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『繕い裁つ人』

 
       

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作品データ
制作年・国 2014年 日本
上映時間 1時間44分
原作 池辺葵『繕い裁つ人』講談社「ハツキス」連載
監督 三島有紀子 
出演 中谷美紀、三浦貴大、片桐はいり、黒木華、杉咲華、中尾美恵、伊武雅刀、余貴美子
公開日、上映劇場 2015年1月31日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、シネ・リーブル神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、MOVIXあまがさき、TOHOシネマズ西宮OS、宝塚シネ・ピピア、塚口サンサン劇場、MOVIX京都他全国ロードショー
 

~ファッションと伝統の街「神戸」の息吹を感じる、世代を超えた物語~

 

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阪神大震災から20年の節目の年に、また一つ神戸をはじめとした京阪神の今を映し出す映画が誕生した。弦楽器とピアノのアコースティックで軽やかな調べにのって、坂の上の洋館で繰り広げられる仕立て屋の物語『繕い裁つ人』を、大阪生まれで学生時代神戸の大学に通った三島有紀子監督が映画化。『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』で美味しそうなお料理と、独特のほっとする語り口をみせた三島監督が、オール兵庫ロケで、今回は人生の様々なシーンを彩るオーダーメイドの洋服や紳士服を彩り豊かに魅せてくれる。
 

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時が止まったような洋館の南洋裁店に集うのは、馴染みのお客様や、その子ども、孫たち。祖母の後を継ぎ洋裁店を営む仕立て屋、市江を演じるのは、同じくオール兵庫ロケで大ヒットした『阪急電車 片道15分の奇跡』(11)でも花嫁姿で阪急電車に乗っている姿が印象的だった中谷美紀。頑固親父のようと言われながらも、祖母から受け継いだ型紙をもとにした洋服づくりや、仕立て直しに全力を注ぐ一方、他のことはとても不器用な愛すべきキャラクターを凛として演じている。
 

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そんな市江のもとに、ブラント立ち上げおよび百貨店への出店を説得しに足しげく通う営業マン、藤井を演じる三浦貴大も、次第に仕事場横で市江の母(余貴美子)が出すお団子を食べ、お茶をすることが楽しくなってくるのだから、本当にいい時間が流れているなと思う。「着る人の顔が見えないような服は作らない」という市江に、いつの間にか心動かされていく藤井。一方、市江も藤井の「挑戦するのが怖いだけではないですか」という言葉に揺さぶられるのだ。
 

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服を仕立て直すことや、正装で参加する大人限定の夜会など、今では失われつつある一生着つづける洋服への特別な思いや、大人になることへの憧れがさりげなく語られる。母から娘へ受け継がれていく服や文化は、ファーストファッションが蔓延する今とは真逆であり、若い世代の人たちがこの物語を観てどう思うだろうかととても興味深い。ファッションの街神戸から誕生した仕立て屋の物語は、新しい世代にバトンを繋く物語でもあり、そして、阪神大震災から20年経て新たな一歩を踏み出す神戸へのエールのように思えた。
岡本の人気雑貨店「ナイーブ」をはじめ、川西の旧平賀邸、塩屋の旧グッゲンハイム邸など、訪れたくなるロケ地にもご注目を!(江口由美)
 
公式サイト⇒http://tsukuroi.gaga.ne.jp/
(C) 2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
 

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