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2017年5月アーカイブ

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「自分の映画でそんなに泣く?」試写で泣きっぱなしだった尾野真千子に向井理がツッコミ。『いつまた、君と ~何日君再来~』大阪舞台挨拶(17.5.27 TOHOシネマズ 梅田)
登壇者:尾野真千子、向井理 
 
向井理が自費出版した祖母の手記から、戦中戦後の混乱期に生きた家族の姿を描く物語の映画化を自ら企画し、深川栄洋監督がメガホンをとった『いつまた、君と ~何日君再来~』が6月24日(土)から全国ロードショーされる。
 
 
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個人史を丁寧に描くことから、戦後、何度も裸一貫になりながら、必死で家族を守り生きてきた人々の気持ちや暮らしぶりが浮かび上がる。余計な音を排して、ゆったりとした時間が流れる当時を体感できる作品は、往年の名画のように家での食事シーンや、子どもたちが遊ぶ様子がリアルに描かれており、実写版『この世界の片隅に』の趣きがある。
 
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主人公となる祖母朋子の昭和パートを演じるのは実力派女優の尾野真千子。どんな辛い時でも笑顔を絶やさず、3人の子どもの世話をはじめ、家族のために辛抱強く頑張る昭和の女のたくましさを体現している。また、祖父吾郎を演じる向井理は、運に度々見放されてしまう男の悲喜劇を哀愁も込めながら演じ、吾郎が亡くなるまで常に寄り添い生きてきた夫婦愛にも心打たれる作品だ。
 

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一般公開を前に5月27日(土)TOHOシネマズ梅田にて行われた大阪先行上映会では、上映後に大きな拍手が沸き起こり、主演の尾野真千子と向井理が舞台挨拶で登壇。戦前戦後の混乱期に夫や子どもたちを支え続けた祖母朋子を演じた尾野は、「すごい人生。結構大変な戦中戦後の時代のことを朋子役から学ばせてもらいました。向井君にお礼を言いたい」と、朋子役を演じたことが自信にとって大きな意味を持ったことを語り、撮影の合間に向井から朋子さんのエピソードを教えてもらっていたことを披露。一方、向井は「(戦前戦後の)この時代の家族の話。この時代の苦労を忘れてはいけないという気持ちで作りました。戦後の昭和っぽい映画は凄く好きで、黒澤監督といい、小津監督といい、何でもない家族の話だけで映画になります。深川監督ならそんな映画を撮れると思いました」と、より普遍的な家族の話として映画作りに励んだことを強調した。そんな作品を尾野は「恥ずかしながら…」と前置きして、試写ではじめから泣きながら見ていたと告白すると、向井は「そんなに泣く?自分の作品で?」と思わずツッコミを入れる一幕も。会場も素早いツッコミに思わず笑いが溢れた。
 
 
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若き日の朋子と吾郎の思い出の曲で、上海滞在当時大ヒットしていた『何日君再来』を、エンディングでは高畑充希が歌っているが、向井は「共演した朝ドラの撮影中に高畑さんは、今とは歌い方も違い、歌うのがすごく難しいと話していました。余韻に浸れる以上に、ラストの登場人物のような世界観が出ています」とその歌唱を絶賛。向井自身も祖母から若き日の『何日君再来』にまつわるエピソードを聞き、実際に曲を聞きたいと調べていたことを思い出したと懐かしそうに語った。
 
この日は公式Twitterでファンから寄せられた質問に応える趣向も。「劇中の朋子や吾郎のように最近二人がふんばったことは?」との質問に、しばらく考えてから「東京から実家に車で帰ったこと。早く帰りたかったので、眠気もガマン。頬をパンパン叩いて頑張りました」(尾野)、「役作りで下半身強化のため近所の100メートルの急坂をダッシュしています」(向井)。
 
 
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また、2度目の共演(5年前)となる二人に以前と変わった点を聞かれ、「見た目は変わらないけど、お芝居をしていてセリフに重みを感じました。後ろ姿だけでも気持ちが伝わった」(尾野)、「役のせいかもしれませんが、以前よりトゲがなくなりました。3人の子どもがいるお母ちゃん役で、お母ちゃんやなと」(向井)と、お互いにさらに成長した相手を称え合う一幕も。
 

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最後に「この映画に出演することにより、向井理の記憶にちょっと残る人になれたかなと思いますので、皆さんもそんな気持ちでまた見に来てください。ありがとうございました」(尾野)
「僕の家族だけでなく、皆さんの親の世代の方たちは懸命に生き抜いたのだなと強く感じる作品になりました。僕も親元を離れて時間が経ちますが、どこか家族の関係が希薄になる中で、こういう作品をきっかけに親世代、祖父母世代にはどんなことがあったのかを聞いてみるきっかけになればいいなと思います。遺さなければいけないものを大事にしたいという想いで、この映画を作りました。少しでも多くの人にそういう想いや年長者へ敬意を感じる気持ちになっていただければ。そして、皆さんのファミリーヒストリーの一部になればうれしいです。今日はありがとうございました」(向井)
と挨拶し、会場は再び温かい拍手に包まれた。
 
 
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母娘断絶の裏にある真実など、実話を基にしたからこそ描ける苦い家族の記憶にも触れ、貧しく生きるのに必死な時代の生き様も感じられる、辛くも温かい作品。改めてファミリーヒストリーを語り継ぐことの大事さに気付かせてくれることだろう。
(江口由美)
 

<作品情報>
『いつまた、君と ~何日君再来~』
(2017年 日本 1時間54分)
監督:深川栄洋
原作:芦村朋子「何日君再来」
出演:尾野真千子、向井理、岸本加世子、駿河太郎、イッセー尾形、成田偉心/野際陽子 
2017年6月24日(土)~TOHOシネマズ 梅田、TOHOシネマズ なんば、TOHOシネマズ 二条、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://itsukimi.jp/
(C) 2017「いつまた、君と ~何日君再来~」製作委員会
 

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熟高年の“究極の恋愛映画”を作りたかった。
『八重子のハミング』佐々部清監督インタビュー
 
若年性アルツハイマーを発症した妻八重子と、亡くなるまでずっと寄り添い介護を続けた夫誠吾の12年間に渡る愛の物語。自らの介護体験を短歌とエッセイで綴った陽信孝(みなみ・のぶたか)さんの原作を映画化したヒューマンドラマ『八重子のハミング』が、5月13日(土)よりシネ・リーブル梅田他全国順次公開される。監督は、『半落ち』(04)『ツレがうつになりまして。』(11)『種まく旅人~夢のつぎ木~』(16)の佐々部清。本作では、監督だけでなく、脚本とプロデューサーも兼ね、実際に八重子が愛した山口県の各所でロケを敢行、風情のある景色が夫婦の思い出を呼び起こす。本作の語り部でもある誠吾役には演技派俳優の升毅、八重子役には近年、小説家としての活動が多かった高橋洋子が28年ぶりに銀幕に復帰。どんどんと記憶を失くし、子どもがえりしていく八重子を持ち前の愛らしさで熱演している。誠吾の愛情深い介護の様子をはじめ、二人を見守る家族や医師、教え子、友人たちの姿が、優しい感動を与えてくれる作品だ。
 
本作の佐々部監督に、プロデューサーとしてゼロから映画制作を行った経緯や、映画で描きたかったことについて、お話を伺った。

 


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■脚本、監督と並行しての初プロデューサー業、「命懸け」宣言で道が開ける。

―――本作は佐々部監督ご自身がプロデューサーになり、他の作品を撮りながら完成にこぎ着けた作品です。そこまでして、この『八重子のハミング』に全てを注ぎ込んだ理由は?
佐々部:僕は原作者の陽さんとは飲み友達で、大好きな人なのですが、陽さんから『八重子のハミング』を出版する前に自費出版した『雲流る』という本をいただきました。別の監督で映画化されることも同時に聞いたのですが、新幹線でこの本を読むと涙が止まらなくなり、こういう題材の映画を自分で監督できれば良かったのにと思いながら、いい映画になることを祈っていたのです。しかし、翌年陽さんに映画化に向けての話を聞くと、シナリオハンティングや取材に誰も来ていないと言うのです。あれ?と思って映画会社を調べると、映画化の話は立ち消えており、原作者に何も知らされていなかった。同じ映画業界にいる人間として憤りを感じながら、陽さんにはこの原作を僕に預けてもらえれば、僕が脚本を書き、映画化の話を持ち込んでプレゼンをしますとお話しました。それが8年前のことになります。脚本は書けても、映画会社に持ち込んで、結果を待ってというプロセスを繰り返すうちに、4年ぐらいはあっという間に過ぎてしまいました。取材の交通費、宿泊費から脚本代まで全て自費で、お金は一切いただいていない状況でしたから、最終的に台本を印刷して、陽さんに渡し、「ここまでが限界です」と伝えるのがやっとでした。
 
―――脚本はできたものの、企画がなかなか通らない中、実現に向けての気運が生まれたきっかけは?
佐々部:『群青色の、とおり道』(15)を撮った時、若いプロデューサーにこの台本を読んでもらったところ、「今の時代に絶対やるべき企画、一緒にやりたい」と僕の背中を押してくれました。お金集めから一緒に、ゼロからやりたいと言ってくれたので、そこからまず行政で資金面の柱を作ろうと交渉をはじめました。僕らは東京なので、山口県にも窓口になってくれる人が欲しいと、企画・イベント会社をしている高校時代の同級生に頼み、そこを山口事務所にさせてもらいました。そこから、資金提供のお願いに行くときは、僕も山口県まで行き、彼と同行したりしながら、土台作りを進めていきましたね。 
 
―――エンドクレジットにもたくさん方のお名前が出ていますが、今までやったことのない、資金集めも自ら行う映画作りを通して感じたことは?

 

佐々部:ほぼ助けてもらった人のおかげで出来た映画です。今まで山口県で4本映画を撮りましたが、それは映画会社が出してくれたお金で撮りましたから、地元に宿泊代やガソリン代などを還元しているし、(映画について)文句は言わないでというぐらいの気持ちでいました。今回は地元の方や、行政の税金からいただいたお金で撮らせていただいているので、本当に1円もムダにしたくない。それに報いるには、たくさんの方に観ていただけるようないい映画にしなければいけないというプレッシャーがありました。
 
でも「命懸けでやります」と記者発表したおかげで、本当にたくさんの応援団が出来ました。僕の年齢で「命懸けで」と宣言したことが、皆さんに響いたようです。とにかく人が動き出してくれ、企業だけでなく、個人や主婦の方にも一人50万ぐらいの金額で出資をしていただきました。元本は保証できませんが、大化けすれば夢は見ることができるかもしれない。山口県での上映を終え、少しですが配当を出させていただきました。今後全国での上映や、DVD化したときも配当が出せるようにしています。
 
 

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■「引退宣言をした覚えはない」キラキラとチャーミングな高橋洋子さんに八重子役を。

―――八重子役の高橋洋子さんは、海峡映画祭のゲストとして来場されていたそうですが、オファーをしようと思った理由は?
佐々部:海峡映画祭には、1回目からゲストの招聘などを含めた顧問という位置づけで関わっているのですが、2015年、『旅の重さ』(72)を上映し、主演の高橋洋子さんにゲストとしてご来場いただきました。『旅の重さ』は僕も大好きな映画で、吉田拓郎さんの音楽も素晴らしい。高橋さんにも興味があったので、空港の送迎から食事まで、ずっとアテンドをしながら、観察していたのです。お話すると、今でも高橋さんは映画が好きで、よくご覧になっているそうで、同世代なので映画の話も弾みますし、高橋さん自身もキラキラされていて、チャーミングなんです。もし八重子さんを高橋さんが演じて下さったら、僕よりも上の世代の方には「あの高橋洋子が…」と観客の方にも興味を持っていただけるのではないかと、色々な考えを巡らせていました。ドラマをそつなくこなすタレントのような人ではなく、やはり映画女優に演じてもらいたかったですし。高橋洋子さんは「引退宣言をした覚えはない」とおっしゃっていて、いいお話があれば、いつでも女優に復帰したいという意欲をお持ちでした。そこで思い切って高橋さんに台本をお渡しして、読んでいただきました。
 

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■熟高年の“究極の恋愛映画”。批判をされてもきれいな映画、美しくありたいという映画にしたかった。

―――男性が介護側になる物語は、悲壮感が漂いがちですが、本作はラブストーリーにも見えますし、非常に落ち着いて介護をしているように映りました。脚本を書く上で念頭に置いたことは?
佐々部:原作者は、若年性アルツハイマーや介護のことを知ってほしくて、この本を出版したり、在命中は奥さんを講演に連れて行ったりしていたのですが、僕は、映画化するときに熟高年の“究極の恋愛映画”を作りたかった。だから高橋さんには限りなくチャーミングで輝かしい人を演じてほしいし、升さんには撮影期間だけでも高橋洋子を愛おしく思い、好きでいてほしい。それしか注文を出しませんでした。それをうまく繋げば、恋愛映画が作れるのです。縦の軸には恋愛を、横の軸には家族の物語を作れれば、背景に若年性アルツハイマーや介護を置けばいい。最初から介護を啓蒙するような難病ものにするつもりはなく、批判をされてもきれいな映画、美しくありたいという映画にしたいと思いました。
また、原作の手記は短歌があり、それにまつわるエッセイの羅列で、ストーリーの作りようがなかったので、脚本化にあたってすごく悩みました。結局、誠吾を今の原作者と同じ年代にし、語り部にすれば、観客が混乱しそうな時に修正することができ、物語を運びやすくなる。それを発見してからは、スムーズに書けました。
 
 
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■認知症の人を介護する側から描くことで、観客が受け取りやすい物語に。

―――自分の介護を振り返るという視点で進行するからこそ、感情的になりすぎず、適度な距離感で観客も観ることができますね。
佐々部:観客の皆さんが、冒頭の講演会のシーンで来場者と一緒に座っている感覚になればいいなと思い、来場者越しで誠吾を捉えるショットにしています。来場者席の延長に観客の皆さんがいるような気分になってもらいたいという狙いです。
 
アルツハイマーを取り上げた映画といえば、ジュリアン・ムーア主演『アリスのままで』(14)や、渡辺謙主演『明日の記憶』(06)、韓国映画『私の頭の中の消しゴム』(04)などがありますが、アルツハイマーになっていく患者の視点で描かれる物語です。『八重子のハミング』は、主役が介護をする側であるのがいい。映画館に来る観客は、99.9%が認知症患者ではなく、介護する側の立場の人ですから、そちら側の人を描けば共感をしてもらえるのではないか。その切り口もこの原作のいいところで、観客が受け取りやすい物語だと思いました。
 
―――映画では病気が進行していく八重子が描かれていながらも、周りの人たちの声かけや、元生徒のエピソードで、元気な時の八重子の人柄を浮かび上がらせています。
佐々部:もう少し元気な時の八重子を描こうともしたのですが、熟高年となったときの八重子を見てほしいのに、別の人が若い時を演じるのは映画としてはマイナスの気がして、僕は苦手です。だから白黒にして、高橋さんと升さんに若い頃のエピソードも演じてもらいました。誠吾が介護に専念するため辞表を書くシーンの前に、当初は、八重子が女先生と呼ばれた若い頃、坊主頭の生徒を叱るエピソードを入れたのですが、編集すると肝心の辞表のシーンの意味合いが薄れてしまった。わざわざ坊主頭になってもらった役者さんには申し訳ないが、そこはカットしました。大人になった元女生徒が訪れる椿原生林のシーンで、10年、20年後に八重子が理想にしていた教育が結果を出したことを見せているので、元気な時の八重子は充分表現できているはずです。
 
八重子のお葬式のシーンでも、200~300人のエキストラさんに並んでもらったのですが、実際には2000人も参列したそうです。テレビだと「橋本橋まで並んでるぞ」と言っておしまい。映画だと、そこからを見せなければいけない。葬儀場の外の橋本橋まで参列者が並ぶシーンはほんの1カットですが、その1カットがあるから映画なのです。
 

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■現場でひらめき、映画に奥行きを与えた名シーン。

―――升さん演じる夫、誠吾は、最後まで妻を「八重子さん、かあさん」と呼び続け、元気な時と変わらぬ接し方で、八重子の尊厳を守っていました。その本質に触れるラストのセリフが、非常に効いていましたね
佐々部:本当は、梅沢富美男さん演じる医者が八重子の死後、誠吾に言う尊厳に関するセリフはありませんでした。あのシーンを撮る前の日、撮影中頑張って下さった梅沢さんに、最後にもう一つ、決めのセリフを言ってもらいたいと思って考えていると、「人の尊厳を守った」というセリフが浮かびました。まさに本質のところを突いているので、梅沢さんには「難しい単語を使っていますが…」と相談してみると、「このセリフ、最後にきちゃう?うれしい!」と喜んでくださり、最後に重みがつきました。
 
八重子が口だけで「ありがとう」と告げるシーンも、助監督からの、八重子の最後のアンサーが聞きたいという言葉から発想を得たもの。本当はそれを受けて誠吾が「こちらこそ」と言うところまで撮っていたのですが、両方入れると映画が甘っちょろくなってしまうので、八重子さんだけにしたんです。すると、映画を観た方が「あれは『アイ・ラブ・ユー』って言っているんですか?」とか、色々な受け取り方をしてくださり、映画として奥行きができました。
 

■作品に馴染む、谷村新司バージョン『いい日旅立ち』。

―――音楽教師であった八重子の介護エピソードに様々な曲が登場する中、エンディングでは谷村新司さんの『いい日旅立ち』、劇中では『昴』が使われています。実際に生前の八重子さんがお好きな曲だったのですか?
佐々部:今回は八重子さんが好きだった場所ばかりで撮影しましたし、谷村新司さんも生前八重子さんが一番好きな歌手でした。『昴』は歌詞が歌えなくなった時でも、ハミングでメロディーを奏でていたそうです。谷村さんにお手紙を書き、谷村さんからは「何かこの映画に協力したい」ということで、楽曲使用を許可していただきました。この作品は、ピアニストの穴見めぐみさんに劇中音楽を依頼し、ピアノがメインになると分かっていたので、還暦を越えた谷村さんがピアノソロだけで歌っているアコースティックバージョンをエンディングに起用することで、全体がうまくリンクできました。『いい日旅立ち』の歌詞も、「母の背中で…」と作品にもリンクしている気がします。最近、佐々部組ではカラオケのラストは決まって、谷村新司バージョンの『いい日旅立ち』を皆で歌っていますよ。
 
―――最後に、これからご覧になる皆さんに、メッセージをお願いします。
佐々部:きっと10年後、20年後、この国で介護はもっと大きな問題になっていきます。そこへ準備する気持ち、こんなことが起こり得るかもしれないということを少しでも考えてもらえるといいなと思います。また、男と女が夫婦となって添い遂げることが、こんなに素敵だということを分かってもらえるといいなと思って作りました。地味な映画ですが、映画館で観ていただけるとうれしいです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『八重子のハミング』(2016年 日本 1時間52分)
監督・脚本:佐々部清 
原作:陽信孝『八重子のハミング』小学館刊
出演:升毅、高橋洋子、文音、中村優一、安倍萌生、辻伊吹、二宮慶多、上月左知子、月影瞳、朝加真由美、井上順、梅沢富美男他
2017年5月13日(土)~シネ・リーブル梅田他全国順次公開
配給:アークエンタテインメント
公式サイト⇒http://yaeko-humming.jp/
(C)Team『八重子のハミング』
 

ps-inta-550.jpg『パーソナル・ショッパー』ララ役/シグリッド・ブアジズ インタビュー

≪シグリッド・ブアジズ プロフィール≫
1984年3月10日、フランス・パリ生まれ。フランス国立高等演技学校(Contuvatoire national superior d'Art dramatique du Paris)で学ぶ。2008年、短編映画『Cortege』(未/原題)で映画デビュー。13年に世界的に大ヒットしたデンマーク・スウェーデン合作の北欧ミステリー「THE BRIDGE/ブリッジ」を原作にリメイクされた英国のTVドラマシリーズ「トンネル~国境に落ちた血」に出演し注目を浴びる。その他の出演作にミア・ハンセン=ラブ監督作『EDEN/エデン』(14)、さらにFENDIの広告モデルとしても活躍。


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シグリッド・ブアジズさん、『パーソナル・ショッパー』を語る。

 
「主役を演じるより脇役を演じる方が難しい」――そう言われることがよくある。確かに、どんなに主人公が輝いていても、他の登場人物に魅力がなければ、映画に深みがなくなってしまい、見ていてもときめかないという体験をお持ちの人も多いのではないだろうか?


5 月12日から上映が始まる『パーソナル・ショッパー』で、確かな存在感を放つ脇役の一人が、シグリッド・ブアジズさんだ。クリステン・スチュワートが演じる主人公・モウリーンの義理の姉・ララを演じる。双子の兄を亡くしたモウリーン。そして、彼女と共通の大切な人を亡くしたララ。映画は、モウリーンの悲しみを軸に展開されていくが、伴侶を亡くしたララもまた、スクリーンに映し出されないところで悲しみを抱えている。


ps-inta-240.jpg脇役を演じる難しさはどこにあるのか?
「シナリオに書かれていない部分を自分で想像しなければならないところ」「主役にも脇役にも同じように1つの人生があります。だから、登場シーンが少ない人物は、登場しない部分の生活を、自分の想像力で埋めていかなければなりません」とシグリッドさんは語る。
複数の俳優たちが懸命な姿勢で役に取り組むからこそ、1本の映画にずしりとした重みが出るのだろう。
オリヴィエ・アサイヤス監督は、その重要な任務のひとつをシグリッドさんに委ねた。


彼女がこの映画を出演した経緯は?
「監督から直接依頼がありました。カフェでアサイヤス監督と会って、シナリオを読んだとき、その多様な要素にものすごく感動したんです!」。
トラディショナルな要素と、新しいテクノロジーを駆使したモダンな要素とが混在し、絵に描いたような現代っ子が主人公として登場するが、彼女は「孤独」という普遍的な苦しみをまとっている。キラキラしたモードの世界と、幽霊といったオカルトの世界が混在しているところも面白い。


ホラーやモードを題材にしながらも、哲学的な結末を導き出していくアサイヤス監督。現場では俳優たちにどのように接しているのだろうか?
「とても穏やかな方です。自分の作品に信念を持っているからでしょうか。柔軟性があり、俳優に要求する内容はとてもシンプルです」
シグリッドさんもそんな監督のもとで、のびやかにララを演じた。また、主演・クリステン・スチュワートが醸し出す力強いエネルギーもまた、彼女の演技に大きな影響を与えたに違いない。

ps-500-7.jpg静かで落ち着いた印象のシグリッドさんだが、心の中は”演じることへの情熱”でいっぱいだ。数年前に「自分はジャンヌ・ダルクだ」と思い込む人物を演じたと聞いたとき、彼女の役者としてのはかり知れない可能性を見た気がした。(日本未公開作“Jeanne”/ ブノワ・ジャコ監督作品)


アサイヤス監督は前作『アクトレス〜女たちの舞台〜』で脇を固めたクリステン・スチュワートを本作で主役に抜擢した。シグリッド・ブアジズさんが、アサイヤス監督の作品で主役を演じる日も、遠くはないかもしれない。


(写真・文:田中明花)

■作品紹介⇒ こちら
■公式サイト⇒ http://personalshopper-movie.com/

©2016 CG Cinema – VORTEX SUTRA – DETAILFILM – SIRENA FILM – ARTE France CINEMA – ARTE Deutschland / WDR

 <写真キャプション>シグリッド・ブアジズさん(2017年4月19日撮影/田中明花)


(オフィシャル レポートより)

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橋本愛、だらしなさを求められる役に「なんて楽なんだろう!」
『PARKS パークス』大阪舞台挨拶(17.5.6 シネ・リーブル梅田)
登壇者:瀬田なつき監督、橋本愛 
 
今年で100周年を迎える吉祥寺・井の頭公園を舞台に、橋本愛を主演に迎えた瀬田なつき監督最新作『PARKS パークス』が、5月6日シネ・リーブル梅田で公開初日を迎えた。
『PARKS パークス』瀬田なつき監督インタビューはコチラ
 
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橋本愛が演じるのは、彼氏と別れ、大学も留年の危機を迎えた純。亡き父の学生時代の恋人、佐知子の消息を探す高校生のハルを永野芽郁が、佐知子の孫、トキオを染谷将太が演じ、純、ハル、トキオの3人が、佐知子の遺品から見つけたオープンリールのテープに録音された歌を完成させようと動き出す様子を、公園の過去や現在を浮かび上がらせながら描いていく。瀬田監督らしい軽やかさと風が吹いたような爽やかさ、そしてトクマルシューゴを音楽監修に迎え、地元のミュージシャンたちが出演して作り上げた様々な音楽の豊かさがを堪能できる作品だ。
 
 

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シネ・リーブル梅田で上映後に行われた舞台挨拶では、瀬田なつき監督と主演の橋本愛が登壇。脚本も担当した瀬田監督は、「ちょうど井の頭公園の池が100年を前にして水を全て抜く作業をしていたのを見て、ここから何か出てきたら面白いのではないかと発想。池に物を落とすのはやめてと公園の人に言われたので、池ではなく(佐和子の遺品から)テープを見つけることにしました」と、過去から現在、未来へと繋ぐ物語のアイデアにまつわる話を披露。一方、吉祥寺の印象を聞かれた熊本県出身の橋本は、「少し歩くとマニアックな音楽や映画がすごく充実している街。今と昔が共存していて、ここで生まれたらここで一生を終われるんだろうな」と、感慨深げに語った。また、本作の舞台となった井の頭公園については「普通の公園とは違う楽園感があって、フワフワした浮遊感や、100年も存在し続けることの神様感があります」としながら、「井の頭公園を見ているのと同じように体感できます。暮らしの中に公園があるように映ればいいな」と本作の見どころを語った。
 
 
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瀬田監督の演出について聞かれた橋本は、「大まかなリクエストとしては『軽く』で、それが一貫していれば、後は何をしても許される現場でした」。橋本が演じる純役については「だらしなさが求められる役ですが、私自身はちゃんとだらしない人なので、役でそれを求められ、『なんて楽なんだろう』と思いました」と素の自分が役に投影されていることを明かした。染谷将太や永野芽郁との共演については、「(映画ではワイワイしているが)、慣れ合っていた訳ではありません。染谷さんは大人だし、芽郁ちゃんもすごくしっかりしていて、普段の会話をしなくても現場に入ればできるんです」と橋本が語ると、瀬田監督は「撮りながら、(三人の掛け合いが)すげぇ!と思っていました」と笑顔でコメント。メリハリの効いた撮影現場であることが伺えた。
 
 

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橋本自身もギターの弾き語りを披露するなど、音楽映画としても要チェックの本作。一番後世に残したい音楽はとの問いに、橋本はズバリ「この映画のサントラを聞いてほしい!」。「映画の中に入っていないシーンの音楽もありますし、シーンの続きを連想できるものもあります。映画を観る前にサントラを聴いて、観てからもう一度聴くのをオススメしています」と、友達にも先にサントラを聴くように勧めていることを明かした。そんな橋本の歌っているシーンは瀬田監督のお気に入りのシーンでもあるそうで、「染谷さんや永野さんと一緒にセッションのようにふわっと部屋で演奏するシーンは、ちゃんとだらしない橋本さんの魅力が出ています。どれも見せたい!と思いながら編集をしていました」。
 
 

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最後に、
「大阪でも公園100周年があれば、是非撮りたい。色々な見方ができる映画ですし、橋本さんと一緒に初日を迎えられて、うれしいです」(瀬田監督)
 
「個人的にすごく好きな映画。皆さんもそういう気持ちになってもらえたらうれしいです。本当は映画を観た後、井の頭公園に行ってもらいたいのですが、それができなくても皆さんの思い出の公園や近所の公園、生活の染みついている場所で、この映画のことを反芻して、それぞれの感動として持ち帰っていただけたらと思います」(橋本)
 
と笑顔で挨拶し、映画のように爽やかな舞台挨拶を終了した。
 
ポップな音楽からヒップホップまで様々なジャンルの音楽に彩られた『PARKS パークス』。映像や編集にもこだわりがたっぷりの瀬田マジックを、一度だけではなく、是非何度も味わってほしい。
(江口由美)

<作品情報>
『PARKS パークス』(2017年 日本 1時間58分)
監督・脚本・編集:瀬田なつき
出演:橋本愛、永野芽郁、染谷将太/石橋静河、森岡龍/佐野史郎他
2017年4月22日(土)~テアトル新宿、5月6日(土)~シネ・リーブル梅田、5月13日(土)~神戸国際松竹、初夏~京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒http://parks100.jp/  
(C) 2017本田プロモーションBAUS
 

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