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オダギリジョー、自分の家族についても"縁"を感じるようになった。『兄を持ち運べるサイズに』先行公開記念 舞台挨拶@TOHOシネマズ梅田

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歓びも悲しみも怒りも、家族だからこそ素直に伝えにくい感情を、観る者の気持ちを代弁するかのように映像で表現してくれる中野良太監督。『湯を沸かすほどの熱い愛』『浅田家!』に続いて5年ぶりの最新作『兄を持ち運べるサイズに』は、作家・村井理子の疎遠だった兄の死について綴ったノンフィクションエッセ イ「兄の終い」を基にした、笑いあり、切なさあり、涙ありの共感しまくりの感動作である。主演に柴咲コウ、兄役にオダギリジョー、兄の元嫁役に満島ひかりと円熟期に入った魅力的なキャストをそろえ、“厄介だけど愛おしい家族”についていま改めて問い直して、胸に迫るものがある。見終えて、優しい気持ちで家族と向き合えるような気がして、気持ちも軽くなるような作品。


11 月 28 日(金)からの全国公開に先駆けて、11 月 21 日(金)よりTOHOシネマズ日比谷とTOHOシネマズ梅田にて先行公開された。それを記念して、TOHOシネマズ梅田で舞台挨拶が開催され、オダギリジョーと原作者・村井理子と中野量太監督が登壇。原作者を交えたトークは珍しく、原作者の目から見た映画の魅力や、兄を演じたオダギリジョーや中野監督の本作に向けた熱い想いなど、作品同様、笑いあり、感動ありの舞台挨拶となった。詳細は下記の通りです。
 


■日時:11 月 23 日(日)12:10~12:40(上映後)

■会場:TOHO シネマズ梅田(大阪市北区角田町7−10 HEPナビオ 8 階)

■登壇者(敬称略):オダギリジョー(49)、村井理子(55)(原作者)、中野量太監督(52)

■シネルフレ作品紹介はこちら⇒ http://cineref.com/review/2025/11/post-1334.html


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【はじめに】

最初の挨拶では、初めての舞台挨拶で緊張しているという原作者の村井に、先行上映を観たら感想をどんどん広めてほしいと意気込むオダギリジョー、そして、京都在住の中野監督は仲間の応援もあって、3年掛りで作った作品を観てもらえるのが何よりも嬉しいと挨拶した。


★映画化のキッカケは?

中野監督:3年位前にあるプロデューサーの勧めで読んだエッセイが、兄が亡くなる話だが、クスッと笑って、熱い想いになって、優しい気持ちにもなった。これまで僕がやってきたテイストというか方向性が似ているなと感じて、これなら映画化できるのではと思いました。


★最初に映画化を聞いてどう思った?

村井:率直に嬉しかったです。私は地味に書いている人なので、最初は何を言っているのか分からず戸惑いました。書き手にとって映像化されることはとても嬉しいことなのです。


完成作品を観た感想は?

村井:とても感動しました。本では兄の死はとても悲劇的に終わるのですが、映像になるといろんな仕掛けがあって、悲しいだけではない楽しいこともあって、私にとっては救いになりました。とてもいい映画だなと思いました。


台本を読んで即決!?

オダギリジョー:とてもいい台本だったのですぐに中野監督にメッセージを送りました。『湯を沸かすほどの熱い愛』以来10年ぶりのコラボですが、監督とは年齢も近いので分かり合えるような気がして、監督を信用しています。それに監督が書く脚本は笑えて泣ける面白い脚本が多いので、映画化するのがとても楽しみでした。

 

【「兄」というキャラクターについて】

「兄」を演じるにあたって研究したことは?

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オダギリジョー:オンラインで村井さんにお話を聴く機会を頂いたのですが断りました。今から演じる人の「答え」を先に見せてほしくなかったので原作も読まずに、監督が書いた脚本だけを信じて、監督との作業で演じました。

中野監督:オダギリさんはいつもそんな感じでして、皆と何かを準備するとか、事前の本読みとかも凄く嫌がるんですよ(笑)。その分、僕が村井さんに沢山お話を聴いて脚本に反映させていたので、それを信じて演じてくれました。お陰で村井さんに「お兄さんみたい」と言って頂けたのは嬉しかったですね。
 

★「兄」の人物像について監督と相談しながら演じていた?

オダギリジョー:兄は主人公・理子の回想シーンとイメージのシーンにしか登場しないので、その幅がありすぎてどうにでも演じられるが、逆に怖いことでもありました。

中野監督:最後に3パターンの兄ちゃんが登場するのですが、演じ分けるのも難しかったと思います。でもあのシーンを撮りたくて脚本を書いていたぐらいですから、大事なシーンでした。
 

オダギリさんがお兄さんに見えてきたところとは?

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村井:勿論、見た目は随分違うのですが、例えばお葬式の時にお金の無心をするシーンとか、スーパーで焼きそばを買うシーンとか、部屋の中で履歴書を書いているシーンとか、本当にびっくりするくらい雰囲気が似ていて、やっぱ凄いなぁと思いました。

オダギリジョー:それは偶然です。まぐれで当たっただけで、恐ろしい奇跡です!(笑) でもそう言って頂けて嬉しいです。

中野監督:それをコントロールしたのが僕です!(笑)。
 

★実在の兄について?

村井:実在の兄がついた嘘も後になって回収できたのですが、当初は次は何を言ってくるのか分からず本当に怖かったので、理解できてなかった部分もありましたね。



【作品の内容について】

★原作と脚本の違いは?

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中野監督:原作が6割、2割は村井さんに直接取材して付加したもの、後の2割はオリジナルです。やはり文字と映像は別ものですから、120分という制約の中で面白く見せるためには、本のままというのは難しいと村井さんにも申し上げました。でも、本の大切な部分は絶対にブレることなく描いてあります。村井さんにお話を伺っていると次々と面白い話が出てきて、例えば焼きそばの話や、良一君の下着が小さかったこととか、もうそれを聞いた時には胸がキューって締め付けられました。


面白く見せるための工夫は?(主人公の本音をテロップで映すとか…)

中野監督:兄は亡くなっていますので回想でちらっと見せるだけでなく、どうやって出そうかと悩みの種だったんです。でも、理子は作家だから、頭の中で書いた文字をそのまま表記して、その流れで兄が登場するのはイケると思ったんです。それが映画的表現としても面白いなと。そこに気付いてからは脚本もワーって書いていけました。


中野監督と村井さんは家族への向き合い方が似ているのでは?

中野監督:原作を読んだ時、兄の死を描いているけれど、残された人たちが右往左往しながらも頑張って生きている姿に感動しました。僕も家族の死とかを描いてきましたが、やりたいこととは、その死を受け入れてどう生きていくかということです。一所懸命に生きている姿が滑稽で可笑しくて、という方向性は村井さんと似ているかもしれません。


村井:中野監督も今までの作品でずっと家族を描いてこられましたが、私も家族を描くことが多くて、それはなぜかというと、家族というものがよく分かってない、「家族とはなんなんだろう?」とずっと探っているような形で、中野監督と同じような気持ちを持っているのかもしれません。



【作品の影響について】

この映画によって気持ちが変化したことは?

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村井:一番感動したシーンは、スーパーで兄だけなく両親も出てきたところです。実際には無理だけど、映画だとこんな風にみんな集まれるんだという、ちょっとした安心感に繋がりました。今では亡くなった両親を思い出す時、そのシーンが出てくるようになりました。


オダギリジョー:僕は両親が離婚して母子家庭で育ったのですが、最近になって父方の情報が少しずつ入ってくるようになり、これもこの映画の縁なのか、そういう年頃になったのか、不思議な縁を感じるようになりました


中野監督:(オダギリジョーの話を受けて)自分のルーツがこの年になって聞こえてくるということはとても面白いことですね。
僕がなぜ家族について撮っているのかというと、村井さんと同じで、「家族とは何か?」という答えがよく分からない――今回は村井家にとっての答えというものがきっとあると思います。前作の『浅田家!』だったら浅田家の答えがあったりして、毎回家族をとっているけど、毎回新鮮なんです。そのことに改めて気付きました。

 

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【最後に】

村井:ぜひ、「楽しかったよ」とか「良かったよ」とか言って宣伝して頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。


オダギリジョー:僕たちが今ムービーカメラに向かって手を振っていますが、観客の皆さんも手を振って頂いて、こんな風景初めて見たので、とても感動しています。今までカメラに向かって手を振るなんてバカらしいと正直思っていたんですが(笑)、今日初めてその意味が分かった気がします。もうすぐ50歳なんですけど、ようやく手を振ることを嬉しくできました。それはここに来て頂いた皆さんのお陰です。ちょっと成長できたような気がします。ありがとうございました。この作品を愛情をもっていろんな所で広めて頂ければ幸いです、どうかよろしくお願いいたします。


中野監督:本当に映画作りは長い旅でして、3年前に企画から始まってやっと出港できる状態になりました。皆さんは初めてこの映画を観るお客さんです。勢いよく出港するためにも、応援して頂けると嬉しいです。僕としても 5年ぶりに撮ったこの映画は自信作です! 皆さんもウソではなく正直な感想を広めて頂ければ嬉しいなと思います。よろしくお願いいたします。
 


【ストーリー】

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エッセイストの理子(柴咲コウ)の元に突然、兄の死を知らせる電話がはいる。理子は疎遠になっていた兄の死を悲しむこともなく、淡々と唯一の肉親として遺体を引き取りに東北へと向かう。兄は7年前に離婚して小学生の息子・良一(味元耀大)と二人で暮らしていた。警察署で兄の元嫁・加奈子(満島ひかり)とその娘の満里奈(青山姫乃)と再会して、「早く、兄を持ち運べるサイズにしてしまおう」と荼毘に付す。

そして、兄たちが住んでいたゴミ屋敷と化したアパートを片付けていた3人は、壁に貼られた家族写真を見つける。兄と加奈子に満里奈と良一の家族のものと、そして子供時代の兄と理子が写ったものもあった。迷惑ばかり掛けられていた理子が兄の文句ばかり言っていたら、元嫁の加奈子から意外なことを言われてしまう。実は、兄は病気のために働けず、かなり困窮していたことを知り、兄から何通ものメールを受け取っていたにもかかわらず、全てスルーしていたことを後悔する。そして、自分の知らない兄の在りし日々を辿ろうと、良一の案内で思い出の場所へ向かう……。


【作品概要】

◎原作:「兄の終い」村井理子(CE メディアハウス刊)
◎脚本・監督:中野量太  
◎撮影:岩永 洋    
◎音楽:世武裕子
◎キャスト:柴咲コウ、オダギリジョー、満島ひかり、青山姫乃、味元耀大
◎制作プロダクション:ブリッジヘッド/パイプライン
◎配給:カルチュア・パブリッシャーズ
◎コピーライト:©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
映画公式サイト: https://www.culture-pub.jp/ani-movie/
◎映画 SNS:[X] https://x.com/ani_movie1128
◎映画 SNS:[Instagram] https://www.instagram.com/ani_movie1128
推奨ハッシュタグ:#兄サイズ #兄を持ち運べるサイズに

2025年11月28日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、OSシネマズミント神戸ほか全国ロードショー


(河田 真喜子)

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