レポートインタビュー、記者会見、舞台挨拶、キャンペーンのレポートをお届けします。

『繕い裁つ人』三島有紀子監督インタビュー

tukuroi-inta-550.jpg

『繕い裁つ人』三島有紀子監督インタビュー

(2014年 日本 1時間44分)
原作:池辺葵(『繕い裁つ人』講談社「ハツキス」連載)
監督:三島有紀子
出演:中谷美紀  / 三浦貴大  片桐はいり 黒木華  杉咲花 / 中尾ミエ  伊武雅刀  余貴美子
★作品紹介⇒ こちら
★公式サイト⇒ 
http://tsukuroi.gaga.ne.jp
(c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

2015年1月31日(土)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、シネ・リーブル神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、MOVIXあまがさき、TOHOシネマズ西宮OS、宝塚シネ・ピピア、塚口サンサン劇場、MOVIX京都 ほか全国ロードショー
 


 


~こだわりのある生き方に美しさを感じさせる
    “三島ワールド”~


tukuroi-550.jpg
湖畔のカフェに集まる人間模様を風情豊かに描いた『しあわせのパン』、挫折した男が故郷でワイン作りに挑む『ぶどうのなみだ』と、北海道の美しい自然を背景に、こだわりを持って生きる人々の姿を優しい映像で描いてきた三島有紀子監督。人も風景も音楽も独特の世界観で形成された“三島ワールド”。そこには「人を幸せにする食」への強いこだわりが底通していた。そして、3作目となる『繕い裁つ人』は、池辺葵原作の同名コミックを基に、西洋文化がいち早く根付いた神戸の街に生きる仕立屋さんの、ものづくりへのこだわりと心の軌跡を描いた物語である。

 


 ――― 原作のどこに惹きつけられたのですか?
市江というキャラクターに寄り添いたいと思ったのが一番。市江は、職人として最高の技術を提供するために、細部にこだわる性格で、非常にストイック。それでいて、天才的な祖母から受け継いだものを守る使命感に縛られている、そんな市江を解き放してあげたいと思いました。いろんな人との出会いによって影響を受けながら少しずつ心が開放されて、新しい自分を見い出していく姿を描きたいと思ったのです。


tukuroi-2.jpg――― 市江というヒロイン像について?
私は何か覚悟を持って生きている人が好きです。市江も自分のこだわりを貫き通すだけの強さを持った女性だと思います。最高の技術を持って唯一無二のドレスを提供する。さらに、相手が何を大切にしているかを汲み取って、服にその想いを込める。「語らずに服で伝えていく」、そこに共感したのです。それを受け取った人たちが新たな行動を始めるという、間接的なコミュニケーションを描こうと思いました。それは映画として難しいことですが、挑戦する価値はあると考えました。


――― 神戸の街を舞台にした理由は?
私の中で仕立屋さんの映画を作るとしたら神戸しかない!と思っていました。
神戸は開港されてから約150年経っていますが、異国情緒豊かで、服飾文化も早くから浸透して、テーラーも多く、独特の「洒落感」が神戸にはあります。
今回の映画は小規模作品でしたので「全員で神戸に行くの?」という感じでしたが、プロデューサーも神戸出身で一緒に働くチームの人たちにも関西出身の人が多く、内容を考えても「やっぱり神戸だよね」という話になりました。また、市江のキャラに合った場所であることも重要でした。

 

――― 神戸女学院やカフェなどの思い出の場所は?
神戸女学院の図書館でのロケは初めてのことで、特別に許可してもらいました。大学時代に自主映画を撮っていたので思い出深い場所ばかりです。神戸の街自体が懐かしい感じです。震災で多くを失った光景を見ているので、今の美しく再生した神戸を撮っておきたいと思いました。


――― 市江がチーズケーキをホールで食べるシーンは?
女性ならホールで食べる気持ちは分かるのでは?職住一体の市江にとって家の外にホッとする場所が必要ですし、そこで他人の目を全く気にせず、とても満足げな顔をして食べています。ふと自分自身が解き放たれる瞬間でもあるんです。
tukuroi-5.jpg

――― 中谷美紀さんを起用した理由は?

初めて中谷さんを見たのは『BeRLiN』(‘95)という映画で、湖面のように美しい人だなと思ったのが最初の印象でした。いつかこの人と一緒に映画を作りたいと思ったのです。市江は完璧でこだわりの強い人なので、中谷さんの姿が浮かびました。でも、そんな完璧な職人がふとした瞬間ほころびを見せるところが面白いなと思い、それを同じく完璧な中谷さんがほころびを見せるところに大きな魅力を感じたのです。


――― 作品のテーマとして、衣食住へのこだわりは?
特に意識したことはありませんが、人間は何を大事にして暮らすかという、日々を丁寧に暮すということが重要かなと思います。


――― シーンの繋ぎに時間をかけるのが特徴のような気がしますが?
何かを感じる時間は長い方がいいかなと思います。これは私の考えですが、「余白にこそ意味がある」と思っています。市江の感情に寄り添って進む物語なので、余白を通して感じて欲しいと思い、そうしたテンポで繋いでいきました。


tukuroi-inta-2.jpg――― いつもこだわりの服を選んでいるのですか?
私は物を見たときに背景を考えてしまう癖があります。どういう想いで作られているのか。父親がテーラーで誂えた服を大切に着ていたので、服に限らずひとつひとつよく考えて買うようにしています。値段やブランドではなく、作った人の想いが見えるようなものが好きです。


最後に中谷さんから手作りポンチョをプレゼントされた三島監督。「とても器用な方で、ミシンの練習を1か月してもらったのですが、洋裁師の腕前になっていました。それで最後にポンチョを作って下さったのです。」と嬉しそうに語る。そんな三島監督とスタッフやキャストの想いがひとつになって紡がれた作品だからこそ、落ち着いた温もりと充足感を得られる映画になっているのかもしれない。


 【STORY】
tukuroi-3.jpg神戸の山の手に佇む瀟洒な建物「南洋裁店」では、市江(中谷美紀)が先代の作ったオーダーメイドの服を修理したり仕立て直したり、時々自分の好きなデザインの服を作ったりして、手作り仕事を大切に守り続けていた。そこへ百貨店の商品開発部の藤井(三浦貴大)が訪れ、商品のブランド化や百科店への出品を持ちかける。だが、頑なにオーダーメイドにこだわる市江は、大量生産を嫌がりその提案を断る。一着一着に着る人の想いを込めて仕立てられる服と、それを受け継ぐ人々の想いが交差する南洋裁店は、今日もおなじみのお客たちで賑わっていた。

そんな市江の姿勢に変化が訪れる。藤井の熱心なオファーに刺激を受け、また変わりゆく時代を感じ取り、オリジナルデザインの製作に心が傾いていく。美しい生地や小物などに囲まれた仕事場で一心に生地と向き合う市江の横顔は、凛としてとても美しい。

(河田 真喜子)