レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

2018年3月アーカイブ

ndjc2017.jpg上の写真、左から、
★齋藤 栄美(さいとう えみ)(34) 『トーキョーカプセル』 
★奥野 俊作(おくの しゅんさく)(37)『カレーライス Curry and Rice』
★金 晋弘(きむ じんほん) (41)『もんちゃん』
★池田 暁(いけだ あきら) (42)『化け物と女』
★中川 和博(なかがわ かずひろ)(31)『さらば、ダイヤモンド』


【大阪での上映会のお知らせ】
■日時: 3月17日(土)18:15~
            3月18日(日)~3月23日(金)18:30 ~

■劇場: シネ・リーブル梅田map
入場料金:(5本まとめて)一般¥1,200円、学生・シニア¥1,000円
*全席指定

◆3月17日(土)/ndjc2017参加監督5人による初日舞台挨拶予定
3月17日(土)18:15開映 20:45舞台挨拶開始(21:05終了予定)
※登壇者は変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。

2017年/カラー/スコープサイズ/©2017 VIPO
公式サイト⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/



《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》とは?

 
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次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》は、文化庁からNPO法人 映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタートした。このプロジェクトからは、『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞に輝いた中野量太監督や、『トイレのピエタ』の松永大司監督、『ちょき』の金井純一監督、『話す犬を、放す』の熊谷まどか監督、今年は、『嘘を愛する女』(1/20公開)の中江和仁監督や、『花は咲く』(2/24公開)、『ANIMAを撃て!』(3/31公開)など、オリジナル脚本で活躍中の監督を輩出している。


今回も、最終課題である35ミリフィルムによる短編映画(約30分)に挑んだ5人の作品を、2月24日からは東京にて、3月10日からは名古屋にて、3月17日からは大阪にて一般公開されることになった。


以下は、それぞれの作品紹介と会見でのコメントを紹介しています。


ndjc2017-mon.jpg★『もんちゃん』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/30分/©2018 VIPO)
監督:金 晋弘(きむ じんほん) 
出演:大和田 賢、眞島秀和、平尾菜々花、榎本梨乃、中村映里子
制作プロダクション:ツインズジャパン

【作品紹介】
保育園年長組に通うもんちゃんは、ママが亡くなり、慣れない育児と家事で朝からパニックになっているパパに代わり、幼い妹の面倒をみる優しいお兄ちゃんだ。パパから「引っ越しをするから、ママの遺品を箱一つにまとめなさい」と言われるが、今も届くママへのダイレクトメールを大事に仕舞い込んだり、ママの化粧品をこっそり使ってみたり、ママの面影に浸っていた。そんな時、公園で不思議な姉妹と出会い、鬱積した悲しい気持ちを開放していく術を見つけていく……。


ndjc2017-240-3.jpgキャラクターの性格や心情を言葉ではなく行動や映像で表現できる巧みさが光る。ラッセ・ハルストレム監督や是枝裕和監督の初期の頃の作品を彷彿とさせる。特に、パパの仕事仲間の女性が必死でもんちゃんを助けるシーンや、不思議な姉妹とままごとをするシーンが、30分という短編ながら物語に深みを出している。家族以外の真心に触れ、自らも他者への関心を示していく。悲しみと喪失感をのり越えようとするまだ幼い少年の健気さに心が締め付けられるようだった。

【監督コメント】
誰にでも等しく訪れるグリーフ(死別体験)について、どのように立ち直って治癒していくか、一つのパターンとして描いてみた。それは万人が興味あるテーマだと思う。

最近観た映画では、娘の後をずっとついて行く『ありがとう、ドニ・エルドマン』が面白かった。一番好きな映画は『自転車泥棒』。ダルデンヌ兄弟の作品もリアルで好き。

◎金晋弘監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3794/
 


ndjc2017-tokyo.jpg★『トーキョーカプセル』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/27分/©2018 VIPO)
監督:齋藤栄美(さいとう えみ)
出演:りりか、川合 諒、菅原大吉
制作プロダクション:アルタミラピクチャーズ

【作品紹介】
様々な人が行き交うカプセルホテルで働いている理子。東京に出てくれば何か見つかるかもと上京したものの、ボ~っとしてはパートのおばちゃんに疎まれる始末。同じく、一人の若い男性客も就活のため上京したものの失敗続きの日々を送っていた。そんなある日、金髪ウィッグの忘れ物を見つける。それを試した理子は新しい自分に戸惑うが、若い女性客に誘われて、夜の街へ繰り出すことに……。


ndjc2017-240-1.jpgまず、「東京へ行けば何とかなる」という昭和の風潮が未だに若者の間にあることに驚かされた。具体的な目的もお金もない寄る辺ない若者が、何かしら変われる自分を発見し、さらに優しく見守ってくれる人もいることに気付いていく。理子の変化を瑞々しく捉えた映像と周囲の人々の描写が、冷淡に思えた都会をたちまち暖色に染めていく。夜の街を疾走する理子を一気に捉えた映像もまた、斎藤監督の意気込みがうかがえる。暗くなりがちな物語を、ミア・ハンセンラブ監督のような明るいタッチでまとめたセンスの良さが光る。

【監督コメント】
誰も撮ったことがないカプセルホテルという独特のロケーションで物語を作ってみたかった。主演のりりかには、彼女の独特なクセを消して、ささやかな一日を少し前に進めるように普通の女の子として演じてもらった。

最近観た映画では、『スリー・ビルボード』と『わたしは、ダニエル・ブレイク』が主張がはっきりとしていて面白いと思った。映画としての見せ方も正々堂々として素敵。

◎齋藤栄美監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3796/
 


ndjc2017-daia.jpg★『さらば、ダイヤモンド』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/30分/©2018 VIPO)
監督:中川和博(なかがわ かずひろ)
出演:伊藤祐輝、伊藤 毅、佐藤祐基、橋本真実
制作プロダクション:東北新社

【作品紹介】
大学野球部からの親友で社会人になってからも仲良しの元気と隼人、亮介。3人は30歳を迎え、亮介は結婚、隼人は海外への転勤が決まり、それぞれ新たな道を歩もうとしていた。そんな中、元気は隼人への秘めたる想いを募らせ、思い切って打ち明けようとするが……。


ndjc2017-240-5.jpg3人の親友を演じた俳優たちの細やかな心情表現を引き出すことに成功している。男同士の友情を、元気の隼人への恋愛感情を中心に、ストレートの隼人の戸惑いや、気まずくなった二人を思い遣る亮介の優しさなど、後味のいい爽やかさを感じさせる。元気が隼人の気持ちを探ろうと隼人の言動を注意深く伺うシーンや、思いのたけを告白するシーンなど、緊張感をもった映像に惹き付けられた。

【監督コメント】
その人がどういう人なのか認めることがテーマ。自分も登場人物と同じような年代になって、何を認めて、何を大切にしていくのか、という思いを等身大の人物像で描いたつもり。

一番好きな映画は『ジュラシック・パーク』。最近観た映画では『スリー・ビルボード』と『デトロイト』。この2本は全く毛色の違う作品だが、いずれも俳優の力量が必要とされる。特に『デトロイト』は、ドラマ性を持たせずに事件だけを描いていくタイプなので、今っぽいと感じた。

◎中川和博監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3798/ 
 


ndjc2017-curry.jpg★『カレーライス Curry and Rice』
(2018年/モノクロ/デジタル/スタンダードサイズ(ビスタサイズ仕様)/30分/©2018 VIPO)
監督:奥野俊作(おくの しゅんさく)
出演:井之脇海、安藤ニコ、松浦祐也、矢柴俊博、岩谷健司
制作プロダクション:東宝映画

【作品紹介】
23歳の大学生・満のもとに、フランス人の友人の妹で20歳になる留学生・ジャンヌがやってくる。翌日には京都へ行くというジャンヌを、満は一晩面倒をみることになる。そこで、ジャンヌをアルバイト先の先輩で同郷の茂が住む古民家へ連れていく。茂は自慢のカレーライスでジャンヌをもてなそうとしていたが、かつて関わっていた暴力団に押し掛けられ……。


ndjc2017-240-2.jpg満とジャンヌの恋愛映画かと思いきや、淡々とした渇いたタッチのモノクロ映像で、意外にもサスペンス映画だということを見終えてから知る。あれほどお腹を空かせていたジャンヌがカレーライスを食べようとすると邪魔が入り、結局彼女が初めてのカレーライスを食べるシーンがない。茂と暴力団との関係性もよく分からないままで、消化不良になりそうなカレーライスだった。

【監督コメント】
人生における不条理さと素晴らしさを自分なりに作ってみた。人間に対する距離感や眼差しをそのまま表現。モノクロにしたのは、非日常というか、脚本も淡々と渇いたトーンで描いてみたかったから。

最近観た映画では『ムーンライト』が男同士の想いが切なくて心に沁みた。カラーブレードも研究して撮ったようで、美しい映像にも感銘。ウォン・カーワイ監督作をオマージュしているようで素晴らしかった。黒人映画では収まらない普遍性がある。

◎奥野俊作監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3803/
 


ndjc2017bakemono.jpg★『化け物と女』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/30分/©2018 VIPO)
監督:池田 暁(いけだ あきら)
出演:熊倉一美、きたろう、有薗芳記、芝 博文、よこえともこ
制作プロダクション:東映東京撮影所

【作品紹介】
ある小さな町役場の受付で働く待子は、一人暮らしの孤独な日々を送っていた。昼食時には同僚とは別のテーブルに座り会話もなく、婚姻届のような幸せな受付は極力邪魔をして延期させるという始末。ある日、町に妖怪が出没するという騒動が起きる。妖怪退治に躍起になる町長や警察。そんな中、待子は帰宅途中に暗闇から聞こえる三味線の音色に惹き寄せられ、人々が恐れる妖怪に遭遇する。


ndjc2017-240-4.jpg人間に恐れられる異形のものと孤独な女性との運命的出会いといえば、今年のアカデミー賞4部門に輝いた『シェイプ・オブ・ウォター』を思い出す。ただ一人、化け物を恐れず愛情をもって接する純愛もの。本作も面白そうな物語だが、役場や食堂で同じ人物が同じセリフを繰り返すフレーズには閉口してしまった。化け物より怖い人間のエゴをブラックユーモアで強調しているのだろうが、肝心な人物描写が希薄なので、待子と化け物を結び付ける説得力に欠ける。化け物が奏でる三味線の音色だけはもの哀しく心に響いた。

【監督コメント】
基本的に化け物と女の関係性を描いた。その中で町長や町の人々が化け物に対してどういうことをしたのか。化け物を人間に置き換えて考えてもらえればいいかなと。

チェコのアニメ作家ヤン・シュヴァンクマイエル監督が好き。実写も多くて、80歳を越えても新しいことに挑戦していることに驚いた。アニメは結構自分の思った通りに撮れるのではないかと思う。ジャンルを問わず、映画も芝居も観ている。

◎池田暁監督の作品の詳細はコチラ→ http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3802/
 


(河田 真喜子)

 

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「草太役は、監督から『あとはおまえに任せたぞ』とバトンを渡されたようなもの」(井浦)

「全てをさらけ出す楽人は、この仕事をしていれば絶対やりたい役」(成田)

「この映画で私の人生は大きく変わった」(紗羅)

 
都会の吹き溜まりで出会った大麻の売人と全身タトゥ―の赤髪モヒカン。バイオレンスもエロもロマンチックなラブもある。井浦新、成田凌、紗羅マリー出演で話題の、かなた狼監督長編デビュー作『ニワトリ★スター』が、3月17日からヒューマントラストシネマ渋谷、3月24日からシネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋他全国順次公開される。監督がオーナーを務める大阪・黒門市場の「道草アパートメント」を本作のメイン舞台「ギザギザアパート」に使用した他、尼崎のお好み焼き屋他関西各地でロケを敢行。大阪出身の草太役を演じる井浦新は、かなた狼監督が吹き込んだ台詞音源を聞き込み、自力で関西弁ことばをマスター。どこか初々しさのある関西ことばで物語を導いていく。楽人役の成田凌、楽人と深い縁を持つ月海役の紗羅マリーは、傷だらけになりながらも、月海の息子ティダのためになんとか温かい家族を築こうとする若い二人を熱演。生きづらい世の中にかすかな光を見出す感動作だ。
 
完成披露試写舞台挨拶のため来阪した井浦新さん、成田凌さん、紗羅マリーさんにお話を伺った。
 
関西弁にチャレンジの井浦新、聖地・大阪の観客を前に感動と緊張!『ニワトリ★スター』大阪完成披露舞台挨拶はコチラ
 

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――――大麻の売人、草太を演じてみての感想は?
井浦:かなた監督が長い時間をかけ、タイトルや役が生まれる前からずっとこの作品に向かっている姿を見てきました。監督が悩み、楽しみながら作ってきたニワトリ★スターの世界。今回、草太という役をいただいて、「あとはおまえに任せたぞ」とバトンを渡されたようなものでした。10年前から一緒に映画を作ろうと約束していましたし、他の作品とは比べられない、自分の中でも特殊な位置にある作品です。役者として参加はしているけれど、一生懸命演じていたと言うには少し物足りない。むしろ、それを飛び越えたようなことを皆でずっとやっていました。大切なものになりました。
 
――――映画が出来るまで10年間見守ってきたとのことですが、かなた監督とのそもそもの出会いは?
井浦:先に旅立った共通の友人が、かなた監督を引き合わせてくれ、それが全ての縁でした。出会った時、「おもしろい人がいるな」と思ったんです。プロの方が見たら、長編映画にすぐには繋がらないと思うでしょうが、10年前出会った時に、この人と僕はけじめをつけなければならない関係だと感じました。「どんな映画になっても、絶対に作るから、その時は協力してほしい」とかなた監督から言われた時、「待っていますから」と約束しました。監督から、とにかく何か見せることができる時がくるまで待っていてほしいと言われていたので、僕はひたすらスタンバイしていました。そのうち小説ができ、そこから映画を作るためのスタッフが集まりはじめた。段々と自分の番が近づいてきているなと、ソワソワ、ワクワクしながら待っていたんです。
 
 
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――――少しずつ自分の出番が近づく一方、途中で監督にアドバイスをすることはあったのですか?
井浦:一切なかったです。信じていたし、もし監督が映画を作れなければ、それはそれ。本当になれ合いの関係でいたくない人でしたから。こちらの力を表す時は、映画を作る現場であり、そこで監督に示し、勝負し、ケンカし、けじめをつけたかった。それまでに、こんなのがあるよとか、こういう風にすればいいということは一切言わないようにしました。監督も手探りで作っている時は本当に不安だったと思います。たまにアドバイスを求めることがあっても、無視していました(笑)。でも、それをやってしまった分、本当に撮影の時は怖いなと思いました。撮影が近づくにつれ、感じたことのないような気持ちになっていきました。
 
――――成田さんは楽人役をどうしてもやりたかったそうですが、楽人役のどの部分に強い魅力を感じたのですか?
成田:台本を読んで、楽人役を僕以外の人が演じるのは絶対にイヤだと思ったんですよ。素晴らしい台本で、内容としても素晴らしいし、台詞もいっぱいあり、最後はああいう終わり方をする。その中に出てくる楽人は全部の感情を出し、身体も差し出す。こんなに全てをさらけ出すことなんて、この仕事をやっているなら絶対にやりたい。他の人に演じてほしくない。みんなやりたいだろうから、かなた監督には「僕しかいない!」と言いました。
 
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―――紗羅さんは今回演技が初めてで、井浦さんや成田さんと共演されましたが、影響を受けたことは?
紗羅:この映画で、私の人生が大きく変わりました。現場では、みなさんの演技をお芝居として見る余裕はなかったです。でも、あの時は皆がお芝居ではない。月海が私の日常だったので、皆の人生に入れたし、皆さんにも私の人生に入ってもらった。監督の人生にも入れたことがうれしいですね。
 
成田:演技なのか、リアルなのか、その境目がないような生活をしていましたから。
 
―――クランクイン前に井浦さんと成田さんは一緒に住む体験をされたそうですね。
井浦:とても大事な時間ではありました。ただ二人だけで完成してしまっても、何も意味がない。そうやって二人で作った時間を現場に持っていき、現場でそれが混じり合った時、俳優だけでは作れないような、とても高い温度になるんです。
 
 
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―――紗羅さんは、ハードなシーンも多かったですが、監督からどんな指示があったのですか?
紗羅:かなた監督は、ひたすら精神面のケアをしてくれました。暴力を振るわれるシーンや、心が壊れている演技をしなければいけなかったので、かけてくれる言葉はとても優しくて、布団の中にいるようなあったかい感覚でした。
 
井浦:監督は師匠がいる訳ではないので、スタートも独特で、「よーい、行こうかー」とか「行くぞ!」とか。気合が入っている時は、「よーい、来い!!!」とか。カットも「撮った!」とか。
 
成田:スタートとカットシリーズが欲しいね。初日までに誰か作ってくれないかな(笑)
 
―――一番苦労したシーンは?
成田:僕は単純に長い台詞です。12分ぐらいしゃべるところは覚えるのが大変でした。
 
井浦:猛獣みたいな監督を中心にしている組なので、大変が当たり前になっていました。監督が言ったことを常に信じていました。
 
紗羅:初めての演技が最初の暴力を振るわれるシーンだったのですが、OKが出るまでかなり長回しをしたので、カットが入ったときは達成感がありましたね。なので、後のシーンが何も苦労がなく、平和に感じられました。
 
 
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―――出来上がった作品をどう受け止めましたか?
成田:未だに客観的に観ることができません。観終わった後は、新さんと近寄らなかったですし。公開して、映画館に行って、1800円払って、予告編からお客さんと一緒に観て、映画館を出る。そうしてはじめて、映画になったと実感するんじゃないかと。今、言ってしまうとすり減りそうで…。
 
井浦:想像なんかを軽く飛び越えた作品ができたなと思います。現場でも、自分たちの出来るギリギリのところがそのまま映っていればと信じてやっていました。監督はさらにその素材を時間をかけて編集。秒単位で削り、最後に出来上がったものは、こんな映画なんだ!と思わされた時もありました。客観的に観ることができず、どんな言葉で表現すればいいのか。感想を未だに言い合えない状況です。
 
紗羅:台本を通しで読んだのですが、楽人が月海たちに見せないようにして頑張っていた世界は、私も終わるまで読むつもりがなかったので、本当に作品が出来上がるまで分からなかった。映画でそれを観るのを楽しみにしていたんです。でも、どうしても月海の気持ちで観てしまうので、「楽ちゃん、こんなにがんばっていたのね。だから私たちはそこを見なくてよかった…」と。まだ紗羅マリーとしては、全く観ることができていないです。
(江口由美)
 

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<作品情報>
『ニワトリ★スター』(2017年 日本 2時間15分)
監督:かなた狼
出演:井浦新、成田凌、紗羅マリー、阿部亮平、LiLiCo、津田寛治、奥田瑛二他
2018年3月17日(土)~ヒューマントラストシネマ渋谷、3月24日(土)~シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、今春~元町映画館他全国順次公開
公式サイト⇒http://niwatoristar.com/
(C) 映画『ニワトリ★スター』製作委員会
 
 

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(2018年3月11日(日)TOHOシネマズ梅田にて)
ゲスト:知念侑李(24)、中川大志(19)、三木孝浩監督(43)


aporon-bu-500-1.jpg知念侑李と中川大志のジャズセッションに酔う、
優しさと煌めきの青春映画

 

「おおきに!」と不自然なイントネーションで感謝の気持ちを示そうとする知念侑李。「すみません!エセ関西弁で」と謙虚に謝るところが、また彼の誠実さを感じさせていい。

3月10日から全国公開されている名作コミックの映画版『坂道のアポロン』。長崎県佐世保市を舞台に、孤独を抱えた高校生の薫が転校先のクラスで知り合った律子や千太郎らとジャズセッションを通じて“一生ものの友情”を得ていく物語。公開2日目、主演の知念侑李と中川大志、三木孝浩監督が、TOHOシネマズ梅田で開催された舞台挨拶に登壇。上映後とあって、感動で涙ぐむ観客の前に現れた3人は、観客を再び興奮の渦に巻き込み、映画のキャラクター同様、優しさと煌めきにあふれた舞台挨拶を行った。


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演奏シーンのアプローチについて、知念は、「鍵盤ハモニカ程度は小学校の時にやっていたが、ピアノは今回が初めて。この映画のために電子ピアノを買って家で練習。ただ、楽譜が読めないので、先生の演奏を見て、振付を覚える感覚でマスターしていった」と、隠れた才能を発揮。「この映画がなければここまでピアノを弾けなかったと思うので、監督に感謝です」と三木監督にお礼を言う知念。また、コンサートなどで披露することがあるかもしれないと、今後のパフォーマンスに期待を持たせた。

 

 

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一方、中川の方は、「モテたくて少しドラムをやっていたことはあるが、ジャズは初めて。不規則でいろんなジャンルの音楽が混じっていて、スイングしなきゃいけないので、難しかった」と。エネルギッシュにドラムを叩く姿は、『嵐を呼ぶ男』(1957年)の石原裕次郎のような輝きを放っていた。喧嘩っ早くて豪快な千太郎というキャラに、煌めくような魅力を増幅させ、主人公の薫だけでなく観客にとっても忘れ難い青春の象徴となったようだ。それは、逞しく成長した中川大志の魅力に依るところが大きい。

 

 

 

aporon-500-3.jpg音楽が大きな意味を持つ本作のクライマックスの文化祭シーンについて三木監督は、「難しい楽曲だったが、二人が完璧にマスターしてくれたので、どこからでも撮れた。2日にかけて撮ったシーンだったが、二人のライブを撮影しているようで幸せな気分になれた。最後はヘロヘロになりながらも、二人のセッションに参加したくなって、自らカメラを持って撮影した」という。監督が知念の手元にばかり寄って撮影していたので、「僕の方は撮ってもらってない。少しヤキモチ」という中川に対し、「大丈夫だよ、愛は平等だよ」と、これまた胸キュンのフォローをする知念。おそらく撮影中も、5歳年下の中川を思い遣っていたのだろう。


aporon-bu-miki-240-1.jpg1966年の佐世保が舞台となっているロケ地について、「街の空気感がリラックスさせてくれた。緊張せずに自分のペースで演じられた」という知念と、「1カ月半位の滞在だったが、生まれ育った地元のようだった」という中川。「レトロな雰囲気を出すため、当時の街並みが残る大分県豊後高田でも撮影された。時代感を出すために、小道具や美術の健闘も大きかった」と述べる三木監督。当時のファッションについては、2巡ぐらいして現在でも流行しているので、特に小松菜奈が着こなす数々の“可愛い”デザインの服は大注目である。


大阪を舞台にした映画を作るとしたら?という質問に三木監督は、「やはり漫才コンビかな?…それはかなり難しそうですね。二人は現場で菜奈ちゃんにツッコまれてたから、トリオ漫才はどう?」「それはもっと難しいですよ!大阪の人、笑ってくれるかな~?」と心配する知念に、「“おおきに”ぐらいで止めとけば」と三木監督。実現するのはかなり難しそうだ。


最後に、「二人の情熱と汗が詰まった作品なので、もっともっと多くの方に観て頂きたいです」と三木監督。「本日は多くの方に来て頂いてとても嬉しい。僕たちもパワーを頂きました」と中川大志。「見終えて余韻に浸れる作品です。寝ても覚めてもアポロン気分だったら、また観に来て下さい。次は皆さんの大切な人と観て頂けたら嬉しいです。今日はほんまに、おおきに!」と、精一杯の感謝の気持ちを込めて知念侑李がご挨拶。その一所懸命さが清々しかった。


(河田 真喜子)


aporon-550.jpgのサムネイル画像【STORY】
多忙な中でも患者へ優しさを失わない医師の西見薫(知念侑李)。彼には忘れられない高校時代の思い出があった。父を亡くし佐世保の親戚の家に身を寄せた薫だったが、冷たい境遇に孤独を抱えていた。そんな時、転校した高校で心優しい律子(小松菜奈)と問題児の千太郎(中川大志)と知り合い、初めてジャズに触れる。新たな音楽の魅力にはまった薫は、律子への恋心も抱きつつ、唯一無二の友情を育んでいく。文化祭で披露した薫のピアノと千太郎のドラムによるジャズセッションは、かけがえのない青春を最高に輝かせていたが……。


■出演: 知念侑李 中川大志 小松菜奈
真野 恵里菜 / 山下 容莉枝 松村北斗(SixTONES/ジャニーズJr.) 野間口徹
中村梅雀 ディーン・フジオカ
■監督:三木孝浩   脚本:高橋泉
■原作:小玉ユキ「坂道のアポロン」(小学館「月刊Flowers」FCα 刊)
■製作幹事:アスミック・エース、東宝
■配給:東宝=アスミック・エース制作プロダクション:アスミック・エース、C&Iエンタテインメント
■©2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 ©2008 小玉ユキ/小学館

■公式サイト⇒ http://www.apollon-movie.com/

2018年3月10日(土)~全国ロードショー

 

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