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ドッキリカメラかと思った!?『ゆずりは』滝川広志(コロッケ改め) 会見

yuzuriha-550.jpg『ゆずりは』滝川広志(コロッケ改め) 会見

(2018年6月5日(火)大阪・天王寺アポロシアターにて)


本名・滝川広志に名前を変えて臨んだ映画『ゆずりは』は、(元)コロッケの「芝居をしない芝居」の熱さが滲み出た“注目作”だ。先日、大阪・天王寺のアポロシネマで合同会見に臨んだ役者・滝川は「役の水島は動きの少ない、自分ではあり得ない人、だから役づくりのために(撮入の)1~2日前から3週間、現場近くのホテルに泊まり込んだ」という。


「(コロッケと)バレないように、帽子かぶったりした。読売テレビ系“お笑いスター誕生”から芸人やってきたけど、動きのない“葬儀屋”は自分の対極にある役。選ばれた時に“ボクじゃないんじゃないか”と。どっきりカメラだと思ったもの。ふざけないで、いつどこからカメラが出てくるの、だった。撮影前は怖い思いが先だった」。


yuzuriha-500-2.jpgこの葬儀屋に新入社員・高梨歩(柾木玲弥)入ってきて、滝川演じるベテラン水島から教育を受けるところが見どころに。若い役者との競演になったが、滝川は「新入社員が主役に見えたら、それでいいと思った」という。


――役者コロッケ」について?
「(自分は)よくよく人の前に出るタイプだなあと思う。38年間、それでやってきた。この映画では大きい声も出さない。エキストラが“コロッケさん、どこ?”って聞いたぐらい。これでいいんだ、と」。いつもは偉そうにしている役が多いけど、水島はどこにでもいるおっちゃん。もともと主役やりたい、と思っていないし、3~4番手で十分なんです」。


――役に抵抗はなかった?
  「プロデューサーさんから(この役を)頂いたようです。水島はコロッケさんで、と。最初はやれるかな? でした」。映画見たらハマっている。「舞台と映画は違いますね。舞台では“余計なこと”をするのが仕事。この映画では“部長”と呼ばれて、ただ振り返るだけ。この振り向き方ひとつで(人間が)分かる。ちょっとやってみましょうか。動き過ぎたら“コロッケ”が見えてしまうから。すごく大変でした。面白い水島部長はいくらでもやり方がある。人前で泣かない、笑わない。昔の日本人にはけっこうこんな人が多い」。


yuzuriha-500-1.jpg――役づくりは?
「何もしないこと」が何よりも大変だったという。「役を作り込む時はその役に入り込むから。こんなに“何もしない”のではストレスたまりまくりですよ。役者なら当たり前ですけどね。今回は笑ってない。笑ったら(新入り)高梨を認めたことになる。水島はドキュメンタリーの一種ですね。続編の話は今のところない、けど出来たらやりたい」。

「今回は、まず(テンション高くない)水島の声を決めた。揺れ動く自分がいた。演技ひとつで台無しになったりすることがよく分かった」。「最初に動かなくていい」と言われた。それがよく分からなかったが、芝居をしなくても、出てきただけで存在感十分。こんな映画は珍しい。「水戸黄門で言えば角さんと言ったところですかね。昔の映画ならこういう役者さんはたくさんいました」。


――新たな名前で「新境地」を開いた?
「これから頂く仕事で、“ゆずりは”見て“邪魔にならないんだ”と思ってもらえそう。やっぱり続編やりたいなあ」。


◆滝川広志(コロッケ)
1960年3月13日熊本県生まれ。1980年8月読売テレビ系「お笑いスター誕生」でデビュー。東京・明治座、大阪・新歌舞伎座など大劇場で座長公演を務め、モノマネレパートリーは300種以上に及ぶ。中国、韓国など海外公演でも成功している。2014年文化庁長官表彰、2016年日本芸能大賞など受賞。


『ゆずりは』

yuzuriha-pos.jpg“ゆずりは”1年を通じて緑の葉を絶やさない“常緑樹”、親から子へ、子から孫へと受け継がれていく「命のバトン」のことという。映画の舞台は葬儀社。そこに長年勤めるベテラン職員・水島(コロッケ=滝川広志)が主役という地味な映画だが“お笑いの人”コロッケが本名に変えて出演した映画は、本人の意気込み通り、滝川が一度も笑うことなく、見事な存在感を見せ、「死とは何か」「生きることの意義とは」を感じさせて説得力ある映画になった。役者コロッケを知らない人も、この一作で「映画」で名を残すと思わせる。


葬儀社が主な舞台(新谷亜貴子原作)だから、すべて「死」と葬儀にまつわる物語。だが、映画に登場する葬儀は多くない。いつも沈着冷静な水島が、社長からピアスの若者の採用を依頼される。無神経でがさつな青年・高梨(柾木玲弥)に職場のほとんどが反対したが、水島には感じるものがあり「私が教育する」あえて引き受ける。


彼の最初の仕事は盲目の夫を亡くした妻。なぜか、喪主から「ぜひ高梨さんに」と頼まれる。水島から「葬儀中は絶対泣くな」と言われていたことも忘れておいおい泣く。「亡き夫が好きだった薔薇」が赤だったに違いないと、モノクロ写真をすべて赤い薔薇にして喪主を感動させる。


yuzuriha-500-3.jpg次の仕事は「いじめから飛び降り自殺した」女子高生。実は水島も妻を自殺で亡くして以来、深く傷ついていた。だがプロの葬儀屋・水島は、高梨らの心配をよそに「私がやります」と告げる…。だが高梨は葬儀中、参列者の同級生たちが騒いでいるのにたまりかね、声を荒らげて「出ていけ」とたしなめてしまう。葬儀社人にあってはならない行為だった。だが、高梨の“一喝”は水島にも自分のことのように思ったに違いない。


映画はまるでミステリーのように、数々の“秘密”が散りばめられており、最後の章ですべてが明らかになるという見事な展開を見せる、推理小説風の隠し味も秀逸。そんなテクニックよりも、人間存在の本質に迫った“異色の作品”。久しぶりにじっくり見入ってしまう“感動作”であった。


■2018年 日本 1時間51分
■出演:滝川広志、柾木玲弥、勝部演之、原田佳奈、高林由紀子、島かおり
■監督:加門幾生
■原作:新谷亜貴子
■コピーライト:(C)「ゆずりは」製作委員会
公式サイト: http://eiga-yuzuriha.jp/

公開日:2018年6月16日(土)~第七藝術劇場、神戸国際松竹、他イオンシネマ系など全国順次公開


(安永 五郎)