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2021年12月アーカイブ

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アニメーションファンと作り手の架け橋となり、高畑勲、宮崎駿をはじめとするアニメーション作家たちの発掘、紹介を通して、アニメーションファンの裾野を広げ、スタジオジブリ設立にもつながった日本初の商業アニメ専門誌「アニメージュ」。鈴木敏夫プロデューサーが在籍していた同誌の12年間の歩みと、70年代後半から80年代にかけてのアニメブーム期の歴史や、スタジオジブリの原点を解き明かす巡回展『「アニメージュとジブリ展」一冊の雑誌からジブリは始まった』が、12月9日より阪急うめだ本店 9階 阪急うめだギャラリー、うめだホールにて開催中だ。
 
 
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東京からスタートした同展示は、緊急事態宣言発令により期間半ばにして終了を余儀なくされたが、その後石巻を経て、大阪ではさらに関西限定の『じゃりんこチエ』コーナーを加えるなど、パワーアップした巡回展となる。
 
 
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オープニング前のプレス内覧会では、ナウシカ役の声優、島本須美さんと、同展覧会企画に深く関わった、三鷹の森ジブリ美術館シニアアドバイザーの高橋望さんが来場。
「アニメージュ(1978年創刊)には、今のアニメーションにつながる原点があり、今こそ見て欲しい」と高橋さん。創刊当初は富野由悠季監督の『機動戦士ガンダム』が大ブームを迎えており、「ガンダムがあることで、アニメファンがいることが作り手にも実感できたし、ガンダムとアニメージュの出会いがなければ、『風の谷のナウシカ』は生まれなかった」と、ガンダムによるアニメブームで、ファンと作り手を結ぶ役割を果たしたアニメージュの功績を語った。展示では『機動戦士ガンダム』の名シーンを立体で表現したジオラマをはじめとしたガンダムコーナーがある他、『機動戦士ガンダム』や『風の谷のナウシカ』の美術を務めた中村光毅さんの原画も展示し、スタッフたちの多面的な仕事ぶりにも光を当てている。鈴木プロデューサーと久しぶりに対談した富野監督のサイン入り『風の谷のナウシカ』ポスターが展示されているのも貴重だ。
 
 
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初の主演を務めた『風の谷のナウシカ』は声優の原点に立ち戻らせてくれる作品だという島本さんは「世界中の人が(腐海のように)マスクなしでは生きられない時代だが、マスクなしで生きられる時代を本気で祈っている」とし、ナウシカコーナーにある腐海の衣装や、段ボールの王蟲は特にお気に入りだという。また島本さんが欲しくなったと興奮した貴重なセル画も展示。島本さんは音声ガイドも担当しており、ガイドを聞きながら、アニメージュとジブリの世界観をぜひ堪能してほしいとアピールした。
 
 
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さらに高橋さんは、ナウシカの抱えたテーマは今だからこそ活きるとその普遍性に言及。「ナウシカは虫も人間も共に大事だと思っている。あらゆる生物を愛さなくてはいけないと。まさに日本が生んだ最強のヒロイン」。最後にアニメージュの意義について、「アニメ界に作家がいたことを知らしめた。作家とファンの関係性はとても大事で、作品の裏側には作家がいることを知って欲しい。作家の時代はこれからも変わらないと思うので、新しい才能が自分の作家性を出すことを続けてほしい」と未来へのメッセージとともに語った。展示ではアニメージュのバックナンバーの表紙や、スタジオジブリ設立までの各段階ごとにパネルをつけて、文面も紹介。アニメーションの分析や、アニメーションスタッフの仕事ぶりやスタジオなどの舞台裏も紹介しているので、ぜひゆっくり当時のアニメージュを堪能してほしい。
 
会場では、本展覧会限定のグッズも多数取り揃えており、中には数量限定のものもあるので、早めにチェックしてほしい。また三鷹の森ジブリ美術館グッズも豊富に取り揃えている。
(江口由美)
 
<開催概要>
【展覧会名】「アニメージュとジブリ展」一冊の雑誌からジブリは始まった 
【会 期】2021年12月9日(木)~2022年1月10日(月・祝)
    ※2022年1月1日(土・祝)は休業 
【会 場】阪急うめだ本店 9階 阪急うめだギャラリー、うめだホール
    (〒530-8350 大阪府大阪市北区角田町8番7号) 
【開場時間】10:00~20:00 ※最終入場は各日とも、閉場時間の30分前まで。
      ※12月31日(金)および催し最終日は18:00まで 
【入 場 料】《日時指定券》一般1,500円(1,400円) /中高生1,000円(900円) /小学生600円(500円)
 
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「前田監督は私の10倍ぐらいエネルギッシュ」松井怜奈、単独初主演作の魅力を語る。『幕が下りたら会いましょう』公開記念大阪舞台挨拶
(2021.12.5 テアトル梅田)
登壇者:松井玲奈(主演)、前田聖来監督 
 
 私たちには「戻りたい夜」が多すぎるーーー。切ってしまった妹からの最後の電話、母が隠し続けてきた秘密、そして自分自身が向き合うのを避けてきたこと。突然の妹の死をきっかけに、今一度なおざりにしてきたことに向き合い、自分の人生の幕を上げようとする劇団主宰者の姿を描く『幕が下りたら会いましょう』が、12月3日よりテアトル梅田で絶賛公開中だ。
 
 
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  12月5日に同館で行われた公開記念舞台挨拶では、本作が初単独主演となる松井玲奈、同じく本作が初長編作となる前田聖来監督が登壇した。現在は小説家としても活躍し、マルチな才能を発揮している松井は、大阪での舞台挨拶は久しぶりと前置きしながら、
「大阪で映画を見てくださったお客様に会えたのがうれしい。その作品が自分の主演作であることがとても光栄です」と喜びを表現。一方、オリジナル脚本で初の商業映画を撮った前田監督はビッグチャンスすぎて奇跡的だったと振り返りながら、
「松井さんに主演をしていただき、全国で映画が公開され、大阪で観ていただけるのがまだ信じられない気持ち」と感動醒めやらん様子。
 

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 コロナ禍での脚本打ち合わせや読み合わせは全てオンラインだったというが、かえって密に連絡を取ることができたという二人。脚本の早い段階からラストシーンが決まっていたことから、前田監督がラストへの思いを語り、そこに至るまでに麻奈美がどういう行動をし、どういう気持ちになれば、そのラストにたどり着けるかを重点的に話し合ったという。松井は「脚本に書かれていない麻奈美のバックボーンを知ることができ、私にとってもいい時間になりました」と撮影までの期間を振り返った。
 
 
 
   初めての本格的な演出にとにかく必死だったと撮影を振り返った前田監督は、
「松井さんはオンラインでお会いした時から今まで、ずっとお姉さん的存在で、私がうまく伝えきれない部分も噛み砕き、うまく消化した上で演技してくれる。私が言いきれなかったことを理解してやってくれることが多く、それにたくさん支えられました」
一方、松井はその熱量に言及し、「私の10倍ぐらいエネルギーがあり、質問するとシーンの意図や、答えをすごく多く出してくれました。エネルギッシュだと思うし、撮りたいものがはっきりしている。私はずっと『監督、元気だな』と思っていました」とお互いの存在を陽と陰と表現しながら、熱量の高い撮影の様子を語った。
 

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 自分の感情を出すのが苦手な性格の麻奈美役を演出するにあたり、感情が表に出る瞬間、出ない瞬間をセリフではなく、真波の行動や表情で映像にのせたかったという前田監督。感情をそぎ落とす演出の中、唯一違うイメージを要求したことも。「『恋がはじまるキラキラした感じを出してほしい』と突然言われました」という松井の演技は、「呼びかけられて『はい!』と振り返りながら言うワントーン高い声。松井さん自身が50%ぐらい入っています。麻奈美が東京に行って、浮き足立っている感じがほんの少しあればいいなと思って演出しました。もう一度見直してみてください!」と唯一のキラキラシーンをアピールする一幕も。

 さらに長年、麻奈美を支えてきた劇団の看板女優、早苗との友情について話が及ぶと、松井は「二人はお互いの足りない部分を補い合っている存在です。例えばクマのプーさんは楽観的で、一方、いつも一緒にいるピグレットは心配しすぎな性格ですが、ずっとお互いで補い合っているような関係。自分の中ではシンパシーを感じています。自分の足りないところを補ってくれる人がいるのを“プーさん理論”と勝手に呼んでいますが。みなさんにもそれを伝えたい」と持論を初披露した。
 
 

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プーさん理論が思わぬ反響を呼び、名残惜しい中での最後の挨拶で「麻奈美は、周りと距離を取る孤独な存在ですが、一人で寂しいと思っていても母親や早苗、妹の尚などの視線に気づいていないだけ。視線を常に向けてもらっているという人の温かさに改めて気づくことができました。ご覧になった皆さんにとっての、足りない部分を補ってくれる大切な人を見つけてほしいです」(松井)
「家族に対しての思いを馳せる瞬間もあれば、演劇にフォーカスすると友情関係や30歳という年齢で、これからの人生をどう生きるかという大人の葛藤も見えます。色々な見え方をすればいいなと思って作りましたので、この映画を観て、何かを持って帰り、心の片隅に置いてもらえたら嬉しいです」(前田監督)
と、その思いを観客に伝えた二人。演劇やシスターフッド、そして尚を取り巻く環境にはハラスメント的な要素を取り入れながら、自分の本当の気持ちを自分なりのやり方で表現しようと前を向き始める麻奈美の姿を、ぜひ映画館で目撃してほしい。
(江口由美)
 
<作品情報>
『幕が下りたら会いましょう』
(2021年 日本 94分)
監督・脚本:前田聖来 
出演:松井玲奈、筧美和子、しゅはまはるみ、日高七海、江野沢愛美、木口健太
12月3日(金)よりテアトル梅田、なんばパークスシネマ他絶賛公開中 
公式サイト→http://makuai-movie.com/
(C) avex entertainment Inc
 
 

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