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『ゴヤの名画と優しい泥棒』評論家・山田五郎公開記念トークイベント

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アカデミー賞®受賞製作チーム『ジュディ 虹の彼方に』『クィーン』
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ロジャー・ミッシェル監督『ノッティングヒルの恋人』


オスカー俳優 ジム・ブロードベント『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
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ヘレン・ミレン『クィーン』


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知られざる名画盗難事件の背景を、徹底解剖!

 

ロジャー・ミッシェル監督長編遺作となる映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』(2月25日(金)全国公開)。この度、本作の公開に先立ち、2月1 日(火)都内で先行上映を実施し、上映後に評論家・山田五郎さんと、ウェブ版「美術手帖」編集長の橋爪勇介さんが登壇しトークイベントを開催致しました。


◆日程:2022年2月1日(火)

◆会場:ユーロライブ(東京都渋谷区円山町1-5)

◆登壇:山田五郎(評論家)、橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)



オスカー俳優ジム・ブロードベントとヘレン・ミレン共演の映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』公開記念イベントが2⽉1⽇(火)都内で開催され、評論家・山田五郎さんと、ウェブ版「美術手帖」編集長の橋爪勇介さんが登壇した。


goyadoro-pos.jpg本作は、ロンドン・ナショナル・ギャラリー史上唯一にして最大の事件、1961年に起きたフランシスコ・デ・ゴヤの肖像画<ウェリントン公爵>盗難事件の知られざる真相を描いた衝撃の実話。犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。TVに社会との繋がりを求めていた時代、孤独な高齢者のために盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。橋爪さんから映画の感想を聞かれた山田さんは「本作の面白いポイントは台詞。夫婦のやりとりも面白いけど、特に裁判のシーンのセリフ回しは、イギリスらしくユーモアにあふれている」と語り、本作で主人公を陰ながら支える妻役のヘレン・ミレンのことも「実にイギリスらしい女優。エリザベス女王から、スパイ役、本作ではニューカッスルという田舎の労働者の奥さん役まで演じられる。役柄が幅広く、大好きな女優さんです」と語った。


まず、映画に登場するロンドン・ナショナル・ギャラリーについては「ヨーロッパの美術館は王室コレクションがベースとなった美術館が多いが、ここは個人コレクションから始っているのが珍しくて異色。銀行家であるジョン・ジュリアス・アンガースタインの個人コレクションがベースになっていて、その後国が買い上げて市民のために運営していっているので、非常に開かれた美術館であること。イギリスはヨーロッパ全体においてターナーが登場するまで、絵画の分野で美術後進国と言えるので、ナショナル・ギャラリーが美術史を教えようとしている教育的配慮があり、西洋美術史を俯瞰するようなコレクションになっている」と語った。


goyadoro-ivent-500-1.JPG自身の留学時代、パスポートを盗まれ再発行のために1カ月ほど思いがけずロンドンに滞在することになった思い出を語り、「大きすぎない、ちょうどいいコンパクトさで見やすく回りやすい美術館で、自分が一番勉強になった美術館だった。毎日のように大英博物館とナショナル・ギャラリーに通った。当時は地下にあった、今までナショナル・ギャラリーが買ってしまった偽物を展示している贋作の部屋が、本当に勉強になった。そういった絵を展示している美術館は、懐が深いというか、すごいと思った」と語った。


goyadoro-500-8.jpgまた、イギリスの英雄である絵画〈ウェリントン公爵〉のアメリカへの流失を防ごうとする映画のいくつかのシーンについては、「海外では自国の貴重な絵画が流出することに対して世論が高まり、その絵画を国として買い戻そうとした例がいくつかあるが、日本では驚くほどそれがない。さらっと流失して、里帰りして戻ってくることもある」と語った。


「『ウェリントン公爵』の表情については、無表情だ、冷たい顔をしている、と評されることがあって、ゴヤはウェリントン公爵に反感をもっていたのではないかと言われるが、そんなことはない。彼は数多くの戦勝を上げて公爵までスピード出世した軍人であり、ナポレオン率いるフランスからスペインを救った英雄なので、ゴヤは宮廷画家としてきちんと描いた。ゴヤは本当に絵が上手い人で、実際にウェリントンさんは戦争続きで本当に疲れた顔をしていたんだと思う(笑)。トーマス・ローレンスというイギリスの宮廷画家が描いたウェリントンも疲れているから、本来この顔なんだよ(笑)」と山田さんが語り、会場を沸かせていた。


goyadoro-500-7.jpg最後に、「60年代のロンドンが忠実に表現された、時代を感じる映画だと思う。おそらく当時の映像も使用されているんじゃないかな。主人公は労働者だけど、戯曲を書いたり本を読んだり、昔の労働者階級は教養があったんだなと思った。かつての日本も同じだったと思う。この事件が起こった1961年は、ガガーリンが月に行った、ケネディが大統領になった、日本ではトリスを飲んでハワイに行こう、と言っていた時代だった」と懐かしく語った。
 


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【STORY】

世界中から年間600万人以上が来訪・2300点以上の貴重なコレクションを揃えるロンドン・ナショナル・ギャラリー。1961年、“世界屈指の美の殿堂”から、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれた。この前代未聞の大事件の犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。孤独な高齢者が、TVに社会との繋がりを求めていた時代。彼らの生活を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。しかし、事件にはもう一つの隠された真相が・・・。当時、イギリス中の人々を感動の渦に巻き込んだケンプトン・バントンの“優しい嘘”とは−!?
 

監督:ロジャー・ミッシェル(『ノッティングヒルの恋人』『ウィークエンドはパリで』)
出演:ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グード
後援:ブリティッシュ・カウンシル 
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
2020年/イギリス/英語/95分/シネマスコープ/5.1ch/原題:THE DUKE /日本語字幕:松浦美奈
©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020

公式HP:happinet-phantom.com/goya-movie/ 
公式Twitter:
@goya_movie

作品紹介はこちら⇒

2022年2月25日(金)~TOHOシネマズ シャンテほか全国公開


(オフィシャル・レポートより)

 

 
 

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