれたぬか漬けの味がお母さんの味で、食べた瞬間、そこにお母さんが立っているような気がした。お母さんが亡くなったけれど、3年後にぬか漬けで生き返ったと思ったんです。そういう風に、ぬか漬けや人の気持ちがこもったものは時間を越えて届くものなんだなと思って、映画にも入れたいなと思って。だから焼肉の映画なんだけど伏線的にぬか漬けも出てくるんです」とぬか漬けに込められた想いを明かす。
 

FL-main.jpg

 

食べるシーンの多い本作にちなみ、NAOTOは「撮影に入る前に食べ方とかお箸の持ち方を気を付けようと思って、お箸の持ち方を矯正する箸を買って使ってみたら全然食べられなくて、こんなに箸の持ち方がダメだったのかと驚きました。でも毎日、その箸を使って食事していたらその箸でも食べられるようになって、この映画のおかげで箸の持ち方がきれいになりました」と撮影前のエピソードを明かした。
 
映画の中でNAOTOとりょうが演じた、互いに大事に想いながらも疎遠になり、微妙な関係の親子の仲を取り持つ役柄を演じた土屋は、親子関係について聞かれると、突然声を詰まらせ涙を流しまわりのキャストを驚かせる場面も。「愛情が深い分、すごく切ないなとおもいました。母がよく言うんですが、親だからできることもあるけれど、親だからこそできないこともある、とよく聞かされていて、これってそういう事なのかなっておもって観ていました。撮影中は役として良人さんのところに行ったり、お母さんの所に行ったりしていたので、本気で良人さんのことを引っ張りたい気持ちでいました」と撮影当時の気持ちを振り返った。
 
今回、NAOTOと初共演した石黒は「NAOTO君とは初共演だったけど、俳優が持っている集中力やアプローチと違う、心でやるっていう気持ちを感じてすごいなと思いました。とてもよかったです」と誉めると、すかさず土屋が「でもジモンさんも現場で、賢さんのお芝居をみて「さすがだな~。絶対撮っておこう」と言ってましたよ」と石黒の演技を褒め、寺門監督も「現場でいきなり竹中という役名を“たけちよちゃん”と呼んで、一瞬ぎょっと驚いたんだけど、そういう風にあだ名で呼ぶ編集者もいるよなと思って、そういった遊びの部分も自然に入れてくるところがさすがだなと思いました」とお互いの演技を絶賛しあった。
 

FL-sub1.jpg

 

焼肉がメインの映画に出演してみて発見したことやお肉について詳しくなったことがあるのかを聞かれると、NAOTOは「千切りキャベツに肉を載せて食べるっていう食べ方があるって知って、それは発見でした」と語り、土屋は「この映画では本物のお店や人が出てきて、撮影もお店を使わせてもらっているんですが、映画の中で美味しくないお店として登場するお店の方が、そのお店は本当はとても美味しくて本物のお店なんですが、「ジモンさんの為なら」といって撮影に協力してくれていて、そんなことがある!?と驚きました。毎日の撮影で、“食運”を頂いているような気持でした」と映画タイトルにかけて語った。一方、石黒は「ご覧いただいた皆さまはご存知かとおもますが、僕は映画の中でアジフライしか食べていなくて…。ちょっと肉については分かりません!」と語り、会場の笑いを誘った。
 
最後に11月25日に58歳の誕生日を迎える寺門監督の誕生日を記念し、各キャストから寺門監督へのメッセージが述べられ、石黒は「映画監督は最高の職業の一つだとおもいます。監督の熱意についていって、この作品は初日を迎えました。どうか皆さん、この映画を何度も観ていただいて、監督に2本目を撮らせてあげたいと思います」とのメッセージに大喜びの寺門監督。

続いてNAOTOは「4年前、滋賀県の山奥で一面雪の中で初めてジモンさんにお会いして、その時に、今こういう話を考えているんだけどやらない?と言われ、その時はまだ実現するか分からない状況だったけれど、もしも実現する時はぜひやらせてくださいと答えて、それから4年が経って、本当にこうやって素晴らしいキャストの皆さんと一緒にその時の話を実現することができて本当に嬉しいです」と感謝の気持ちを伝えた。

sub3.jpg土屋は「私は本当にお肉が好きで、移動中もお肉の映像を観てしまうくらいなんですが、お世話になっていたこの映画のプロデューサーの方が寺門さんとたまにご飯行くから一緒に会ってみる?と誘っていただき、初めてお会いしたんですが、その時、いっぱい焼肉を食べたんですが、その後にお好み焼きを食べたっていうことは一生忘れません。情報番組で、ジモンさんが、お店の方がその店の食材に似てくるとその店は美味しいと見たんですが、ジモンさんが牛に見えてきました」と言うと、「牛!嬉しいです!」と3人の気持ちを受け止め、嬉しそうな様子の寺門監督だった。
 
続いて、58歳の誕生日にちなみ、飾りつけされた5.8kgの巨大ローストビーフがサプライズ登場すると、思わずローストビーフの周りに集まる4人。寺門監督は自分のスマホを取り出し巨大ローストビーフと記念撮影し喜んでいた。初監督作品公開と誕生日を祝う祝賀ムードたっぷりの雰囲気のまま、大盛況のうちに舞台挨拶は幕を閉じた。
 

【あらすじ】 
下町に店を構える人気焼肉店「根岸苑」をひとり切り盛りする母・安江。ひとり息子・良人の毎日の楽しみは、母の手料理を食べることだった。ある事件がきっかけで店は閉店し、成長した良人は家を飛び出し、うだつがあがらないライターとして自堕落な生活を送っていた。ある日、グルメ情報サイトの立ち上げを任されることになった良人のもとに、疎遠になっていた母が倒れたとの報せが入り…。
 
原作・監督:寺門ジモン 原作協力:高橋れい子 脚本:本山久美子 音楽:Amar
出演:EXILE NAOTO 土屋太鳳 石黒賢 松尾諭 寺脇康文 白竜 東ちづる 矢柴俊博 筧美和子 大泉洋(特別出演)大和田伸也 竜雷太 りょう 
主題歌:ケツメイシ「ヨクワラエ」(avex trax)
製作・配給:松竹株式会社 
制作プロダクション:株式会社ギークサイト
コピーライト:(C)2020松竹 

(オフィシャル・レポートより)

volcano-550.jpg
「トゥームレイダー」「エクスペンダブルズ2」

サイモン・ウェスト監督最新作

そこは、世界で最も熱く最も危険なテーマパーク。

 
「トゥームレイダー」「エクスペンダブルズ2」の監督が放つ、灼熱のパニック・アクション超大作『ボルケーノ・パーク』が11月20日(金)より全国ロードショー致します。
 
世界初の火山テーマパーク「天火島リゾート」。そこでは、活火山を間近で感じ未体験のスリルが楽しめる。しかし、賑わう人々の真下では、マグマが目覚めようとしていた。そして今、史上最大の大噴火の時が近づく―。迫り来る火砕流!!降り注ぐ火山弾!!孤島のテーマパークが、紅蓮の地獄と化す―。
 

ハリウッド随一のアクション映画の名匠とアジアを代表する豪華キャストが集結!!


volcano-pos.jpgメガホンをとるのは、監督デビュー作の『コン・エアー』でいきなり世界的大ヒットを記録し、その後も『トゥームレイダー』『エクスペンダブルズ2』等で成功を収めたアクション映画の名匠サイモン・ウェスト。主演は、数々の受賞歴がある中国の演技派俳優ワン・シュエチー。そして、『スカイスクレイパー』での女暗殺者役でドウェイン・ジョンソンと対決したハンナ・クィンリヴァンがヒロインを演じる。
 
アクション映画の名匠サイモン・ウェストの初めての災害映画であり、初となる中国で手掛けた本作。中国での撮影を経た感想などを語るインタビューが到着した。


 

 

volcano-di550.jpg

Q:『ボルケーノ・パーク』は、あなたにとって最初の災害映画ですね。通常、あなたが作るアクション映画とどう違いますか? 
 
災害映画の場合、災害を背景として良い人間関係を描き出さないといけないんだ。観客は、危険な状況に置かれている人々に対して関心があってこそ、そこで展開するアクションを見たいと思うものだ。だから、本作の中心にあるのは父親と娘の関係で、とても強い絆があって感情に訴えるんだ。炎が燃えさかるし、火山も爆発するし、車が溶岩に追いかけられたりするんだけど、中心にあるのは、人の心を揺さぶる家族の物語なんだ。だから、災害映画というと、炎が炸裂するスリル満点なものを創造するけど、その中に素晴らしい人間模様があってこそ楽しめるんだよ。
 
 
Q:外国語の映画を監督してみて、いかがでしたか?
 
外国語で仕事をするのはかなり苦労するだろうと思っていた。でも思ったほど大変ではなかった。なぜなら、感情というのは言語を超えるし、アクションも同様だから。ワクワクするような内容ならば、言語にかかわらずワクワクするし、感情に訴えかける内容ならば、言語に関係なく、感動する。中国語の映画の監督は、思ったより簡単だったよ。とても経験のある有能な俳優たちで、感情がうまく表現されていることがよくわかる。セリフも、僕には英訳文があったから、どんなセリフかわかる。でも細かい部分に関しては、すばらしいアシスタントたちや通訳の人たちの助けを借りて、感情や態度の微妙な違いを演出した。でも英語を話せる俳優たちとは、直接、話しができたから助かった。大体は、シーンに関して最初に僕が英語で説明して、それから彼らのそのシーンに対する理解と、どんな演技をするかを僕に英語で話して、その後で、彼らが中国語で演技した。中国語しか話さない俳優の場合は、通訳を通して同じ会話をした。時間はかかるけど、実際にはそんなに大変じゃないんだよ。
 
 

volcano-500-2.jpg

Q:中国語の映画作品に関わるようになったきっかけは?
 
とてもエキサイティングなきっかけだった。中国の映画産業は今、急速に発展していて、それ自体がとてもエキサイティングなんだ。こういう急成長を遂げている産業に関わるのはいつの時にも楽しい。欧米の業界はマンネリ化していて、少し低迷しているところがあるから、あまり期待されていないんだ。でも、ここ中国の映画産業に関しては期待が大いに高まっている。だからその産業や、偉大な映画を作ることに対してみんなが情熱を傾けている環境で仕事ができるのは、最高の気分なんだよ。
 
 
Q:中国の映画業界に関心を抱いている外国の映画製作者たちにアドバイスはありますか?
 
ハリウッドでの仕事と、とても似ているよ。でも違いは、さっきも言ったように、関わる人々から感じられる熱意とエネルギーだ。だから、欧米の映画監督には、ぜひここにきて仕事をするように勧めたい。自分の仕事ができることをとても喜んでいる人たちと一緒に仕事ができるわけだからね。彼らは、映画製作に携われることを恵まれていると考えているんだ。映画産業で働けることは特権で、中国の制作スタッフや俳優たちは、それを実感している。自分の仕事に対して感謝の気持ちがあるんだよ。そういう人たちの近くにいられることは素晴らしいことなんだ。欧米の監督にとって、そういうポジティブな環境で働くのはとても健全なことだと思う。
 
 
Q:中国で独自の原作コンテンツ(IP)を開発することは、アメリカより簡単ですか?
 
ああ、世界中にあらゆる原作コンテンツが存在していて、アメリカの原作コンテンツの多くはもうよく知られている。だから、ここに来て、新しい原作コンテンツに触れられてとても新鮮だ。中国の観客は、本やグラフィック・ノベル、あるいは前の映画作品とかで知っているかもしれないが、僕にとっては新しい。だから、全く新しい素材の宝庫なんだよ。
 

成長目まぐるしい中国映画産業と、ハリウッドが誇るアクション映画の名匠サイモン・ウェストがタッグを組み放つ、灼熱のパニック・アクション超大作『ボルケーノ・パーク』は11月20日(金)より公開。
 

volcano-500-1.jpg

【STORY】
火山学者のタオは、「天火島」と呼ばれる火山島を訪れ調査にあたっていた。しかし、その最中に突如火山が噴火し、妻が犠牲になってしまう。それから20年後―。実業家のハリスによって「天火島」に一大リゾートが建設される。その触れ込みは、「活火山の上に建つ世界初の火山テーマパーク」だった。タオはその危険性に警鐘を鳴らすが、その一方でタオの娘シャオモンは、父に抗いハリスの元で火山学者として働いていた。待望のオープンを控え出資者たちがパークを訪れる中、観測チームがマグマの不穏な動きを発見する。シャオモンはパークの閉鎖を訴えるが、ハリスは全く取り合わない。時を同じくして、噴火の前兆を察知したタオも「天火島」へと向かっていた―。
 
出演:ワン・シュエチー『孫文の義士団』、ハンナ・クィンリヴァン『スカイスクレイパー』、ショーン・ドウ『最後のランナー』、ジェイソン・アイザックス『ハリーポッター』シリーズ
監督:サイモン・ウェスト『トゥームレイダー』『エクスペンダブルズ2』 
撮影:アラン・カウディージョ『ガン シャイ』
音楽:パイナー・トプラク『キャプテン・マーベル』、
編集:ポール・マーティン・スミス『STAR WARS エピソードI/ファントム・メナス 3D』、
主題歌:「我是如此相信」ジェイ・チョウ
2019年/中国映画/中国語・英語/94分/シネスコ/5.1ch/字幕:江﨑仁美
原題:天火/英題:Skyfire/提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム 映倫G
© 2020 Meridian Entertainment (Foshan) Co. Ltd. All Rights Reserved  
公式HP:volcanopark.jp
 

2020年11月20日(金)~シネ・リーブル梅田、イオンシネマ京都桂川、イオンシネマ加古川 他全国ロードショー


(オフィシャル・レポートより)
 

フォトセッション2ショット (2).jpg

黒木瞳監督、
三吉彩花を伴って第二の故郷である関西で舞台挨拶!

【日時】11月14日(土)
【場所】なんばパークスシネマ・スクリーン10 12:20の回、上映終了後
【登壇】三吉彩花・黒木瞳監督


12hitoe-main.jpgのサムネイル画像


現代のフリーターが突然『源氏物語』の世界へタイムスリップ!?


現代では居場所がなくネガティブ思考だった若者が、平安時代の紫式部が描いた『源氏物語』の世界へ突然タイムスリップする。宮中で我が子を帝にするために恐れ嫌われても強く生きる弘徽殿女御(こきでんのにょうご)や、その息子で心優しい春宮、誠心誠意宮仕えする人々、そして無償の愛を捧げてくれる倫子(りんし)などに影響されて成長する物語、『十二単衣を着た悪魔』が11月6日(金)より全国公開されている。第二週目を迎え、堂々たる風格で弘徽殿女御を演じた三吉彩花と、長編映画第二作目となる黒木瞳監督が、大阪なんばパークスシネマでの舞台挨拶に登壇した。

DSC04944 (2).JPG

 

関西の温かい拍手で迎えられた三吉彩花と黒木瞳監督。三吉彩花は、前髪ぱっつんボブのヘアスタイルに、白地にクローバーが散りばめられたロングのシフォンドレスで軽やかに登場。黒木瞳監督は、アイボリーの生地全体にコード刺繍があしらわれた膝丈ワンピースでこれまた優雅に登場。美女ふたりによる舞台挨拶は、稀に見ぬ華やいだものとなった。


映画を観終わったばかりの観客に、先ずは三吉彩花から「今日はたっぷりと裏話などができればと思います」。そして黒木監督からは「今日は映画をご覧下さいまして誠にありがとうございます。関西は第二の故郷ですので気持ちもとても和やかになります」とご挨拶。


黒木瞳監督 (2).JPGQ:内館牧子原作の同名小説を映画化した理由について?

黒木監督:内館先生が、『源氏物語』の中であまり良く描かれていない弘徽殿女御(こきでんのにょうご)は「本当は志をもって強く生きるとても素晴らしい人」という長年の想いを異聞としてまとめ、そこに登場した現代の若い男性が弘徽殿女御や倫子などから影響を受けて成長するという物語を拝読して、とてもスカッとしました。これは映像にしたら面白いだろうなと思って映画化したのです。


Q:強い弘徽殿女御を演じた感想は?

三吉彩花:ここまで強い女性を演じたのは初めてでした。徐々に年齢を重ねていきますし、母親としての優しさと力強さをどう表現しようかと迷っていたら黒木監督から猛特訓して頂き、やっと弘徽殿女御が見えてきました。黒木監督に作って頂いたようなものです。

黒木監督:そんなことはないです!どんどん三吉さん独自の弘徽殿女御が出来上がっていくのを目の当たりにして、若い人の強い吸収力というか息吹にとてもワクワクして頼もしかったです。



三吉彩花さん (3).jpgQ:このように、三吉彩花の成長ぶりを大絶賛する黒木監督から学んだことは?

三吉彩花:頬骨の筋肉が痛くなる位、セリフの言い回しを何度も何度も練習しました。どの作品でも言えることですが、地道な練習の結果はスクリーンに現れるもので、とても大事なことだと学びました。


Q:一番好きなセリフは?

三吉彩花:悩みますね…(笑)。最初の登場シーンで述べる「能書きは要らぬ。男は能力を形にして示せ!」というセリフを今見るととても幼く感じられて、最後に「やれることも、やれぬこともやって、私は生きる!」というセリフに重みがあり、その違いがとても面白いなと感じたので、その最初と最後のセリフが好きです。

 

DSC04947 (2).JPGのサムネイル画像

Q:三吉彩花の女優としての素晴らしさは?

黒木監督:「“悪魔”は強い人」という一面だけなく、本当は悩みや葛藤を内面に抱えながらも「強くあらねば」と生きているのだと思います。そうした内面と外面の両方の強さを美しく品良く演じて下さったので、私は大満足です。


Q:ロック調の曲を使われた理由は?

黒木監督:最初から、弘徽殿女御は「ロックで行く!」と決めていました。ほとばしるパッションを描こうと思ってロックにしたのです。OKAMOTO’Sの「ブラザー」を聞いた時にハートを射抜かれて、弘徽殿女御が初めて登場するシーンに「ブラザー」を使いました。そして、エンディングの主題歌「History」は書き下ろして頂きました。

 

 


DSC04946 (2).JPGQ:理想とする女性像はありますか?

三吉彩花:今日もさらに思ったのですが、女性だからとか男性だからとかこだわらない、ブレない意志を持っている女性でありたいなと思いました。


――最後のご挨拶。

黒木監督:内館先生の「弘徽殿女御って本当はこういう品格のある人だったのでは?」という想いを映像化できて本当に嬉しく思います。そして、コロナ禍でも公開できたことに深く感謝いたします。一人でも多くの方に観て頂きたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 


背が高く颯爽として美しい富士額の女優をと、三吉彩花をキャスティンした黒木監督。その期待に十二分に応えた三吉彩花の貫禄の弘徽殿女御ぶりは本作の大きな見どころとなっている。また、一番先にキャスティングしたのは、なんと笹野高史だったそうだ。宮中を警備する“38歳”という設定の滝口の武士を演じた笹野高史は、突然現れた奇妙な格好の若者が所持していた携帯を舐めてしまう!? それは彼のアドリブだったそうだが、さらにイヤホンを鼻に突っ込んでしまう芝居は黒木監督の指示だったそうだ。さすが名バイプレイヤー!
 


【三吉彩花プロフィール】

1996 年 6 月 18 日生まれ、埼玉県出身。2010年、ファッション誌『Seventeen』でミスセブンティーン 2010 に選ばれて以降、同誌のトップモデルとして人気を誇り、“女子高生のカリスマ”とも呼ばれた。女優としては、映画『グッモーエビアン!』(12)『 旅立ちの島唄~十五の春~』(13)に出演し、第 35 回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。映画では 500 人の応募者の中からヒロインに抜擢された『ダンスウィズミー』(19)や大ヒットホラー『犬鳴村』(20)など主演作が次々と公開している。


【黒木瞳プロフィール】

福岡県出身。1981 年宝塚歌劇団に入団、入団2 年目で月組娘役トップとなる。85 年退団以降も、数多くの映画、ドラマ、CM、舞台に出演し、『嫌な女』(16)で監督デビュー。『化身』(86) では第 10 回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『失楽園』(97)では第 21 回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、第 10 回日刊スポーツ映画大賞主演女優賞、第 22 回報知映画賞最優秀主演女優賞と数々の賞を受賞。その他また、エッセイや絵本の翻訳など、執筆活動も行い、著書『母の言い訳』では日本文芸大賞エッセイ賞を受賞。


『十二単衣を着た悪魔』

出演:伊藤健太郎 三吉彩花 伊藤沙莉
原作:内館牧子 「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」 (幻冬舎文庫)
監督:黒木瞳 脚本:多和田久美 音楽:山下康介 雅楽監修:東儀秀樹
配給:キノフィルムズ © 2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー
公式サイト:https://www.juni-hitoe.jp/

2020年11 月6日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹他 全国絶賛公開中!


(河田 真喜子)

 
 
 
 
本広監督(シネルフレ江口).JPG
 
人材育成と実験の新レーベルで「メジャー映画では許されないことをどこまで追求できるか」
『ビューティフルドリーマー』本広克行監督インタビュー
 
 日本映画界の鬼才監督による野心的な企画と若い才能がタッグを組み、低予算で制約のない自由な映画づくりを目指す現代版ATGとも言える新レーベル<<シネマラボ>>の第一弾作品『ビューティフルドリーマー』が11月6日(金)よりシネ・リーブル梅田他にて絶賛公開中だ。
監督は『踊る大捜査線』シリーズから『サマータイムマシン・ブルース』『幕が上がる』まで、ヒットメーカーでありながら多彩な作品に取り組んでいる本広克行。押井守の脚本「夢見る人」を大学の映画研究会(映研)を舞台にした物語として映画化。いわくつきの台本の映画化に挑む映研メンバーの奮闘ぶりから、モノづくりの楽しさが伝わってくる青春映画だ。リーダー的存在で監督としてメンバーを引っ張るサラ役には自身も大学時代から映画サークルで映画を撮り、多彩な活動を行なっている小川紗良。他にも今注目の俳優から劇中劇に登場するベテラン俳優が本人役で出演。そして映画研究会の先輩役サイトウタクミで斎藤工も参加している。
 本作の本広克行監督にお話を伺った。
 
 

■「次は自分の番」自身のキャリア形成から感じた映画界の人材育成と、まず取り組んださぬき映画祭。

―――コロナ禍で映画監督自身が様々な活動や今までの枠に捉われない映画製作活動を立ち上げつつある中、それ以前にメジャー映画とインディペンデント映画の間に位置するような新しい監督絶対主義のレーベルを立ち上げ、作品を公開するのは非常に注目すべき動きだと思います。<シネマラボ>を立ち上げるにあたり、どのような問題意識をお持ちだったのですか?
本広:『踊る大捜査線』シリーズのようなビッグバジェットで、プロデューサーが10人もいて、芸能界のありとあらゆる人がキャスティングされるような映画を我ながらよくできたなと思うし、もう終わってもいいと思うぐらい達成感がありました。ただ自分が映画を撮ったりドラマを演出できたのは、引っ張り上げてくれる先輩たちがいたからであり、今度は自分がその立場になる番です。『海猿』の羽住英一郎をはじめ、後輩たちが皆ヒットメーカーになってきましたが、自分が所属していた会社(ROBOT)の直系の後輩ではなく、日本映画界全体を見渡して、素晴らしい才能を持ちながらも彷徨っている人たちがたくさんいるはずだと思ったのです。
 
―――監督という仕事はある意味孤独な職業ですから、かつての撮影所システムとは違い、先輩に教えてもらうということがしにくい環境になっていますね。
本広:映画界での人材育成について思いを巡らせていた頃、偶然山田洋次監督にお会いし、昔は小津監督や黒澤監督が映画サロンを作り、そこから新人を抜擢したり、映画の文化度を上げていったというお話を聞いたのです。そこで自分に何ができるかと考えたところ、思い浮かんだのが映画祭でした。当時現役の映画監督で映画祭を立ち上げたのは僕が最初だったと思います。さぬき映画祭では高松に色々な映画人を呼び、若い俳優たちと合わせ、そこに来れば仕事が見つかるような場所になっていきました。ちょっと落ち着いて周りを見渡すと、行定さんをはじめ、プロデューサーの方や俳優の方なども地方で次々と映画祭を立ち上げる動きが起こってきて、これなら大丈夫だなと思ったのです。
 
 

■大林監督に言われていた言葉、「君たちの世代でもう一度ATGのような映画を作れ」

―――確かに映画祭は映画人同士の交流から新しいプロジェクトや仕事が生まれる面も大きいですね。
本広:映画祭には7年間携わり、その後に構想しはじめたのが<シネマラボ>です。今、自主映画の制作費は200~300万円が相場で、一方東宝や東映、松竹などからオファーをいただくビッグバジェットの映画は2~3億円ぐらいです。やはり今まで低予算でしか映画を作ってこなかった人がいきなりビッグバジェットの映画を作るのはしんどいので、中バジェットのものを<シネマラボ>という新レーベルを掲げて作っていってはどうかと。また僕が大きな影響を受けている大林監督によく言われていたのが「君たちの世代でもう一度ATGのような映画を作れ」。
 
―――大林監督からそんな声かけをされていたんですね。
本広:僕にとっては神様みたいな人ですから、大林さんに褒められようと思って(笑)「お前、よく頑張っているな」とか、「お前の映画、面白かったぞ」といつも僕の頭を子どもみたいに撫でてくださるんですよ。山田監督の映画サロンにも参加しているのですが、山田監督は最近の若者はなかなか動かないとボヤかれる一方、僕のことを可愛がってださり、ベルリン国際映画祭への参加を断っても、さぬき映画祭には来てくれる(笑)やはり尊敬している先輩たちから言われたことを実行していきたいし、若者たちを引き上げる場を作ろうと今回は押井守さんに原案を書いていただきました。そこからは結構時間がかかりましたね。
 
 
 
サブ4Q8A6720 - コピー.jpg
 

■小川沙良との出会いで「監督役がここにいる」と確信。

―――押井さんに依頼されたのはいつ頃だったのですか?
本広:みんなで一緒に湯河原の温泉に行って企画会議をした時、僕は文化祭の前日を何度も何度も体験する話にしたいと伝えると、押井さんが書いて下さったのは軽音楽部の部員が何度も文化祭の前日に戻る話だった。僕の構想と似てはいるのですが、映画研究部なら僕の経験も活かせるし、その頃に小川沙良さんと出会い「監督役がここにいる」と思った。そうやってタイミングが合うまで2年ぐらいかかりましたね。
 
―――さぬき映画祭で小川さんは監督作を持参したのですか?
本広:早稲田大学の映研に監督をしている小川沙良さんがいるというのは当時業界内でも有名だったんです。しかも小川さんは是枝ゼミで、是枝さんからも話を聞いていたので、僕からオファーしたところ快諾していただきました。監督役のエチュードができる人はなかなかいないでから、小川さんがいなければ映画づくりは難航していたと思います。
 
 

■ずっと“ビューティフルドリーマー”の人たちの物語。続編を作り、続けていきたい。

―――サラ役の小川さんは、聡明かつ決断力のある見事な監督ぶりでした。昔の映研は70年代の香りを引きずっているような異質な雰囲気がありましたが、本作の映研はとても明るい雰囲気ですね。
本広:早稲田大学の映研をはじめ、今は女子部員がクラブを引っ張っているんですよ。僕らの時代はモスグリーンの汚いジャンパーを羽織った男子部員がぞろぞろいたのですが、今の男子部員はもっぱらアッシー的存在ですよ。それもおもしろいなと思って、本作では描ききれなかった部分は「続編を作らせてください」と会社にお願いしているところです。ずっと続けていきたいし、この作品はずっとビューティフルドリーマーの人たちのお話でもあります。僕らも一つの映画が公開されても、また次の映画を作ってとずっと続いていくわけですから不思議な社会人だし、ビューティフルドリーマーってこういうことなのかなと。続編を作る時、小川さんが多忙を極めて出演するのが難しくなったら、次の世代の映研を育てればいい。小川さんには本作の斎藤工さんのような先輩部員として1日だけ撮影に参加してもらい、続けていくこともできるなと思っているんです。
 
―――セリフを書かず、エチュードの手法を取り入れての撮影だったそうですが、従来のビッグバジェット作品とは違う作り方を試みての感想は?
本広:演劇の演出をやっていることもあり、そんなに違和感はなかったですね。脚本どおりだとつまらないとか、セリフが停滞してしまうとき、どうやっておもしろくさせようかと考えてエチュードを取り入れることもあります。『UDON』(06)では実際にうどん屋で働いている人に、普段しゃべっていることを言ってもらい、お芝居をしていないドキュメンタリー的な作り方になったのですが、そういう演出のテクニックを今回は全て使えたのではないでしょうか。書かれたセリフを的確に言うのもおもしろいけれど、「こんな脚本なのに、こんなに面白くできるの?」というところを目指したいし、それを目指していつもやっていますね。
 
―――確かに、セリフのやりとりに躍動感がありました。
本広:若者の言葉は体の動かし方によって出てくる言葉も違ってくるので、それをなるべく生の状態で収録しています。今までの映画はガンマイクで上から音を拾っていましたが、最近は演者全員にワイヤレスマイクを付け、録音部がミキシングをするやり方が主流です。今回は録音部に若手を投入し、やる気を出しているので、次はビッグバジェットの映画に登用し、技術部門の新人育成も行えました。もちろん映画はヒットしてほしいですが、<シネマラボ>ですから俳優や映画に関わる各部門の人材育成の場でもありたい。自分が思っている以上に映画界はそう急には変われない。でも「実験ですから」と言うと色々な機材を貸していただき、様々なサポートをしていただけたのはうれしかったですね。
 
―――小川さんをはじめ、キャスティングは本広監督が直接オファーをするという形が多かったそうですね。
本広:全員思い通りのキャスティングできると、大ヒット作にはならなくても『サマータイムマシン・ブルース』(05)のようにずっと愛される気がします。『幕が上がる』(15)のメンバーとは今でもお付き合いがありますし、みんなで考えながら作った作品はお仕事という感じではなく、すごく愛情深いものになっていますね。
 
 
メイン写真 - コピー.jpg

 

■メジャー映画では許されない、ATG作品のようなメタ構造をどこまで追求できるか。

―――一見青春映画ですが、メタ構造にメタ構造が重なって、もう一度観たくなるような映画ファンを唸らせる奥深さがあります。ここまでメタにメタを重ねたのはなぜですか?
本広:メタ構造ものが好きなんです。演劇でいきなりひっくり返ったり、急に何かが起こったと思ったらそれもお芝居だったりするようなどんでん返しも大好きなのですが、映画ではなかなか急に空気は変わるようなものができない。どうすれば映画で物語を逸脱することができるのかをずっと考えていました。メタ構造は調べれば調べるほど深いところに入っていくんですよ。
 
例えば押井さんはアニメで初めてメタ構造を実践した人で、僕はそれを学生時代に見て大きな衝撃を受け「押井信者」になったのですが、その押井さんは演劇から影響を受けたそうです。それで寺山修司さんの映像や本に触れていくうちに、作品のことを考えることはおもしろいなと思えてきました。起承転結のある映画はずっとやってきたし、ちゃんと作れるのだけれど、そうではないものを作りたい。今村昌平さんの学校に行っていたのですが、今村さんも『人間蒸発』(67)でそういう作品を作っていて、今村さん自身が映画に登場し「このお話は全部嘘である」と言い放つと、セットがバラバラと崩れていくんです。本当に衝撃的でしたが、当時のATG作品は構造をぶっ壊すというコンセプトなので、普通のメジャー映画では絶対許してもらえないことができた。今のメジャー映画ではメタ構造といってもどうしても緩くなってしまうので、そこをどこまで追求できるか。今回はその面でも実験的な試みをしています。
 
 

■映画人の交流の場が大事。もっと混じり合い、新しい才能を発掘したい。

―――俳優の名前と役名も同じですし、色々な垣根が曖昧なのも魅力的ですね。
本広:大林監督の影響でもあります。遺作の『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(20)はご自身も出演されているし、物語でありながらも僕らに「戦争を起こすな」という遺言を伝えているようにも見える。本当にすごいです。他の大ベテランの皆さんも本当に元気で僕の作品を「普通だな、もう見飽きたよ」とバッサリ。あまりにも尖ったものは作りにくいけれど、例えばこの作品を見て疑問を感じた人がググり、また違う感想と出会って、感想が育っていくという点でもこの作品の実験的側面を感じます。今、是枝さんが映画人の交流の場を作ってくださっていますが、これは本当に大事なんです。どうすれば皆がもっと混じり合うのか。小学生ぐらいでもすごい才能がいますし、そういう才能を発掘したいし、もっと外向きの考え方でありたい。今はそういう思いですね。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ビューティフルドリーマー』
(2020年 日本 75分)
監督:本広克行
原案:押井守『夢みる人』  
出演:小川紗良、藤谷理子、神尾楓珠、内田倭史、ヒロシエリ、森田甘路、伊織もえ、かざり、斎藤工、秋元才加、池田純矢、飯島寛騎、福田愛依、本保佳音、瀧川英次、齋藤潤、田部文珠香、升毅
11月6日(金)よりシネ・リーブル梅田他全国順次公開
配給:エイベックス・ピクチャーズ
公式サイト → https://beautifuldreamer-movie.jp/
©2020 映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会 
 
IMG_8112.JPG
 
映画研究会で監督役を熱演の小川紗良「勝手なおしゃべりばかりで、ほとんどが即興劇」
『ビューティフルドリーマー』舞台挨拶
(2020.11.7 シネ・リーブル梅田)
登壇者:小川紗良(主演)、かざり(出演)、本広克行監督
 
 『踊る大捜査線』シリーズの本広克行監督が、押井守の脚本「夢見る人」を実写化。いわくつきの台本の映画化に挑む映画研究部の奮闘ぶりをコミカルに描いた『ビューティフルドリーマー』が11月6日(金)よりシネ・リーブル梅田他にて絶賛公開中だ。
本作は日本映画界の鬼才監督による野心的な企画と若い才能がタッグを組み、低予算で制約のない自由な映画づくりを目指す現代版ATGとも言える新レーベル<シネマラボ>の第一弾作品。映画研究会のリーダー的存在で監督としてメンバーを引っ張るサラ役には自身も大学時代から映画サークルで映画を撮り、来年には監督作の公開が控える小川紗良。他にも今注目の俳優から劇中劇に登場するベテラン俳優が本人役で出演。そして映画研究会の先輩役サイトウタクミで斎藤工も参加している。
 

IMG_8109.JPG

  公開2日目の11月7日(土)、上映前に行われた舞台挨拶では主演の小川紗良、出演のかざり、本広克行監督が登壇し、実験精神に満ちた本作の舞台裏を明かした。構成脚本はあったものの、具体的なセリフはエチュードによって作り上げていったという本広監督。「皆から自然に出てくる言葉を入れていきました。やたらしゃべっていたり、相手がしゃべっているのにかぶせたりするシーンもありますが、昔はマイクの技術的な問題でそこまでできなかった。今は技術が良くなってきたので、実験的にそんなことができたんです」と俳優から生まれる自然な言葉や会話を活かしたことを明かした。小川も「完成した作品を観てから改めて脚本を見ると全然脚本通りやっていなかった。映画研究会の部員はおしゃべりばかりで、ほとんどが即興劇でした」と撮影を振り返った。

 
 
 さらに本広監督はディレクターを務めていたさぬき映画祭に小川がゲストとして参加したことが今回のキャスティングにつながったことに触れ、「映画監督は独特のキーワード、ボキャブラリーを使うが、それは監督をやっている人ではないとできない。人が演じているのを『カット!』と止めたりするんですから。小川さんは学生映画をやっているのを知っていたので」と映画祭での出会いを振り返った。
 
 

IMG_8102.JPG

 一方、映画でも元自衛官の俳優役で登場するかざりは、本作が映画初出演。「元々はカーサ役でオーディションに行ったら、ウィッグが用意されていたけれど、このままオーディションに参加くださいと言われました」と明かすと、本広監督は「元自衛官で役者というのがおもしろいなと。劇中で監督のサラが実際の戦車を登場させることにこだわるのだけど、元自衛官の方が戦車レンタルの会社にいたらおもしろいと思い、脚本を全部書き換えました」とかざり登場シーンの裏話を披露。かざりも初めての映画脚本にセリフがほとんど書かれておらず最初は戸惑ったそうだが、「初出演でいきなりエチュードは難しいけれど、新鮮。自衛隊で鍛えている訓練が活きました」と笑顔に。

 
 

IMG_8106.JPG

 NHK朝ドラの「まんぷく」撮影で大阪に2ヶ月滞在していたという小川は、学生時代から関西の芸大や専門学校生と映画祭や地方撮影を通じて関わりがあったと明かし、「大阪で映画を撮るなら、関西の映画サークルの人と一緒に映画を作りたい。関西の人は全てをおもしろがり、活気がすごいんです」と作り手らしい願望を明かすと、かざりは「関西版の『シンゴジラ』で、大阪城とともにゴジラと自衛隊が見たいです」と自身のキャラに重ねた返事が。関西発の人気番組「探偵ナイトスクープ」の大ファンという本広監督は「関西育ちなのでずっと見ていたし、ドキュメンタリーのようで、泣いている人はなぜ感動したのかを観察してずっとノートに書いていました。演出の勉強になるんです。関西は、東京では貸してくれない地下鉄を使わせてくれますし、みんなでおもしろいものを作ろうという熱があります」と自身の監督作を振り返る一幕も。
 
 最後は、「ちょっと変わった映画です。メタ構造のさらにメタのメタがあります。役名が本人の名前なのもメタですし、撮影のカメラのレイルが見切れていたり、小川さんが急にナレーションをはじめたり。わからないとググって、楽しんでいただければと思います」(本広)、「みんなの楽しい夢が詰まったカオスな映画。みなさん楽しんでください」(かざり)、「若い世代だと等身大の青春映画、少し上の世代だと懐かしさがあるかもしれません。存分に楽しんでいただければ」(小川)と作品をアピールした。みんなで映画を作る楽しさが満載の『ビューティフルドリーマー』、青春映画に見せかけて、癖になる映画通も大満足の意欲作をぜひ楽しんで!
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ビューティフルドリーマー』
(2020年 日本 75分)
監督:本広克行
原案:押井守『夢みる人』  
出演:小川紗良、藤谷理子、神尾楓珠、内田倭史、ヒロシエリ、森田甘路、伊織もえ、かざり、斎藤工、秋元才加、池田純矢、飯島寛騎、福田愛依、本保佳音、瀧川英次、齋藤潤、田部文珠香、升毅
11月6日(金)よりシネ・リーブル梅田他全国順次公開
配給:エイベックス・ピクチャーズ
公式サイト → https://beautifuldreamer-movie.jp/
©2020 映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会 
 
IMG_7997.jpg
 
あなたの常識と私の常識は違う。コミュニケーションの壁に向き合うため自身にキャメラを向けて。
『友達やめた。』今村彩子監督インタビュー
 
  コロナ禍でリアルに友達と会う機会も減り、改めて本当に会いたい友達って誰だろうと思い浮かべたり、どこか人恋しくなっている人も多いのではないだろうか。11月13日(金)から京都シネマ、11月14日(土)から第七藝術劇場、今冬元町映画館他全国順次公開される『友達やめた。』は、友達とのコミュニケーションの壁に全力で向き合う姿を映し出すドキュメンタリー映画だ。
 
 監督は、自ら自転車で日本一周に挑む様子とその葛藤を描いたドキュメンタリー『Start Line』(16)の今村彩子。生まれつき耳のきこえない今村監督が、自作の上映会で知り合い友達になったアスペルガー症候群のまあちゃんとの関係性を自身のキャメラで映し出す本作では、二人の日常や旅行での出来事を通じて、お互いに対する気持ちの変化や、距離感に対する本音が次第に溢れ出す。友達、家族、夫婦とどんな関係でも一番のベースになるコミュニケーションについて考えるきっかけが詰まった一本。障害を作っている原因や、それを超えるきっかけについても考えたくなる作品だ。
本作の今村彩子監督に、お話を伺った。
 

tomoyame_main.jpg

 

■映画づくりの原点は自身の葛藤。

――――本作を撮ろうと思ったきっかけは?
今村:まあちゃんとはお互いに本好きで、家も近いし、年齢も近い。さらに二人とも独身という共通点があり、最初に親しくなった時は話も合うし、すごくいい友達ができたと思ってうれしかった。だけど、一緒に過ごしている時間が長くなってくると、えっと思うことや自分にとって嫌なことをされることが増え、その度に「彼女はアスペだから仕方がない」と気にしないようにしていました。それが我慢できなくなって喧嘩になることもあり、そんな葛藤を一人で抱えているのが嫌になりました。だからみんなを巻き込んで、この映画を作りました。どうしたらまあちゃんと仲良くなれるかを考えたかったのです。
 
――――前作の『Start Line』に続いてのセルフドキュメンタリーで、再び自身にカメラを向けていますが、ドキュメンタリーの被写体として自分にカメラを向けるのは勇気がいる作業では?
今村:『Start Line』の時は初めてのセルフドキュメンタリーだったので、すごく勇気が要りました。でも、今回は私よりもまあちゃんの方が大変だったと思います。まあちゃんが最初「いいよ」と言ってくれた時は私が途中で映画制作をやめるだろうと思っていたそうで、まさか本当に映画になるなんてと今は驚いているみたいです。
 
――――今村監督の周りには今までアスペルガー症候群をはじめとする発達障害を持つ友人はいなかったのですか?
今村:自分がそうだと打ち明けてくれたのは、まあちゃんが初めてです。その時はびっくりするというより、逆にまあちゃんと仲良くなれると思ったし、マイノリティ同士ということで、すごく親しみを感じました。
 
――――シリアスになりがちな題材ですが、飄々とした音楽がとても効果的でした。
今村:『Start Line』を一緒に作った山田進一さんは、とても気が合い、いいアドバイスをもらえて信頼できる人なので、今回も山田さんから音楽や整音担当の方に私のイメージを伝えてもらいました。やはり音楽で感情を煽るドキュメンタリーにはしたくないので、最低限必要なところに入れるようにしました。
 
――――感覚が敏感なまあちゃんにカメラを向けることは、彼女にとってプレッシャーになっていたのでは?
今村:まあちゃんが学校の給食室で働いているシーンがありますが、撮影するときは「撮られるのはいいんだけど、許可をもらうために校長先生とやりとりするのが疲れる」と言われましたね。交渉するのが苦手なまあちゃんに、校長先生にアポイント取りや日程調整をしてもらい、だいぶん負担をかけていたと思います。まあちゃんは本音を言ってくれるので拒否されない限り、手間をかけて申し訳ないと思いつつ「よろしくね」とお願いしていました。
 
――――撮影を通じて、そこまで言い合える仲になったということですね。
今村:実は最初にまあちゃんと仲良くなった時からおもしろいな、撮ってみたいなと思い、映画化を考える前にもキャメラを回したことがあったんです。ただ、まあちゃんが私のことを信頼してくれているからとはいえ、ひたすら自分のことばかりを打ち明けられるとやはりしんどい。気持ちをぶつけられる友達は私しかいないのかなと思うと、それも重荷でした。今、まあちゃんにとってTwitterが本音を吐き出す場所で、吐き出したらスッキリすると言っているので、全て私が抱えなくてもいいんだなと安心しました。
 
――――思いを吐き出すといえば、長野旅行で二人が本音で語りあい、喧嘩ごしになっていくシーンがありますが、あれも自然とそうなったのですか?
今村:なんの断りもなく私の茶菓子をまあちゃんが食べてしまったことから始まったんです。 それが初めてのことなら怒りませんが、度々起こっていて、私も我慢し続けてきた。その積み重ねの結果、あの時に感情が爆発してしまった。周りから見たらお菓子でと思うでしょうが、本当に真面目に喧嘩しましたね。
 
 
tomoyame_sub4.jpg

 

■まあちゃんと接することで、今まで知らなかった自分が出てきた。

――――友達といっても、あそこまで言い合えるのはベースに信頼関係があることの証でもありますね。
今村:私もまあちゃん以外の人とあそこまでの喧嘩をしたことはありません。喧嘩になる原因がないし、あったとしても喧嘩になる前に自分の気持ちを整理して、冷静に自分の気持ちを伝えています。だから今回は、自分でもびっくりしたんです。私はこんなに怒る人ではないと思っていたのに、彼女と接することで今まで知らなかった自分が出てきてしまった。そんな自分を見たくないけれど、どうしたらいい関係を築けるかを考えるためには自分を見つめ直さなくてはいけない。それがすごい葛藤だったし、この映画のエネルギーになりました。
 
――――映画で出てくる二人の日記の文章から、二人の本音が浮かび上がっていましたね。
今村:お互いにずっと日記を書いているんです。私は小学生の時からずっと書いていて、今92冊目ですし、まあちゃんは34歳でうつ病と診断された時、医者からマインドフルネスプログラムの一環として日記を書き始めたそうです。まあちゃんの日記を映画に使わせてと伝えたら、すんなりOKしてくれたのには驚きました。普通は嫌がるところですが、そのあたりの感覚は彼女独自のものだと思います。まあちゃんのOKは裏表がない本気のOKなので、そういうところは好きだし、楽なんですよね。だから旅行もこちらから誘うことができた。疲れたら素直にそう言うだろうし、気を遣わず、旅行を楽しめると思ったんです。
 

■喧嘩した時のまあちゃんの姿に、コミュニケーションを絶ったかつての自分が重なって。

――――まあちゃんとの喧嘩の中で、今村監督が「自分から弱者の立場に立ってるよ」とおっしゃったのがすごく印象的でしたが。
今村:『Start Line』で日本縦断の自転車旅をしていた5年前の自分の姿が、「わかりあうなんてきれいごと、排除でいい」と言い放ったまあちゃんと重なりました。当時の私は自転車旅の初心者で疲れもあって、やるべきことができなかったりして、伴走者にたくさん叱られました。それがだんだん嫌になってきて、伴走者を無視することが増え、コミュニケーションを絶っていたこともあったんです。その時伴走者に「コミュニケーションの映画を撮ると言っているのに、あなた自身がコミュニケーションを切っている」と言われました。その時の私がまあちゃんと重なったんです。ただ今回の私は向き合うことから逃げたくなかった。だから「弱者の立場に立ってるよ」とまあちゃんに投げかけたのです。
 
――――お二人の会話の中には優生思想への考え方や思いがあることに気づかされます。
今村:まあちゃんは元々読書好きで優生思想についても詳しいですし、やまゆり園事件のことも本を読んでいて私以上に詳しい。だからまあちゃんに優生思想について聞いてみたのです。彼女は自分でも優生思想を持っているし、本を読むことでその気持ちをコントロールしていると話していたのが印象に残っています。おそらくまあちゃんは本に救いを求めているのだと思います。自分を救ってくれる言葉を探すために、たくさんの本と出会うのですが、読んでも読んでもその言葉がない。だからすごく切ないし、それだけまあちゃん自身が生きづらさを感じているのだと思います。
 
 
tomoyame_sub1.jpg

 

■自分がマジョリティになったと感じた時に生まれた戸惑いも、映画の中に。

――――生きづらさについても二人の見解は違いますね。
今村:私は障害も自分だけの問題ではなく、人と人の間にあるという考え方なんです。まあちゃんは映画の中でアスペルガー症候群という障害は自分の問題であると言うように、自分の中にも原因があると考えています。発達障害はどこまでが性格で、どこまでが障害なのかが自分でもわからない。そのあたりが同じマイノリティでもすごく違うなと感じます。また、まあちゃんと一緒にいると、私がマジョリティになっていると感じることがあり、それに気づいた時はすごく戸惑いました。マジョリティである自分が我慢すればいいんだ、我慢した方が波風が立たないので楽だとそちらへ流れてしまった。映画を撮りながら本当に色々なことを考えました。
 
――――どのあたりで映画の着地点が見えてきたのですか?
今村:お菓子のことで大喧嘩をした後、二人の常識を考える会を開いたのですが、そこでまあちゃんの行動に関して初めて知ることがたくさんあった。これは一区切りになるなと思いました。
 
――――「二人の常識を考える会」は名案でしたね。人それぞれの常識は違いますから。
今村:私が発案し、自分でもいいなと思って映画を作ったのですが、その後パンフレットに寄せられたまあちゃんの文章を読んで、もしかしたら私の自己満足だったかもしれないと思いました。映画の中で描かれている喧嘩は、私の中では感情が積み重なった結果の行動なのですが、まあちゃんは私がいきなり怒りはじめたように感じる。まあちゃんにとって私はいつ爆発するかわからない“時限爆弾”なので、喧嘩のショックもそれだけ大きかったのです。それでも依然としてまあちゃんは普通にLINEもくれるし、映画制作も応援してくれているので、逆に私の方がまあちゃんの言葉に囚われすぎないようにしようと。目に見える言葉はやはり強いけれど、それよりもまあちゃんの今の行動や表情を信じようと思いました。
 

■「友達やめた」は友達を続けるために必要な言葉だった。

――――タイトルの『友達やめた。』という言葉はとてもインパクトがあるだけでなく、本当に色々なことを考えさせられますね。
今村:この言葉は私が一番悩んでいた時に生まれた言葉です。映画としてはそこが山場になりますが、とにかくまあちゃんに会いたくないし、離れたいし、なんなら映画を撮るのもやめたい。それぐらい本当に葛藤していた時、日記に書いたのが「友達やめた。」という言葉でした。するとすごく気持ちが軽くなったんです。今までの自分は、まあちゃんにとっていい友達でいたいとか、自分がこんな嫌な人間だと認めたくないという気持ちがあったのですが、そんながんじがらめな状況から、一度抜け出すことができたんです。すると心に余裕が生まれて、自然に「まあちゃんと仲良くやっていくにはどうすればいいか」と考えられるようになった。そうやって自分を赦せると楽になりましたね。だからこの言葉は友達を続けるために必要な言葉だったのです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『友達やめた。』
(2020年 日本 84分)
監督:今村彩子 
出演:今村彩子、まあちゃん他 
11月13日(金)〜京都シネマ、11月14日(土)~第七藝術劇場、今冬元町映画館他全国順次公開。期間限定でネット配信も実施中
※京都シネマ、11/14(土)今村彩子監督による舞台挨拶あり
 第七藝術劇場、11/15(日)石橋尋志さん(「さかいハッタツ友の会」主宰)、今村彩子監督によるトークショーあり
公式サイト → http://studioaya-movie.com/tomoyame/
(C) 2020 Studio AYA
 

 

黒木瞳監督-③.JPG

(2020年10月28日(水)大阪にて)

 

現代のフリーターが、ある日突然平安絵巻『源氏物語』の世界へタイムスリップ!?
平安時代を生きる女たちに学ぶ若きダメンズの成長物語。

 

就職試験59連敗中!? 彼女にはフラれ、出来のいい弟に引け目を感じて家にも居づらい、そんな現代の若者が、突然『源氏物語』の世界へタイムスリップしちゃう!? 光源氏や桐壷帝が登場し、その女御たちが大勢いるあの紫式部が描いた王朝文化の世界へ。しかも、現代人の若者が、嫉妬や陰謀の元凶として悪名高い桐壷帝の第一妃・弘徽殿女御(こきでんのにょうご)の信頼を得て仕えるという、かつてないシチュエーションのSF時代劇。そんなファンタジックな映画『十二単衣を着た悪魔』が11月6日(金)から全国公開される。


本作が長編第二作目となる黒木瞳監督は、宝塚歌劇娘役トップから退団後、多くの映画やテレビドラマで活躍し、さらに演劇やミュージカルと舞台でも座長公演を務めるなど、途切れることなくキャリアを積み重ねてきた大女優である。そんな彼女が満を持して映画監督に挑戦したのが、2016年の『嫌な女』。木村佳乃と吉田羊という演技派女優による意地とプライドを賭けた女の闘いは、女優目線の容赦ない演出が効いた痛快作となった。本作でも、黒木監督らしくキャラクターの特徴を捉えた表情が活かされ、嫉妬や陰謀渦巻く後宮で生き抜く女御たちの悲哀や自信喪失の若者の成長をエモーショナルに活写している。


12hitoe-main.jpg主演の伊藤健太郎にとっては、戦国時代の凛々しい若君ぶりでブレイクしたTVドラマ「アシガール」の逆バージョンとなっているが、本作でも現代のダメンズ・雷から、目元さやけき陰陽師・雷鳴へと、平安貴公子スタイルで魅了する。妻となる倫子(りんし・伊藤沙莉)を迎えた辺りからの感情表現は秀逸で、最後の最後まで心を鷲づかみにされる。弘徽殿女御(三吉彩花)に対しても、若くして帝の心を失い、我が子を帝にするために生きる必死さが嫉妬や陰謀となって、他の女御たちに悪魔のように恐れられた人物として映るようになる。


「可愛い女はバカでもなれる。しかし、怖い女になるには能力がいる!」とまあ、豪快に言い放つ弘徽殿女御のアッパレぶりにもしびれる!
 



黒木瞳監督-①.JPGのサムネイル画像黒木瞳監督のインタビューは以下の通りです。


Q:『源氏物語』の中でも弘徽殿女御を取り上げた理由は?

A:内館牧子先生の小説『十二単衣を着た悪魔』の初版本を読んでとても面白かったので、自分でも弘徽殿女御を演じてみたいなんて思っていました。内館先生は高校生の時に『源氏物語』を読んで、弘徽殿女御が桐壷帝の第一妃でありながら直接的な感情の描写もなく、伝聞としてしか描かれていない事にとても興味を持たれたらしいのです。本当は単なる悪女ではなく違うタイプの女性だったのでは?他の女御たちも本当はかなりしたたかだったのは?と思われて、『源氏物語』の異聞として、現代の若者・雷の成長と弘徽殿女御のイメージとは違う捉え方をした小説をお書きになったそうです。弘徽殿女御には女性の品性があり、とても共感する部分も多く、そのセリフの面白さを活かして映画にしたら、きっと元気の出る映画になるのではと思ったのです。


Q:キャスティングについては?

A:雷のイメージでは伊藤健太郎君だったのですが、TV「アシガール」の逆バージョンなのでちょっと安易すぎるかなと思っていたら、出演が叶って嬉しかったです。弘徽殿女御については、平安時代の女性は意外と背が高かったらしく、他の女御たちを威圧する程背が高く、富士額が美しい若い三吉彩花さんが理想的でした。一番悩んだのは倫子役で、TVドラマで伊藤沙莉さんを見かけて「この娘だ!」とすぐにオファーしました。若い俳優さんたちはオーディションです。光源氏役は満場一致で沖門和玖君に決まりました。最初から出演が決まっていたのは笹野高史さん!(笑)(さすが、名バイプレイヤーですね!)


12hitoe-sub5.jpgQ:伊藤沙莉史上最高に可愛いショットや、目を丸くして驚嘆したり、目を潤ませて切々と訴えたりと目で語れる伊藤健太郎に、不敵な笑みを浮かべながらも毅然とした三吉彩花など、黒木監督らしい演出が随所に見られましたが、撮影方法については?

A:同じ役者として、役者に失敗させたくないという思いが一番強くありました。一人ひとりが輝いて、時には切なく、時には輝いている顔を撮りたいと思っていたのです。月永雄太カメラマンはショートムービーでも撮影を担当して頂いていたので、何となく私の性格を理解した上で、私が何を求めているのか、コミュニケーションをとりながらの撮影はとてもやりやすかったです。勿論お互いプロとして尊重し合いながら、カメラマンにお任せすることもありました。


Q:本作で一番苦労した点は?

A:脚本の段階で何度も何度も推敲を重ね、26年という月日を2時間枠に収めようと皆と協議しました。さらに、『源氏物語』の中の人物の所作や衣装についても、時代考証の専門家に教えて頂いたり、博物館へ行って絵巻物を見学したりとかなり研究しました。そして、後宮内のシーンを絵巻物と同じように屋根のないセットを使って俯瞰で撮る方法を思いついたのです。


12hitoe-sub4.jpgQ:一番こだわった点は?

A:雷がはっきりと「タイムトリップした!」と分かるように、その場面のVFX映像にはこだわりました。それから、美術もそうですが、弘徽殿女御の衣装などの色にもこだわりました。博物館で再現展示物を見て驚いたのですが、御簾で仕切られた後宮の部屋には緑色の敷物が敷いてあったのです。それを基に、弘徽殿女御が年代ごとに着る衣装の色柄や、十二単衣の重ね着の色を決めていきました。煌びやかな王朝絵巻物ですから、衣装だけでなく、季節による色彩などにもこだわりました。是非、スクリーンでお確かめ頂きたいと思います。


Q:女優に甘んじることなく、作品の全責任を負う監督にチャレンジすることについては?

A:女優も大変なんですけどね。劇中で弘徽殿女御が、「身の丈に合って傷付かぬ生き方など小者のすること。人は必ず老い、時代は動く。いつまでも同じ人間が同じ場所に立ってはいられない。必ず若い者の世が来る。その時は潔く退く。それが品位というものです。」と雷鳴に語るシーンがあります。私も「身の丈以上のことを自分の中で求めている」ということでしょうか、僭越ながら(笑)
 


【STORY】

12hitoe-pos.jpg

求職活動も上手くいかず、彼女にもフラれ、出来のいい弟に引け目を感じては家にも居場所がない雷(伊藤健太郎)は、ある日、バイト先の医薬品会社主催『源氏物語』関連のイベント会場で、不思議な緑の光を目にする。『源氏物語』のパンフレットと医療品のサンプルの入ったお土産とバイト料をもらって帰る途中、家の近くで再び緑の光が現れ、雷鳴と共に気を失ってしまう。目が覚めると、そこはなんとあの『源氏物語』の世界!? タイムスリップしてしまったのだ!


すぐに捕らえられるも、高熱で苦しむ女御の病気をサンプルでもらった消炎鎮痛剤で治してしまい、さらに『源氏物語』のパンフレットを見ながらの予見が当たり、陰陽師・雷鳴として桐壷帝の第一妃の弘徽殿女御(三吉彩花)に仕えることになる。現代では居場所のなかった雷も、ここでは皆の信頼も厚く尊重される身分となる。その内、妻・倫子(伊藤沙莉)を迎え、初めて人を慈しむ心に芽生え、この世界で幸せに暮らせると思っていたのだが……。


出演:伊藤健太郎 三吉彩花 伊藤沙莉 田中偉登 沖門和玖 MIO YAE 手塚真生 / 細田佳央太 LiLiCo 村井良大 兼近大樹(EXIT) 戸田菜穂 ラサール石井 伊勢谷友介 / 山村紅葉 笹野高史
監督:黒木瞳
原作:内館牧子「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」(幻冬舎文庫)
脚本:多和田久美
音楽:山下康介     雅楽監修:東儀秀樹
制作・配給:キノフィルムズ 制作:木下グループ
Ⓒ2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー
公式サイト:https://www.juni-hitoe.jp/

2020年11月6日(金)~新宿ピカデリーほか全国ロードショー


(河田 真喜子)

 
 
IMG_8003.jpg
 
 
坂本龍一や松任谷由実らが愛した世界的な名スタジオを通して、もの作りの醍醐味を映し出す。『音響ハウス Melody-Go-Round』相原裕美監督インタビュー
 
坂本龍一、松任谷由実、矢野顕子、佐野元春、葉加瀬太郎からヴァン・ヘイレンのボーカル、David Lee Rothまで、国内外問わずアーティストたちが信頼を置き、最高の音楽を追求し続けている銀座のレコーディングスタジオ「音響ハウス」。昨年、創立45周年を迎え、さらに新しい音楽を生み出し続ける音響ハウスにスポットを当てた音楽ドキュメンタリー『音響ハウス Melody-Go-Round』が、11 月 14 日(土)より渋谷ユーロスペース、11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、12月18日(金)より京都シネマ、今冬元町映画館他全国順次公開される。
 
 監督は『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』の相原裕美。音響スタジオのもの作りを支え続けている各種エンジニアの仕事に密着する他、子連れでレコーディングに臨んだ時のエピソードを語る矢野顕子や、1年間スタジオをおさえ、スタジオに住んでいたと当時の様子を振り返る坂本龍一をはじめ、音響スタジオで自身のキャリアを確立させる名盤を生み出したアーティストたちが続々登場。サディスティック・ミカ・バンドの「WA-KAH! CHICO」や大瀧詠一の多重コーラスが秀逸な「朝日麦酒三ツ矢サイダー`77”」、伝説の忌野清志郎+坂本龍一「い・け・な・いルージュマジック」など音響ハウスで生まれた名曲秘話も続々披露される。
 
 
sub②.jpg
 
 さらに、長年の名コンビである佐橋佳幸、飯尾芳史が本作の主題歌「Melody-Go-Round」をプロデュース。大貫妙子が作詞を担当、ドラムの高橋幸宏やバイオリンの葉加瀬太郎をはじめ、音響ハウスを愛するミュージシャンたちが集まり、レコーディングする風景も挿入され、もの作りの現場を垣間見ることができるのも本作の醍醐味だ。ベテランミュージシャンに混じり、ボーカルとして奮闘する13歳の新鋭シンガー、HANAの存在感がひときわ光る。
本作の相原裕美監督に、お話を伺った。
 
 
 
main.jpg
 
――――テーマ曲「Melody-Go-Round」のレコーディング時に、作曲、編曲、そしてプレーヤーでもある佐橋さんが「みんなで顔を見合わせて(レコーディング)するのが80年代っぽくていいよね」と語っておられましたが、逆に今のレコーディングの主流は?
相原:今はほとんどコンピューターでサウンドを打ち込み、しかもそれを一人でこなしているケースも多いので、みんなでスタジオに集まり、一緒に音を出して作るというのはなかなかないでしょうね。実際に音響ハウスのような大きなスタジオはどんどん潰れてしまい、サンプリングの音を使って誰でも簡単にレコーディングできるようになっています。ただし、生音ではないということですね。
 
――――松任谷正隆さんも、家でレコーディングができるけれど自分の枠を飛び出したいならスタジオに行けとおっしゃっていましたね。
相原:音響ハウスに限らずですが、他のミュージシャンと一緒にレコーディングをすることで新しいアイデアをもらうこともあるし、自分の考えていたものとは違うけれどもっと面白いものができる。それがものづくりの醍醐味でもあります。
 
――――音響ハウスを支える人、音響ハウスで音楽をつくってきたミュージシャンや彼らと共にその楽曲を世に送り出してきたプロデューサーなど、多くの人たちのインタビューが満載ですが、どうやって人選をされたのですか?
相原:プロデューサーでもある音響ハウス社長の高根護康さんが音響ハウスの技師や、音響ハウスでレコーディングしていたミュージシャンの皆さんをリストアップしてくれました。主題歌「Melody-Go-Round」は、この映画を作るにあたって佐橋さんとミーティングをしているうちに曲を作った方がいいのではという話が浮上し実現したもので、レコーディングに参加したミュージシャンたちは、佐橋さんが人選してくださいました。
 
 
sub①.jpg
 
――――「Melody-Go-Round」のボーカルに13歳のHANAさんを抜擢しています。ボーカル選びは一番の肝だったと思いますが、HANAさんを選んだ理由は?
相原:この映画は決して懐古主義の作品ではありません。スタジオの歴史を振り返って賞賛するだけではつまらないし、音響ハウスはまだこれからも続いていくわけですから。今も続いているものを入れるということで主題歌を作ることにし、そのミュージシャンとしてドラムの高橋幸宏さんをはじめ音響ハウスをよく利用し、音響ハウスをすごく好きな方々に集まってもらいました。ただそこにベテランのボーカルを入れてしまうと一気に古い感じになってしまうので、そこに新しい血を入れて未来に繋げる形にしたいという狙いで若いボーカルを探し始めたんです。HANAさんは「Melody-Go-Round」を佐橋さんと共同編曲した飯尾芳史さんの事務所に所属しているシンガーで、一度歌ってもらったのを聞いてオファーしました。
 
――――多くの方のインタビューを通して、相原監督ご自身が音響ハウスに対して見出したことは?
相原:劇中でも終盤のコメントに出てきますが、音も含めてすごく真面目なスタジオなんですよね。音楽業界は派手な印象がありますが、冒頭登場する音響ハウスのベテランメンテナンスエンジニアの遠藤誠さんのような職人のみなさんがしっかり業界の土台を支えているのです。
 
――――音響ハウスでレコーディングすると「エンジニアの作業が狂わない」というコメントもありました。
相原:音響ハウスに限らず、最終的に音楽は録音後ミックスという作業が入ります。歌やギター、ドラムなどチャンネルがバラバラなものを、最終的にステレオにしてバランスを取る作業なのですが、よくあるのがラジオで聞くと歌が小さいとか、全体的なレベルが小さいという現象です。そういう部分が「狂わない」ということで、スタジオで聞いたものと、一般的に聞くものとの差があまりないという意味でしょうね。
 
――――音響ハウスが海外の有名ミュージシャンにも愛されていることがよくわかるエピソードとして、ヴァン・ヘイレンのボーカル、David Lee Rothさんも登場しています。
相原:映画のために収録したのではないのですが、David Lee Rothさんが音響ハウスでレコーディングをしていた時のことを自身のYoutubeチャンネルにアップしていたんです。音響ハウスから映画に入れることを許可していただいて、実現したシーンですね。
 
 
sub③.jpg
 
――――最後に「いい音とは?」という質問を投げかけた時、みなさんそれぞれの個性が滲む言葉が紡がれ、非常に興味深かったです。特に佐野元春さんが「売れる音」と即答したのにはプロだなと目を見開かされました。
相原:強力だし、すごくいい言葉で、ある意味本当に素直ですよね。映画の構成として、いい音を聴かせることを後半にまとめています。曲を作る過程をみせる。今までの音響ハウスのエピソードを語ってもらうということに加えて、ミュージシャンのいい音を聴かせる。ただ実際に「いい音」と言われても漠然としていますよね。だからこそ、その人の本質が出やすいのではないかと思い、そのような質問を投げました。坂本龍一さんは本気で悩んでいましたし、本当に多様な「音」への思いが出てきたと思います。
 
――――登場したミュージシャンのみなさんは音響ハウスのレコーディングを振り返る時非常にうれしそうに語っておられましたが、特に壁のシミになるぐらいずっと住んでいたという坂本さんは、本当に嬉々としておられましたね。
相原:坂本さんは今ニューヨーク在住ですが、来日した時にお時間をいただき、インタビューをするなら音響ハウスのスタジオが絶対にいいと思い、当時使っていたスタジオで撮影させていただきました。松任谷正隆さん、由実さんも第一スタジオに入ると当時のことが思い出されるようでしたね。
 
 
sub④.jpg
 
――――最後に、これからご覧になるみなさんにメッセージをお願いいたします。
相原:もの作りは音楽業界に限らず、映画や絵画のようなアート系から町工場で作るような産業系まで様々ありますが、共通しているのはものを作るクリエイティブな気持ちだと思います。若い人にも観ていただき、クリエイティブなところに飛び込んでほしい。一人でもの作りをするのもいいけれど、大勢と何かを作る場所に飛び込んでほしい。そういうことの大事さが伝わればうれしいです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『音響ハウス Melody-Go-Round』
(2019年 日本 99分)
監督:相原裕美
主題歌 Melody-Go-Round / HANA with 銀音堂
作詞:大貫妙子 作曲:佐橋佳幸 編曲:佐橋佳幸、飯尾芳史 ブラス編曲:村田陽一 
出演:佐橋佳幸、飯尾芳史、高橋幸宏、井上鑑、滝瀬茂、坂本龍一、関口直人、矢野顕子、吉江一男、渡辺秀文、沖祐市、川上つよし、佐野元春、David Lee Roth、綾戸智恵、下河辺晴三、松任谷正隆、松任谷由実、山崎聖次、葉加瀬太郎、村田陽一、本田雅人、西村浩二、山本拓夫、牧村憲一、田中信一、オノセイゲン、鈴木慶一、大貫妙子、HANA、笹路正徳、山室久男、山根恒二、中里正男、遠藤誠、河野恵実、須田淳也、尾崎紀身、石井亘 <登場順> 
11 月 14 日(土)より渋谷ユーロスペース、11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、12月18日(金)より京都シネマ、今冬元町映画館他全国順次公開!
公式サイト →:onkiohaus-movie.jp
©2019 株式会社 音響ハウス
 

asagakuru-pos-2.jpg

米国アカデミー賞の国際長編映画賞の日本代表に選出!

大阪・関西万博プロデューサーも務める地元関西で

河瀨直美監督凱旋舞台挨拶

 

10月23日(金)より絶賛公開中の“特別養子縁組”を題材にした『朝が来る』。直木賞・本屋大賞受賞ベストセラー作家・辻村深月によるヒューマンミステリーを映画化した本作の監督を務めた、河瀨直美監督が、出身地である奈良のシネマサンシャイン大和郡山、関西万博プロデューサーも務める大阪、TOHOシネマズ梅田にて、公開記念舞台挨拶を行いました。


【日時】10 月 31 日(土)
【場所】TOHO シネマズ 梅田・本館スクリーン8 12:30 の回、上映終了後
【登壇】河瀨直美 監督
※当日はシネマサンシャイン大和郡山でも舞台挨拶を実施しましたが、レポートはTOHOシネマズ 梅田での内容となります。



大和郡山③ (2).jpg満員の劇場で、地元関西の温かい拍手で迎えられた、河瀨直美監督。今やカンヌ国際映画祭では欠かせない存在となった監督ですが、馴染みのある関西でリラックスした雰囲気で舞台挨拶が始まりました。先ずは映画を観終わったばかりの観客に「この映画に出会っていただきありがとうございます」と挨拶。


大和郡山⑤ (2).jpg■本作が米国アカデミー賞の国際長編映画賞候補の日本代表に選出されました!最終的なノミネート確定はまだ先となりますが、まずは日本代表に選ばれた今のお気持ちは?

本当に感謝と、コロナがあってこんな状況ですが、これがきっかけでたくさんこの映画を観てもらえることになるならありがたいなと思います。本来は 6 月公開で、カンヌにも選ばれていた作品だったのに中々皆さんの前に持ってくることが出来なかったので。公開日が『鬼滅の刃』の直後だし、(主演の井浦)新くんも缶コーヒーでコラボしてるし、みんなあっちなん?と思ったら一抹の寂しさがあったんですが(笑)、 けれど映画館に若い人が戻ってきてくれることは本当にありがたいことだと思っています。

 

■関西で舞台挨拶するということ、関西への想いは?

ビジュアルアーツ専門学校に通って 18 歳で映画を作り始め、ここらへんのミニシアターや映画館に通い詰め、自主制作からコツコツやってきて今ここに至っているので、どうしても関西で舞台挨拶がしたかったんです。なんとか調整して、1 週遅れてしまいましたが、今日ここで舞台挨拶が出来てとても幸せです。昔なかった建物が建ったり、街はどんどん変わっていきますが、あの時の自分、っていうのはいまもここにあり続けています。本当に愛着があります。

 

■コロナ禍の映画について

(本作の公式 Instagram 内のトークライブ)”あさくるトーク”で、ジュリエット・ビノシュが登場してくれたんですが、フランスはまたロックダウンしたり、実は本作は一昨日カンヌのメイン会場で上映されたんですが、そこもコロナ対策でいつもと全く違う風景だったりしました。世界的なパンデミックの中、日本が経済と両輪でなんとか進めていけているのは日本人の気質だったり、他にも色々なものが手伝っているとは思いますが、日本人は昔から病気を神様みたいに祀るなどして、「無くすことは出来ないならうまく付き合っていこう」としてきたように思います。特に奈良の大仏の建立には天然痘というウイルスが関わっているし、こういう時にこそ何かが生まれるんじゃないかと思います。

 

asagakuru-500-3.jpg

 

■本作は 40 代男性に一番刺さる?!

鑑賞後に 40 代の男性が本当に泣き崩れたという話をよく聞くので、その年齢の方、ぜひどこが刺さったか教えて欲しいです。いまそれを募集していて分析しているんです。それが分かったら、40代から50代の俳優さん、例えば齋藤工さんとか、他、文化人や音楽家の方などと”あさくるトーク”メンバーで座談会したいと思っているんです(笑)

 

■キャスト、演出について(河瀨組と言えば、「役積み(やくづみ)」という準備があるとのことですが…)

永作さんと井浦さんは本当に夫婦でした。ちょっと関係性も面白くて弟みたいな感じで。それぞれが「役積み」をしっかりしてきてくれることによって、役そのものになって、本番で脚本にないセリフを言ってくれたりもしました。本当に素晴らしいシーンが撮れました。「役積み」というのはそれぞれの役の履歴書というか、いままでどういった人生を生きてきて、いまどう感じているのかを紙に書いてきてもらいます。

 

最後に、「新しく生まれてくる命、子供たちがこの世界の中で誰しもが幸せであってほしいと願っている、みんなそう思っているけれど、やっぱり自分たちのことで必死になっている社会があって、そこが見えなくなってしまっています。それはもしかしたらなんの罪でもないけれど、本作が、私たちのもう一歩先の明るい未来への力になっていけばいいなと思います。それで、朝斗が最後に「会いたかった」って言った言葉を皆さんの中でも誰かに伝えていってもらえたらと思います」と締めくくり、和やかに舞台挨拶は終了しました。


『朝が来る』

原作:辻村深月(「朝が来る」文春文庫)
監督・脚本・撮影:河瀨直美
出演:永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子、佐藤令旺、中島ひろ子、平原テツ、田中偉登、駒井蓮、利重剛他
配給:キノフィルムズ ©2020「朝が来る」Film Partners
2020年 日本 2時間19分
公式サイト:http://asagakuru-movie.jp/
作品紹介:http://cineref.com/review/2020/10/post-1063.html

TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、あべのアポロシネマ、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸他 全国公開中!


(オフィシャルレポートより)

月別 アーカイブ