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『闇金ウシジマくん Part2』山口雅俊監督インタビュー

ushijima2-di-1.jpg『闇金ウシジマくん Part2』山口雅俊監督インタビュー

『闇金ウシジマくん Part2』(2014年 日本 2時間13分)
監督・企画・脚本:山口雅俊 脚本:福間正浩
原作:真鍋昌平(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中) 
出演:山田孝之、綾野剛、菅田将暉、門脇麦、高橋メアリージュン、中尾明慶、窪田正孝、柳楽優弥、やべきょうすけ他 
配給:東宝映像事業部=S・D・P/ PG12
5月16日(金)全国ロードショー
公式サイト⇒http://ymkn-ushijima-movie.com/movie/

(C)2014真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん2」製作委員会 

山田孝之、菅田将暉、山口監督登壇!映画『闇金ウシジマくん Part2』舞台挨拶(大阪) はコチラ 

 

~もがく“クズ”たちの可笑しさと愛おしさが滲む、痛快闇金サバイバル~

Ushijima2-4.jpgよくもここまで個性的な“クズ”が揃ったものだ。10日で5割の違法金利で貸し付ける闇金「カウカウファイナンス」と、そこに流れ着くギリギリの状況の債務者たちのドラマがさらに重層的に、そして疾走感あふれるエンターテイメント群像劇に仕上がった『闇金ウシジマくん Part2』。前作のPart1同様、カウカウファイナンスの社長、ウシジマを演じる山田孝之が冷徹さの中に一本筋の通った男の生き様を漂わせ「静」の演技で抜群の存在感をみせる。また、ウシジマの相棒で情報屋戌亥(いぬい)役の綾野剛が登場。ギラギラした物語の中で、独特の存在感をみせているのにも注目したい。

一方、物語の柱となる「ヤンキーくん編」のマサルを演じる菅田将暉と「ホストくん編」の麗を演じる窪田正孝の二人が、周りを巻き込みながら堕ちていくキャラクターを熱演。門脇麦、高橋メアリージュン、中尾明慶らが演じるキャラクターと濃密に絡み合いながら、ウシジマという絶対的な存在の前で次々に違う表情を見せていく彼らは、なんとも人間臭くて、「アホやな」と思いながらも惹きつけられる。

フジテレビプロデューサー時代に『ナニワ金融道』シリーズをはじめとした数々の大ヒットドラマを手掛け、『闇金ウシジマくん』シリーズでは企画、プロデュース、脚本、演出(ドラマ)、そして前作『闇金ウシジマくん』に引き続き、本作でもメガホンをとった山口雅俊監督に、『闇金ウシジマくん Part2』ならではの見どころや、シリーズ全体の中の位置づけ、そしてシリーズを通した魅力について、お話を伺った。


■現代社会を真正面から深く、見たくないところまで描ききる作品に取り組むことが、やりがいに。


━━━監督が企画からプロデュースまで一貫して手がけ続けている『闇金ウシジマくん』の魅力とは?
山口雅俊監督(以下監督): 『闇金ウシジマくん』に関して一言で言い表せば「困難」でした。最初、地上波テレビ局の深夜枠でオンエアしたのですが、ドラマのSeason1がクランクインする時にも、オンエアが100%できるかどうか分からない状況でした。社会に対するメッセージ性をきちんと込めながら、犯罪者が主人公のドラマを立ち上げることは、とても難しかったです。でも、難しいと頑張りたくなるものでしょう。

私はテレビ局勤務時代に、SMAP中居正広さんが主人公の『ナニワ金融道』を作ったのですが、そのときからお金をモチーフにした作品や、社会性のあるものは得意でした。『闇金ウシジマくん』のように現代社会を真正面から深く、見たくないところまでも描ききる作品に取り組むことに、やりがいがあったのでしょうね。

 

■『闇金ウシジマくん』は怪獣映画のようなもの。ウシジマが演じているのは絶対的な状況で、債務者の側にドラマがある。


━━━冷徹な取り立てをする金融会社の社長が主人公ですが、山田孝之さん演じるウシジマは、ただの冷徹だけではなく、人としての魅力があります。シリーズ当初からウシジマ役に山田さんを起用した理由は?
Ushijima2-1.jpg監督:先ほどの『ナニワ金融道』は今からふり返ればまだ古き良き時代の話で、中居さんが演じた灰原は物語の最初は一般人でしたが、泥々したお金に踊らされる人々だらけの世界に入っていきます。灰原は視聴者と同じ視線で見聞きするという、ドラマとしてはスタンダードな作りになっています。新参者(ビギナー)がやってきて、裏世界をのぞき見る感じです。

一方、ウシジマは絶対的に完成された生き方をしています。彼自身は観客と同じ目線ではなく、状況であり、壁であって、絶対にブレません。山田さんには、「ウシジマは本当に悪なので、状況をきちんと演じてください」と話しましたが、彼が演じてくれることによって、ウシジマの奥に、彼の人間としての一貫性が垣間見え、逆に共感してしまうような部分もあります。今回は綾野剛さん演じる戌亥が登場したことにより、ウシジマという人間の成り立ちの片鱗が見え、単なる悪ではなく人間らしく見える部分があるのではないでしょうか。『闇金ウシジマくん』は現代金融モノの最前線のような話で、言ってみれば怪獣映画のようなものです。ウシジマが演じているのは絶対的な状況で、債務者の側にむしろドラマがある訳です。

━━━ドラマや映画など、シリーズとしてどんどん広がりを見せていますが、一貫して監督が手がけてこられている中でどんな手応えを感じていますか?
監督:最初から作る姿勢は変わっていません。ドラマもSeason1、Season2と特に変わっていませんし、映画もPart1とPart2でことさら意識して変えた部分はありません。山田さんがPart2を観て、「Part1(映画)でなければできない表現と、Season1(ドラマ)のコミカルなところや、債務者の群像が絡まり合うような疾走感が、今回のPart2(映画)ではほどよい感じで表現されており、すごく良かった」と言ってくれました。Part1は大島優子さんと林遣都さんが物語を終始担ってくれましたが、今回はそれに比べれば登場人物も多かったですね。ドラマの見やすさと、映画ならではの表現がいい具合にミックスされたのではないでしょうか。

━━━今回はお金に踊らされる側としてホストのナンバーワンを目指して野心に燃える麗や、借金のためウシジマの元で働くことになるヤンキーのマサルなど、若い登場人物のもがく姿がストーリーの中心ですね。
監督:麗役の窪田正孝さんと麗に貢ぐため堕ちていく彩香役の門脇麦さんのシーンは割と静かで、暴走族愛沢役の中尾明慶さんとマサル役の菅田将暉さんのシーンはすごくスピーディーで疾走感があるので、その対比でストーリーを考えました。若い役者二人がそれぞれの立場で、役者としても役としてもウシジマに挑戦する構造になっています。今若手でグイグイ伸びてきている二人を起用しました。

━━━ちょっとワルだけど、繊細な部分を持ち合わせ揺れている若者を演じると、今は菅田さんの右にでる者はいないのではと思うぐらい適役ですが、現場でのエピソードは?
Ushijima2-3.jpg監督:『闇金ウシジマくん Part2』で登場する人たちは皆悪い奴らだけれど、必死でもがいているので割とかわいらしいんですよ。Part1で純役の林遣都さんは本当によく頑張り、山田さんも芝居の相談に乗ったり、ご飯に連れていったりしていたのですが、今回は「菅田さんが一番大変だ」と山田さんも言っていました。いきなりガムテープで縛られ、愛沢に放り出されるところから始まりましたから。でも、さすがに若手の期待ナンバーワンの役者だけあり、本当にマサル役を演じるのが菅田将暉さんでよかったと思いましたね。

 

■自分がカッコよく見えたいという部分を一切かなぐり捨てて演じてくれた。


━━━窪田さんも作品ごとに様々な表情をみせる俳優ですね。
監督:窪田さんは今回悪役なのですが、本当に最初から最後まで悪さ、ズルさ、野心に絡め取られている感じをちゃんと演じてくれました。ベテランの役者さんでも自分の役をよく見せようとする方がいますが、菅田さん演じる「ヤンキーくん編」と窪田さん演じる「ホストくん編」、それぞれの担い手が自分がカッコよく見えたいという部分を一切かなぐり捨てて演じてくれました。麗も窪田君が演じてくれて本当によかったと感謝しています。

━━━柳楽さん演じるオリジナルキャラクター蝦沼(彩香のストーカー)はどういう意図で作られたのでしょうか?
Ushijima2-6.jpg監督:ウシジマにお金を借りることによって、ウシジマの意図しないところで結果的に命を救う人を描きたかったのです。柳楽さんも思いこみが激しい役を演じてもらいましたが、ウシジマと一瞬接触して、一瞬にして排除される感じを出したかったし、柳楽さんが見事にやってのけてくれました。蝦沼役は自分をより良くみせたいとか、ファンを失望させたくないと思ったら絶対にできません。後から聞いた話ですが、窪田君が「蝦沼役でも良かった」と言っていたそうです。若い役者さんでもそういう人が増えてきて、頼もしいですね。

━━━監督はテレビドラマも多数てがけておられますが、映画との違いは?
ushijima2-di-2.jpg監督:連続ドラマを作っていた頃は、ドラマは基本的に無料で観るし、ながら見の人もいました。一方、映画の場合は先にお金を払ってから暗いところで観るものという認識がありました。でも、最近ドラマは携帯をいじりながら観ているし、映画もそのうちそうなるかも(笑)。多分ドラマの視聴者と映画の観客の行動もおそらくほとんど区別がつかなくなっているのではないかと思います。映画とドラマで、そんなに作り手としての意識を変えなくてもいいのではないでしょうか。

映画といえば、私はわりと引いて撮る映像が好きなので、映画を撮るときはできるだけ引いて撮りたいと思っています。ドラマでは寄りのショットも撮るのですが、たまに引いて撮るとお皿を洗いながら観ているお母さんも手を止めて、画面を観るのではないかと。台詞とカットバックを多用した映像で説明してしまうと、テレビを注視することなくお皿を洗ったままでエンディングテーマに入ってしまいますよね。

━━━映画では、できるだけ引いて撮りたいとのことですが、具体的に今回取り入れた印象的なシーンは?
監督:キムラ緑子さん演じる太客の牧子が麗に「私を抱いて。私はお金で自分の失ったものを取り戻したい」と言うシーンで、牧子のセリフの寄りのショットと麗の「えっ」と驚く表情の寄りのショットで撮ることもできるのですが、今回は役者の全体的なたたずまいで表現しました。ぜんぜん年の違う男女のシーンを、できるだけ引いてワンカットで撮りたい。そういうのが面白いと思うんですね。

 

■お金と食べ物はいいモチーフ。食べている姿、お金の扱い方でその人がどういう人なのか分かる。


━━━お金に関するドラマを続いて撮っておられますが、お金をモチーフにすることで見えてくるものは?
Ushijima2-5.jpg監督:お金と食べ物はすごくいいモチーフで、食べている姿を見ると、その人がよりよく理解できます。私のドラマ制作時代の代表作で竹内結子さん主演の『ランチの女王』では、竹内さんが食べるものは絶対に美味しそうに、皆が食べたくなるような撮り方になるよう心がけました。『闇金ウシジマくん Part2』も、観終わったらオムライスが食べたくなるのではないでしょうか。門脇さん演じる彩香のお金の扱いに対する変化も、彩香の心境の変化に重なります。お金をどう扱っているのかを見ると、その人がどういう人なのか分かるのではないかと思っています。

 

■よりよく生きたいと思い格闘している人間の姿は、美しく、愛おしい。


━━━『闇金ウシジマくん Part2』をどんな風に観ていただきたいですか?
監督:人間はよりよく生きたいと思って格闘していると、その姿が美しかったり愛おしかったりします。ウシジマという大きな状況に立ち向かったり、そこで対立したり、立ち向かう債務者たちと高橋メアリージュンさん演じる茜や光石研さん演じる熊倉みたいにそこに対峙する人たちが格闘して生きている訳ですが、悪いとか怖いだけではなく、そこになんとも言えない可笑しみや人間らしい姿があります。それを観ていただきたいですね。
(江口由美)