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『エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)』

 
       

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作品データ
制作年・国 2016年 日本 
上映時間 2時間02分
原作 夢枕 獏「神々の山嶺」(角川文庫・集英社文庫)
監督 平山秀幸(『愛を乞うひと』『必死剣 鳥刺し』)
出演 岡田准一、阿部寛、 尾野真千子、 ピエール瀧、 甲本雅裕、 風間俊介、 テインレィ・ロンドゥップ、 佐々木蔵之介
公開日、上映劇場 2016年3月12日(土)~全国ロードショー

 

~世界最高峰に懸けた“毒蛇”の情念~

 

山岳映画は数多いが、映画史上、目立つのは戦前のアーノルド・ファンク(ドイツ)をはじめとする山岳ドキュメンタリー。雄大な山の風景には、人間ドラマなど入り込む余地がなかった。山を舞台にした劇映画では、日本近代史の悲劇『八甲田山』(77年、森谷司郎監督)が高倉健主演で大ヒットした。近年ではこの映画でカメラマンを務めた木村大作が自らメガホンを取った『劔岳  点の記』(08年)が記憶に新しい。雄大な山の風景と人間ドラマは相容れないもの、と勝手に思っていた。だが、山と人間ドラマが渾然一体となった映画が現れた。夢枕獏原作の『神々の山嶺』を映画化した平山秀幸監督作『エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)』 は、世界最高峰のエヴェレストに挑んだ2人の日本人の物語。「山=人間の生きざま」が不可分になったもの凄い“山登り”映画だ。


everest-kami-500-1.jpg夢枕漠の原作は連載開始から20年を超えた。その間、国内外から映画化オファーが殺到したが、いずれも成らず。理由は“映像化不可能”だからだ。見れば納得。世界最高峰のエヴェレストにカメラを持ち込む撮影など到底不可能…そんな常識を覆した歴史的映画でもある。


1993年ネパール・カトマンドゥ。日本のエヴェレスト遠征隊は2人の死者を出して失敗に終わった。カメラマンとして参加した深町誠(岡田准一)はカトマンドゥに残り、町の骨董屋で古いカメラを発見する。それはエヴェレスト初登頂にまつわる謎を明らかにするもの、と直感する。

そんな彼の前に名前(ハブ)から“毒蛇”と呼ばれる大男が現われる。彼こそは数年前に消息を絶った孤高の天才クライマー、羽生丈二(阿部寛)だった。深町は山そのもののように無骨で他人を寄せ付けない羽生に惹かれていく…。


everest-kami-500-2.jpg主役はカメラマン深町だが、デモーニッシュな雰囲気を漂わせる山男・羽生の存在感がもの凄い。彼は不器用だが、馬力と決断力で国内で難しいとされた山々を制覇して名を上げる。だが、日本のエヴェレスト遠征隊に選ばれた際、頂上アタック隊選出で大モメし隊を離れて勝手に下山、以来、表舞台から姿を消し、ネパールへと旅立って消息を断つ。


羽生とは一体、何者か?  深町は秘められた過去を調べるうち、彼の凄絶な生きざまに飲み込まれていく。羽生はかつて、登攀中にパートナー・岸文太郎(風間俊介)が転落して死亡する事故を起こしていた。事故の時「羽生がザイルを切り、自分だけ助かった」という噂もたった。以来羽生は単独行になった。そんな彼を岸の妹・涼子(尾野真千子)も探していた。謎の男・羽生が目指した“史上初の挑戦”に深町もまた魅せられていく。それは、命の限界を超える“エヴェレスト無酸素単独登頂”という誰も考えない無謀な計画だった…。
 

everest-kami-500-3.jpg山の魅力に取りつかれた男たち(時に女も)を「山屋」と呼ぶ。「山に登ること」がすべてという彼らの暮らしには、常に命の危険がつきまとう。“極寒”の世界で空腹に耐え、高山病に苦しむなど、地上の凡人には想像出来ない。正直「何でそこまで」と思う。映画でも「なぜ登るのか」という問いが何度も提出されるが、明快な答えはないまま。それは「人はなぜ生きる」という人類の永遠の命題にも通じるだろう。だが、羽生の答えは明快だ。「山をやらないなら死んだも同じだ」。彼には「登るか登らないか」という選択肢すらない“究極の山屋”だった。


everest-kami-500-4.jpg羽生はかつて、冬のグランドジョラスで滑落、骨折する事故に遭った。絶体絶命の危機に、片手片足、それに歯だけで奇跡の生還を果たした。その話を聞いた深町は、彼の徹底した生きざまに牽かれ、同じように“世界最高峰”を目指す。  後半は、実際に標高5200㍍で撮影された本物のエヴェレストと、そこで大自然と戦う人間の闘争に目を奪われる。


“最後の登頂”で聞こえる羽生のゲキが凄まじい。「歩けなくなったら、手を使え。手もダメになったら歯で登れ。それもダメになったら頭で“思え”」。これほどまでに「神々の山嶺」に“取り憑かれた男”が描かれたことはない。その凄まじさこそが本当に生きることの意味ではないか。

     (安永 五郎)

★あべのハルカスでの合同記者会見のレポートは⇒ こちら
★公式サイト⇒ 
http://www.everest-movie.jp/

(C)2016「エヴェレスト 神々の山嶺」製作委員会

 

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