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「吉野にいることは"ホーム"にいるようなもの」ジュリエット・ビノシュ、吉野への感謝を語る。『Vision』初日大阪舞台挨拶

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「吉野にいることはホームにいるようなもの」ジュリエット・ビノシュ、吉野への感謝を語る。『Vision』初日大阪舞台挨拶 
(2018・6・8 大阪ステーションシティシネマ) 
登壇者:ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏、河瀬直美監督 
 
『あん』『光』の河瀨直美監督が、フランスの大女優、ジュリエット・ビノシュを迎え、吉野の山深い森を舞台に撮影した最新作『Vision』。6月8日に大阪ステーションシティシネマで行われた公開初日の舞台挨拶では、主演ジャンヌ役のジュリエット・ビノシュ、山守の男、智役で河瀬監督とは3度目のタッグとなる永瀬正敏、そして河瀨直美監督が登壇した。ジュリエット・ビノシュは今回が初となる大阪での舞台挨拶で、白いロングドレス姿で会場に現れると、観客から大きな拍手が送られた。
 
 
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カンヌ国際映画祭での出会いがきっかけとなり、実現した本作。二人の橋渡し役になったプロデューサーのマリアン・スロットさんもビノシュと共にパリから来場するなど、日本=フランス合作ならではの熱気が漂う中、河瀬監督はビノシュの知られざる一面として「爆買いしていました。職人の細やかな作業に共感し、吉野伝統の手漉き和紙や、醤油、あとは私の下着が奈良のオーガニックコットンのお店のものなのですが、そこで下着も爆買いして帰国していました」とチャーミングな点を明かす一方、「仕事に対する姿勢がプロフェッショナルで、研ぎ澄まされていて、“一流”という言葉がしっかりあてはまる。非常に女性として尊敬できる方」とその仕事ぶりに賛辞を送った。さらに奈良にこだわって映画を作り続けることについては「奈良は私が縁あって生まれ、暮らしている場所。離れる理由はありません。作家にとっては、そこを深く掘り下げることに世界とつながります。映画祭でみなさんとお話するにつけ、その思いが強くなりました」。
 

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撮影中は吉野町の宿坊で暮らしていたというビノシュは、当時の生活を振り返り、「吉野の生活は本当に静けさの中、友情を感じ、自然と自分がつながったという気持ちで滞在していました。宿坊の神主さんもとても良くして下さり、吉野の雰囲気や大きな木、空気感、光を堪能しました。私が和紙をたくさん買ったのは、私自身が絵を描く人間で、自分のために買ったので、まだ誰にも渡していません。絶対再開しようと思っています。吉野は伝統文化がすごく残っていて、それが感動的でした。吉野にいることは、ホームにいるようなもので、家族的な雰囲気を感じますし、愛され、守られているという気持ちでした。まさに『Vision』という映画を象徴していると思います」と特別な体験になったことを明かし、感謝の気持ちを表現した。
 
さらに、河瀬監督の撮影方法にも言及し、「とても緻密。河瀬直美さんは預言者です。彼女の物の見方や存在の仕方が、『預言者だな』と思わせます。本当に素晴らしい出会いでした。他の共演者の皆さんも素晴らしかったですが、なかなかお話できなかったのは、河瀬監督のご希望で『私語は謹んで』と言われたからです。永瀬さんは、とてもおもてなしの心があり、デリケートな方。少しシャイですが、私を迎えてくれました。映画は順撮りで、愛や慎み深い精神、そして希望を感じながら撮影をしました」と、当時を振り返った。
 
 

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河瀬監督から、「千太郎(『あん』)のときは河瀬組の洗礼を受け、共演者と朝挨拶ができないことにストレスを感じていたようですが、吉野ではすっかり河瀬組の顔となり、河瀬組初めての俳優たちにも先輩としてアドバイスしてくれました。 特に岩田君は一緒に泊まったり、真木割りを教えたりしてくれたので、この二人は大丈夫だと思いました」 と熱い信頼を寄せられている永瀬。今回の現場でもあまり話さなかったのも演出の一つとしながら、「役者同士が素に戻って会話をすると、気持ちが切れてしまいます。河瀬監督のやり方は『役を生きる』というやり方ですから、ジュリエットさんは撮影中、なぜこの人はしゃべらないのかと思われたかもしれませんね。 今日、明日いっぱいしゃべらせてもらいます」とシャイも演出の内だったことを明かした。
 
 
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初日舞台挨拶ならではのサプライズも用意され、お客様からの花束贈呈や、逆にキャストからご来場のお客様に吉野杉の苗木をプレゼントする趣向も。さらに、「三代目J Soul Brothers」の岩田剛典演じる鈴の赤ちゃん時代役として映画に出演した夏葉ちゃんがお母さんに抱かれて登場。撮影前日に山形を訪れていた河瀬監督が、山形空港で偶然出会い、飛行機に乗っている間ずっと様子を観察して「飛行機の中で一度も泣かなっかったんです。母の愛情に育まれてそこにいる感じがして、飛行機を降りてから『映画監督の河瀬直美ですが、吉野の山に来ていただけますか。明日撮影なのですが』とお願いしました」とスカウト裏話を披露。終始ご機嫌な夏葉ちゃんに、ビノシュや永瀬も笑顔がこぼれた。
 
 
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最後に河瀬監督は、「映画の初日舞台挨拶は東京が普通ですが、今日は本当に特別に関西から舞台挨拶をさせていただくことができ、しかもジュリエット・ビノシュさんは初めての関西での舞台挨拶です。そのように心を寄せてくださっているジュリエットは、この作品に心から入り込んでくださった。そしてパリから飛んできてくださった。その思いはこのフィルムに刻まれています。私たちはよく『やっと出会えた』と言っているのですが、それは私(河瀬)ということだけでなく、出会いたかったものに出会った経験だと感じています。最初、吉野を訪れるために近鉄電車に乗り、トンネルを過ぎた時にジャンヌは涙を流します。その涙の中に、きっと様々なことを共有し、この映画の美しい旅をしていってもらえると信じています。永瀬さんは、山の男、智を魂ごと演じてくれ、現場でも薪割りや山の様子を見守る所作の中で、愛犬のコウとの時間を育んでくれました。
 

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今でも私たちは家族のように映画の初日に立つことができ幸せです。あさってにはフランスに戻ってしまうジャンヌ、智も新作の現場に戻ってしまうのですが、私たちはいつでもこの疑似家族をもって、皆さんの元にもう一度現れる。そんな存在でいたいと思います。今日はありがとうございました」と挨拶、感極まって目に涙が光るビノシュが河瀬とハグを交わす姿も印象的だった。ジュリエット・ビノシュと吉野の森のセッションのような美しく、詩情豊かな物語。森の命、人間の命、そして目に見えない精霊の営みをも感じとれる。吉野の森の美しい四季と共に、五感を研ぎ澄ませて堪能してほしい作品だ。
(江口由美)
 

<作品情報>
『Vision』(2018年 日本=フランス 110分)
<監督・脚本・編集>河瀨直美
<出演>ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏、岩本剛典、美波、森山未來、コウ、白川和子、ジジ・ぷぅ、田中泯(特別出演)、夏木マリ
2018年6月8日(金)~全国ロードショー
公式サイト⇒http://vision-movie.jp/
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