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浦島太郎のお話を人形浄瑠璃により、現代の物語に巧みにリンクさせた『竜宮、暁のきみ』青木克齊監督インタビュー

ryuuguu-550.jpg浦島太郎のお話を人形浄瑠璃により、現代の物語に巧みにリンクさせた『竜宮、暁のきみ』青木克齊監督インタビュー

(2013年 日本 1時間34分)
脚本・監督:青木克齊
出演:石田法嗣、谷内里早、小林ユウキチ
★初日舞台挨拶(11/8 大阪・第七藝術劇場にて)⇒ こちら
★公式サイト⇒ http://ryugu-akatsuki.jp/

11月8日(土)~大阪・第七藝術劇場、11月24日(祝・月)〜京都みなみ会館

★初日舞台挨拶!
 日時:
 11月8日(土)13:30~予定 
 登壇者:青木克齊監督谷内里早


 

~喪失の痛みで現実に向き合えなくなった青年の別れと、再生に向けた一歩~

 
ryuuguu-3.jpg日本人の誰もが知っている浦島太郎のおとぎ話をモチーフに、現代の若者が新たな一歩を踏み出すまでを描いた力作。浦浜太郎は、大学の夏休みに帰省した故郷の海で溺れ、助けようとした親友を喪ったショックから立ち直れず、ぼんやりと無気力な毎日を過ごし、心を閉ざしたまま。事故から1年余りが過ぎようとする、夏のある日、太郎の目前にどこからともなく不思議な少女みずきが現れる。太郎は、みずきとの出会いをとおして、少しずつ変わっていく…。

太郎役は、『カナリア』(2005年)以来、確かな演技力で評価の高い石田法嗣。みずきを、今注目の若手女優、谷内里早が演じる。浦島伝説にちなんだ地名や遺跡などが数多く残されている香川県の西部、荘内半島(三豊市)の美しい海や山を舞台に、人形浄瑠璃を巧みに取り入れ、一人の若者の喪失と再生が描かれ、深い余韻が残る。さぬき映画祭の企画募集に応募し、優秀企画作品に選ばれた「竜宮」を元に、脚本と監督を担当し、初の長編デビューとなった青木克齊監督が広報・宣伝のため来阪。お話をうかがった。
 


 ◆どうして今、浦島太郎を?
ryuuguu-di2.jpg―――浦島太郎のお話が、主人公の太郎の境遇とうまく重ねあわされ、映画の中で生きていました。
監督:亀を助けて、良いことをしたはずなのに、仕打ちみたいなことで終わるという最後の結末が、子供心によくわからなくて、なんでだろうと気になっていて、ずっと好きなお話です。これをモチーフにしたらおもしろい企画になりそうで、人の出会いや別れとか、縁に関わる話にしようと思い、映画の冒頭に出てくる「君に逢ふ夜は浦島が玉手箱 あけて悔しき我が涙かな」という和歌を知った時、これを話の軸にしようと、発想していきました。「あけて」というのは掛詞で、「夜が明ける」という意味と「玉手箱を開ける」という意味があります。夜が明けて悔しくて涙が出るという恋の歌で、男の人が夜、女の人のところにしのんでいって、夜明け方に帰らないといけない、別れがたく寂しいから涙が出るという悲しみを、浦島太郎が玉手箱を開けて、おじいさんになってしまった時の呆然とした思いを、つらさに例えている歌です。それをこの映画の中でできるんじゃないかなと思いました。

 

◆配役について
―――太郎役の石田法嗣さんの表情がよかったですね。
監督:石田法嗣といえば、もっとすごい役者なんです。これは僕がこれから勉強しなければいけないところで、石田君のよさをもっと引き出さなきゃいけないというのが僕の反省点です。せりふが少なく、感情の起伏もあまりない役で、ちょっとした仕草や表情で表現しなきゃいけないので、ものすごく大変だったと思います。石田君は脚本を読みこんで、現場でも、ここはこういう感じでやりたいと思うとか、そういう話は互いにものすごくしました。常に悩みながらやっていたような印象があります。


ryuuguu-2.jpg―――谷内さんも難しい役回りで、元気で明るくて、やたら太郎にかまう感じですが、映画が進むにつれ、印象が変わっていきます。どんな人物として描こうとしたのですか?
監督:太郎のまわりでうろちょろして、沈んでいる彼を楽しませ、前向きな気持ちにさせます。でも、実は、自分の方がずっと深刻な状態にあるというのをうまくやってもらいたかった。自分の人生、深刻な状況は受け入れていて、その上で、自分ができることは何か、太郎をどう救ってあげられるのか、そういうことをやろうとしている人物として描きたかった。しゃきしゃきした明るい人間が、実は、深刻なことを抱えているというのは、よくあります。自分がそういう状態でも、前向きに、楽しい瞬間を明るく過ごすことができる、そんな子に背中を押され、太郎が人生に対して後ろ向きだったのが、前を向くというのを、二人の関係を通して描ければと思いました。谷内さんには、できるだけ自然にということをずっと言い続けていたので、いい意味で、力が入らずリラックスしてやってもらってたかなと思います。


―――谷内さんが踊っている砂浜は、とてもすてきな場所でしたね。
監督:鴨の越の浜辺は、浦島太郎が亀を助けたといわれる場所です。そこを見た時、この映画の舞台になると思い、映画はここから始まりここで終わるようにいきたいと思いました。潮の満ち引きで、あの砂浜の場所が現れたり沈んだりします。崖の上の道から見下ろすと、潮が引いた時は、砂浜が円形に浮き上がって、まわりは水で、海辺の舞台みたいに見えたので、ここで踊ってもらおうと考えました。


◆人形浄瑠璃について
ryuuguu-5.jpg―――人形浄瑠璃の声は、石田さん、谷内さんと、亀の声を子役の丸山歩夢君がやっているのですね。
監督:「浦島太郎」という演目自体、人形浄瑠璃には存在しません。だから、人形浄瑠璃で浦島太郎をやるには、一からつくらなければなりませんでした。該当する役の人に声を当ててもらうアテレコというかたちが一番よいと、オリジナルの人形浄瑠璃をつくりました。振付をしてくれたのは、文楽協会の吉田文司先生です。本物の人形浄瑠璃をそのままやってもおもしろくないと、黒塗りをバックに照明で遊ぶということをやりました。音楽も義太夫節じゃないので、映画音楽をつけ、背景の音で、今、どこにいるのかわからせるようにしました。

亀の人形もなかったので、剥製でいくしかないと決め、人形の大きさを計って、これぐらいの亀の大きさなら、人形が上に乗る時の見え方がおかしくないところで、ヤフーオークションで探しました(笑)その時、世界一、亀の剥製をほしがっていたのは僕だと思います(笑)。


ryuuguu-di1.jpg―――人形浄瑠璃を入れようというアイデアは、いつ思いついたのですか?
監督:プロデューサーとロケハンしていた時、たまたま地元で伝統を引き継ぎながら細々とやっている人形浄瑠璃の保存会(讃岐源之丞保存会)があると知って、映画に使えないかと思い、発想しました。現地に行かなければわからなかったことです。地元に密着したさぬき映画祭という企画にもマッチするし、浦島太郎というおとぎ話をモチーフにした作品にとって、人形浄瑠璃を入れるというのはいいことだと思って、相談しました。

台本の段階で、人形浄瑠璃のシーンをどこに入れるかは決めていて、吉田先生にも、浦島太郎のどういう場面を、どんなシーンの間に入れるか、お伝えした上で、動きをつくってもらいました。現代のお話と浦島太郎の物語をリンクするようにしていましたので、この点は、撮影前後で変わっていません。


◆小道具について
―――太郎が、夜中に、桃を食べるシーンが印象的でした。
監督:太郎が、ひとつ前に進む気持ちを持った瞬間だと思います。桃は仙人の食べ物で、不老長寿とか生命の象徴でもあります。太郎は生きながらに死んでいたわけですから、桃をかぶりつくことで、生きる力を手に入れたい、ということをやりました。もともと、浦島太郎のお話で、太郎に桃をあげた地元の友人・恭平の役を農家という設定にした時、たまたま香川の特産で桃があって、単純に、浦島太郎に対して、桃太郎という遊びをやりたくて、ぴったりだと思い、桃にしました。


ryuuguu-8.jpg―――恭平は、太郎を励ましながらも、時にきついことを言ったり、存在感がありました。
監督:恭平を演じた小林ユウキチ君は唯一、脚本の段階から、彼にやってもらいたいと思って書いた役です。師匠の佐々部清監督の作品の時に、現場で一緒にやっていて、当時まだ彼は17歳くらいで、いいなと思い、いつか一緒にやりたいと思っていました。彼なりにキャラクターをつくってきてくれて、僕のイメージより少し硬派な恭平という役になりました。台本を書いている時から、小道具が何かつながっていくというのは大事にしたいと思い、恭平から手渡された桃を太郎が食べるという流れにしました。


―――小道具といえば、オルゴールがよかったですね。
監督:里早さんに踊ってもらおうと思っていたのでああいうオルゴ-ルを使えば人の想像していないところにつなげられるなと思って、取り入れました。オルゴールの曲は、映画音楽の人につくってもらった曲です。実際のオルゴールは蓋を開けたら音楽が鳴り出す仕組みですが、映画では違う仕組みに変えています。


◆さいごに
―――海の中のシーンの撮影は?
監督:撮影はプールで、背景だけ実際に海に潜って撮ってきた映像と合成しています。夜、溺れているところの光は海の光で、最後、上がっていくあたりは仕込みのライトです。香川県に水深4メートルの飛込みプールが一か所だけあって、そこでロケさせてもらいました。カメラマンは水中にいて、役者が出たり入ったり、石田君は泳げなかったので、練習してもらって、でも、泳げるのと潜れるのはまた違って、苦しみながらやってもらいました。僕はプールサイドにいて、モニターで大丈夫?とか言うだけで、役者とスタッフの力、なにより俳優さんの頑張りです。


ryuuguu-di2.jpg―――監督が一番気に入っているシーンはどこですか?
監督:最後の方の長回しが一番やりたかったことです。太郎が走って海の方にいくのを、本当は、途中で切らないで、一連でやりたかったんですが、単純に、ロケ場所のつながりが、途中に階段があったり、走るには危ない場所があったりで、一連で行けなかったので切りました。車にカメラをのせ、走っていく石田君を撮りました。イメージは、一連でいっているように見せて、海で、太郎がみずきを探すところは、自分でもイメージどおりにやれたかなと思います。


―――最後の場面、余韻が残っていて、いいですね。最後の声は?
監督:男女含めて誰の声と言われても、全部正解だと思います。映画を観られた方がどう考えたかということで、あえて誰の声だかわからないようにしています。


 ―――観客の方へのメッセージをお願いします。
監督:「君に逢ふ夜は浦島が玉手箱 あけて悔しき我が涙かな」の和歌ですね。一歩前に踏み出した感じ。それからタイトルです。夜明けのあなた、というのは、あなたにとっての大切な人は誰ですかということです。観客の方々が感じたままに、それぞれ観たときの印象から、体調にもよるかもしれませんが、自分なりのメッセージをつかんでもらえたらいいなと思います。


自分のせいで親友を死なせてしまい、罪の意識から、自らの時を止め、前に歩けなくなってしまった現代の太郎。海の中の竜宮城でずっと楽しく過ごしたかったのに、玉手箱を開けてしまい、過ぎた時は返らないと嘆く、おとぎ話の浦島太郎。“時”をめぐる二つの物語が、登場人物の声で演じられるオリジナルの人形浄瑠璃を介して溶け合い、海の底の世界や、和歌の言葉の響きと重なり合って、味わい深い世界が広がる。テンポよく展開するドラマは観る者をひきつけて離さない。「脚本の段階でこだわって、あとは、現場での役者さんやスタッフとの化学反応で、いいものを取り入れていきました」という青木監督。第二作目が楽しみだ。 

(伊藤 久美子)

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