困った時の阿部さん!? くっついて来る岡田君!? 『エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)』合同記者会見
ゲスト:岡田准一、阿部 寛、平山秀幸監督
(2016年2月18日(木)あべのハルカス60F展望台にて)
■(2016年 日本 2時間02分)
■原作:夢枕 獏「神々の山嶺」(角川文庫・集英社文庫)
■監督:平山秀幸(『愛を乞うひと』『必死剣 鳥刺し』)
■出演:岡田准一、阿部寛、尾野真千子、ピエール瀧、甲本雅裕、風間俊介、テインレィ・ロンドゥップ、佐々木蔵之介
■公開情報:2016年3月12日(土)~全国ロードショー
■作品紹介は⇒ こちら
■公式サイト:http://www.everest-movie.jp/
■コピーライト:(C)2016「エヴェレスト 神々の山嶺」製作委員会
~日本映画史上最高のスケールで圧倒する、山に魅入られた男たちの熱き闘い~
最も映画化困難とされてきた夢枕獏の小説「神々の山嶺」の映画がついに完成。発行当時から映画化がオファーされてきたが、エヴェレストを舞台にした壮大な物語は過酷な撮影が予想され、スタッフは勿論演じられる役者の確保が困難ということで、長らく実現されなかった。それが動いたのが『さらば、わが愛/覇王別姫』『始皇帝暗殺』などのプロデューサー、高秀蘭氏のオファーからだった。監督は『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』を監督した平山秀幸監督。最初原作を手にして「自分の苦手なことがいっぱい詰まっていそう」と危惧したそうだが、それよりも原作の面白さに惹かれて「これは何がなんでもやりたい!」と決断したそうだ。
そうした平山監督の熱意に応えたのが、格闘技に精通し登山やロッククライミングを趣味とする岡田准一(深町誠カメラマン)と、ストイックな俳優として知られTVドラマの大ヒットで大忙しの阿部寛(羽生丈二)だった。さらに、羽生を慕う役の尾野真千子もエヴェレストロケに同行。標高5200mにあるベースキャンプを起点にした撮影は想像を絶する危険なものとなったそうだ。
3月12日(土)の公開を前に、世界一高い山エヴェレストにちなんで、日本一高いビル〈あべのハルカス〉60階の展望台で合同記者会見が行われた。快晴のこの日、360度の展望は遠くまで見通せる素晴らしい眺望となった。高所恐怖症だという平山秀幸監督と阿部寛に、高所恐怖症を克服したという岡田准一が登場。その精悍な姿は作品の力強さが相まって、増々熱い男たちの生き様に期待が高まった。
岡田:世界一高い山エヴェレストにちなんで、日本一高い「あべのハルカス」で記者会見するとは面白いですね(笑)。カメラマンの深町誠を演じました岡田准一です。よろしくお願いいたします。
阿部:孤高クライマーを演じました阿部寛です。撮影は1年弱前になりますが、エヴェレストの5000m以上の所で撮影できたことを幸せに思います。酷寒の地での撮影でしたが、熱い熱い映画になっていると思いますので、よろしくお願いいたします。
平山監督:高所恐怖症の私がエヴェレストの映画を撮り、今日もこのような日本一高いビルにつれて来られ、改めて高い所は苦手だなと思います。公開を前にようやく下山してきたような気持ちです。よろしくお願いいたします。
――― 5200mでの撮影で大変だったことは?
岡田:空気が半分というのは経験したことがなく、強風が吹くと一気に-20℃、-30℃になってしまうので、阿部さんや監督やスタッフの皆で助け合って固まってないと生きていけないような場所でした。崖を上っていくシーンでは、岩肌が手も掛けられないような所をよじ登っていくのですが、本当に命懸けの撮影でした。でも楽しかったですね、幸せな時間でした。
阿部:4500m越えたぐらいから明らかに景色が違ってきました。氷河が現れてその奥にエヴェレストが見えて来た時には距離感が分からない位でした。今まで見たことのない巨大な空間にお邪魔させて頂いているなと感じました。人間など小さな存在ですから、圧倒的な存在の自然の前では自然が機嫌を損ねないようにと、命の危険を感じながらの過酷な撮影現場でした。
平山監督:高所恐怖症だったり酷寒だったりと、僕の苦手なことがいっぱい詰まった原作でした。現地へ行ってからは岡田君も阿部さんも、どこまでが役柄なのか本人なのか分からなくなる位役に馴染んでいきました。その変化は見ていて楽しかったですよ。
――― 何か良かったことは?
岡田:阿部さんが何でも持って来てくれましたので、いつでも阿部さんを頼れば何でも揃いました。具合悪い時も、阿部さんの所へいくとお薬を頂けました。本当に助けてもらいました。
阿部:お医者さんに脅かされていたので、緊急の場合のお薬は勿論、携帯食や非常食など沢山持って行きました。でも途中重くなってきて皆に分けました。具合悪い人が出た時にはお薬がよく効いて、改めて日本製の薬品はいいなと思いました。
――― 岡田さんはこの映画のどういうところを伝えたいですか?
岡田:山岳映画の中でも日本的な映画だと思います。団体で登るのではなく単独で登る男を追い駆けて行く物語ですから、登ることが生きることに繋がると。原作にも力強い言葉が多く並んでいて、やり抜く、生き抜く人を見て震えがくるほど心が熱くなるような原作でした。その熱さをどう伝えられるのかをモチベーションに撮影しましたので、情熱を感じて頂けたらと思います。
――― 役作りについて?
岡田:僕の役はカメラマンで阿部さんを追っかける役なので、10日間の高度順応期間にとにかく阿部さんにくっ付いて行きました。阿部さんがどう役作りをするのかをカメラに収めながら自分も役に馴染んでいきました。それはもうショッピングに付いて行ったり、トイレに行こうとしてるのに「どこ行くんですか?」「トイレだよ!」てな具合に、阿部さんが役を背負う姿を見ながら、ぴったりくっ付いて行きました。
阿部:もう岡田君が付いて来るんでね(笑)…山でもプライベートでも付いて来て、僕はあまりカメラ好きじゃないんだけど、深町カメラマンとして役に入っているようでした。撮った写真を見せてもらったら、僕じゃなくて既に羽生丈二として撮っているんですよ。それを見た時、既に芝居は始まっているんだなと実感しました。日本にいる時から色んな準備をして、山屋さん(山岳の専門家)にいろいろ教えてもらいながら連れて行ってもらいました。撮影途中にリタイアする訳にもいきませんから、自分なりの責任感を持ってやりました。
――― 高い所はどうですか?役柄に対する感想は?
岡田:僕は高い所は平気です。若い時には苦手だったんですが、色んなことをして克服しました。僕も山岳部を作って部長をやっていますが、「なぜ山へ登るのか?」という疑問はよく出ます。今回阿部さん演じる羽生丈二のように「山へ行かないと死んでるのと同じだ」という極端な人もいますが、僕の知っている山屋さんはとても尊敬できるステキな人ばかりです。「自然には勝てない、自然の中で遊ばせてもらいながら経験や知識を積む」という風に考えて、「山は楽しいから登る」という優しい方が多いです。5~6年前から登山を始めたのですが、危険なスポーツですのでプロの山屋さんに学ぼうと、去年山岳部を作って山登りを楽しんでいます。
阿部:僕も監督と一緒で高い所は苦手ですね。若い時には平気だったのですが、歳と共に怖くなってきました。8mの空中ブランコで怖くてパニックになり、高さに慣れるための訓練を受けたことがあります。今回は、山屋さんに安全を確保して頂きながら役に入ることができたので平気でした。
【P.S】
初めて〈あべのハルカス〉60階の展望デッキに上ったのですが、素敵なゲストによる合同記者会見の興奮冷めやらぬまま、東西南北遥か遠くまで見晴らせるその眺望を楽しむことができました。エヴェレストという世界一高い山からの眺望もさぞかし異次元の素晴らしさだろうなと想像しましたが、映画『エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)』の執念の登山家を思うと安易に近寄れるものではないなと反省。人は、大自然の驚異に感動するとともに、畏怖の念を忘れず謙虚な姿勢で臨まなければならない、とこの映画は教えてくれているようです。春はもうすぐ、日本映画人の情熱が結集したアツイ映画を劇場で観て、心機一転、フレッシュな気持ちで春を迎えたいと思いました。
(河田 真喜子)