レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

"革命の侍"『エルネスト』舞台挨拶

ernesto-bu-550.jpg

“革命の侍”『エルネスト』舞台挨拶

(2017年9月21日(木)TOHOシネマズ梅田にて)
ゲスト:オダギリジョー、阪本順治監督

 

なぜ若者は銃を持つようになったのか?
チェ・ゲバラ没後50年、
その名“エルネスト”を託された知られざる日系人の青春

 
1959年のキューバ革命成功のリーダー:フィデル・カストロと共に絶大なカリスマ的存在の英雄だったエルネスト・チェ・ゲバラ。その後の反帝国主義や反政府運動のシンボルととなり、日本でも若い世代を中心に未だに人気がある。そのゲバラと共にボリビアの内戦に参加し、25歳という若さで亡くなった日系人がいた。日本人の父とボリビア人の母を両親に持つ、フレディ前村ウルタードである。彼は貧しい人々を助けたいと医学の道を志しキューバ国立大学に留学した真面目な医学生だった。本作は、ゲバラからファーストネームの“エルネスト”と“エル・メディコ”(医師)という戦士名を託されたフレディの知られざる青春を追った感動作である。


ernesto-550.jpg主演のオダギリジョーは、フレディ役に運命的な出会いを果たし、ボリビアの地方なまりのあるスペイン語のレッスンを受け、さらに12㎏減量しての役作りに挑む。阪本順治監督は、原案となった『革命の侍~チェ・ゲバラの下で戦った日系2世フレディ前村の生涯』という本に4年前に出会い、ゲバラとフレディの終焉の地であるボリビアの山奥を訪ねたり、かつての戦友たちから話を聞いたり、キューバ政府の協力を得たりとリサーチを重ね、見事に“革命の侍”を現代に甦らせている。


ernesto-bu-500-1.jpgオダギリジョーと阪本順治監督が、10月6日の公開を前にTOHOシネマズ梅田にて行われた試写会の舞台挨拶に登壇。会場はチェ・ゲバラのTシャツやカーキ色の戦闘服を着た観客で埋まり、一種異様な雰囲気となる。彼らが集団で行進しようものなら警戒されそう。ところが、ゲストが登場するやいなや黄色い歓声が上り、「ああ、いつもの舞台挨拶だ」とホッとする始末。緊迫する世界情勢の中、ゆるい映画を量産している日本映画界に一石を投じるような刺激になる作品。舞台挨拶の中にも、両氏の本作に懸ける熱い想いが滲み出ていた。
 


舞台挨拶の詳細は以下の通りです。(敬称略)ernesto-joe-240-5.jpg

――(ゲバラファッションの観客を前に)最初のご挨拶。
オダギリ:東京でもこういうファッションに身を包んだ方々の前で舞台挨拶をしたのですが、まさか大阪でもこんなことになっているとは、さっき知りました。平日の夕方なのにこんなに沢山の方に来て頂いて本当にありがとうございます。とても面白い作品だと思いますし、ちょっと変わった趣きの重要な意味ある作品だと思いますので、沢山の方に紹介して頂けると嬉しいです。

 

 

ernesto-sakamoto-240-1.jpg阪本監督:今日は何の集会でしょうか~?(笑)皆さん、チェ・ゲバラのこともご存じでしょうし、キューバ大好きな方もおられると思います。実際にこの映画の準備中にもそんな恰好をした方を沢山見掛けましたが、果たしてチェ・ゲバラのことをどれほど知っているのかなという疑問がありました。撮影準備のためキューバやボリビアを何度も訪ねたり、ハバナをはじめ地方都市の革命博物館やサンタクララのチェ・ゲバラの霊廟などへ行ったりしましたが、行く先々で日本人の若者がいるんです。受付で「今日は日本人しか来ていない」と言われたこともありました。

一番驚いたのは、ボリビアのチェ・ゲバラが殺された村へ首都ラパスからバスをチャーターして悪路を十数時間かけて行ったのですが、そこにも日本人のバックパッカーが居たんです。どうやって来たんだろうとびっくりしました。チェ・ゲバラについて、ファッションとして着ている人もいれば、片やチェ・ゲバラの足跡を辿る旅をしている日本の若者が沢山いることを、この映画を通じて初めて知りました。

 
――今回の撮影でキューバへはどれくらい行っておられたのですか?
阪本監督:僕で50日位ですが、オダギリ君は先発してキューバ入りして、スペイン語のレッスンや他の準備にかかっていました。
オダギリ:2~3週間は先に入ってましたね。


ernesto-500-1.jpg――フレディ前村さんの役をオダギリさんにと思われた理由は?
阪本監督:フレディさんの人となりを原案となった本から感じ取ったり、ハバナ大学留学時代の学友の方から聞いたりしたら、“実直でナイーブでデリケート”という答えが返ってきたので、すぐにオダギリ君を思い出しました。以前から、三度目のタッグの時は主演と監督という関係で仕事をしたい、挑戦的なものを一緒にやりたい、よりハードルの高いものを、ヒットするかどうか分からないものを創る時にオダギリ君を道連れにしようと考えていました(笑)。

もうひとつ、驚くような偶然がありました。キューバ政府と合作が可能かどうか相談しに初めてハバナへ行った時、別件でオダギリ君にメールしたところ、「僕もキューバに来てます」という返事がきてびっくりしました。彼も同じ日に別の仕事でキューバにいたのです。その偶然性は僕の中ではとても大事なことでして、向こうからやって来てくれたような気がしました。


ernesto-joe-240-1.jpg――この役のお話を受けてどう思われたのですか?
オダギリ:僕は、こういう挑戦的で予測のつかない作品の方が胸が躍る俳優ですし、ハードルが高ければ高い程やりがいが持てると思いました。一生に一度出会えるかどうかの役でもあり、必ず自分にとって財産になると確信が持てました。


――チェ・ゲバラに影響を受けたことはありますか?
オダギリ:時代も国も違うので単純に比較はできませんが、自分が日本の安全で豊かで生ぬるい生活をダラダラと送っている中で、ゲバラやカストロやカミーロの人生や言葉を目にする度に気持ちが引き締まるような気がします。彼らが過ごした日々の重みは今とは全く違います。それは、阪本監督から受ける背筋が伸びるような感じと同じです。自分に厳しく生きている人から受ける影響は大きいのです。「しっかり生きなければ!」という気持ちにさせてくれます。


――このオダギリさんのお話を聞いてどう思われますか?
阪本監督:映画撮影の時は、誰に対しても自信を持って、どれだけ真摯な気持ちで臨んでいるのかを示さなければなりません。自分が壊れてもいい、進退を懸けてやっていますが、普段は緊張が解けるのか、オダギリ君と同じように酒飲んでダラダラしてます(笑)。


ernesto-joe-240-7.jpg――最後のご挨拶。
オダギリ:僕は日本映画のファンとしていろんな作品があった方がいいと思っています。最近は原作ものやコミックやテレビの映画化などに流されやすくなっていますが、映画ファンとしてとても心配しています。そんな中で、『エルネスト』のような作品が選択肢として存在することはとても有意義なことです。できるだけ多くの人に観て頂いて、このような作品が今後も存在できる環境を作って欲しいと思っています。僕もPRを頑張りますので、多くの人に観て頂けるよう広めて下さい。よろしくお願い致します。

 

 

ernesto-joe-240-6.jpg阪本監督:戦闘シーンが沢山ある映画だと思っている方もおられるかもしれませんが、フレディ前村の学生生活を中心に描いた映画です。フレディの姉のマリーさんに会いに行った時に、「フレディは医者になって人を助けようとキューバへ行ったのに、武器を持って人を殺めるようなことになって、きっと苦しんでいたことでしょう」と仰いました。弟のアンヘルさんからは、母のローサさんがフレディの遺骨を捜すためにキューバ政府に泣いて嘆願したところ、かつて一緒に戦った革命軍の人たちから、「あなたの息子は事故や病気で死んだのではない。人々のために戦って死んだのだから泣く必要はない」と随分慰められたとか。でもお母さんは自分の息子を失った悲しみで泣き崩れてしまったそうです。

名もない医学生が、普通の5年間の学生生活を経て、やがて銃を手にするようになる過程を見てほしくてこの映画を作りました。遠い国の50年前の話ではありますが、自分の日常と重なる部分があれば、どうか感じ取って下さい。

それから、マリーさんが我々と二度接触した直後に亡くなられました。この作品をマリーさんに捧げます。ゲバラのお墓に登場したおじいちゃんたちは、フレディと共に戦った本物の戦友たちです。

こういう作品が日本で生まれたことを価値あることだと思って下さいましたら、どうか多くの方に広めて下さい。よろしくお願い致します。


 (河田 真喜子)
 


『エルネスト』
ernesto-pos.jpg■2017年 日本=キューバ合作 2時間4分 
■原案:マリー・前村・ウルタード、エクトル・ソラーレス・前村著『革命の侍~チェ・ゲバラの下で戦った日系2世フレディ前村の生涯』(長崎出版・09年/17年9月キノブックスより再刊)
■脚本・監督:阪本順治 (『顔』、『闇の子供たち』、『大鹿村騒動記』、『団地』)

■出演:オダギリジョー、ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ、永山絢斗
■(C)2017“ERNESTO”FILM PARTNERS
■公式サイト: http://www.ernesto.jp


作品紹介⇒こちら
★阪本順治監督インタビュー⇒こちら

■2017年10月6日(金)~TOHOシネマズ梅田ほか全国ロードショー!