安藤サクラ、リリー・フランキーは「人生経験のある老犬」みたい!?
『万引き家族』公開記念舞台挨拶@TOHOシネマズ梅田
(2018.6.10 TOHOシネマズ梅田)
登壇者:リリー・フランキー、安藤サクラ、是枝裕和監督
先日開催された第71回カンヌ国際映画祭【コンペティション部門】にて最高賞パルムドールを受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』が6月8日より全国ロードショーされ、現在大ヒット公開中だ。この公開を記念して、6月10日TOHOシネマズ梅田スクリーン1で舞台挨拶が行われ、上映前に主演のリリー・フランキー、安藤サクラ、是枝裕和監督が登壇した。
「ようやく自分の元を離れて映画がお客さんの元に届いているというのを実感しております。関わってくれたスタッフ・キャストが全力を注いだ映画なので、ぜひ楽しんでください」(是枝)、「こんなに大きな劇場でこの映画を観てもらえるというのは最初は想像もしていなかった。ちょっと感動としか言いようがない」(リリー)、「(この回の舞台挨拶に入ってみて)入ってきて、うわ!大阪っぽいって思っていました」(安藤)と、大きなスクリーンや満席の観客を前に、感無量の面持ちで挨拶した。
夫婦役で初共演したリリー・フランキーと安藤サクラだが、お互いの印象について、リリー・フランキーは「すごく理想の女性。すごいお芝居ができる人って、人間としても女性としてもやっぱりすごい」と絶賛。さらに、「卵形の輪郭のたれ目が好きなんですよ。そしてまた、安藤さんってすごいきれいなときとすごいブスなときがある。それを演じられる女優さんってすごい」と絶賛は止まらない。劇中は女優陣が全員すっぴんで挑んだため、「こういうところ(舞台挨拶)で会うと、化粧してるから、照れるんですよ」と舞台上での心境を明かした。
一方、安藤は、「落ち着いて自分なんかよりもいろんなものを見ていた一緒に寝ている老犬という感じ」と笑わせると、「なかなかうまくコミュニケーション取れないんですけど、リリーさんとはああやって時間を過ごしたからか、最初から何もなく落ち着いてずっといられるような感じでした」と撮影中の模様を振り返った。さらにリリーは共演の松岡茉優や樹木希林についても「松岡茉優ちゃん演じる役はすごくおばあちゃん子なんですけど、撮影していない時も自然に、茉優ちゃんは希林さんの横に座っているし、どこまでが撮影でどこまでが待ち時間か分からないような感じでした」と二人のエピソードを披露した。
リリー・フランキーは本作で是枝監督との4度目のタッグとなるが、今回の撮影を振り返り、「こんなに長く一緒の撮影は初めてで、是枝監督の空気を堪能できました。希林さんとも結構長く一緒にいて、この人って本当にすごい人だということを堪能しましたね。台本から、できあがりの何かを想像し、俯瞰から自分の役を見ている。女優さんとしても素晴らしいし、おばあさんとしても超面白い。空き時間もずっと不動産の話と芸能裏情報をえんえんとしゃべっていて。こどもが嫌いなのよ、といいながら子供たちと遊んでいて、すごく繊細で優しくて不器用なかわいいひとです」と樹木希林のことも絶賛した。
一方、初めての是枝組となった安藤は撮影の様子を、「(今までとは)本当に違うんです。子供たちを緊張させないようにやっていらっしゃると思うのですが、私たちも変な緊張や準備をしても無駄なので、自然とそこにただ楽しく時間を過ごせる環境にいる。ただ楽しくっていうわけじゃないけど緊張感はあるんです」と振り返った。今回安藤にオファーした理由について、是枝監督は「選んだ人の声を聴いて、家に帰って、脚本を読み始めたときに、自分の中でその役者が動き始めると、あぁ、この人なんだな、って思うんですよね。今回、何度も(企画が出ては)流れた夫婦を、この組み合わせでキャスティングできたっていうのが、自分で自分を一番褒めたいと思っているんです。たまたま町で、(安藤から)声をかけられて、立ち話をちょっとしただけ。信代役はもう少し年齢を高めに設定にしてので、候補に名前が無かったけど、会って話して家に帰って、頭の中でこの二人を並べてみたときに、実年齢の差はあまり関係が無いかもしれないと思って」と、偶然の出会いが奇跡のキャスティングに繋がったのだとか。そんな二人にリリー・フランキーは「たぶん、自分の家の近所をウロウロしていた時だから、すっぴんで(役の)信代に近い感じで歩いてたんじゃないですか」と指摘し、笑いを誘っていた。
さらに今回、共演した子役の城桧吏と佐々木みゆの演出について、是枝監督は「(台本はなく)現場で初めてどんなシーンを撮るのか伝えるんです。耳を使って相手のセリフを聞いてもらってお芝居していく。本当は基本ですが、家に帰ってお母さんと練習すると、それができなくなっちゃうので、それを避けるために考え出した方法で、この15年くらいはずっとそういうやり方をしています」と明かした。さらに、「城桧吏くんという祥汰役の子はどんどん、どんどんお芝居がうまくなっていって、役の成長と共にそれができるようになっていたのが良かったです。うまい役者さんたちと一緒にお芝居をすることが、面白くなっていくんです。こうやってかけあいでお芝居ができていくと、たぶん学んでいったから。あまりお芝居の経験が無い子だったから、最初に経験した現場や共演した役者がこの人たちで本当に良かったなって僕は思っています」
最後に、
「最近まで撮影していた気がしますが、本当にやっと公開になって皆さんに観ていただく事になりまして。監督が思いを込めて丁寧に作ったものなので、こんな大きな劇場で初日を迎えられて本当に嬉しいです。帰りはモヤモヤするかもしれませんが、そのモヤモヤが今回監督が皆さんにお届けしたかった何かなのかもしれないので、お楽しみくださいませ」(リリー)
「大阪の方はとにかく、『ちょっとあんた!』とスーパーとか、近所での拡散はすごく力があるように感じておりますので、楽しみにしております。大阪でいつか、『万引きのお姉ちゃん!』と言われるのをすごく楽しみにしています」(安藤)
「たぶん画面に映った瞬間に、あ、この家族は本当にあそこに暮らしてるな、という風に思えるような、それだけ優れた美術、衣装、撮影、照明、音楽ですし、役者さんたちが本当に素晴らしいです。観終わったあとにこの家族が明日何をしているんだろう、それぞれが明日どこでどんな風に生きているんだろうとを見た方の中で想像を広げていただけるような、そんな映画にしたつもりですので、ぜひそのお土産を持って帰っていただければと思います。お楽しみください」(是枝監督)
と挨拶し、映画同様息がピッタリ合った舞台挨拶に、会場から大きな拍手が送られた。
『万引き家族』
(2018年 日本 2時間)
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、緒方直人、森口瑤子、山田裕貴、片山萌美/柄本明、高良健吾、池脇千鶴/樹木希林他
2018年6月8日~全国ロードショー
「是枝組と過ごした時間、温度はまだ自分の中に残っている」。