2022年7月30日(土)@シネマート心斎橋
ゲスト:バンジョン・ピサンタナクーン監督、サワニー・ウトーンマ(祈祷師・二ム役)、ナリルヤ・グルモンコルペチ(ミン役)
ただ恐怖を煽るだけの映画ではない。
日本人も共感する精霊信仰に潜む恐怖をドキュメンタリータッチで肉迫!
タイ東北部のイサーン地方に残る精霊信仰、代々女性が継承してきた〈女神バヤンの巫女〉について取材中だった撮影隊が偶然に捉えた最恐の悪霊憑依現象は、観る者をトラウマ級の恐怖に陥れる!
取材対象の祈祷師ニムは、撮影隊を引き連れ姉ノイの夫の葬儀に参列し、ノイの娘ミンの異変に気付く。ノイは自分が継承するはずだった〈女神バヤンの巫女〉をニムに押し付け、呪われた家系の男と結婚していたのだ。撮影隊は〈女神バヤンの巫女〉の継承シーンを撮れるかもしれないと期待して、今度はミンを対象に撮影を進めていくと……。
ドキュメンタリー撮影から始まる物語は、万物に宿る精霊を信仰している人々の暮らしや、〈女神バヤンの巫女〉の使命などを映像に収めながら、祈祷師ニムの親族に起こる怪奇現象を実録ものとして描写していく。そのリアルさにグイグイ引き寄せられ、最後は逃れようのない想像を絶する恐怖に突き落とされる。
本作の原案・プロデュースを『チェイサー』(08)、『哭声/コクソン』(16)で、正に脳裏に刻み込まれるような恐怖でその名を轟かせた韓国映画界が誇るナ・ホンジンが務め、『心霊写真』や『愛しのゴースト』『アンニョン!君の名は』で日本でもお馴染みのバンジョン・ピサンタナクーンが監督しているというから、ただ恐怖を煽るだけの映画ではないことは確か。今年の夏、逃れられないホラー体験ができること間違いない!
『女神の継承』は7月29日(金)より全国公開され、30日(土)には大阪・シネマート心斎橋でも舞台挨拶が開催された。タイからバンジョン・ピサンタナクーン監督と、最恐の悪霊に憑りつかれたミンを救おうと奮闘する霊媒師・二ム役のサワニー・ウトーンマさんと、狂暴になったり豹変したりする美しい娘・ミンを体当たりで熱演したナリルヤ・グルモンコルペチさんが来阪し、ヒット公開に期待を込めて挨拶した。
(観客と一緒に、はい、ポーズ!)
――最初のご挨拶。
サワニー:こんばんは~♪ ニム役のサワニー・ウトーンマです。
ナリルヤ:(日本語で)初めまして。皆さんに会えて本当に嬉しいです。『女神の継承』をよろしくお願いします。
監督:大阪には何度も来たことがあります。いつもは大阪アジアン映画祭で上映されているのですが、日本でのロードショー公開は初めてなのでとてもドキドキしています。大阪の皆様に気に入って頂いて、是非クチコミで拡めて頂きたいと思います。
*監督のたってのご希望で、観客から質問を受けることに――。
Q1.次回作はどんな作品ですか?ホラーを撮るとしたらどんなホラーになるのですか?
監督:今いくつかの作品が同時進行中なんですが、まだ言えません。
Q2.タイでは精霊文化が根付いていると聞きましたが、この映画はどんなところに着想を得て作られたのですか?
監督:今回の映画は非常に珍しいケースなんですが、韓国のナ・ホンジンさんが最初は韓国で映画を作ろうとしていたのですが、他の国で撮ったら面白いかなと思われて、元々知り合いだった私に声を掛けて下さったんです。タイの祈祷師がテーマなんですが、私自身全く知らなかったので、時間をかけてリサーチをしました。祈祷師や精霊信仰などについて知らないことが多く、調べながらとてもワクワクしました。
Q3.ドキュメンタリータッチの映画でしたが、演じる上で難しかったことは?
サワニー:第一に大変だったのは自分のニムの役を丁度いいさじ加減で演じることでした。撮影の前のワークショップで役の理解を深めていきました。ただし、その時にどのように演じるかはきっちりとは決めていなかったのです。撮影現場で監督から「これはやり過ぎだから」とか「これはちょっと足りないので」とい風に常に役者と一緒に考えてくれて素晴らしい監督だと思いました。
ナリルヤ:今回ドキュメンタリー風の作品ということで、その役を演じているのですが演じてないようにするのが難しかったです。その土地で生まれ育ったように演じました。脚本には「こういうことをする」とは書いてあったのですが、セリフが書いてなかったので、大体が即興の演技でした。
Q4.(タイの人からタイ語で質問が)韓国から始まった企画ということで、それをタイの文化に置き替えなければならなかったと思いますが、その難しさは?
監督:最初プロットを見た時は韓国版でしたので自分の知らないことだらけでした。でも、タイでリサーチを始めてみると、意外と韓国とタイは似ている部分も多いなと思いました。例えば、祈祷師の代替わりになる時にひどい病になって耐えられない程の症状が出るというのが似ていて、それが面白かったです。それと、あらゆるものに精霊は宿るという新しい視点はタイらしいと思いました。
(舞台挨拶後、サイン会の応じるゲストたち)
Q5.映画製作時に、世界に見せるというインターナショナルの視点はありましたか?
監督:ナ・ホンジンさんと私の名前があるということで、最初から世界で公開されることは分かっていましたが、製作時はそのことは一切に気にしませんでした。いかにタイらしさを表現するかを意識して作りました。ですが、ナ・ホンジンさんから世界の観客の視点で作るようにとアドバイスされ、結局数か国で公開されることになりました。
Q6.劇中の車の後ろに張られた「この車は赤い」というステッカーを祈祷師のおじさんが見て意味深な顔をしていましたが、どういう意味があったのでしょうか?
監督:タイ人の迷信で、厄除けみたいなものです。これが最後の儀式に繋がっていくのですが、説明はこれぐらいにしておきます。今のような質問を受けることが、私やナ・ホンジンさんが目標としていたことが達成されたと思います。観客が自分と繋がることを見つけて色々と疑問に思う、だからこそはっきり書かないで、色々考えて楽しんでもらい議論してもらうことを意図しているからです。ネットのいろんな掲示板を見たのですが、アメリカに殆ど言い当てている人がいて、全員が解っている訳ではないのですが、とても驚きました。
――最後のご挨拶。
サワニー:(日本語で)「私は生きてる!」(笑)
ナリルヤ:サワニーさんが、さっき入口で一所懸命練習していた一言です(笑)。
この映画を応援して下さって本当にありがとうございます。出演者としてとても元気をもらいました。これから先もタイ映画をよろしくお願いします。ありがとうございます。
監督:私の映画は他のアジアの国では公開されているのですが、日本で中々公開されなくて、とても緊張しています。気に入って頂けたら是非クチコミで拡げて頂いて、これからもタイ映画が公開されるよう応援して下さい。よろしくお願いします。
祈祷師役のサワニー・ウトーンマは舞台を中心に活躍されているベテランの女優だが、本作ではドキュメンタリータッチということで、抑えた演技で田舎のおばちゃんを自然体で魅せている。
一方、ナリルヤ・グルモンコルペチは弱冠20歳(撮影当時)でこの難役に体当たりで挑んでいるが、その思い切りの良さは鋭い感性の賜物だろうと思わせるほど。
他にミンの母親・ノイ役のシラニ・ヤンキッティカンも、悪霊から娘を守ろうとする必死さを全身で表現していた。精霊信仰を大切に守る人々の静かなるシーンから始まり、次第に人間の内奥を破壊していく悪霊がエスカレートしていく。その吸引力たるや、この恐怖から逃れられなくなるようだ。
『女神の継承』
原題:The Medium 2021年 タイ・韓国合作 2時間11分 R18+
原案・プロデュース:ナ・ホンジン(『チェイサー』『哭声/コクソン』)
監督:バンジョン・ピサンタナクーン(『アンニョン!君の名は』『一日だけの恋人』)
キャスト:サワニー・ウトーンマ、ナリルヤ・グルモンコルペチ、シラニ・ヤンキッティカン
配給:シンカ 提供:シンカ、エスピーオー
後援:タイ国政府観光庁 協力:OSOREZONE
公式サイト:https://synca.jp/megami/
© 2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.
2022年7月29日(金)~シネマート心斎橋、シネ・リーブル梅田、T・ジョイ京都、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー
(河田 真喜子)