2018年6月アーカイブ
■大好きな渥美清さんに重なる芸名「渋川清彦」
■高校の後輩、飯塚監督との初タッグ。
■渋川市で昔から知っていた場所、気になる場所を映画のロケ地に。
■何でも面白がってくれる大女優、余貴美子さん。
■撮影後は飲みに誘って、台本持参で台詞合わせ。
■故郷に「帰る」と「戻る」ではニュアンスが違う。
■飯塚監督から出た続編話、洋二郎が主人公でなくてもいい。
「ようやく自分の元を離れて映画がお客さんの元に届いているというのを実感しております。関わってくれたスタッフ・キャストが全力を注いだ映画なので、ぜひ楽しんでください」(是枝)、「こんなに大きな劇場でこの映画を観てもらえるというのは最初は想像もしていなかった。ちょっと感動としか言いようがない」(リリー)、「(この回の舞台挨拶に入ってみて)入ってきて、うわ!大阪っぽいって思っていました」(安藤)と、大きなスクリーンや満席の観客を前に、感無量の面持ちで挨拶した。
夫婦役で初共演したリリー・フランキーと安藤サクラだが、お互いの印象について、リリー・フランキーは「すごく理想の女性。すごいお芝居ができる人って、人間としても女性としてもやっぱりすごい」と絶賛。さらに、「卵形の輪郭のたれ目が好きなんですよ。そしてまた、安藤さんってすごいきれいなときとすごいブスなときがある。それを演じられる女優さんってすごい」と絶賛は止まらない。劇中は女優陣が全員すっぴんで挑んだため、「こういうところ(舞台挨拶)で会うと、化粧してるから、照れるんですよ」と舞台上での心境を明かした。
リリー・フランキーは本作で是枝監督との4度目のタッグとなるが、今回の撮影を振り返り、「こんなに長く一緒の撮影は初めてで、是枝監督の空気を堪能できました。希林さんとも結構長く一緒にいて、この人って本当にすごい人だということを堪能しましたね。台本から、できあがりの何かを想像し、俯瞰から自分の役を見ている。女優さんとしても素晴らしいし、おばあさんとしても超面白い。空き時間もずっと不動産の話と芸能裏情報をえんえんとしゃべっていて。こどもが嫌いなのよ、といいながら子供たちと遊んでいて、すごく繊細で優しくて不器用なかわいいひとです」と樹木希林のことも絶賛した。
『ゆずりは』滝川広志(コロッケ改め) 会見
(2018年6月5日(火)大阪・天王寺アポロシアターにて)
本名・滝川広志に名前を変えて臨んだ映画『ゆずりは』は、(元)コロッケの「芝居をしない芝居」の熱さが滲み出た“注目作”だ。先日、大阪・天王寺のアポロシネマで合同会見に臨んだ役者・滝川は「役の水島は動きの少ない、自分ではあり得ない人、だから役づくりのために(撮入の)1~2日前から3週間、現場近くのホテルに泊まり込んだ」という。
「(コロッケと)バレないように、帽子かぶったりした。読売テレビ系“お笑いスター誕生”から芸人やってきたけど、動きのない“葬儀屋”は自分の対極にある役。選ばれた時に“ボクじゃないんじゃないか”と。どっきりカメラだと思ったもの。ふざけないで、いつどこからカメラが出てくるの、だった。撮影前は怖い思いが先だった」。
この葬儀屋に新入社員・高梨歩(柾木玲弥)入ってきて、滝川演じるベテラン水島から教育を受けるところが見どころに。若い役者との競演になったが、滝川は「新入社員が主役に見えたら、それでいいと思った」という。
――役者コロッケ」について?
「(自分は)よくよく人の前に出るタイプだなあと思う。38年間、それでやってきた。この映画では大きい声も出さない。エキストラが“コロッケさん、どこ?”って聞いたぐらい。これでいいんだ、と」。いつもは偉そうにしている役が多いけど、水島はどこにでもいるおっちゃん。もともと主役やりたい、と思っていないし、3~4番手で十分なんです」。
――役に抵抗はなかった?
「プロデューサーさんから(この役を)頂いたようです。水島はコロッケさんで、と。最初はやれるかな? でした」。映画見たらハマっている。「舞台と映画は違いますね。舞台では“余計なこと”をするのが仕事。この映画では“部長”と呼ばれて、ただ振り返るだけ。この振り向き方ひとつで(人間が)分かる。ちょっとやってみましょうか。動き過ぎたら“コロッケ”が見えてしまうから。すごく大変でした。面白い水島部長はいくらでもやり方がある。人前で泣かない、笑わない。昔の日本人にはけっこうこんな人が多い」。
――役づくりは?
「何もしないこと」が何よりも大変だったという。「役を作り込む時はその役に入り込むから。こんなに“何もしない”のではストレスたまりまくりですよ。役者なら当たり前ですけどね。今回は笑ってない。笑ったら(新入り)高梨を認めたことになる。水島はドキュメンタリーの一種ですね。続編の話は今のところない、けど出来たらやりたい」。
「今回は、まず(テンション高くない)水島の声を決めた。揺れ動く自分がいた。演技ひとつで台無しになったりすることがよく分かった」。「最初に動かなくていい」と言われた。それがよく分からなかったが、芝居をしなくても、出てきただけで存在感十分。こんな映画は珍しい。「水戸黄門で言えば角さんと言ったところですかね。昔の映画ならこういう役者さんはたくさんいました」。
――新たな名前で「新境地」を開いた?
「これから頂く仕事で、“ゆずりは”見て“邪魔にならないんだ”と思ってもらえそう。やっぱり続編やりたいなあ」。
◆滝川広志(コロッケ)
1960年3月13日熊本県生まれ。1980年8月読売テレビ系「お笑いスター誕生」でデビュー。東京・明治座、大阪・新歌舞伎座など大劇場で座長公演を務め、モノマネレパートリーは300種以上に及ぶ。中国、韓国など海外公演でも成功している。2014年文化庁長官表彰、2016年日本芸能大賞など受賞。
『ゆずりは』
“ゆずりは”1年を通じて緑の葉を絶やさない“常緑樹”、親から子へ、子から孫へと受け継がれていく「命のバトン」のことという。映画の舞台は葬儀社。そこに長年勤めるベテラン職員・水島(コロッケ=滝川広志)が主役という地味な映画だが“お笑いの人”コロッケが本名に変えて出演した映画は、本人の意気込み通り、滝川が一度も笑うことなく、見事な存在感を見せ、「死とは何か」「生きることの意義とは」を感じさせて説得力ある映画になった。役者コロッケを知らない人も、この一作で「映画」で名を残すと思わせる。
葬儀社が主な舞台(新谷亜貴子原作)だから、すべて「死」と葬儀にまつわる物語。だが、映画に登場する葬儀は多くない。いつも沈着冷静な水島が、社長からピアスの若者の採用を依頼される。無神経でがさつな青年・高梨(柾木玲弥)に職場のほとんどが反対したが、水島には感じるものがあり「私が教育する」あえて引き受ける。
彼の最初の仕事は盲目の夫を亡くした妻。なぜか、喪主から「ぜひ高梨さんに」と頼まれる。水島から「葬儀中は絶対泣くな」と言われていたことも忘れておいおい泣く。「亡き夫が好きだった薔薇」が赤だったに違いないと、モノクロ写真をすべて赤い薔薇にして喪主を感動させる。
次の仕事は「いじめから飛び降り自殺した」女子高生。実は水島も妻を自殺で亡くして以来、深く傷ついていた。だがプロの葬儀屋・水島は、高梨らの心配をよそに「私がやります」と告げる…。だが高梨は葬儀中、参列者の同級生たちが騒いでいるのにたまりかね、声を荒らげて「出ていけ」とたしなめてしまう。葬儀社人にあってはならない行為だった。だが、高梨の“一喝”は水島にも自分のことのように思ったに違いない。
映画はまるでミステリーのように、数々の“秘密”が散りばめられており、最後の章ですべてが明らかになるという見事な展開を見せる、推理小説風の隠し味も秀逸。そんなテクニックよりも、人間存在の本質に迫った“異色の作品”。久しぶりにじっくり見入ってしまう“感動作”であった。
■2018年 日本 1時間51分
■出演:滝川広志、柾木玲弥、勝部演之、原田佳奈、高林由紀子、島かおり
■監督:加門幾生
■原作:新谷亜貴子
■コピーライト:(C)「ゆずりは」製作委員会
■公式サイト: http://eiga-yuzuriha.jp/
■公開日:2018年6月16日(土)~第七藝術劇場、神戸国際松竹、他イオンシネマ系など全国順次公開
(安永 五郎)
「本当にすごいですね。『おめでとうございます』ですね」。
■是枝組と過ごした時間は、「おつりがくる」どころじゃない。
■母性が溢れ出ている産後間もない時に演じた、真逆な境遇の信代。