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主張をし続けることが大事。『沖縄 うりずんの雨』ジャン・ユンカーマン監督トークショー@第七藝術劇場

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『沖縄 うりずんの雨』ジャン・ユンカーマン監督トークショー@第七藝術劇場
2015年8月9日(日)第七藝術劇場にて
 
(2015年 日本 2時間28分)
監督:ジャン・ユンカーマン(『老人と海』『映画 日本国憲法』)
8月8日(土)~第七藝術劇場、15日(土)~ポレポレ東中野(アンコール上映)、29日(土)~神戸アートビレッジセンター、近日~京都シネマほか全国順次公開
公式サイト⇒ http://okinawa-urizun.com/ 
戦後70年、沖縄は問いかける『沖縄 うりずんの雨』ジャン・ユンカーマン監督インタビューはコチラ 
(C)2015 SIGLO
 

~主張をし続けることが大事。

日米双方で沖縄問題に関心を持つ人が少しでも増えれば、小さな勝利になる~

 
2005年に『映画 日本国憲法』で海外からみた日本国憲法を描いたジャン・ユンカーマン監督が、沖縄戦から現在に至るまでの長いスパンで「沖縄の戦後」を顧み、沖縄の声を聞く最新作『沖縄 うりずんの雨』を完成させた。東京、沖縄での上映を経て、現在第七藝術劇場で絶賛公開中だ。
 
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ジャン・ユンカーマン監督は、沖縄が本土復帰して3年後の1975年から沖縄に滞在している。復帰後にもかかわらず多数の米兵が滞在していることに理不尽さを感じ、ずっとアメリカに沖縄の現状を伝えたいと思っていたという。製作に3年半をかけた本作は「沖縄戦」「占領」「凌辱」「明日へ」の4部構成で、アメリカ側の沖縄映像資料(沖縄戦や、占領時代の映像)やインタビューを織り込み、沖縄とアメリカ双方の立場から米軍基地問題を掘り下げた。第七藝術劇場では、『沖縄 うりずんの雨』の延長線上に位置する作品、『戦場ぬ止み』(三上智恵監督)も現在同時公開しており、双方を観ることで、沖縄問題をより深く知り、考える良い機会となるだろう。
 
公開2日目の9日15:20の回終了後に行われたトークショーでは、満席の観客を前に、ジャン・ユンカーマン監督が本作のテーマや現在日本が抱えている安保、基地問題、沖縄に対する日米の差別意識について、会場からの質問に答えた。米兵によるレイプ事件の加害者インタビュー映像を取り入れたことについても、経緯やその必要性について監督の意見を真摯に語ってくださった。1時間に及ぶ熱のこもったトークショーの模様をご紹介したい。
 

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Q.現在記念上映されている『ひめゆり』(柴田昌平監督作)の感想は?
『ひめゆり』は丁寧に証言を集めていたので、ひめゆり学徒隊や沖縄の現実がみえる映画です。『沖縄 うりずんの雨』との共通点は、経験したことを自分の言葉で証言してもらっていること。歴史を理解するのに一番いい方法です。勇気が必要だったと思いますが、自分の目で見たことを話してもらいました。皆さん、とても劇的で、悲劇的な経験をした方々で、経験したことを明確に記憶しています。それらがこの映画のベースになっており、その延長戦上に三上智恵監督の映画(『戦場ぬ止み』)があります。私が歴史の証言を取っていく中で、辺野古も厳しい状況になってきています。昨年9月、空撮のため沖縄に行くと、モートン・ハルペリン氏(沖縄返還交渉に携わった米国家安全保障会議元高官)がシンポジウムで基調講演を行うため滞在しており、一緒に撮影もできました。シンポジウムとそこでの大田昌秀先生の発言が、この映画の主張の一つをまとめてくれ、最後のシーンができました。
 
 

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Q.20年前に起きた12歳少女レイプ事件の犯人の一人、ロドリコ・ハープ氏が画面で証言しているが、証言を映画に入れるまでの経過は?また、沖縄の方の反応は?
こういう映画を作るときは、最初から誰に観てもらうかを考えます。沖縄問題を意識してもらいたいのは、主に日本本土、アメリカの人たちで、彼らが沖縄問題を掴むためにどうすればいいかを考えました。沖縄で上映したときは、本土とは全然違う感じがしました。レイプ事件だけでなく、沖縄戦のことを沖縄で観ることは、とても辛いところでもあったと思いますが、アメリカ人や本土の日本人に伝えるためには真正面から描く必要があったのです。沖縄でも、多くの人に沖縄のことを伝えようとすることに対し、暖かい反響と感謝を伝えてもらいました。
 
私は、最初から加害者の証言も映画の中に入れるべきだと思っていました。沖縄問題が出てくるたびにレイプ問題も取り上げられますが、その実態はなかなか理解されていません。特に沖縄以外の人たちは遠いところの事件と思っています。ハープ氏は今回最初に撮ったインタビューですが、それまでには撮るかどうか、撮った後につかえるかどうかという判断がありました。いつも相手にシンパシーを持ってインタビューをしているので、レイプした人に面と向かって話ができるか不安でしたが、実際に会うと、とても素朴な人でした。心の深いところで反省していたので、これは使えると思いました。
 
後は、どうやって見せるかです。そのためには事件の背景に何があるかを描きました。加害者の話だけでなく、(今までのレイプ事件の)被害者の話も入れ、最終的にはアメリカの学者シンシア・エンローさんの話を入れて、インタビューの前に枠組みを作って、丁寧に見せるようにしました。沖縄で女性問題に深く関わっている方も、こちらの意図は認めてくださっていますが、加害者インタビューは見せるべきではないと言われました。20年前に起こった事件ですが、被害者に配慮し、沖縄のメディアは今でもディテールには触れないようにしています。だから僕たちはそれに真正面から取り組み、見せようと判断しました。
 
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Q.今回の映画のテーマの一つである憲法第9条に対する沖縄県民の思いと本土の人の思いは、アメリカ人のジャン・ユンカーマン監督からみると、どう映るのか?
一つの見え方として、沖縄は憲法第9条を守る最前線です。戦後70年の今、憲法問題や安保法案を通して、日本の戦後の歴史が見えてきています。多くの日本市民が心の深いところで戦争を否定、放棄しています。ただ、矛盾しているのは、日本とアメリカが軍事同盟を組んでいることです。アメリカは絶えず戦争を選んでおり、日本がアメリカと組むと、どうしてもアメリカの方針に従わざるを得なくなります。安保がそうですが、それがはっきりと見えてきているのが今年の夏で、民意と政府の方針が対立しています。
 
もう一つの見え方は、同じことが狭い規模で沖縄に起こっているということです。20年間沖縄の人たちは(辺野古移設は)ダメだと否定し、特にこの2、3年はオール沖縄の意思となっているのに、安倍政権はアメリカ政府と約束しているから基地を作ると言っています。TBSキャスターの金平氏が、「全国が辺野古化されてきた」と言っていますが、辺野古で起こっているのと同じことが国会で起きています。どうやって解決するかはとても難しいですが、その難しさがこの映画のテーマでもあります。
 
また、それらが起こる環境には二つの意識が内在しています。一つは(アメリカ側から見て沖縄は)戦利品という考え方で、沖縄はアメリカが沖縄戦で犠牲を払って得た特権的な権利を持つ場所なのです。長いスパンで映画を描くことは、戦争が終わった途端、アメリカが特権的意識で扱ってきた沖縄を映し出すことでもあります。占領が終わっても基地がそのまま残るのは、特権的な権利がある戦利品だからです。
 
もう一つは、本土の日本市民の中に沖縄に対する差別意識があることです。今は米軍基地の74%が沖縄に集中しています。「それはしょうがない」という発言には差別が入っていると思います。なぜ70~90年代に沖縄の基地に反対する声が挙がってこなかったのかと考えると、それは沖縄市民が二流市民(second citizen)と思われているからです。実際、アメリカ本土占領が終わったとき、米軍基地の80%が本土にありました。沖縄が74%になったのは沖縄の本土復帰後です。本土の基地を閉鎖して、沖縄に移設しているのです。今になってそれに対して疑問が広がっていますが、沖縄では(基地を残したままの)本土復帰は差別的だと当時から言われています。映画の中で沖縄の写真家、石川真生さんも、沖縄の人が受ける差別と黒人差別が似ていると語っていました。重要なのは、差別が根拠になるときは、差別がなくなるまで闘い続けることです。アメリカの黒人公民権運動も差別と闘う歴史でしたし、沖縄もそういう歴史になると思います。
 
 
Q. (生粋の沖縄県民であることを表明しての質問)事件の加害者であるロドリコ・ハープ氏には、実際にどういう言葉で映画の出演依頼をし、それに対してどのような返答があったのか?また、沖縄県民の反発は予想はされていたと思うが、実際はどうだったか?
ハープ氏らには、「あなたたちは罪を犯したが、その罪を責めるつもりはない。あなたたちの状況を正直に話してもらいたい」と手紙を書きました。手紙が届くまでは色々な経緯があり、時間がかかりましたが、届いてからすぐに「了解しました」と返事をもらったのです。後で理由を聞くと、カメラの前で事件が起きたときのことを正直に話すことが自分のためにもなると語ってくれました。レイプ事件を起こしたことは許してはいけないし、(観客の皆さんには)映画の方針を理解していただいていると思います。メディアが(事件のことを)丁寧に扱ってきたことに対して、そのルールを破ったという反感はありましたが、コザ地区での上映後に、「ハープ氏と話す機会があったら、『あなたには生きてほしい、自殺しないで』と伝えてほしい」とおばあさんが話しかけてくれたこともありました。
 
加害者のインタビューを見て複雑な気持ちにならない人はいないですが、そこから色々なことが見えてくると思います。ハープ氏はとても素直な人でした。「アメリカではレイプ事件に関わることは想像もできないが、沖縄では関わることができる」というのはどういうことかといえば、占領者の意識であり、基地から外に出た世界を見下しているのです。それはすごく大事な情報です。加害者が普通の兵士だからこそ、深刻な問題で、現に米軍基地の中でも、性暴力が頻繁に起こっています。
 
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Q.将来の展望という点で、アメリカが沖縄を戦利品と捉えているのなら、アメリカの国民世論が盛り上がることも必要だと思うが、アメリカで本作のような映画に賛同してくれる人がどれぐらいいるのか?
残念ながらアメリカの軍事主義はとても根強く残っています。アメリカ人として悲しいことですが、僕はベトナム戦争の最中に育てられ、反戦運動もしていました。終わったときに二度とあんな戦争をしないと思っていましたが、アメリカはそこから何も教訓を得ていません。民主党も共和党も軍隊を支持しており、武力で国際問題を解決することができるし、必要だと思っています。また、アメリカは海外に100か国で800基地を持っています。残念ながら沖縄はその中の一つという捉え方です。
 
ただ、沖縄の辺野古問題が長引いたことにより、辺野古の基地建設をやめてほしいという人は増え続けています。私が関わっている大学のネットワークによると、平和を唄う元米兵グループが、辺野古の基地建設反対声明を出していますし、バークレイの市議会も声明を出しています。それらはまだ少数派なことは否めませんが、秋に『沖縄 うりずんの雨』上映ツアーを組み、大学などで上映しながら、広めていきたいと思います。解決方法となると、主張をし続けるということでしょう。辺野古を応援しつづけ、強制的に基地が建設されることに対し抗議の声をあげれば、その声はアメリカに響くはずです。
 
特に(沖縄に駐在した)元米兵の動きが大事です。(米軍が沖縄に駐在し始めてから)70年になりますが、大体年平均5万人が沖縄に駐在しており、延べ350万人にのぼります。彼らは、沖縄に対して懐かしさを抱いていますし、沖縄のことが好きです。そういう人たちが沖縄にずっと基地を残すべきなのかと考えるのではないでしょうか。少なくともインタビューで出演した元米兵(沖縄戦に従事)は、まだ米軍が沖縄に残り、負担させられていることを残念がっていました。
 

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Q.米軍兵士が置かれている状況を以前直接聞く機会があり、軍隊内は暴力が支配し、レイプも当たり前。兵士たちは貧しい中でリクルートされ、完全に暴力的支配で統治されておりというのは忘れてはいけないアメリカの状況だと感じたが。
その通りだと思います。軍隊は根本的に非人間的な組織で、敵を見下すことが必要です。それは、米軍が沖縄でやっている行動につながっています。米軍もPTSDを抱えている若い兵士が25万人おり、年間7000人の自殺者(1時間に一人ぐらいの割合)がいます。戦死者より自殺者が圧倒的に多いですし、自衛隊でもイラクからの帰還兵には自殺者が多いです。しかし、そういう精神的な病気を抱えている人の治療は全く行われておらず、兵士は使い捨てのようになっているのが、軍隊の根本的な姿です。米軍の性暴力も同じで、毎年2万8千件ぐらい起きており、とても深いところにある問題です。だから、妥協してはいけません。
 
集団的自衛権も同じことです。戦争に行かせるということは問題の解決にはならず、両方が被害者になることにつながります。沖縄という一つの島でもそういう状況が見えてきますが、それは普遍的なメッセージでもあります。沖縄から届く声を聞くことが大事です。
 
三上監督の『戦場ぬ止み』で、辺野古の座り込みに参加している人たちは、唄って踊って、とても明るく、人間的なところがあります。厳しい状況の中、強い精神をもって座り込みを行っているのです。これがおかしい、やってはいけないという人が増え続ければ、いずれは改善できます。本土の中でも、この映画を歓迎する人がたくさんいます。沖縄への関心が確実に高くなり、その事実が沖縄に届くと、沖縄の人の励みになります。沖縄問題に関心を持つ人が少しずつ増え続ければ、それは小さな勝利です。一度、「沖縄の人たちは、負けは知らない」と言われたことがあるので、「負けっぱなしではないか」と返すと、「勝ったことはないから、負けはわからない」と言われました。沖縄は「(見方を変えれば)世の中はこういう風に見える」と教えてくれる気持ちの豊かな島です。
(江口由美)
 

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