『さよならドビュッシー』合同インタビュー
ゲスト:利重剛監督、清塚信也
(2013年 日本 2時間11分)
原作:中山七里『さよならドビュッシー』(宝島社文庫)
監督・脚本:利重剛
出演:橋本愛,清塚信也,ミッキー・カーチス,吉沢悠,柳憂怜、,相築あきこ,山本剛史,熊谷真実
主題歌:「境界線」和泉沙世子(キングレコード)
2013年1月26日~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他全国ロードショー
★作品紹介⇒ こちら
★公式サイト⇒ http://good-bye-debussy.com/
© 2013さよならドビュッシー製作委員会
~ピアニスト・清塚信也、スクリーンデビュー!~
祖父の莫大な遺産をめぐる陰謀と、火事で全身に大やけどを負いながらもピアノを通じて再生しようとする少女の成長を描いた感動作『さよなら、ドビュッシー』。原作は第8回〈このミステリーがすごい!〉で大賞に輝いた中山七里の同名小説。16歳にして数々の映画で強烈な存在感を示す橋本愛が、主人公・香月遥を演じる。そして、今回注目されるのが、遥のピアノ教師を務めながら、遥の身辺に起こる事件を解いていく岬洋介という重要な役どころを演じたピアニストの清塚信也である。『神童』では松山ケンイチの、『のだめカンタービレ』では玉木宏のピアノ演奏シーンの吹替えを経て、これが俳優としてのスクリーンデビューとなる。
ピアノ演奏シーンの多い本作。「理屈ではなく、説得力のある映画にしようと思った」という利重剛監督は、「ピアノ指導の経験もあるピアニストの清塚信也さんこそ適役」として出演依頼。その起用が功を奏して、ひとり秘密を抱え孤独な闘いを悲痛なまでに見せる橋本愛に対し、それを優しく見守り導く姿は、新鮮な感動をよぶ。特に、ピアノコンクールで見せる肉体の限界を超えた必死の演奏には胸が熱くなる。
その岬洋介を演じた清塚信也氏と利重剛監督が、キャンペーンのため来阪。作品にかける思いを語った。
――― 『神童』『のだめカンタービレ』とピアノ演奏シーンでの吹替えをされてきて、スクリーン初登場ですが、如何でしたか?
清塚:緊張することもなく、とても楽しい時間を過ごせました。
――― 元々利重監督とは親しかったのですか?
清塚:いえ、この映画で初めてお会いしました。家はたまたま近かったのですが。
――― 演奏しながらの演技は難しかったのでは?
監督:3日間稽古の時間を取っていましたが、撮影前の2~3時間で済みました。清塚さんは実際にピアノを教えておられるので、レッスンの時の細かい方法などのアイデアからシーンを発展させたり、アドバイスを受けたりして、脚本にも反映させていきました。脚本の最終段階では一緒に作っていきました。弾きながら喋るという、いつものレッスンと同じようにやってもらっただけです。「手首で呼吸する」なんて、私らでは思いつかない言葉ですからね。
清塚:「手首で呼吸する」というのは、ショパンがレッスンで使った言葉で、僕も実際レッスンでそう教えられましたから。
――― 橋本愛さんとの共演は如何でしたか?
清塚:とても楽しかったです。劇中の人物と同じように、最後まで誰なんだろう?と思わせるような不思議な魅力の持ち主だと思いました。
監督:日本映画界が注目する女優ですから、いいタイミングで一緒に仕事ができて本当に良かったです。
――― 原作のどこに惹かれたのですか?
監督:音楽の演奏シーンの描写です。そこが書きたくてミステリーにしているくらいですから、一番の魅力とも言えますが、それをどうやって映画にするの?…… 私の気持ちからすると、プロのピアニストに、あるいは少なくともピアノが弾ける人に演じてほしいと思いました。最初は有名な俳優さんにという声もありましたが、バレエ映画だったら熊川哲也さんの名前が挙がるように、ピアノ界だったら誰に? この映画を機にスターダムに乗れる人を……そこで、萩生田監督のススメもあり、清塚さんにお願いしました。
――― オファーを受けた時のお気持ちは?
清塚:とても嬉しかったです。元々映画も演技も大好きでして、役者をしている友人のワークショップへ入ったこともあります。原作者の中山七里先生のファンで、タイトル本を進呈して頂いたこともあります。そうしたら映画出演のお話を頂戴したのです。中山先生からのご紹介かなと思ったら、全く関係ないルートでお話が来たので、この偶然には驚きました。
――― 演奏と演技の共通点と相違点は?
清塚:共通点は沢山あります。リハーサルの時から監督とよく話し合ってきました。でも、ピアノは、練習の積み重ねで、本番で力を出し切るというのがパターンです。それに対し、演技は、現場で監督や他のスタッフや相手役の俳優さんとか、多くの人のハーモニーでできているので、自分が詰め込んだものを一点張りに出しても上手くいかない。それが大きな相いです。
――― 演技に対する興味は?
清塚:表現のひとつとして興味がありました。映画、舞台、演技の関連している芸術性が好き。どうして感動するのか、考えながらゆっくり見るのが好きです。その内、監督の意図が分かってきて、無意識から意識へと変化していくのが楽しいのですね。
――― 清塚さんの起用はとても新鮮味があり、遥の成長の手助けをするあたりの繊細さに感動した。ミステリー性より主人公の秘めた心情面に重点をおいた構成については?
監督:そう思って頂けて嬉しいです。原作をあまり変えていません。大きなトリックとかはそのままやろうと思った。感情的にウソをつきたくない、本当にあるお話として受け止めてほしかったのです。世の中には大変な緊張した状況下で生きている人は沢山いると思う。限界ギリギリに頑張っている人にこそ見てほしい。そして、頑張る力やささやかな応援になればという願いはあります。
ミステリーだからロジカルになりがちですが、理屈ではなく、説得力のある映画にしようと思ったのです。そういう意味で、実際にピアノを弾く方で、ピアノレッスンをしている方に演じてほしくて、清塚さんにお願いしたのです。それを新鮮だと感じて頂けたら、大成功です。
――― 橋本愛さんは本当に弾いているのですか?
監督:どう思いましたか?(笑)実際に弾けたとしても、とても難しい役でした。清塚さんに指導して頂いて、その教え通りに弾くと、これがまたいい音が出るんですよ~♪
――― 演奏シーンで難しかった点は?
監督:ピアノ自体曲面のある鏡面仕上げなので、スタッフの誰かが映ってしまうんですよ。特に、部屋での演奏シーンには苦労しました。設定として、おじいさんがヨーロッパで買ってきたピアノですから、それに相応しいピアノを探しました。清塚さんにもついて来てもらって、音を確かめながら、細かくチェックしながら探しました。
それから、ミスタッチするシーンが難しかったですね。でも、清塚さんは、正確にミスタッチできる世界でも第一人者ですよ!
清塚:ミスをやらせたら右に出る者がいない!(笑)
監督:愛ちゃんの吹替えのピアニストさんにミスタッチさせるのが難しかったですね。シーンの絵作りとかもね。
――― 続編のご予定は?
監督:ポーランドが舞台になっていますね~映画化できればいいですね~。
【舞台挨拶】
【舞台挨拶】 (2013年1月21日(月)なんばパークスシネマにて)
登壇者:利重剛監督、清塚信也、泉沙世子(主題歌「境界線」を歌う)
――― 大阪の印象は?
監督:結構大阪の仕事が多かったので、好きですよ。朝ドラの時は7か月大阪に住んでいました。
清塚:コンサートでよく来ています。初めて大阪に来た時はまだ10代だったのですが、切符売り場で僕がぐずぐずしていたら後ろから押され、大阪って怖いところだなあと思いました。でも、その後コンサートで何回も来るようになって、大阪の人の優しさが分かるようになりました。
泉:私は豊中生まれです。ひどい方向音痴で、人に道を訊ねたら、遠い所でも連れてってくれて、メッチャ親切やなあと思います。
――― もう大阪の何か美味しい物を食べましたか?
清塚:りくろーおじさんのチーズケーキが美味しかったです。
――― 作品の印象やオススメは?
監督:一所懸命作りましたので、すべてが見所です。大事に撮った作品です。原作を読んでいても楽しめるように丁寧に丁寧に作りました。
――― 原作へのリスペクトが感じられました。
清塚:『神童』や『のだめカンタービレ』でピアノ演奏の吹替えはしましたが、演奏と演技をワンカットで撮れたのはとても珍しいと思います。橋本愛さんにも弾いているように指導したり、裏方としてもやりました。どこまでが演技か、と思える程上手なので、その辺りを見て頂けたら嬉しいです。
泉:清塚さんが、レッスン中に「気持ちを集中して!」と言いながら、気を散らしているシーンが好きです(笑)。
その他、橋本愛さんについて清塚信也さんが語ったエピソードとして、清塚氏が差し入れしたグリコのアイス〈パピコ〉を愛ちゃんが見て、「なんでこんな名前なんだろう?」と、珍しく彼女の方から訊いてきたので、清塚氏は早速お客様相談センターに電話して名前の意味を訊いた。すると、「誰かと分け合ったら楽しい」という回答があり、それを話すと、マネージャーさんやメイクさん達には受けたのに、肝心の愛ちゃんはずっと窓の外を見て無反応だったらしい。さすがクールな愛ちゃん!!!
(河田 真喜子)