■コメディーの王道を。『迷子の警察音楽隊』や『バグズ・ライフ』に着想を得たオリジナル脚本。
■不機嫌キャラ樋口の演出は、「棒読みでお願いします。感情を抑えて」
■個性豊かなキャラクターの中でキャラ立ちした、樋口の冷めた目線。
■編集で変えられない「台詞のスピード」を大事に。
■キャスト、スタッフ全員が愛している作品。真逆のキャラクターを演じる楽しさに気付いた。
原作は『近キョリ恋愛』をはじめ、女子憧れのラブストーリーを紡ぎ出しているみきもと凜の大ヒットコミック。学校一のモテ男という少女マンガならではのキャラクターを熱演したのは、『全員、片思い』やNHK大河ドラマ『真田丸』で豊臣秀頼を演じ、その演技力に次世代のスタートの呼び声も高い中川大志。周りから浮いてしまうう内気女子が勇気と愛を知り、成長していく姿を瑞々しく演じたのは、『MARS~ただ、君を愛してる~』でも好演、今年は主演作が続く注目株の飯豊まりえ。フレッシュな二人が一生懸命思いを伝え、かけがえのない存在になっていくまでの道のりを全力で見せてくれる直球ど真ん中のラブストーリーだ。
“自分自身の一番奥の神様とともに歩く”窪塚洋介『沈黙―サイレンスー』について語る
(2017年2月4日(土) TOHOシネマズ梅田にて)
登壇者:窪塚洋介
現在公開中の『沈黙-サイレンス-』は、巨匠マーティン・スコセッシ監督(『タクシードライバー』)が、遠藤周作の小説「沈黙」を、28年の歳月をかけて映画化にこぎつけた大作。17世紀、キリスト教が禁じられた日本で棄教したとされる師フェレイラを探し出すためにやってきた宣教師のロドリゴとガルペの案内役となる隠れキリシタンの一人、キチジローを演じた窪塚洋介さんが、2月4日、TOHOシネマズ梅田での上映後、舞台挨拶に立ちました。
観客と一緒に客席で、シークレットで映画を鑑賞していた窪塚さんは、あたたかい拍手の中、舞台に向かい、映画への思いを熱く滔々と語ってくれました。観客からの質問にも答え、上映後とあって、映画のテーマに踏み込んだ質問も出ました。その概要をご紹介します。
【本作を観て感じたこと】
(今、一緒に映画を観ていて)タイトルどおり終わった後は、皆さん沈黙されているなあというのを身にしみて感じました。
僕がこの映画を観るのは3回目です。1回目は試写室で、ストーリーと関係ないところ、一緒に撮影した仲間の演技やスコセッシ監督の思いにほだされて涙が止まりませんでした。2回目は、ロサンゼルスで、字幕がなく、空気感や雰囲気を感じた回でした。蝉の音で始まり、最後も雨や雷の音で終わり、ここまで劇中で音楽のない映画はあまり観たことがなく、監督のただならぬ、得体のしれない懐の深さに気付いて驚愕しました。と同時に、自分なりにもっとエモーショナルに、うまく芝居できたテイクもあったのですが、完成した映画に使われているのは、それとは違う、リハーサル段階のものもあって、初め観た時は残念な気持ちも正直ありました。でも、すぐに、監督から与えられたキチジローの役は、こういう役だったのだなあと、作品を通して監督とキャッチボールできたような気持ちになり、自分の中で納得がいくものがありました。
【スコセッシ監督について】
監督は、裏社会や暴力を描いた映画が多いという印象があるかもしれませんが、信仰や神についても描き込んできた人です。NYのリトル・イタリーで生まれ、小さい頃ぜんそくを患い、あまり外に出られず、夢に描いた職業は牧師とマフィアという、そんな人だからこそ、遠藤周作の小説と出会って感銘を受け、この作品を届けられる人なんだなあとあらためて思います。仏教の話もキリスト教の話も出てきますが、本当に平等に描いていて、最後、ロドリゴがロザリオを持っているカットは、原作にはなく、監督のアイデアです。このカットを入れたことによってこの映画の真意は変わっておらず、僕は、とんでもない作品をつくりあげたんじゃないかと勝手に解釈しています。この映画で監督が開けようとしている風穴は実はとんでもなく大きい。キリスト教に疑問を投げかけて、かつ、神はいない、というところにまで言及して、結局、自分の神を信じようというところまで、沈黙の中でみんなを導こうとしていると思います。
世界で一番読まれているベストセラーである聖書をくつがえすような作品を世に送り出してしまった監督と、こういう作品を一緒にできて、しかも大きな意味のある役をもらえて、本当に嬉しく、光栄です。ここから先、大きい扉の鍵が開いたような印象がありますが、大きい扉ですから重いですし、簡単に開くようには思っていませんが、その扉をぐっと押しに行きたいと思っています。
【出演のきっかけ】
オーディションです。僕はちょうど35歳ぐらいでしたが、超メジャーも含めて、25歳から45歳の間の日本中の役者が受けに来た役です。僕は1回目にガムを噛んで入ってしまってその場で落とされるということもあったのですが、そこは控室と言われて入ったところだったので、今から思えば、はめられたのかなとも思うのですが、紆余曲折を経て、役をつかむことができてよかったです。
【撮影など】
1カット撮るのに10テイク位は回す監督で、ロドリゴとガルペが抱き合ってお互い死ぬなよと言って海で別れるところでは、100回位撮っていて、一番多く撮ったのは多分このカットだと思います。手前みそな話になってしまいますが、僕に絡んだカットは、すごく信頼してくれていて、早く終わりました。
実は、この映画は、公開になる前にバチカンで上映され、ローマ法王はじめイエズス会の方に大盛況だったそうです。ローマ法王は、長崎の奉行所にロドリゴが移された後の新しい牢屋に、キチジローがコンフェッション(告解)させてくれと戻ってきたところで大笑いをしていたそうです(会場笑)。
【キチジローについて】
客席からの質問①:多くの人がキチジローをだめな奴、弱い人ととらえている中で、窪塚さんは強い人ととらえているそうですが、映画の中でキチジローを表現するにあたって、意識したことがあれば教えてください。
窪塚:使われてないカットがたくさんあると言いましたが、監督の懐の深さ、得体の知れなさはそこにあって、監督は、基本的に役者をほめる人で、「グレート」「エクセレント」と言いながら、10回も20回もテイクを重ねるスタイルの人です。僕は、監督が自分の思い描いているままに演出をしてくれればいいと思っていたのですが、監督は、役者に自由に伸び伸びとやらせておいて、(編集の時)シーンをつまんで、自分の理想のキチジローを作り出しています。だから、僕が思い描いていたキチジローと、監督が編集して完成した映画の中のキチジローとはちょっと違うかもしれません。
俺が思うキチジローは、一番わがままで、シンプルで馬鹿だと思います。キリスト教を理解していません。フェレイラとロドリゴが、この国の人は俺たちの神を理解していないと語る、その象徴のような人物です。踏み絵も何回も踏んでいて、僕は、撮影現場で「踏み絵マスター」と呼ばれるくらいでした(会場笑)。この映画では、誰かに教えられたままにするのではなく、自分の心のままに素直に、自分の中の神様とともに歩んでいくことが大事だと語られていますが、キチジローは生まれながらにして、そういうものを持とうとしている役なのかなと思います。
客席からの質問②:キチジローは踏み絵を踏みながらも、聖画を懐に持っていて、最後に捕らえられ連れて行かれるシーンがありますが、いつ頃から、なぜ持っていたのだと思いますか?
窪塚:キチジローは思慮深くないので、都合が悪い時には踏むし、(信仰も)捨てるけれども、基本的には神様と一緒にいたいと思っています。キリスト教という枠の中で、もっと大きな神様という言い方をすると問題があるかもしれませんが、もっと深いところの「神」とか「真理」と呼ばれる、キリスト教でも仏教でもイスラム教でも何の神様でもいいのですが、自分自身の一番奥の神様と一緒に歩いているのに、彼にはそれがわからない。まだめぐり会っていないし、気が付いてもいない。だからああいう物を持ち歩いているのではないでしょうか。
【最後に】
ただならぬ映画なので、皆さんの今の沈黙の中で、よりいい明日がどんどんできあがっていっていることを祈って、今日はマイクを置きたいと思います。
(伊藤 久美子)
『沈黙 −サイレンス−』
【ストーリー】
17世紀、江戸初期。幕府による厳しいキリシタン弾圧下の長崎。日本で捕えられ棄教したとされる高名な宣教師フェレイラを追い、弟子のロドリゴとガルべは日本人キチジローの手引きでマカオから長崎へと侵入する。想像を絶する光景に驚愕しながらも、弾圧を逃れた隠れキリシタンと呼ばれる日本人に出会った二人は、隠れて布教を進めるが、キチジローの裏切りでロドリゴは囚われ、長崎奉行井上筑後守に棄教を迫られる。犠牲となる人々のため信仰を捨てるか、大いなる信念を守るか。拷問に耐えながらも、自分の弱さに気付かされ、追い詰められたロドリゴの決断は…。
監督:マーティン・スコセッシ
原作:遠藤周作『沈黙』新潮文庫
出演:アンドリュー・ガーフィールド リーアム・ニーソン アダム・ドライバー
窪塚洋介 浅野忠信 イッセー尾形 塚本晋也
公式サイト⇒ http://chinmoku.jp/
2017年1月21日(土)~TOHOシネマズ 梅田他全国絶賛上映中!
ライバルはトミー・リー・ジョーンズ!?
『ホームレス ニューヨークと寝た男』のマーク・レイが日本で就活中!
(2017年2月4日(土)シネ・リーブル梅田にての舞台挨拶)
元々ファッション・モデルだけあって、歩く姿も立ち姿もゴージャス!身長188cm、デザイナーズスーツを着こなすロマンスグレーのナイスミドルの彼は、実はホームレス!? 40代後半からホームレス生活をしながらモデル兼ファッション・フォトグラファーとして働くマーク・レイは、1959年生まれの現在57歳。元モデル仲間でピエール・カルダン等の企業PVを手がけるオーストリア人監督、トーマス・ヴィルテンゾーンがNYでマークと再会した際マークの実状を知り、3年間密着して完成させたのがドキュメンタリー映画『ホームレスニューヨークと寝た男』だ。
マーク・レイは6年間、アパート屋上にこっそりと忍び込んでは寝泊りを続け、屋根のないペントハウスでニューヨーク生活を楽しんでいた。といっても、スポーツ・ジムのロッカーに荷物を保管し、公園のトイレで身だしなみを整えいつも小奇麗にし、ファッション・ショーの撮影やエキストラのアルバイトをしながら稼いでいたが、アパート代を払えるほどの収入はない。なぜ彼がホームレスになったのか?本当の自由な生活とは?自由の代償として失ったものとは?…様々な問い掛けをしてくれるマーク・レイという人物は、知れば知るほど興味の尽きない魅力がある。
そんなホームレス男のマーク・レイが大阪にやって来た!! 公式に劇場公開されたのは日本だけということで、昨年11月のキャンペーンに続いて2度目の来日を果たした。東京・大阪・京都・名古屋と、公開日に合せて日本各地で舞台挨拶を敢行。日本では映画の反応が良く、とても歓待してくれるので、できれば日本で仕事をしたいと切望する。かつて『メン・イン・ブラック』のエキストラとして出演したこともあるマークは、「東京でトミー・リー・ジョーンズの大きな看板を見てびっくり!彼のようになりたい」と、現在日本で就活中である。
「日本は、とにかく綺麗で、落ち着いていて、静か!」と大絶賛。また「大阪・京都へも新幹線で速く移動できてとても便利!」。映画館のロビーではマークのオリジナル写真集も販売され、「帰国するのにヒッチハイクしなくて済むよう、どうか買って下さい」と、サインにも気軽に応じていた。さらに、観客からの質問に応じる際には自らマイクを持っていき、バラエティ番組のMCさながらのサービスぶりだった。
タイムリーな話題としてトランプ新大統領について質問されると、「次の質問をどうぞ!」とはぐらかそうとしたが、「トランプが新大統領に決まった去年の11月も、就任した1月にも私は日本に滞在していて、大混乱のニューヨークで最悪な思いをしなくて済んだ」と語った。パーティ・スタッフとして働いていた頃には、有名人が沢山集まるトランプ氏自宅でのパーティも経験したらしい。モデル時代にはヨーロッパでも活躍するなど華やかな世界を知るマークにとって、今の生活に満足している訳ではない。
観客から「かつてどん底の生活をしていたことがある」と打ち明けられると、「“どん底”という表現は面白いですね。私は“屋上”にいながら“どん底”でした」とジョークで返す。そして、「この映画は、人格について多面的に捉えられた作品です。人間について、人生についてのいろんな意味が含まれています。人生にはいい時もあれば悪い時もあります。肉体的にも精神的にも辛かったけど、これからは向上していくと思っています」と締めくくった。
映画公開後、不法侵入していた屋上生活もできなくなり、今では友人のアパートの一室に間借りしているとのこと。現在クラウドファンディングで、マークの渡航費用や、日本でのPR活動や就職活動にかかる費用などの資金集めをしている。
サイトはこちら⇒ https://motion-gallery.net/projects/hommeless
いつも身だしなみに気を遣い、スポーツ・ジムで体を鍛え、言葉巧みに美しい女性に声を掛けてはファッショナブルな写真を撮る。“世界一スタイリッシュなホームレス”から目が離せない。近い将来、「宇宙人ジョーンズ」ならぬ「ホームレス・マーク」が日本のCMに登場する日がくるかも?
(河田 真喜子)
■登壇者:マーク・レイ (映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』主演)
1959年6月25日生まれ。ニュージャージー州出身。少年時代は5人家族(両親・兄・姉)の中で育った。高校時代はバスケットボールをやっており、サウスカロライナのチャールストン大学へはスポーツ推薦で入学。大学では経営学部で教養課程の学位をとって卒業。ニュージャージーの輸入業者で働いた後、4年間ヨーロッパでモデルとして活動。1994年、演技の学校へ通いながら写真家としても働き始める。2000年には再びモデルとしてヨーロッパで活動、2007年にアメリカに戻り、ファッション・ウィークの期間中、「デイズド・アンド・コンフューズド」誌用の写真を撮影した。2008年よりニューヨークで人に知られないようにホームレス生活をしながらモデル兼ファッション・フォトグラファーとして働くようになる。
【作品情報】
音楽をクリント・イーストウッドの息子でジャズベーシストのカイル・イーストウッドが担当。全10曲のオリジナル楽曲を提供し、ニューヨークの光と影を映し出すドキュメンタリーに仕上がった本作は、ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭2014にてメトロポリス・コンペティション審査員賞を受賞した。
映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』
監督:トーマス・ヴィルテンゾーン
出演:マーク・レイ
音楽:カイル・イーストウッド/マット・マクガイア
2014年/オーストリア、アメリカ/英語/ドキュメンタリー/83分
配給・宣伝:ミモザフィルムズ 後援:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム 協力:BLUE NOTE TOKYO
© 2014 Schatzi Productions/Filmhaus Films. All rights reserved
公式サイト⇒ www.homme-less.jp
2017年2月4日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ ほか全国順次公開